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近代など(20世紀~)
相対性理論以降の物理学的宇宙論など
i ~1980年代:ビッグバン、ブラックホールその他
ii 1990年代前後:インフレーション宇宙論、多宇宙(マルティヴァース)その他
iii 2000年代~:(超)ひも理論、ブレーンワールドその他
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iv フラットランド』の系譜など
v ルーディ・ラッカー(1946- )など
vi 次元など
vii ゲーデル(1906-1978)など
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ix 英米から
ジェイムズ(1842-1910)、ホワイトヘッド(1861-1947)とプロセス神学イェイツ(1865-1939)、クロウリー(1875-1947)、J.W.ダン(1875-1949
x フランスから
ベルクソン(1859-1941)、ゲノン(1886-1951)、テイヤール・ド・シャルダン(1881-1955)、メイヤスー(1967-
xi ドイツから;シュタイナー(1861-1925)の人智学など
xii ロシアから
ベルジャーエフ(1874-1948)、ウスペンスキー(1878-1948)、グルジェフ(1866-1949
xiii 現象学とその系譜、他
フィンク(1905-1975)、ハイデッガー(1889-1976)、メルロ=ポンティ(1908-1961
xiv 可能世界論など
xv 時間論、その他
xvi 20世紀神秘学の歴史など
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xix ラヴクラフトとクトゥルー神話など
xx 個々の著述家など - 日本 Ⅰ(20世紀前半等)
宮沢賢治(1896-1933)、夢野久作(1889-1936)、稲垣足穂(1900-1977)、小栗虫太郎(1901-1946)、 埴谷雄高(1909-1997
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 Ⅵ 小説類など(承前)
xxii 個々の著述家など - 日本 Ⅱ(20世紀後半等)
xxiii 日本の漫画、アニメーションその他

* そもそも西欧の近代の何たるかもよくわかっていませんが、
 とりあえずその後半を大まかに20世紀あたりとしておきます。
 といいつつ、前の時期・次の時期にかぶるものも出てきたりすることでしょう。
 ともあれ例によって、多々誤りもあろうかと思いますが、ご寛恕ください。

Ⅰ 相対性理論以降の物理学的宇宙論など

 相対性理論以降の物理学的宇宙論の解説で、日本語で読めるものだけでも、たいへんな数に上るものと思われます。以下に挙げるのはほとんどがいわゆる一般向け啓蒙書で、しかもそのほんの一部にすぎない、たまたま手にとる機会のあったものでしかありません。大まかに刊行年順に並べるのは、扱われる話題の比重の変遷のようなものが見えてきはしないかと思ってのことでした。
なお「通史、事典など」のページ、「i. 天文学史的なもの」 で挙げたものも、しばしば後半あたりが20世紀を扱っているので、あわせてご覧ください。
 とその前に、一応;


アインシュタイン、内山龍雄訳・解説、『相対性理論』(岩波文庫 青 934-1)、岩波書店、1988
原著は A. Einstein, "Zur Elektrodynamik bewegter Kõrper", Annalen der Physik, vol.17, 1905, pp.891-921
まえがき//
A 動いている物体の電気力学(A.アインシュタイン) 運動学の部;同時刻の定義/長さと時間の相対性/静止系から、これに対して一様な並進運動をしている座標系への座標および時間の変換理論/動いている剛体、ならびに時計に関する変換公式の物理学的意味/速度の合成則//
  電気力学の部;真空中におけるマックスウェル・ヘルツの方程式の変換、磁場内にある物体の運動に伴って生ずる起電力の性質について/ドップラー現象および光行差の理論/光線のエネルギーの変換則、完全反射する鏡に与える輻射圧の理論/携帯電流がある場合のマックスウェル・ヘルツの方程式の変換/加速度が小さい場合の電子の力学//
B 解説(内山龍雄)/用語説明など、
170ページ。

 〈特殊相対性理論〉に関する最初の論文となります。


アインシュタイン、矢野健太郎訳、『相対論の意味』(岩波文庫 青 934-2)、岩波書店、2015
原著は A. Einstein, The Meaning of Relativity, 1922/1955
 邦訳は1958年刊本の文庫化
訳者のまえがき/第5版への覚書(1954/12)//
相対論以前の物理学における空間と時間/特殊相対性理論/一般相対性理論/一般相対性理論(続き)//
第2版への付録;〝宇宙論的な問題〟について/3次元に関して等方的な4次元空間/座標の選択/場の方程式/空間的曲率が0になる(z=0)特別な場合/空間的曲率が0でない場合に対する方程式の解/物質に関する方程式を拡張することによる、上記の考察の拡張/特殊相対性理論によって取り扱われた〝粒子-気体〟/要約とその他の注意//
付録Ⅱ 非対称場の相対論;場の方程式系の〝連立性〟と〝強さ〟について/相対論的な場の理論/一般的注意//
解説(江沢洋)奇跡の年/重力場における時間の流れ/重力場におけるマックスウェル方程式/沈黙の3年半/曲がった空間/プリンストンへ、など、
266ページ。


須藤靖編、『現代宇宙論の誕生 20世紀科学論文集』(岩波文庫 青 951-1)、岩波書店、2022
総説 宇宙論の古典論文を読む(須藤靖)//
重力場の方程式;論文解説(松原隆彦)/ハミルトンの原理と一般相対性理論(アルベルト・アインシュタイン、1916)//
宇宙定数の導入;論文解説(横山順一)/一般相対性理論についての宇宙論的考察(アルベルト・アインシュタイン、1917)//
膨張宇宙解の発見;論文解説(樽家篤史)/空間の曲率について(アレクサンドル・フリードマン、1922)//
宇宙膨張の観測的発見;論文解説(須藤靖)/銀河系外星雲の動径速度を説明する定質量の膨張一様宇宙(ジョルジュ・ルメートル、1927)/銀河系外星雲の距離と動径速度の間の関係(エドウィン・ハッブル、1929)//
ビッグバンモデルの提唱;論文解説(仏坂健太)/膨張宇宙と元素の起源(ジョージ・ガモフ1946)/元素の起源(ラルフ・アルファー、ハンス・ベーテ、ジョージ・ガモフ、1948)/膨張宇宙における元素合成期の陽子・中性子の濃度比(林忠四郎、1950)//
宇宙マイクロ波背景輻射の発見;論文解説(高田昌広)/4080 Mc/s におけるアンテナ超過温度の測定(アーノ・ペンジアス、ロバート・ウィルソン、1965)/宇宙黒体輻射(ロバート・ディッケ、ジェームズ・ピーブルス、ピーターー・ロール、デイビッド・ウィルキンソン、1965)など、
270ページ。

 須藤靖による→こちら:下掲の『不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?』、2019
 松原隆彦による→そちら:下掲の『宇宙に外側はあるか』、2012
 横山順一による→あちら:上掲の『宇宙創生をさぐる』、1994
 ルメートルについて→ここ:下掲のジョン・ファレル、吉田三千世訳、『ビッグバンの父の真実』、2006
 ガモフによる→そこ:下掲のジョージ・ガモフ、伏見康治譯、『宇宙の創造 ガモフ全集 7』、1952
を参照

………………………

i. ~1980年代:ビッグバン、ブラックホールその他

稲垣足穂、「宇宙論入門」、『人間人形時代』、工作舎、1975、pp.151-309
 1947年刊本の再録
読者に//怖ろしき未来//
「円周なき円」;円周なき円/星界幾何学の不可思議/現実界は四次元世界の断面である/無限次元の大宇宙/表面なき球//
宇宙空間の極遠;五億光年の星雲界/アンドロメダ島宇宙と三千大山世界/赤一色の秘境//
相対論による宇宙模型;「アインシュタイン模型」と「ド・ジッター模型」/フリードマン及びルメートルの「中間模型」/「宇宙の原爆発」と「飛散して行く煙火球」/宇宙飛行船から眺めた奇観//
紅の壁に囲まれた我等の郷土;ミルンの「運動学的宇宙模型」/三村博士一派の「波動幾何学宇宙模型」//
世界は神の夢である;「エントロピー増大」と「弥勒浄土」/世界は諸神が打鳴らす太鼓の音である//
後記


 他に;
カフェの開く途端に月が昇った/人間人形時代

 「宇宙論入門」、「カフェの開く途端に月が昇った」と次の『僕の“ユリーカ”』、「ロバチェフスキー空間を旋りて」は


『稲垣足穂全集 5 僕の“ユリーカ”』、筑摩書房、2001

 に所収

 足穂については→こちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「稲垣足穂」の項


稲垣足穂、『僕の“ユリーカ”』(レグルス文庫 115)、第三文明社、1979
初出は1956、単行本採録は1968、「ロバチェフスキー空間を旋りて」の初出は1964
緒言 彼らはいかにあったか/ド・ジッター宇宙模型/ハッブル=ヒューメーソン速度距離関係/附録 ロバチェフスキー空間を旋りて//
解説 宇宙論の弁護(相澤啓三)など、
190ページ。


ジョージ・ガモフ、伏見康治譯、『宇宙の創造 ガモフ全集 7』、白揚社、1952
原著は George Gamow, The Creation of the Universe, 1951
まえがき//進化と恒久性;原始の年令/岩石の年令/海洋の年令/月の年令/太陽およびその他の星の年令/銀河系内星団の年令/天の川の年令//
大膨張;遠のく水平線/膨張宇宙の理論/何が宇宙を膨張させはじめたか/大圧縮の日付/膨張はいつやむだろうか/わが宇宙は有限か無限か/星雲の勘定、距離と時間との混同/膨張の初期//
原子の創成;各種の原子の天然存在量/反応平衡が凍りついたという仮説/原始原子の仮説/“アイレム”の仮説/存在量の理論曲線/軽い元素の場合//
凝縮の各段階;最初の雲/銀河系の回転と乱流/星の出現/古い星と新しい星/銀河系と星の集合/惑星系//
星の私生活;星の共棲/原子核エネルギー源/老年期の星/死んだ星//
むすび//附録など、
214ページ。

 ガモフによる→こちらを参照:本頁冒頭の『現代宇宙論の誕生 20世紀科学論文集』、2022


荒木俊馬、『宇宙構造観』、恒星社厚生閣、1962
序//緒論;現実世界における存在ということと人間の生存/民族の生存地域の地理学を全宇宙空間に拡大して-宇宙構造論/宇宙時代/東西両洋の宇宙の定義/現代天文学でいう宇宙//
古代の宇宙観;磁化中心主義の宇宙観/旧約聖書に現われた宇宙観/神話時代のギリシャの世界構造/古代インドの宇宙観/大地が球形であることの発見/地球中心宇宙構造説//
太陽系宇宙とその開拓;コペルニクスの転向/太陽中心宇宙構造の確立/万有引力の発見/太陽系宇宙の開拓(衛星および新惑星の発見)/太陽系宇宙の開拓(小惑星発見物語)/新発見諸天体の総まとめと太陽系の詳細構造/宇宙開拓者としての人工天体/太陽系内の物質分布/彗星と太陽系の限界//
恒星界の諸相と銀河系宇宙;カントの銀河観と恒星分布論/ハーシェルの星数調査による宇宙構造/宇宙を見る眼と天界の消息をもたらすもの/恒星の種類/変光星と新星/惑星状星雲/準星/星群と星団/銀河系宇宙の構造/銀河系内における恒星の運動と銀河系の総質量//
銀河系外星雲;マゼラン雲/銀河系外星雲/系外星雲の天球分布/系外星雲の距離と大きさ/系外星雲の空間分布と宇宙の平均物質密度/星雲スペクトル線の赤色偏位と星雲の後退運動//
現代の宇宙構造論;星雲宇宙/宇宙の中心よ、どこへ行く/星雲宇宙は有限か無限か/宇宙論原理/経験と理論/相対性理論 特殊相対性理論、非ユークリッド空間と現実の時空世界、リーマン幾何学とテンソル解析、一般相対性原理、相対性重力理論/一般相対性理論に基づく宇宙構造/定常宇宙と物質の構造など、
250ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:「通史、事典など」の頁の「ii. 占星術の歴史など


ジェームズ・A・コールマン、中村誠太郎訳、『相対性理論の世界 はじめて学ぶ人のために』(ブルーバックス B79)、講談社、1966
原著は JamesA. Coleman, Relativity for the Layman. A Simplified Account of the History, Theory, and Proofs of Relativity, 1954
光速度を求めて/エーテルのジレンマ/特殊相対性理論とは/事実の証言/重力の謎と一般相対性理論/新しい宇宙像/統一場の理論など、
202ページ。


都筑卓司、『4次元の世界 超空間から相対性理論へ』(ブルーバックス B142)、講談社、1969
プロローグ/次元とはなにか/4次元空間の特質/曲がった空間/ハップニング/光とはなにか/実在する4次元/非ユークリッド空間/エピローグなど、
262ページ。

 同じ著者による→こちら(下掲の『マックスウェルの悪魔』、1970)や、そちら(『タイムマシンの話』、1971)、あちら(『4次元問答』、1980)、またこなた(『時間の不思議』、1991)を参照


エヌ・ア・ヴラーソフ、中村誠太郎監修、林昌樹訳、『反物質の物理学』、東京図書、1970
原著についてはキリル文字なので、誤りを避けるべく、扉裏を参照してください。1966年刊行。
反粒子の発見/反粒子の生成/対消滅/反物質と宇宙/探索方法/消滅エネルギーの利用など、
192ページ。


都筑卓司、『マックスウェルの悪魔 確率から物理学へ』(ブルーバックス B152)、講談社、1970
プロローグ/永久機関のはなし/エルゴード仮説より/確率から物理法則へ/秩序崩壊/なぜ空気はつもらないか/でたらめの世界/救世主としての悪魔/カタストロフィーなど、
278ページ。

 同じ著者による→こちらを参照(上掲の『4次元の世界』、1969


都筑卓司、『タイムマシンの話 超光速粒子とメタ相対論』(ブルーバックス B170)、講談社、1971
プロローグ/タイムマシン/時間の逆行は可能か/超光速粒子タキオン/メタ相対論/超光速現象をめぐって/エピローグなど、
246ページ。

 同じ著者による→こちらを参照(上掲の『4次元の世界』、1969


V.N.コマロフ、田中泰信訳、『おもしろいSF天文学』、時事通信社、1974
原著についてはキリル文字なので、誤りを避けるべく、扉裏を参照してください。1972年刊行。
プロローグ/天文学はなぜ面白い/地球から宇宙へ/超銀河宇宙のかなたに/SF的宇宙論など、
314ページ。


佐藤文隆・松田卓也、『相対論的宇宙論 ブラックホール・宇宙・超宇宙』(ブルーバックス B241)、講談社、1974
強い重力と一般相対論;大いなる「非常識」 - 物理法則の幾何学化/重力理論の決戦場 - 強い重力//
星の終末;太く短く、細く長く - 星の一生/重いものほどよく縮む - 終末の4つの形態/中性子星はまわっていた - パルサー/ガスを吸い込む強い重力 - X線星//
ブラック・ホールの時空構造;時空にあいた穴/時空構造の解/重力崩壊の落ち着き先(以上、佐藤文隆、以降、松田卓也)//
宇宙観の「膨張」;宇宙の端はどこですか? 有限の宇宙から無限の宇宙へ/じっとしておれない宇宙 - 近代的宇宙論の成立/進化する宇宙/宇宙論はこれで終わりか//
我々の宇宙の構造;フリードマン・モデルの三本の根/膨張する曲がった一様空間 - 一般相対論的宇宙モデル/我々の宇宙は開いているか閉じているか//
我々の宇宙の進化;熱い宇宙の初期/銀河の起原 - 重力不安定説/銀河の起原 - 乱流説//
超宇宙-現代宇宙論の基本的諸問題;宇宙の特異性と跳ねかえり/ミックスマスター宇宙/無限の「宇宙」たち - 超宇宙/その他の重力理論による宇宙論//
マッハ原理と物理法則の相対化;空間とは何か? - 絶対空間と相対空間/局所的法則は宇宙構造で決まるか?、など、
264ページ。
 「第Ⅶ章 3 無限の『宇宙』たち - 超宇宙」なんて節があるところが大いに魅力的でした。
 →こちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁
 佐藤文隆による→こちら(下掲の『ブラックホール』、1976)や、そちら(『アインシュタインのたまご』、1979)や、あちら(『ビッグバン』、1984)や、こなた(『宇宙論への招待』、1988)や、そなた(『量子力学のイデオロギー』、1997)や、あなた(『いまさら宇宙論?』、1999や、かなた(『アインシュタインの反乱と量子コンピューター』、2009)を参照
 松田卓也による→こちら(『これからの宇宙論』、1983)や、そちら(『時間の逆流する世界』、1987)や、あちら(『人間原理の宇宙論』、1990)、またこなた(『時間の本質をさぐる』、1990)を参照
 

渡辺慧、『時』、河出書房新社、1974
時間と生活/時間と自然観/時間の起原と機能/空間の左右と時間の前後/時間と現象/物理的時間についての対話/可逆、不可逆の問題/量子力学における可逆性/輪廻と微小輪廻/ベルクソンの創造的進化と時間/相対性理論とベルクソン/時間と信仰-進化する宗教/永遠について、など、
348ページ。


ジョン・テイラー、渡辺正訳、『ブラック・ホール 宇宙の終焉』(ブルーバックス B260)、講談社、1975
原著は John Taylor, Black Holes. The End of the Universe?, 1973
不可解なもの/ブラック・ホール登場す/飽くことなき大食漢/ブラック・ホールを手なずける/その幻想的な内部の世界/重力無限大の特異点/天地創造とブラック・ホール/宇宙の行く末/人間と宇宙とブラック・ホール/ブラック・ホールの近況など、
242ページ。


A.ベリー、小林司訳、『一万年後』(上下)(KAPPA BOOKS)、光文社、1975
原著は Adrian Berry, The Next Ten Thousand Years. A Vision of Man's Future in the Universe, 1975
上 宇宙に移住する人類;序章 文明は宇宙にひろがる/地球は滅びるか/限りない宇宙開発計画/月の植民地/月の住民たち/金星改造計画4/新天体を求めて、など、196ページ。
下 惑星を改造する科学;ゆがんだ4次元時空/亜空間飛行/機械を生む機械/空飛ぶ宇宙都市/木星破壊計画/終章 銀河系の勝利者//
  付;「特殊相対性理論」について/「ダイソン環天体」について、など、
198ページ。
 下巻の「第8章 亜空間飛行」で、ウィーラーらによる亜空間論を解説していたのが印象に残っています(pp.38-68)。
 そこでは
「この亜空間という言葉が使われ出したのは、ウィーラー教授が共著者の一人となって62年に発表した論文が最初である」
 と述べられ(p,42、また p.59:

Fuller, Robert W. and Wheeler, John A.."Causality and Multiply-Connected Space-Time". Physical Review 128: 919, 1962.10.15
(Cf., "Wormhole" [ < Wikipedia ])
 空間を満たす、重力エネルギーだけからなる粒子〈ジオン geon〉(
「曲がった空虚な空間からできていて、いわゆる〝実際の質量〟とは、まったく関係がない」、p.56、
 Cf., "Geon (physics)" [ < Wikipedia ])のことや
「空間は、海面のようなもので、その上を飛行機で飛ぶ者には、平らに見えるが、そこに落ちた不運な蝶にとっては、波立つ水面である。くわしく見れば見るほど、それは、波立っていて、どこも『虫の穴』でいっぱいである。幾何力学は、全空間が、このようなあわ立った性質をもっていると規定する」
 というウィーラーのことばなどが引用されています(p.57)。

マックス・ヤンマー、髙橋毅・大槻義彦訳、『空間の概念』、1980、pp.227-228

でもウィーラーと「ワームホール」(虫食い)、「ジオン」(geon)、「超空間」理論に言及しています。またすぐ後ではエヴェレット、デ=ウィットらによる「多世界理論」にも触れられていました(p.229)。

 『一万年後』に戻れば、先だって第8章の始めでは、アシモフの『塵のような星』からの一節が引用されていました(p.40、p.42)。邦訳では

アイザック・アシモフ、沼沢洽治訳、『暗黒星雲のかなたに』(創元推理文庫 727)、東京創元社、1964、pp.49-50

 にあたります。〈超空間〉のこうした〈跳躍〉については、たとえば同じアシモフなら、

アイザック・アシモフ、厚木淳訳、『銀河帝国の興亡 1』(創元推理文庫 791)、東京創元社、1968、p.12

 など、他にも例を挙げられることなのでしょう。SFにおける超空間航行については、

ブライアン・アッシュ編、『SF百科図鑑』、1978、ポール・アンダースン、「02.01 宇宙船と星間飛行」中の pp.82-85

 なども参照。


 →こちらにも挙げておきます;「世界の複数性など」の頁
 同じ著者による→そちらを参照;下掲の『ホワイトホール』、1977 

佐藤文隆/R.ルフィーニ、『ブラックホール 一般相対論と星の終末』(自然選書)、中央公論社、1976
序章 ブラックホールと一般相対論 - 主題は重力、主役は星 -/宇宙観と物理法則 - 一般相対論への道 -/アインシュタインの相対性理論 - 時間・空間構造と重力 -/星の重力平衡限界とコンパクト星 - 量子論と星の構造論の出合い -/中性子星・ブラックホール・X線星 - コンパクト星の物理学 -/ブラックホールさまざまの話題 - 量子効果・特異点・宇宙論 -/ブラックホールと、ルフィーニと私と - 「あとがき」にかえて -など、
292ページ。
 ブラックホールの増加によって未来の宇宙では「空間にもひびが入っていくのである」という末尾が印象に残っています(p.273)。下掲のケイティ・マック『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)での、〈ビッグリップ〉に関する一文も参照。
 佐藤文隆による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974 

『エピステーメー』、vol.2 no.6、1976.6、pp.7-119:「特集 宇宙の地平線」
宇宙の構造;宇宙の構造と進化(成相秀一)/一般相対論的宇宙論と非相対論的宇宙論(冨田憲一)/物理定数は定数か(早川幸男)//
宇宙の開闢と進化;宇宙開闢の問題(佐藤文隆)/自己重力開放系としての星の進化 進化か熱力学的死か(杉本大一郎)/かに星雲のエネルギー供給(森本雅樹)//
宇宙と生命;生命の偶然と必然(野田春彦)//
宇宙論と哲学;〈宇宙〉・天体物理学と哲学の遭遇(小尾信彌・村上陽一郎)//
宇宙観のアルケオロジー;空飛ぶ円盤(C.G.ユング)/古代インド人の宇宙像(松山俊太郎)


トミリン、田井正博訳、『おもしろい宇宙進化論』、東京図書、1977
原著についてはキリル文字なので、誤りを避けるべく、扉裏を参照してください。1975年刊行。
神が世界を創造した時代/宇宙を設計する哲学者/星雲説の衰亡/惑星宇宙進化論/宇宙進化論の新しい流れ/恒星進化論/星雲の進化など、
230ページ。


F.ゴールデン、吉福康郎訳、『なにが宇宙で起こっているか 天文学の最前線を見る』(ブルーバックス B318)、講談社、1977
原著は Frederic Golden, Quasars, Pulsars, and Black Holes, 1976
プロローグ/天体観測のあけぼの/恒星の光の正体/核融合反応の火/恒星の誕生/太陽系の起源/宇宙に開いた新しい窓/水素の歌/星間分子の話/膨張する宇宙/クェーサーの謎/恒星の最期/ブラック・ホールを求めて/宇宙の運命など、
242ページ。


S.ワインバーグ、小尾信彌訳、『宇宙創成はじめの三分間』、ダイヤモンド社、1977
原著は Steven Weinberg, The First Three Minutes. A Modern View of the Origin of the Universe, 1977
序章=巨人と雌牛/宇宙の膨張/宇宙マイクロ波輻射背景/熱い宇宙の処方/最初の三分間/歴史的なよりみち/最初の100分の1秒間/エピローグ=これからの展開//補遺など、
254ページ。

 著者との対話→こちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「xv. 時間論その他


A.ベリー、餌鳥章男訳、『ホワイトホール 瞬時宇宙旅行は、必ず実現する』(KAPPA BOOKS)、光文社、1977
原著は Adrian Berry, The Iron Sun. Crossing the Universe through Black Holes, 1977
プロローグ-ホワイトホール作戦/巨大な宇宙の落とし穴/回転する出口の謎/距離消滅機への布陣/
禁じられた時の環/オリオンの腕の中へ/磁気シャベル・プラン/銀河系社会への道程/瞬時旅行のネットワーク/エピローグ-新しい物理学の創造/付録「ブラックホールの入航口の大きさ」など、など、
246ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『一万年後』、1975


