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 近代など(20世紀~) Ⅲ
近代など Ⅳ(20世紀~)
 Ⅳ 小説類など
xvii ブックガイド、通史など
xviii 個々の著述家など-海外 Ⅰ(20世紀前半等
 シェーアバルト(1863-1915)とタウト(1880-1938)、
 ブラックウッド(1869-1951)、
 ドライサー(1871-1945)、
 ルゴーネス(1874-1938)、
 ホジスン(1875-1918)、
 ダンセイニ(1878-1957)、
 リンゼイ(1878-1945)、
 ステープルドン(1886-1950)、
 トールキン(1892-1973)、
 C.S.ルイス(1898-1963)、
 ボルヘス(1899-1986)、
 ドーマル(1908-1944)
xix ラヴクラフトとクトゥルー神話など
xx 個々の著述家など-日本 Ⅰ(20世紀前半等
 宮沢賢治(1896-1933)、
 夢野久作(1889-1936)、
 稲垣足穂(1900-1977)、
 小栗虫太郎(1901-1946)、
 埴谷雄高(1909-1997)
    おまけ 

xvii. ブックガイド、通史など

 ここまで各ページの「おまけ」コーナー他で、宇宙論に関わるものもあればそうでないものもありますが、小説類を挙げてきました。「近代など Ⅱ」のページには「v. ルーディ・ラッカー(1946- )など」の項を作ったりもしています。場合によってはそうしたものも含めて、20世紀以降の小説類で宇宙論に関わるものを見ようというわけですが、SFにせよ幻想小説にせよ、目配りの効く読者とはとてもいいがたいので、例によって、以下はたまたまふれる機会のあったものにすぎません。洩れているものが多々あろうことはいうまでもなく、そもそも大半は読んでも内容を忘れてしまっています。またネタバレする場合もありますが、ご寛恕いただければと思います。
 ともあれ、視野の狭さを多少とも補うべく、まずはブックガイド、通史の類からいくつか-こちらもまたほんの一例ということで;


SFなど 
ファンタジーなど 
怪奇小説など 
事典類など 

ブライアン・アッシュ編、日本語版監修=山野浩一、『SF百科図鑑』、サンリオ、1978
原著は Edited by Brian Ash, The Visual Encyclopedia of Science Fiction, 1977
梗概/日本語版序文(山野浩一)/チェックリスト//
プログラム//
テーマ集成;宇宙船と星間飛行(ポール・アンダースン)/探検と移民(ジャック・ウィリアムスン)/生物と環境(ジェイムズ・ホワイト)/戦争と兵器(ハリイ・ハリスン)/銀河帝国(レスター・デル・リイ)/未来ともう一つの歴史(ブライアン・オールディス)/ユートピアと悪夢(ジョン・ブラナー)/破滅と終末(J.G.バラード)/ロスト・ワールドとパラレル・ワールド(ロバート・シェクリイ)/時間とN次元(フリッツ・ライバー)/テクノロジーと技術製品(ケネス・バルマー)/都市と文明(フレデリック・ポール)/ロボットとアンドロイド(アイザック・アシモフ)/コンピューターとサイバネティックス(アーサー・C・クラーク)/ミュータントと共生体(ジョセフィヌ・サクストン)/テレパシイ、サイオニクス、ESP(ラリイ・ニーヴン)/セックスとタブー(キイス・ロバーツ)/宗教と神話(フィリップ・ホセ・ファーマー)/イナー・スペース(A.E.ヴァン・ヴォート)//
探求;接点と断面/文学としてのSF/受け継がれる発想//
ファンダムとメディア;ファンダム/SFアート/映画におけるSF/テレビにおけるSF/SF雑誌/単行本とアンソロジイ/少年雑誌とコミックス/評論と講座/周辺の諸宗派など、
392ページ。


 〈超空間航行〉に関連して→こちらで引きあいに出しました:「近代など(20世紀~)」の頁中のA.ベリー、小林司訳、『一万年後』(1975)の箇所

ブライアン・オールディス、浅倉久志・酒匂真理子・小隅黎・深町眞理子訳、『10億年の宴 SF-その起源と歴史』(KEY LIBRARY)、東京創元社、1980
原著は Brian W. Aldiss, Billion Year Spree. The History of Science Fiction, 1973
序文/種の起源 メアリー・シェリー/透徹した、病的な文学 エドガー・アラン・ポオ/ピルグリム・ファーザーズ ルキアノスその他/ガス燈に照らされた人々 ヴィクトリア朝の夢想(ヴィジョン)/奇跡をおこせる男 H.G.ウェルズ/都市文化からの逃避 ウェルズの同時代人たち/バルスームとそのかなたへ ERBと変わり者たち/時代精神(ツァイトガイスト)の名において おもに30年代/欠け皿の上の未来 ジョン・W・キャンベル・ジュニアの〈アスタウンディング〉誌の世界/不可能なことが起きたあと 50年代、そして前進と上昇/わが赴くは星の群れ 昨日と今日/跋//
あとがき(浅倉久志)など、
424ページ。


ブライアン・W・オールディス、デイヴィッド・ウィングローヴ、浅倉久志訳、『1兆年の宴』(KEY LIBRARY)、東京創元社、1992
原著は Brian W. Aldiss and David Wongrove, Trillion Year Spree, 1986/1988
まえがき/くずかごの日の夜明け 映画、コンピューター、カレッジ、そして頌歌/ライフスタイルの時代 60年代へ/高い城の男女 ディックその他の幻視者/わが忌み嫌うは星の群れ 70年代に帆を上げて/いかにして恐竜になるか 5人の生き残り/ザ・フューチャー・ナウ//
解説(山岸真)など、
366ページ。

 上の『10億年の宴』の増補改訂版として刊行された原著の、前著と重複しない第11章以降を訳出したもの(p.323)。
 同じ著者による→こちらも参照:「唾の樹」/「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ


早川書房編集部編、『新・SFハンドブック』(ハヤカワ文庫 SF 1353)、早川書房、2001
オールタイム・ベスト/対談 ぼくたちは、こんなSFを読んできた(森岡浩之・藤崎慎吾)/編集部のおすすめ作品 PART 1/編集部のおすすめ作品 PART 2/日本人作家が選ぶ文庫SFマイ・ベスト5 PART 1/年代別SF史/講座 PART 1/編集部のおすすめ作品 PART 3/編集部のおすすめ作品 PART 4/日本人作家が選ぶ文庫SFマイ・ベスト5 PART 2/講座 PART 2/用語小事典など、
544ページ。


荒俣宏、『理科系の文学誌』、工作舎、1981
プロローグ 宇宙文学の系譜//
言語の宇宙へケースⅠ『バベル-17』/ケースⅡ『ガリバー旅行記』/ケースⅢ『山椒魚戦争』//
物質の未来を求めて;ケースⅠ『結晶世界』/ケースⅡ『時の凱歌』/ケースⅢ『エントロピー』//
生命圏科学異聞;ケースⅠ『エレホン』/ケースⅡ『闇の左手』/ケースⅢ『地球の長い午後』//
20世紀の展望;ケースⅠ ロシア=ソヴィエト/ケースⅡ イギリス/ケースⅢ アメリカ/ケースⅣ 日本//
函数関係としてのSF;ケースⅠ 作品〈
(ナル)A〉/ケースⅡ 生物学戦争/ケースⅢ 文学建築論//
エピローグ 高い城の男、あるいは東西の融合など、
434ページ。


 同じ著者による→こちらも参照:「魔術、神秘学、隠秘学など」の頁

笠井潔、『機械じかけの夢 私的SF作家論』(ちくま学芸文庫 カ 4-2)、筑摩書房、1999
 1982/1990刊本の文庫化
序説 SFの起源あるいは幻想文学の遍歴史/支配的修辞としての科学 - ポオ、ヴェルヌ、ウェルズ/錬金術とテクノロジー - A.E.ヴァン・ヴォークト/進化の反人間主義 - アーサー・C・クラーク/宇宙精神と収容所 - 小松左京/SF的進化の理論 - コリン・ウィルソン/銀河帝国の社会学 - アイザック・アシモフ/黄金期とニューウェーヴのあいだ - ハリイ・ハリスン/上にいる神か下にある神か - ロバート・シルヴァーバーグ/神話化された作品と作品化された神話 - ロジャー・ゼラズニイ/SFと人間の終焉 - アーシュラ・K・ル・グィン/未来都市の混濁とSF的文体 - ウィリアム・ギブスン//
あとがき SF批評と私/新版あとがき/文庫版あとがき/解説(巽孝之)など、
440ページ。

 同じ著者による→こちら(「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「おまけ」や、そちら(「近代など Ⅲ」の頁の「おまけ」)、またあちら(本項下掲の「ファンタジーなど」の欄)、こなた(本頁下掲の「埴谷雄高」の項)を参照


笠井潔編著、『SFとは何か』(NHKブックス 512)、日本放送出版協会、1986
SFの起源(笠井潔);起源論の方法 - SF論をめぐる二つの事大主義/『ドン・キホーテ』 - 物語批判と近代小説/『ガリヴァー旅行記』と『ロビンソン漂流記』 - 近代小説の発展/怪奇小説・冒険小説・探偵小説 - SFの近隣ジャンルの発生/『フランケンシュタイン』と「ハンス・プファアルの無類の冒険」//
イギリスの夢、ウェルズの夢(新戸雅章);ユートピアと終末のヴィジョン/新たなウェルズ像を求めて/孤独な巨人たちの肖像/アーサー・C・クラークと4,50年代のイギリス作家たち//
ジャンルの確立 - アメリカSFの1920-30年代(志賀隆生);アメリカ、1920年代、雑誌/19世紀の先駆者たち - ポーとオブライエン/ガーンズバックとアメリカSF創世記/英雄たちの肖像/異次元の彼方から/昼の盛りの時代へ//
閉ざされた無限 - アメリカSFの1940-50年代(志賀隆生);黄金時代まで/キャンベル革命/キャンベル以降/フロンティアの残像/修辞としての科学の変容/救済と浄化/多様な展開/閉ざされた無限//
SFの新しい波(新戸雅章);ニューウェーヴはいかにして生まれたか/新しい思考の探求者たち/アメリカSFの危険なビジョン/フィリップ・K・ディックと解釈の革新/スタニスワフ・レムとソ連、東欧SFの60年代/さまざまな60年代//
ポスト・ニューウェーヴ、そして80年代(新戸雅章);70年代の時代体験とポスト・ニューウェーヴ/アメリカSFの新展開/エコロジカル、フェミニズムと女流ファンタジー/ハードSFの新展開/70年代アメリカSFの正統性/70年代、そして80年代//
終章(笠井潔);近代文学から現代文学へ - 言葉の錬金術と内面の解体/現代文学のなかのSFなど、
242ページ。


中島梓、『道化師と神 SF論序説』、早川書房、1984
序説 日本SFの現在/SFとは何かについての一考察/センス・オヴ・ワンダーについて-パンドラの匣/道化師と神(1)/道化師と神(2)/パルプ雑誌の聖者/終章 日本SFには何ができるか/追記など、
222ページ。

 栗本薫名義の著作→こちらを参照:「近代など Ⅵ」の「栗本薫」の項


巽孝之編、『日本SF論争史』、勁草書房、2000
序説 日本SFの思想(巽孝之)//
SF理論のハードコア;安部公房「SFの流行について」、「SF、この名づけがたきもの」/小松左京「拝啓イワン・エフレーモフ様-『社会主義的SF論』に対する反論」、「〝日本のSF〟をめぐって-ミスターXへの公開状」//
論争多発時代;福島正美「未踏の時代」、「SFの夜」/石川喬司「ハインライン『宇宙の戦士』論争」/山野浩一「日本SFの原点と指向」/荒巻義雄「術の小説論-私のハインライン論」/柴野拓美「『集団理性』の提唱」//
ニューウェーヴ受容後;田中隆一「近代理性の解体+SF考」/川又千秋「明日はどっちだ!」/筒井康隆「現代SFの特質とは」//
サイバーパンク以前以後;笠井潔「宇宙精神と収容所 - 小松左京論」/永瀬唯 「ブルース・スターリング『真夜中通りのジュール・ヴェルヌ』訳・解説」、「スペキュレイティヴ・アメリカ-思弁小説の父ハインラインとアメリカ保守の思想」/伊藤典夫「スコッティはだれと遊んだ?-オースン・スコット・カード『消えた少年たち』を読む」//
ジェンダー・ポリティクスの問題系;野阿梓「ジャパネスクSF試論」、「花咲く乙女たちの『ミステリ』」/小谷真理「ファット/スラッシュ/レズビアン-女性SF読者の文化史」/大原まり子「SFの呪縛から解き放たれて」など、
432ページ。


山本弘、『トンデモ本? 違う、SFだ!』、洋泉社、2004
まえがき SFはこんなに面白い!//
プロローグ 黎明編;月に砲弾を撃ちこめ!これが一九世紀の先端知識と大ボラだ! ジュール・ヴュルヌ『月世界旅行』//
1930~40年代;闇と死に愛された女戦士ジレル その魂の攻防に震えろ! C・L・ムーア『暗黒神のくちづけ』/人類は退化の果ての生物だった! 究極の人類自虐小説 エドモンド・ハミルトン「反対進化」/報河を駆けるレンズマンの大活躍! これが昭和10年代の小説!? E.E.スミス『銀河パトロール隊』/時代遅れのヒコ一キ野郎、プロペラ機で火星へ飛ぶ! ジャック・ウイリアムスン「火星ノンストップ」/水曜日はまだ製作中? あっと驚く世界の舞台裏 シオドア・スタージョン「昨日は月曜日だつた」/正気と狂気、どっちが正しい? フレドリック・ブラウン「さあ、気ちがいになりなさい」/地球は昔、平らだった!? これぞ究極のパカSF チャールズ・L・ハーネス「現実創造」//
インターミッション 報いなきSF作家に花束を マレイ・ラインスターの魅力//
1950~60年代;信念があれば反重力も実現できる! レイモンド・F・ジョーンズ「騒音ベル」/夢よ覚めるな! 世界が滅びる! ダニエル・F・ガロイ「今宵、空は落ち…」/ダイヤモンド惑星を持ち特れ! トム・ゴドウィン「発明の母」/驚異! 自転車は生物だった! エイヴラム・デイヴィッドスン「あるいは牡蠣でいっばいの海」/花も恥らう字音クジラは十七歳! ロバート・F・ヤング「ジョナサンと宇宙クジラ」//
インターミッション 親父を殺した男たち タイムトラベルSFオンパレード//
1970~80年代;文学的価値なんて知らない! 絢爛豪華ワイドスクリーン・バロック! バリントン・ベイリー『時間衝突』/高さ0.5ミリ、体重70キロの知的生命体と接触せよ ロバート・L・フォワード『竜の卵』/異星人からインターネットを守れ! これぞ元祖ハッカー小説 ヴァーナー・ヴィンジ『マイクロチップの魔術師』/金も権力も無意味! ユートピアはなぜ嫌われる? ジェイムズ・P・ホーガン『断絶への航海』/宇宙戦檻〈大天使〉出撃! ハングライダー象を撃退せよ! ニーヴン&パーネル『降伏の儀式』/SF大会で殺人事件発生! 『D&D』で犯人を探せ! シャーリン・マタラム『暗黒太陽の浮気娘』//
インターミッション 世界の中心でタイトルを叫んだ作者 海外SF、名タイトル総まくり//
1990~2000年代;量子力学を通して描く人間の「心」 グレッグ・イーガン『宇宙消失』/マンハッタンがまるごと奪われた! ジョン・E・スティス『マンハッタン強奪』/「人格的な不可能犯罪」とは何か? 珠玉のSFミステリ! ロバート・J・ソウヤー『ターミナル・エクスペリメント』/九〇年代も少女は時をかける 高畑京一郎『タイム・リープ あしたはきのう』/女子高生の発明が世界を変える! 理系人間のための理系小説 野尻抱介『ふわふわの泉』/直径1万マイルの負爆弾! 現代によみがえるスペースオペラ! 古橋秀之『サムライ・レンズマン』/どうして世界はこんなに平凡なの!? 少女が求めるSFの世界 谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』//
あとがき 人生で大切なことはすべてSFで学んだ/参考資料など、
226ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「近代など Ⅵ」の「山本弘」の項
 また著者編纂のアンソロジー『火星ノンストップ ヴィンテージSFセレクション 胸躍る冒険【篇】』(2005)から→そちら(ラインスター、「近代など Ⅴ」の頁)、あちら(ヴァン・ヴォクト、同上)、またここ(コリン・キャップ、同上)を参照


山本弘、『トンデモ本? 違う、SFだ! RETURNS』、洋泉社、2006
まえがき 本書使用上のご注意//
小説編;宇宙はどんどん縮んでる! フィリップ・レイサム「グザイ効果」/ボストン消失! 四次元からの驚異の攻撃 アラン・E・ナース「中間宇宙」/電子の上を歩いてみたら ジェイムズ・ブリッシュ「恒星への抜け道」(→こちらで挙げました:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「レイ・カミングス」の項)/月面観光船に事故発生! アーサー・C・クラーク『渇きの海』/ファンタスティックな未来にようこそ! スタニスワフ・レム『星からの帰還』/イギリスは消滅した! じゃあもういっペん作っちゃえ! デイヴィッド・イーリイ「タイムアウト」/戦え! 超カブト虫生命体 キース・ローマー『突撃!かぶと虫部隊』/さようなら、魚をたくさんありがとう ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』/198X年、日本に特攻隊復活! かんべむさし『サイコロ特攻隊』/超絶的ガンファイト! 最強の未来アクション小説登場 冲方丁『マルドゥック・スクランブル』/横須賀港に怪獣出現! 自衛隊出動できず 有川浩『海の底』//
インターミッション SF版ノックスの十戒を考えよ//
映画編;今なお古くない、半世紀前のレトロ字音SFの傑作! 『禁断の惑星』/地球を動かせ! 日本の誇る一大奇想SFスペクタクル 『妖星ゴラス』/地球が大ピンチ! 核爆弾で世界を救え! 『地球は壊滅する』/海水で溶けなけりやトリフィドじやない! 『人類SOS』//
インターミッション これは本当に現実ですか? パラノイアSFの系譜//
マンガ編;SFマンガ家の意地を見よ! 手塚治虫『サンダーマスク』/最強のスーパー宇宙船・その頭脳は美少女 弓月光『トラブル急行』/銀河は大砲の弾倉だった!超スケールの傑作スペースオペラ 長谷川裕一『マップス』/美少女ミャアちゃんよ永遠なれ! 吾妻ひでお『スクラップ学園』/夢の世界からの警告・人類の未来はどっちだ!? 佐々木淳子『ダークグリーン』//
インターミッション バクリはどこまで許される? あの名作の元ネタはこれだ!//
テレビ編;美しい娘は星になる・感動のSFラブストーリー 『アウター・リミッツ』「生まれて来なかった男」/氷の小惑星が地球を焼く! 『鉄腕アトム』「空飛ぶレンズ」/スーパーマンが地球の独裁者に!? 『ジャスティスリーグ』「より良き世界」/宇宙を拓くのはわがまま野郎どもだ! 良質のSFTVアニメ 『プラネテス』//
インターミッション 心は今も一五歳 わが青春の『SFマガジン』の日々//
あとがき 前著のその後の展開など、など、
226ページ。


日下三蔵、『日本SF全集・総解説』、早川書房、2007
第1期;星新一/小松左京/光瀬龍/眉村卓/筒井康隆/平井和正/豊田有恒/福島正美/矢野徹/今日泊亜蘭/広瀬正/野田昌弘/石原藤夫/半村良/アンソロジー//
第2期;田中光二/山田正紀/横田順彌/川又千秋/かんべむさし/堀晃/荒巻義雄/山尾悠子/鈴木いずみ/石川英輔/鏡明/梶尾真治//
第3期;新井素子/夢枕獏/神林長平/谷甲州/高千穂遙/栗本薫/田中芳樹/清水義範/笠井潔/式貴士/森下一仁/岬兄悟/水見稜/火浦功/野阿梓/菊地秀行/大原まり子//
編集後記など、
312ページ。

 架空の全集の解説です。


長山靖生、『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』(河出ブックス 007)、河出書房新社、2009
序章 近代日本SF史 「想像/創造」力再生の試み/幕末・維新SF事始 日本SFは150歳を超えている/広がる世界、異界への回路/覇権的カタルシスへの願望 国権小説と架空史小説/啓蒙と発明のベル・エポック/新世紀前後 未来戦記と滅亡テーマ/三大冒険雑誌とその時代/大正期未来予測とロボットたち/「新青年」時代から戦時下冒険小説へ 海野十三の可能性/科学小説・空想科学小説からSFへ、など、
230ページ。


長山靖生、『戦後SF事件史 日本的想像力の70年』(河出ブックス 039)、河出書房新社、2012
序章 SF・幻想・アニメのリアル 戦後から災後まで/戦後的想像力の始動/空想科学からSFへ/戦う想像の現場 騒乱と創造と裁判沙汰/論争とお祭りの日々/進歩と未来とオカルティズム 多様化する創造的想像力/幻の80年紛争からオタク革命へ/「幻想文学」とその時代/反復と変容 本当の21世紀へ、など、
286ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:「日本 Ⅱ」の頁の「x. いわゆる古史古伝・偽史、神代文字など


 近代美術史をかじった者にとっては、ハル・フォスター編『反美学 ポストモダンの諸相』(室井尚・吉岡洋訳、勁草書房、1987)に収められた「ポストモダニズムと消費社会」や、単著としては『近代(モダン)という不思議 現在の存在論についての試論』(久我和巳・斉藤悦子・滝沢正彦訳、こぶし書房、2005)が思い起こされるF.ジェイムソンですが、

フレドリック・ジェイムソン、秦邦生訳、『未来の考古学 Ⅰ ユートピアという名の欲望』、作品社、2011

 同、 秦邦生・河野真太郎・大貫隆史訳、『未来の考古学 Ⅱ 思考の達しうる限り』、作品社、2012
原著は Fredric Jameson, Archaeologies of the Future. The Desire Called Utopia and Other Science Fictions, 2005
Ⅰ;序-今日のユートピア/さまざまなユートピア性/ユートピア的エンクレーヴ/モルス - ジャンルの窓/ユートピア的科学対ユートピア的イデオロギー/大分裂/いかにして願望を充足するか/時間の壁/不可知性テーゼ/異星人の身体/ユートピアとその二律背反/総合、アイロニー、中性化、そして真実の契機/恐怖への旅/攪乱としての未来など、
524ページ。

Ⅱ;フーリエ、あるいは存在論とユートピア/SFにおけるジャンルの不連続性 - ブライアン・オールディスの『スターシップ』/ル=グウィンにおける世界の縮減/進歩対ユートピア、または、私たちは未来を想像できるか?/空間的ジャンルとしてのサイエンス・フィクション - ヴォンダ・マッキンタイアの『脱出を待つ者』/SFの空間 - ヴァン・ヴォークトにおける物語/階級闘争としての長寿/追悼 フィリップ・K・ディック/ハルマゲドン以降 - 『ドクター・ブラッドマネー』におけるキャラクター・システム/フィリップ・K・ディックにおける歴史と救済/グローバリゼーションにおける恐怖と嫌悪/「ひとつでも良い町が見つかれば、私は人間を赦そう」 - キム・スタンリー・ロビンスン『火星』三部作におけるリアリズムとユートピアなど、
432ページ。


浅見克彦、『時間SFの文法 決定論/時間線の分岐/因果ループ』、青弓社、2015
序章 時間SFと時代の感覚;『タイム・マシン』とその時代/現代の意識を引き寄せる時間論/物語論の関心と現代のシニシズム//
ジャンルを俯瞰する;タイム・トラヴェルの物語/タイム・スリップの物語/並行世界へ跳躍する物語/自己重複の物語/時間の果てをのぞむ物語//
タイム・パラドクスと決定論的世界;連なる氷河のような世界/愛による過去の改変 - パラドクスの浮上/タイム・パラドクスと happen twice 論/決定論的な時間世界 - 時間旅行者をとらえる不可避の円環/決定論への帰依と「救済」//
時間SFとニヒリズム - 価値意識の惑乱;反復する時間世界-意味と価値の無化/「枝分かれする世界」 - 価値の相対化と自由意志の無力/因果ループの空虚 - 価値の真正さが失われゆく世界/ニヒリズムの波紋 - 自らに懐疑を向ける物語//
物語論としての時間SF - 読みのシニシズム;物語の「真実味」を支えるもの - リアリズムの陥穽/時間SFにおける因果のパラレリズム - 読みが支える意味の秩序/種を露呈する手品 - 「読みの真正さ」の持ち分/シニシズムの行方//
終章 時間の味わい - 感覚的な悦びをもたらすテクスト;変異のなかで湧き上がる時間/意識変調の異様 - 躍動と移ろいの感覚/時間的な感覚の奥にあるもの - 意味の向こうに想像される何か/映像的なテクストの時間 - 共感覚の渦へと誘う物語など、
246ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「近代など Ⅵ」の頁の「海猫沢めろん」の欄

Paul J. Nahin, Time Machines. Time travel in physics, metaphysics, and science fiction, 2nd edition, 1993/1999
………………… 

石堂藍、『ファンタジー・ブックガイド』、国書刊行会、2003
遙かな異世界と神話的世界/とびらのむこうは別世界/日常の中の不思議/幻想の博物誌・奇妙な歴史/メルヘン集/ファンタジーのキイワードなど、
256ページ。


ロジェ・カイヨワ、三好郁朗訳、『妖精物語からSFへ』(サンリオSF文庫 8-A)、サンリオ、1978
原著は Roger Caillois, Images, images. Essais sur le rôle et les pouvoirs de l'imagination, 1966
妖精物語からSFへ-幻想のイメージ-/夢の威信と問題 - 夢のイメージ -/ピュロス王の瑪瑙 - 類推のイメージ -//
解説(荒俣宏)など、
180ページ。


ツヴェタン・トドロフ、三好郁朗訳、『幻想文学論序説』(創元ライブラリ L ト 1-1)、東京創元社、1999
原著は Tvetan Todorov, Introduction à la littérature fantastique, 1970
 訳は1975年刊の『幻想文学 - 構造と機能』の改訳
文学のジャンル/幻想の定義/怪奇と驚異/詩と寓意/幻想のディスクール/幻想のテーマ群・序論/「私」のテーマ群/「あなた」のテーマ群/幻想のテーマ・結論/文学と幻想など、
284ページ。


 こちらでも触れました:「〈怪奇〉と〈ホラー〉など、若干の用語について」の頁

リン・カーター、中村融訳、『ファンタジーの歴史 - 空想世界』、東京創元社、2004
原著は Lin Carter, Imaginary Worlds. The Art of Fantasy, 1973
序文 想像力の帝国/ウルクからアターボルへ - ウィリアム・モリスと最初のファンタジー小説/世界の縁、そしてそのかなた - ダンセイニ、エディスン、キャベルの作品/失われた都、忘れられた時代 - アメリカのパルプ雑誌におけるファンタジーの勃興/魔法の数学 - 〈アンノウン〉における空想世界ファンタジー/『ナイトランド』からナルニアへ - 『指輪物語』への道/インクの子らが古典を生み出す - トールキンの業績とその影響/ハワード後の英雄譚 - アメリカ剣士と魔術師ギルド(有)/若き魔術師たち - 現代ファンタジーの巨匠たち/世界創造について - 創作された環境に関する諸問題/地元の風習と名前 - 新造名についてのいくつかの考察/商売の秘訣 - 世界創造の中級テクニックなど、
352ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「近代など Ⅴ」の頁の「リン・カーター」の欄