ジョン・グリビン、山本祐靖訳、『ホワイト・ホール 宇宙の噴出口』(ブルーバックス B371)、講談社、1978
原著は John Gribbin, White Holes. Cosmic Gushers in the Universe, 1977
プロローグ;ブラック・ホールは方程式の幻か/ブラック・ホール以前//
宇宙の創成;はじめに大爆発ありき/われわれは宇宙のそこにいるのか/銀河型噴出口//
宇宙の現状;ホワイト・ホールと人間の運命/ホワイト・ホールはなぜ噴出するか/時間、空間、ホワイト・ホール//
宇宙の将来;反宇宙を探る/宇宙における右と左//
エピローグ;なぜ宇宙をさぐるのか//付録「太陽はふつうの星か」など、
294ページ。

 同じ著者による→こちら(下掲の『タイム・ワープ』、1981)や、そちら(『スペース・ワープ』、1985)や、またあちら(『シュレーディンガーの猫』、1989)を参照


フレッド・ホイル、和田昭允・根本清一訳、『新しい宇宙観 宇宙・物質・生命』(ブルーバックス B360)、講談社、1978
原著は Fred Hoyle, Ten Faces of the Universe, 1977
神の宇宙/物理学者のみた宇宙/数学者のみた宇宙/天体物理学者のみた宇宙/膨張する宇宙/宇宙の起源/誰も知らない宇宙/地球物理学者のみた宇宙/生物学者のみた宇宙/みんなの宇宙など、
238ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「ホイル」の項


杉本大一郎、『宇宙の終焉 熱的死かブラックホールか』(ブルーバックス B356)、講談社、1978
未来/宇宙の未来についての3つの考え/天体は階層構造を成す/宇宙は熱平衡に向かっているか/重力熱力学的カタストロフィー/天体と生物と鉄の塊/星の進化とブラックホールの形成/宇宙膨張の将来/開いた宇宙の終焉/閉じた宇宙の終焉/熱力学的死は死んだのか、など、
250ページ。


 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ

小尾信彌、『宇宙論入門 宇宙時代の小百科380』(サンポウ・ブックス 142)、サンポウジャーナル、1978
宇宙とは何か-最初の疑問/最初の宇宙論 - イメージからの出発/宇宙観の革命 - イメージから科学へ/膨張宇宙論 - スーパー科学への第1歩/相対論的宇宙論 - 奇妙な世界像/宇宙開闢論 - 神々の領域へ進む/宇宙進化論 - 自然を支配する原理/ブラック・ホール - 宇宙最大の謎/宇宙運命論 - 輪廻・転生と破局/宇宙文明論 - 人間とは何か/宇宙論の頭脳 - イメージと宇宙など、
272ページ。


『ブラック・ホール 異次元宇宙への抜け穴か 産報デラックス 99の謎 自然科学シリーズ 9』、サンポウジャーナル、1978.2
巻頭言 時空の果て(石田五郎)/宇宙の輪廻・転生 - 相対論が拓いた新しい世界像(小尾信彌)//
全研究 図解ブラック・ホール - 宇宙論が提起した謎の天体群(編集部)//
宇宙 その生誕と破局 - さまざまのブラック・ホール仮説を問う;予言されたブラック・ホール(日下実男)/はくちょう座X-1の正体(蓬茨霊運)/宇宙全体がブラック・ホールか(堀源一郎)/異次元宇宙への抜け穴か(森暁雄)/最新ブラック・ホール仮説(斉田博)/怪奇ブラック・ホール群(森暁雄)/ブラック・ホールの内部を推理する(南山宏)/反宇宙と反世界(石原藤夫)//
対談 ブラック・ホールと相対論的宇宙(佐藤文隆・小尾信彌)/アインシュタイン その光と影(矢野健太郎)/99の謎など、
162ページ。
 「研究12 わたしたちの宇宙はブラック・ホールか」(pp.54-56)とか
「3-3 宇宙全体がブラック・ホールか」(pp.124-127)
 といった、その後あまり見かけないような気がする項目のあったことが印象に残っています。


 →こちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁 

『SFと宇宙科学 タイムマシン・超宇宙・異次元に挑む 産報デラックス 99の謎 自然科学シリーズ 13』、サンポウジャーナル、1978.6
巻頭言 想像力と過学区の出合い(堀源一郎)/宇宙の因果 超宇宙と異次元宇宙(小尾信彌)//
絵本 SFと宇宙 さまざまの仮説(編集部)//
幻想と時空 へんてこりんな理論;奇妙な空間の理論(石原藤夫)/時間旅行と親殺しのパラドックス(堀源一郎)/共産圏SFのすすめ(深見弾)//
対談 因果律を破れるか タイム・マシンから出発!(堀源一郎・草下英明)//
スペース・ファンタジー 西暦2001年の宇宙;スペース・コロニー/スペース・シャトル/NASAの宇宙企画/西暦2001年の宇宙企画(日下実男)/スペース・コロニー計画のすべて(長沢光男)/スペース・シャトル計画のすべて(奥地幹雄)//
対談 人間に未来はあるか バラ色は何色か(糸川英夫・松本零士)//
幻想と宇宙 SFのために;三千世界の宇宙体系(松山俊太郎)/宇宙から出発して還る(横尾忠則)/暗闇から宇宙をのぞく(三枝和子)/鏡の中の小宇宙(合田佐和子)//
幻想と遊戯 思索とイメージのために(辻野タカオ・山野浩一);メビウスの輪/ケーニヒスベルグの橋/迷路と迷宮/無限階段/ロバチェフスキー空間/ごまかしとトリックの創造 だまし絵(山野浩一)//
日本・海外SF200選/99の謎など、
162ページ。

『反宇宙 もう一つの世界はあるか 産報デラックス 99の謎 自然科学シリーズ 15』、サンポウジャーナル、1978.8
巻頭言 謎かける反宇宙(佐藤文隆)//
宇宙・反宇宙・超宇宙;宇宙入門(冨田憲二)/反宇宙入門(堀源一郎)/超宇宙入門(松田卓也)//
絵本 宇宙・反宇宙のすべて スーパー科学への招待(小尾信彌)//
対談 反宇宙はどんな世界か いつまでも平静でいられない(小尾信彌・堀源一郎・)草下英明/ショート・ショート 反世界へ行った男(横田順彌)//
謎の宇宙怪現象 自然の仕組んだワナか;小宇宙はなぜ爆発するのか(鈴木敬信)/クエーサーは永遠の謎か(森暁雄)/極微と極大を結ぶ架け橋ニュートリノ(桜井邦昭)/予言された重力波は実在するか(日下実男)/反宇宙への通路(石原藤夫)//
宇宙パズル ちょっと物理学の世界へ(森暁雄)//
反世界の散歩道 ナンセンス・ロードへ;反世界としての地獄(松山俊太郎)/マザー・グースの反世界(平野敬一)/知によって知を撃つ-アリスの世界(清水哲男)/迷路の中の反世界(桑原茂夫)//
宇宙・反宇宙・超宇宙 110科事典/99人の謎など、
162ページ。

佐藤文隆、『アインシュタインのたまご ブラック・ホール、なぜ』(ロバの本 2)、朝日出版社、1979
はじめに-ブラック・ホールから魂へ/万物は流転する もっとも不思議な謎のために/自然界の論理 相対論から宇宙論へ/相対論的宇宙論 一兆分の一×一兆分の一の世界に挑戦/ブラック・ホールへ 重力のミステリーに挑戦/時空の果て さまざまの仮説と可能性/エピローグ-アインシュタイン生誕100年=1979年夏など、
212ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974


『現代思想』、vol.7-9、1979.7、pp.47-135:「特集=宇宙 コスモロジーの現在」
宇宙と宇宙論(澁澤龍彦)/宇宙の中で(佐藤文隆)/「宇宙論」=「秩序論」の新生(村上陽一郎)/宇宙論と生命論(八杉龍一)/天動説と文学(磯田光一)/宇宙論の現状と展望(田辺健玆・成相秀一)/数学と宇宙観(一松信)/現代宇宙論の展開(松田卓也)/光で見る宇宙(小尾信彌)/宇宙・非線形・非平衡と社会科学(杉本大一郎)/天文学と宇宙論 古代インドを中心に(矢野道雄)/宇宙論の存在様式(中山茂)/年譜 宇宙像の変貌(編集部)

ウィリアム・J・カウフマン3世、加藤順訳、『ブラックホール - 暗黒の異次元空間-』(サラブレッド・ブックス 160)、二見書房、1980
原著は William J. Kaufmann, III, Black Holes and Warped Spacetime, 1979
プロローグ/宇宙誕生の壮大なドラマ/太陽が滅ぶ日/超新星と中性子星/時空のゆがみ/ブラックホールとは?/ブラックホールの不思議な世界/ブラックホールを求めて/宇宙の謎をさぐる/クエーサーは超巨大ブラックホールか?/宇宙の未来は?/ブラックホールへの新たなる探求//
解説(中富信夫)など、
242ページ。


W.サリバン、吉福康郎訳、『ブラックホールとの遭遇 時間の死・空間のはて』(ブルーバックス B443)、講談社、1980
原著は Walter Sullivan, Black Holes. The Edge of Space, the End of Time, 1979
超高密度の世界/空間と時間のゆがみ/ブラックホール理論の誕生/悪魔の怪鳥 - ブラックホールの誕生を見た人々/予言と観測/ホワイトホール ワームホール 裸の特異点/ブラックホール - 実在か虚構か/エピローグなど、
240ページ。


都筑卓司、『4次元問答 ビッグ・バンから銀河鉄道まで』(ブルーバックス B422)、講談社、1980
バンッ!/世界は曲がる/ミラクル・ホール/"C"のかなたに、など、
222ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲『4次元の世界』、1969

 →そちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁

ジョン・グリビン、佐藤文隆・田中三彦訳、『タイム・ワープ 平行宇宙への旅』(ブルーバックス B473)、講談社、1981
原著は John Gribbin, Time Warps, 1979
絶えざる流れ;時間のルーツ/回転する宇宙ゴマの上での生活/タイム・トラベル//
タイム・ワープ;伸び縮みする時間/時間の穴/平行宇宙//
こころと時間;夢と、魂の再生/注意の焦点//
エピローグ-時間を支配する心など、
210ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ホワイト・ホール』、1978


リチャード・モリス、湯浅学監訳、『宇宙の運命 新しい宇宙論』(ブルーバックス B516)、講談社、1982
原著は Richard Morris, The Fate of the Universe, 1982
宇宙は開いているか、閉じているか/赤方偏移/ビッグバン/失われた質量/ブラックホール/つかまえにくい粒子/宇宙の運命/ほかの運命/アインシュタインの神・ゲーデルの証明・聖オーガスチンの毒舌など、
244ページ。


 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ

広瀬立成、『反物質の世界 もう一つの宇宙をさぐる』(ブルーバックス B508)、講談社、1982
物質消滅のエネルギー/物質とは何か/衝突する素粒子/素粒子の内側/宇宙の中の反物質/反物質の探索など、
196ページ。

 同じ著者による→こちら(下掲の『モノポール』、1985)やあちら(『真空とはなんだろう』、2003)を参照


P.C.W.デイヴィス、松田卓也・二間瀬敏史訳、『ブラックホールと宇宙の崩壊』(岩波現代選書 NS 535)、岩波書店、1983
原著は Paul Davies, The Edge of Infinity. Naked Singularities and the Destruction of Spacetime, 1981
人間と宇宙のつながり/無限大とは何か/時間と空間の危機/無限大の深淵をのぞく/ブラックホールにひそむ宇宙検閲官/むき出しで現われた裸の特異点/不可知との直面/宇宙の創造/無限大の彼方へ、など、
276ページ。

 同じ著者による→こちら(下掲の『宇宙の量子論』、1985)や、そちら(『宇宙はなぜあるのか』、1985)や、あちら(『量子と混沌』、1987)、またこなた(『宇宙最後の3分間』、1995)や、そなた(『時間について』、1997)、あなた(『タイムマシンをつくろう!』、2003)、さらにこっち(『幸運な宇宙』、2008)を参照


成相秀一・細谷曉夫、『宇宙の起源 宇宙と物質はいかにして生まれたか』(ブルーバックス B538)、講談社、1983
火の玉宇宙論の確立/火の玉宇宙の構造と進化/銀河および銀河団の形成/初期宇宙における元素の生成/初期宇宙におけるバリオン生成/宇宙膨張のはじまり - 宇宙の特異点 -/初期宇宙における粒子生成とその反作用効果など、
190ページ。


松田卓也、『これからの宇宙論 宇宙・ブラックホール・知性』(ブルーバックス B542)、講談社、1983
現代宇宙論へのいざない - 不可思議なこと、いくつかの謎;宇宙は五目ラーメンでいいのか!/現代宇宙像の大逆転/宇宙のはじまる前の不可思議//
素粒子が語る宇宙のはじまり - 世界の創生と物質の起源;宇宙のはじまりの問題/物質・反物質の対称宇宙論/素粒子の統一理論/大統一理論による宇宙像/不可思議な素粒子たち//
ブラックホールと時空の特異点 - あの世とこの世の物理学;はじまりはブラックホールの話から/蒸発するブラックホール/世界の終点=特異点//
人間原理と超人類への道 - 宇宙の中心は人間、という仮説;宇宙論的ヒューマニズム/宇宙文明は存在するか/超人類への進化など、
244ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974

J.N.イスラム、林一訳、『宇宙の未来はどうなるか』(岩波現代選書 NS 541)、岩波書店、1984
原著は Jamal N. Islam, The Ultimate Fate of the Universe, 1983
宇宙の運命/わが銀河の姿/大宇宙の構造/素粒子の性質/宇宙は開いているか、閉じているか?/星の3つの死にざま/ブラックホールとクエーサー/銀河ブラックホールから超銀河ブラックホールへ/ブラックホールも永遠ではない/ゆっくりした微妙な変化/生命と文明の未来/閉じた宇宙の運命/定常宇宙論/陽子は安定なのか?/エピローグなど、
214ページ。


 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ

中西襄、超宇宙仮説(放談室)」、『素粒子論研究』、vol.68 no.4、1984.1.20、pp.139-141 [ < CiNii Articles

佐藤文隆、『ビッグバン こうして宇宙は生まれた』(ブルーバックス B564)、講談社、1984
宇宙のはじまり/爆発を内側から見る/ビッグバンとブラックホールの比較/ゲージ理論と対称性の破れ/宇宙バリオン数とモノポール/地平線とインフレーション/宇宙の大構造とニュートリノ/時空のはじまりとおわりなど、
200ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974


P.C.W.デイヴィス、木口勝義訳、『宇宙の量子論』(地人選書 12)、地人書館、1985
原著は Paul Davies, Other Worlds, 1980
まえがき-知られざる革命/神様はサイコロを振らない/物事は見かけどおりとはかぎらない/原始の中の混沌/量子の不思議な世界/超空間/実在の本質/精神、物質、多重世界/人間原理/宇宙が偶然の産物か?/超時間など、
326ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ブラックホールと宇宙の崩壊』、1983

 →そちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁

P.C.W.デイヴィス、戸田盛和訳、『宇宙はなぜあるのか - 新しい物理学と神 -』(岩波現代選書 NS 547)、岩波書店、1985
原著は Paul Davies, God and the New Physics, 1983
変化する社会における科学と宗教/創世/神がなぜ宇宙を創造したのか/なぜ宇宙は存在するのか/生命とは何か - 全体論対還元主義/心と魂/自我/量子的要素/時間/自由意志と決定論/物質の基礎構造/偶然か設計によるものか/ブラックホールと宇宙のカオス/奇蹟/宇宙の終り/宇宙は「無料の昼食」か/自然に対する物理学者の考えなど、
328ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ブラックホールと宇宙の崩壊』、1983

ジョン・グリビン、山本祐靖訳、『スペース・ワープ 曲がった時空の宇宙像』(ブルーバックス B593)、講談社、1985
原著は John Gribbin, Spacewarps. Black Holes, White Holes. Quasars and Universe, 1983
時空とスペース・ワープ/ブラックホールと曲がった時空/ホワイトホールの宇宙/銀河・クエーサー・宇宙/ブラックホールかホワイトホールか/ニュートリノ質量の謎/太陽が縮む/タイム・ワープ再訪/生命と宇宙/一般相対論では不十分か、など、
278ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ホワイト・ホール』、1978


広瀬立成、『モノポール 宇宙誕生の鍵をにぎる幻の素粒子』(ブルーバックス B625)、講談社、1985
電気と磁気/磁石のなぞ/ディラックのモノポール/モノポールを追って/極微の世界へ/力とは何か/超重量モノポール/宇宙の創成とモノポールなど、
226ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『反物質の世界』、1982


D.ボーム、井上忠・伊藤笏康・佐野正博訳、『全体性と内蔵秩序』、青土社、1987/2005
原著は David Bohm, Wholeness and the Implicate Order, 1980
はじめに/断片化と全体性/流態のこころみ - 言語と思考についての一つの実験として/実在と知識は過程である/量子論における隠れた変数理論/量子論は物理学における新たな秩序を示唆する - 物理学史に登場してきたさまざまな新しい秩序/量子論は物理学における新たな秩序を示唆する - 物理法則における内蔵秩序と顕前秩序/包み込み・披き出す宇宙および意識など、
370ページ。

 タイトルの〈内蔵秩序〉は"implicate order"、対をなす〈顕前秩序〉は"explicate order"、また"implicate"は動詞として「内蔵する」="enfold"「包み込む」、"explicate"は「顕前化させる」="unfold"「披き出す」となります。さらに、"implicate"「内蔵する」は"implicit"「陰伏的」につながる(pp.258-259。"implicit"についてはp.35 訳注も参照)。

 ボームへのインタヴュー二篇を掲載した→こちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「xvi. 20世紀神秘学の歴史など
 

P.C.W.デイヴィス+J.R.ブラウン編、出口修至訳、『量子と混沌』(地人選書 28)、地人書館、1987
原著は Edited by Paul Davies and J. R. Brown, The Ghost in the Atom. A Discussion of the Mysteries of Quantum Physics, 1986
不思議の国の量子;量子論とは何か?/その発端/波動か粒子か?/それは結局何を意味するのか?/アインシュタイン-ポドルスキー-ローゼン(EPR)の実験/ベルの定理/アスペの実験/実在の本質/測定のパラドックス/シュレーディンガーの猫のパラドックス-さらにたちの悪い例/実用的観点/心と物質/多重宇宙解釈/統計的解釈/量子ポテンシャル//
アラン・アスペ/ジョン・ベル/ジョン・ホイーラー/ルドルフ・パイエルス/デヴィッド・ドイッチ/ジョン・テイラー/デヴィッド・ボーム/バシル・ハイリーなど、
252ページ。


 P.デイヴィスによる→こちらを参照:上掲の『ブラックホールと宇宙の崩壊』、1983
 →あちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁


松田卓也・二間瀬敏史、『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』(FRONITIER SCIENCE SERIES 013)、丸善、1987
時間とは何か、空間とは何か/相対性理論/時間の矢/ブラックホール/宇宙の誕生と進化/時間の逆流する宇宙/究極の宇宙論を求めて、など、
146ページ。


 下掲の
高水裕一『時間は逆戻りするのか』(2020)
も参照

 松田卓也による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974
 松田卓也と二間瀬敏史による→そちらを参照:下掲の『時間の本質をさぐる』、1990
 二間瀬敏史による→あちらを参照:下掲の『タイムマシン論』、2006


石原秀樹、「高次元宇宙論(素粒子の統一理論,研究会報告)」、『素粒子論研究』、vol.75 no.5、1987.8.20、pp.E46-E50 [ < CiNii Articles

佐藤文隆、『宇宙論への招待 - プリンキピアとビッグバン -』(岩波新書 新赤版 6)、岩波書店、1988
プリンキピアと宇宙;プリンキピアの成立/プリンキピアの背景/プリンキピアの宇宙論/天体宇宙の探求 - ビッグバンの発見まで -//
宇宙の中の物理;宇宙のビッグバン/統一と多様性-素粒子論の展開-/はじまりの必要性/存在と階層/存在と状態/存在と認識など、
222ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974
 

ジョン・グリビン、山崎和夫訳、『シュレーディンガーの猫』(上下)(地人選書 34/35)、地人書館、1989
原著は John Gribbin, In Search of Schrödinger's Cat. Quantum Physics and Reality, 1984
 プロローグ-何もリアルなものはない//量子;光/原子/光と原子/ボーア原子//
  量子力学;光と電子/行列と波動/量子の料理など、228ページ。//
下 量子を越えて;偶然と不確実性/パラドックスと可能性/論より証拠/多重世界//
  エピローグ-事は終わらない、など、
186ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ホワイト・ホール』、1978

ii. 1990年代前後:インフレーション宇宙論、多宇宙(マルティヴァース)その他

スティーヴン・W・ホーキング、林一訳、『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』、早川書房、1989
原著は Stephen W. Hawking, A Brief History of Time. From the Big Bang to Black Hole, 1988
序/私たちの宇宙像/空間と時間/膨張する宇宙/不確定性原理/素粒子と自然界の力/ブラックホール/ブラックホールはそれほど黒くない/宇宙の起源と運命/時間の矢/物理学の統合/結論-人間の理性の勝利//
アルベルト・アインシュタイン/ガリレオ・ガリレイ/アイザック・ニュートンなど、
248ページ。


 同じ著者による→こちら(下掲の『ホーキングの最新宇宙論』、1990)や、そちら(『ホーキングとペンローズが語る 時空の本質』、1997)や、あちら(『ホーキング 未来を語る』、2001)、またこなた(『時空の歩き方』、2004)を参照
 また→そなたも参照:竹内薫『ホーキング 虚時間の宇宙』、2005


ロバート・L・フォワード、久志本克己訳、『SFはどこまで実現するか 重力波通信からブラック・ホール工学まで』(ブルーバックス B801)、講談社、1989
原著は Robert L. Forward, Future Magic. How Today's Science Fiction Will Become Tomorrow's Reality, 1988
未来の通信/魔法のエネルギー源/宇宙にかかるケーブルカー/魔法の恒星船/重力を消す魔法/ブラック・ホールを飼いならす/時を駆けるタイム・マシン/スペース・ワープの魔法/未来を考える、など、
342ページ。

 著者は『竜の卵』(山高昭訳、ハヤカワ文庫、1982)その他が邦訳されているハードSF作家でもあります。 

ニック・ハーバート、小隅黎・高林慧子訳、『タイムマシンの作り方 光速突破は難しくない!』(ブルーバックス B798)、講談社、1989
原著は Nick Herbert, Faster than Light, 1988
とんでもない速さ!/タイムトラベルは可能か? ミンコフスキーは「もしかしたら……」と言う/アインシュタインの壁をとりはらう/上空大気の超光速の波/謎の時間の矢/曲がった時空の近道をゆく/時の流れを変える型破りな連中/量子結合こそ本命か/キミも挑戦しないか!など、
272ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『量子と実在』、1990


細谷曉夫、「宇宙項と虫喰い穴(最近の研究から)」、『日本物理學會誌』、vol.44 no.10、1989.10.5、pp.762-765 [ < J-STAGE

ニック・ハーバート、はやし・はじめ訳、『量子と実在 不確定性原理からベルの定理へ』、白揚社、1990
原著は Nick Herbert, Quantum Reality, 1985
序/実在を求めて/物理学者、自信を失う……/量子論の誕生/量子事実に直面する/波打つ基底のサウンド・オブ・ミュージック/量子論は不敗のチャンピオン/記述できないものの記述 - 解釈問題/そして、そのとき、奇跡が起こる - 測定問題/4通りの量子実在/もう4通りの量子実在/アインシュタイン=ポドルスキー=ローゼンのパラドックス/ベルの相互連関定理/量子実在はどこへ?など、
376ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『タイムマシンの作り方』、1989

F.D.ピート、久志本克己訳、宮崎忠監修、『超ひも理論入門』(上下)(ブルーバックス B831/832)、講談社、1990
原著は F. David Peat, Superstrings and the Search for the Theory of Everything, 1988
上 大統一理論を超える;序章/物理学の危機/点からひもへ/南部のひも理論/大統一/超ひも/ヘテロひも、2つの次元を1つに!など、236ページ。
下 ツイスターから究極理論へ;スピノールからツイスターへ/ツイスター空間/ツイスター重力/大海へ、など、
252ページ。


スティーヴン・W・ホーキング、佐藤勝彦監訳、『ホーキングの最新宇宙論 ブラックホールからベビーユニバースへ』、日本放送出版協会、1990
1977-1990刊の論文等を編集したもの
ホーキング・私の半生/ブラックホールとベビーユニバース/
Blach Holes and Baby Universes/宇宙の始まり/時空の涯て/虚時間/時間の矢/ブラックホールの量子力学/物理学の統一//
解説・ホーキングの宇宙を語る(佐藤勝彦・高柳雄一)/素顔のホーキング博士(伊藤恭子)など、
216ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ホーキング、宇宙を語る』、1989