小谷真理、『ファンタジーの冒険』(ちくま新書 174)、筑摩書房、1998
序章 ファンタジーへの誘い/妖精戦争/パルプとインクの物語/ファンタジーのニューウェーブ/魔女と女神とファンタジー/ハイテク革命とファンタジー/J・ファンタジーの現在形など、
222ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「怪奇城の外濠」の頁の「v. ゴシック・ロマンス、その他


井辻朱美、『ファンタジー万華鏡(カレイドスコープ)』、研究社、2005
はじめに//
二つのネオ・ファンタジー;平面性の女王 - ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/身体性の転換 - 『ハリー・ポッター』//
タイム・ファンタジーとしての『指輪物語』;タイム・ファンタジーの流れ/『指輪物語』における生活と物語/『指輪物語』の中の時間//
フィギュアの物語 - 身体と魂//
博物学の夢想;ファンタジーは地底をめざす/ドードー鳥の座標//
ハイ・ファンタジーの企み;召命と次元上昇 - 『十二国記』というファンタジーの仕掛け/リセット・ファンタジー//
おわりに 善悪なき時代のファンタジーなど、
244ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「近代など Ⅵ」の頁の「井辻朱美」の項

笠井潔、『物語のウロボロス 日本幻想作家論』(ちくま学芸文庫 カ 4-3)、筑摩書房、1999
1988年刊本の文庫化
序章 物語あるいは自壊する形式 大江健三郎論/観念と循環する意識 夢野久作論/顕現する象徴とその消滅 久生十蘭論/密室という外部装置 江戸川乱歩論/物語の迷宮・迷宮の物語 小栗虫太郎論/完全犯罪としての作品 中井英夫論/伝奇と壊れた物語 国枝史郎論/欲望と不可視の権力 半村良論/世紀末都市と超越感覚 稲垣足穂論/都市感覚という隠蔽 村上春樹論//
あとがき/文庫版あとがき/解説(田中博)など、
352ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:本項上掲のSFの欄

…………………

H.P.ラヴクラフト、「文学における超自然の恐怖」(1926/1936)、『文学における超自然の恐怖』、2009、pp.5-136
序/恐怖譚の夜明け/初期のゴティック長編小説/ゴティック・ロマンスの極致/ゴティック小説の余波/大陸における幽霊小説/エドガー・アラン・ポウ/アメリカにおける怪異の伝統/イギリス諸島における怪異の伝統/現代の巨匠

 こちら(本頁下掲「おまけ」)や、そちら(「〈怪奇〉と〈ホラー〉など、若干の用語について」の頁)でも触れました

風間賢二、『ホラー小説大全 ドラキュラからキングまで』(角川選書 285)、角川書店、1997
西欧ホラー小説小史;18世紀 - ゴシック小説とは何か/19世紀 - ゴースト・ストーリーと科学/20世紀 - モダンホラーからポストモダン・ホラーへ//
近代が生んだ三大モンスター;フランケンシュタインの怪物/吸血鬼ドラキュラ/狼男//
究極のモダンホラー・ベスト100;テーマ別ベスト長編/アンソロジーと個人短編集別ベスト中短篇など、
276ページ。


荒俣宏、『ホラー小説講義』、角川書店、1999
西洋のホラー;恐怖とは何か/近代のホラー小説/心にしのび寄る恐怖について/付記 アメリカン・モダン・ホラー//
東洋のホラー;オリエンタル・ホラーの起源/日本を覆う恐怖の影/おわりに-宮沢賢治を読む試み//
付録 本書に使用した図版の原典/あとがきにかえて~怖れを知らぬ日本人(荒俣宏・大月隆寛)など、
284ページ。


 こちらでも触れました:「〈怪奇〉と〈ホラー〉など、若干の用語について」の頁

尾之上浩司編、『ホラー・ガイドブック』(角川ホラー文庫 H 93-1)、角川書店、2003
ホラー・ガイド日本編/ホラー・ガイド海外編など、
448ページ。

…………………

ジャック・サリヴァン編、高山宏・風間賢二日本版監修、『幻想文学大事典』、国書刊行会、1999
原著は Edited by Jack Sullivan, The Penguin Encyclopedia of Horror and the Supernatural, 1986
日本版への序(高山宏)/編者まえがき(ジャック・サリヴァン)/序 幽霊のいるアート、その魅惑(ジャック・バーザン)//
幻想文学大事典(50音順)//
付録 1986年以降:モダンホラーの新展開(風間賢二)など、
784ページ。


アルベルト・マングェル&ジアンニ・グアダルーピ、『完訳 世界文学にみる 架空地名大事典』、2002

「近代・現代ヨーロッパの神話」、『世界神話大事典』、2001、pp.868-892
デカダンスと象徴主義 文学と神話;言葉の魔力/神話の再生/デカダンスの神話/自然の基本要素への回帰(ピエール・ブリュネル)//
詩と神話 神話に対する近代化の挑戦 ヘルダーリン、ボードレール、マラルメ、T.S.エリオット、リルケ(ジョン・E・ジャックソン)/詩と神話的思考 ヘルダーリンのディオニュソス解釈(ベルナール・ベシェンシュタイン)/イギリス文学(20世紀の詩)と神話(マイケル・エドワーズ)/ギリシアの近代文学 甦る古代の神話(ルネ・リシェ)//
現代文学とサイエンス・フィクション トールキン、ラヴクラフト 想像力と神話;J.R.R.トールキンと『ホビットの冒険』/H.P.ラヴクラフト/サイエンス・フィクションにおける神話について(フランソワ・フラオ)//
神話と政治理論 ナショナリズムと社会主義(ジャン・モリノ)


東雅夫・石堂藍編、『日本幻想作家事典』、国書刊行会、2009
日本幻想作家事典;あいうえお順//
附録1 怪奇幻想漫画家事典;あいうえお順//
附録2 怪奇幻想映像小史など、
1056ページ。

xviii. 個々の著述家など-海外 Ⅰ(20世紀前半等)

パウル・シェーアバルト(1863-1915)とブルーノ・タウト(1880-1938) 
アルジャーノン・ブラックウッド(1869-1951) 
セオドア・ドライサー(1871-1945) 
ルゴーネス(1874-1938) 
ウィリアム・ホープ・ホジスン(1875-1918) 
ロード・ダンセイニ(1878-1957) 
デヴィッド・リンゼイ(1878-1945) 
オラフ・ステープルドン(1886-1950) 
J・R・R・トールキン(1892-1973) 
C.S.ルイス(1898-196) 
ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986) 
ルネ・ドーマル(1908-1944) 

 パウル・シェーアバルト(1863-1915)ブルーノ・タウト(1880-1938);

シェーアバルト、種村季弘訳、『小遊星物語』(世界異端の文学 2)、桃源社、1966
原著は Paul Scheerbart, Lesabéndio. Ein Asteroïden-Roman, 1913
308ページ。

 改訳の上、「宇宙の輝き-太陽のメルヘン」、「平凡社ライブラリー版 訳者あとがき」、「解説-言葉の永久機関」(高山宏)と合わせて平凡社ライブラリーから再刊(1995)。

パウル・シェーアバルト、福岡和也訳、『星界小品集』、工作舎、1986
原著は Paul Scheerbart, Astrale Novelletten, 1912
宇宙劇場/あたらしい大地/舵手マルブ/大きな木/ツァックとヂヂと巨大なあたま/キーエンバイン教授の冒険/隠遁者/友好的社会/硝子球/満ちたりた人々/あたらしい穴4/大胆な人々//
S氏とF氏の話 訳者あとがきなど、
244ページ。


パウル・シェーアバルト、種村季弘訳、『永久機関 附・ガラス建築-シェーアバルトの世界』、作品社、1994
原著は Paul Scheerbart, Das perpetuum Mobile, 1910
序言/永久機関 ある発明物語/フローラ・モール ガラス花の小説/シェーアバルティアーナ/ガラス建築(1914)など、
308ページ。

 ガラス建築等に関して→こちらからも指示しておきます:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「v. 建築など


パウル・シェーアバルト、鈴木芳子訳、スズキコージ絵、『虫けらの群霊』、未知谷、2011
原著は Paul Scheerbart, Der wilde Jagd, 1900
神々/タマゴ/歓喜/大芝居/嘆き/神殿/疾走/勝利//
解説・あとがきなど、
160ページ。

『夜極 跳んで瞬く、その先の』(別冊・眼鏡同人 海外編 シェーアバルト『小遊星物語』FANBOOK)、蝸牛のささやき、2009
58ページ。

 発行者について→こちらを参照:本頁下掲の「小栗虫太郎」の項


ブルーノ・タウト、杉本俊多訳、『都市の冠』、中央公論美術出版、2011
原著は Bruno Taut, Die Stadtkrone, 1919
新しい生 - 建築の黙示録(パウル・シェーアバルト)//
40例 - 歴史的な都市の冠//都市の冠;建築/古都/混沌/新都市/頭なき胴体/旗を与えよ/都市の冠/都市の冠の経済的側面/都市の冠に向けた新しい試み-あとがき//
再構築(エーリッヒ・バロン)/建築芸術の再生(アドルフ・ベーネ)/生命なき宮殿 - ある建築家の夢(パウル・シェーアバルト)など、
174ページ。


 あわせて;

ウルリヒ・コンラーツ、ハンス・G・シュペルリヒ、藤森健次訳、『幻想の建築 近代におけるユートピア建築とその計画』、彰国社、1966
原著は Ulrich Conrads, H. G. Sperlich, Phantastische Architektur, 1965
序文//発見された対象/極度の触感に向かって/幻想的な骨組/透明の魅力/洞穴/迷路と螺旋/形式的に限定された即興作品/前もって型を定めた建築/宙に浮く建築/建築的ユートピア/未来派の都市/高さへの執念/ユートピア派/《ユートピア書簡》/現代のユートピア//
図例//ドキュメント;パウル・シェールバルト/アドルフ・ベーネ/芸術のための労働会議/《ユートピア書簡》からの抜粋/さまざまな作品と建築家//
本文および図例に関する注など、
188ページ。


 →こちらにも挙げておきます:「怪奇城の外濠 Ⅱ」の頁の「vii. 建築画、街景図、紙上建築など

『日本美の再発見者 建築家ブルーノ・タウトのすべて 生誕100年記念ヨーロッパ・日本巡回展』図録、国立国際美術館、武蔵野美術大学美術資料図書館、宮城県美術館、1984
タウトへの視線(宮島久雄)/ブルーノ・タウトとその時代(平井正)/ブルーノ・タウトの人間像(阿部公正)/色彩建築家としてのタウト(土肥美夫)/ブルーノ・タウトとジートルンク(山口廣)/ブルーノ・タウト 芸術とその家族(水原徳言)/自然と田園都市そして水晶宮 タウトは日本になにを見たか(長谷川堯)//
図版など、
144ページ。

 図版ページ p.87 に『都市の冠』(1919)、pp.88-90 に『宇宙建築師』(1920)、p.61、pp.91-93 に『都市の解体』(1920)、pp.62-63、pp.94-97 に『アルプス建築』(1920)の図版が、小さいものではありますが掲載されています。


土肥美夫、「表現主義芸術運動におけるユートピア建築思想の生成」、『美學』、no.88、1972.3.30、pp.13-25 [ < CiNii ]

土肥美夫、J.ポーゼナー、F.ボレリ、K.ハルトマン、生松敬三・土肥美夫訳、『ブルーノ・タウトと現代 - 「アルプス建築」から「桂離宮」へ - 』、岩波書店、1981
序文(土肥美夫)//
タウト再評価のために;ブルーノ・タウトと日本 - 「アルプス建築」から「桂離宮」への道 - (土肥美夫)/タウトの遺したもの(J.ポーゼナー)//
ブルーノ・タウト評伝 幻想的美学者から美的社会(理想)主義者へ(F.ボレリ、K.ハルトマン)ブルーノ・タウトとプロイセン芸術アカデミー/ブルーノ・タウト追想/さまざまな条件/「熱中し夢想する」/「希望をもつ」/戦争への批判と共和国のユートピア/「実地に働く幻想家」/ブルーノ・タウト50歳など、
226ページ。


 タウト生誕100年にあわせて西ベルリンの芸術アカデミーが主催したタウト展と連携して企画、ポーゼナー教授の寄稿は同展の開会式における講演、ボレリ、ハルトマン両教授の寄稿は同展カタログの主要論文(pp.v-vi)。それぞれ原著は;

Julius Posener, "Bruno Taut. Vortrag zur Eröffnung der Ausstellung in der Berliner Akademie der Künste am 29. Juni, 1980", Bauwelt, 71, Juli 1980

Franziska Bollerey & Kristiana Hartmann, "Bruno Taut. Vom phantastischen Ästheten zum ästhetischen Sozial (ideal) isten", Bruno Taut 1880-1938, Akademie der Künste, Berlin (west), 1980


土肥美夫、『タウト 芸術の旅 アルプス建築への道』(旅とトポスの精神史)、岩波書店、1986
序章/世紀末を越えて/新しい建築芸術の翼のもとに/共同体の大ジードルンクへ向けて/故国ドイツを離れて//
『アルプス建築』(全訳)など、
320ページ。


 巻末の『アルプス建築』は全訳、全30図、モノクロで、28ページ当てられています。

W.ペーント、長谷川章訳、『表現主義の建築』(上下)(SD選書 205/206)、鹿島出版会、1988
原著は Wolfgang Pehnt, Die Architektur des Expressionismus, 1973
 緒論 5000人劇場//
  背景;政治と社会/精神史と文学/芸術と建築//
  発展;1910年頃/ブルーノ・タウト/幻想建築家など、
222ページ。

下 発展(つづき);初期バウハウス/エーリヒ・メンデルゾーン/北ドイツ表現主義/ルドルフ・シュタイナーの建築//
  使命を受けた建築;新しい教会建築/住宅および摩天楼/建築家と映画//
  同時代の思潮とその推移;未来派/アムステルダム派/表現主義とノイエスバオエン/表現主義とナチスの建築など、
218ページ。


杉本俊多・赤木良子、「ブルーノ・タウト著『都市の冠』に見る表現主義的都市像生成の構図と建築思想法」、『日本建築学会計画系論文集』、76巻 668号、2011.10、pp.1995-2001 [ < J-STAGE ]

赤木良子・杉本俊多、「『宇宙建築師』に見るブルーノ・タウトのユートピア的建築形態の生成方法」、『日本建築学会計画系論文集』、77巻 672号、2012.2、pp.469-474 [ < 同上 ]

赤木良子・杉本俊多、「『アルプス建築』第5章「星の建築」に見られるブルーノ・タウトのユートピア的アイデアと形態群の生成方法」、『日本建築学会計画系論文集』、77巻 677号、2012.7、pp.1779-1784 [ < 同上 ]

赤木良子・杉本俊多、「『アルプス建築』第3章に見られるブルーノ・タウトのユートピア的風景のデザイン方法」、『日本建築学会計画系論文集』、77巻 679号、2012.9、pp.2225-2230 [ < 同上 ]

赤木良子・杉本俊多、「ブルーノ・タウト著『都市の解体』に見られる分散的都市像における有機的形態モデルに関する研究」、『日本建築学会計画系論文集』、79巻 695号、2014.1、pp.253-259 [ < 同上 ]
…………………

 アルジャーノン・ブラックウッド(1869-1951);

 ブラックウッドも短篇集が各種訳されていますが
( →こちらも参照:本頁の「おまけ」/紀田順一郎訳、『ブラックウッド傑作選』(1978)より「ウェンディゴ」)、


ブラックウッド、南條竹則訳、『人間和声』(光文社古典新訳文庫 K Aフ 9-2)、光文社、2013
原著は Algernon Henry Blackwood, The Human Chord, 1910
380ページ。

 音について;

「すべての音が…(中略)…それ自身の模様をつくる」(p.78/第2章)、
「形態と物体は - 凝固した〝音〟なんだ」(p.79/同上)、
「宇宙はその最小の細部に至るまで、一瞬の途切れもなく歌っているのだ」(p.244/第10章)

と、また名前や言葉について;

「何となれば我々の真の名前は、神が我々を創造した時、あるいは無限の沈黙の虚空から我々を〝呼び出して〟存在せしめた時に、〝彼〟の〝言葉〟が初めて発した音だからだ」(p.119/第3章)、
「言葉は〝存在〟の
(とばり)である」(p.120/同上)

等々と述べられます。また

「あたかも神の言葉によって客観的存在に呼び込まれる前の宇宙が、押し黙り、不可視の状態にあったように」(p.250/第10章)

とのくだりもありました。
光輝の書(バヒール)』の名が挙げられ(p.92/第2章)、
「古いユダヤの神秘説にある〝十の言葉〟」(p.123/第3章)と記されたりもします。
 なので、→こちらにも挙げておきましょう;「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ

 ちなみに
「最近ロンドンで見て感銘を受けたブレイクの素描の幾枚か」(p.198/第8章)
に言及されたりもしました。

アルジャナン・ブラックウッド、八十島薫訳、『ケンタウロス』(妖精文庫 5)、月刊ペン社、1976
原著は Algernon Henry Blackwood, The Centaur, 1911
412ページ。

 この物語の前提となっているのは、主人公オマリー

「の脳裏をフェヒナーの思い出が
横切(よぎ)った。宇宙はあまねく意識をもった生命体であり、地球そのものもまた生きた実在を備えたひとつの体である、地球の魂とか宇宙意識と呼ばれるものは、単に古代人の夢幻的な夢などではないと主張したドイツの哲学者……」(p.85/第10章)

という箇所にすぐ続いて、オマリーのアルテル・エゴと見なされよう、船医シュタール博士が語る、

「地球という生命体も過去においてそれ自身の一部分を投射させたことがあったかも知れない。…(中略)…地球の意識がさまざまの形や様式で表明されていた気の遠くなるほど大昔の7生き残り」(pp.85-86/同上)

というイメージです。オマリーも

「それじゃ、われわれは文字どおり地球の一部分なのか - いわば地球の宏大な生命の投射なのか - 少なくともその投射のひとつであるわけなのか?」(p.144/第16章)

「神々も地球の人格の放射なのか - 地球の分割された自我の様々の(アスペクト)なのか - 今では引っ込められてしまった放射なのか?」(p.154/第17章)

などの感慨を抱きます。
 とりわけ第16~17章でシュタール博士が開陳する議論は、

「ウィリアム・ジェイムズのマンチェスター・カレッジにおけるいわゆる〝ヒバート講義〟」(p.130/第14章)

すなわち『多元的宇宙』(1909)によるものであることが明記されています。連続講義の第4講は「フェヒナーについて」と題されていました。邦訳でも*印を附された引用箇所を吉田夏彦訳『W・ジェイムズ著作集 6』(1961/2014)と照合しておくと;

『ケンタウロス』第16章 『多元的宇宙』第4講 
p.137, 7-11行   p.114, 3-8行  
同、12ーp.138, 2行  同、10-p.115, 4行 
p.139, 10-11行  p.117, 13-14行 
同、11-13行  p.126, 15-16行 
p.140, 4-5行  p.118, 4-6行 
同、15-19行  p.130, 11-15行 
p.142, 4-5行  p.121, 14-15行 
同、8-11行 p.125, 6-10行 
p.143, 13-p.144, 1行  p.121, 17-p.122, 8行 
p.144, 6-8行  p.122, 9-11行 
同、12-13行  同、11-12行
 
『ケンタウロス』第17章 『多元的宇宙』第4講 
p.149, 7-p.150, 9行   p.120, 4-p.121, 11行  
p.150, 17-p.151, 7行  p。124,10-p.125, 5行 
p.151, 9-14行  p.123, 7-12行 
同、14-p.152, 2行  p.125, 12-17行 
p.152, 6-15行  p.126, 2-12行 

 これ以外に、『ケンタウロス』全46章のうち25章にエピグラフが附されているのですが、
第1章(p.7)には『多元的宇宙』の第8講からの一節(p.234, 16-p.235, 1行)
 および第1講からの一節(p.17, 2-5行)、
第8章(p.7.0)には同じく第7講(p.228, 9-14行)から
引用されていました。
 さらに、第11章(p.93)および第13章(p.108)では、『多元的宇宙』第4講、p.129 の註で触れられていたフェヒナー『死後の生活についての小冊子』の二種の英訳のいずれかから引かれています。
 グスタフ・フェヒナー、服部千佳子訳、『フェヒナー博士の死後の世界は実在します』、成甲書房、2008
ではp.140(第10章、注1の1-4行)および pp.130, 7-p.131, 7行にあたります。
 この他ベルクソン(第4章、p..44)やハーバート・スペンサー『第一原理』(第9章、p.77)などなどいろいろ出てきますが、とりあえず
 今泉文子訳、『ノヴァーリス作品集1』(ちくま文庫 の8-1)、筑摩書房、2006
  同、 『ノヴァーリス作品集3』(ちくま文庫 の8-3)、筑摩書房、2007
でそれらしきものを見つけることのできたノヴァーリスのみ記しておくと;

第5章(p.44)   『花粉』、断章101  『作品集1』、p.140 
第6章(p.53)  「一般草稿 - 百科全書学のための資料集」(1798-99年)、[929] 『作品集3』,pp.280-281 
    同、[340]  同上、p.214 
第20章(p.172)  『サイスの弟子たち』、2章 『作品集1』、p.56 
   同   同上、p.57+p.58 
第28章(p.246)  「断章と研究 1798年」、[408]   同上、pp.318-319 
第34章(p.293)  『サイスの弟子たち』、2章  同上、p.72 

 なお、「ベックリンの描いた『ケンタウロス』」(p.225/第25章)が言及されます。
 ちなみに
「かれにいまだ付き(まと)って離れない外界の唯一の事柄は、逃げ去ってゆく農夫の(イメジ)だった」(p.275/第30章)
とういくだりは、アングルの《オイディプスとスフィンクス》(1808-25→こちら)における背景の人物を連想させなくもないかもしれません(→そちらも参照:『ギュスターヴ・モロー研究序説』[11]の頁の「3.セメレー、撃たれし者」)。


アルジャーノン・ブラックウッド、南條竹則訳、「野火」、『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』(光文社古典新訳文庫 K Aフ 9-1)、光文社、2012、pp.271-287
原著は Algernon Henry Blackwood, "The Heath Fire", 1912

「今年の異常な太陽の熱が--あちらこちらで--ことに熱を上手に保つ、ここいらの剥きだしのヒースの野で--地中深くへ到達して、もう一つの同じような表現に出会って--地球の中心にある炎から--共鳴反応を呼び起こしたんだと」(pp.277-278)

いうさまが物語られます。また;

「影を喰う蛇が石と化したような針金雀枝やヒースの根でさえ、かれらがそこから上って来た永遠の地底界の神秘をまとって、眠りの夜が戻るのを待っていた」(p.283)。 

アルジャナン・ブラックウッド、高橋邦彦訳、『妖精郷の囚れ人』(上下)(妖精文庫 32-33)、月刊ペン社、1983
原著は Algernon Henry Blackwood, A Prisoner in Fairyland, 1913
上巻:208ページ、下巻:192ページ。

 〈星でできた網〉(上巻 p.20/第2章など)、〈スターライト急行(エクスプレスト)〉(上巻 p.21/第2章など)、〈星のほら穴〉(上巻 p.38/第4章など)といったイメージが重要な役割を果たします。挟みこみの月報であろう『新・妖精画廊 7』の見開き下段には、
「ブラックウッドの『銀河鉄道の夜』とでも呼びたくなるような郷愁を誘う一作です」
とありましたが、また、稲垣足穂の「一千一秒物語」などの諸作や、何より坂田靖子の「星食い」が連想されはしないでしょうか。

「宇宙でまず存在した物質が、この星の成分で - 星雲だ。ほかにはりつくものがないから星の成分がくっつきあって、それで濃くなった。それが渦巻状に旋回した。それは共感して、一緒に大きくなった。というのは、思いやりによって結びつくのだから。それは旋回し、自転し、ついに濃い球体 - 天体 - 星になったんだよ。つまり、ただの夢が行為に変わったんだ。そして光線が君に浸透すると、その光線のために、君たちが夢みていることは行為に変わる」(上巻 pp.136-137/第13章)

という宇宙開闢論を語るくだりもありました。他方、

「古代エジプトの伝説…(中略)…それはトートが七度大笑し、世界を創造したというものです」(上巻 p.147/第15章)

の典拠は何なのでしょうか?
 

 ブラックウッドについて→そちら(『襲い狂う呪い』(1965)の頁の「Cf.」/中西秀男訳、『ブラックウッド怪談集』(1978)より「ドナウ河のヤナギ原」)、また→あちら(「エジプト」の頁の「おまけ」/紀田順一郎・桂千穂訳、『妖怪博士ジョン・サイレンス』(1976/1994)より「炎魔」)、→ここ(「近代など(20世紀~) Ⅱ」の頁の「vi. 次元など」/同、「四次元空間の囚」)、→そこ(『黒猫』(1934)の頁の「おまけ」/同など、「いにしえの魔術」)も参照
…………………

 セオドア・ドライサー(1871-1945)

村山淳彦、「末期の宇宙論作家」、『エドガー・アラン・ポーの復讐』、2014、pp.219-239

 「ドライサーも晩年は独自の宇宙論を仕上げようと苦闘したが、ついにまとめきれないまま亡くなった。…(中略)…しかし、膨大な遺稿が残っており、これが後年に他人の手により編集されて、『生についての覚え書き』という本として出版された。
 『生についての覚え書き』は、ドライサーが宇宙論構築の企ての果てに遺した残骸の抜粋にとどまるけれども、生前に発表したいくつかの著述からは、この企ての目ざしていた方向がもう少し鮮明に浮かび上がる。その種のテクストとしてまず、ふつうは哲学的エッセー集と理解されている奇書『ヘイ、ラバダブダブ』所収の、ほとんど上演不可能なレーゼドラマ三本のなかから、とりわけ『夢』と『走馬燈』をあげたい」(pp.219-220)。

 上の戯曲は1910年代に執筆されたとのこと(p.224)。
 またチャールズ・フォートとの関係についても記されています(pp.222-224)。
 次いで晩年の『生についての覚え書き』に関わるものとして、1934年に発表された「汝、幻影」と「個性という神話」がとりあげられます(pp.225-229)。
 マーク・トウェインの未完の遺作『不思議な少年第44号』の結末との類似が指摘された後(p.229)、ポーの『ユリイカ』の話に移るのでした。
 取りあげられたドライサーのテクストは、いずれも邦訳されていないようです。

 また文中で言及されているのが(p.225);

村山淳彦、「ドライサーの一九三〇年代」、『一橋大学研究年報. 人文科学研究』、no.26、1987.5.20、pp.53-122 [ < 一橋大学機関リポジトリ HERMES-IR

 この内「九、『人間という名のメカニズム』」の後半(pp.102-105)に上記内容と関連する記述があります。
…………………

 レオポルド・ルゴーネス(1874-1938);

レオポルド・ルゴーネス、大西亮訳、『アラバスターの壺 女王の瞳 ルゴーネス幻想短篇集』(光文社古典新訳文庫 K Aル 3-1)、光文社、2020

 訳者による「解説」の中で、

「では、ルゴーネスが信奉していたアナロジーの法則もしくはコレスポンダンスの原理にもとづく世界観の一端を覗いてみることにしよう。そのための格好の材料を提供してくれるのが、『宇宙生成をめぐる一〇の試論』と題された論考である。『奇妙な力』の最後を締めくくるこのエッセーは、宇宙の起源とその生成の過程をテーマとした作品である。残念ながら本書に収録することはできなかったが、ルゴーネスの作品に通底する秘教的な世界観をうかがい知るための重要な手がかりを与えてくれる」(p.300)

とあり、内容が紹介されていました(pp.300-302)。また

「ボルヘスも示唆しているように、ルゴーネスの構築した宇宙生成論の背後には、ポーの『ユリイカ』の影響がほの見える。しかし、それよりも重要なのは、そこに神智学の影響が認められる点であろう」(p.302)。

 『奇妙な力』(1906)は「幻想的な物語を集めた短篇集」(pp.321-322、また p.287)で、原著は
Leopoldo Lugones, Las fuerzas extrañas, 1906
「宇宙生成をめぐる一〇の詩論」は "Ensayo de una cosmogonia en diez lecciones"
Wikisource に原文が収掲載されています(→こちら)。目次だけ拾っておくと;
宇宙生成をめぐる一〇の試論  Ensayo de una cosmogonia en diez lecciones  201
  緒言  Proemio   203
Ⅰ  宇宙の起源  El origen del universo  206 
Ⅱ  形相の起源  El origen de la forma  212 
Ⅲ  空間と時間  El espacio y el tiempo  216 
Ⅳ  諸原子 Los átomos  220 
Ⅴ  科学を前にした私たちの理論  Nuestra teoria ante la ciencia 228 
Ⅵ  物質の生命  La vida de la materia  237 
Ⅶ  大地の諸元素  Los elementos terrestres  243 
Ⅷ  有機的な生命  La vida orgánica  247 
Ⅸ  宇宙における知性  La inteligencia en el universo 253 
人間  El hombre  265 
  結語  Epílogo  275-278

 上に挙げた邦訳短篇集の目次は;

ヒキガエル/カバラの実践/イパリア/不可解な現象/チョウが?/デフィニティーボ/アラバスターの壺/女王の瞳/死んだ男/黒い鏡/供犠の宝石/円の発見/
小さな魂(アルミータ)/ウィオラ・アケロンティア/ルイサ・フラスカティ/オメガ波/死の概念/ヌラルカマル//
解説/年譜/訳者あとがきなど、
336ページ。


 この内
 「アラバスターの壺」と「女王の瞳」は→そちら:「エジプト」の頁の「おまけ」、
 再び「女王の瞳」と「黒い鏡」は→あちら:「マネ作《フォリー・ベルジェールのバー》と絵の中の鏡」の頁の「おまけ」に、
 「カバラの実践」は→ここ:「ユダヤ Ⅲ」の頁の「おまけ
でも挙げました

…………………

 ウィリアム・ホープ・ホジスン(1875-1918);

ウィリアム・ホープ・ホジスン、団精二訳、『異次元を覗く家』(ハヤカワ文庫 SF58)、早川書房、1972
原著は William Hope Hodgson, The House of the Borderland, 1908
256ページ。

ウィリアム・ホープ・ホジスン、荒俣宏訳、『ナイトランド』(上下)(妖精文庫 15/16)、月刊ペン社、1975
原著は William Hope Hodgson, The Night Land, 1912
上巻220ページ、下巻224ページ。
…………………

 ロード・ダンセイニ(1878-1957);

 ダンセイニの作品もけっこう訳されていますが、ここではとりあえず、

ロード・ダンセイニ、荒俣宏訳、『ペガーナの神々』(ハヤカワ文庫 FT5)、早川書房、1979
原著は Lord Dunsany, The Gods of Pegāna, 1905 / Time & the Gods, 1906

 『ペガーナの神々』(1905)と『時と神々』(1906)を所収、
 214ページ。
 別訳が;


ロード・ダンセイニ、中野善夫・中村融・安野玲・吉村満美子訳、『時と神々の物語』(河出文庫 タ 1-3)、河出書房新社、2005

 『ペガーナの神々』、『時と神々』とともに『三半球物語』(1919)、単行本未収録だった短篇11篇を収録、
 568ページ。


 →こちらにも挙げておきます:「通史、事典など」の頁の「夢など」の項

H.P.ラヴクラフト、「ダンセイニ卿とその著作」、『文学における超自然の恐怖』、2009、pp.137-154
原著は H. P. Lovecraft, "Lord Dunsany and His Work", 1922
…………………

 デヴィッド・リンゼイ(1878-1945);

D.リンゼイ、荒俣宏訳、『アルクトゥルスへの旅』(上下)(世界幻想文学大系 28A/B)、国書刊行会、1980
原著は David Lindsay, A Voyage to Arcturus, 1920
上巻268ページ、下巻284ページ。
…………………

 オラフ・ステープルドン(1886-1950);

オラフ・ステープルドン、浜口稔訳、『スターメイカー』(クラテール叢書 14)、国書刊行会、1990
原著は William Olaf Stapledon, Star Maker, 1935
序/地球/星間を翔ける/〈別地球〉/ふたたび宇宙へ/無数の世界/スターメイカーの予兆/さらに多くの世界/探索者たち/諸世界のコミュニティ/銀河のヴィジョン/星々と諸世界精神体/成長をやめた宇宙精神/はじまりと終わり/創造の神話/造物主と諸被造界/エピローグ - ふたたび地球へ//
星の夢、客体の鏡 - 20世紀の宇宙ヴィジョン(久保将壽)/訳者あとがき - ステープルドンの宇宙幻想 -など、
392ページ。

 ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『パラレルワールド』、2006、p.206
 でも引きあいに出されていました。
 →こちらでも触れています:「近代など(20世紀) Ⅲ」の頁の「メイヤスー」の項

 同じ訳者による→そちらを参照:ノウルソン、『英仏普遍言語計画』、1993/「言葉、文字、記憶術/結合術、書物「(天の書)など」の頁の「人工言語、言語起源論など」の項

オラフ・ステープルドン、浜口稔訳、『最後にして最初の人類』、国書刊行会、2004
原著は William Olaf Stapledon, Last and First Men, 1930
序-最後の人類のひとりより//年代記;分裂したヨーロッパ/ヨーロッパの没落/アメリカと中国/アメリカと化した惑星/〈第1期人類〉の凋落/過渡期/〈第2期人類〉の興隆/火星人/地球と火星/荒野の〈第3期人類〉/人間の自己改造/最後の地球人/金星の人類/海王星/〈最後の人類〉/人間の最後など、
398ページ。


浜口稔、「オラフ・ステープルドン著『火炎人類 - ある幻想』、試訳と解題(1)」、『明治大学教養論集』、no.436、2008.9、pp.21-67 [ < 明治大学学術成果リポジトリ
URI : http://hdl.handle.net/10291/7113

 同、  「オラフ・ステープルドン著『火炎人類 - ある幻想』、試訳と解題(2)」、『明治大学教養論集』、no.443、2009.1、pp.1-49 [ < 同上
URI : http://hdl.handle.net/10291/71
『火炎人類-ある幻想』の原著は William Olaf Stapledon, The Flames. A Fantasy, 1947

浜口稔、「ステープルドンと共棲概念の宇宙地理学的諸様相」、『明治大学教養論集』、no.538、2019.3.31、pp.99-115 [ < 同上
URI : http://hdl.handle.net/10291/20511
…………………

 ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン(1892-1973);

 『ホビット ゆきてかえりし物語』(『ホビットの冒険』)(1937/1951/1966)や『指輪物語』(1954-55)で描きだされた世界の開闢と初期の歴史を綴ったもので、刊行は歿後ですが、かなり早い時期から書き続けられたということで、

J.R.R.トールキン、田中明子訳、『新版 シルマリルの物語』、評論社、2003
原著は J.R.R.Tolkien, edited by Christopher Tolkien, The Silmarillion, 1977
 邦訳は1982年刊本の改訂版
「新版刊行に当たって//
初版序文/第2版序文 1951年、ミルトン・ウォルドマン宛、J.R.R.トールキンの手紙より//
アイヌリンダレ;アイヌアの音楽//
ヴァラクウェンタ;ヴァラールとマイアールのこと - エルダールの伝承による//
クウェンタ・シルマリルリオン - シルマリルの物語;世の初まりのこと/アウレとヤヴァンナのこと/エルフたちの到来と虜囚となったメルコールのこと/シンゴルとメリアンのこと/エルダマールとエルダリエの公子たちのこと/フェアノールと鎖から解き放たれたメルコールのこと/シルマリルとノルドール不穏のこと/ヴァリノールに暗闇の訪れたこと/ノルドール族の逃亡のこと/シンダールのこと/太陽と月とヴァリノール隠しのこと/人間のこと/ノルドール族の中つ国帰還のこと/ベレリアンドとその国土のこと/ベレリアンドのノルドール族のこと/マイグリンのこと/西方に人間の来住せること/ベレリアンドの滅亡とフィンゴルフィンの死のこと/ベレンとルーシエンのこと/第5の合戦、ニアナイス・アルノイディアドのこと/トゥーリン・トゥランバールのこと/ドリアスの滅亡のことトゥオルとゴンドリンの陥落のこと/エアレンディルの航海と怒りの戦いのこと//
アカルラベース;ヌーメノールの没落//
力の指輪と第3紀のこと//
「新版」訳者あとがき//
系図/発音上の諸注意/クウェンヤ語及びシンダール語の固有名詞を構成する主要部分/語句解説及び索引など、
590ページ。


J.R.R.トーキン、猪熊葉子訳、『ファンタジーの世界 - 妖精物語について』、福音館書店、1973
原著は J.R.R.Tolkien, "On Fairy Stories", Tree and Leaf, 1964
 1938年の講演に基づき、1947年『チャールズ・ウィリアムズ記念論文集』に収録されたものの再刊
序/妖精物語とは何か/起源/子どもたち/
空想(ファンタジー)/回復、逃避、慰め/結びなど、
184ページ。


 邦訳は再刊された模様(未見)

秋山さと子、「『指輪物語』の現代的意義」、『ユリイカ』、第11巻第10号、1979.8、「特集=妖精物語 ファンタジーの深層へ」、pp.56-63

W.H.オーデン、中矢一義訳、「探求物語としての『指輪物語』」、同上、pp.64-80
原著は W.H.Auden, "The Quest Hero", Tolkien and the Critics, 1968
概説;探偵小説/冒険物語/白鯨/カフカの小説//
背景//探求のヒーロー//善と悪との争い//勝利の報い


赤井敏夫、『トールキン神話の世界』、人文書院、1994
序論 トールキン批評の変遷//
方法論;『樹と木の葉』における〈準創造〉の概念/作品成立史から見た準創造の作用//
神話学;『シルマリリオン』の書誌学/『シルマリリオン』のシンボリズム 神統譜と創世神話、神話から英雄叙事詩へ、『シルマリリオン』における終末観の欠如//
解釈学;中期以降の作品に見る〈不死性〉の問題/指輪と物語/ゴルムの変貌 - 『ホビット』第2版改訂に関して/サムワイズ親方の知ったこと/指輪三部作におけるラグナロク的英雄像など、
238ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「ユダヤ Ⅲ」の頁の「xvi. キリスト教カバラー、隠秘学的模作など

「Ⅰ. J.R.R.トールキンと『ホビットの冒険』」 < 「現代文学とサイエンス・フィクション トールキン、ラヴクラフト 想像力と神話」(フランソワ・フラオ) < 「近代・現代ヨーロッパの神話」、『世界神話大事典』、2001、pp.888-889

リン・カーター、中村融訳、『ファンタジーの歴史 - 空想世界』、2004、pp.135-160:「6 インクの子らが古典を生み出す - トールキンの業績とその影響」

 カーターはトールキンについて次のモノグラフィーを上梓しているのですが、上の本ではけっこう批判的です。

リン・カーター、荒俣宏訳、/『ロード・オブ・ザ・リング ― 「指輪物語」完全読本』 (角川文庫 カ 10-1)、角川書店、2002
原著は Lin Carter, Tolkien. A Look behind the Lord of the Rings, 1969
邦訳は『トールキンの世界』、1977 の改訳・改訂・加筆版
序 - 勇気を与えてくれたファンタジーの復活(訳者、2002)//
トールキン教授の生活と時代/中つ国と『ホビットの冒険』/『旅の仲間』の物語/『二つの塔』の物語/『王の帰還』の物語/トールキンの基本的なアイディアの源/名前をつけること/人、土地、もの/『指輪物語』はどのようにして書かれたか/今日のトールキン/三部作 - 諷刺か寓話か?/妖精物語に関するトールキンの理論/古典叙事詩のなかのファンタジー/
武勲の歌(シャンソン・ド・ジェスト)におけるファンタジー/中世ロマンスにおけるファンタジー/ファンタジーを創った人々/あとがき - トールキン以後//
解説(訳者)など、
286ページ。


 こちら(「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「人工言語・言語起源論など」中)も参照

 余談になりますが、ポンプ・ロックこと1980年代シンフォニック・プログレシヴ・ロックの典型の一つとして登場したマリリオン Marillion のバンド名は、もともとシルマリ(ル)リオン Silmarillion だったのを短縮したものとのことです(→英語版ウィキペディア該当ページ1. History, 1-1. The Fish Era, 1-1-1. Formation and early years (1979–1982))。
 オーストリアのマイク・オールドフィールドなどと形容されることもあった、やはり80年代プログレのミュージシャンとして登場したガンダルフ
Gandalf の芸名も、『ホビット』や『指輪物語』に登場する魔法使いの名に由来するらしい。
 さらにガンダルフのサード・アルバム
To Another Horizon, 1983 (→「怪奇城の高い所(後篇) - 塔など」の頁の「v. 鐘塔など」でも触れました)が紹介されている片山伸監修、『ユーロ・プログレッシヴ・ロック The DIG Presents Disc Guide Series #018』、シンコーミュージック、2004、p.47 のすぐ下の欄には、こちらはスペインのグループということで、Galadriel の1枚目 Muttered Promises From An Ageless Pond, 1988 が挙がっていました(引用先では 1991 となっています。同じくバンド名のスペル3字目が r になっていますが、実際は l )。
 ちなみにスロヴァキアに同じ名のグループがあるそうです。未聴ですがこちらはへヴィー・メタルで、メロディック・ゴシック/ドゥーム系とのこと。みんな大好きということでしょうか。
 ガラドリエルといえば;

Barclay James Harvest, Once Again, 1971(邦題:バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト、『ワンス・アゲイン』) *

 2枚目の4曲目が
"Galadriel"(「ギャラドリール」)、3分15秒。この曲は

Barclay James Harvest, Live, 1974 **

 2枚組のC面1曲目で演奏されています、3分9秒。
 * 『マーキー別冊 ブリティッシュ・ロック集成』、マーキームーン社、1990、p.140。
 深見淳・松崎正秀監修、『UKプログレッシヴ・ロック メインストリーム・エディション~The Golden Era』(THE DIG presents Disc Guide Series #017)、シンコーミュージック、2004、p.10。 **: p.11。
 岩本晃一郎監修、『ブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック100』(Masterpiece Albums vol.2)、日興企画、2012、p.68。 **: p.67。

 加えて、カタルーニャのプログレ成分入りフォーク・ロック・バンドの2枚目、

Amarok, Canciones de los mundos perdidos, 1995/2009


 の10曲目が
"Homenaje a J.R.R.Tolkien (Homage to J.R.R.Tolkien)"、7分12秒。
 また、同じバンドのスタジオ・アルバム8枚目、

Amarok, hayat yolunda, 2015
hayat の二つ目の a の上に ∴)

 の、しかし本体ではなく、附録のCD
Archivos, 2009-2015 の10曲目が"Goblins' Song"、2分40秒。歌詞は『ホビット』から取ったとのこと(パンフレット、p,9、p.11)。
 アマロックに関し→こちらも参照(「ユダヤ Ⅲ」の頁の「おまけ」)
 
…………………

 クライヴ・ステイプルズ・ルイス(1898-1963);

C.S.ルイス、中村妙子訳、『別世界物語 1 マラカンドラ 沈黙の惑星を離れて』(ちくま文庫 る 1-1)、筑摩書房、1987
原著は Clive Staples Lewis, Out of the Silent Planet, 1938
 訳は1979年刊本の文庫化

 同、  『別世界物語 2 ペレランドラ 金星への旅』(ちくま文庫 る 1-2)、筑摩書房、1987
原著は Clive Staples Lewis, Perelandra, 1943
 訳は1979年刊本の文庫化

同、中村妙子・西村徹訳、『別世界物語 3 サルカンドラ かの忌まわしき砦』(ちくま文庫 る 1-3)、筑摩書房、1987
原著は Clive Staples Lewis, That Hideous Strength, 1945
 訳は1980年刊本の文庫化

 同じ著者による→こちらを参照:「キリスト教(西欧中世)」の頁の「i. 文化史的なものなど
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 ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986)についてはこれまでに;

カバラ擁護論」、『パイデイア』、no.10、1971.6.15、「特集 シンボル・錬金術

邪教徒バシレイデス擁護論」、同上

マルガリータ・ゲレロとの共著、『幻獣辞典』、1974

伝奇集』、1975 から「ユダについての三つの解釈

アドルフォ・ビオイ=カサ-レスとの共著、『天国・地獄百科』、1982

夢の本』、1992

異端審問』、1982 から「パスカルの球体/パスカル

七つの夜』、2011 から「神曲千一夜物語仏教カバラ


 などを挙げてきました。加えて;

J.L.ボルヘス、牛島信明訳、『論議 ボルヘス・コレクション』、国書刊行会、2001
原著は Jorge Luis Borges, Discusión, 1932
序文/ガウチョ詩/現実の最後から2番目のヴァージョン/読者の錯誤の倫理/もうひとりのホイットマン/カバラの擁護異端思想家バシレイデスの擁護/現実の措定/フィルム/語りの技法と魔術/ポール・グルーサック/地獄の継続期間/ホメーロスの翻訳/アキレスと亀の果てしなき競争/ウォルト・ホイットマンに関する覚え書/亀の変容/『ブヴァールとペキュシェ』の弁護/フロベールと彼の模範的な宿命/アルゼンチン作家と伝統/ノート//
われわれの不可能性//
ボルヘスのユーモア(牛島信明)など、
310ページ。


ホルヘ・ルイス・ボルヘス、篠田一士訳、『砂の本』(集英社文庫 特 5-11)、集英社、1995
原著は Jorge Luis Borges, El libro de arena, 1975 & Historia universal de la infamia, 1935/1954
砂の本(1975);他者/ウルリーケ/会議/人智の思い及ばぬこと(ゼアラー・モア・シングズ)/30派/恵みの夜/鏡と仮面/ウンドル/疲れた男のユートピア/贈賄/アベリーノ・アレドンド/円盤/砂の本/後書き//
汚辱の世界史(1935/1954増補) 初版 序/1954年版 序//
 汚辱の世界史;恐怖の救済者 ラザラス・モレル/
(まこと)とは思えぬ山師 トム・カストロ/(てい)夫人 女海賊/不正調達者 モンク・イーストマン/動機なしの殺人者 ビル・ハリガン/不作法な式部官 吉良上野介/仮面の染物師 メルヴのハキム//
  ばら色の街角の男//エトセトラ;死後の神学者/彫像の部屋/夢を見た二人の男の物語/お預けをくった魔術師/インクの鏡/マホメットの代役/寛大な敵/学問の厳密さについて//
  資料一覧など、
272ページ。


 『汚辱の世界史』中の「学問の厳密さについて」に関し→こちらで触れました:ニール・ゲイマン「地図を作る人」を巡って/「北欧、ケルト、スラヴなど」の頁の「おまけ

ホルヘ・ルイス・ボルヘス、篠田一士訳、『伝奇集』(現代の世界文学)、集英社、1975
原著は Jorge Luis Borges, Ficciones, 1944
伝奇集 第1部 八岐の園(1941年);プロローグ/トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス/アル・ムターンを求めて/『ドン・キホーテ』の著者ピエール・メナール/円環の廃墟/バビロンのくじ/ハーバート・クエインの作品の検討/バベルの図書館/八岐の園//
  第2部 工匠集(1944年);プロローグ/記憶の人・クネス/刀の形/裏切り者と英雄のテーマ/死とコンパス/かくれた奇蹟/ユダについての三つの解釈/結末/フェニックス宗/南部//
不死の人など、
238ページ。


 「アル・ムターンを求めて」 →こちらでも少し触れています:「イスラーム」の頁の「iii. スーフィズムなど」/アッタール、黒柳恒男訳、『鳥の言葉』、2012
 「円環の廃墟」について→そちらでも触れています:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ
 「バベルの図書館」について→あちら(「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ」」や、ここ(「近代など Ⅵ(20世紀~)」の頁中の「諸星大二郎」の項)でも少し触れています
 「八岐の園」について→そこでも触れています:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ
 「八岐の園」および「バベルの図書館」は
セス・ロイド、水谷淳訳、『宇宙をプログラムする宇宙』、2007、pp.128-130 および p.222
 でも引きあいに出されていました。


ホルヘ・ルイス・ボルヘス、土岐恒二訳、『永遠の歴史』(ちくま学芸文庫 ホ 7-1)、筑摩書房、2001
原著は Jorge Luis Borges, Historia de la eternidad, 1953
 1936年刊本の増補版
 訳は1986年刊本の文庫化
序文/永遠の歴史/ケニング/隠喩/循環説/円環的時間//
『千夜一夜』の翻訳者たち;バートン大尉/マルドリュス博士/エンノ・リットマン//
覚え書 2篇;アル・ムウタスィムを求めて/誹謗の手口など、
214ページ。


ホルヘ・ルイス・ボルヘス、土岐恒二訳、『不死の人』(新しい世界の短編)、白水社、1968
原著は Jorge Luis Borges, El Aleph, 1957
不死の人/死人/神学者たち/戦士と囚われの女の物語/タデオ・イシドーロ・クルスの生涯/エンマ・ツンツ/アステリオーンの家/もうひとつの死/ドイツ鎮魂曲/アヴェロエスの探求/ザーヒル/神の書跡/アベンハカーン・エル・ボハリー おのれの迷宮にて死す/ふたりの王とふたつの迷宮/期待/敷居の上の男/アレフ/エピローグなど、
266ページ。


 「不死の人」、「アベンハカーン・エル・ボハリー おのれの迷宮にて死す」、「ふたりの王とふたつの迷宮」について→こちらでも触れています:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ
 「神の書跡」について→そちらでも触れています:「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ
 「アレフ」について→あちら(「仏教 Ⅱ」の頁の「iii. 華厳経、蓮華蔵世界、華厳教学」の冒頭)や、ここ(「世界の複数性など」の頁)、またそこでも触れています:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ

ホルヘ・ルイス・ボルヘス、鼓直訳、『創造者 世界幻想文学大系 15』、国書刊行会、1975
原著は Jorge Luis Borges, El hacedor, 1960
レオプルド・ルゴーネスに捧げる/創造者/Dreamtigers -夢の虎/ある会話についての会話/爪/覆われた鏡/Argumentum ornithologicum -鳥類学的推論/捕らえられた男/まねごと/デリア・エレーナ・サン・マルコ/死者たちの会話/陰謀/一つの問題/黄色い薔薇/証人/マルティン・フィエロ/変化/セルバンテスとドン・キホーテの寓話/天国篇、第31歌、108行/王宮の寓話/everything and nothing -全と無/ラグナレク/地獄篇、第1歌、32行/ボルヘスとわたし//
天恵の歌/砂時計/象棋/鏡/エルビラ・デ・アルベアル/スサナ・ソーカ/月/雨/クロムウェル将軍麾下の一大尉の肖像に/ある老詩人に捧げる/別の虎/Blind Pew -盲のピュー/1890年代のある亡霊について/フランシスコ・ボルヘス大佐(1835-74)の死を偲んで/A.R を悼みて/ボルジェス一族/ルイース・デ・カモンイスに捧げる/1920年代/1960年作の頌歌/アリオストとアラビア人たち/アングロ・サクソン語の文法研究を始めるに際して/ルカ伝、33章/アドロゲ/詩法//
博物館;学問の厳密さについて/4行詩/限界/詩人その名声を告白する/寛大なる敵/
Le regret d'Heraclite -ヘーラクレイトスの後悔/J.F.K を悼みて//
エピローグなど、
254ページ。


 「別の虎」にまつわって→そちら(「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ」/ダニエレブスキー『紙葉の家』に関連して)で触れました

ホルヘ・ルイス・ボルヘス、中村健二訳、『異端審問』、晶文社、1982
原著は Jorge Luis Borges, Otras inquisiciones. 1937-1952, 1960

 本訳書を加筆修訂したのが;

ホルヘ・ルイス・ボルヘス、中村健二訳、『続審問』(岩波文庫 赤 792-3)、岩波書店、2009

 ということなので、後者から目次を拾うと;

城壁と書物/パスカルの球体/コウルリッジの花/コウルリッジの夢/時間とJ.W.ダン/天地創造とP.H.ゴス/アメリコ・カストロ博士の警告/カリエゴ覚書/アルゼンチン国民の不幸な個人主義/ケベード/『ドン・キホーテ』の部分的魔術/ナサニエル・ホーソン/ウォールト・ホイットマン覚書/象徴としてのヴァレリー/エドワード・フィッツジェラルドの謎/オスカー・ワイルドについて/チェスタトンについて/初期のウェルズ/ジョン・ダンの『ビアタナトス』/パスカル/夢の邂逅/ジョン・ウィルキンズの分析言語/カフカとその先駆者たち/亀の化身たち/書物崇拝について/キーツの小夜鳴鳥/謎の鏡/二冊の本/1944年8月23日に対する註解/ウィリアム・ベックフォードの『ヴァセック』について/『深紅の大地』について/有人から無人へ/伝説の諸型/アレゴリーから小説へ/ラーヤモンの無知/バーナード・ショーに関する(に向けての)覚書/歴史の謙虚さ/新時間否認論/エピローグなど、
408ページ。


ホルヘ・ルイス・ボルヘス、牛島信明訳、『ボルヘスとわたし』、新潮社、1974
原著は Jorge Luis Borges, The Aleph and Other Sories. 1933-1969, 1970
ボルヘスとわたし;アレフ/バラ色の街角の男/アル・ムターシムを求めて/円環の廃墟/死とコンパス/タデオ・イシドロ・クルスの生涯/二人の王様と二つの迷宮/死んだ男/もうひとつの死/自分の迷宮で死んだアベンハカーン・エル・ボハリー/入口の男/肝魂信仰/囚われ人/ボルヘスとわたし/創造者/じゃま者/不死の人びと/めぐり合い/ペドロ・サルバドーレス/ロセンド・フワレスの物語//
自伝風エッセー//著者注釈など、
258ページ。

 第1部は自選短篇集で、第3部はその20点に対する自作解説


ホルヘ・ルイス・ボルヘス、アドルフォ・ビオイ=カサレス、柳瀬尚紀訳、『ボルヘス怪奇譚集』、晶文社、1976
原著は Jorge Luis Borges, Adolfo Bioy Casares, Cuentos breves y extraordinarios, 1967 の英語版 1971
全92篇、
168ページ。


 ちなみに本書および『天国・地獄百科』(1982)の共著者であるビオイ=カサーレスには

アドルフォ・ビオイ=カサーレス、清水徹・牛島信明訳、『モレルの発明』、書肆風の薔薇、1990
原著は Adolfo Bioy Casares, La invención de Morel, 1940

 この本はボルヘスに捧げられ、序文をボルヘスが書いています。
 また『去年マリエンバートで』(1961、監督:アラン・レネ、→こちらにも挙げておきます:当該頁の「Cf.」)におそらく影響を与えたとされ(pp.185-189)、
 『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』(2005、監督:ブラザーズ・クエイ)の発想源ともなりました。


J.L.ボルヘス、野谷文昭訳、『七つの夜』(岩波文庫 赤 792-4)、岩波書店、2011
原著は Jorge Luis Borges, Siete noches, 1995
 訳は1997刊本の文庫化
神曲/悪夢/千一夜物語仏教/詩について/カバラ/盲目について/エピローグなど、
248ページ。