松田卓也、『人間原理の宇宙論 - 人間は宇宙の中心か - 科学精神の冒険 3』、培風館、1990
序章 自然科学と人文科学の間のコミュニケーション・ギャップ/宇宙原理と人間の没落/巨大数と宇宙の調和/人間原理と人間の復活/宇宙文明との交信/超知性への進化など、
252ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974

松田卓也・二間瀬敏史、『時間の本質をさぐる 宇宙論的展開』(講談社現代新書 1005)、講談社、1990
時間の謎/古典論における時間と空間/アインシュタインの相対論における時間と空間/ブラックホールとはなにか/ブラックホールのなかの時間と空間/ワームホールとタイムマシンのつくり方/時間の流れ-さまざまな時間の矢/熱力学第2法則とエントロピー/ブラックホールと熱力学第2法則/宇宙論的時間の矢/宇宙膨張とシステムの進化/マクスウェルの魔物と意識の時間の矢など、
224ページ。


 松田卓也と二間瀬敏史による→こちらを参照:上掲の『時間の逆流する世界』、1987

和田純夫、『ビッグバン以前の宇宙』(NEW SCIENCE AGE - 41)、岩波書店、1991
なぜ、宇宙の始まりを考えるのか/運動する宇宙/超ミクロの宇宙へ/宇宙は発生しなければならない/実数の時間と虚数の時間/ホーキングの提案/宇宙らしい宇宙を作る/時空につく虫食い穴など、
142ページ。

 「この本で説明した宇宙発生のストーリーは、主に、ビレンキンや、ソ連の学者リンデのアイデアなども取り入れて、ホーキングが量子論の形式で展開したものです」とのこと(「あとがき」、p.130)。

 最後の第8章の最終節「干渉する(かもしれない)宇宙」(pp.123-127)で、著者が後に解説書を著す量子論の多世界解釈に通じる話(?)に触れています。
 同じ著者による→こちらも参照:下掲の『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』、1994 

都筑卓司、『時間の不思議 タイムマシンからホーキングまで』(ブルーバックス B873)、講談社、1991
タイムマシンを考える/時間が止まる/宇宙で一番短い時間/すべては量子論的時間から/ホーキングんの虚時間/ホーキングの逆転する時間/永遠の(?)時間など、
238ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『4次元の世界』、1969


佐藤勝彦、『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった マザー・ユニバースとチャイルド・ユニバースの謎』、同文書院、1991
宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった/アインシュタインは宇宙をいちばん知りたかった/マザー・ユニバースからチャイルド・ユニバースへ/ホーキングとビレンケンの「無」からの宇宙など、
236ページ。


 同じ著者による→こちら(下掲の『壺の中の宇宙』、1991)や、そちら(『ビッグバン理論からインフレーション宇宙へ』、1991)や、あちら(『最新・宇宙創世記』、1993)や、またこなた(『宇宙論講義』、1995)や、そなた(『POPな宇宙論』、1996)や、あなた(『「量子論」を楽しむ本』、2000)、かなた(『「相対性理論」の世界へようこそ』、2004)、またこっち(『タイムマシンがみるみるわかる本』、2008)、またそっち(『インフレーション宇宙論』、2010)、あっち(『宇宙は無数にあるのか』、2013)を参照

佐藤勝彦、『壺の中の宇宙 現代物理の最先端が解く宇宙創成の謎』、二見書房、1991
序章 科学が語る新しい宇宙神話/素粒子研究から宇宙の謎に迫る/宇宙像をくつがえした新理論/宇宙はひとつだけではなかった/われわれの宇宙は「無」から生まれた/終章 神の役割はまだ残っているか、など、
222ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991

佐藤勝彦・木幡たけ(走+斗)士、『ビッグバン理論からインフレーション宇宙へ 宇宙は急速に膨張したあと、ビッグバン宇宙になった!』、徳間書店、1991
膨張する宇宙/ビッグバン宇宙モデルの登場/大統一理論で宇宙の構造を探る/大統一理論からインフレーション宇宙へ/宇宙は多重発生し、インフレーションを起こす/われわれの宇宙はどこへ行くのか?など、
340ページ。


 佐藤勝彦による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991

前田恵一、『宇宙のトポロジー』(NEW SCIENCE AGE 47)、岩波書店、1991
プロローグ/不思議な幾何学/リンゴと落ちたアインシュタイン/ブラックホール、ワームホール、そしてタイムマシン/ビッグバン宇宙のトポロジー/小さい宇宙/宇宙最大の謎/宇宙の始まり/エピローグなど、
144ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『図解雑学 ビッグバン』、1999


江里口良治、『時空のゆがみとブラックホール』(NEW COSMOS SERIES 3)、培風館、1992
はじめに - ブラックホールゆかりの地プリンストン/等速度運動の世界 - 特殊相対論へ/加速度運動の世界と重力 - 一般相対論へ/強い重力場中の粒子と光の運動/地平面とブラックホール/ブラックホール物理学/ブラックホールの形成とその観測など、
174ページ。


John Archibald Wheeler、戒崎俊一訳、『時間・空間・重力 - 相対論的世界への旅 -』(Scientific American Library 10)、東京化学同人、1993
原著は John Archibald Wheeler, A Journey into Gravity and Spacetime, 1990
偉大なる人、偉大なる概念/落下から浮遊へ/インターバル:空間はすべて私たちのもの/地球旅行:ブーメラン/潮汐:質量が時空をつかむ/モメナジー:時空の質量支配/境界の境界:作用はどこにある/ろくろから空間幾何学へ/中心質量の周りの空間と時空の絵を描く/飛んでいる石と軌道上の惑星/重力波/ブラックホール/重力よ、さようなら、など、
272ページ。


佐藤勝彦、『最新・宇宙創世記 インフレーション宇宙から観測の時代へ』、徳間書店、1993
はじめに - 宇宙論は観測の時代へ/人はなぜ宇宙に魅かれるのか/宇宙の始原へさかのぼる/COBEの測定結果がもたらしたもの/銀河の大規模構造(グレートマップ)と観測的事実/標準ビッグバン・モデルからインフレーション理論へ/大統一理論(GUT)と宇宙の進化/インフレーション・モデルにたどりつくまで/宇宙論の未来など、
240ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991

ミチオ・カク、稲垣省五訳、『超空間 平行宇宙、タイムワープ、10次元の探求』、翔泳書房、1994
原著は Michio Kaku, Hyperspace. A Scientific Odyssey through Parallel Universes, Time Warps, and the Tenth Dimension, 1994
五次元への入口;時空を超えた世界/数学者と神秘主義者/四次元を「見た」男/光の秘密-五次元の振動//
10次元における統一;量子論という反逆者/アインシュタインの逆襲/超弦理論/10次元からのシグナル/天地創造以前//
ワームホール-もう一つの宇宙への入口;ブラックホールと平行宇宙/タイムマシンの製作/衝突する宇宙//
超空間の覇者;未来を超える/宇宙の運命/終わりに、など、
590ページ。


 同じ著者による→こちら(下掲の『パラレルワールド』、2006)や、そちら(『サイエンス・インポッシブル』、2008)を参照
 →あちら(「世界の複数性など」の頁)や、
 さらに、L.D.ヘンダーソンの本に言及していることから(p.32 / p.531 註第1章5、および p.92, p.96 / pp.540-541 註第3章4-5)→ここ(「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「xvi. 20世紀神秘学の歴史など」)にも挙げておきます


和田純夫、『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』(ブルーバックス B1012)、講談社、1994
原子の世界/量子力学の誕生/確率解釈と波の収縮/量子力学の多世界解釈/同時進行する複数の世界/干渉するミクロの世界・干渉しないマクロの世界/シュレディンガーの猫は死んだのか-修復可能な差、不可能な差/分離不可能性と不確定性原理/「確率解釈」をみちびく/光の量子力学/宇宙から見た量子力学/多世界解釈の世界像など、
248ページ。
 管見の範囲内で、量子論の多世界解釈についてのはじめての1冊本ということで、ずいぶん喜んだものです。
 また多世界解釈を決定論の貫徹と解していたのも、印象的でした。
 →こちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁
 同じ著者による→次に挙げる記事とともに、→そちら(上掲の『ビッグバン以前の宇宙』、1991)や、あちら(下掲の『20世紀の自然観革命 量子論・相対論・宇宙論』、1997)や、ここ(『シュレディンガーの猫がいっぱい 「多世界解釈」がひらく量子力学の新しい世界観』、1998)、またそこ(、『プリンキピアを読む ニュートンはいかにして「万有引力」を証明したのか?』、2009)、あそこ(『量子力学の解釈問題 多世界解釈を中心として』、2020)、こなた(『量子力学の多世界解釈』、2022)も参照 

和田純夫、聞き手:三浦俊彦、「量子物理学の可能世界 決定論としての多世界解釈」、『文藝』、vol.33 no.4、1994冬、「特集 可能世界トラヴェラー」、pp.332-342
可能世界と多世界解釈/2つの世界が共存する/マクロな分岐は修復不可能である/共存と干渉/分岐する宇宙と物理法則/量子力学の解釈問題に主流はあるか?/解釈問題はいつか決められるか?/多世界解釈は決定論的なものだ

横山順一、『宇宙創生をさぐる - インフレーション宇宙への招待 -』(FRONTIER SCIENCE SERIES 030)、丸善、1994
近代宇宙論の成立まで/古典ビッグバン宇宙論/標準模型から大統一理論へ/宇宙論と素粒子論の融合/インフレーション宇宙論/宇宙の創生/終章 そして今など、
160ページ。


 同じ著者による→こちら(下掲の『宇宙の向こう側』、2008)や、そちら(『輪廻する宇宙』、2015)、またあちらを参照:本頁冒頭の『現代宇宙論の誕生 20世紀科学論文集』、2022


マイケル・D・ルモニック、小林健一郎訳、『宇宙論の危機 新しい観測事実に揺れる現代宇宙論の最前線』(ブルーバックス B1044)、講談社、1994
原著は Michael D. Lemonick, The Light at the Edge of the Universe, 1993
はじめに/ダークマターはなぜ必要か?/銀河はどこにある?/宇宙の果て/宇宙の重さを測る/宇宙の年齢/新しい物理学/新しい観測/「それはまるで神を見るようだ」など、
400ページ。


フレッド・A・ウルフ、遠山峻征服・大西央士訳、『もう一つの宇宙 量子力学と相対論から出てきた並行宇宙の考え方』(ブルーバックス B1098)、講談社、1995
原著は Fred Alan Wolf, Parallel Universes, 1989
序章//
並行宇宙とはなにか?;並行宇宙の発想を生んだ量子物理学/一つの宇宙の行きづまり - 二重スリット/並行する世界にひろがる波にのって/コペンハーゲンの波/量子は導関数の意味//
宇宙は1つではないのか?;「ある」ということ/「ない」現実が決める「ある」現実と、ふだん気付かない「違い」/自己言及 - 「ある」と「ない」/見上げてごらん、 - 超空間を!/ネズミ、コイン、量子力学的重ね合わせ//
内と外 - 時間は曲がり、空間はゆがむ;相対論、そして空間の一つの次元としての時間/実野次官、ゼロの時間、虚の時間、そして実の空間、虚の空間/アインシュタインの並行宇宙/ブラックホール - 並行宇宙へのゲートウェイ/ブラックホールからかいま見た並行宇宙/ブラックホールを通って並行宇宙へ行く想像の旅//
「はじめに……ありき」;ビッグ・バンの最初の観測者/エデンの園の諸問題/宇宙の基底状態/「いつ、なにが」を誰が見たか?//
並行宇宙が示す新しい時間の概念;タイム・トラヴェル/並行宇宙が解決するタイム・トラヴェルのパラドックス/時間のなかで衝突する波/ホイーラーの選択/タイム・マシーンをつくる//
並行宇宙における時間と精神;並行宇宙における精神/二時測定と未来からのメッセージ/もう一つの並行宇宙の写真を撮る/「知る」とはどういうことか?/量子コンピュータと量子倫理/明日の並行宇宙と語りあう/アルファとオメガ/現実と存在など、
432ページ。

 第2部第9章「見上げてごらん - 超空間を!」(pp.109-124)で、
「ほんとうにほかの宇宙があるとすれば、それらはいったいどこにあるのか?」p.109)
 という問いに対し、
「これらの空間、すなわち宇宙は、互いに重なり合い、一つの箱のなかに別の箱がおさまった入れ子のような構造になっているのである。ただ一つだけ入れ子と違うのは、ここではどの箱もすべて同じサイズだということである」(同上)
 と答え、〈超空間〉について
「あらゆる可能性のある空間を包含する一つの新たな空間の概念」(p.110)、
「超空間も通常の空間と同様に点で構成されている。ただし、超空間内の各点はそれ一個が一つの宇宙に存在するあらゆる物体の位置に対応している。つまり、一点一点が一つの独立した宇宙を凝縮したものなのである」(同上)、
「この超空間には無限に次元がある」(p.111)、
 また最終章で
「すべての可能性の数学的空間」(p.417)
 等と述べられていました。
 

Paul Halpern、江里口良治訳、『タイムマシン ワームホールで時間旅行』、丸善、1995
原著は Paul Halpern, Cosmic Wormholes. The Search for Interstellar Shortcuts, 1992
離陸/宇宙の地図/ブラックホール - 虚空の中へ/ホワイトホール - 光からの脱出/ワームホール - 星間空間の抜け道/西暦2500年のブラックホール探検隊/明日は昨日/宇宙玉つき大会/千年後の光景など、
260ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『輪廻する宇宙』、1997


ポール・デイヴィス、出口修至訳、『宇宙最後の3分間』(サイエンス・スタディーズ 2)、草思社、1995
原著は Paul Davies, The Last Three Minutes, 1994
裁きの日/死にゆく宇宙/最初の3分間/星の運命/たそがれ/宇宙の重さを測る/永遠は長い時間/普通車線の生命/追い越し車線の生命/突然の死、そして再生/終わりのない世界?など、
240ページ。


 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ
 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ブラックホールと宇宙の崩壊』、1983


池内了、『泡宇宙論』(ハヤカワ文庫 NF 195)、早川書房、1995
1988年刊本の改訂・文庫化
地上の泡のいろいろ/膨らむ泡/太陽から飛び出す泡/泡に満ちた銀河系/泡立つ銀河/進化する宇宙/宇宙の泡構造/泡宇宙をどう表現するか/ハッブル宇宙望遠鏡物語/宇宙がはっきり見えてくる - これからの宇宙観測計画 -//
泡の世界(いとうせいこう)など、
248ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『』物理学と神』、2002

佐藤勝彦、『宇宙論講義 そして、ぼくらは生まれた』(Z会ペブル選書 3)、増進会出版社、1995
序章 根源への旅 宇宙論超特急/常識とのたたかい 相対性理論/何もかもゆらゆら 量子論/コラム 時間旅行列車(タイムマシン)は可能か!?/アインシュタインの夢 統一理論/コラム ブラックホールの正体は?/宇宙は火の玉から始まった ビッグバン理論/宇宙は無数にあった インフレーション理論/果てしない物語 「無」からの創成論/21世紀へ向けて 最新宇宙論など、
222ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991

ジョン・バロウ、松田卓也訳、『宇宙が始まるとき』(サイエンス・マスターズ 4)、草思社、1996
原著は John D. Barrow, The Origin of the Universe, 1994
宇宙の概観/宇宙の大カタログ/完全な停止?/加速/証拠探しの旅/時間 - さらに簡略な歴史/迷宮へ/新しい次元など、
224ページ。


 同じ著者による→こちら下掲の(『科学にわからないことがある理由』、2000)や、そちら(『宇宙に法則はあるのか』、2004)、あちら(『宇宙の定数』、2005)、またこなた(『無限の話』、2006)、そなた(『無の本』、2013)、あなた(『宇宙論大全』、2013)、
 また→ここ(『コズミック・イメージ 美しい科学 1』(2010)および『サイエンス・イメージ 美しい科学 2』(2010)/「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「i. 図像など」)を参照


佐藤勝彦監修、『POPな宇宙論 宇宙の誕生から終焉まで - 現代宇宙論の最前線!』(POPシリーズ)、同文書院、1996
はじめに - 150億光年の彼方から来る、新たなる「謎」と新たなる「答え」/「宇宙論」創世期/神話の世紀から科学の世紀へ/現代版「宇宙モデル」の誕生/ミクロ世界が語る宇宙の「原理」/最新版「宇宙創生のシナリオ」/《資料編》人類、宇宙へ/コラムなど、
256ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991

 * 「四方山話」に入れた「世界は虫喰い穴(ワームホール)だらけ」は 1997年4月付けなので、だいたいこのあたりまでをネタにでっちあげたことになります。その割には情報が少し遅れているような気がするのは、消化できたかどうかという点を仮におくとしても、上に挙げた本を全部読んでいたはずもないからにほかなりますまい。 


キップ・S・ソーン、林一・塚原周信訳、『ブラックホールと時空の歪み アインシュタインのとんでもない遺産』、白揚社、1997
原著は Kip S. Thorne, Black Holes and Time Warps. Einstein's Outrageous Legacy, 1994
序文 宇宙でもっとも神秘的な対象ブラックホールをめぐる魅力ふれる物語(S.ホーキング)
/緒言 一般相対性理論の未確認の予測を信じる勇気を(F.ザイツ)/まえがき この本には何が書いてあり、どう読んでほしいのか//
プロローグ ホール巡りの旅/空間と時間の相対性/空間と時間のワープ/ブラックホールの発見と否認/白色矮星の謎/避けられない爆縮/爆縮の果てに何が?/黄金時代/探索/掘り出し物/時空湾曲のさざ波/時空は本当に湾曲しているのか平坦か?/ブラックホールの蒸発/ブラックホールの内部/ワームホールとタイムマシン/エピローグなど、
556ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『時空の歩き方』、2004

ポール・デイヴィス、林一訳、『時間について アインシュタインが残した謎とパラドックス』、早川書房、1997
原著は Paul Davies, About Time, 1995
プロローグ/時間の短い歴史/変化の時/タイムワープ/ブラックホール - 時間の終わりへの入口/時間のはじまり - 正確にはいつだったのか?/アインシュタインの最大の勝利?/量子時間/虚時間/時間の矢/時間を後ろ向きに/タイムトラベル - 事実それとも幻想?/ところで()はいつなの?/時間を実験する/未完の革命/エピローグなど、
436ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ブラックホールと宇宙の崩壊』、1983

ポール・ハルパーン、江里口良治・水島信子訳、『輪廻する宇宙 - ニーチェからホーキングまで -』、丸善、1997
原著は Paul Halpern, The Cyclical Serpent. Prospects for an Ever-Repeating Universe, 1995
はじめに 最も遠くの超新星//
輪廻の伝統;終わりなきシバの踊り/永劫回帰//
現代的な宇宙観;膨張する宇宙/響きと怒りに満ちて//
宇宙の密度を探る;私たちの運命はどこに/創成の形/銀河の速度/ダークマターの探索//
閉じた蛇を作る;逆転する宇宙/クランチの後/別の宇宙//
エピローグ 発見への情熱など、
286ページ。

 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ
 同じ著者による→そちらを参照:上掲の『タイムマシン』、1995


スティーヴン・W・ホーキング、ロジャー・ペンローズ、林一訳、『ホーキングとペンローズが語る 時空の本質 ブラックホールから量子宇宙論へ』、早川書房、1997
原著は Stephen W. Hawking and Roger Penrose, The Nature of Space and Time, 1996
古典理論(S.W.ホーキング)/時空特異点の構造(R.ペンローズ)/量子ブラックホール(S.W.ホーキング)/量子論と時空(R.ペンローズ)/量子宇宙論(S.W.ホーキング)/ツイスターで見る時空(R.ペンローズ)/討論(S.W.ホーキングとR.ペンローズ)など、
192ページ。

 ホーキングによる→こちらを参照:上掲の『ホーキング、宇宙を語る』、1989

 ペンローズによる→そちら(下掲の『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』、2014)、
 また→あちら(竹内薫、『ペンローズのねじれた4次元』『』、1999)や、ここ(ジム・ホルト、『世界はなぜ「ある」のか』、2013/「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「xv. 時間論、その他」)も参照


和田純夫、『20世紀の自然観革命 量子論・相対論・宇宙論』(朝日選書 578)、朝日新聞社、1997
20世紀の自然観革命-原子論を出発点として 補足 20世紀の自然観革命の位置付けについて/原子の構造から原子核の構造へ/究極の理論を求めて/新しい粒子論-量子論という見方/量子論の解釈問題/特殊相対論と一般相対論/ビッグバン理論の登場/宇宙の起源など、
258ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』、1994


佐藤文隆、『量子力学のイデオロギー』、青土社、1997
量子力学のイデオロギー;量子力学断章Ⅰ - 理論と身体/量子力学断章Ⅱ - 形相と媒体/量子力学雑感//
物理学のアリーナ;プリンキピアの物理/相互作用の統一理論と宇宙論/理論物理の雑感//
時間空間の生成;宇宙と時間の生成/時間と空間をつくる/膨張宇宙論から見た時間など、
310ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974


尾関章、『量子論の宿題は解けるか 31人の研究者に聞く最前線報告』(ブルーバックス B1195)、講談社、1997
量子コンピューターで試す多世界/実験で見えてきた量子世界/量子世界がつくる究極の暗号/半導体と量子力学との再会/量子力学の原点を訪ねて、など、
318ページ。


Martin Rees, Before the Beginning. Our Unicerse and Others, Perseus Books, Cambridge, Massachusetts, 1997
『始まりの前に 私たちの宇宙と他の諸宇宙』
序文(S.ホーキング)//
序論/原子から生命へ - 銀河の生態学/宇宙的場面 - 膨張する地平/銀河以前の歴史 - 決着をつける証拠/重力的深み/ブラックホール - 新たな物理学への道/イメージと実体 - 銀河とダークマター/原初のさざ波から宇宙的構造へ/オメガとラムダ/〈始まり〉にもどる/インフレーションとマルチヴァース/エキゾチックな遺物とミッシング・リンク/無限に向かって-遠未来/他の諸宇宙での時間/〈偶然の一致〉と諸宇宙の生態学/人間原理-理にかなったものとかなっていないものなど、
302ページ。

 同じ著者による→こちら(下掲の『宇宙を支配する6つの数』、2001)や、あちら(『宇宙の素顔』、2003)を参照


ローレンス・M・クラウス、堀千恵子訳、『SF宇宙科学講座 エイリアンの侵略からワープの秘密まで』、日経BP社、1998
原著は Lawrence M. Krauss, Beyond Star Trek, 1997
山を越え、やつらがもうすぐやってくる;死に方の選択 エイリアンの地球侵略/いるのか、いないのか? UFOはどう飛ぶか/人類未踏の地へ 宇宙旅行の経済学/宇宙でゴルフ 宇宙船の動力/往復? 恒星間飛行の可能性/百聞は一見にしかず 地球外生命を探せ/いちかばちかの賭け 生命誕生の確率/宇宙の果てのレストラン 地球最期の日//
マドンナ宇宙;フォースがあなたと共に在らんことをテレパシーの正体/知ったら最後…… 超能力を伝えるもの/時間とは タイム・トラベルの謎/永遠への旅 真空にたまったエネルギー/人間の条件 コンピューターと量子論/機械の中のゴースト 量子コンピューターの奇跡/新たなる未知へ? シュレーディンガーの猫//
エピローグ/注釈(山田桂一)など、
274ページ。
 「量子力学によれば、観測者が実在を決める 前記のようなケースだけではなく、観測者とは関わりのない客観的な実在が存在すると云う。それどころか、自然法則で事象はすでに決まっているという決定論的な立場を取るのだ」(pp.212-213)
と述べられていたのが印象的でした。

また量子論の多世界解釈に対する批判として、シドニー・コールマンの次の言葉が引用されていました;
「彼らはどうも古典的な物理学で量子力学を説明しようとしているらしい」(p.233)。

 同じ著者による→こちら(『超ひも理論を疑う』、2008)や、そちら(『宇宙が始まる前には何があったのか?』、2013)でも言及される次の問いが本書でも挙げられていました;
「物理学は環境科学なのですか」(p.245)。

 なお〈宇宙の熱死〉に対し、「知性の火を絶やさないための手段」として、
「独力で進化する新しいベビー宇宙を作るというやり方」と、
「宇宙が肉眼で見えるくらいの大きさでいくつにも分かれ、私たちの住む宇宙はその一部に過ぎないと考えてみてもいい」
 と記されていました(pp.247-248)。
 