J.L.ボルヘス、木村榮一訳、『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』(岩波文庫 赤 792-9)、岩波書店、2017
原著は Jorge Luis Borges, Borges, oral, 1979
 訳は『ボルヘス、オラル』(1987)の改訳
書物/不死性/エマヌエル・スヴェーデンボリ/探偵小説/時間など、
150ページ。


 スペインの本屋で出くわした本;

Cristina Grau, Borges y la arquitectura, Catedra, 1989
『ボルヘスと建築』
序言/ブエノスアイレス-ある熱意/ボルヘス的迷宮/無限の追加によって生みだされる迷宮/複製と対称の迷宮/唯一の生の迷宮/迷宮としての都市/同じ迷宮の2つの設計(ボルヘス-カフカ)/迷宮 - 元型の神話より、など、
190ページ。


 →こちらにも挙げておきます:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「v. 建築など

入沢康夫、「迷宮の構造に関する妄想」、『ユリイカ』、vol.15 no.3、1983.3:「特集 幻想の建築 〈空間〉と文学」、pp.50-52

ニルダ・グリエルミ、谷口勇訳、『「バラの名前」とボルヘス - エコ、ボルヘスと八岐の園 -』(U.エコ『バラの名前』解明シリーズ)、而立書房、1995
原著は Nilda Guglielmi, El Eco de la rosa y Borges, 1988
日本語版への序文//
本書の意図//
ストーリー;歴史//
序説//
構造、素材、典拠;探偵ジャンル//
作中人物と範域 囲まれた庭-金と権力-大修道院と都市//
  バスカヴィルのシャーロック-バスカヴィルのウィリアム;バスカヴィルのウィリアム-オッカムのウィリアム/バスカヴィルのウィリアム-パドヴァのマルシリウス/バスカヴィルのウィリアム-ロジャー・ベーコン//
  ミノタウロス//
  光は美なり//
  モデル読者?//
  バベルの塔的言語//
  「祈れ、そして働け」//
  名もなき女;村/悪魔払い/単純な者たち/「甘き毒……」/ヒーメロス(思慕の情)//
鍵 「ヨハネ黙示録」的状況;逆立ちの世界//
  迷宮//
  鏡//
  笑い;『キュプリアヌスの晩餐』/『キュプリアヌスの晩餐』と桃源郷//
  欲望//
  危機//
  数//
  バラ//
フィナーレ//
訳者あとがき/索引など、
348ページ。


 →「怪奇城の図書室」の頁の「7 『薔薇の名前』映画版(1986)からの寄り道:ピラネージ《牢獄》風吹抜空間、他」の頁でも触れました

今福龍太、『ボルヘス 伝奇集 - 迷宮の夢見る虎』(世界を読み解く一冊の本)、慶應義塾大学出版会株式会社、2019
プロローグ//
〈ボルヘス〉という秘め事;アルター・エゴとしての虎/
虚構(フィクシオン)と『伝奇集(フィクシオネス)』/忘れられた語り手/「ボルヘス」とは誰か?/混淆の出自と言語の脱領域性(エクストラテリトリアリティ)/〈秘め事〉としての「読むこと」と「書くこと」/ボルヘスとともに迷宮の虎を追う//
『伝奇集』の来歴;「アル・ムターシムを求めて」/ボルヘス、ウルフ、カフカ、ミショー/『伝奇集』の成立史/「書物」という対話の場//
〈完全なる図書館〉の(おのの)き;バベルの図書館の無限性/もう一つの「図書館」/すべての書物、すべてのアイディア//
バベルの塔を再建すること;「バベルの塔」の歴史/「バベルの図書館」の図像//
夢見られた私;ボルヘスの円環と迷宮/「円環の廃墟」の夢/夢見る「作家」/「全員一致」
unánime の夢//
震える磁石(コンパス)の針の先に;探偵小説「死とコンパス」/「コンパス」
brújula の迷宮/殺人事件の舞台/迷宮の都市ブエノスアイレス//
永遠に分岐しつづける小径;「八岐の庭」を
彷徨(さまよ)う/「南部」の迷宮都市ブエノスアイレス/「新時間否認論」という哲学的闘争//
参考文献/エピローグなど、
222ページ。


 「バベルの図書館」に関連して→こちら(「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の「おまけ」)で、
 バベルの塔に関連して→そちら(「怪奇城の外濠 Ⅱ」中の「塔など」)でも挙げました。
 上掲
Cristina Grau, 1989 も参照されていました(pp.97-100)。
 →「怪奇城の図書室」の頁の「7 『薔薇の名前』映画版(1986)からの寄り道:ピラネージ《牢獄》風吹抜空間、他」の頁でも触れました


棚瀬あずさ、「バベルの図書館における奇書 ボルヘス以降のミクロコスモス」、『ユリイカ』、no.806、vol.55-9、2023.7:「特集 奇書の世界」、pp.291-298
…………………

 ルネ・ドーマル(1908-1944);

ドーマル、巖谷國士訳、『類推の山』(小説のシュルレアリスム)、白水社、1978
原著は René Daumal, Le mont analogue, 1952
序文(A.ロラン・ド・ルネヴィル)//
類推の山 第1章~第5章//
後記(ヴェラ・ドーマル)/覚書 - ルネ・ドーマルの遺稿のなかから発見された/解説(巖谷國士)など、
236ページ。


巖谷國士、「架空の地図をめぐって」、『宇宙模型としての書物』、青土社、1979、pp.209-220 

xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など

ラヴクラフト(1890-1937)と周辺の作家たちから 
『ネクロノミコン』などの魔道書 
事典類 
作品論など 
ガイドブック類 
日本の作家による作品など 

 ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890-1937)については→こちら(「エジプト」の頁の「おまけ」)や、そちら(「ダゴン」など/「西アジア」の頁の「おまけ」)や、あちら(「アメリカ大陸など」の頁の「おまけ」)、またこなた(マイリンク『ゴーレム』について/「ユダヤ Ⅲ」の頁の「おまけ」)や、そなた(Electric Masada, At the Mountains of Madness/同上)や、あなた「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の「おまけ」)や、むこう(「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「ホワイトヘッド」の項中のシャヴィロ『モノたちの宇宙』のところ)、またむこうの2(「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「クロウリー」の項)に、こっち(本頁上掲「xvii. ブックガイド、通史など」中の「文学における超自然の恐怖」、2009)、そしてあっち(「ダンセイニ卿とその著作」/本頁上掲「ダンセイニ」の項)などでふれ、

 またそれ以外にクトゥルー(クトゥルフ)神話がらみでは→こちら(『海の神話』/「通史、事典など」の頁の「vi. 四大その他」)や、そちら(R.ブロック/「エジプト」の頁の「おまけ」)や、あちら(Simon, Necronomicon/「メソポタミア」の頁の「おまけ」)や、こなた(黒史郎『未完少女ラヴクラフト 2』/「エジプト」の頁の「おまけ」)や、またそなた(R.ブロック「ドルイド教の祭壇」/「北欧、ケルト、スラヴなど」の頁の「おまけ」)で言及してきました。

 この後も、→あなた(ラッセルとフォート/「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「ラッセル」の項)、こっち(同、「ライバー」の項)に、そっち(同、「A.C.クラーク」の項)や、あっち(同、「リン・カーター」の項)、ここ(同、「ゼラズニイ」の項)、ここの2(『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』/同、「アダムスとコルファー」の項)、ここの3(同、「テッド・チャン」の項)、ここの4(同、J・J・アダムズ編、『黄金の人工太陽 巨大宇宙SF傑作選』(2022)へのメモへの「追補」)、
 また→そこ(「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「山田正紀」の項)、そこの2(同、「友成純」の項)、そこの3(同、「山尾悠子」の項)、そこの4(同、「牧野修」の項)、

 →あそこ(『宇宙からの色』他/「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ」)、再びこちら(『召喚の蛮名』/「魔術、神秘学、隠秘学など」の頁の「おまけ」)、そちら(本/「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ」)、あちら(ヨグ=ソトースとアザトース/「世界の複数性など」の頁)、
 →こっち(『屍者の帝国』/「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「円城塔」の項)、そっち(『ヒュレーの海』/同、「黒石迩守」の項)、
 →あちら(『ジャーンの書』/「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「x. ブラヴァツキーと神智学など」)、こなた(レオ・タクシルの『十九世紀の悪魔』に関し/「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の「おまけ」)などが出てきます。
 →そなた( マイケル・スコット、橋本恵訳、『錬金術師(アルケミスト)ニコラ・フラメル』、2007 とその続篇/「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「ハイネと〈流謫の神々〉」の項)や、またあなた(「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「エドモンド・ハミルトン」の項)、

 →こっち(ニール・ゲイマン「世界の終わり」他/『狼男』(1941)の頁の「おまけ」)、そっち(ウォルドロップ&アトリー「昏い世界を極から極へ」/『フランケンシュタイン』(1931)の頁の「おまけ」)でも少し触れました。

 ついでに→こちら(『ネクロテレミコン』/「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「プラチェット」の項)や、あちら(『根暗なミカン』/「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ」)も参照

 さらに→「古城と怪奇映画など」 > こちら(『怪談呪いの霊魂』、1963)、そちら(『襲い狂う呪い』、1965)、あちら(『ダンウィッチの怪』、1970)、ここ(「『Meiga を探せ!』より、他・目次」の頁の「怪盗グルーの月泥棒」(2010))も参照ください。

 著作の翻訳も


国書刊行会のS.T.ヨシ原典校訂、矢野浩三郎編、『定本 ラヴクラフト全集』全11巻(第10巻まで、第7巻はⅠとⅡの2冊)、1984~1986

創元推理文庫の『ラヴクラフト傑作集』1~2巻、1974/1976 とそれに続く『ラヴクラフト全集』3~7巻、別巻上下、1984~2007

 と、2種の全集に加えて、クトゥルー神話関連の翻訳も、

国書刊行会の荒俣弘編、『ク・リトル・リトル神話集』、1976

青心社の文庫版・大瀧啓裕編、『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー』全13巻、1988~2005

国書刊行会の『新編 真ク・リトル・リトル神話体系』全7巻、2007~2009

 を始めとして、日本での創作も加えればかなりの数にのぼり、また近年ではガイドブック類が相当数刊行されています。これらについてはきちんとした情報がウェブ上で得られると思いますので、ここではまず、ラヴクラフトの作品からいわゆる〈年代記〉的なものとして(なお、邦訳はしばしば複数ありますが、以下はとりあえず1種のみ);


H.P.ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、「無名都市」、『ラヴクラフト全集 3』(創元推理文庫 523-3)、東京創元社、1984
原著は H. P. Lovecraft, "The Nameless City", 1921

 →こちらでも触れています:「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ

H.P.ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、「狂気の山脈にて」、『ラヴクラフト全集 4』(創元推理文庫 523-4)、東京創元社、1985
原著は H. P. Lovecraft, "At the Moountains of Madness", 1931

 Electric Masada にこのタイトルを借りたライヴ・アルバムがあることは→こちらを参照:「ユダヤ Ⅲ」の頁の「おまけ
 またこの作品を引きあいに出したことがあります→「作品解説、あるいは幕間に潜りこもう!」、3節目、『ひろがるアート展~現代美術入門篇~』図録、2010.10 < 三重県立美術館のサイト
 →そちら(本/「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ」)や、またあちら(南極/「中央アジア、東アジア、東南アジア、オセアニアなど」の頁の「おまけ」)でも触れました

H.P.ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、「時間からの影」、『ラヴクラフト全集 3』(創元推理文庫 523-3)、東京創元社、1984
原著は H. P. Lovecraft, "The Shadow out of Time", 1934

 また

ゼリア(ズィーリア)・ビショップ(1897-1968)、東谷真知子訳、「墳丘の怪」、『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー 12』、青心社、2002
原著は Zealia Bishop, "The Mound", 1929-1930

 ラヴクラフトの「添削というレヴェルを超えた純然たる代作」(大瀧啓裕、「作品解題」、『ラヴクラフト全集 別巻 下』(創元推理文庫 523-09)、東京創元社、2007、p.383)

 宇宙構造論的なヴィジョンとしては;

H.P.ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、「銀の鍵の門を越えて」、『ラヴクラフト全集 6』(創元推理文庫 523-6)、東京創元社、1989
原著は H. P. Lovecraft, "Through the Gates of the Silver Key", 1933

 E.ホフマン・プライス(1898-1988)との合作。原型となったのが

E.ホフマン・プライス、小林勇次訳、「幻影の王」、『定本 ラヴクラフト全集』全11巻(第10巻まで、第7巻はⅠとⅡ)、国書刊行会、1985、pp.401-424
原著は E. Hoffman Price, "The Lord of Illusion", 1932

 ラヴクラフトを初めて読んだのは『怪奇小説傑作集 3』(創元推理文庫、1969)所収の大西尹明訳「ダンウィッチの怪」だと思うのですが、その次がたぶん『幻想と怪奇』3号(1973.9、黒魔術特集)に載っていた団精二訳「銀の鍵の門を超えて」で、同じ号のマクドナルド、鏡明訳「黄金の鍵」(→こちらを参照:「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「マクドナルド」の項)とあわせて、けっこう強い印象を受けた憶えがあります。

 20世紀初頭の次元論受容の一例となるのが:

H.P.ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、「魔女の家の夢」、『ラヴクラフト全集 5』(創元推理文庫 523-5)、東京創元社、1987
原著は H. P. Lovecraft, "The Dream in the Witch House", 1932

 この作品については、後掲のフリッツ・ライバー・Jr.「ブラウン・ジェンキンとともに時空を巡る」、1978、pp.506-509 も参照

 ともあれ〈宇宙的恐怖〉を提唱する作家のこと、挙げようとすればいくらでも挙げられるのでしょうが、ここは最後に、〈夢の国〉遍歴譚でもあればアザトホースも登場する


H.P.ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、「未知なるカダスを夢に求めて」、『ラヴクラフト全集 6』(創元推理文庫 523-6)、東京創元社、1989
原著は H. P. Lovecraft, "The Dream-Quest of Unknown Kadath", 1926-27

 ラヴクラフト以外の作家による、いわゆる〈クトゥルー神話〉からも、挙げようとすればいくらでも挙げられるのでしょうが、とりあえず;

F.B.ロング(1903-1994)、大瀧啓裕訳、「ティンダロスの猟犬」、『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー 5』、青心社、1989
原著は Frank Belknap Long, "The Hounds of the Tindalos", 1929

クラーク・アシュトン・スミス(1893-1961)、大瀧啓裕訳、「七つの呪い」、『ヒュペルボレオス極北神怪譚』(創元推理文庫 F ス2-3)、東京創元社、2011
原著は Clark Ashton Smith, "The Seven Geases", 1934

 →こちらでも触れました:『ウルトラQ』第9話「クモ男爵」(1966)の頁
 →後掲の『エイボンの書』(2008)も参照

ヘンリイ・ハーセ(1913-1977)、東谷真知子訳、「本を守護する者」、『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー 13』、青心社、2005
原著は Henry L. Hasse, "The Guardian of the Book", 1937

 →こちらでも触れています:「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ

ロバート・ブロック(1917-1994)、岩村光博訳、「妖術師の宝石」、『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー 10』、青心社、1997
原著は Robert Bloch, "The Sorcerer's Jewel", 1939

 この短編から1文(p.28)をエピグラフにしたことがあります
→「マティスのノートル=ダムの塔の上 ─ プチ・ポン拾遺の拾遺 ─ (研究ノート)」、『ひるういんど』、no.70、2001.2 < 三重県立美術館サイト

 同じ著者による→こちら(「エジプト」の頁の「おまけ」)や、またあちらを参照:「北欧、ケルト、スラヴなど」の頁の「おまけ

ロバート・ブロック、大瀧啓裕訳、『アーカム計画』(創元推理文庫 531-2)、東京創元社、1988
原著は Robert Bloch, Strange Eons, 1979

コリン・ウィルソン、中村保男訳、『賢者の石』(創元推理文庫 823)、東京創元社、1971
原著は Colin Wilson, The Philosopher's Stone, 1969

 ついでに;

コリン・ウィルソン、小倉多加志訳、『精神寄生体』(学研M文庫 M-ウ 1-3)、学習研究社、2001
原著は Colin Wilson, The Mind Parasites, 1967
 邦訳は1988年刊本の文庫化

 本作が連想させるラッセルの『超生命ヴァイトン』(1943)は→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「エリック・F・ラッセル」の項


コリン・ウィルスン、団精二訳、『ロイガーの復活』(ハヤカワ文庫 NV 140)、早川書房、1977
原著は Colin Wilson, The Return of the Lloigor, 1969
ロイガーの復活//
ネクロノミコンの歴史(リン・カーター)/X機能と非合理的知識について/訳者あとがきなど、
170ページ。

 「ネクロノミコンの歴史」(リン・カーター)は下のリン・カーター「クトゥルー神話の魔道書」から『ネクロノミコン』に関する部分を抜きだしたもの→こちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「リン・カーター」の項。


コリン・ウィルスン、増田まもる訳、「古きものたちの墓」、『古きものたちの墓 クトゥルフ神話への招待』(扶桑社ミステリー キ 17-2)、扶桑社、2013
原著は Colin Wilson, "The Tomb of the Old Ones", 1999

 同じ著者による→こちらを参照:「魔術、神秘学、隠秘学など」の頁中

リン・カーター(1930-1988)、「陳列室の恐怖」、リン・カーター、ロバート・M・プライス、森瀬繚・立花圭一訳、『クトゥルーの子供たち』、エンターブレイン、2014、pp.127-249
原著は Linwood Vrooman Carter, "The Horror in the Gallery", 1976 ( titled "Zoth-Ommog")

 フォン・ユンツト『無名祭祀書』に記されているものとして、神統譜が述べられています(pp.176-182)。
 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「リン・カーター」の項

ピート・ローリック、甲斐呈二訳、「音符の間の空白」、『ナイトランド・クォータリー』、vol.12、2018.2;「特集 不可知の領域 - コスミック・ホラー」、pp.52-61
原著は Pete Rawlik, "The Space Between", 2016

 舞台がミスカトニック大学の図書館。
 アボット『フラットランド』(1884)が言及されたりします(p.57)。
 音楽ものなので→こちらにも挙げておきます:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ


ラムジー・キャンベル、「フランクリンの章句(パラグラフ)」、森瀬繚監訳、『グラーキの黙示録 2 クトゥルー神話作品集』、サウザンブックス社、2022
原著は Ramsey Campbell, "The Franklyn Paragraphs", 1973

 作中作であるローランド・フランクリンの著書『人はみな視界から消える』に対するレビューからの引用ということで、

「エネルギー保存則の誤った適用に基づき、宇宙に存在する魂の数には上限が存在しているので、人間は同時に無数の
化身(インカーネーション)を有しているのだと認めるべきだというのが、彼の基本的な主張であるらしい。『真なる自己を目指して』と題する最終章は、ある種の背理法となっていて、『真なる自己』は『宇宙の外側』に見出されるべきものであり、個々の人間は『自己』のひとつの(ファセット)に過ぎず、あらゆる別の化身を同時に体感することができるのだが、制御することはできないのだと結論付けている」

と記されていました(p.86)。上掲の「銀の鍵の門を越えて」が思い起こされるところです。

ジェイムズ・ラヴグローヴ、日暮雅通訳、『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』(ハヤカワ文庫 FT615/FT ラ 5-1)、早川書房、2022
原著は James Lovegrove, Sherlock Holmes and the Shadowell Shadows, 2016

 「〝クトゥルー・ケースブック〟三部作 - つまり〝クトゥルー神話〟をテーマにしたホームズ・パスティーシュの、一作目」(訳者による「解説(あとがきにかえて」)、p.449。
 「10章 ボックス・ヒル古墳」で登場人物の一人による神観が(pp.158-159)、「11章 シャーロック・ホームズの夢の探求」でまた別の人物による史観が語られた後(pp.171-174)、ホームズによる〈天界巡り〉が綴られます(pp.176-182)。
 「太陽系から遠く離れた万物の最果てのどこかで、数十個の惑星が巨大な橋で接続された場所」(p.179)での、「無数の奇妙な住人」(同上)、
 「宇宙そのものが生まれてまもなく生を受け、旧支配者(グレイト・オールド・ワンズ)の先祖となった旧神(エルダー・ゴッズ)」(同上)、
 「あらゆるものの辺境から、回転する宇宙の中核へ、まさに中心」(p.180)
である
 「そこは混沌(カオス)の地であり、光と闇の大渦巻きがうねる中心には、螺旋状にねじれたたくさんの奇妙な城塞が浮かび、巨大な流れにより気まぐれな動きを見せている」(同上)、
 「これらは神々の住居であり、神殿でもあったが、ここに住む外なる神(アウター・ゴッズ)は、強欲で悪意に満ちた神々だった」(同上)。
 「19章 ちょっとした催眠術」では、さらに別の人物が、
 「宇宙はその誕生のとき、完璧に環境に適合できるという同一の性質を有する存在を大量に生み出したということを。彼らは神々だが、人間の大多数が現在崇拝しているものとは違う。彼らは私たちを愛さない。さらに、憎むこともない。私たちのことにはまったく無関心なのだ」(p.305)
と述べます。
 
  余談になりますが、「22章 キリスト教世界でいちばん変わったクラブ」には、ホームズの母親について、その
「伯父がフランスの画家オラス・ヴェルネで」(p.337)
というくだりがありました。これはドイルの「ギリシャ語通訳」でホームズが、
「祖母はヴェルネというフランス人の画家の妹にあたる」(コナン・ドイル、延原謙訳、『シャーロック・ホームズの思い出』(新潮文庫)、新潮社、1953、p.213)
と語ったことに由来しています。〈シャーロキアン〉の間ではよく知られた設定なのでしょうが、どういったところからヴェルネの名が出てきたのでしょうか?
…………………

 『ネクロノミコン』などの魔道書について;

H.P.ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、「『ネクロノミコン』の歴史」、『ラヴクラフト全集 5』(創元推理文庫 523-5)、東京創元社、1987
原著は H. P. Lovecraft, "History of Necronomicon", 1927

リン・カーター、大瀧啓裕訳、「クトゥルー神話の魔道書」、『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー 2』、青心社、1988
原著は Linwood Vrooman Carter, "H.P. Lovecraft: The Books", 1956

 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「リン・カーター」の項

大瀧啓裕、「クトゥルー神話-魔道書の力学」、同上

ジョージ・ヘイ編、大瀧啓裕訳、『魔道書ネクロノミコン[完全版]』、学習研究社、2007
原著は George Hay, The Necronomicon, 1978 および The R'lyeh Text, 1995
 本書で正編とされる1978年版原著の邦訳は、『魔道書ネクロノミコン』として1994年刊
正編;序文(コリン・ウィルスン)/スタニスラウス・ヒンターシュトイザー博士の手紙/『ネクロノミコン』註解(ロバート・ターナー)/ジョン・ディー文書の解読(デイヴィッド・ラングフォード)/付録1 若き日のラヴクラフト(L.スプレイグ・ディ・キャムプ)/付録2 『ネクロノミコン』の夢-眠りの学識(クリストファー・フレイリング)/付録3 ラヴクラフトの風景(アンジェラ・カーター)/『ネクロノミコン』断章//
続編;序文(コリン・ウィルスン)/』註解(ロバート・ターナー)/魔女の家で目覚める(パトリーシャ・ショア)/堕落した科学(アーノルド・アーノルド)/『ルルイエ異本』/巻末付録 アウルズウィック版『アル・アジフ』抜粋など、
538ページ。


 C.ウィルスンによる→こちらを参照:「魔術、神秘学、隠秘学など」の頁
 併せて

コリン・ウィルソン、森瀬繚訳、「魔道書ネクロノミコン 捏造の起源」、『ナイトランド』、no.1、2012.3、pp.100-105
原著は Colin Wilson, "The Necronomicon : The Origin of a Spoof", Crypt of Cthulhu, 1984

大瀧啓裕編・訳、『魔道書ネクロノミコン外伝』、学習研究社、2011
ネクロノミコン(リン・カーター 1989)/サセックス稿本(フレッド・L・ペルトゥン、1950歿 1989)/師の生涯(デイヴィッド・T・セイント・オールバンズ 1984)/ネクロノミコン註解(ロバート・M・プライス 1988)など、
368ページ。

 リン・カーターによる→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「リン・カーター」の項


ドナルド・タイスン、大瀧啓裕訳、『ネクロノミコン アルハザードの放浪』、学習研究社、2006
原著は Donald Tyson, Necronomicon. The Wandering of Alhazred, 2004

ドナルド・タイスン、大瀧啓裕訳、『アルハザード』(上下)、学習研究社、2007
原著は Donald Tyson, Alhazred. Author of the Necronomicon, 2006

Simon, Necronomicon, 1977/1980

ロバート・M・プライス編、坂本雅之・中山てい子・立花圭一訳、『エイボンの書 クトゥルフ神話カルトブック』、新紀元社、2008
原著は Robert M. Price ed., The Book of Eibon, 2001
日本語版への序(ロバート・M・プライス)/黒檀の書 『エイボン』の書序論(同)/『エイボンの書』の歴史と年表(リン・カーター)/ヴァラードのサイロンによるエイボンの生涯(同)/エイボンは語る もしくはエイボンの箴言//
第1の書 古の魔術師たちの物語/第2の書 ムー・トゥーランのエイボンの逸話/第3の書 暗黒の知識のパピルス/第4の書 沈黙の詩篇/第5の書 エイボンの儀式/補遺など、
392ページ。

 クラーク・アシュトン・スミス(→こちらも参照:本項下掲の「七つの呪い」、1934)が考えだした『エイボンの書』をまとめようという、リン・カーター(→そちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「リン・カーター」の項)が果たせなかった計画を、ロバート・M・プライスとローレンス・J・コーンフォードが他の詩人や魔術師の助けを得て完成したもの(p.8)。
 補遺に含まれる「弟子へのエイボンの第2の書簡、もしくはエイボンの黙示録」(ロバート・M・プライス)は→あちらでも挙げました:「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の「おまけ


 →ここも参照:「魔術、神秘学、隠秘学」の頁、
 また;


オーウェン・デイビーズ、『世界で最も危険な書物 - グリモワールの歴史』、2010、「第8章 ラヴクラフト、サタンと影」
ネクロノミコン/ブック・オブ・シャドウズ/サタンの聖書

草野巧、『図解 魔導書』、2011、「第4章 現代の魔導書」

 中の
「094 フィクションの魔導書」以降;シグザンド写本/サアアマアア典儀/無名祭祀書/エイボンの書/妖蛆の秘密/ネクロノミコン/ヴォイニッチ手稿

…………………

 事典類として;

東雅夫、『新訂 クトゥルー神話事典』(学研M文庫 H-ひ 1-2)、学習研究社、2001
 1995年刊本を加筆訂正して文庫化したもの。その後も改訂されているもよう。
序 クトゥルー神話の世界へ//
禁断の大百科 用語事典/暗黒の文学館 作品案内/探奇の紳士録 作家名鑑/恐怖の年代記 歴史年表など、
458ページ。


ダニエル・ハームズ、坂本雅之訳、『エンサイクロペディア・クトゥルフ』、新紀元社、2007
原著は Daniel Harms, The Encyclopedia Cthulhiana, 1994/1998
はじめに//
エンサイクロペディア(あいうえお順)//
補遺;『ネクロノミコン』の歴史/『ネクロノミコン』の所蔵場所/『ネクロノミコン』の内容/クトゥルフ神話年表など、
344ページ。


 →こちらでも触れました:アイレムについて/「イスラーム Ⅲ」の頁の「おまけ

S.T.ヨシ、森瀬繚日本語版監修、『H.P.ラヴクラフト大事典』、エンターブレイン、2012
原著は S. T. Joshi and David E. Schultz, An H. P. Lovecraft Encyclopedia, 2001
編者による序文/日本語版序文//
事典(あいうえお順)など、
478ページ。


森瀬繚、『ゲームシナリオのための クトゥルー神話事典 知っておきたい邪神・禁書・お約束110』、ソフトバンク クリエイティブ、2013
暗黒の神話体系/邪なる神々/異形の存在/旧き神々/禁断の物品/恐怖の在処など、
272ページ。

 情報の出典が銘記されている点が特徴。
 →こちら(本項下掲の新熊昇、「ウマル皇子の天球儀」(2020)のところ)、や、そちら(本項下掲の上甲宣之、『脱出迷路』(2010-11)のところ)で挙げました。
 同じ著者による→あちら(本項下掲の『図解クトゥルフ神話』(2005)他)や、ここ(「天使、悪魔など」の頁の「i. 天使など」)、またそこ(同、「ii. 悪魔など」)を参照

…………………

 作品論など;

H.P.ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、『文学における超自然の恐怖』、学習研究社、2009
文学における超自然の恐怖(1926/1936)→細目はこちら:本頁上掲の「xvii. ブックガイド、通史など」//
ダンセイニ卿とその著作(1922)/惑星間旅行小説の執筆に関する覚書(1934)//
拾遺編;ユゴスの黴(1936)/彼方からの挑戦(C.L.ムーア、A.メリット、ラヴクラフト、R.E.ハワード、F.B.ロング・ジュニアによる連作、1935)/記憶(1919)/忘却より(1921)/月がもたらすもの(1922)/世紀の決戦(ロバート・ヘイウォード・バーロウとの共作、1934)/インスマスを覆う影 未定稿//
資料編//作品解題など、
304ページ。


フリッツ・ライバー・Jr.(1910-1992)、「怪奇小説のコペルニクス」、荒俣宏訳、『ラヴクラフト全集 Ⅰ 短篇 1』、創土社、1975、pp.441-463
原著は Fritz Leiber Jr., "A Literary Copernicus", 1949

ラヴクラフト、「わが幼年期を語る」、同上、pp.465-478

 1915年1月1日付けモーリス・W・モオ宛書簡

荒俣宏、「文化現象としてのラヴクラフト」、同上、pp.479-497

 同じ著者による→こちらも参照:「魔術、神秘学、隠秘学など」の頁

 ちなみに創土社版全集はこの第1巻と次に挙げる第4巻のみで途絶したもよう。


フリッツ・ライバー・Jr.、「ブラウン・ジェンキンとともに時空を巡る - 思弁小説におけるラヴクラフトの功績 -」、荒俣宏訳、『ラヴクラフト全集 Ⅳ 中篇 2』、創土社、1978、pp.493-516
原著は Fritz Leiber Jr., "Through Hyperspace with Brown Jenkin", 1963/1966

 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「ライバー」の項

リン・カーター、大瀧啓裕訳、「クトゥルー神話の神神」、『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー 1』、青心社、1988
原著は Lin Carter, "H.P. Lovecraft : The Gods", 1956

リン・カーター、朝松健監訳、竹岡啓訳、『クトゥルー神話全書』、東京創元社、2011
原著は Lin Carter, Lovecraft : A Look behind the "Cthulhu Mythos", 1972
序 プロヴィデンスの影/外世界からの来訪者/ルルイエからの暗示/売店にあらわれたもの/レッド・フックの恐怖/クトゥルーの来襲/暗黒一座の侍者たち/影が集う/旧支配者の落とし子/旧神/昨日からの侵入者/最後の魔法/墳墓を越えて/松林の家/一時代の終わり/最後の使徒//
カーターとクトゥルー神話(竹岡啓)/監訳者解説など、
292ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「リン・カーター」の項


コリン・ウィルソン、『夢みる力 - 文学と想像力』、1994、「第1章 合理性への挑戦」冒頭(pp.33-44)、「第4章 科学のヴィジョン」中の「ラヴクラフト再訪」(pp.200-204)

S.T.ヨシ編、『真ク・リトル・リトル神話体系 7』、国書刊行会、1983
原著は Edited by S. T. Joshi, H. P.Lovecraft : Four Decades of Criticism, 1980
 上掲原著の「約3分の1を収めている」とのこと(p.232)。
ラヴクラフトの生涯と作品(K.W.フェイグ&S.T.ヨシ)/ラヴクラフト研究の歴史(S.T.ヨシ)/H.P.ラヴクラフト鑑賞(T.O.マボット)/ラヴクラフト「神話」について(E.ウィルスン)/怪奇作家としてのHPL(ピーター・ペンゾルト)/神話体系の魔道書(エドワード・ローターバック)/神話創造者ラヴクラフト(ダーク・W・モジッグ)/ラヴクラフト世界のルーツ(J・ヴァーノン・シェイ)/『ヴァセック』と『カダス』(ピーター・キャノン)/ポーとラヴクラフト(ロバート・ブロック)/ホーソン的視点から見たラヴクラフト(ピーター・キャノン)/ラヴクラフト作品一覧(S.T.ヨシ)//
解説(宮壁定雄)など、
250ページ。


S.T.ヨシ/アンソニー・レイヴン編、『真ク・リトル・リトル神話体系 8』、国書刊行会、1984
原著は Edited by S. T. Joshi, H. P.Lovecraft : Four Decades of Criticism, 1980,The Occult Lovecraft, edited by Gerry de la Ree, 1975, Essays Lovecraftian, edited by Darrell Schweitzer, 1972
 「『批評の40年』後半と、ゲリ・デ・ラーリー編『オカルト・ラヴクラフト』を中心に、新たに数編を加えて構成している」とのこと(p.271)。
『批評の40年』後半;ラヴクラフトにおけるプロヴィデンス(B.L.セント・アーマンド)/「白い帆船」 - 心理学的オデュッセイ(ダーク・W・モジッグ)/ラヴクラフトと小説における宇宙的特質(R.L.ティルニィ)/ユートピアとしてのディストピア(ポール・ブール)/詩人としてのラヴクラフト管見(W.L.・スコット)/ラヴクラフト的悪夢(R.ボーレム)/ハワード・フィリップス・ラヴクラフト頌(C.A.スミス)//
宇宙と宗教(H.P.ラヴクラフト)//
『オカルト・ラヴクラフト』;牧神は死なず(アンソニー・レイヴン)/レッド・フック街のH.P.ラヴクラフト(F.B.ロング)/レッド・フック街の呪文(H.P.ラヴクラフト)/ラヴクラフトと黒魔術(アンソニー・レイヴン)//
金とおがくず(サミュエル・ラヴマン)//
ダレル・シュヴァイツァー編『ラヴクラフト評論集』より(p.276)『アウトサイダー』の4つの顔(ダーク・W・モジッグ)/H.P.ラヴクラフトと擬似数学(R.ワインバーグ)/ク・リトル・リトル神話の起源(ジョージ・ウィッツェル)/ラヴクラフトと女性たち(ベン・P・インディック)//
わが小説作法 - HPLからの手紙(H.P.ラヴクラフト)//
『批評の40年』日本語版へのあとがき(S.T.ヨシ)//
解説(宮壁定雄)など、
304ページ。


 『定本 ラヴクラフト全集』に附録として収められた随想・論考類は;

第1巻、1984;ラヴクラフト=テクストにおける諸問題(S.T.ヨシ)/ハワード・フィリップス・ラヴクラフト頌(サミュエル・ラヴマン)

第2巻、1984;ラヴクラフトの思い出(ラインハート・クライナー)/素顔のラヴクラフト(ソニア・H・デーヴィス)/『アウトサイダー』をめぐる随想(ウィリアム・フルワイラー)

第3巻、1984;ラヴクラフトと呼ばれた男(E.ホフマン・プライス)/二人の紳士の邂逅(オーガスト・ダーレス)

第4巻、1985;H.P.ラヴクラフト-その家庭と暗影(J.ヴァーノン・ジェイ)

第6巻、1985;一紳士の死-H.P.ラヴクラフトの最後の日々-(エヴァーツ&ギャムウェル)

第7-Ⅰ巻、1985;『HPLの思い出』補遺(オーガスト・ダーレス)/ラヴクラフトとボルヘス(バートン・レヴィ・セント=アーマンド)/高等批評と『死霊秘法(ネクロノミコン)』(ロバート・M・プライス)

第8巻、1986(ラヴクラフト自身のエッセイ篇でもあります)禅とラヴクラフトの芸術(ドナルド・R・バールスン)

第9巻、1986;恐怖の陰に潜むユーモア(ドナルド・R・バールスン)/ラヴクラフト-想像的文学における不協和的要素(D.W.モジッグ)/ラ・イラーの支配者(M.H.オンダードンク)


『ユリイカ』、vol.16 no.10、1984.10、pp.61-231:「増頁特集 ラヴクラフト 幻想文学の彼方に」
プロビデンスの薄暮 - ラヴクラフト受容小史(紀田順一郎)/アマチュア作家ラヴクラフト(矢野浩三郎)/神経症と作家(田中光二)/呪詛のイマーゴ(天野哲夫)//
恐怖の鍊金術-ラヴクラフトの存在様式(深田甫)//
名状しがたきもの(H.P.ラヴクラフト)/アーサー・ジャーミン卿の秘密(H.P.ラヴクラフト)//
対談 悪夢よりの帰還 - 恐怖の鉱脈としてのラヴクラフト(荒俣宏・笠井潔)//
最後から2番目の真実 - ラヴクラフトの修辞学(大橋洋一)//
あの人(H.P.ラヴクラフト)//
ラブクラフトからの影(鈴木聡)//
ラヴクラフト小説の怪(那智史郎)/時空の溯行(1)(由良君美)/身体の記憶(朝吹亮二)//
ニューイングランドのデカダン派(抄) - H.P.ラヴクラフト論(バートン・L・セント・アーマンド)/
戸口(ヽヽ)にあらわれたもの - ラヴクラフトへの接近の為のノート(丹生谷貴志)/ラヴクラフトと元型(秋山さと子)/超自然におけるラヴクラフト(松井克弘 )/ささやきから響きへ- ラヴクラフト研究史(宮壁定雄)/幼児性の悪意と(エロス) - ラヴクラフトの偏位(鎌田東二)

 * →こちら(「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「クロウリー」の項)や、そちら(同、「x. フランスから」)、またあちら(「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「エリック・F・ラッセル」の項)も参照
 朝松健名義で
井上雅彦編、『魔術師 異形アンソロジー タロット・ボックスⅡ』(角川ホラー文庫 H32-7)、角川書店、2001、pp.27-50
 に再録


菊地秀行、「この地に朱の楽園を - ラヴクラフト《クトゥルー神話》」、『ユリイカ』、vol.25 no.1、1993.1:「特集 幻想の博物誌」、pp.75-81

 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「菊地秀行」の項


『別冊幻想文学 10 ラヴクラフト・シンドローム』、1994.4
銀幕によみがえる禁断の魔書 「ネクロノミカン」の世界[最新HPLシネマ紹介]/インスマスから蔭洲升へ 小中千昭インタビュー/佐野史郎ラヴクラフトを語る。かくもエロティックに山々は唸り……/大瀧啓裕 未知なるHPLを求めて(特別インタビュー)//
夢魔10夜 H.P.ラヴクラフト書簡集より//
異界からの訪問者-H.P.ラヴクラフト小伝(モーリス・レヴィ)+解説 フランスにおけるラヴクラフト(森茂太郎)/夕ばえの街-ラヴクラフト旅行記(菊地秀行)//
インタビュー/7人のラヴクラフティアン;栗本薫 『魔界水滸伝』に終末を語る/風見潤 『クトゥルー・オペラ』に邪神を屠る/矢野浩三郎 ラヴクラフト翻訳談義/仁賀克雄 『暗黒の秘儀』を訳して/松井克弘 神話大系出版に燃える/鏡明 ラヴクラフトとアメリカの闇/荒俣宏 ラヴクラフトは『斜陽』である//
闇に輝くもの(朝松健)/恐るべき物語 ウィアード・テイルズ(フレッド・チャペル)//
ラヴクラフト入門百科事典(幻想文学会編);全小説作品梗概/評論と詩・解題/固有名詞事典/固有名詞事典 神話作品篇/関連人物事典/ラヴクラフト図書館など、
208ページ。


金井公平、「西洋文学における超自然 - H.P.ラヴクラフトとゴシック小説 -」、『明治大学人文科学研究所紀要』、no.44、1999.2.25、pp.93-105 [ < 明治大学学術成果リポジトリ

「Ⅱ. H.P.ラヴクラフト」 < 「現代文学とサイエンス・フィクション トールキン、ラヴクラフト 想像力と神話」(フランソワ・フラオ)< 「近代・現代ヨーロッパの神話」、『世界神話大事典』、2001、pp.889-890

朝松健編、『秘神界 歴史編』(創元推理文庫 F ん 1-1)、東京創元社、2002

 所収の;
ラヴクラフトの居る風景-マンガとラヴクラフトの40年-(米沢嘉博)/映画におけるクトゥルー神話(鷲巣義明)/ゲームにおけるクトゥルフ(安田均)


朝松健編、『秘神界 現代編』(創元推理文庫 F ん 1-2)、東京創元社、2002

 所収の;
異次元からの音、あるいは邪神金属(霜月蒼)/現代オカルティズムとラヴクラフト**(原田実)

 * →こちらも参照:本頁下掲の「おまけ
 ** →そちら(「ユダヤ Ⅲ」の頁の「xvi. キリスト教カバラー、隠秘学的模作など」)や、あちら(「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「x. フランスから」)、またここ(「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「エリック・F・ラッセル」の項)も参照


春日武彦、「五、受話器を握る怪物 H・P・ラヴクラフト『ランドルフ・カーターの陳述』」、『無意味なものと不気味なもの』、文藝春秋、2007、pp.79-98

 同じ著者による→こちらも参照:「怪奇城の高い所(前篇) - 屋根裏など」の頁

鷲沢弘志、「ラヴクラフトに寄せるノスタルジア - 『旧支配者』への憧憬」、『ネオ・ゴシック・ヴィジョン』、2008、pp.142-153
ラヴクラフトと「ゴシック」を結ぶ闇/「クトゥルー神話」の虚実/ラヴクラフト宿命の「矛盾」/〈時間超克〉を夢想するアウトサイダー

古木宏明、「破滅への欲望 - H・P・ラヴクラフト作品が求められる理由の考察 -」、『龍谷大学大学院研究紀要社会学・社会福祉学』、no.16、2009.3、pp.2-18 [ < 龍谷大学図書館

金沢篤、「ラヴクラフトと『禅の書』 - お疲れの女子と蕩児と男性に」(修訂版)、2012/9.27 [ < インド論理学研究会

金沢篤、「【BST10】ラヴクラフトからレーリヒへ - レーリヒ来日の事情(1)」、2012/10/67 [ <インド論理学研究会

金沢篤、「レーリヒと河口慧海 : レーリヒ父子来日の事情を探る」、『駒澤大学仏教学部研究紀要』、no.17、2013.3、pp.270-244 [ < 駒澤大学学術機関リポジトリ

 リョーリフ(レーリヒ)に関し→こちらも参照:「怪奇城の外濠 Ⅱ」の頁の「劇場と舞台装置」の項

ミシェル・ウエルベック、星埜守之訳、『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』、国書刊行会、2017
原著は Michel Houellebecq, H.P. Lovecraft : Contre le monde, contre la vie, 1991/1999/2005/2015
ラヴクラフトの枕(スティーヴン・キング)//
序//
もう一つの世界;儀礼としての文学//
攻撃の技術;晴れやかな自殺のように物語を始めよ/臆することなく人生に大いなる
(ノン)を宣告せよ/そのとき、大伽藍の偉容が見えるだろう/そしてあなたの五感、いわく言い難い錯乱のベクトルは/完全な狂気の図式を描きだすだろう/それは時間の名づけ難い構造のなかに迷い込むだろう//
ホロコースト;反伝記/ニューヨークの衝撃/人種的憎悪/わたしたちはハワード・フィリップス・ラヴクラフトから魂を生贄にするすべをいかに学ぶことができるのか/世界と人生に抗って//
読書案内など、
208ページ。


『ユリイカ』、717号、2018.2、pp.27-240:「特集 クトゥルー神話の世界 - ラヴクラフト、TRPG、恐怖の哲学」
可愛いアーメンガード あるいは、田舎娘の心(ラヴクラフト、1919-21)//
対談 クトゥルー神話のあとさき - ー○○年後のシェアードワー(ル)ド(森瀬繚・黒史郎)//
クトゥルー神話導入の作法(小中千昭)/アメコミにおけるクトゥルー神話(森瀬繚)/クトゥルー神話とTRPG(寺田幸弘)/「
克蘇魯(クトゥルー)」、中華圏にて、大いに信者を獲得中(立原透耶)//
創作;リアリティ・ショウ(高山羽根子)/御身の名は(酉島伝法)/契約の成立(赤野工作)/幻影煉瓦(藤田祥平)//
対談 機械論的唯物論者は旧支配者たちを夢見る(稲生平太郎・高橋洋→こちらも参照:「怪奇城の外濠」の頁の「iii. 怪奇映画とその歴史など」)//
声とイメージの呪力 真説『ネクロノミコン』(伊藤博明→そちらも参照:「ルネサンス、マニエリスムなど(15-16世紀)」の頁の「i. 通史・概説的なものなど」)/ラヴクラフトの魔術と神秘主義 怪物・幻視・『ネクロノミコン』(田中千惠子→あちらも参照:「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「xiii. ロマン主義、象徴主義の周辺など」)/クトゥルー神話、あるいは神亡き後のオリジナルなき複製増殖装置(大野英士)//
創作;マドニー・マドニー(久正人)//
現象学のホラーについて ラヴクラフトとフッサール(グレアム・ハーマン)/クトゥルーの呼び声に応えよ ラヴクラフトと時代の思想/クトゥルー新世の物語(逆巻しとね)/怪奇的自然は妖怪を滲出する 非近代的諸世界における「人ならざるもの」の褶曲(廣田龍平)/生物学と虚構の往還 現代日本で〈クトゥルー神話〉を開くために(西貝怜)//
ラヴクラフトの〈夢見る力〉 コリン・ウィルソンのラヴクラフト評価を介しての(小森健太朗)/古典翻案の継承者H・P・ラヴクラフト 神話サイクルと英国文芸 付:近年のクトゥルー絵本について(大久保ゆう)/壁のなかの狂人 民俗学者H・P・ラヴクラフト(ピーター・バナード)//
クトゥルー教団の興亡(笹川吉晴)


マーク・フィッシャー、五井健太郎訳、『奇妙なものとぞっとするもの - 小説・映画・音楽、文化論集』(ele-king books)、Pヴァイン、2022、pp.23-40:「時空から生じ、時空から切り取られ、時空の彼方にあるもの - ラヴクラフトと奇妙なもの」
原著は Mark Fisher, The Weird and the Eerie, 2016, "The Out of Place and the Out of Time: Lovecraft and the Weird"

 こちらでも触れました:「〈怪奇〉と〈ホラー〉など、若干の用語について」の頁

Graham Harman, Weird Realism : Lovecraft and Philosophy, zero books, Winchester, Washington, 2012
『奇怪な実在論:ラヴクラフトと哲学』
ラヴクラフトと哲学;裂け目と恐怖の著者/言い換え(パラフレーズ)のある問題/あらゆる内容に内在する愚かさ/存在の背景/事物の霊に不忠でなく/現象学的裂け目/ラヴクラフト的存在誌/駄目にされること(ルーアネイション)について/孤独で奇異な国/宇宙的で悲劇的な作意性/様式と内容//
ラヴクラフトの作動する様式;クトゥルーの呼び声/異次元の色彩/ダンウィッチの怪/闇に囁くもの/狂気の山脈にて/インスマスを覆う影/魔女の家の夢/時間からの影//
奇怪な実在論;糸を集める/融解/裂開/分類学的謬見/奇怪な内容など、
278ページ。


 著者については

星野太、「第一哲学としての美学 グレアム・ハーマンの存在論」、『現代思想』、vol.43-1、2015.1、「特集 現代思想の新展開2015-思弁的実在論と新しい唯物論」、pp.130-142

 あわせて、同特集に掲載された千葉雅也、聞き手:岡嶋隆佑、「インタビュー 思弁的実在論と新しい唯物論」、同、pp.70-88 も参照。
 なお同特集から→こちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「メイヤスー」の項

 また
森元斎、「実在を巡って シャヴィロとハーマン、そしてホワイトヘッドへの批判」、『現代思想』、vol.43-10、2015.6:「特集 新しい唯物論」

 別の著書の邦訳も刊行されました→こちら:「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「xiii. 現象学の系譜、他」中の「ハイデッガー」の項
 そこで挙げた『四方対象』の原著(2011)はラヴクラフト論に先立つものですが、第4章中に
「人間と世界との循環が擁護し得ないほどの隘路であることを示す怪奇実在論(
weird realism)の名の下において」
 という箇所がありました(邦訳 pp.99-100)。第6章では
「本書が提示しようとしているのは、ある意味、アリストテレスの実体論をずっと奇怪なものにした理論だからである」
 とされ(pp.148-149)、アリストテレースについて第7章で、
「ここでは感覚を超えた世界についてのプラトンやカントの教説が、実体の統一性と特性の多元性というアリストテレス的区別と混ざり合っているのである」
 と述べられています(p.151)。また第4章の末尾近くで触れられる
「事物を暗示する(ヽヽヽヽ)
allude )こと」
 は(p.109)、ラヴクラフト論につながるものと見なせるかもしれません。
 なお上掲星野論文pp.136-137(註10)では
weird realism は「奇妙な実在論」と訳されています(→そちらでも触れました:「〈怪奇〉と〈ホラー〉など、若干の用語について」の頁)。
 内容に関係のない余談となりますが、ハーマンのラヴクラフト論の存在を知ったのは、上掲星野論文p.142註10でした。そんなのがあるのかとAmazonで検索してみれば、そんなに高くない。とはいえ哲学者の作家論に対するいわれのない先入見と経済的事情から、少しでも安いにこしたことはなかろうとマーケット・プレイスのとある出品者に注文しました。さほど待つこともなく本は到着、いそいそと開いてみると、乱丁に落丁でした。ページがそろっていればそれでもいいかとも思ったのですが、いかんせんどう見てもpp.13-20が抜けている。こりゃあかんと返品の手続きをとったところ、該当箇所の写真を送ってくれというので、スキャンしたものを添付ファイルにして送りました。確認の連絡があり、返品は不要とのこと。売り物にならない商品を返送するための費用はかけたくないというのは理解できるところです。同時に返金か再送を希望するかとの問い合わせがありました。まだ在庫があるのであれば、再送を希望する旨返信しました。
 さて、こちらもそんなに待たず、モノが送られてきました。今度こそと開封、ぱらぱらと繰ってみれば、またしても同じ乱丁・落丁ではありませんか。もう一度連絡をとり、同じ症状なので写真では前回と区別がつかない、つきましては返品の段取りを教えてくれといったところ、謝罪に加えて返送の必要はないとのことでした。ただ社則で返送は1度までなので、返金するとのことです。
 とまれそうした次第で手もとには同じ乱丁・落丁本が2部残ったわけです。意地になったわけでもないのですが、そうするといよいよちゃんとした本が見たい。先の出品者は何らかの事情で乱丁品をまとめて仕入れてしまったのではあるまいか。そこでもう一度Amazonを開きます。さすがにびびってしまったので、今度は新刊を発注しました。さいわい国内に在庫があるとのことです。数日して届き、やっとかと繙けば、何と、2度あることは3度あるの実例にほかなりません。ここまで来れば面白がるしかありますまい。それにしても同タイプの乱丁本がどれだけ出回っているのでしょうか。
 あらためて返送の手続き、今回は送れとのことでしたので、手もとには残っていません。そして再送の依頼、国外から取り寄せるのでしょう、時間はかかりそうなのですが、昔に比べれば洋書の取り寄せもずいぶん早くなったものです。と到着を待ちつつ、しかし3度あることは4度あるのではないか、もしまた同じことがあったらどうしようと、なかなかに不安なものでした。
 届くのが早くなるとの通知を経て、かくして本日(2015/3/19)到着しました。どきどきしながら開いて、4度目の正直、今度こそちゃんとしているようです。ほとんど感謝の念で満たされそうな案配なのでした。


 といういわけで中味はまだ読んでいないのですが、ここで余談の2です。ぱらぱら繰ったところ、クレメント・グリーンバーグの名前を何度か見かけました;p.9およびp.261註7、p.19およびp.263註23、24、pp.42-43およびp.265註47、p.266註64。グリーンバーグといえば近代主義/形式主義(フォーマリズム)美術批評の大御所です。著者の関心に帰するべきか、それともそれだけ一般教養化しているということなのでしょうか。ラヴクラフトについての本の中でグリーンバーグの名前を見つけようとは思ってもみなかったので、記しておく次第です。
追補;グリーンバーグや、その弟子といっていいのかどうか、マイケル・フリードを取りあげた論文をハーマンが書いていることを、こちら(→「2017-11-19」 < 『偽日記@はてな』)のおかげで知りました](また下掲のハーマン、「現象学のホラーについて ラヴクラフトとフッサール」、p.179 訳註[19])
追補2(2018/1/27);第1部第2章の冒頭でラヴクラフトに対する批判の例として、エドマンド・ウィルソン Edmund Wilson (1895-1972)の文章が引用されています(pp.7-8)。たまたま目に止まったのですが、上掲の赤井敏夫『トールキン神話の世界』(1994、p.8)によるとウィルソンはトールキンにも「正面きった批判」を浴びせたとのことで、ハーマンが「お気に入りの文芸批評家の一人」(p.7)と呼ぶウィルソン、彼のことがいっそ気になってくるほどなのでした(邦訳されたものもいくつかあるようですが、未見。追補2の1:ウィルソンはさらに、探偵小説にも批判の矢を向けていたとのことで、江戸川乱歩の「評論家ヘイクラフト」(1946、『随筆探偵小説』(1947)収録)、『江戸川乱歩全集 第25巻 鬼の言葉』(光文社文庫 え 6-20)、光文社、2005、pp.453-454)および「英米探偵小説界の展望」(1947、『幻影城』(1951)収録)、『江戸川乱歩全集 第26巻 幻影城』(光文社文庫 え 6-5)、光文社、2003、pp.95-96、p.100)、「英米探偵小説評論界の現状」(1947、『幻影城』収録)、同上、pp.130-131、133-134)でも言及されていました。そこで名前が出たH.ヘイクラフト編になる『推理小説の美学』(鈴木幸夫訳編、研究社、1974)を見ると、エドマンド・ウィルスン、「誰がロジャー・アクロイドを殺そうとかまうものか」(1945)が訳されていたのでした:pp.258-268)。
 本書はこうした批判に抗してラヴクラフトを擁護しようというものです。ただし「プロットの要約に焦点を当てることはするまい。その代わり、個々の節を検討し、何がそれらを効果的にしているか見つけだすという手立てになるだろう」とのことです(p.51)。ラヴクラフト批判の常套である形容詞の使い方などを見直すことで、〈
文体家(スタイリスト)〉としてのラヴクラフトが発見されるわけです(p.232)。
 第2部では目次にタイトルを挙げられた作品から幾つかの文章が選ばれ(たとえば「クトゥルーの呼び声」では13件、第2部全体で100件)、具体的に検討されます。しばしばラヴクラフトの文章を別の言い方で
言い換え(パラフレーズ)ると、文章の放つ効果を〈駄目にしてしまうこと ruination 〉が示されます(pp.38-41 も参照)。もっともその際、たとえばラヴクラフトを〈反パルプ〉作家等と呼ぶなど(p.27)、ラヴクラフトを持ちあげて〈パルプ〉を貶すのはどうかと思われたりもするのでした。
 第1部ではラヴクラフトを〈
裂け目(ギャップ)〉の作家と見なしていました。たとえば宇宙を原子の集散ととらえる古代の原子論や知覚の束と見なすヒュームのような一元論に対し(p.2)、イデアと生成を対立させるプラトーンの二世界論などは世界の構造に〈裂け目(ギャップ)〉を見出します。とりわけ念頭に置かれているのは現象と物自体を峻別したカントのような気がするのですが、カントだけでは不充分とハーマンは考えているらしく(p.28)、このあたりは上で触れた『四方対象』もあわせてご参照ください(また下掲のハーマン、「現象学のホラーについて ラヴクラフトとフッサール」、p.160, pp.162-164, p.167, また「訳者解題」、p.181)。
 とまれ第2部での検討からハーマンはラヴクラフトに、