和田純夫、『シュレディンガーの猫がいっぱい 「多世界解釈」がひらく量子力学の新しい世界観』(カワデ・サイエンス)、河出書房新社、1998
「量子力学」の誕生前夜/アインシュタインとド・ブロイのただならぬ関係?!/量子力学の確立と、さらに深まる謎を追って/「観測すること」と「認識すること」/「多世界解釈」の主張/ノイマンとエベレットの発想法/同時進行する多数の世界/「シュレディンガーの猫」問題を解決する/アインシュタインの思考実験と、世界の分離不可能性/アインシュタイン vs. ボーア論争の解答/量子力学は決定論/量子は実在する?/量子宇宙と多世界解釈/多世界解釈の世界など、
204ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』、1994
 →そちらにも挙げておきます(「世界の複数性など」の頁

アラン・H・グース、はやしはじめ・はやしまさる訳、『なぜビッグバンは起こったか インフレーション理論が解明した宇宙の起源』、早川書房、1999
原著は Alain H. Guth, The Inflationary Universe, 1997
究極のフリーランチ/ニューヨーク州イサカから見た宇宙の眺め/現代宇宙論の誕生/焦熱の過去からのこだま/原初スープの濃縮/物質と反物質の問題/1970年代の素粒子物理学革命/大統一理論/磁気モノポールの脅威と戦う/インフレーション宇宙/発見の余波/新しいインフレーション宇宙論/むらのない背景のしわ/地底と天のかなたから来た観測上の手がかり/永続、増殖するインフレーション宇宙/実験室での宇宙創造とワームホール/無から生まれる宇宙/エピローグ//
補説;重力エネルギー/ニュートンと無限の静的宇宙/黒体放射/単位と尺度など、
474ページ。


デイヴィッド・ドイッチュ、林一訳、『世界の究極理論は存在するか 多宇宙理論から見た生命、進化、時間』、朝日新聞社、1999
原著は Daivd Deutsch, The Fabric of Reality, 1997
万物の理論/影の宇宙/問題と解決/実在の規準/仮想実在(ヴァーチャル・リアリティ)/計算の普遍性と限界/正しさの根拠をめぐる対話(あるいは「デイヴィッド対隠れ帰納主義者」)/生命の宇宙的意義/量子コンピュータ/数学の本性/量子的な時間/タイムトラベル/4本の撚り糸/宇宙の終わりなど、
336ページ。
 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『無限の始まり』、2013
 また前掲

P.C.W.デイヴィス+J.R.ブラウン編、『量子と混沌』、1987、pp.125-159、

尾関章、『量子論の宿題は解けるか』、1997、pp.20-44

ジム・ホルト、『世界はなぜ「ある」のか? 実存をめぐる科学・哲学的探索』、2013、pp.180-195

 にインタヴュー記事あり。
 

佐藤文隆、パリティ編集委員会編、『いまさら宇宙論?』(パリティブックス)、丸善、1999
ビッグバンと原子力/無限系のおそろしさ/何が膨張する?/熱い宇宙/宇宙の空間形/ダークマターの同床異夢/ダーク素粒子/原子ゆらぎと構造形成/天体形成と複雑系/真空宇宙論/量子宇宙/宇宙と物理/付録など、
234ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974


前田恵一監修、『図解雑学 ビッグバン』、ナツメ社、1999
膨張する宇宙/ビッグバンと素粒子の世界/ビッグバン理論とはなにか/ビッグバン理論の検証/さらなる検証にむけて/ビッグバン以前の宇宙など、
248ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙のトポロジー』、1991

竹内薫、『ペンローズのねじれた4次元 時空をつくるツイスターの不思議』(ブルーバックス B1260)、講談社、1999
プロローグ 鍵/あるけど見えないローレンツ収縮 特殊相対性理論の世界/ブラックホールと特異点 一般相対性理論の世界/シュレディンガーの猫 量子力学の世界/ツイスターの世界 相対論と量子論/ゆがんだ4次元 時空の最終理論をめざして/エピローグなど、
272ページ。

 同じ著者による→こちら(下掲の『超ひも理論とはなにか』、2004)や、そちら(『ホーキング 虚時間の宇宙』、2005)、、あちら(『図解入門 よくわかる最新時間論の基本と仕組み』『』、2006)、またこなた(『宇宙の向こう側』、2008),、そなた(『ヒッグス粒子と宇宙創成』、2012)を参照。さらに、フィクションも著しています→あなた:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「竹内薫」の項

 またペンローズによる→あなたも参照:上掲の『ホーキングとペンローズが語る 時空の本質』、1997

デニス・オーヴァバイ、鳥居祥二・吉田健二・大内達美訳、『宇宙はこうして始まりこう終わりを告げる 疾風怒濤の宇宙論研究』、白揚社、2000
原著は Dennis Overbye, Lonely Hearts of the Cosmos. The Story of the Scientific Quest for the Secret of the Universe, 1991/1999
プロローグ 永遠を背負わされて//
主焦点ケージの男;天の声/キャンディーマシン/世界モデル戦争/時の岸辺の篝火/神の検問所/ブラックホールの王様/ビッグバン/銀河を作るもの//
フェルミランド;長征/永遠に続くさようなら/フェルミランド/美しいものが勝つ/宇宙論をやる気はなかったけれど……/うまい話にはウラがある//
影の宇宙;ハッブル定数をめぐる戦い/測定装置ゼットマシン/ニュートリノの春がやってきた/ツビッキーの復讐/占星術師の呪い/夢の時代//
最後のジェントルマン;流浪のサンディジ/宇宙の膨張が停止する日/あちら側の世界//
それから-宇宙論の黄金時代/エピローグなど、
720ページ。


 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ

Paul J. Nahin, Time Machines. Time travel in physics, metaphysics, and science fiction, 2nd edition, 1993/1999

キティー・ファーガソン、二階堂行彦訳、『光の牢獄 - ブラックホール -』(Newton Science Series)、ニュートンプレス、2000
原著は Kitty Ferguson, Prisons of Light. Black Holes, 1996
プロローグ/星が燃え尽きたとき/重力とは何か:ニュートンとアインシュタイン/捕らわれた光/理論的空想の旅をする/死を賭してブラックホールに挑む/巨大なる無を考える/実在するブラックホールの発見/暗黒の中心/調査はなお続く/迷宮への入り口/ブラックホールの神話と奇談/エピローグなど、
246ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:『ピュタゴラスの音楽』、2011/「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」の頁の「ピュータゴラース」の項

リー・スモーリン、野本陽代訳、『宇宙は自ら進化した ダーウィンから量子重力理論へ』、NHK出版、2000
原著は Lee Smolin, The Life of the Cosmos, 1997
プロローグ-革命/序説//
基礎物理学の危機;光と生命/原子論の論理/星の奇跡/統一の夢/ひも理論の教え//
空間と時間の生態学;物理学の法則は普遍だろうか?/宇宙は進化したのだろうか?/探偵の仕事/銀河の生態学/ゲームと銀河//
宇宙の組織;生命とは何か?/興味深い宇宙の宇宙論/花と12面体/哲学、宗教、そして宇宙論/人間原理を超えて//
アインシュタインの遺産;新たな宇宙論における空間と時間/ニュートンからアインシュタインへの道/アインシュタインの一般相対性理論の意味/量子の意味//
アインシュタインの復讐;宇宙論と量子/多元的な宇宙/関係のネットワークとしての宇宙/時間の進化//
エピローグ-進化など、
504ページ。


 →こちらで触れました:「近代など(20世紀~) Ⅴ」の頁の「ピーター・ワッツ」の項

ジョン・D・バロウ、松浦俊輔訳、『科学にわからないことがある理由 不可能の起源』、青土社、2000
原著は John D. Barrow, Impossibility. The Limits of Science and the Sience of Limits, 1998
不可能の技/進歩の希望/バック・トゥ・ザ・フューチャー/人間であること/技術的な限界/宇宙論的限界/奥底にある限界/不可能と人間/不可能ということ-おさらいなど、
450ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙が始まるとき』、1996

クリフォード・A・ピックオーバー、青木薫訳、『2063年、時空の旅 タイムトラベルはどうすれば可能になるのか?』(ブルーバックス B1290)、講談社、2000
原著は Clifford A. Pickover, Time. A Traveler's Guide, 1998
プレリュード/同時性にご用心/アインシュタイン=ランジュヴァン時計を作る/ローレンツ変換/脳のタイムマシン/今、ここ、よその場所/タイムトラベラーのための3つのルール/時空の距離の測り方/未来にタイムトラベルする方法/超光速通信?/重力による時間の遅れ/タキオン、コスミック・モーメント・ライン、トランセンデント状態/風船とひものタイムトラベル/ジョン・F・ケネディは救えるか?/ゲーデル宇宙の閉時曲線/ワームホールのタイムマシン/時間であそぼう/過去へ!/おわりに/付録 コンピューターおたくのためのバイキング料理など、
448ページ。


田崎秀一、『カオスから見た時間の矢 時間を逆にたどる自然現象はなぜ見られないか』(ブルーバックス B1287)、講談社、2000
「時間の矢」と不可逆性の問題/時間反転の実験 - スピン・エコー -/ギッブスの見方 - 統計集団の考え方 -/カオス/拡散という不可逆現象/分布に刻まれる「時間の矢」など、
256ページ。


佐藤勝彦監修、『「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!』(PHP文庫 さ 23-3)、PHP研究所、2000
序論 量子論の世界へようこそ/量子の誕生 量子論前夜/原子の中の世界へ 前期量子論/見ようとすると見えない波 量子論の完成/自然の本当の姿を求めて 量子論の本質に迫る/枝分かれしていく世界 解釈問題を追う/究極の理論へ向けて 量子論が切り開く世界など、
256ページ。

 佐藤勝彦による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991


別冊宝島編集部編、『宇宙とは!? 古今東西「宇宙論」のすべて』(宝島社文庫)、宝島社、2000
『別冊宝島』、no.116:「宇宙論が楽しくなる本」、1990.8 の改題・改訂版
現代宇宙論の誕生;すべてはアインシュタインから始まった!(金子隆一)/究極の「万物の理論」をめざす試み(橋元淳一郎)//
現代宇宙論の最前線;インフレーション宇宙からホーキングの無境界条件宇宙へ(佐々木節)/蒸発するブラックホール(金子隆一)/現代宇宙論の奇想と遊ぶ!(鹿野司)/第5の力は実在するか?(金子隆一)/エントロピー無限大への道(金子隆一)/右回りと左回りとでは回転する物体の重さが違う!?(金子隆一)/地球は膨張している!(鹿野司)/忘れられたマッハの原理(金子隆一)/膨張宇宙への疑義(金子隆一)/変容するビッグバン宇宙論(木幡たけ
(走+斗)士)//
コペルニクスからニュートンまで;黎明期の宇宙論(高田紀代志)/芸術と宇宙論の共振(石黒敦彦)/新SF天文学対話(志賀隆生)/宇宙人に出会いたい!(金子隆一)など、
368ページ。
 

iii. 2000年代~:(超)ひも理論、ブレーンワールドその他

ブライアン・グリーン、林一・林大訳、『エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する』、草思社、2001
原著は Brian Greene, The Elegant Universe. Superstrings, Hidden Dimensions, and the Quest for the Ultimate Theory, 1999
私たちはどこまで知っているのか;なぜひも理論は重要なのか//
相対性理論 vs 量子力学;空間、時間と特殊相対性理論/一般相対性理論によるゆがみと重力/量子力学は誰にも理解できない?/一般相対性理論 vs 量子力学//
ひも理論はすべてを説明し尽くすか;超ひも理論の本質/超ひもの「超」の意味/目に見えない次元がたくさんある/ひも理論の証拠は実験でつかめるか//
超ひも理論と時空;宇宙をあらわす新しい幾何学/空間を裂く - ワームホールの可能性/ひもを超えて - M理論を探す/ブラックホールをひも/M理論で考える/宇宙論をひも/M理論で考える//
統一にむけて;ひも/M理論の未来など、
576ページ。

 同じ著者による→こちら(下掲の『宇宙を織りなすもの』、2009)、またあちら(『隠れていた宇宙』、2011)を参照


マーティン・リース、林一訳、『宇宙を支配する6つの数』(サイエンス・マスターズ 16)、草思社、2001
原著は Martin Rees, Just Six Numbers, 2000
宇宙とミクロ世界/この宇宙の住環境1:惑星、星、生命/宇宙に構造をもたらした大きな数N/星の寿命を決める数ε/この宇宙の住環境2:銀河系の彼方/膨張の速度を決める宇宙の密度Ω/「反重力」の強さを表す数λ/原初の「さざなみ」を作り出した数Q/この宇宙の住環境3:地平線の先には何があるか/宇宙には次元Dがいくつあるか/偶然の一致か、神の意志か、それとも多宇宙か、など、
292ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の Before the Beginning, 1997


スティーヴン・W・ホーキング、佐藤勝彦訳、『ホーキング、未来を語る』、アーティストハウス、2001
原著は Stephen W. Hawking, The Universe in a Nutshell, 2001
序文/相対論について/時間の形/クルミの殻の中の宇宙/未来を予測する/過去を守る/私たちの未来は?/ブレーン新世界など、
240ページ。


 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ
 同じ著者による→そちらを参照:上掲の『ホーキング、宇宙を語る』、1989

Barrett O'Neill、井川俊彦訳、『カー・ブラックホールの幾何学』、共立出版、2002
原著は Barrett O'Neill, The Geometry of Kerr Black Holes, 1995
邦訳は1996年刊本の再刊
背景/カー時空序論/最大への拡張/カー測地線/ペトロフ・タイプ/付録など、
448ページ。


フレッド・アダムズ+グレッグ・ラフリン、竹内薫訳、『宇宙のエンドゲーム 生命と物質-永遠に繰り返される「終焉」の物語』、徳間書店、2002
原著は Fred C. Adams and Gregory Laughlin, The Five Ages of the Universe, 1999
序章/原始の時代/星たちが輝く時代/縮退の時代/ブラックホールの時代/暗黒の時代/結論//付録など、
396ページ。


 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ

アミール・D・アクゼル、林一訳、『相対論がもたらした時空の奇妙な幾何学 アインシュタインと膨張する宇宙』、早川書房、2002
原著は Amir D. Aczel, God's Equation. Einstein, Relativity, and the Expanding Universe, 1999
爆発する星/初期のアインシュタイン/プラハ、1911年/ユークリッドの謎/グロスマンのノートブック/クリミア遠征隊/リーマン計量/ベルリン-場の方程式/プリンシペ島、1919年/合同会議/宇宙論的考察/空間の膨張/物質の本性/宇宙の幾何学/イリノイ州バタヴィア、1998年5月4日/神の方程式など、
264ページ。


 同じ著者による→こちら(下掲の『量子のからみあう宇宙』、2004)や、またあちら(『「無限」に魅入られた天才数学者たち』、2002/「近代など(20世紀~) Ⅱ」の頁の「viii. 無限、その他」)を参照


フランク・クロース、はやしまさる訳、『自然の非対称性 生命から宇宙まで』、紀伊國屋書店、2002
原著は Frank Close, Lucifer's Legacy. The Meaning of Asymmetry, 2000
ルシファー/対称性/鏡を通して/鏡像分子と生命の起源/幻のような光景/琥珀の力/問題の核心/対称性を垣間見る/失われた対称性/自然の手品/反物質/バック・トゥ・ザ・フューチャー/ルシファーの遺産/エピローグなど、
296ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『なんにもない 無の物理学』、2011


K.C.コール、大貫昌子訳、『無の科学 ゼロの発見からストリング理論まで』、白揚社、2002
原著は K. C. Cole, The Hole in the Universe. How Scientists Peered over the Edge of Emptiness and Found Everything, 2001
プレリュード-なぜ無を考えるのか?/無の誕生/無はろくでなしか?/無がセンターステージに躍り出る/無がセンターステージそのものになる/無すなわちストリングになる/無がすべてになる/ニュースになった無/無が気にかかる/無を探し求めて、など、
338ページ。


池内了、『物理学と神』(集英社新書 0174 G)、集英社、2002
はじめに/神の名による神の追放/神への挑戦 - 悪魔の反抗/神と悪魔の間 - パラドックス/神のサイコロ遊び/神は賭博師/神は退場を! - 人間原理の宇宙論/神は細部に宿りたもう/神は老獪にして悪意を持たず、など、
256ページ。

 同じ著者による→こちら(上掲の『泡宇宙論』、1995)や、そちら(『宇宙論と神『』、2014/「通史、事典など」の頁の「i. 天文学史的なものなど」)、またあちら(『司馬江漢』(2018)、『江戸の宇宙論』(2022)、「『日本のコペルニクス』と三人の継承者」(2023)/「日本 Ⅱ」の頁の「vi. キリシタン、蘭学・洋学とその周辺」)を参照


ポール・デイヴィス、林一訳、『タイムマシンをつくろう!』、草思社、2003
原著は Paul Davies, How to Build a Time Machine, 2001
タイムマシン小史/プロローグ/未来への行き方/過去への行き方/タイムマシンの作り方/タイムマシンに関するQ&Aなど、
192ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ブラックホールと宇宙の崩壊』、1983


J.リチャード・ゴット、林一訳、『時間旅行者のための基礎知識』、草思社、2003
原著は J. Richard Gott III, Time Travel in Einstein's Universe, 2001
夢の時間旅行へ/未来への旅/過去への旅/タイムトラベルと宇宙のはじまり/未来からふりかえる、など、
296ページ。


マーティン・リース、青木薫訳、『宇宙の素顔 すべてを支配する法則を求めて』(ブルーバックス B1417)、講談社、2003
原著は Martin Rees, Our Cosmic Habitat, 2001
プロローグ-神は、この世界を別様につくることができたのだろうか?//
ビッグバンから生物圏まで;星のライフサイクルと系外惑星の可能性/地球外知的生命は存在するか/星の成り立ちとその一生/大きなスケールでとらえる宇宙/熱いはじまりから初期宇宙へ/ブラックホールとタイムマシン//
宇宙のはじまりと終わり;減速か加速か・宇宙の未来を予測する/はるか遠い未来の宇宙/宇宙のはじまり・最初の1000分の1秒//
宇宙を支配する法則を求めて;宇宙と微視的世界の統一理論/マルチバース理論の可能性//
付録-宇宙にみられるさまざまなスケールなど、
268ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の Before the Beginning, 1997

ジョアオ・マゲイジョ、青木薫訳、『光速より速い光 アインシュタインに挑む若き科学者の物語』、NHK出版、2003
原著は João Magueijo, Faster than the Speed of Light. The Story of a Scientific Speculation, 2003
とても馬鹿げた理論//
Cの物語;アインシュタインの“夢” - 牛たちの物語/重力の問題/アインシュタイン最大の誤り/謎をかける宇宙/アンフェタミン中毒の神//
VSLまでの遠い道のり;じめじめした冬の朝に/ゴアの夜/中年の危機/グーテンベルクの戦い/戦い終わって/高山病//
エピローグ 光よりも速く、など、
358ページ。


広瀬立成、『真空とはなんだろう 無限に豊かなその素顔』(ブルーバックス B1406)、講談社、2003
豊かな世界 - 真空;新しい真空像//
マクロの真空;真空を求めて/もっと真空を/ゆがむ真空//
ミクロの真空;真空と物質/極微の世界へ真空と素粒子/真空と量子力学/分極する真空//
宇宙と真空;相転移する真空/宇宙開闢と真空/進化する真空など、
198ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『反物質の世界』、1982


桜井邦朋、『図解 膜宇宙論 超弦理論からみえた驚異の宇宙像』、PHP研究所、2003
プロローグ 歴史から学ぶ/宇宙の構造を支配するもの - 重力/重力の本質を探る/ミクロに宇宙を視る - 物質の成り立ちを探る/物質は進化する - 創生の秘密/宇宙の構造を織りなす次元/丸めこまれた次元の存在/「超弦」から「膜」へ/膜宇宙とは何か - 宇宙の神秘にふれる/エピローグ 宇宙論の行方を占う、など、
176ページ。

 「膜宇宙というと、従来想定されてきた宇宙像と根本から異なるように考えられるかもしれないが、そうではなく、宇宙空間が一種の膜面で構成されるというのは、第2章で見たゴム膜と類似したものだとしてよい」(p.156)。

 ここで「第2章で見たゴム膜」とされているのは、三次元をたとえば風船の表面などの二次元に落として、膨張宇宙では、たとえば個々の星や星雲などが静止した枠組みである空間の中を移動するのではなく、空間自体が膨張することを説明するために用いられる古典的なたとえを指すと見てよいでしょう。さて、

 「ただ、ちがうところは、この膜面に、丸めこまれたいくつかの次元に対応した極微の領域が形成されていて、この小さな領域では、そこに多種多様な変動が伴っていることである」(p.158)。

 他方、図解ページで膜宇宙の複数性に触れられているものの(p.159)、本文には出てきませんでした。ちなみに超弦理論の話になる前ですが、
 「虚空ともいえる空間が前もって存在していて、その中で、この宇宙が創造され、この空間の中で膨張してきたのではない。宇宙が時間とともに空間そのものを創生しながら拡大してきたのである。したがって、膨張する宇宙の一番先端の向こう側はどうなっているのかと問うことは意味がない」(p.86)
 と述べられており、これは宇宙の単一性・全一性についての、やはり古典的な説明でした。
 

福江純監修、『図解雑学 タイムマシン』、ナツメ社、2003
タイムトラベラー/タキオン・マシン/ティプラー・マシン/ワームホール・マシン/ゴット・マシン/タイムパラドックスなど、
224ページ。

 同じ著者による→こちら(下掲の『SFはどこまで可能か?』、2004)や、そちら(『Newton 別冊 ブラックホール ホワイトホール』、2008)や、またあちら((『カラー図解でわかる ブラックホール宇宙』、2009)を参照


『Newton』、vol.23 no.12、2003.10、pp.24-53:「NEWTON SPECIAL if もしもで考える『もう一つの』宇宙 1つまちがえば星や銀河は生まれず生命も誕生しなかった」

 続いて pp.54-63 に
「4次元デジタル宇宙 立体視と時間変化で宇宙の全貌を明らかにするプロジェクト」


ジョン・D・バロウ、松浦俊輔訳、『宇宙に法則はあるのか』、青土社、2004
原著は John D. Barrow, The Universe that Discovered Itself, 1998/2000
プロローグ/過去/見えない世界/内側の宇宙と外側の宇宙/自然法則が数学的である理由/自然法則はあるのか/選択効果など、
526ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙が始まるとき』、1996


Barry Parker、井川俊彦訳、『アインシュタインの遺産』、共立出版、2004
原著は Barry Parker, Einstein's Brainchild. relativity Made Relatively Easy!, 2000
若いころのアインシュタイン/マイケルソン-モーレーの実験/特殊相対性理論/四次元時空とタイムトラベル/一般相対性理論/重力と曲がった時空/相対性理論の検証/ブラックホールなどの奇妙な物体/宇宙の終焉/さらなる探求/量子理論/エピローグなど、
274ページ。


アミール・D・アクゼル、水谷淳訳、『量子のからみあう宇宙 天才物理学者を悩ませた素粒子の奔放な振る舞い』、早川書房、2004
原著は Amir D. Aczel, Entanglement. The Greatest Mystery in Physics, 2001
はじめに/「絡み合い」という謎の力/量子論前史/トーマス・ヤングの実験/プランクの定数/コペンハーゲン学派/ド・ブロイのパイロット波/シュレーディンガーの方程式/ハイゼルベルクの顕微鏡/ホイーラーの猫/ハンガリー人数学者、フォン・ノイマン/アインシュタイン登場/ボームとアハラノフ/ジョン・ベルの定理/クローザー、ホーン、シモニーの夢/アラン・アスペ/レーザーガン/3つの粒子の絡み合い/10キロ実験/テレポーテーション-「転送(ビーム)してくれ、スコッティ!」/量子の魔術-いったいどいうことなのか?など、
268ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論がもたらした時空の奇妙な幾何学』、2002

マーカス・チャウン、長尾力訳、『奇想、宇宙をゆく 最先端物理学 12の物語』、春秋社、2004
原著は Marcus Chown, The Universe Next Door, 2001
日本語版序文 宇宙は謎だらけ 知れば知るほど新たな謎が生まれる(佐藤勝彦)/はじめに:科学の未来のために//
実在(リアリティ)って何だろう?;逆流する時間/多世界解釈と不死/波動関数の
(ミステリー)/タイムマシンとしての世界/五次元物語//
宇宙って何だろう?;天空のブラックホール/鏡の宇宙/究極の
多宇宙(マルチバース)/宇宙は誰が造ったのか?//
生命と宇宙;星間宇宙の生命/蔓延する生命/異星人のゴミ捨て場など、
352ページ。