1. 「記述不可能な実在をただ〈暗示する〉」こと(p.234)、「ラヴクラフトの文体の〈垂直的〉ないし暗示的局面」(p.24)、

2. 「〈水平的な〉奇怪さ」(p.25)、暗示ではなく、「触れることのできる事物の数多い、奇妙で心乱す特徴を過剰なまでに積みあげる」〈文学的キュビスム〉(p.234、また p.35)、

3. 「対象もその特徴もあらゆる記述に抗する」場合(p.234)、

4. 「隕石や金属装飾のような既知で完全に接近可能な対象が、読み解きえない、しかし実在的な特徴を持っていることがわかる」場合(P.235)

 を認めます。「ラヴクラフトの著述におけるこれら四つの基本的な緊張は、〈存在誌〉の哲学的科目に属するのと同じ四つである」とのことです(同)。かくして『四方対象』での議論に結びつけられるのでした。最後から二つめ、"The Taxonomic Fallacy"の章では、クレアンス・ブルックス
Cleanth Brooks (1906-94)に代表される新批評(ニュー・クリティクス)〉(およびグリーンバーグも視野に入れつつ)と自らの立場との異同が説かれます。
 とはいえ第2部の分析がきわめて具体的な点は、大いに評価したくなるところでしょう。対象と特徴の〈
裂け目(ギャップ)〉に注目するハーマンが、『狂気の山脈にて』後半と『時間からの影』における〈年代記〉に対して点が辛いのも(pp。148-149,215, 223-229)、筋は通っていると見なせるでしょうか - 賛同するかどうかはさておき。また他の作家に対してラヴクラフトをどのように位置づけているのかという点も、気になるところです。
 ついでに、

「建物を描いたブラックの絵のいくつかは、ラヴクラフト自身の不穏な建築描写について私たちが有する、最良の視覚的近似値である」(p.242)

という一節も引いておきましょう(下掲のハーマン、「現象学のホラーについて ラヴクラフトとフッサール」、pp.174-175 も参照。そこに付された註29(p.178)には「ブラックの1908年のカンヴァス《レスタックの風景》」が挙げられていました。

「ラヴクラフトによる南極の街の記述と、もっとも合致した例として見ることができる」

とのことですが、具体的には不詳。《レスタックの陸橋
Le viaduc à L'Estaque (Viaduct at L'Estaque) 》(油彩、73x60cm、モンテ・カルロ、個人蔵)や《レスタックの家々 Maisons à l'Estaque (Houses at L'Estaque) 》(油彩、73x60cm、ベルン美術館)のような作品に近いものなのでしょうか? だとすると翌1909年のピカソやブラックによる風景画の方が当てはまりそうな気もするのですが)。  

 ありがたいことに、さらに邦訳 - 上のモノグラフィーに先立つ論考;

グレアム・ハーマン、飯盛元章・小嶋恭道訳、「現象学のホラーについて ラヴクラフトとフッサール」、『ユリイカ』、2018.2:「特集 クトゥルー神話の世界 - ラヴクラフト、TRPG、恐怖の哲学」、pp.158-181
原著は Graham Harman, "On the Horror of Phenomenology : Lovecraft and Husserl", Collapse, no.4, 2008
ラヴクラフトの唯物論/対象(オブジェクト)の怪奇/志向的対象/フッサールの怪奇

 「訳者解題」で上掲書(そこでは『怪奇実在論』と訳)についての解説があります(p.181。→そちらでも触れました:「〈怪奇〉と〈ホラー〉など、若干の用語について」の頁)
 また同誌で次に掲載された
逆巻しとね「クトゥルーの呼び声に応えよ ラヴクラフトと時代の思想/クトゥルー新世の物語」(pp.182-189)
 中でも取りあげられています。


 ちなみに

ユージーン・サッカー、島田貴史訳、「二一世紀のための生哲学」、『現代思想』、vol.43-10、2015.6、「特集 新しい唯物論」、pp.46-63
原著は Eugene Thacker, "Biophilosophy for the 21st Century", Critical Digital Studies : A Reader, 2008, pp.132-142

 この論考の最終節の小見出しは「古代の生(あるいはクトゥルフの生物学)」となっていました(p.55)。本文中には具体的な言及は見当たりませんでしたが、「訳者解題」によると著者には
「H・P・ラヴクラフトなどのホラー小説を生の思考の限界を示すものとして哲学的に読解した『哲学のホラー』の三部作

 (In The Dust Of This Planet (Horror of Philosophy, Vol.1)(Zero Books, 2011)
 Starry Speculative Corpse (Horror of Philosophy, Vol.2)(Zero Books, 2015)
 Tentacles Longer Than Night (Horror of Philosophy, Vol.3)(Zero Books, 2015)
があるとのことです(p.60。p.63 も参照)。
追補:上掲『ユリイカ』、2018.2:「特集 クトゥルー神話の世界 - ラヴクラフト、TRPG、恐怖の哲学」に掲載された廣田龍平「怪奇的自然は妖怪を滲出する 非近代的諸世界における「人ならざるもの」の褶曲」(pp.190-196)でも参照されていました。また、
 ロジャー・ラックハースト、巽孝之日本語版監修、大槻敦子訳、『【ヴィジュアル版】ゴシック全書』、原書房、2022、p.206
でも言及されていました)。


 というわけで Amazon で検索してみれば、そんなに高くなかったので、取り寄せてみました。例によってまだ中身は読んでいないのですが、ラヴクラフトだけを扱ったものではなく、
 伊藤潤二『うずまき』(第1巻の目次の箇所だけでなく、第3巻、pp.137-140)
など目次に名の挙がったもの以外にも、
 灰野敬二、
So, Black Is Myself 、1997(1巻、p.21、未聴)、
 道元(1巻、p.144)、
 西谷啓治(1巻、pp.156-158)、
 中川信夫『地獄』(1960;第3巻、pp.58-59)

 黒沢清『回路』(2001:第3巻、pp.59-60)、
 『デス・プラン 呪いの地図』(1958;監督:アルバート・バンド、未見)

 
Short Night of Glass Doll (1971;監督:アルド・ラド、未見)
にはさまれて
 ロジャー・コーマンの『姦婦の生き埋葬』(1962;第3巻、pp.92-94)、
ちらっとですが
 乱歩『盲獣』(1931;第3巻、p.97)、
 『血ぬられた墓標』(1960;第3巻、p.98、p.107)、
 『顔のない眼』(1960;第3巻、p.98)、
 マルゲリーティの『死の長い髪』(1964;第3巻、pp.100-101)
に続いて
 『怪談』第1話「黒髪」(1964;第3巻、pp.101-102)、
 ストイキツァ『影の歴史』(邦訳、2008;第3巻、p.135)、
 泉鏡花『高野聖』(1900;第3巻、pp.146-147)
などなどが出てきます。
 また第2巻 p.48 に載っていた挿図はぱらぱら繰った時にはてっきりマレーヴィチの《白の地の上の黒の正方形》(1915)だと思いこんでしまったのですが、ロバート・フラッド『両宇宙誌』(1617-21)中の挿絵の一つとのことでした(マレーヴィチの作品のことは、ローレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』(1759-67)中の〈黒い頁)のこととともに p.49 で触れられています。ちなみに後者は件の書の第1巻第12章の末尾にあり、岩波文庫版(朱牟田夏雄訳、1969/1990)では上巻、pp.77-78。同巻 p.356 も参照)。
 とまれ、ラヴクラフトの出番はあまりなかった三部作ですが(第3巻ではぼつぼつ見かけます)、第3巻本文の最後のページの前のページ(p.184)で、
「『アザトースの書』、『エイボンの書』、『水神クタアト』、『屍食教典儀』、『墓の中での死者の咀嚼について』、『妖蛆の秘密』、『象牙の書』、『グラーキの黙示録』、『無名祭祀書』、『ナコト写本』、『シグサンド写本』、『グハーン断章』、
Poakotic Fragments、それからもとより、『ネクロノミコン』がある」
と、クトゥルー神話ゆかりの書名が並べられるのでした(『墓の中での死者の咀嚼について
De Masticatione Mortuorum in Tumulis 』はどこに出てくるのでしょう? また Poakotic Fragments というのは先に挙げられた『ナコト写本 Pnakotic Manuscripts 』のことなのでしょうか? ちなみに『エイボンの書』と『象牙の書 Liber Ivonis 』は同じものとのこと)。 

Eugene Thacker, In the Dust of this Planet (Horror of Philosophy, Vol.1), Zeo Books, Winchesteer, Washington, 2011
『この惑星の塵の中で 哲学の恐怖 Ⅰ』
序-不可知の雲//
悪霊論についての三つの論点(クワエスティオー)
論点(クワエスティオー)Ⅰ - ブラック・メタルにおける「ブラック」の語の意味について/論点(クワエスティオー)Ⅱ - 悪霊はいるかどうか、およびいかにして彼らを知るかについて/論点(クワエスティオー)Ⅲ - 悪霊論について、そしてそれは尊重すべき研究分野かどうか//
隠秘哲学についての六つの読解(レクティオー)前文 - アグリッパの『隠秘哲学について』について/マーロウの『ファウストゥス博士の悲劇』 - ゲーテの『ファウスト第1部』/ウィートリーの『黒魔団』 - ブリッシュの『黒い復活祭、あるいはファウスト・アレフ=ヌル』/ホジソン『幽霊狩人カルナッキ』 - 「二次元の世界へ」(『アウター・リミッツ』第12話)/ラヴクラフトの「彼方より」 - 伊藤潤二の『うずまき』/霧と分泌物についての余談/M.P.シールの『紫の雲』 - ホイルの『暗黒星雲』 - バラードの『狂風世界』/『カルティキ/悪魔の人喰い生物』 - 『怪獣ウラン』 - ライバーの「黒いゴンドラ船頭」/附記:シュミットの『政治神学』について//
神学の恐怖についての九つの討論(ディスプターティオー)来世/冒瀆的な生/環境災害/
(ネクロス)/生物学の精/一義的な被造物たち/絶滅と実存/非存在としての生/無名の恐怖//
「黒い触手状の空虚の副調和な囁き」など、
178ページ。


Eugene Thacker, Starry Speculative Corpse (Horror of Philosophy, Vol.2), Zero Books, Winchesteer, Washington, 2015
『星の思弁的屍 哲学の恐怖 Ⅱ』
星の思弁的屍;デカルトの魔/カントの憂鬱/ニーチェの笑い/哲学の恐怖//
闇への祈り;暗がりの怖れ/天の墓/神的な闇(ディオニュシオス・アレオパギテース)/暗い神(マイスター・エックハルト)/闇の中で闇とともに(フォリーノのアンジェラ)/暗い瞑想(不可知の雲)/暗い夜(十字架のヨハネ)/闇の過剰(ジョルジュ・バタイユ)/神的な闇についての釈義/ブランショの夜/黒い宇宙/暗い、黒い/何も見えない/黒の上の黒//
無への祈り;空間恐怖/無と無性(ハイデッガー、サルトル、バディウ)/神は無である(マイスター・エックハルト)/無の四つの定義/神的なものの論理/形而上的相互関連、神秘的相互関連/深宇宙における死(京都学派)/絶対無(西田幾多郎)/空に向かって(西谷啓治)//
否定への祈り;在るべきでないもの/絶対的な生について/寛容の存在論/上昇主義について/ショーペンハウアーの敵対/ショーペンハウアーと生の否定/生の謎/生を否定する生/宇宙的ペシミズム/哲学的ドゥームコア/在らぬ方がよい/最悪なものの論理/消去主義の亡霊//
最後の言葉、失なわれた言葉;廃された哲学者/とても、とても、とても短い哲学史/幻(Ⅰ)/ここ……一切はデザインによる/あなたに見えるものはあなたが手に入れるものだ/思考をもってなすべきこと/幻(Ⅱ)/憂鬱な実在論/哲学の廃墟に生まれて/厭人の諸変奏(ブラッシエ)/無益の哲学に向けて/パスカルの深淵など、
194ページ。


Eugene Thacker, Tentacles Longer Than Night (Horror of Philosophy, Vol.3), Zero Books, Winchesteer, Washington, 2015
『夜より長い触手 哲学の恐怖 Ⅲ』
夜より長い触手;広大で沸きたつ宇宙(ポー、ラヴクラフト)/哲学の恐怖/超自然的な恐怖について(ある個人史)/見えるものが信じられない、信じるものが見えない//
魔的なものについての瞑想;地獄について(ダンテの『地獄篇』)/地獄についての脇道/死せる文彩、甦った死体/上のごとく、下にも/腐敗しやすい身体/堕ちるもののみが立ちあがることができる/死亡者名簿/地獄についての変奏/アルジェントの『インフェルノ』/禍をもたらす生//
ゴシックについての瞑想;獣たちの書(ロートレアモンのマルドロール)/歯と爪、肉と血/変身の至福/私は死骸を運び回る/文学に抗して、生に抗して/生きながら喰われるか生きながら埋められるか/ユカタハタの夢/死の長い髪/浮遊する屠殺場/溶けた媒体//
怪奇なものについての瞑想;凍てついた思考(ブラックウッド、ラヴクラフト)/超自然的なものの論理/怖れでも思考でもなく/生でも死でもなく/黒い照明/陰影礼賛/黒い
分析素(マテーム)/自然恐怖/触手についてのある釈義/私たちはここから来たのではない(リゴッティ)/修道院恐怖//
あたかも……;あたかも/さまよえる哲学者/退位させられて/幻(Ⅲ)/宗教的恐怖/かつて生きていた影/幻(Ⅳ)/世界は幻になる/幽霊の自殺/定言的命令のための一つの議論/恐怖讃歌/不浄な物質/隠された特質/幻(Ⅴ)など、
212ページ。


 第1巻の序では

「私たちにとっての世界
world-for-us」=〈世界 World
「それ自身における世界
world-in-itself」=〈大地 Earth
「私たちなしの世界
world-without-us」=〈惑星 Planet

 が区別されます。
「私たちなしの世界は私たちにとっての世界とそれ自身における世界の影の中にあり続ける」(p.6)。
「私たちなしの世界はどこかその間に、同時に非人格的でもあればもの怖ろしくもあるぼんやりとした地域にある」(同)。
 「〈世界〉でも、〈大地〉でもなく、〈惑星〉(私たちなしの世界)にほかならないある世界に対面した人間の限界についてのものとして、
恐怖(ホラー)は理解されるべきなのだ」(p.8)。
恐怖(ホラー)は考えることができないものを逆説的に考えることについてのものである」(p.9)。
「つづめていえば、〈
恐怖(ホラー)〉とは〈私たちなしの世界について哲学的に考える非哲学的な企てにほかならない〉というのが、本書の議論なのだ」(同)
 とのことです。

 ちなみに
「〈神話論的(古典的=ギリシア的)〉、〈神学的(中世的=キリスト教的)〉、〈実存的(近代的=ヨーロッパ的)〉という解釈のための枠組みに加えて、〈宇宙論的〉とのみ呼べるような何かへと、私たちの枠組みを換えることは可能だろうか?」(p.7)
 というくだりがあって、
「ダンテの『
神曲(ディヴィア・コメディア)』、バルザックの『人間喜劇(コメディ・ユメーヌ)』のひそみにならって、『宇宙喜劇(コメディ・コスミーク)』を」
 という小松左京の言葉(小松左京、『果しなき流れの果てに』(ハヤカワ文庫 JA 1)、早川書房、1973、石川喬司「小松左京の宇宙」、p.405:(『果しなき流れの果てに』)〈日本SFシリーズ版〉あとがきよりの引用)が連想されたことでした。


 第2巻の第1章では〈哲学の恐怖(ホラー)〉について、
「思考する中で自分自身を掘り崩す思考」
 と(p.14)、第2章の6番目の節では
「思考は問いかけ、展開し、自らを否定することなく思考がもはや継続できない点まで導かれる。私が考えることのできないものを私は愛する。おそらくはこれがまた、〈哲学の恐怖(ホラー)〉の正確な定式化なのだ」
 と述べられます(pp.32-33)。
 第1章に戻ると、また、三部作の
第1巻は「一般的な諸主題、とりわけ人間の限界および〈私たちなしの世界〉という理念に関するものを導入する」、
第2巻は「哲学をあたかもそれが
恐怖(ホラー)であるかのように読むことを目指す」、
第3巻は「その逆、
恐怖(ホラー)のジャンルに属する諸作品をあたかもそれが哲学の諸作品であるかのように読むことを目指す」
 とのことです(p.16)。


 第2巻のタイトルは本文最後の最後に登場します(p.168)。そこで参照されているのは膨張宇宙において、膨張が永遠に続いた場合の未来像ですが、ちなみにその少し前で(pp.165-166)、お馴染みパスカルの〈だに〉の幻視(→こちらを参照:「バロックなど(17世紀)」の頁の「パスカル」)が引かれているのでした。
 なお第2巻の核をなしているのは、第4章でのカントおよびドイツ観念論を踏まえた上でのショーペンハウアーについての議論だと思われます。
 

 なお〈哲学の恐怖(ホラー)〉というフレーズは

Noël Carroll, The Philosophy of Horror ; or, Paradoxes of the Heart, 1990

 へのオマージュだそうで(第2巻、p。171 note 25)、そちらは未見なのですが
追補:邦訳が刊行されました

ノエル・キャロル、高田敦史訳、『ホラーの哲学 フィクションと感情をめぐるパラドックス』、フィルムアート社、2022
序//
ホラーの本質;ホラーの定義/幻想の生物学とホラーイメージの構造/要約と結論//
形而上学とホラー、あるいはフィクションとの関わり;フィクションを怖がる - そのパラドックスとその解決/キャラクター同一化は必要か//
ホラーのプロット;ホラープロットのいくつかの特徴/ホラーとサスペンス/幻想//
なぜホラーを求めるのか?;ホラーのパラドックス/ホラーとイデオロギー/ホラーの現在//
訳者解説など、
500ページ。

 「ナチュラルホラーを分析することはこの本の課題ではなく、分析するのはアートホラー、つまり日常言語でもその存在がすでに認知されている芸術横断・メディア横断のジャンルの名前としての『ホラー』の方だ」(p.39)
とのことです。
 →こちらでも触れました:「〈怪奇〉と〈ホラー〉など、若干の用語について」の頁
 余談になりますが、「訳者解説」に記されているの(p.477)を見るまでまったく気がついていなかったのですが、著者には次の邦訳もありました;

 ノエル・キャロル、森攻次訳、『批評について 芸術批評の哲学』、勁草書房、2017

『ホラーの哲学』ではグリーンバーグの名前は見かけられないようですが、こちらには出てきます)、

戸田山和久、『恐怖の哲学 ホラーで人間を読む』(NHK出版新書 478)、NHK出版、2016

 が、
「本書全体の下敷きになっているのは、ジェシー・プリンツとノエル・キャロルの次の本だ」
 として挙げていました(p.431)。
 やはり→こちらで挙げました:「〈怪奇〉と〈ホラー〉など、若干の用語について」の頁
 ちなみにプリンツの本というは(やはり未見);


Prinz, J.J., Gut Reactions : A Perceptual Theory of Emotion, 2004

 関連して;

哲学のホラー――思弁的実在論とその周辺」、2015.1.22 [ <『仲山ひふみの日記』 ]

 ラヴクラフトだけでなく、やはりグリーンバーグだのの名前が出てきます。
…………………

 近年やたらと増えたガイドブック類から、手元にあるもので;

朱鷺田祐介、『クトゥルフ神話ガイドブック-20世紀の恐怖神話-』、新紀元社、2004
序章 クトゥルフ神話への招待/ラヴクラフトと神話の誕生/後継者たちの悪夢/クトゥルフ・ジャパネスク/資料編など、
304ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:「通史、事典など」の頁の「vi. 四大その他


サンディ・ピーターセン、リン・ウィリスほか、中山てい子・坂本雅之訳、『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』(ログイン・テーブルトークRPGシリーズ)、エンターブレイン、2004
原著は Edited by Lynn Willis, Call of Cthulhu, 1981/1983/1992/1993/1995/1998/1999/2001/2004
クトゥルーの呼び声/ゲーム・システム・セクション/参考セクション/シナリオ セクション/ユーティリティー セクションなど、
368ページ。


森瀬繚編著、『図解クトゥルフ神話』(F-Files No.002)、新紀元社、2005
暗黒の神統記/禁断の書物/闇の住まう場所/永劫の探求など、
240ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:本項上掲の『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』、2013


森瀬繚責任編集、『クトゥルー神話 ダークナビゲーション』、ぶんか社、2006
大槻涼樹・鋼屋ジン クトゥルーセッション/クトゥルー神話への誘い(森瀬繚)/MAKING OF CTHULHU MYTHOTH~クトゥルー神話のできるまで~(森瀬繚・竹岡啓)/21世紀のクトゥルー神話 『デモンベイン』の世界(森瀬繚)//
クリエイターズインタビュー;古橋秀之/西川魯介/後藤寿庵//
アリシア・Y外伝 ロバート・ゴドラムの研究(後藤寿案)//
クリエイターズインタビュー;友野詳/芝村裕吏//
郵便遊技とクトゥルー神話(曲直瀬一洋)/超クトゲーム(多根清史)/収穫の銃弾(広江礼威→こちらも参照:「アメリカ大陸など」の頁の「おまけ」)/安田均、グループSNE、クトゥルー神話(森瀬繚)/海外発 クトゥルーGAME(朝倉哲也)/邀撃中ノ鳥島沖海戦(内田弘樹)/舶来クトゥルフ~海の向こうから見た日本~(寺田幸弘)//
渾沌(バベル)の図書館;東京創元社/青心社/小説/コミック/副読本/クトゥルフ神話TRPG//
クトゥルー神話用語の基礎知識/
CHRONICLE of CTHULHU MYTHOTH/21世紀のラヴクラフト・スクールなど、
200ページ。


『クトゥルー神話の本 エゾテリカ別冊』、学習研究社、2007
暗黒の邪神世界へ;クトゥルー禁断の領域/ラヴクラフトとは何者か?/クトゥルー邪神アート/ラヴクラフト&クトゥルー神話 もうひとつの「もの」語り/H.P.ラヴクラフトのダニッチ・ホラー その他の物語//
クトゥルー神話入門 Q&A(朱鷺田祐介)/深淵を覗く人 H.P.ラヴクラフト小伝(那智史郎)/ラヴクラフトと神秘主義(麻績文彦)/暗黒の聖書『ネクロノミコン』の謎(坂本雅之)/魔道書事典/クトゥルー神話最新事情 ウェブ世界のクトゥルー・リーダーたち(きしはるこ)/クトゥルー神話絵図(イラスト:矢野健太郎)/邪神図鑑(イラスト:矢野健太郎)/アーカム探訪記ーラヴクラフトの故地を訪ねて(菊地秀行)/深淵の使徒たち クトゥルー神話作家列伝(那智史郎)/ラヴクラフトのいる日本怪奇文学史(東雅夫)/クトゥルー神話シネマ・ガイド(殿井君人)/[書き下ろし神話小説]真黒き街(黒史郎)/史上最小のクトゥルー神話賞・受賞作品発表/[特別付録]クトゥルー資料館など、
212ページ。


佐藤俊之監修、株式会社レッカ社編著、『クトゥルフ神話がよくわかる本』(PHP文庫 れ2-8)、PHP研究所、2008
はじめに/暗黒神伝/暗黒書伝/暗黒の巣窟/暗黒創造伝など、
288ページ。


森瀬繚、『All Over クトゥルー - クトゥルー神話作品大全 -』、三才ブックス、2018
クリエイターズインタビュー;菊地秀行//
クトゥルー神話への誘い(森瀬繚)//
クリエイターズインタビュー;ブライアン・ラムレイ/ラムジー・キャンベル/虚淵玄×鋼屋ジン//
クトゥルー神話概説;CTHULHU CHRONICLES [Mythos:神話](新井沢ワタル、編集:森瀬繚)/クトゥルー神話関連年表/CTHULHU CHRONICLES [Real:海外編](森瀬繚、竹岡啓)/CTHULHU CHRONICLES [Real:日本編](森瀬繚)/TRPG リプレイ動画と CoC(犬憑ケンヂ)//
クトゥルー神話作品総カタログ「クはクトゥルーのク」;原典/海外小説/国内小説/ライトノベル/コミック/児童書/ゲーム(一般向)/ゲーム(美少女)/ゲーム(紙媒体)/映像//
邪神伝説外伝「ティラム・バラム」(矢野健太郎)など、
480ページ。

…………………

 日本の作家による作品もかなりの数にのぼりますが、読む機会のあったものから、宇宙論的なイメージに関わりのあったことを憶えている範囲内で;

風見潤、『邪神惑星1997年 クトゥルー・オペラ 1』(ソノラマ文庫 160)、朝日ソノラマ、1980

 同、  『地底の黒い神 クトゥルー・オペラ 2』(ソノラマ文庫 170)、朝日ソノラマ、1980

 同、  『双子神の逆襲 クトゥルー・オペラ 3』(ソノラマ文庫 184)、朝日ソノラマ、1981

 同、  『暗黒球の魔神 クトゥルー・オペラ 4』(ソノラマ文庫 205)、朝日ソノラマ、1982

 栗本薫については『魔界水滸伝』(1981~)を挙げるべきところですが、巻数が多いので未見につき、とりあえず;

栗本薫、『魔境遊撃隊』(第1部・第2部)(角川文庫 緑 500-5/6)、角川書店、1984

栗本薫、『夢魔の4つの扉 グイン・サーガ外伝 14』(ハヤカワ文庫 JA 600)、早川書房、1998

 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「栗本薫」の項

矢野健太郎、『ラミア 邪神伝説シリーズ 1』(ノーラコミックス NC-013)、学習研究社、1989

 同、  『ダーク・マーメイド 邪神伝説シリーズ 2』(ノーラコミックス NC-047)、学習研究社、1990

 同、  『ラスト・クリエイター 邪神伝説シリーズ 3』(ノーラコミックス NC-066)、学習研究社、1991

 同、  『コンフュージョン 邪神伝説シリーズ 4』(ノーラコミックス NC-107)、学習研究社、1993

 同、  『リ・バース 邪神伝説シリーズ 5』(ノーラコミックス NC-123)、学習研究社、1993

 →こちらにも挙げておきます:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「xxiii. 日本の漫画、アニメーションその他

後藤寿庵、『アリシア・Y』(にんじんコミックス)、茜新社、1994

 主要登場人物の一人ジョン・ディーについては→こちらを参照:「ルネサンス、マニエリスムなど(15-16世紀)」の頁の「ジョン・ディー」の項
 また→そちらにも挙げておきます:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「xxiii. 日本の漫画、アニメーションその他