スティーヴン・W・ホーキング、キップ・S・ソーン、リチャード・プライス、イーゴリ・ノヴィコフ、ティモシー・フェリス、アラン・ライトマン、林一訳、『時空の歩き方 時間論・宇宙論の最前線』、早川書房、2004
原著は Stephen W. Hawking, Kip S. Thorne, Igor Novikov, Timothy ferris, and Alan Lightman, introduction by Richard Price, The Future of Spacetime, 2002
イントロダクション(R.プライス)/過去は変えられるか(I.ノヴィコフ)/歴史家のために世界の安全を守る「時間順序保護」(S.W.ホーキング)/時空の歪み(ワープ)と量子世界-未来についての臆測(K.S.ソーン)/科学の大衆化(T.フェリス)/小説家としての物理学者(A.ライトマン)など、
286ページ。


 ホーキングによる→こちらを参照:上掲の『ホーキング、宇宙を語る』、1989
 K.ソーンによる→そちらを参照:上掲の『ブラックホールと時空の歪み』、1997
 ライトマンによる→あちらを参照:下掲の「おまけ」/『アインシュタインの夢』、2002

スティーヴン・ウェッブ、松浦俊輔訳、『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 フェルミのパラドックス』、青土社、2004
原著は Stephen Webb, If the Universe is Teeming with Aliens...Where Is Everybody?, 2002
みんなどこにいる?/フェルミとそのパラドックス/実は来ている/存在するがまだ連絡がない/存在しない/結論など、
416ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『現代物理学が描く突飛な宇宙をめぐる11章』、2005


佐藤勝彦監修、『「相対性理論」の世界へようこそ ブラックホールからタイムマシンまで』(PHP文庫 さ 23-5)、PHP研究所、2004
序論 相対性理論の世界へようこそ/特殊相対性理論の世界/一般相対性理論の世界/ブラックホールと相対性理論/宇宙と相対性理論/タイムトラベルと相対性理論など、
256ページ。

 佐藤勝彦による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991


福江純、『SFはどこまで可能か?』(空想科学文庫 10)、扶桑社、2004
『やさしいアンドロイドの作り方』(1996)の加筆・改題版
もし、誰も夢に見なければ/
宇宙人(かれら)はどこにいるのか?/宇宙旅行はどこまで可能なのか?/人類が宇宙に住む日はくるのか?/タイムマシンは可能なのか?/異次元の扉は開くのか?/ロボットはヒトの心が持てるのか?/遺伝子操作はモンスタ-を生み出すのか?/人類はどこまで進化するのか?/不老不死は実現するのか?/最終章 われわれは理解し(わかり)合えるか?//
解説(柳田理科雄)など、
272ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『図解雑学 タイムマシン』、2003


竹内薫、『超ひも理論とはなにか 究極の理論が描く物質・重力・宇宙』(ブルーバックス B1444)、講談社、2004
はじめに まずは超ひもを見てみよう/オーソドックスな超ひも理論入門/次元の秘密/超ひも理論ルネサンスなど、
272ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ペンローズのねじれた4次元』、1999


谷口義明、『クェーサーの謎 宇宙でもっともミステリアスな天体』(ブルーバックス B1458)、講談社、2004
謎のクェーサー/クェーサーの発見/クェーサーの種類/クェーサーの起源/クェーサーの進化/クェーサーの謎解きなど、
248ページ。


『Newton』、vol.24 no.2、2004.2、pp.24-55:「NEWTON SPECIAL ゼロは‘宇宙’を生んだ 古代文明のゼロ記号からブラックホールまで」
 同特集中 pp.52-55 は「無からの宇宙創生論の現在 特別インタビュー アレキサンダー・ビレンキン “ゼロ”は広大な宇宙と無数の“世界”を生んだ」
 ビレンキン(ビレンケン)の著書→こちらを参照:下掲の『多世界宇宙の探検』、2002
 

松野俊一、「量子力学の多世界解釈について」、『東海大学紀要. 海洋学部』、vol.2 no.2、2004.11.30、pp.77-80 [ < CiNii Articles

ジョン・D・バロウ、松浦俊輔訳、『宇宙の定数』、青土社、2005
原著は John D. Barrow, The Constants of Nature, 2002
始まりの前/究極の実在へ向かう旅/人間を超えた基準/もっと先へ、もっと深く、もっと少なく 万物理論の探索/エディントンの未完成交響曲/巨大な数の謎/生物学と星々/人間原理/定数を変える、歴史を書き換える/新しい次元/定数の主題に基づく変奏/空に手を伸ばす/他の世界と大きな疑問など、
404ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の(『宇宙が始まるとき』、1996

スティーヴン・ウェッブ、松浦俊輔訳、『現代物理学が描く突飛な宇宙をめぐる11章』、青土社、2005
原著は Stephen Webb, Out of the World, 2004
序論/対称性(シンメトリー)/物理学の2本柱/宇宙の部品/標準モデル/GUTsとSUSY/もっと次元を/スーパーストリング/Mの物語/ブレインとブラックホール/ホログラムとしての世界/衝突する世界など、
440ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由』、2004

竹内薫、『ホーキング 虚時間の宇宙 宇宙の特異点をめぐって』(ブルーバックス B1487)、講談社、2005
冒頭ショートショート 異星交遊記/序章 ホーキングの「常識」/宇宙には時の始まりと終わりがあるか 特異点をめぐって/ブラックホールだってしまいにゃ蒸発する/宇宙の端っこが丸いと神様の出番はなくなる?/終章 賭けには負けっぱなしではあるけれど(情報のパラドックス)など、
236ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ペンローズのねじれた4次元』、1999

 またホーキングによる→そちらを参照:上掲の『ホーキング、宇宙を語る』、1989

川合光、図解=高橋繁行、『はじめての〈超ひも理論〉 宇宙・力・時間の謎を解く』(講談社現代新書 1813)、講談社、2005
序章 「超ひも理論」で何がわかるか/超ひもと素粒子/超ひもと「力」の根源/超ひもと時間の秘密/超ひも理論の歴史/超ひも理論を解くマトリクス/付録 私たちは50回目の宇宙に住んでいる?など、
276ページ。

 附録で説かれる〈サイクリック宇宙論〉は、同じく超ひも理論に基づいているものの、下掲のポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック、水谷淳訳、『サイクリック宇宙論』(2010)のそれとはまた別のもので、〈ブレーンワールド〉という装置を用いないものでした。 

『現代思想』、vol.33-11、2005.10、pp.41-167:「特集=宇宙論との対話」
量子力学は何の理論か?(佐藤文隆)/神の存在証明と宇宙の存在証明(小泉義之)/現代宇宙論はどこを見ているのか 宇宙論のトピックめぐり(松浦俊輔)/見当外れな場所でのETさがし(ジェイムズ・N・ガードナー)/アインシュタイン宇宙論の成功と失敗 「浮遊文明」の扉を開いて(金子務)/ニュートン・アインシュタインをダーウィン化する(三浦俊彦)/宇宙における「時間の誕生」 パースの場合(伊藤邦武)/ミクロとマクロ その統一の謎(西脇与作)/無重力と造形(小町谷朝生)

ジョン・ファレル、吉田三千世訳、『ビッグバンの父の真実』、日経BP社、2006
原著は John Farrell, The Day without Yesterday. Lemaître, Einstein, and the Birth of Modern Cosmology, 2005
ソルベイ会議/戦場から戻って/進化する宇宙という考え方-宇宙観の変遷/英ケンブリッジから米ケンブリッジへ/宇宙の膨張が確認される/原初の原子/宇宙マイクロ波背景輻射/実り少ない年月(としつき)/ルメートルの定数が復活へ/特異点の本質を見抜く/宇宙の大聖堂など、
288ページ。
 原題にもあるようにジョルジュ・ルメートル(1894-1966)が主人公です。

 ルメートルによる→こちらを参照:本頁冒頭の『現代宇宙論の誕生 20世紀科学論文集』、2022
 

ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ』、NHK出版、2006
原著は Michio Kaku, Parallel Worlds. A Journey through Creation. High Dimensions, and the Future of the Cosmos, 2005
宇宙;宇宙が赤ん坊だったころ/パラドックスに満ちた宇宙/ビッグバン/インフレーションと並行宇宙//
マルチバース;次元の入口とタイムトラベル/量子論的な並行宇宙/M理論-すべてのひもの母/設計された宇宙?/11次元のエコーを探す//
超空間への脱出;すべての終わり/宇宙からの脱出/マルチバースを超えて、など、
480ページ。
 本書中にはオルバースのパラドックスや宇宙卵に関してポーの『ユリイカ』(pp.40-41、p.68)を、ワーム・ホールに関してカール・セーガンの『コンタクト』(p.159)を、といった馴染みのもの以外にも、ポール・アンダースンの『タウ・ゼロ』(pp.97-99、347-348)、アシモフの『神々自身』(pp.137-139)、ハインラインの「輪廻の蛇」(pp.173-174)、アシモフ『永遠の終わり』(p.174)、ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』(p.177)と『宇宙の果てのレストラン』(p.412)、フィリップ・K・ディック『高い城の男』(pp.179-180)、ステープルドン『スターメイカー』(p.206)、H・G・ウェルズの『素晴らしき来訪The Wonderful Visit)』(1895)(p.222)、グレッグ・ベアの『永劫』(pp.361-363)、ラリイ・ニーヴン「時は分かれて果てもなく」(『無常の月』所収、pp.416-418)などが引きあいに出されていました。

 しかし何より、
「伝え聞くところによれば、彼らの定常宇宙論は、1945年に公開されたマイケル・レッドグレーヴ主演のホラー映画『夢の中の恐怖』にヒントを得たものらしい」(p.78)
と記されていたことが、ハード・ロック・バンドのブラック・サバスという名が、マリオ・バーヴァ監督の『ブラック・サバス 恐怖!三つの顔』(1963)の英題に由来するというエピソードともども、怪奇映画ファンには感慨深いものがあることでしょう。

 また後に〈ワーム・ホール〉と呼ばれる〈アインシュタイン-ローゼン橋〉について、名を挙げるだけ以上の説明がなされていたのも嬉しいところです;pp.144-146。

 量子論の多世界解釈おける〈多世界〉の所在に関して、
「この宇宙でわれわれは、物理的な現実に対応する周波数を『受信』している。ところが、実は、同じ部屋のなかでわれわれと共存して進行している現実が無数にある。ただし、われわれにはそんな現実が『受信』できない」(p.207)。

 〈ホログラフィック宇宙〉に関し、
「マルダセナは、この五次元宇宙が、その『境界面』にあたる四次元宇宙と双対性をもつことを明らかにした。奇妙な話だが、この五次元宇宙にすむ生物は、対応する四次元宇宙にすむ生物と数学的に等価となる。両者を見分ける手だてはないのである」(p.279)。

 〈ベビーユニバース〉に関し、
「しかし、ベビーユニバースが形成され始めるところは見えない。それはわれわれの宇宙のなかでなく、特異点の『向こう側』で膨張するからだ」(p.388)。

 シェイクスピア『お気に召すまま』の「この世界はすべてこれ一つの舞台」(小田島雄志訳、p.33)を受けて、
「マルチバースの場合、舞台は平行に層をなし、あいだを落とし戸や秘密のトンネルがつないでいる」(p.410)
なんていう素敵なくだりもありました。

 →こちらにも挙げておきます(「世界の複数性など」の頁
 
 同じ著者による→そちらを参照:上掲の『超空間』、1994

ジョン・D・バロウ、松浦俊輔訳、『無限の話』、青土社、2006
原著は John D. Barrow, The Infinite Book, 2005
空ではない騒ぎ/ほとんど無限、現実に無限、虚構の無限、事実の無限/ホテル無限大にようこそ/無限大は大きな数ではない/ゲオルク・カントールの狂気/無限には3通りある/宇宙は無限か/無限反復の逆説/果てのない世界/無限マシンを作る/永遠に生きる、など、
382ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙が始まるとき』、1996


デヴィッド・ダーリング、林大訳、『テレポーテーション 瞬間移動の夢』、光文社、2006
原著は David Darling, Teleportation. The Impossible Leap, 2005
プロローグ - 移動から転送へ/序 ビミング・アップ小史 - 事実か、神話か、それともSFか/光とはいったい何なのか - テレポーテーションの端緒を開く/物質世界の中の幽霊 - 量子の奇妙な振る舞い/謎のリンク - 宇宙全体が量子でつながっている/データ宇宙 - 物質世界も情報もデジタル処理できる/秘密通信 - 量子暗号は解読できない/モントリオールの奇蹟 - 現実化したテレポーテーション/小さな前進と量子の飛躍 - 熾烈なテレポーテーション競争/限界なきコンピュータ - 量子コンピュータの時代へ/原子、分子、微生物……-人類の飛躍は可能か/遠い未来の遠い世界-人間存在とは何か/エピローグ - 時間も距離も問わない生活など、
296ページ。


レオナルド・サスキンド、林田陽子訳、『宇宙のランドスケープ 宇宙の謎にひも理論が答えを出す』、日経BP社、2006
原著は Leonard Susskind, The Cosmic Landscape. String Theory and the Illusion of Intelligent Design, 2006
序論/ファインマンが描いた世界/物理学の難問中の難問/ランドスケープを転がる宇宙/唯一性とエレガンスの神話/晴天の霹靂/ありそうもない偶然を解き明かす/ゴムひもで動く世界/ひも理論の復活/理論の力だけでどこまで行けるか/ループ・ゴールドバーグ機械の背後に/泡を吹き出す宇宙/ブラックホール戦争/要約/エピローグ//
ランドスケープとメガバースの区別について/用語についてのメモなど、
552ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『ブラックホール戦争』、2009


竹内薫、『図解入門 よくわかる最新時間論の基本と仕組み 時間・空間・次元の物理学』、秀和システム、2006
プロローグ シュレ猫探偵団登場/時間の基礎/時間の哲学・生理学/時間の物理学/時間と空間のはて - 時間論の最前線/エピローグ シュレ猫探偵団撤収など、
188ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ペンローズのねじれた4次元』、1999


橋本幸士、『Dブレーン 超弦理論の高次元物体が描く世界像』(UT Physics 2)、東京大学出版会、2006
素粒子、弦、そしてDブレーンへ//
ソリトンと素粒子物理学;ソリトンとは?/場の理論の対称性とソリトン/ソリトンの重要性:その観測と双対性//
ソリトンの次元、弦理論の次元;ソリトンの次元とブレーンワールド/弦理論におけるこうじげん時空の現れとコンパクト化//
Dブレーン;弦理論のソリトンはブラックホール/Dブレーンの登場//
Dブレーンの力学;運動・合体するDブレーン/Dブレーン上の非可換ゲージ理論とソリトン/Dブレーンの消滅・生成とタキオン凝縮//
ブレーンワールド:応用Ⅰ//高次元インフレーション宇宙論:応用Ⅱ//ブラックホールのエントロピー:応用Ⅲ//ホログラフィーとQCD:応用Ⅳ//究極理論の記述に向けて、など、
218ページ。

 理数系の回路を頭に組みこみ損ねた当方にはたぶんに荷の重い本でしたが、ともあれ次のくだり;

「この議論で重要なことは、時空の次元は理論を定めるときの本質的な要素ではなく、出現する概念である、ということである。われわれは物理の理論を考えるとき、通常まず時空の次元を決めてから議論をはじめる。しかし弦理論の場合、どのような状況を考えているかで、その時空次元自体が変わってしまうのである。…(中略)‥このように、時空次元とは規定する概念ではなく、『出現する概念』なのである」(p.189)。
 

二間瀬敏史、『タイムマシン論 最先端物理学によるタイムトラベル論』、秀和システム、2006
プロローグ タイムマシンにお願い/タイムマシンをつくる方法/タイムマシンのパラドックス/タイムトラベルの基礎知識/ワームホール以外のタイムマシン/時間はなぜ流れるのか?など、
192ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『時間の逆流する世界』、1987

内井惣七、『空間の謎・時間の謎 宇宙の始まりに迫る物理学と哲学』(中公新書 1829)、中央公論新社、2006
空間とは? 時間とは?//
ライプニッツとニュートンは何を争ったか;論争の文脈/科学の2つのヴィジョン/時空の関係説/真空および原子と不可識別者同一の原理//
ニュートンのバケツから相対性理論まで;ニュートンからマッハまで/2つの相対性理論で論争を裁く//
マッハ流力学の行方;関係説力学 - 第1の路線/関係説力学 - 第2の路線/相対性理論への拡張//
宇宙と量子;静的宇宙から動的宇宙へ/ビッグバンと素粒子/インフレーションと宇宙の創成など、
270ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「バロックなど(17世紀)」の頁の「viii. ライプニッツなど」/『ライプニッツの情報物理学』、2016

橋元淳一郎、『時間はどこで生まれるのか』(集英社新書 0373G)、集英社、2006
なぜ今、時間論なのか/相対論的時間と時間性/量子論における時間の非実在性/時間を逆行する反粒子/マクロの世界を支配するエントロピーの法則/主観的時間の創造/時間の創造は宇宙の創造である//
付録;ミンコフスキー空間/波束の収束/多次元並行宇宙/タイムマシン/宇宙のエントロピーなど、
192ページ。


リサ・ランドール、向山信治監訳、塩原通緒訳、『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』、NHK出版、2007
原著は Lisa Randall, Warped Passages. Unraveling the Mysteries of the Universe's Hidden Dimensions, 2005
空間の次元と思考の広がり;序章/入り口のパッセージ - 次元の神秘的なベールをはぐ/秘密のパッセージ - 巻き上げられた余剰次元/閉鎖的なパッセージ - ブレーン、ブレーンワールド、バルク/理論物理学へのアプローチ//
20世紀初頭の進展;相対性理論 - アインシュタインが発展させた重力理論/量子力学 - 不確かさの問題//
素粒子物理学;素粒子物理学の標準モデル - これまでにわかっている物質の最も基本的な構造/幕間実験 - 標準モデルの正しさを検証する/対称性 - なくてはならない調整原理/素粒子の質量の起源 - 自発的対称性の破れとヒッグス機構/スケーリングと大統一 - 異なる距離とエネルギーでの相互作用を関連づける/階層性問題 - 唯一の有効なトリクルダウン理論/超対称性 - 標準モデルを超えた飛躍//
ひも理論とブレーン;急速な(だが、あまり速すぎてもいけない)ひものパッセージ/脇役のパッセージ - ブレーンの発展/にぎやかなパッセージ - ブレーンワールド//
余剰次元宇宙の提案;ばらばらなパッセージ - マルチバースと隔離/おしゃべりなパッセージ - 余剰次元の指紋/たっぷりとしたパッセージ - 大きな余剰次元/ワープしたパッセージ - 階層性問題に対する解答/ワープ宇宙の注釈つきアリス/遠大なパッセージ - 無限の余剰次元/収縮して膨張するパッセージ//
結びの考察;余剰次元 - あなたはそこにいるのか、いないのか?/結論 - 最後に、など、
656ページ。


リサ・ランドール+若田光一、『リサ・ランドール 異次元は存在する(NHK 未来への提言)』、NHK出版、2007
わたしたちは異次元世界に囲まれている/万物の成り立ちを解き明かしたい/5次元世界と宇宙の謎//
インタビューを終えて 宇宙には見えないものが確かに存在する(若田光一)/解説 現代物理学の謎とリサ・ランドール(向山信治)など、
96ページ。


ジェニー・ランドルズ、伊藤文英訳、『タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち』、日経BP社、2007
原著は Jenny Randles, Breaking the Time Barrier. The Race to Build the First Time Machine, 2005
まえがき 時間が止まった日/プロローグ 新たなる競争/時間の夜明け/最初のタイムトラベラー/相対的に解釈すれば/時空のゆがみ/隠れた次元/時空の架け橋/未来へのタイムトラベル/過去へのタイムトラベル/ブラックホール/未来からのメッセージ/時間の鏡/もつれた時間/ワームホール/時間順序保護仮説/ひもつきのタイムマシン/重力をあざむく/多数の宇宙、多数の時間軸/量子の泡/超ひも理論のタイムマシン/光よりも速く/未来からの握手/時間のらせん/「スコッティ、転送してくれ」/ロシアのタイムトラベラー/エピローグ 科学の最前線の向こうには/付録 タイムトラベルの証拠はあるか?など、
256ページ。


アレックス・ビレンケン、林田陽子訳、『多世界宇宙の探検 ほかの宇宙を探し求めて』、日経BP社、2007
原著は Alex Vilenkin, Many Worlds in One. The Search for Other Universes, 2006
プロローグ//
宇宙創世記;ビッグバンはどのようにして起こったか/反重力の栄光と凋落/宇宙創造をめぐる問題/現代版宇宙創世の物語/インフレーション宇宙/捨て去るには美しすぎる//
永久インフレーション;反重力の石碑/ランナウェイ・インフレーション/空が語った/無限の島/伝説のキングは生きている!//
「平凡の原理」;宇宙定数の問題/人間原理の論争/原理にまでのぼりつめた「平凡であること」/万物の理論//
始まりに先立つ;宇宙には始まりがあったのか/無からの宇宙の創造/世界の終わり/方程式の中に宿る火//
エピローグなど、
400ページ。
 第1部第6章「捨て去るには美しすぎる」中に、
「インフレーション膨張する風船は、狭い『ワームホール』によって外部の宇宙とつながっています。ワームホールは、外からはブラックホールのように見えます。外部の領域にいる観測者は、このブラックホールの内部に巨大な膨張する宇宙があること確認することも、反証することもできません。同様に、インフレーション膨張する泡宇宙の中にいる観測者は、その泡宇宙のほんの小さな部分だけしか見えないので、彼らの宇宙には境界があることや、その境界の向こうには別の大きな宇宙があることに、決して気づかないでしょう」(p.119)。

 また第2部第8章「ランナウェイ・インフレーション」中での、本書が説く〈永久インフレーション〉とアンドレイ・リンデが提唱した〈カオティック・インフレーション〉の違いについては、p.145 参照。

 第2部第10章「無限の島」のエピグラフには、お馴染み「胡桃の殻に閉じこめられても、無限の空間の王だと思うことができる」という『ハムレット』のくだりが挙げられていました(p.156)。なので→こちらにも挙げておきます(「バロックなど(17世紀)」の頁の「おまけ」)。

 同章中には
「グローバルな視点では、新しいビッグ・バン群が島宇宙の境界で進行しているので島宇宙は時間とともに成長し、十分に長く待てば島宇宙はどこまでも大きくなります。しかし、ローカルな視点では、ビッグ・バン群は同時に起こり、島宇宙は最初から無限に大きいのです。…(中略)…一つの視点からは時間的な無限に見えるものが、もう一方の視点からは空間的な無限に見えるのです」(p.167)
と説かれていました。この説明は、野村泰紀、『マルチバース宇宙論入門』(2017)でも見られたものです。

 第2部第11章「伝説のキングは生きている!」の冒頭に、著者が友人で共同研究者のジョーム・ギャリガの実家を訪ねたエピソードが綴られているのですが、
「この農家は、塔のある小さな要塞のように見える印象的なカタロニアの『マシア』のつくりになっていました」(p.174)
とのことで、 p.175 には図11.2としてその写真も掲載されています。続いてサルバドール・ダリの故郷カダケスに行ったのですが(pp.175-177)、この章の主たる話題である
「インフレーション理論では、内部的な視点から見ると島宇宙は無限に大きいので、それぞれの島宇宙はO領域を無限にたくさん含んでいます。また量子力学により、どんなO領域もそこで展開されうる可能な歴史の数は有限個です。これらふたつの命題を組み合わせると、いかなる歴史も無限回繰り返されるはずだという結論が避けようもなく出てきます」(pp.187-188)
ことを解説した後で、
「世界のこのようなシュールな見方がサルバドール・ダリの精神が満ちあふれた町で始まったというのは、ふさわしいことだったかもしれません」(p.190)
と記していたのが面白いところでした。ダリについては→そちらでも触れました:「オペラ座の裏から(仮)」の頁内

 なお量子論の多世界解釈との区別については p.196 参照。また本章のエピグラフには永劫回帰を説くニーチェの一文が引かれています(p.172、本文中には言及なし)。下掲のマックス・テグマーク、谷本真幸訳、『数学的な宇宙』(2016)にも相類した主張が見られ、ジョン・D・バロウ、林一・林大訳、『宇宙論大全』(2013)では〈複製のパラドックス〉として取りあげられていましたが、あわせて→あちら(「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁、「xi. 個々の著述家など Ⅴ」中の「ニーチェ」の項)にも挙げておきましょう。下掲のケイティ・マック『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)で紹介される〈ポアンカレの回帰定理〉も参照。

 第4部第17章「無からの宇宙の創造」で、章題にある問題についての先例として、エドワード・トライオンの
「宇宙は量子ゆらぎの結果として真空から生まれた」(p.310)
というアイデアが挙げられています。〈真空〉とビレンケンのいう〈無〉との違いについては、pp.313-314 参照。またこの時点での多世界解釈の採用について pp.316-3118。

 ビレンケン(ビレンキン)へのインタヴュー→ここを参照(『Newton』、vol.24 no.2、2004.2
 

吉田伸夫、『宇宙に果てはあるか』(新潮選書)、新潮社、2007
われわれはどこにいるのか 大銀河説と島宇宙説/宇宙に果てはあるか 相対論的宇宙モデル/宇宙は変化しているのか 動的宇宙論/宇宙はどれほど大きいか ハッブルの法則/宇宙はどのように始まったか ビッグバン宇宙論/ビッグバンは本当にあったのか 背景放射の発見/星はなぜ輝くのか 恒星進化と元素の起源/ブラックホールとは何か 重力崩壊の理論/世界はいかに形づくられたか 太陽系と銀河系の形成/われわれはひとりぼっちか 地球外文明の探索/ビッグバンの前に何があったか インフレーション宇宙論/われわれはどこへ向かっているのか 宇宙のエントロピーなど、
224ページ。


 同じ著者による→こちらも参照:下掲の『宇宙に「終わり」はあるのか』、2017

セス・ロイド、水谷淳訳、『宇宙をプログラムする宇宙 いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』、早川書房、2007
原著は Seth Lloyd, Programming the Universe. A Quantum Computer Scientist Takes on the Cosmos, 2006
プロローグ リンゴと宇宙//
全体像;序論/計算/計算する宇宙//
より詳しく;情報と物理系/量子力学/働く原子/
宇宙という(ユニヴァーサル)コンピューター/単純な複雑性//
個人的な覚え書き-情報という慰めなど、
282ページ。

 第5章「量子力学」の冒頭で語られる挿話によると、ボルヘスの「八岐の園」と量子論の多世界解釈との関係について、著者はボルヘス自身に質問したことがあるそうです(pp.128-130)。もっとも後に確認したように、「『八岐の園』が発表されたのは、ジョン・ホイーラーの学生だったヒュー・エヴェレットが量子力学の多世界解釈を世に出すより何年も前の、1941年だった」(p.130)。著者自身の多世界解釈に対する見解については、pp.159-160 および pp.253-255 参照。

 なお第8章「単純な複雑性」中の p.222 ではボルヘスの「バベルの図書館」が挙げられています。この前後では第3章「計算する宇宙」に続いて、
「20世紀初めにフランス人数学者エミール・ボレル…(中略)‥100万匹のサル(〝タイプライターザル〟)は、1日10時間タイプライターを叩いているさまを思い浮かべた。そして、1年のうちにサルが紡ぎ出す文章には、世界最大の図書館に所蔵されているすべての文章が含まれることになるのではないかと指摘した」(p.78)
という「有名なシナリオ」(同上)が取り扱われていました。

 第7章中ではアシモフの1956年の短篇」「最後の質問」が引きあいに出されていました(pp.193-194)。後掲の ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック、水谷淳訳、『サイクリック宇宙論』(2010)もこれに続くことでしょう。

 しかし何といっても、物理学の啓蒙書で目にするとは露ほども思わなかったのが、著者の指導教官であり共同研究者、そして友人でもあったハインツ・パージェルにからんで、
「ハインツは奥さんのエレーヌも紹介してくれたが、彼女の書いた『グノーシス派のゴスペル』じゃ、宗教の持つ社会的側面に関する私の考え方を180度変えた」(p.233)
 というくだりでした。これは

エレーヌ・ペイゲルス、荒井献・湯本和子訳、『ナグ・ハマディ写本』、1982

 のことにほかなりますまい。なおその後著者自身立ち会ったハインツ・パージェルの悲劇的な事故について、pp.265-268。
 

『現代思想』、vol.35-16、2007.12、pp.53-229:「特集 量子力学の最前線 - 情報・脳・宇宙」
導入;量子力学の身分 人類の特殊性を炙り出しているのか?(佐藤文隆)//
討議;量子宇宙の最前線(竹内薫+横山順一)//
情報;量子情報技術と科学基礎論(小澤正直)/量子コンピューター 並行宇宙論から生まれた未来の計算機(西野哲朗)//
脳;「ありふれた非局所性」の起源を求めて(茂木健一郎)/インタヴュー 物質の時計合わせ(松野孝一郎、聞き手:港千尋)//
宇宙;量子重力と哲学(内井惣七)//
生命;なぜ余計なことを考えるのか 量子もつれ・セレンディピティー・生命の時間(郡司ペギオ幸夫+塩谷賢)//
哲学;幾何学的存在論と物理的実在性 非可換幾何学の概念構成と場の量子論への応用の認識論的分析(原田雅樹)/量子力学への統計力学的アプローチ(白井仁人)/論理のなかの量子(渡部鉄平)


コリン・ブルース、和田純夫訳、『量子力学の解釈問題 実験が示唆する「多世界」の実在』(ブルーバックス B1600)、講談社、2008
原著は Colin Bruce, Schrödinger's Rabbits. The Many Worlds of Quantum, 2004
不思議な世界/従来の描像に固執すると/推論による収縮/拡大されたホラー物語/先人の証言/ヒルベルト空間に移動せよ/望まれる局所性/多世界への導入/多世界を利用する 1 - 信じがたい観測/多世界を利用する 2 - 量子コンピュータ/多世界解釈の推進者たち/多世界の恐怖/古典戦士 - ロジャー・ペンローズ/新時代の戦士 - アントン・ツァイリンガー/多世界解釈の証明と改良など、
326ページ。

 第6章「ヒルベルト空間に移動せよ」で〈ヒルベルト空間〉について、

「その中心的なアイデアは、システムがいかに大きくても、十分多くの次元をもつ空間ならば、その中に1つの点でシステム全体の状態を記述できる、ということである」(p.121)

 と書き起こし、

「このようなヒルベルト空間は通常、完全に抽象的で、我々が通常認識している3次元の世界からはかけ離れている」(p.129)、

 〈シュレーディンガーの猫〉をスペース・カプセルの中の宇宙飛行士に置き換えたたとえ話で、

「理論上は、このスペース・カプセルの中の状態は、宇宙飛行士のある特定の決まった姿ではなく、ヒルベルト空間の点、すなわち彼女のさまざまな姿が共存した重ね合わせ状態である」(p.130)、

 同様に

「ヒルベルト空間で表されている(複数の状態の重ね合わせ)ということ)」(p.133)、

 また

「すべての場所での波の正確な値を記述するには、確立波は1つの粒子に対しても無限次元のヒルベルト空間を必要とする」(p.139)

 のだが、

「しかし、ヒルベルト空間の次元数が無限ではなく、単に、気の遠くなるほど膨大な有限量(古典的宇宙を記述するのに必要な10の81乗よりはるかに大きいが)である可能性がある」(同上)、
「ヒルベルト空間はデコヒーレンスの計算のような数学をするにはいい場所だが、3次元の世界で何が起きているか、明確で直観的な描像は提供しない」(p.143)。

 第8章「多世界への導入」で、

「エベレットは単純だが示唆的な事例を用いて、ヒルベルト空間における確立波の発展は自然に、さまざまなバージョンの結果を生み出し、発展する波は、各バージョンのその後の歴史を刻みつづけることを示すことができた」(p.179)、

 またブライス・ド・ウィットについて、

「『多世界』という用語を造り出し、存在する各世界を、確率ゼロのの存在しない世界によって完全に分離するメカニズムを追求したのは彼である」(同上)。

 一方

「エベレットが自分の理論を最初に展開したとき、世界の分岐には言及しなかった。むしろ彼の理論は、多くの異なるバージョンが同時進行する単一の宇宙を記述する」(p.180)、

「しかし前述のド・ウィットによって、実際に瞬間的に分岐する宇宙という誤ったイメージが多世界解釈につきまとうことになった」(p.182)。

 同章で

「科学の歴史においては、世界の数の節約よりも前提の数の節約が受けいれられてきたという見事な先例が多数ある」(同上)

 と述べられていたのは、量子論の多世界解釈は別にしても、なるほどと思わせられます。

 第11章「多世界解釈の推進者たち」の中で、

「映画のフィルムがある意味で多量の静止写真の集合であるように(1秒25枚の割合でスクリーンに映されると、映像は滑らかに動いているように錯覚する)、ヒルベルト空間の各点を、歴史に対する線の中の点というよりも、スナップショットとしての点と見なす方が、ある意味でより正確である、というのがバーバーの考察である」(p.230)

 というくだりがありました。映画のコマのたとえについて、→こちらも参照ください(「仏教」の頁中で〈刹那滅〉に関して)。

 p.243 で「哲学者デイビッド・ルイス」が引きあいに出されたり、p.297 で「哲学者よく取り上げる仮想上の図書館」の話が持ちだされたりしつつ、最後の第15章「多世界解釈の証明と改良」では、

「変数が厳密に局所的に作用するという、空間3次元、時間1次元の簡単なマルチバースを考えてみよう。…(中略)…その宇宙に存在するものはすべて、幽霊のようなものである。一般には互いにその存在を感知しない。しかしグループができていて、各グループ内に限り互いに顕著な相互作用をする」(p.299)、

「空間の各領域が、複数の独立したパターンを収容することができることである」(p.300)

 と述べられていました。

 →そちら(「世界の複数性など」の頁)や、またあちら(「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「ホワイトヘッド」の項内)でも挙げました
 

ローレンス・M・クラウス、斉藤隆央訳、『超ひも理論を疑う 「見えない次元」はどこまで物理学か?』、早川書房、2008
原著は Lawrence M. Krauss, Hiding in the Mirror. The Quest for Alternate Realities, from Plato to String Theory by way of Alice in Wonderland, Einstein, and the Twilight Zone, 2005
追憶-次元に魅せられて/空間に住む特権?/カエルの脚から「()」に至る/相対論への道/第四の次元/宇宙をかき乱す/宇宙を測る/『平面国』からピカソまで/最初の隠れた世界-余剰次元の物理学/回り道/どんどん変に……/混沌のなかから……/異次元からのエイリアン/もつれた結び目/超世界の超時間/Mはマザ-(母)のM/DはブレーンワールドのD/空虚な理論?/エピローグ 真理と美など、
336ページ。
 いわゆる〈余剰次元〉の歴史についての本。第7章「『平面国』からピカソまで」では章題どおりアボットやキュビスムとともに、H.G.ウェルズやマルセル・デュシャンなどなどが言及されます。第12章「異次元からのエイリアン」でもリチャード・マシスンやハインラインが取りあげられますが、そんな中で、

「私の知り合いがひとりならず、ジャクソン・ポロックのドリップ・ペインティングによる抽象画は、真空中の量子ゆらぎを見事に表していると主張しているのだ」(p.180)

 と述べられているのが印象に残りました。謝辞の中ではリンダ・ダルリンプル・ヘンダーソンの『現代美術における四次元と非ユークリッド幾何学』が挙げられていました(p.300)。ヘンダーソンの本について→こちら(「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「xvi. 20世紀神秘学の歴史」を参照。

 同じクラウスによる→そちらを参照:上掲の『SF宇宙科学講座』、1998。
 そこでも触れられていた〈環境科学〉の語は本書の p.279 にも挙がっていました。
 

ポール・デイヴィス、吉田三知世訳、『幸運な宇宙』、日経BP社、2008
原著は Paul Davies, The Goldilocks Enigma. Why is the Universe Just Right for Life?, 2006
いくつかの重大な疑問/宇宙についてわかっていること/宇宙はどのように始まったか/宇宙は何でできているのか、そして、宇宙全体が一体に保たれているのはなぜか/完全な統一理論の魅力/宇宙のダークフォース/生物に適した宇宙/多宇宙(マルチバース)は宇宙の謎を解決するのか?/インテリジェント・デザインとあまりインテリジェントでないデザイン/どうして存在するのか?/あとがき 究極の説明など、
512ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ブラックホールと宇宙の崩壊』、1983


ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か』、NHK出版、2008
原著は Michio Kaku, Physics of the Impossible. A Scientific Exploration into the World of Phasers, Force Fields, Teleportation, and Time Travel, 2008
はじめに//
不可能レベルⅠ;フォース・フィールド/フェイザーとデス・スター/テレポーテーション/テレパシー/念力/ロボット/地球外生命とUFO/スターシップ/反物質と反宇宙//
不可能レベルⅡ;光より速く/タイムトラベル/並行宇宙//
不可能レベルⅢ;永久機関/予知能力//
終章 「不可能」の未来など、
464ページ。

 同じ著者による→こちらを参:上掲の『超空間』、1994


横山順一×竹内薫、『宇宙の向こう側 量子、五次元、ワープト・スロート』、青土社、2008
宇宙について、どれくらい知っていますか(竹内薫)//
黎明、始まりのまえに/量子、この不思議な世界/次元、われわれはどこにいるのか/ひも、あまりにも珍妙な/宇宙、それは//
賽の目宇宙千六本(横山順一)など、
202ページ。


 横山順一による→こちらを参照:上掲の『宇宙創生をさぐる』、1994
 竹内薫による→そちらを参照:上掲の『ペンローズのねじれた4次元』、1999


佐藤勝彦監修、『タイムマシンがみるみるわかる本(愛蔵版)』、PHP研究所、2008
2006年刊本の再構成版
意外にカンタン!未来へのタイムトラベル/過去へのタイムトラベルとタイムパラドックス/時間の流れる方向と時間の始まりについての謎/人間にとっての時間の意味など、
224ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991


祖父江義明、『銀河物理学入門 銀河の形成と宇宙進化の謎を解く』(ブルーバックス B1481)、講談社、2008
プロローグ - すべては銀河の測定からはじまる/銀河を知るということ/銀河の骨格/天の川銀河の立体地図/多様な銀河と腕の構造/活動する銀河/銀河規模の星形成/銀河から見た宇宙/宇宙の果てを見た20世紀の天文学/エピローグ - 銀河文明に向けての21世紀など、
200ページ。


福江純監修、『Newton 別冊 ブラックホール ホワイトホール 正反対の顔をもつ「時空の2つの穴」』(サイエンステキストシリーズ)、ニュートンプレス、2008.6.15
イントロダクション/ブラックホール入門/巨大ブラックホール/もっと知りたいブラックホール/ホワイトホールとワームホール/ブラックホールの最先端研究と利用法/エピローグなど、
160ページ。

 福江純による→こちらを参照:『図解雑学 タイムマシン』、2003

サイモン・シン、青木薫訳、『宇宙創成』(上下)(新潮文庫 シ37-4/5)、新潮社、2009
原著は Simon Singh, Big Bang, vol.1-2, 2004
 『ビッグバン宇宙論』(2006)の改題文庫化
上巻;はじめに神は……/宇宙の理論/大論争など、
388ページ。

下巻;宇宙論の一匹狼/パラダイム・シフト/エピローグ//
  付録 科学とは何か?-
What Is Science? など、
376ページ。


ブライアン・グリーン、青木薫訳、『宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体』(上下)、草思社、2009
原著は Brian Greene, The Fabric of the Cosmos. Space, Time, and the Texture of Reality, 2004
上 空間とは何か;宇宙の実像を求める旅路/バケツを使って宇宙を探る/相対と絶対/非局所性と宇宙//
  時間とは何か;時間は流れない?/時間の矢という問題/時間と量子//
  時空と宇宙論;対称性と時空など、
448ページ。

下 時空と宇宙論(承前);ビッグバン直後/ビッグバンとインフレーション/夜空に残るインフレーションの痕跡//
  統一とひも理論;宇宙は「ひも」でできているか/宇宙は「ブレーン」のなかにあるか//
  空間と時間への新たな挑戦;実験と観測による挑戦/テレポートとタイムマシン/時空か本当に宇宙の基本構造か、など、
448ページ。
 インフレーション宇宙論を解説する中で、

「インフレーション期の激しい膨張は、宇宙創造の出来事そのものではなく、あらかじめ存在していた宇宙のなかで起こったひとつの出来事だと考えるのが妥当である」(下巻、p.116)

 と述べていたのが印象に残っています。

 多岐にわたる話題を扱う本書ですが、この他、第2部第5章「時間は流れない?」などで、→こちら(「仏教」の頁の「ii. アビダルマの自然学、刹那滅論」の項)でも触れたように映画のコマのたとえを用いつつ、相対性理論を古典物理学においては、

「時間は流れて行く川というよりもむしろ、永遠に凍りついたまま今ある場所に存在し続ける、大きな氷の塊に似ている」(上巻、p.239)

 とされていた点、また最終章にあたる第5部第16章で、

「空間と時間の性質も…(中略)…、まだ解明されていない、より基本的な構成要素の集団的な振る舞いから立ち現れているのかもしれないのである」(下巻、p.350)

 という主題を扱う際、

「空間と時間は連続的ではないというこの考え方」(下巻、pp.354-355)

 ことに触れていた点などなども気に留まります。

 なお上巻の第3部第8章でとりあげられる〈宇宙時間〉の概念にからんで→そちらで触れました:「近代など Ⅱ」の頁の「vii. ゲーデルなど」/パレ・ユアグロー、林一訳、『時間のない宇宙』、2006

 なお本書は『スティーヴ・ハウ自伝』で、「長年読んできた中で面白いと思ったまなり毛色の異なる書物」の一つとして挙げられていました(p.408)→あちらを参照:「中央アジア、東アジア、東南アジア、オセアニアなど」の頁の「おまけ」。
 
 同じ著者による→ここを参照:上掲の『エレガントな宇宙』、2001

レオナルド・サスキンド、林田陽子訳、『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』、日経BP社、2009
原著は Leonard Susskind, The Black Hole War. My Battle with Stephen Hawking to Make the World Safe for Quantum Mechanics 2008
たれこめる暗雲;最初の一撃/暗黒星/古い時代の幾何学ではなく/「アインシュタイン、神に何をすべきか命じてはならない」/プランク、より良い尺度を思いつく/ブロードウェイのバーにて/エネルギーとエントロピー/ホイラーの教え子たち-ブラックホールの中にどれだけの情報を詰め込めるか/黒い光//
奇襲攻撃;スティーヴンはビットを見失い、見つけられなくなった/オランダ人の抵抗/それが何の役に立つ?/手詰まり/アスペンでの小競り合い//
反撃;サンタバーバラの戦い/待て! 配線を逆にしろ/ケンブリッジのエイハブ/ホログラムとしての世界//
戦争の終わり;大量推論兵器/アリスの飛行機、または目に見える最後のプロペラ/ブラックホールを数える/南アメリカの勝利/核物理学ですって? ご冗談でしょう!/謙虚さ//
エピローグなど、
560ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙のランドスケープ』、2006


佐藤文隆、『アインシュタインの反乱と量子コンピューター』(学術選書 041)、京都大学出版会、2009
「起こる」と「知る」の差 - EPRパラドックス/アインシュタインと量子力学 - 創業者の反逆?/量子力学解釈問題小史 - 「世界」と「歴史」の作り方/力学理論の構造 - 「起こる」か?「ある」か?/量子力学理論の切り分け - のない量子力学/量子力学とマッハの残照/「非決定論」のウィーン/湯川秀樹にとっての量子力学/確率と不安 - ランダムか情報不足か/「科学」という制度をマッハから問う、など、
336ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『相対論的宇宙論』、1974


白水徹也、『ブレーンワールド 宇宙の謎に挑む』(DOJIN選書 26)、化学同人、2009
宇宙はどのように誕生したか - 膨張する宇宙と力の統一;膨張する宇宙/インフレーション宇宙論/宇宙を構成する物質/宇宙の果てはどうなっているか/膜宇宙論ダイジェスト//
余剰次元はなぜ必要か - アインシュタインの夢から究極の理論へ;時空の理論 相対性理論/アインシュタイン方程式が予言したブラックホール/余分な空間/ひもから膜へ//
究極の理論が描く最新の時空像 - ブレーンワールドの登場;エネルギー砂漠/膜世界の登場/地上でブラックホールをつくる?/湾曲する余剰次元//
宇宙の新世界 - ブレーン宇宙論へ;独自の発展を遂げた日本の相対論研究/膨張する膜宇宙/膜宇宙とブラックホール/多様な余剰次元、多様な宇宙//
身近な余剰次元 - 究極理論はすぐそこに;マルダセナの予想/マルダセナ予想の応用と一般相対性理論の役割/予想できない今後の展開など、
184ページ。

 「ここまでくると、いったい現実とはなにかということが気になる読者も多いであろう。単なる数学的な等価性を物語っているのか、本当にわれわれの世界はこのような高次元時空や膜やひもによって記述されているのか」(pp.168-169)
 というくだりが印象に残ったりしました。
 

福江純、『カラー図解でわかる ブラックホール宇宙 なんでも底なしに吸い込むというのは本当か? 死んだ天体というのは事実か?』(サイエンス・アイ新書 SIS-125)、ソフトバンク クリエイティブ株式会社、2009
常識篇:ブラックホールの非常識/時空篇:光速現象とスターボウ/重力篇:光線の曲がりとブラックホール時空/黒洞篇:ブラックホールとワームホール/宇宙篇:ブラックホールシャドーとブラックホールジェット/未来篇:ブラックホールエンジンなど、
240ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『図解雑学 タイムマシン』、2003


ロナルド・L・マレット、ブルース・ヘンダーソン、岡由美訳、竹内薫監修、『タイム・トラベラー タイム・マシンの方程式を発見した物理学者の記録』、祥伝社、2010
原著は Ronald L. Mallett with Bruce Henderson, Time Traveler, 2006
プロローグ/すべては父の死から始まった/秘密の使命/アインシュタインと私/父の足跡/開発中のプロジェクト/物理学者が誕生するまで/レーザー入門/研究生活の拠点をもとめて/私の膨張する宇宙/ブラックホールにのめりこんで/起死回生/甘美な科学技術/タイム・マシンを組み立てる/タイム・トラベル・パラドックスなど、
318ページ。


ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック、水谷淳訳、『サイクリック宇宙論 ビッグバン・モデルを超える究極の理論』、早川書房、2010
原著は Paul J. Steinhardt and Nick Turok, Endless Universe. Beyond the Big Bang - Rewriting Cosmic History, 2007
2001年/第2幕/1つの宇宙についての2つの物語/粒子から宇宙へ/インフレーションと2人の宇宙論学者の物語/ひもからエキピロシスへ/宇宙のサイクリックモデル/最後の質問/百聞は一見にしかず/インフレーション多宇宙かサイクリック宇宙か/バック・トゥー・ザ・フューチャーなど、
312ページ。

 インフレーション・モデルへの対案として著者たちが提唱するサイクリック・モデルは、ひも理論/M理論から展開したブレーン・ワールドを出発点として、二つのブレーン・ワールドの衝突がビッグ・クランチ/ビッグ・バンを引き起こし、これが周期的に反復されるというものです。その出発点について;

「しかしオヴルトが描いたブレーンは余剰次元の境界であるため、空間は二枚のブレーンのあいだにしか存在せず、隙間の外側には存在しない。この点を強調する為にオヴルトは、それらを『世の果てのブレーン』と呼んだ」(p.158)。

 「観測できる宇宙は一枚のブレーンの上に広がっていて、それを『ブレーンワールド』と呼ぶ。その隣には、おそらく10-30センチメートルというわずかな隙間を隔ててもう一枚の『隠れたブレーンワールド』がある」(p.159)

 と記されていました。〈世の果てのブレーン〉に関し、すぐ次に挙げるガブサー、吉田三知世訳、『聞かせて、弦理論 時空・ブレーン・世界の端』(2010)、pp.111-112 も参照。

 第8章「最後の質問」では振動宇宙論の歴史がたどられ、ヒンドゥー教の宇宙史、ヘラクレイトスとストア派、ポー『ユリイカ』、ニーチェなどに触れた後、相対性理論以後の展開とそれらに対し指摘された問題点が述べられます。

 また上掲のセス・ロイド、水谷淳訳、『宇宙をプログラムする宇宙』、2007に引き続き、この章の題は、最終節で引きあいに出されたアシモフの「1956年の有名な短篇」「最後の質問」に由来します(pp.214-215、p.217)。

 なおサイクリック・モデルでは、特異点とそれに由来する時間の始まりが避けられることは始めの方からくりかえし語られますが、第10章「インフレーション多宇宙かサイクリック宇宙か」では、多宇宙、人間原理、ランドスケープなどの概念についての批判が繰りひろげられます。

 ちなみに上掲の川合光、『はじめての〈超ひも理論)』(2005)の付録では、同じく超ひも理論から出発しつつ、別の形の〈サイクリック宇宙論〉が説かれていました。

 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ
 

スティーブン・S・ガブサー、吉田三知世訳、『聞かせて、弦理論 時空・ブレーン・世界の端』、岩波書店、2010
原著は Steven S. Gubser, The Little Book of String Theory, 2010
プロローグ/エネルギー/量子力学/重力とブラックホール/弦理論/ブレーン/弦の双対性/超対称性とLHC/重イオンと第5の次元/エピローグなど、
206ページ。