菊地秀行、『マリオネットの譚詩(バラード)』(ソノラマ文庫 き 1-37)、朝日ソノラマ、1994

 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「菊地秀行」の項

新熊昇、『アルハザードの遺産』、青心社、1994
プロローグ/アッシュールバニパルの焔の由来/傀儡戦争/カルナクの棺/エピローグ//
解説(小池一夫)など、
242ページ。


新熊昇、『アルハザードの逆襲 クトゥルー神話シリーズ 2』、青心社、1995
真紅の砂漠/サントリーニの迷宮/奈落の文様/アルハザードの逆襲など、
284ページ。
 『遺産』第1話はタイトルどおりアッシュールバニパル王治下のアッシリア、第2話はダリウス一世治下のアケメネス朝ペルシア、第3話はプトレマイオス一世治下のアレクサンドリアを舞台にしています。『逆襲』はイスラーム圏に移動、第1話と第2話はハールン・アル・ラシド(ハールーン・アッ=ラシード)をカリフにいただくアッバース朝、第3話と第4話は遡ってウマイア朝のダマスカスが主な舞台となります。
 いずれも一種の奇想を転がすことで物語が紡がれ、登場人物はしばしば変身・変形したりする。
ちなみに『遺産』第3話ではマネト(マネトーン→こちらを参照:「メソポタミア」の頁の「vi. 洋文献」)が主人公をつとめ(なので→そちらにも挙げておきます:「エジプト」の頁の「おまけ」)、
 『逆襲』第4話表題作はアルハザード伝をなす。
 アルハザードは他の話でも悪役として時空を超えて跳梁しますが、強大な魔力を誇りながら、微妙にせこいところが魅力的といえるかもしれません。
 『遺産』第1話に邪神による一人称陳述(pp.59-62、また『逆襲』第2話、pp.132-133)、
第2話にはジオラマによる〈年代記〉(pp.103-109、また『逆襲』第4話、pp.236-237)が見えます。
 また『逆襲』第1話では、タイトルにある真紅の砂漠の
「数え切れぬ真紅の砂粒を見よ。この一つ一つが混乱極まりない世界を孕んでおる。/儂とおまえが立っているこの世界も、実はこの砂粒の一つに過ぎぬのだ」(pp.31-32)
 と述べられたりします(p.71も参照)。
 わけても白眉は『逆襲』第3話「奈落の文様」でしょうか。
「玄武岩の柱の彼方、伝説の都カトゥリア」、「そこに集まる全ての次元の海が大瀑布となって落ちる奈落の深淵」(p.168)
 を目指す旅に主人公は出るのですが、何とクトゥルーの体内に侵入、
「カトゥリアは、このクトゥルーを始め、ハスターやナイアーラトテップ、シュブ・ニグラスらがそれぞれの胎内に分けて持っている次元世界の断片なのだ」(p.197)、
 さらに体内で
「途中、いくつもの次元の壁らしき淡い色の光の幕を通過、やがてついにいくつもの気泡が下からの黄金の光に照らされている広間に出た。/その気泡の一つ一つが、どうやら『邪神の中の世界』らしく、…(中略)…邪神も神らしく、自分が作るべき、あるいは棲むべき世界を内蔵していた」(p.199)
 さまを目撃するのでした(→あちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁)。
 間をおいて現代を舞台に、かわらずアルハザードがちらちら暗躍する;

新熊昇・都築由浩、『
災厄娘(アイリーン) in アーカム』、青心社、2010

 その前日譚となる

新熊昇、『冥王の刻印』、青心社、2015

新熊昇、『黒い碑の魔人』、青心社、2018

 と続きますが、奇想の密度はやや薄まったような気がしないでもありません。それでも『災厄娘』では、地球の
「ありとあらゆる生命の怨念を糧として生じ」(p.161)
 た〈悪魔〉がクトゥルー神話系の〈外なる神〉の力を吸収しようとしたりします。これは『遺産』第2話における
「黒い邪念の固まり」であるアーリマン(p.131)、
 『逆襲』第4話の
「不安そのものが具現化した存在である魔神」(p.247)
 といったイメージを引き継ぐものと見なせるでしょうか。
 
 さらに;

新熊昇、「ウマル皇子の天球儀」、『クトゥルー 闇を狩るもの』、青心社、2020、pp.237-280
 「イスラム暦690年、西暦1291年、アラビア半島南端のイエメン王国、ラスール朝のウマル皇太子」(p.238)
は天文学の愛好家でした。ある時、禁書『闇の天球儀とアストロラーベ』を目にする機会を得、そこに記されていたとおり天球儀とアストロラーベを製作したところ、
「異なる世界の天の川、星の雲、目印とされるであろう明るい星星」(p.247)
などのさまが私室の天窓に映しだされるという異変が起こります。皇子は
「後宮の自分の百人の寵姫」(p.252)
に事態を確認させようとしたところ、ただ一人、
「アラビアの砂漠の奥地も奥地、さらなる奥地『深紅の砂漠』と呼ばれる魔界」(p.256)
の出身だという少女ファティマだけが認識を共有するのでした。
「ダオロスという宇宙の混沌の根源である神」(p.260)
「宇宙の混沌、無限の多胞体にして幾何学を越える姿をした神ダオロス」(p.273)
 の話が出てくるほか、この著者の他の作品同様、心中の声だけではあれアルハザードも登場します(pp.266-267)。
 なおダオロスは

ラムジー・キャンベル、尾之上浩司訳、「ヴェールを破るもの」、『クトゥルフ神話への招待 遊星からの物体X』、(扶桑社ミステリー キ17-1)、扶桑社、2012、pp.133-155
原著は
Ramsey Campbell, "The Render of the Veils", 1964

 が初出とのこと。その中には『ネクロノミコン』に記されているという〈夢の結晶体〉に関わって、
「眠っているあいだに別次元へと転位するための道具のひとつだ。あまり使っていないが、何年もかけてほtんどの次元を、二十五次元の高みまで旅してきた。きみの感覚を最終次元まで上昇させられたなら、そこが無の空間なのがわかるだろう!」(pp.145-146)
 なんてくだりもありました。上掲の森瀬繚『ゲームシナリオのための クトゥルー神話事典』(2013)、p.113 も参照。
 

伏見健二、『セレファイス』、メディアワークス、1999

 同、  『ロード・トゥ・セレファイス』、メディアワークス、1999

 同、  『ハスタール』(電撃文庫 ふ-5-1)、メディアワークス、2001

伏見健二、『レインボゥ・レイヤー 虹色の遷光』(ハルキ文庫 ふ 3-1)、角川春樹事務所、2001

山本弘、原案:安田均、『ラプラスの魔 ゴーストハンター』(角川スニーカー文庫 S618-1)、角川書店、2002
 1998年刊本の加筆・訂正版

 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「山本弘」の項


涼風涼、原作:鋼屋ジン、『斬魔大聖デモンベイン 無垢なる刃』(角川スニーカー文庫 S156-5)、角川書店、2003

 同、  『斬魔大聖デモンベイン 魔を断つ剣』(角川スニーカー文庫 S156-6)、角川書店、2004

 同、  『斬魔大聖デモンベイン 明日への翼』(角川スニーカー文庫 S156-7)、角川書店、2004

古橋秀之、原作:鋼屋ジン、『斬魔大聖デモンベイン 機神胎動』(角川スニーカー文庫 S156-8)、角川書店、2004

 同、  『斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲』(角川スニーカー文庫 S156-13)、角川書店、2006

 同、  『斬魔大聖デモンベイン ド・マリニーの時計』(角川スニーカー文庫 S156-14)、角川書店、2006

倉阪鬼一郎、『ブランク 空白に棲むもの』(ミステリーYA!)、理論社、2007

 同じ著者による→こちら(本項下掲の「回転する阿蝸白の叫び声」(2014)および「闇の美術館」、2014)や、そちら(「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ」)、あちら(本項下掲の『大いなる闇の呼び声』(2015)および『魔界への入口』、2017)を参照

石神茉莉、「夢オチ禁止」、『音迷宮』、講談社、2010、pp.213-236

 この短篇は

石神茉莉、『蒼い琥珀と無限の迷宮』(NIGHT LAND LIBRARY J-07)、アトリエサード、2019、pp.205-224

 に再録、また同書所収の

「驚異の部屋」(pp.247-271)

 とモティーフを共有していました。なお同書からは他に、「Play of Color」、「You are next」がクトゥルー神話に題を得ています。
 他方やはり同書所収の短篇「人魚と提琴」(初出:2001)を原型にした長篇が、


石神茉莉、『人魚と提琴 玩具館綺譚』(講談社ノベルス イQ-01)、講談社、2008
 で、原型同様クトゥルー神話と銘打ってはいないのですが、「夢オチ禁止」と「驚異の部屋」双方に登場した〈混沌〉というモティーフが(前者は『蒼い琥珀と無限の迷宮』版では p.216、後者は pp.257-258、pp.263-264、p.270 など)、この長篇でも導入されていました(pp.111-112)。さらに、
「人魚よりも更に深い場所にいるモノ」(pp.196-197、p.213、pp.239-240)
 の存在が暗示されるのですが、これを「夢オチ禁止」および「驚異の部屋」で語られる存在と近づけることもできるかもしれません。
 ちなみに「夢オチ禁止」での
「夢の底に穴があいちゃった」(p.221)
 という一文は、長篇版『人魚と提琴』では「人魚の歌を聴くと、夢の底に穴があく」(p.161)なる印象的なフレーズに変奏されています。この他、ヒロインの父親の知人で、「妖精を捕まえに英国の湿地帯に行った、という方」(p.31)や、「
From Nobody」(p.54、p.182)のエピソードは、『音迷宮』・『蒼い琥珀と無限の迷宮』双方に収録された「I see nobody on the road」(初出:2004)に由来するのでしょう。

 同じ著者による→こちらを参照:「音迷宮」などについて/「怪奇城の外濠 Ⅲ」の頁の「おまけ

上甲宣之、『脱出迷路』、幻冬舎、2010

 同、    『脱出迷路 呪い二日目』、同、2010

 同、    『脱出迷路 呪い最終日』、同、2011

 台詞回しなどいささかしんどいものがあるのですが、ともあれ第1巻第5章、第2巻第1章などにペガーナ神話風世界を夢見る創造神ことアザトースのイメージが出てきます。この点に関連して上掲森瀬繚『ゲームシナリオのための クトゥルー神話事典』(2013) p.63 参照。

黒史郎、『未完少女ラヴクラフト』(スマッシュ文庫 く-2 1-1)、PHP研究所、2013

 同、  『未完少女ラヴクラフト 2』(スマッシュ文庫 く-2 1-2)、PHP研究所、2013

 前者の pp.67-69 に「スウシャイの創世神話」が記されています。
 後者は→こちらでも挙げました:「エジプト」の頁の「おまけ

 同じ著者による→そちらを参照:本項下掲の『童堤灯』、2015

間瀬純子、「羊歯の蟻」、『ユゴスの囁き』(クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)、創土社、2014

田中啓文、「夢の帝国にて」、『クトゥルーを喚ぶ声』(クトゥルー・ミュトス・ファイル)、創土社、2014

倉阪鬼一郎、「回転する阿蝸白の呼び声」、同上

 後者の著者による→こちらを参照:本項上掲の『ブランク 空白に棲むもの』、2007

倉阪鬼一郎、「闇の美術館」、『闇のトラペゾヘドロン』(クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)、創土社、2014

友野詳、「闇に彷徨い続けるもの」、同上

 後者は→こちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁


山田正紀、『クトゥルフ少女戦隊 第1部』、2014

  同、   『クトゥルフ少女戦隊 第2部』、2014

越智文比古、『Y(ヨグ)の紋章師』(MF文庫 お-11-01)、株式会社KADOKAWA、2014

  同、 『Y(ヨグ)の紋章師2』(MF文庫 お-11-02)、株式会社KADOKAWA、2015

  同、 『Y(ヨグ)の紋章師3』(MF文庫 お-11-03)、株式会社KADOKAWA、2015

 登場人物の言動などいささかしんどいものがあるのですが、ともあれ第3巻第4章に開闢神話が出てきます。ここでのヨグ=ソトホースのイメージは、第3巻の「あとがき」で挙げられている上掲の後藤寿庵『アリシア・Y』(1994)に触発されたようです。

倉阪鬼一郎、『大いなる闇の喚び声 美術調律者、最後の戦い』(クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)、創土社、2015

 『赤い球体 美術調律者・影』(角川ホラー文庫、角川書店、2012)、『黒い楕円 美術調律者・影』(同、2012)、『白い封印 美術調律者・影』(同、2013)に続くシリーズ完結篇。
 同じ著者による→こちらを参照:本項上掲の『ブランク 空白に棲むもの』、2007
 また

倉阪鬼一郎、『魔界への入口 クトゥルー短編集』(クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)、創土社、2017

 から、とりわけ「インサイダー」(1987)。さらに「異界への就職」(1992)、「未知なる赤光を求めて」(1987)、「虚空の夢」(2017)なども。上掲の「闇の美術館」(2014)のクライマックスもそうでしたが、作品によっては反転した神秘主義的道程といった趣きも認められます。


黒史郎、『童提灯』(クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)、創土社、2015

 グロテスクな残酷絵巻とルサンチマンによる泣き節がない交ぜになって、グレッグ・ベア『ブラッド・ミュージック』(1985)のラスト(あるいは『新世紀エヴァンゲリオン』TV版(1995-1996)最終回の一場面か)を連想させるラストになだれこむ一方、冷静な暗黒童話的博物誌(神学を含む)が織りこまれるという作品でした。
 →こちらでも触れています:「怪奇城の外濠 Ⅲ」の頁の「おまけ
 同じ著者による→そちらを参照:本項上掲の『未完少女ラヴクラフト』および『未完少女ラヴクラフト』、双方2013
 

朝松健、『Faceless City』、アトリエサード、2016

小林泰三、『C市からの呼び声』(クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)、創土社、2018

 朝松健編『秘神界 現代編』(創元推理文庫 F ん 1-2、東京創元社、2002)に収録された「C市」に、その前日譚となる書き下ろし『C市に続く道』を加えたもの。
 後者には「可能性の世界」をめぐる面白いイメージが登場します(p.243、pp.253-254)。
 前者ではCこと Cthulhu の正体についての各派の議論が興味深いものでした(pp.259-264)。
 また双方で旧作に登場する「玩具修理者」が言及されます(pp.206-213、247-248、273)。
 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「小林泰三」の項
 

xx. 個々の著述家など-日本 Ⅰ(20世紀前半等)

宮沢賢治(1896-1933) 
夢野久作(1889-1936) 
稲垣足穂(1900-1977) 
小栗虫太郎(1901-1946) 
埴谷雄高(1909-1997) 

 「仏教 Ⅱ」のページの「おまけ」で

宮沢賢治、「インドラの網

 を挙げましたが、
 宮沢賢治(1896-1933)に関してはやはり


「銀河鉄道の夜」(未定稿、歿後公刊)、『銀河鉄道の夜』(新潮文庫 [草]92B)、新潮社、1961

 も落とすわけにはいきますまい。

松山俊太郎、『綺想礼賛』、国書刊行会、2010、pp.39-81

 に収録された
「宮沢賢治と蓮」覚書(1977)/「宮沢賢治と阿耨達池」覚書(1992)


 後者(pp.77-81)で「インドラの網」に触れています

 同じ著者による→こちらも参照:「仏教 Ⅱ」の頁の「iii. 華厳経、蓮華蔵世界、華厳教学など」中の「蓮華蔵世界について」内

寮美千子、「宮澤賢治『四次元幻想』の源泉を探る書誌的考察」、『和光大学表現学部紀要』、no.5、2005.3、pp.194-178 [ < 寮美千子ホームページ ハルモニア

大沢正善、「宮沢賢治とアレニウスの宇宙観」、『岐阜聖徳学園大学国語国文学』、no.35、2016.3、pp。44-91 [ < 岐阜聖徳学園大学リポジトリ
Permalink : http://id.nii.ac.jp/1550/00001956/

 アレニウスに関連して→こちらにも挙げておきます:「通史、事典など」の頁の「i. 天文学的なもの」の冒頭
…………………

 夢野久作(1889-1936)

『ドグラ・マグラ 夢野久作傑作選 Ⅳ』(現代教養文庫 884)、社会思想社、1976(初出は1935年)

 におけるモティーフ〈胎児の夢〉も挙げておくべきでしょうか。
 〈胎児の夢〉の原典に当たるヘッケルの「個体発生は系統発生を繰り返す」という節については、「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀末)」のページの「ヘッケル(1834-1919)」の項を参照。とりわけ

佐藤恵子、『ヘッケルと進化の(ファンタジー) 一元論、エコロジー、系統樹』、2015、pp.173-175

 この件についてはまた、


養老孟司、「『ドグラ・マグラ』の科学 - 脳・発生・進化・遺伝と時間」(1989)、『文藝別冊 夢野久作 あらたなる夢』、2014、pp.108-114

安藤礼二、『迷宮と宇宙』、2019、pp.187-262:「Ⅱ 胎児の夢」

鈴木優作、「第6章 脳内に現象する怪異 - 海野十三・夢野久作・蘭郁二郎」、怪異怪談研究会[監修]、乾英治郎・小松史生子・鈴木優作・谷口基[編著]、『〈怪異〉とミステリ 近代日本文学は何を『謎』としてきたか』、青弓社、2022、pp.142-165
はじめに/人間機械論の普及/脳神経科学による探偵小説の構築 - 海野十三/脳神経科学で〈ミステリ〉を解く - 夢野久作/脳神経科学が怪異への道を開く - 蘭郁二郎/おわりに
…………………

 稲垣足穂(1900-1977)については

「梵天の使者 - 谷崎潤一郎からのコピー -」、1974、およびその典拠となる谷崎潤一郎、「ハッサン・カンの妖術」(初出1917)
 こちら(「仏教」の頁の「i. 須弥山/三千大山世界/四大劫・六十四転大劫」中の「梵暦」)およびそちら(「仏教 Ⅱ」の頁の「おまけ」」)を参照

「弥勒」、1939~1940/1946/1969
 あちらを参照:「仏教 Ⅱ」の頁の「iv. 弥勒、過去仏、多仏説など」の冒頭

「宇宙論入門」、1947

『僕の“ユリーカ”』、1979
 →ここを参照:「近代など」の頁の「i. ~1980年代

 などをすでに挙げましたが、宇宙論に関わるテクストを多く集めたものとしては他に;

稲垣足穂、『遠方では時計が遅れる 多留保集 6』、潮出版社、1975
廿世紀須彌山/タルホ5話-クリスマスの夜の前菜/彗星問答/ベニスの思い出/星を喰う村/天文台/近代物理学とパル教授の錯覚/P博士の貝殻状宇宙に就いて/天文学者というもの/赤き星座をめぐりて/遠方では時計が遅れる/タルホ拾遺-クリスマス前菜として/人工衛星時代/月は球体に非ず!-月世界の近世史/ある宇宙模型をめぐって/一つぶの悪/おそろしき月-アポロ11号に関連して/空界へのいざない/「黒」の哲学/殻の中の月/あたしのLSD/雄鶏と三日月//
解説 足穂アラベスク(澁澤龍彦)など、
252ページ

 などがあります。ただ足穂は改題・改訂等いろいろややこしいようなので(たとえば「近代物理学とパル教授の錯覚」(1928)は「P博士の貝殻状宇宙に就いて」(1930)と改題・改作され、さらに「似而非物語」(1937)と改題・改作されたとのこと、下掲『稲垣足穂全集 2 ヰタ・マキニカリス』、2000、pp.417-418)、ここはとりあえず;


「一千一秒物語」(初出は1923年)、『稲垣足穂全集 1 一千一秒物語』、筑摩書房、2000

 同巻からは他に;
「第三半球物語」(1958/1961)、「彗星倶楽部」(1926)、「螺旋境にて」(1925)、「蘇迷盧」(1930)など

 →こちらで「一千一秒物語」の題を挙げました:本頁上掲の「ブラックウッド」の項中の『妖精郷の囚れ人』のところ


『稲垣足穂全集 2 ヰタ・マキニカリス』、筑摩書房、2000

 とりわけ;
「黄漠奇聞」(1923)、「星を造る人」(1922)、「星を売る店」(1923)、「『星遣いの術』について」(1924)、「天体嗜好症」(1926)、「似而非物語」(1928-1937)など


『稲垣足穂全集 5 僕の〝ユリーカ〟』、筑摩書房、2001

 上掲の
「宇宙論入門」(1947)、『僕の“ユリーカ”』(1979)
 も含めて、天体や宇宙論に関するエッセイを集めた巻


『稲垣足穂全集 9 宇治桃山はわたしの里』、筑摩書房、2001

 とりわけ;
「日本の天上界」(1950)、「東洋の幻想」(1952)、「私の宇宙文学」(1948)など


『稲垣足穂全集 10 男性における道徳』、筑摩書房、2001

 とりわけ;
「男性における道徳」(1972)、「物質の将来」(1974)など


 筑摩書房の全集は全13巻で、その後

『ユリイカ』、vol.38-11、2006年9月臨時増刊号、「総特集 稲垣足穂」、pp.23-73:「稲垣足穂新発見作品10篇」

高橋信行編、『足穂拾遺物語』、青土社、2008

 などが追加されています。宇宙論に関わるものも上に挙げた以外にまだまだありますし、足穂について論じたものも、上の『ユリイカ』2006.9の特集号や

『別冊新評 稲垣足穂の世界〈全特集〉』、1977.4

『別冊幻想文学 3 タルホ・スペシャル』、1987.12

『新文芸読本 稲垣足穂』、1993.1

 などをはじめとして、どっさりあることでしょうが、
 ここでは「通史、事典など」のページの「おまけ」でふれた


巖谷國士、『宇宙模型としての書物』、青土社、1979

 の表題作および「稲垣足穂とコスモロジー」(『僕のユリーカ』讃/足穂氏宇宙)

田中聡、「稲垣足穂 『人間人形』の道徳」、『怪物科学者の時代』、1998、pp.257-275

安藤礼二、「宇宙的なるものの系譜 埴谷雄高、稲垣足穂、武田泰淳」、『光の曼陀羅 日本文学論』、講談社、2008

 他の目次は;
序 死者たちの五月//
宇宙的なるものの系譜;耆那大雄をめぐって 埴谷雄高『死霊』論/鏡を通り抜けて - 江戸川乱歩『陰獣』論/未来の記憶 - 稲垣足穂『弥勒』論/A感覚的レオナルド - 南方熊楠と稲垣足穂/野性のエクリチュール - 南方熊楠とアンドレ・ブルトン/混沌たる大楽 - 南方熊楠の宇宙論/不可能な薔薇 - 中井英夫『虚無への供物』論/閉じられた部屋のなかで - 密室論//
光の曼陀羅;『死者の書』の謎を解く/光の曼陀羅 - 『初稿・死者の書』解説/折口信夫新発見資料/虚空の曼陀羅 - 折口信夫新発見資料解説/身毒丸変幻 - 折口信夫の「同性愛」/ユリシーズの帰還 - 折口信夫とアジア的世界/神と獣の間で - 透谷、泡鳴、迢空/青い時間 - 折口信夫の戦後など、
622ページ。

 →こちらでも挙げています(本頁下掲の埴谷雄高に関して)。
 同書からは→そちらも参照(『死者の書』に関連して:「エジプト」の頁の「おまけ」)。
 また同じ著者による→あちらを参照:「日本 Ⅱ」の頁の「xi. 近代など

松山俊太郎、『綺想礼賛』、国書刊行会、2010、pp.277-344

 に収録された

東洋への回帰(1975)/弥勒から弥勒まで(1975)/文は人ならず、しかも、人なり(1977)/弥勒変幻 - タルホ作品のヴァリアントをめぐって(1987)/輪廻思想をめぐって - 対談・稲垣足穂(1974)/タルホ文学の迷路 - 対談・種村季弘(同じ著者による→こちらを参照:「通史、事典など」の頁の「iii. 地学・地誌・地図、地球空洞説など」)(1975)


 同じ著者による→こちらも参照(『松山俊太郎 蓮の宇宙』:「仏教 Ⅱ」の頁の「iii. 華厳経、蓮華蔵世界、華厳教学など」)

 などのみ挙げておきましょう。

 足穂については「美術の話」の「ロシア・アヴァンギャルドと日本の一九二〇年代 ふくふく、ふさふさ、ごごごご、あるいは一千一秒のはざまに」(2000.9.9)の最後の節でふれたりもしました(→このあたり)。
 こちらもまた同断→「ふわふわ、きちかち、ずずずず、あるいは黒死館の影のもとに」、『1930年代展』図録 1999.9 < 三重県立美術館サイト

…………………

 夢野の『ドグラ・マグラ』と並び称せられる小栗虫太郎(1901-1946)の『黒死館殺人事件』(1934)でも、全篇がゲーテ『ファウスト』に基づく四大精霊の呪文を枠組みとしているだけでなく、第2篇の冒頭でアインシュタインとド・ジッターの空間の曲率に関する論争が引きあいに出されたりしていました(→こちらでも触れました:「怪奇城の図面」の頁や、またそちら:「『Meiga を探せ!』より・他」中の『虹男』(1949)の頁)。
 いろんな版がありますが、とりあえず初めて読んだ時のものが;

小栗虫太郎、『黒死館殺人事件』(上下)(講談社文庫 AX44/45)、講談社、1976

 その後、「初出誌『新青年』(1934年4月号から12月号掲載)を底本とし、世田谷区立世田谷文学館所蔵の小栗虫太郎自身の手稿と照合した上で校訂、註釈を加えた」(p.456)、いわば決定版が刊行されました;

小栗虫太郎、『黒死館殺人事件 【「新青年」版】』、作品社、2017

 山口雄也(下記『黒死館』についてのサイトの管理者)による2000項目に及ぶ註・校異・解題(補註二つ入り)に加えて、松野一夫による初出時の挿絵をすべて収録、新保博久による解説付き。

 『黒死館殺人事件』についてのサイト→『黒死館古代時計室
 サイト内の「同人誌通販」のページに挙げられた
 『素天堂文庫 黒死館逍遙』第1号~第12号
 +別巻2号(→こちらにも挙げました:「怪奇城の外濠」の頁の「v. ゴシック・ロマンス、その他」)、
 『DUKDUK ダクダク 小栗虫太郎関連資料集』(その内3号は→そちらにも挙げました:「錬金術など」の頁)
なども参照
 同じ管理者による→あちら(本頁上掲の「シェーアバルト」の項)も参照

 両者にはさまれたものの一つに

現代教養文庫版『小栗虫太郎傑作選』全5巻、社会思想社、1976-77

 があり、上掲『ドグラ・マグラ』を含んで夢野久作、久生十蘭と『異端作家三人傑作選』全15巻をなしていました。『黒死館』は虫太郎傑作選の第1巻(1977)をなすわけですが、全5巻の編集・解題を担当した松山俊太郎に協力したのが(p.474)、上の【「新青年」版】を編集した山口雄也となるのでした。

 現代教養文庫版傑作選の解題の内、第1巻・第2巻分を除く三篇は


松山俊太郎、『綺想礼賛』、国書刊行会、2010、pp.118-211

 に再録、他に(pp.212-276);
虫太郎を語る(1989)/虫太郎研究という不可能願望(1990)/虚像的迫真性への偏執 - イカロスの一性癖(1995)/永遠の廃墟『黒死館』をめぐって - 対談・紀田順一郎(1990)