 「すなわちそこでは、空間と時間は絶対的な概念ではないのである。世界面にもとづく弦理論へのアプローチでは、時空とは、弦がどのように運動するかの記述の中で許されているラベルの一覧表に過ぎない」(p.79)

 とか、

「弦理論が最終的に世界に関係づけられるとき、その関係には余剰次元がそれ自体として含まれていなければならないかどうかは、わたしにはわからない」(p.128)

 とか、

「もっとも、結局のところわたしには、万物の理論としての弦理論が持つ6つの余剰次元も、ゲージ/弦双対性の第5次元以上に現実的なものになるとはどうも思えないのだが」(p.177)

 といったくだりが印象に残りました。

 他方、

「M理論にはもうひとつ別の種類のブレーンがあり、こちらはほんとうに驚異的である。このブレーンは時空の端なのだ。空間そのものが終わってしまう場所だ」(p.111)

 という時の、「時空の端」「空間の端」がどういった事態を表わすものなのか、残念ながらよくわかりませんでした(すぐ前に挙げたスタインハート、トゥロック、水谷淳訳、『サイクリック宇宙論』(2010)、p.158 も参照)。
 

佐藤勝彦、『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス B1697)、講談社、2010
インフレーション理論以前の宇宙像/インフレーション理論の誕生/観測が示したインフレーションの証拠と新たな謎/インフレーションが予測する宇宙の未来/インフレーションが予言するマルチバース/「人間原理」という考え方など、
192ページ。

 インフレーションに「でこぼこだらけの膨張を起こす可能性」(p.145)があるとすると、

「周囲よりも遅れてインフレーションを起こした領域は、先にインフレーションを起こして宇宙規模の大きさをもった周囲の領域から見ると、表面は急激に押し縮められているけれども、その領域自体は光速を超える速さで急激に膨張して見えるということが、相対性理論から導き出されたのです。…(中略)…
 実は、表面を急激に押し縮められている部分は、虫食い穴のような小さな空間になりながら、周囲の空間と、新たにインフレーションを起こした空間をつないでいる。そして、新たにインフレーションを起こした空間は急激に膨張して、やがて新しい宇宙になる、というものです」(p.146)

 と述べられていました。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991
 

フランク・クロース、大塚一夫訳、『なんにもない 無の物理学』、白揚社、2011
原著は Frank Close, The Void, 2007
空騒ぎ/原子はどれくらい空っぽか?/空間の正体/波はどこで起きるのか?/光に乗って旅をする/自由空間の代償/無限の海/謎のヒッグス場/新しい空虚をさがして、など、
232ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『自然の非対称性』、2002


ブライアン・グリーン、竹内薫監修、大田直子訳、『隠れていた宇宙』(上下)、早川書房、2011
原著は Brian Greene, The Hidden Reality. Parallel Universes and the Deep Laws of the Cosmos, 2011
 現実(リアリティ)の境界-並行宇宙について/終わりのないドッペルゲンガー - パッチワークキルト多宇宙/永遠と無限 - インフレーション多宇宙/自然法則の統一 - ひも理論への道/近所をうろつく宇宙 - ブレーン多宇宙とサイクリック多宇宙/古い定数についての新しい考え - ランドスケープ多宇宙など、
326ページ。

 科学と多宇宙 - 推論、説明、予測/量子測定の多世界 - 量子多宇宙/ブラックホールとホログラム - ホログラフィック多宇宙/宇宙とコンピューターと数学の実在性 - シミュレーション多宇宙と究極の多宇宙/探求の限界 - 多宇宙と未来など、
326ページ。


 →こちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁
 同じ著者による→そちらを参照:上掲の『エレガントな宇宙』、2001


森田邦久、『量子力学の哲学 非実在性・非局所性・粒子と波の二重性』(講談社現代新書 2122)、講談社、2011
量子力学は完全なのか - 量子力学のなにが不思議なのか 1/粒子でもあり波でもある? - 量子力学のなにが不思議なのか 2/不可思議な収縮の謎を解け/粒子も波もある/世界がたくさん/他にもいろいろな解釈がある/過去と未来を平等に考えてみる、など、
240ページ。


 第7章「過去と未来を平等に考えてみる」で扱われる〈逆向き因果〉(pp.195-202)、〈交流解釈〉(pp.202-210)、〈時間対称化された量子力学〉(pp.210-229)に関連して→こちらでも挙げました:「仏教」の頁の「ii. アビダルマの自然学、刹那滅論など」で挙げた護山真也「仏教認識論の射程 - 未来原因説と逆向き因果」(2020)

村田次郎、『「余剰次元」と逆2乗則の破れ 我々の世界は本当に3次元か?』(ブルーバックス B1716)、講談社、2011
宇宙の姿/重力の法則/空間次元と逆2乗則/力の法則の一般形/余剰次元の世界/余剰次元を探る/強い力と宇宙項問題など、
256ページ。

 「実験研究者自身である筆写が、重力という道具を使って真の宇宙の姿を探し求める実験について紹介することを目指している」(p.5)

 という本書、

「ただ、理論屋はいつだって実験精度の1桁下に新現象を予言する習性を持つことは、すでに気付いていたのだが」(p.182)

 との一節が気に留まったりしました。

 それはさておき、

「余剰次元を含んだ高次元空間」(p.147)

 という言い方に見てとれるように、タイトルにもある〈余剰次元〉と引用中の〈高次元空間〉は区別して用いられています。ADD模型(1998年、p.146)では超弦理論ともども、

「我々は高次元空間に浮かぶ『ブレーン』と呼ばれる三次元の空間の膜状の物体に閉じ込められていると考える」(p.151)

わけですが、この〈高次元空間〉について具体的にどんな風にとらえているのか、もっと説明してほしいと思ったりしたことでした。

 この他、重力/ゲージ対応に関し、

「我々の世界である三次元空間の世界は、じつは四次元空間の世界のホログラムになっているというのである」(p.213)

 と記されていたのも気になるところではありました。
 

村山斉、『宇宙は本当にひとつなのか 最新宇宙論入門』(ブルーバックス B1731)、講談社、2011
私たちの知っている宇宙/宇宙は暗黒物質に満ちている/宇宙の大規模構造/暗黒物質の正体を探る/宇宙の運命/多次元宇宙/異次元の存在/宇宙は本当にひとつなのか、など、
204ページ。

 第5章「宇宙の運命」中の末尾にある「超ひもが予測する宇宙の終わり」で、

「その一つが、泡宇宙です。宇宙の加速膨張がどんどん続いていくと、あるところで泡ができ始めます。泡の外は加速膨張をしている宇宙なのですが、泡の中には暗黒エネルギーは存在せず、加速膨張をしません。泡がたくさんできると、ある時点を境に、泡で宇宙が埋め尽くされ、暗黒エネルギーのない宇宙になります。そうすると、加速膨張も終わります。膨張を続けても加速せずにだんだんと減速していくようになると考えられています」(p.123)

 と、
 また第8章「宇宙は本当にひとつなのか」の冒頭で、

「多元宇宙というアイデアの一つの例としては、三次元空間がサンドイッチのように何層も存在するというものが考えられます。これは私たちが生活する三次元空間がいくつもあるのではないかということですね。しかし、この場合は、たくさんあるといっても、全体から見ればひとくくりの空間の中に収まります。ということは、一つの宇宙の中に、私たちが実際に見ることのできる空間と同じような三次元空間がいくつもあることにすぎないのです」(pp.176-177)

 と、
 同章の「質疑応答」の中で、

「時間は一次元の時は前と後ろがはっきりしているので、時間の向きが決められるのですが、二次元になると、前と後ろがわからなくなってしまいます。そうすると過去に戻ってしまうということが起きます」(p.194)

 等と述べられていたのが印象に残りました。
 

土居守・松原隆彦、『宇宙のダークエネルギー 「未知なる力」の謎を解く』(光文社新書 539)、光文社、2011
プロローグ - 宇宙の運命はダークエネルギーに握られている(松原)//
ダークエネルギーの謎と物理学(松原);膨張する宇宙/宇宙のタイムライン/小さすぎる真空のエネルギー/ダークエネルギーの正体をめぐる理論の混迷//
ダークエネルギーの謎と天体観測(土居);天体の観測/超新星を使ってダークエネルギーを測る/様々なダークエネルギー測定方法/ダークエネルギー観測の現状と展望//
エピローグ-さらなる未知の世界へ向かって(松原)など、
256ページ。

 松原隆彦による→こちらを参照:下掲の『宇宙に外側はあるか』、2012


アブラハム・パイス他、藤井昭彦訳、『ポール・ディラック 人と業績』(ちくま学芸文庫 ハ 36-1)、筑摩書房、2012
原著は Abraham Pais, Maurice Jacob, David I. Olive and Michael F. Atiyah, Paul Dirac. The Man and His Work, 1998
邦訳は2001年刊本の文庫化。第4章アティヤの「ディラック方程式と幾何学」は割愛とのこと(p.149)。
序文(ピータ^・ゴッダード)/追悼の辞(スティーヴン・ホーキング)//
ポール・ディラック、その人と業績(アブラハム・パイス)/反物質(モーリス・ジェイコブ)/単極子(デイヴィッド・オリーヴ)//
付録 孤高の天才ディラック(藤井昭彦)など、
184ページ。


竹内薫、『ヒッグス粒子と宇宙創成』(日経プレミアシリーズ 164)、日本経済新聞出版社、2012
プロローグ/素粒子って何?/ヒッグス粒子とは何か?/宇宙はどのようにして作られたのか?/粒子の実験に使う「加速器」とは?/実験装置の中を探ってみよう/ヒッグス粒子発見は物理学の未来への第1歩など、
208ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『ペンローズのねじれた4次元』、1999


松原隆彦、『宇宙に外側はあるか』(光文社新書 564)、光文社、2012
プロローグ/初期の宇宙はどこまで解明されているか/宇宙の始まりに何が起きたのか/宇宙の形はどうなっているのだろうか/宇宙を満たす未知なるものと宇宙の未来/宇宙に外側はあるか/エピローグなど、
260ページ。

 同じ著者による→こちら(上掲の『宇宙のダークエネルギー』、2011)や、そちら下掲の(『宇宙はどうして始まったのか』、2015)、またあちら(『私たちは時空を超えられるのか』、2018)、ここ(『宇宙は無限か有限か』、2019)、またそこを参照:本頁冒頭の『現代宇宙論の誕生 20世紀科学論文集』、2022


大栗博司、『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』(GS 幻冬舎新書 260/お-13-1)、幻冬舎、2012
はじめに/重力の七不思議/伸び縮みする時間と空間 - 特殊相対論の世界/重力はなぜ生じるのか - 一般相対論の世界/ブラックホールと宇宙の始まり - アインシュタイン理論の限界/猫は生きているのか死んでいるのか - 量子力学の世界/宇宙玉ねぎの芯に迫る - 超弦理論の登場/ブラックホールに投げ込まれた本の運命 - 重力のホログラフィー原理/この世界の最も奥深い真実 - 超弦理論の可能性/あとがきなど、
292ページ。

 「しかし、宇宙のビッグバンでは、空間自体が膨張するのです。空間の膨張とは『二点間の距離が広がる』ことですから、必ずしもその空間の『外側』は必要ありません」(p.149)。

〈プランクの長さ〉に関連して、

 「『技術的に不可能』なのではありません。『原理的に不可能』なのです」(p.202)

というのも興味深いところですが、また;

 「しかし物理学では、原理的にすら観測できないものは『ない』のと同じであると考えます」(p.203)。

上のビッグバンについての説明で「必ずしも」の語を加えた点ともども、「のと同じであると考えます」の言い回しが注意を引かずにいません。

ペンローズやホーキングによって否定されることになるとはいえ、リフシッツとハラトニコフが、

 「アインシュタイン方程式から宇宙膨張を予想したフリードマンやルメートルの理論で初期宇宙に特異点が生じるように見えるのは、宇宙が『一様』かつ『等方』な空間であるという仮定で計算をしたからだと考えました」(p.151)、

 「物質の分布にバラつきのある『一様ではない宇宙』が収縮した場合、その方向にズレが生じて全体が一点に集約されないため、特異点を避けられると考えたのです」(p.151-152)

というのも面白い。

量子力学に関連して、

 「このファインマンの計算方法は、、考えられるルートをすべて足すことから『経路和』と呼ばれています。すぐには馴染めない話かもしれませんが、そこでは『あったかもしれないことは、全部あった』と考える」(p.174)。

〈ホログラフィー原理〉に関連して;

 「ブラックホールにかぎらず、三次元の空間のある領域で起きる重力現象は、すべてその空間の果てに設置されたスクリーンに投影されて、スクリーンの上の二次元世界の現象として理解することができると主張したのです」(p.260)。

「空間の果てにある二次元の平面」という言い回しは p.262 にも出てきます。具体的にどういった存在ないし状態を念頭に置いているのでしょうか? それとも具体的にと考えること自体、的を外しているのでしょうか? なお著者は「プラトンの『洞窟の比喩』」を引きあいに出しています(pp.262-263)。
 

ジョン・D・バロウ、小野木明恵訳、『無の本 ゼロ、真空、宇宙の起源』、青土社、2013
原著は John D. Barrow, The Book of Nothing, 2000
序章/無の学問 - どこにもないところへの飛翔/ゼロ - すべての物語/から騒ぎ/無を構築する/エーテルに向かう流れ/いったい何がゼロに起こったのか?/空っぽの宇宙/決して(から)にならない箱/真空は何個あるのか?/真空の始まりと終わりなど、
430ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙が始まるとき』、1996


A.コンヌ、S.マジッド、R.ペンローズ、J.ポーキングホーン、A.テイラー、伊藤雄二監訳、『時間とは何か、空間とは何か 数学者・物理学者・哲学者が語る』、岩波書店、2013
原著は On Space and Time, edited by Shahn Majid, with contributions by Alain Connes, Michael Heller, Roger Penrose, John Polkinghorne and Andrew Taylor, 2008
はじめに(シャーン・マジッド)/暗黒宇宙(アンドリュー・テイラー)/量子力学的な時間と空間、その物理的実在(シャーン・マジッド)/因果律、量子論、そして宇宙論(ロジャー・ペンローズ)/時空の美しい理解のために:重力と物質の統一(アラン・コンヌ)/時間とは何か(ジョン・ポーキングホーン)など、
250ページ。


 ペンローズによる→こちらも参照:上掲の『ホーキングとペンローズが語る 時空の本質』、1997


ジョン・D・バロウ、林一・林大訳、『宇宙論大全 相対性理論から、ビッグバン、インフレーション、マルチバースへ』、青土社、2013
原著は John D. Barrow, The Book of Universes, 2011
よい時によい場所に;歩いている二人の男/宇宙とはおかしなもの/場所の重要性/アリストテレスの球形の宇宙/プトレマイオスの「ヒース・ロビンソン」宇宙/コペルニクスのレボリューション//
コペルニクス以後;特別な時間と特別な場所/平等主義的法則/変化する宇宙/星雲仮説/エドワード時代の宇宙の生命/崩壊する宇宙/カール・シュヴァルツシルト:知りすぎた男//
アインシュタインの宇宙;コペルニクスの構想を完成させる/アインシュタインの洞察/脱線/物質が不動であるアインシュタインの宇宙の創造/第2の宇宙:デシッテルの、物質のない運動の宇宙/フリードマンの、運動する物質の宇宙/ルメートルの宇宙/アインシュタインとデシッテルの宇宙/トールマンの振動する宇宙/ルメートルとトールマンのよじれた宇宙/ミルンの宇宙(ニュートンのさまざまな宇宙)//
予想外の宇宙 宇宙論のロココ時代;フラクタル宇宙/カスナー博士の宇宙/ディラックの宇宙-重力が崩壊する場所/アインシュタインとローゼンの波打つ宇宙//
全然違う宇宙;スイスチーズ宇宙/混乱した宇宙/シュレディンガーの宇宙/ゲーデルの自転する宇宙//
定常宇宙とビッグバン;いつもあったし、今もあり、これからもある宇宙/机上の宇宙/電気宇宙/熱い宇宙//
ありのままの宇宙;乱流宇宙/ゆがんだ宇宙-1から9まで/むらのない宇宙と新たな観測の窓/カオス的宇宙/ミックスマスター宇宙/磁気的宇宙/プランズとディッキーの宇宙/物質-反物質宇宙//
初めてのはじまり;特異な宇宙/どの宇宙が特異か/冷たい宇宙とぬるい宇宙/予想外に単純な宇宙/そして統一的な考え方//
いくつものすばらしき新世界;非対称な宇宙/問題宇宙/インフレーション宇宙/カオス的インフレーション宇宙/永久インフレーション宇宙/突然、宇宙は再び単純に思えるようになる/数多くある宇宙は制限がきかなくなる//
ポストモダン宇宙;ランダム宇宙/確率の高い宇宙/人間原理的宇宙/ありうる宇宙/手づくりの宇宙/自然選択された宇宙/偽の宇宙/何もオリジナルではない宇宙/ボルツマンの宇宙//
周辺的な宇宙;ラップアラウンド宇宙/量子宇宙/自己創造する宇宙/衝突する宇宙/光の死/ハイパー宇宙//
暴走する宇宙;いちばんお買い得の宇宙/不合理な宇宙/謎めいた宇宙など、
492ページ。

 第3章中で、リチャード・トールマンによる振動宇宙論に対するアプローチを述べた後、「ルメートルとトールマンのよじれた宇宙」の節で、

「場所によって違いがあるということは、膨張は、いたるところで同時にはじまったとはかぎらないということだった」(pp.126-127)

 等とトールマンの説について記していたのが印象的でした(pp.280-282) も参照。

 非等方性・非一様性という点では、エドワード・カスナーの宇宙(pp.144-145)、エイブラハム・タウブ(pp236-242)、チャールズ・ミスナーの「ミックスマスター宇宙」(pp.249-253)なども、「永久インフレーション」(p.313)を連想させる点とあわせて興味を惹きます。

 その永久インフレーション・モデルに関連して、

「この、インフレーションの石筍の、見事な形をなす連なりをリンデは『カンディンスキー宇宙』と表現する(が、これはむしろ、図9・10 に示した、米国のコンセプチュアル・アーティスト、ソル・ルウィットによる"splotch"彫刻の一つを思い起こさせる)…(後略)」(pp.317-318)

 と記され、図9・10 として「2005年のソル・ルウィットの《splotch 15》」が p.317 に掲載されています。同様の話が『コズミック・イメージ 美しい科学 1』、pp.188-190 でもなされ、そちらにはカラー図版が載っていました。

 〈マルチヴァース〉や〈人間原理〉に関連して、

「生命とは何かをあまり保守的に指定して、私たちとは全然似ていない形の意識が含まれる余地をなくしたくはない」(p.346))

 というくだりがありました(pp.372-373 も参照)。〈人間原理〉はその名が思わせるような人間中心主義ではなく、コペルニクス的相対化を徹底させたものとされるわけですが、つまるところ〈微調整(ファイン・テューニング)〉に小さからぬ意味を読みこんでいる点で、同じ穴の狢のような気がしなくもありません。いずれにせよ、仮にこの(ヽヽヽヽ)宇宙を通じて同じ物理法則があまねく適用されると仮定することが許されるのだとしても、少なくとも現時点では、地球なり多く見積もっても太陽系の中から敷衍・外挿・類推するしかない以上、そうした議論で〈生命〉という場合には「地球型の」、〈意識〉や〈知性〉という場合には「地球人類型の」と限定した方がいいのではないかと思ったりもするのでした。

 戻ってひも理論とM理論に関連して、

「時間次元が一つだけとは限らない」(p.409)、

「時間が一つだけでなかったら実に奇妙なことになるからだ。不安定な粒子はたいてい速く崩壊し、エネルギーは消え去り、未来は現在によってただ一つには、そして完全には決まらないのだ」(p.410)

 というのですが、もっと詳しくといいたいところでした。

 この他、pp.53-56 および註 p.9 の *6 でトーマス・ライト(→こちらにも挙げておきます:「ロココ、啓蒙思想など(18世紀)」の頁中の「ライト」の項)、

 第4章中の「フラクタル宇宙」の節でフルニエ・ダルベやシャーリエの階層宇宙(pp.136-138)、

 第10章中の「偽の宇宙」の節ではシミュレーションとしての宇宙とシミュレーターの話(p.336-366、その中でヒュームが引用されたりします:pp.362-363)、

 続く「何もオリジナルではない宇宙」の節では〈複製のパラドックス〉が扱われ、ニーチェの永劫回帰説が引用されます(p.358、なので→こちらでも触れておきますた(「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁、「xi. 個々の著述家など Ⅴ」中の「ニーチェ」の項)。下掲のケイティ・マック『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)で紹介される〈ポアンカレの回帰定理〉も参照。

 註 pp.38-39 の *16 では可能世界ないし最善世界にまつわってモーペルテュイが参照されたりします(→そちらにも挙げておきます:「ロココ、啓蒙思想など(18世紀)」の頁中の「モーペルテュイ」の項)
 同じ著者による→あちら:上掲の『宇宙が始まるとき』、1996 

デイヴィッド・ドイッチュ、熊谷玲美・田沢恭子・松井信彦訳、『無限の始まり ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』、インターシフト、2013
原著は Daivd Deutsch, The Beginning of Infinity. Explanations that Transform the World, 2011
説明のリーチ/実在に近づく/われわれは口火(スパーク)だ/進化と創造/抽象概念とは何か/普遍性への飛躍/人工創造力/無限を望む窓/楽観主義(悲観主義の終焉)/ソクラテスの見た夢/多宇宙/悪い哲学、悪い科学/選択と意思決定/花はなぜ美しいのか/文化の進化/創造力の進化/持続不可能(「見せかけの持続可能性」の拒否)/始まりなど、
616ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『世界の究極理論は存在するか』、1999


ローレンス・M・クラウス、青木薫訳、『宇宙が始まる前には何があったのか?』、文藝春秋、2013
原著は Lawrence M. Krauss, A Universe from Nothing, 2012
ペーパーバック版へのまえがき 宇宙は無から生じた/はじめに 何もないところから、何かが生まれなくてはならない/いかに始まったのか?/いかに終わるのか?/時間の始まりからやってきた光/ディラックの方程式/99パーセントの宇宙は見えない/光速を超えて膨張する/二兆年後には銀河系以外は見えなくなる/その偶然は人間が存在するから?/量子のゆらぎ/物質と反物質の非対称/無限の未来には/エピローグ 宇宙が始まる前には何があったのか?//
『種の起源』に匹敵する、宇宙論のパラダイムシフト(リチャード・ドーキンス)/著者との一問一答など、
288ページ。
 原題にもあるように、本書は〈無〉からの宇宙開闢が主題なのですが、そんな中で

「『何もない』状態は不安定だということだ」(p.227。また p.241)

 と述べられていたのが印象的でした。また、

「量子力学と一般相対性理論とを融合させようとすると、この考え方を拡張して、空間そのものがそこから出現したところの『何もないところ』 - つまり、空間さえも生じさせるような真空 - を定義できるようになる」(p.230。また p.247)。

 この他、

「さまざまな高次元空間に存在する宇宙のランドスケープとしてであれ、永遠のインフレーションのように三次元空間の内部で無数に複製される宇宙の集合としてであれ」(pp.250-251。また p.199)

 という言い方から、インフレーション・モデルにおける多宇宙のありかが、「三次元空間」と考えられていることがわかります。

 なお、同じ著者による『SF宇宙科学講座』(1998)などでも触れられている、〈環境科学〉問題については、p.200、pp.249-250 など参照。
 

佐藤勝彦、『宇宙は無数にあるのか』(集英社新書 0694G)、集英社、2013
宇宙はどこまでわかったのか/まだ解明されない宇宙の謎/人間に都合よくデザインされた宇宙/インフレーション宇宙/マルチバース/人間原理をどう考えるのか、など、
208ページ。

 超弦理論における多宇宙論を説明するくだりで、仏教の三千大山世界説が引きあいに出されていました(p.165)。
 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』、1991

青木薫、『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』(講談社現代新書 2219)、講談社、2013
天の動きを人間はどう見てきたか/天の全体像を人間はどう考えてきたか/宇宙はなぜこのような宇宙なのか/宇宙はわれわれの宇宙だけではない/人間原理のひもランドスケープ/終章 グレーの階調の中の科学など、
256ページ。