 同じ著者による→こちらも参照:「仏教 Ⅱ」の頁の「iii. 華厳経、蓮華蔵世界、華厳教学など

『彷書月刊』、第5巻11号(通巻第50号)、1989.11、pp.2-26:「特集 MUSITARÔ 小栗虫太郎」
小栗虫太郎追想(渡辺啓助)/父を想う(小栗宣治)/虫太郎を語る(松山俊太郎)/虫太郎を知ったころ(都筑道夫)/愛惜してやまぬ「オフェリヤ殺し」(大内茂男)/ケルト・ルネサンス - キーワードもしくは様式の泥沼(山口雄也)/虫太郎とQ書簡(西原和海)//
わたしの虫太郎体験;白蟻(渡辺えり子)/黒死館体験(北村想)/詩的海底の廻廊(あがた森魚)//
資料 小栗虫太郎著書目録(大場啓志編)


紀田順一郎責任編集、『小栗虫太郎ワンダーランド』、沖積舎、1990
「黒死館殺人事件」の挿絵/小栗虫太郎の原稿/小栗虫太郎の単行本/小栗虫太郎年譜//
覆刻;コント/合俥夢權妻殺し/馬來風物詩 - 動物アルセーヌ・ルパン -/同 秘密結社『
白旗會(バンヂーラ・プテー・コンツ)』/同 馬來の毒/同 馬來の咒術・奇毒//
小伝・小栗虫太郎(小栗宣治)//
小栗虫太郎喫茶室;虫太郎の夢(菊地秀行)/虫太郎のグロテスク趣味(山下武)/秘境冒険小説の師(横田順彌)/アブラカダブラ呪符(西原和海)/見世物小屋の方へ(東雅夫)//
ペダンチックな
(いざな)い - 小栗虫太郎と〈幻の洋書棚〉(荒俣宏)/結界のほうへ(長山靖生)//
アンケート//
大衆的児童文学における「成層圏魔城」の位置(二上洋一)/ペダントリーの心理学(田中邦夫)//
対談 永遠の廃墟「黒死館」をめぐって(松山俊太郎 VS 紀田順一郎)//
黒死館殺人事件・解説(澁澤龍彦:同じ著者による→こちらを参照:「通史、事典など」の頁の「おまけ」)/二十世紀鐵假面・解説(種村季弘:同じ著者による→そちらを参照:「通史、事典など」の頁の「iii. 地学・地誌・地図、地球空洞説など」)など、
114ページ。


高山宏、「法水が殺す 小栗虫太郎『黒死館殺人事件』」、『殺す・集める・読む 推理小説特殊講義』(創元ライブラリ L た 1-1)、東京創元社、2002、pp.279-293
童謡殺人/イコノロジカル・スペース/アナモルフォーズ

 同じ著者による→こちらを参照:「怪奇城の外濠」の頁の「v. ゴシック・ロマンス、その他

『「新青年」趣味』、第18号、2017.10、pp.4-302:「特集 小栗虫太郎」
小栗家の戦中と戦後 - 小栗光さん、川舩通子さん、江波戸泰子さんインタビュー -/小栗虫太郎の終焉の地を訪ねて(湯浅篤志)/
小栗虫太郎「白蟻」草稿翻刻(鈴木優作)/「小栗虫太郎日記」(昭和19年12月~昭和20年8月)翻刻(浜田雄介)/
オフェリヤ捜し(素天堂)/形式が生み出す〈批評性〉 - 小栗虫太郎「完全犯罪」における優生学的イデオロギーの相対化に関して -(松田祥平)/小栗虫太郎「後光殺人事件」論 - 大本教を中心とした新宗教ブームとの関わりから -(鈴木優作)/降矢木家における天才と狂気および奇形の遺伝学 付論 ダーウィンの進化論と奇形形態学(村上裕徳)/溶解する「心理」と「論理」 - 小栗虫太郎『白蟻』論 -(井川理)/オールド・ファンたちの乱歩 - 小栗虫太郎をめぐる1934年前後の探偵小説批評から -(柿原和宏)/鉄仮面・人外魔境・成層圏 - 小栗虫太郎〈戦時下〉の想像力 -(乾英治郎)/島崎博書誌の罠 - 小栗虫太郎編(沢田安史)/
小栗虫太郎著作目録及び参考文献目録(沢田安史編)/書誌:小栗虫太郎著書目録 復権以前篇(中島敬治)


 ちなみに;

花田清輝、「探偵小説日本の傑作九篇」(1955)、『花田清輝全集 第八巻』、講談社、1978、p.72

 は、

「小栗虫太郎『完全犯罪』▽坂口安吾『安吾捕物帖』▽江戸川乱歩『二銭銅貨』▽坂口安吾『不連続殺人事件』▽小栗虫太郎『黒死館殺人事件』▽木々高太郎『人生の阿呆』▽高木彬光『刺青殺人事件』▽横溝正史『本陣殺人事件』▽江戸川乱歩『D坂の殺人事件』」

 を挙げていました。アンケートへの回答とのことで(p.451)、並びが順位を示すのかどうかは不明、また残念ながらコメントも記されていません。
 また

花田清輝、「草原について」(1965)、『恥部の思想』(1965)、『花田清輝全集 第十二巻』、講談社、1978、pp.136-161

 でも小栗「完全犯罪」に触れています(pp.152-153)。

 同じ著者による→こちらも参照:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ


 またくりかえしになりますが、上掲の→「ふわふわ、きちかち、ずずずず、あるいは黒死館の影のもとに」(1999 < 三重県立美術館サイト)で主役をはってもらいました。


山田正紀、『ミステリ・オペラ 宿命城殺人事件』(ハヤカワ・ミステリワールド)、早川書房、2001

 に関連して、→「怪奇城の図書室」の頁でも触れました。


 〝芦辺版・黒死館〟(「あとがき - あるいは好事家のためのノート」、p.379)として構想されたのが;

芦辺拓、『綺想宮殺人事件』、東京創元社、2010

 個々の事件の即物的な細部に関する解明があまり見あたらないように見えることや、「またもプロローグ」からうかがわれるように、何らかの組織の存在が設定されているらしき点が個人的に苦手なこととともに、解決部分で倫理が持ちこまれており、そのため対抗する相手に対する〈反〉の体勢がとられるわけですが、そのこと自体によって、対抗する相手と同型的に力を行使することになるという点で、無意味性の空中楼閣を築いた『黒死館殺人事件』以上に、〈反世界〉を謳った中井英夫の『虚無への供物』(1964)に近いように思われました。受け手がどうとるかとは別に、『虚無への供物』がそうであっただろうように、これはおそらく、書き手のモチヴェーションに由来しているのでしょう。
 他方、ペダントリーのあり方自体を俎上にあげるというモティーフは、とても興味深いものでした。その点は別にしても、『
地底獣国(ロスト・ワールド)の殺人』(講談社文庫 あ 78-3、講談社、2001:1997年刊本の文庫化→こちらでも挙げました:「怪奇城の地下」の頁)でもとりあげられていた木村鷹太郎(p.398 および「あとがき - あるいは好事家のためのノート 付・文庫版のためのそえがき」、p.402)はじめ、アタナシウス・キルヒャーの名は幾度となく呼びだされ、コレシュの地球空洞説やロバート・フラッド、プラトーン立体などなどなど、感慨深い名前がぞろぞろ出てきます。
 なおその内とりあえず、本書からたぐってみたのが、宮崎興二『プラトンと五重塔 かたちから見た日本文化史』(1987)とラビブ・ハバシュ、吉村作治訳『エジプトのオベリスク』(1985)でした。

…………………

 埴谷雄高(1909-1997);

『埴谷雄高全集 3』、講談社、1998
死靈(しれい)』1~9章と解題(白川正芳)、9章未定稿などを収録、
900ページ。

 第1章の初出は1946


『埴谷雄高作品集 2 短編小説集』、河出書房新社、1971
不合理ゆえに吾信ず(1939)/虚空(1950)/意識(1948)/深淵(1957)/闇のなかの黒い馬(1963)/宇宙の鏡(1968)/夢のかたち(1968)/神の白い顔(1967)/影絵の世界(1964-66)//
意識を主題とする小説(秋山駿)/解題(白川正芳)など、
390ページ。


笠井潔、「『死霊』の神秘思想」、『哲学』、no.9 vol.3-4、1989 冬:「特集 神秘主義 テクノロジーとカルト」、pp.174-176

 同じ著者による→こちらを参照:本頁上掲の「xvii. ブックガイド、通史など

熊野純彦、『埴谷雄高 - 夢みるカント』(再発見 日本の哲学)、講談社、2010
はじめに-カントとの出会い//序章 存在の不快 - 《霧》 -;途絶/情死/泣き声//
宇宙的気配 - 《夜》 -;原型/感覚/背景/虚体(1)//
叛逆と逸脱 - 《闇》 -;経験/一人狼/叛逆型/逸脱/臨死//
存在と倫理 - 《夢》 -;死者/存在/根源悪/深淵/希望/虚体(2)//
おわりに - 読書案内をかねて、など、
300ページ。


 「インド」のページの「viii. ジャイナ教など」でふれましたが、上掲足穂のところで挙げた

安藤礼二、『光の曼陀羅 日本文学論』、2008

 は「耆那大雄をめぐって 埴谷雄高『死霊』論」を収録。
 同書中の「宇宙的なるものの系譜 埴谷雄高、稲垣足穂、武田泰淳」とあわせて参照


 同じ著者による→こちらを参照:「日本 Ⅱ」の頁の「xi. 近代など

松山俊太郎、「意識と宇宙の書」(1975)、『綺想礼賛』、国書刊行会、2010、pp.365-369

 同じ著者による→こちらも参照:「仏教 Ⅱ」の頁の「iii. 華厳経、蓮華蔵世界、華厳教学など

藤井貴志、「奇書としての『死霊』 埴谷雄高と澁澤龍彦のデモノロギイ」、『ユリイカ』、no.806、vol.55-9、2023.7:「特集 奇書の世界」、pp.136-143

 p.143 註8 に挙げられていた単著が;

藤井貴志、『〈ポストヒューマン〉の文学 埴谷雄高、花田清輝、安部公房、そして澁澤龍彦』、国書刊行会、2023
序章 《ポストヒューマン》のY字路 - 安部公房 『第四間氷期』をめぐる交響 -//
〈存在の革命〉 - 埴谷雄高から安部公房へ -;埴谷雄高「虚空」と花田清輝 - ポオ『メールストロームの渦』をめぐる軋轢と共振 -/〈魂〉のフロッタージュと〈物〉のコラージュ - 埴谷雄高「一枚のエルンストの絵に」 —/シュペルヴィエルの影 - 埴谷雄高と安部公房「壁 - カルマ氏の犯罪」 -//
〈オブジェ〉の思想 - 安部公房と花田清輝 -;安部公房『壁』の中の〈ダリ〉 - <偏執狂的批判的方法〉と〈異形の身体〉 表象 -/〈オブジェ〉達の革命 - 花田清輝と安部公房「壁 - S・ カルマ氏の犯罪」 -/〈人形〉のレジスタンス -花田清輝の〈鉱物中心主義〉的モティーフと〈革命〉のヴィジョン ー//
『死霊』と〈反出生主義〉 - 埴谷雄高から澁澤龍彦へ -;〈子供〉を生むこと - 埴谷雄高『死霊』の中の〈反出生主義〉 -/〈私小説〉としての『死霊』 - 〈反出生主義〉をめぐる埴谷雄高の〈芸術〉と〈実生活> -/〈単性生殖〉のユートピア - 埴谷雄高と澁澤龍彦の〈反出生主義〉 -//
《ポストヒューマン》の地平 - 澁澤龍彦と〈人形愛〉 -;〈生きた人形〉あるいは〈犬〉のような少女 - 川端康成 「片腕」を読む澁澤龍彦 -/〈独身者の機械〉と〈異形の身体〉 表象 - 「他人の顔」「片腕」 「人形塚」 の同時代性 -/ハンス・ベルメールの反時代的身体 - 四谷シモンが〈球体関節人形〉と澁澤龍彦に出逢う時 -/〈マネキン人形〉の詩学 -安部公房と澁澤龍彦の〈人形愛〉 -//
終章 〈人新世〉の埴谷雄高 - 『死霊』とポスト 〈人間中心主義 -//
あとがきなど、
508ページ。


 澁澤龍彦に関して→こちらを参照:「通史、事典など」の頁の「おまけ
 花田清輝に関して→そちらを参照:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ
 安部公房に関して→あちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「安部公房」の項

おまけ

 タイトルどおりボルヘスが登場、『ネクロノミコン』の話も出てくるのが;

ルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ、栗原百代訳、『ボルヘスと不死のオランウータン』(扶桑社ミステリー ウ 31-1)、扶桑社、2008
原著は Luis Fernando Verissimo, Borges e os orangotangos eternos, 2000

 ラヴクラフト、コナン・ドイル、フーディーニ、クロウリイだのが登場するのが;

トマス・ウィーラー、大瀧啓裕訳、『神秘結社アルカーヌム』(扶桑社ミステリー ウ 32-1)、扶桑社、2008
原著は Thomas Wheeler, The Arcanum, 2004

イダタツヒコ、『美女で野獣』第5巻、小学館、2004

 中の「第5話 乙女玩具隊少女魔法拳」にもクトゥルー神話用語が盛りこまれていました。

 クトゥルー神話に触発された音楽はけっこうあるようで、『ウィキペディア』の「クトゥルフ神話に影響を受けた作品一覧」のページには、「9 クトゥルフ神話を題材にした楽曲」という項目があったりもしますが(< ウィキペディア )、とりあえず手元にあるものから;

HP Lovecraft, HP Lovecraft I, 1967(1)

HP Lovecraft, HP Lovecraft II, 1968 

 手元にあるのは2枚をカップリングしたCD

Two Classic Albums from HP Lovecraft, 2000

 で、1枚目には"The White Ship"、2枚目には"At the Mountains of Madness"、"Keeper of the Keys"といった曲が入っています。とりわけ2枚目はサイケデリックな雰囲気の濃いものとなっています。
 また


HP Lovecraft, Live ・ May 11, 1968, 1991

 "The White Ship""At the Mountains of Madness"双方収録。
1. 舩曳将仁監修、『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック DISC GUIDE SERIES #039』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2009、p.62。
 山中明編、『サイケデリック・ムーズ ア・ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・サイケデリック・ミュージック USA/CANADA エディション』、株式会社ディスクユニオン、2010、p.68。
Hoelderlin, Rare Birds, 1977(邦題:ヘルダーリン『レア・バーズ』)(1a)

 ドイツのシンフォニック・ロック・バンドの4枚目、5曲目が
"Necronomicon"(邦題:「ネクロノミコン」)、6分15秒のインストゥルメンタル曲です。
1a. 『ジャーマン・ロック集成 ユーロ・ロック集成2』、マーキームーン社、1994、p.148。

 上掲の霜月蒼「異次元からの音、あるいは邪神金属」(2002)から;

Blue Öyster Cult, Imaginos, 1988(2)

 英語版ウィキペディアの本アルバムについてのページ(→こちら
"Packaging"の項)によると、ジャケット表のいかにもいかにもな館はサン・フランシスコ西、オーシャン・ビーチの北にあったレストランで、1907年に焼失したという「崖の家 Cliff House」のイメージとのこと。またジャケット内側の写真はサイモン・マースデンによるもので、スコットランドはアーガイルシャーのダントルーン城 Duntrune Castle in Argyllshire, Scotland (『悪霊館』、pp.76-77 に掲載)。
2. 霜月蒼「異次元からの音、あるいは邪神金属」(2002)、pp.741-743、755-756。
 またこのアルバムから→こちらの2(「怪奇城の外濠 Ⅲ」の「おまけ」)や、こちらの3(「通史、事典など」の頁の「おまけ」)で挙げました
 別のアルバムから→そちらも参照(彼らの曲「ゴジラ」に関連して/「原初の巨人、原初の獣、龍とドラゴンその他」)の頁の「おまけ

Metallica, Ride the Lightning, 1984(邦題:メタリカ『ライド・ザ・ライトニング』)(3)

 の
"The Call of Ktulu"(邦題:「ザ・コール・オブ・クトゥルー」)(4)。
スラッシュ・メタルの旗手の2枚目ですが、アルバムのラストに配された、長めのインストゥルメンタルによる構築性の強い曲という点で、


Wishborn Ash, There's the Rub, 1974(邦題:ウィッシュボーン・アッシュ、『永遠の不安』)(→こちらを参照:「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」の頁の「おまけ」)

 B面ラストの
"F・U・B・B"が連想されたりするのでした。
3. 『ヘヴィ・メタル/ハード・ロックCDガイド』(シンコー・ミュージック・ムック)、シンコー・ミュージック、2000、p.30。
 小野島大編、『200CD ヘヴィ・ロック リトル・リチャードからKOЯNまで』、立風書房、2003、p.125。


4. 霜月蒼「異次元からの音、あるいは邪神金属」(2002)、pp.744-745。

Mekong Delta, The Music of Erich Zann, 1988(5)

 このバンドはさらに、


Mekong Delta, Lurking Fear, 2007
5. 山崎智之監修、『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』、リットー・ミュージック、2010、p.59。
 →こちらも参照:「怪奇城の外濠 Ⅲ」の頁の「おまけ
 やはり「異次元からの音、あるいは邪神金属」(2002)からデスメタル系を3枚;

Vader, De Profundis, 1995(邦題:ヴェイダー『デ・プロフンディス』)(6)
6. 霜月蒼「異次元からの音、あるいは邪神金属」(2002)、p.748,p.756。
 『ヘヴィ・メタル/ハード・ロックCDガイド』(シンコー・ミュージック・ムック)、シンコー・ミュージック、2000、p.246
 山崎智之監修、『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』、リットー・ミュージック、2010、p.95。
Morbid Angel, Formulas Fatal to the Flesh, 1998(邦題:モービッド・エンジェル『フォーミュラス・フェイタル・トゥ・ザ・フレッシュ』)(7) 7. 霜月蒼「異次元からの音、あるいは邪神金属」(2002)、p.747, p.758。
 『ヘヴィ・メタル/ハード・ロックCDガイド』(シンコー・ミュージック・ムック)、シンコー・ミュージック、2000、p.239。

Nile, Black Seeds of Vengeance, 2000(8)
8. 霜月蒼「異次元からの音、あるいは邪神金属」(2002)、pp.748-749, p.758。
 →こちらでも挙げました:「エジプト」の頁の「おまけ

人間椅子、『頽廃芸術展』、1998(9)

 7枚目のラスト・12曲目は「ダンウィッチの怪」、7分24秒(→こちら(「仏教 Ⅱ」の頁の「iv. 弥勒、過去仏、多仏説など」の頭)や、→そちら(『ダンウィッチの怪』(1970)の頁の「おまけ」)でも触れました)の他、「天体嗜好症」という曲も収めています、6分18秒。先立つ3枚目


人間椅子、『黄金の夜明け』、1992(9a)

 のラスト・11曲目は「狂気山脈」、8分40秒。

人間椅子、『萬灯籠』、2013(9b)

 17枚目の11曲目、「時間からの影」、4分27秒。

人間椅子、『現世は夢~25周年記念ベストアルバム~』、2014

 2枚組の2枚目、ラスト13曲目(6分7秒)とのことですが未見につき、ここでは2022年9月19日のライヴを収録した23枚目『色即是空』(2023)特典DVDからラスト7曲目、6分13秒。
9. 『ヘヴィ・メタル/ハード・ロックCDガイド』(シンコー・ミュージック・ムック)、シンコー・ミュージック、2000、p.222。
 『人間椅子 椅子の中から 人間椅子30周年記念完全読本』、シンコー・ミュージック・エンタテイメント、2019、pp.150-153,

9a. 上掲『人間椅子 椅子の中から』、pp.134-137。

9b. 同上、pp.190-193。

 別のアルバムから→あちら:「マネ作《フォリー・ベルジェールのバー》と絵の中の鏡」(1986)の頁の「おまけ

 上掲『人間椅子 椅子の中から』には、ギターの和嶋慎治による次の原稿が掲載されています(pp.208-211);

和嶋慎治、「和嶋慎治が自ら綴ったマイヒーロー 怪物の姿を借りて社会に復讐するラヴクラフトの世界に近づきたい」

 やはり日本のバンドから;

ケンソー、『スパルタ (<ἡ Σπάρτη Sparta)』、1998(10)ἡ Σπάρτη / Sparta )』、1989(10)

4枚目の4曲目が「ミスカトニック
(MISKATONIC)」、4分29秒、
7曲目が「インスマウスの影
(The Shadow Over Innsmouth )」、6分5秒、双方器楽曲。いかにもいかにもなおどろおどろしさとは無縁ですが、「インスマウスの影」では冒頭など、不穏さをたたえた部分も垣間見られます。
 ところで続くスタジオ盤5枚目、


ケンソー、『夢の丘』、1991(10a)

は、ラヴクラフトが高く評価していたアーサーマッケン(上掲『文学における超自然の恐怖』、pp.108-119)、その『夢の丘』(平井呈一訳、創元推理文庫 510-2、東京創元社、1984;原著は1907。『文学における超自然の恐怖』、pp.109 で触れられています)と関係があるのでしょうか? 後のアルバム


ケンソー、『内ナル声ニ回帰セヨ』、2014

スタジオ盤で9枚目の掉尾、8曲目の"A Song of Hope"(8分3秒)は数少ない歌入りの曲で、しかも歌詞が掲載されています。その中に

"When I was atop the hill of dreams"

というくだりがありました。ちなみに

"Just humming 'To be a Rock and not to roll'"

というフレーズが繰り返されますが、これはレッド・ツェッペリンの「天国への階段」(10b)から引いたものでした。他にも何かあるのかもしれません。
10. ヌメロ・ウエノ、たかみひろし、『ヒストリー・オブ・ジャップス・プログレッシヴ・ロック』、マーキームーン社、1994、pp.95-97。
 巽孝之、『プログレッシヴ・ロックの哲学』(serie 'aube')、平凡社、2002、p.125
 舩曳将仁監修、『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック DISC GUIDE SERIES #039』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2009、p.151。

10a. 上掲『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック』、p.152。

 『内ナル声ニ回帰セヨ』から別の曲→そちらを参照;「中国 Ⅱ」の頁の「おまけ
 また別のアルバムから→「中央アジア、東アジア、東南アジア、オセアニアなど」の頁の「おまけ」)、
 ここ(「「マネ作《フォリー・ベルジェールのバー》と絵の中の鏡」の頁の「おまけ」)、
 そこ(「階段で怪談を」)の頁の「その他、フィクションから」)


10b. →こちらも参照;「階段で怪談を」の頁の本文末尾近く

Electric Masada, At the Mountains of Madness, 2004

 のことは→こちらでふれました:「ユダヤ Ⅲ」の頁の「おまけ

Nox Arcana, Necronomicon, 2004

 この手の主題の音楽ばかり作っているようです。→こちらも参照:「怪奇城の外濠 Ⅲ」の頁の「おまけ
やや軽いのですが、いかにもいかにもといった感じの音になっています。
 フランスのチェンバー・ロック・バンド

NeBeLNeST, ZePTO, 2006(邦題:ネベルネスト『ゼプト』)(11)

 の3曲目は
"The Old Ones"と題されていますが、クトゥルー神話と関係があるかどうかは不明。ちなみに4曲目は"The Thing in the Walls"
11.  『ユーロ・ロック・プレス』、no.31、 2006.12、p.25。
 未見ですが、ベルギーのチェンバー・ロック・グループ、ユニヴェール・ゼロのメンバー、ダニエル・ドゥニは当該グループを結成する前に、ArkhamNecronomicon なるバンドを作っていたそうです(12)。 12. 『オール・アバウト・チェンバー・ロック&アヴァンギャルド・ミュージック』、マーキー・インコーポレイティド株式会社、2014、p.72。
 Arkham
について;松井巧監修、『ジャズ・ロック The DIG Presents Disc Guide Series #035』、シンコーミュージック、2008、p.117。
 やはりフランスのチェンバー・ロック・バンド-ロック色は稀薄ですが-で、他にも何枚かアルバムはあるようですが、とりあえず手もとにあるのが;

Shub-Niggurath, C'étaient de très grands vents, 1991

Amarok, Sol de medianoche, 2007(邦題:アマロック、『真夜中の太陽』)

 4曲目が
"Wendigo"(「ウェンディゴ」)。ブラックウッド(→こちら:本頁上掲「ブラックウッド」の項)の短篇に基づくとのこと。歌詞カードではなぜかクトゥルー神話に属するとされています。原作は

紀田順一郎訳、『ブラックウッド傑作選』(創元推理文庫 527-1)、東京創元社、1978、pp.91-149

 に邦訳あり
 同じアルバムから→そちらも参照:「ユダヤ Ⅲ」の頁の「おまけ
Spock's Beard, The Kindness of Strangers, 1998(邦題:スポックス・ビアード、『カインドネス・オブ・ストレンジャーズ』)(13)

 90年代USAプログレ・バンドの3枚目。2曲目が
"In the Mouth of Madness"(「イン・ザ・マウス・オブ・マッドネス」)、4分44秒。
 ジョン・カーペンターが監督した同題の映画(1994、邦題:『マウス・オブ・マッドネス』)によるのでしょうか?
13.  『Euro Rock Presユーロ・ロック・プレス』、no.19、2003.11、p.102。

Septicflesh, Communion, 2008

 ギリシアのバンドでシンフォニック・デス・メタルという範疇に含まれるそうなのですが、その7枚目、1曲目が "Lovecraft's Death"、4分8秒。お馴染みの名前や言い回しが歌詞の中にぞろぞろ出てきて、'Lovecraft in the realm of the dead' と叫ぶのでした。最後は鐘の音で終わります。
 →こちらでも挙げました:「怪奇城の高い所(後篇) - 塔など」の頁の「v. 鐘塔など
 同じアルバムから→そちら(「エジプト」の頁の「おまけ」)や、また→あちら(「メソポタミア」の頁の「おまけ」)を参照。
 またラスト、9曲目
"Narcissus"(3分59秒)のテーマであるナルキッソスをモローは幾度となく取りあげています。たとえば→ここ(《ナルキッソス》(1875頃、油彩)の頁)や、またそこ(《ナルキッソス》(水彩)の頁)を参照。 

 ついでに

ゼラズニイ、『アイ・オブ・キャット』、1989

 はナバホ族の伝承を取りこんだ作品ですが、その中で
「アン・アックステル・モリスと、考古学者の夫のアールは、1919年に白い葦の地、ル-カ-チュ-カイを旅した二人のフランチェスコ会修道士、フィンタン神父とアンセルム神父の話を紹介した」
として、
古き者(オールドワンズ)、アナサジの遺棄され都市…(中略)…そこは多数の大家屋と高い塔がそびえたつ場所」
のことが記されています(p.91。pp.319-320、p.343、p.345なども参照)。モリス夫妻は実在の人物で、クトゥルー神話に関係はないのですが。


 やはりクトゥルー神話に関係あるのかどうかわかりませんが;

Amon Düül Ⅱ, Meetings with Menmachines Inglorious Heroes of the Past ...., 1983(13)

 A面2曲目が
"The Old One"。5分4秒。
13. 『ジャーマン・ロック集成 ユーロ・ロック集成2』、マーキームーン社、1994、p.47。
 同じアルバムから→こちら(「中国 Ⅱ」の頁の「おまけ」も参照。また→そちらも参照:「メソポタミア」の頁の「おまけ」。

 クトゥルー神話がらみ以外では、上の「トールキン」の項も参照  
 2014/05/28 以後、随時修正・追補
近代など Ⅴ
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