ロジャー・ペンローズ、竹内薫訳、『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』、新潮社、2014
原著は Roger Penrose, Cycles of Time, 2010
プロローグ//
熱力学の第2法則と根底にある謎;どんどんランダムになる/状態の数とエントロピー/位相空間とボルツマンによるエントロピーの定義/エントロピーの概念のロバストネス/未来に向かってとめどなく増大するエントロピー/過去と未来はどこが違うのか?//
ビッグバンの奇妙な特殊性;膨張する宇宙/遍在する宇宙マイクロ波背景放射/時空、ヌル円錐、計量、共形幾何学/ブラックホールと時空の特異点/共形ダイアグラムと共形境界/ビッグバンの特殊性を理解する//
共形サイクリック宇宙論;無限とつながる/共形サイクリック宇宙論の構造/初期の前ビッグバン説/第2法則との折り合いをつける/共形サイクリック宇宙論と量子重力/共形サイクリック宇宙論の観測的証拠//
エピローグ//
補遺など、
336ページ。
 ここで提唱されている〈共形サイクリック宇宙論 Conformally Cyclic Cosmology〉は、上掲スタインハート&トゥロック『サイクリック宇宙論』(2010)とは異なる議論です(p.203)。
 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ
 ペンローズについて→こちらを参照:本頁上掲『ホーキングとペンローズが語る 時空の本質』(1997)
 ペンローズの親族について→そちらで触れました:「怪奇城の画廊(幕間)」の頁


『Newton 別冊 インフレーション、パラレル宇宙論 佐藤勝彦、A.グース、M.テグマーク、今注目の宇宙発生論』、ニュートンプレス、2015.2.10
プロローグ 宇宙はどのように誕生したのだろうか//
真空の正体(和田純夫);真空とは何か?/真空の探求/真空の利用①~③/真空の限界/宇宙空間の真空/原子の中の真空/素粒子の世界の真空/素粒子を生む真空/沸き立つ真空/沸き立つ真空の実証/真空とビッグバン/銀河宇宙も創造した真空の正体//
インフレーション宇宙論(監修:佐藤勝彦);インフレーションとビッグバン/インフレーション宇宙論 誕生物語/膨張する宇宙/ビッグバン仮説の登場/宇宙の晴れ上がり/ビッグバンの証拠と謎/インフレーション宇宙論の登場/インフレーションをおこした力/インフレーションからビッグバンへ/宇宙の構造とインフレーション/インフレーションの検証/インフレーションの予言①~②/インフレーションとダークエネルギー/インフレーション宇宙論Q&A/宇宙論を検証する“最古の光”//
パラレル宇宙論(協力:向山信治/マックス・テグマーク);パラレル宇宙の階層構造/観測可能な領域/観測可能な領域の外/インフレーション/あなたのコピー/インフレーションの中の泡/宇宙の多重発生/インフレーションの根拠/無から生まれた宇宙/素粒子のことなる宇宙/ブレーン宇宙論/幸運な宇宙①~③/量子論の多世界解釈/特別インタビュー:マックス・テグマーク博士(→こちらも参照:本頁下掲のテグマーク『数学的な宇宙』、2016)//
宇宙の果てをめぐる再新宇宙論(協力:村山斉);果てしない問い/ずっと遠くの宇宙はどうなってる?/宇宙はどれくらいの大きさがある?/宇宙が小さかったころは端があった?/宇宙の形を知ることはできるのか?/私たちの宇宙が唯一の宇宙なのか?/宇宙は4次元時空ではないのか?/特別インタビュー:村山斉博士/コラム:物理学にはなぜ数学が使われるのか?、など、
160ページ。


松原隆彦、『宇宙はどうして始まったのか』(光文社新書 738)、光文社、2015
「この宇宙」には始まりがある;宇宙は永遠不変の存在ではない/宇宙の始まりを考える/標準ビッグバン理論が信頼できる理由/宇宙のインフレーション//
無からの宇宙創世論;「無」とは何のことか/宇宙の境界条件/宇宙の始まりと「無」/結局、宇宙は本当に無から始まったのか//
量子論と宇宙論;量子論の意味/古典物理学はたいくつ?/量子論は古典物理学をくつがえす/神はさいころを振る/重力の量子論は未完成/重力の量子論を検証することの難しさ/量子宇宙論//
相対論と宇宙論;時間や空間は単なる舞台か/アインシュタインの登場/運動の相対性とは/重力とは何か/時空間がゆがむとはどういうことか/重力は光を曲げる/宇宙をモデル化する/宇宙膨張の発見とルメートル/宇宙はどこへ向かって膨張しているのか//
素粒子論と宇宙論;素粒子論を宇宙論の応用する/ビッグバン理論と原子核物理学/現在の宇宙にある多様な元素の起源/3重アルファ反応の妙/人間原理とは/素粒子論における多宇宙/宇宙論における多宇宙//
宇宙の始まりに答えはあるのか;宇宙の始まりという疑問/ホィーラーの参加型宇宙/ホーキングのトップダウン型宇宙/ホィーラーと多世界解釈/宇宙観はめぐる/情報と宇宙/プランクトンが十分に賢かったら、など、
244ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙に外側はあるか』、2012


横山順一、『輪廻する宇宙 ダークエネルギーに満ちた宇宙の将来』(ブルーバックス B1937)、講談社、2015
序章 輪廻転生とは何か 転生者の捜索と科学の方法/宇宙の中身をさぐる/宇宙観の変遷 偏見からの解放/加速膨張宇宙の謎/ダークエネルギーの正体/宇宙のはじまり/宇撮る宙の将来/終章 ダライ・ラマとの邂逅など、
208ページ。

 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ
 同じ著者による→そちらを参照:上掲の『宇宙創生をさぐる』、1994


羽澄昌史、『宇宙背景放射 「ビッグバン以前」の痕跡を探る』(集英社新書 0807-G)、集英社、2015
宇宙の「ルールブック」を求めて - 素粒子実験から宇宙誕生の瞬間を実験へ/ビッグバンとCMB/「空っぽ」の空間/インフレーション仮説/原始重力波とBモード偏光/ポーラーベアの挑戦/戦国時代のBモード観測 - ライバルとの競争、そしてライトバード衛星へ、など、
208ページ。


マックス・テグマーク、谷本真幸訳、『数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて』、講談社、2016
原著は Max Tegmark, Our Mathematical Universe : My Quest for the Ultimate Nature of Reality, 2014
はじめに/実在とは何か//
宇宙を俯瞰する;空間での私たちの位置/時間軸上の私たちの位置/数値で見た私たちの宇宙/私たちの宇宙の起源/多宇宙の世界へようこそ//
ミクロの世界を拡大する;宇宙を構成するレゴブロック/レベルⅢ多宇宙//
一歩下がって見る;内的実在、外的実在、合意的実在/物理的実在と数学的実在/時間は幻想か/レベルⅣ多宇宙/生命、宇宙、すべてなど、
484ページ。


 テグマークの名前を初めて見たのが→こちらを参照:『Newton 別冊 インフレーション、パラレル宇宙論 佐藤勝彦、A.グース、M.テグマーク、今注目の宇宙発生論』、2015.10
 →そちらにも挙げておきます:「世界の複数性など」の頁。
 またアレックス・ビレンケン、林田陽子訳、『多世界宇宙の探検』(2007)でも同巧の説明がなされていた〈複製のパラドックス〉に関連して、→あちらでも触れました:「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁、「xi. 個々の著述家など Ⅴ」中の「ニーチェ」の項。下掲のケイティ・マック『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)で紹介される〈ポアンカレの回帰定理〉も参照。


マーチン・ボジョワルド、前田秀基訳、『繰り返される宇宙 ループ量子重力理論が明かす新しい宇宙像』、白揚社、2016
原著は Martin Bojowald, Zurück vor den Urknall. Die ganze Geschichte des Universums, 2009
邦訳は英語版 Once before Time を底本にしているとのこと。
すべての始まり/重力/量子論/インテルメッツォ/量子重力理論/観測的宇宙論/ブラックホール/時間/宇宙進化論/ただ一つの世界/万物の理論など、
436ページ。

 ビッグバンおよびブラックホールにおける特異点を解消することがテーマになっています。
 ループ量子重力理論が呈示する空間・時間の離散性というイメージにからんで、→こちらでも挙げました:「仏教」の頁の「ii. アビダルマの自然学、刹那滅論」。下掲の
 カルロ・ロヴェッリ、冨永星訳、『時間は存在しない』、2019
も参照

 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ。 

吉田伸夫、『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』(ブルーバックス B2006)、講談社、2017
はじめに -なぜ「今」なのか?/本書で扱う数値に関する用語/2ページで語る宇宙全史//
過去篇;不自然で奇妙なビッグバン - 始まりの瞬間/広大な空間、わずかな物質 - 宇宙暦10分まで/残光が宇宙に満ちる - 宇宙暦100万年まで/星たちの謎めいた誕生 - 宇宙暦10億年まで/そして「現在」へ -宇宙暦138億年まで//
未来篇;銀河壮年期の終わり - 宇宙暦数百億年まで/消えゆく星、残る生命 - 宇宙暦1兆年まで/第二の「暗黒時代」 - 宇宙暦100兆年まで/怪物と漂流者の宇宙 - 宇宙暦1
(がい)(10(20))年まで/虚空へ飛び立つ素粒子-宇宙暦1(せい)(10(40))年まで/ビッグウィンパーとともに - 宇宙暦(10(100))年、それ以降/不確かな未来と確かなこと - 残された謎と仮説//
補遺 宇宙を統べる法則;宇宙空間が膨張する/凝集と拡散が進行する、など、
282ページ。


 →こちらでも触れました;本頁下方、ケイティ・マック、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(2021)のところ
 同じ著者による→そちらも参照:上掲の『宇宙に果てはあるか』、2007

本間希樹、『巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る』(ブルーバックス B2011)、講談社、2017
ブラックホールとは何か?/銀河の中心に潜む巨大な穴/200年前の驚くべき予言/巨大ブラックホール発見前夜/新しい目で宇宙を見る - 電波天文学の誕生/ブラックホールの三種の神器/宇宙は巨大ブラックホールの動物園/巨大ブラックホールを探せ!/進む理解と深まる謎/いよいよ見える巨大ブラックホールなど、
272ページ。


松浦壮、『時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体』(ブルーバックス B2031)、講談社、2017
はじめに/時を数えるということ/古典的時間観 - ガリレオとニュートンが生み出したもの/時間の方向を決めるもの - 「時間の矢」の問題4/光が導く新しい時間観の夜明け - 特殊相対性理論/揺れ動く時空と重力の正体 - 一般相対性理論/時空を満たす「場」の動き - マクスウェルの理論と量子としての光/ミクロ世界の力と物質 - 全ては量子場でできている/量子重力という名の大統一 - 時間とはなんだろう?、など、
246ページ。


野村泰紀、『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか』(星海社新書 112)、星海社、2017
「宇宙」って何?/よくできすぎた宇宙/「マルチバース」 - 無数の異なる宇宙たち/これは科学? - 観測との関係/さらなる発展 - 時空の概念を超えて、など、
192ページ。

 個人的に本書のハイライトは二つあって、まず、

「泡宇宙が小さく生まれて大きくなっていくという描像と、宇宙が常に一様、つまり生まれた瞬間からどこまでも同じように続く無限の大きさを持っているという描像はお互いに矛盾しないのである!」(p.101)

として、相対性理論において

「絶対的な『同時』という概念は存在しないということ」(p.106)

を踏まえた上で、

「前者は泡宇宙の外の観測者から見た描像であり、後者は泡宇宙の中の観測者から見た描像なのである。そして両者がこれほどにも違うのは、それぞれの観測者にとっての同時刻という概念が異なるからである」(p.111)

 と結論づけます。
 この点についてはアレックス・ビレンケン、林田陽子訳、『多世界宇宙の探検』(2007)でも同巧の説明がなされていましたが、すぐ次に挙げた野村泰紀×マルクス・ガブリエル、「宇宙×世界」、『現代思想』、2018.9、pp.64-66 でも述べられていました。

 次に、エヴェレットによる量子論の多世界解釈を解説した後で、

「マルチバースは非常に大きな、
実際の(ヽヽヽ)の空間に存在しているものであり、量子力学の多世界とは関係ないのではないか?」(p.156)

 との問いに対し、

「実は宇宙論的なマルチバースと量子力学的な多世界は同じものではないか」(同上)

 と答えるのでした;

「つまり、マルチバースは時間が経つにつれ、異なる泡宇宙が異なる場所と時間に生まれた状態の量子力学的重ね合わせ(量子力学的多世界)になっていくのである」(p.169)、

「これは、無限に広がるマルチバースというものは、実は確率の世界に(のみ)存在していることを意味する」(同上)。

 双方その説明をちゃんと咀嚼できたとはいいがたいのですが。

 またこの他、マルチバース理論からの予言として、

「それは、我々の宇宙が『負の曲率』を持っているということ」(p.132)

 が挙げられたり、

「マルチバースの時空構造は十分複雑なため、我々の宇宙が他のどれかの宇宙と衝突する確率はほぼ100%である」(p.136)

 とか、

「マルチバースの状態は実は時間発展などしておらず、我々マルチバースの一部である観測者が時間と感じるものは異なる物体(例えば時計の針と投げられたボール等)の間の相関として、我々の宇宙(や他の多くの宇宙)の中の性質として『近似的に』現れるという描像」(p.177)

 といったくだりが印象的でした。
 
 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『なぜ宇宙は存在するのか』、2022

野村泰紀×マルクス・ガブリエル、「宇宙×世界」、『現代思想』、vol.46 no.14、2018.9:「総特集 マルクス・ガブリエル 新しい実在論」、pp.60-97
我々の宇宙を超えて(野村泰紀)/宇宙・世界・実在(マルクス・ガブリエル)/宇宙×世界(野村泰紀×マルクス・ガブリエル)など

 2018年6月10日開催の講演会の再構成
 マルクス・ガブリエルによる→こちらも参照:「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「iii. シェリングなど


松原隆彦、『私たちは時空を超えられるのか 最新理論が導く宇宙の果て、未来と過去への旅』(サイエンス・アイ新書 SIS-420)、SBクリエイティブ株式会社、2018
第1部;昔に戻りたいというなたへ/未来へ向かう/過去へ向かう/過去へ戻ると矛盾するか//
第2部;できるだけ遠くへ行きたいあなたへ/太陽系の外へ行く/銀河系の外へ行く/宇宙はどこまで広いのか//
第3部;時空を超えたその先には//
付録;相対論的な宇宙船での往復旅行を計算など、
192ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『宇宙に外側はあるか』、2012

東克明、「第11章 素粒子と米粒の自己同一性 量子力学的対象と粒子概念」、田上孝一・本郷朝香編、『原子論の可能性 近現代哲学における古代的思惟の反響』、2018、pp.311-331
はじめに/「重ね合わせ」の状態/素粒子の自己同一性/丹治氏の分析 - 「米粒の自己同一性」/時間的推移を用いた自己同一性基準/おわりに - 粒子から場へ

カルロ・ロヴェッリ、冨永星訳、『時間は存在しない』、NHK出版、2019
原著は Carlo Rovelli, L'ordine del tempo, 2017
もっとも大きな謎、それはおそらく時間//
時間の崩壊;所変われば時間も変わる/時間には方向がない/「現在」の終わり/時間と事物は切り離せない/時間の最小単位//
時間のない世界;この世界は、物ではなく出来事でできている/語法がうまく会っていない/関係としての力学//
時間の源へ;時とは無知なり/視点/特殊性から生じるもの/マドレーヌの香り/時の起源//
眠りの姉//
日本語版解説(吉田伸夫)/訳者あとがきなど、
240ページ。

 著者は上掲の

マーチン・ボジョワルド、前田秀基訳、『繰り返される宇宙 ループ量子重力理論が明かす新しい宇宙像』、2016

で紹介されていたループ量子重力理論を主導する一人とのことです(p.208)。
 本書の原題はアナクシマンドロスの断片から取られたもので、「時間の順序」を意味します(pp.20-21)。
 ちなみにプラトーン立体とケプラー(pp。101-103)、ビンゲンのヒルデガルト(p.153)、『ミリンダ王の問い』(pp.168-170)なども登場します。
 量子力学に則って、時間も量子化され、時間が「離散的」、「不連続」であることが説かれるのですが(p.86)、その際、

「神はこの世界を連続的な線では描かず、スーラのように軽いタッチで点描したのである」(pp.86-87)

と述べられます。ちなみに p.25ではマティスの《ダンス》が喩えに使われていました。さらに、ポール・マッカートニーの「
丘の上の愚か者(フール・オン・ザ・ヒル)」は二度に渡って引きあいに出され(p.20、p.197)、第5章の末尾ではグレートフル・デッドの'Walk in the Sunshine'の歌詞が引かれます(p.93、p.229原注第5章8)。また、

 「この世界の出来事は、英国人のように秩序立った列は作らず、イタリア人のようにごちゃごちゃと集まっているのだ」(p.97)

 「整然としたシンガポールではなく、無秩序なナポリ」)p.104)

との言い回しにはどんなニュアンスが込められているのでしょうか?

 時間の離散性についての本書での議論は、下掲の

高水裕一、『時間は逆戻りするのか』、2020

の第7章でも紹介されていました。本書ではアビダルマ仏教の刹那滅論やイスラーム神学の原子論、デカルトの連続創造説は挙げられていませんが(→こちらも参照:「仏教」の頁の「ii. アビダルマの自然学、刹那滅論」。)、

「7世紀には中世初期の神学者のセビリアのイシドールがその著書『語源(Etymologiae)』で、さらにその次の世紀にはイングランドの聖職者ベーダ・ウェネラビリスが『時の分割について(De Divisionibus Temporum)』という思わせぶりな標題の著作で、そのような見解を主張している。また、12世紀にはスペイン生まれの偉大なるユダヤ人哲学者マイモーン(ラテン名はマイモニデス)が、『時間は原子でなり立っている。すなわち、それ以上分けることのできないたくさんの部分、短い継続時間からなっているのだ』と述べている。このような考えは。おそらくもっと古くからあったのだろう」(p.87)

とのことです。
 第7章では

「哲学者たちは、現在だけが現実であって、過去や未来は現実でないとする見方を『現在主義』と呼んでいる」(p.106)、

「哲学者たちは、流れや変化が幻であるとする見方を『永久主義』と呼んでいる」(p.108)

として、後者に関連して、

「これは『ブロック宇宙論』と呼ばれる考え方で、それによると、宇宙の歴史全体を単一のブロックと見るべきで、そこではすべてが同じようにリアルで、ある瞬間から次の瞬間への時間の移り変わりは幻でしかない」(pp.108-109)

と述べます。〈現在主義〉と〈永久主義〉については、

佐金武、「永遠について 現在の観点から」、『現代思想』、vol.47-15、2019.12:「特集 巨大数の世界 アルキメデスからグーゴロジーまで」、p.178

椿井真也、「時間の非実在性と Julian Barbour の無時間論」、『Core Ethics (コア・エシックス)』、2021、p.158

も参照。
 ロヴェッリ自身は、

「不動の時間のなかに状態があるのではなく、限りあるものが遍在することが示されるのだ」(p.98)、

「この世界は物ではなく、出来事の集まりなのである」同上)

と述べ、枠組みとしてのニュートン的な〈絶対時間〉は見出せないにせよ、ホワイトヘッドの〈出来事〉だか〈抱握〉だか〈活動的存在〉と比較できるものかどうか(中村昇、『ホワイトヘッドの哲学』、2007、pp.75-76)、変化が連なっていくと考えているようです。〈出来事〉は

「現実を構成する宇宙規模の鏡のゲームの複雑な結び目なのである。この世界は石ではなく、束の間の音や海面を進む波でできている」(p.99)。

須藤靖、『不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?』(ブルーバックス B2084)、講談社、2019
まえがき - ラガッシュから見た宇宙/この「宇宙」の外に別の「宇宙」はあるのか?/宇宙に果てはあるのか? 宇宙に始まりはあるのか?/我々の宇宙の外の世界/不自然な我々の宇宙と微調整/人間原理とマルチバース/終章 マルチバースを考える意味など、
232ページ。

 テグマークの『数学的な宇宙』を参照しつつ著者自身の見解を記した本。そんな中で量子論の多世界解釈について;

「自分が今まで住んでいた世界が次々と分岐するというよりは、すでにあらゆる可能性に対応する無数の世界が準備されており、自分はその中のどの特定の世界に存在しているのかを認識したに過ぎないと解釈した方が素直だと思います」(pp.126-127)

 と述べられていました。
 同じ著者による→こちら:下掲の『宇宙は数式でできている』(2022)、またそちらを参照:本頁冒頭の『現代宇宙論の誕生 20世紀科学論文集』、2022

松原隆彦、『宇宙は無限か有限か』(光文社新書 1037)、光文社、2019
気が遠くなる大きさ;宇宙空間はどこまで続いているのか/気が遠くなるほど大きな数/宇宙の地平線//
無限に続く宇宙とは;天の世界における恒星の位置/無限に広がった宇宙という考え方/地動説の確立/オルバースのパラドックス/パラドックスの前提条件//
時空間は曲がっている;時間と空間は絶対的なものではない/私たちに馴染み深いユークリッド幾何学/非ユークリッド幾何学の発見/時空間の曲がりと重力の関係/時空間は本当に曲がっている//
空間曲率の測り方;宇宙の空間曲率/有限に閉じた宇宙空間/宇宙の幾何学を知る/膨張宇宙における距離の推定/3角形を使った空間曲率の測定//
バリオン音響振動と空間曲率;バリオン音響振動とは何か/宇宙マイクロ波背景放射/宇宙の大規模構造/現状の観測における空間曲率の値//
有限に閉じた宇宙;トーラス構造の宇宙/トーラス構造でない繋がり方/宇宙のトポロジーを観測する//
無限大を手なずける;無限に広がった空間を扱う方法/くりこみ理論と無限大/カシミール効果/無限そのものを数学的に扱う/無限に挑んだ天才数学者//
もし宇宙が無限だったら;まったく同じ環境の宇宙/並行宇宙は同一のもの/重なり合う宇宙//
有限と無限のはざま;インフレーション理論の示唆/非一様な宇宙/宇宙が生まれた理由とは/「無」からの宇宙創成と宇宙の広さ//
情報の宇宙;確率的な宇宙/無限に存在する並行宇宙/シミュレーション宇宙/情報だけでできた宇宙、など、
256ページ。
 第9章の4「『無』からの宇宙創成と宇宙の広さ」の中で、

「だが、宇宙と宇宙の間には時間や空間というものがない…(中略)…。あくまで時間や空間はひとつひとつの宇宙の中にしかないのだ。その意味では、『無』には広さというものもない。広さとは空間があってこその考えなのだから」(p.227)

 と述べられていたのが印象に残りました。
 また第6章の1「トーラス構造の宇宙」から、「三次元トーラス構造」を説明するくだりを、→こちらで引きました:『呪いの館』』(1966)の頁
 同じ著者による→そちらを参照:上掲の『宇宙に外側はあるか』、2012

ショーン・キャロル、塩原通緒訳、『量子力学の奥深くに隠されているもの コペンハーゲン解釈から多世界理論へ』、青土社、2020
原著は Sean Carroll, Something Deeply Hidden. Quantum Worlds and the Emergence of Spacetime, 2019
序章 怖がらないで//
幽霊のように不気味な;何が起こっているのか 量子の世界をのぞく/勇気ある定式化 緊縮量子力学/誰がどうしてこんなことを考える? 量子力学はいかにして生まれたか/存在しないゆえに知りえないもの 不確定性と相補性/もつれたまま青空へ 多数の部分の波動関数//
分裂;宇宙を分裂させる デコヒーレンスとパラレルワールド/秩序とランダム性 確率はどこから来るか/この存在論的コミットメントは私を太っ腹に見せるか? 量子の謎についてのソクラテス式問答法/別の道 多世界解釈に代わる案/人間の側 量子宇宙に生き、量子宇宙で考える//
時空;なぜ空間があるのか 創発と局所性/振動の世界 場の量子論/空っぽの空間で息をする 量子力学の枠内に重力を見つける/空間と時間の先で ホログラフィック原理、ブラックホール、局所性の限界//
終章 すべては量子/補遺 仮想粒子の物語など、
424ページ。

 「第8章 この存在論的コミットメントは私を太っ腹に見せるか? 量子の謎についてのソクラテス式問答法」は多世界解釈の支持者アリスと物理学者ではあるが多世界解釈を支持しているわけではないその父ボブとの、対話という形式で展開します。順序を入れ替えつつ少しメモしておくと;

アリス:「エントロピーと同じく、エヴェレット量子力学での『世界』も上位概念で、基本概念ではないの。正真正銘の物理的洞察をもたらす有益な近似だということ」(p.202)

と断わりを入れつつ、

父:「そうした別の世界は、どこに位置しているのか?」

という問いに対し、

アリス:「…(中略)…枝はどこにも『位置』してはいないの。…(中略)…これらの枝はべつにどこかの『場所』に隠れているわけじゃない。これらはただ同時に存在しているだけ。私たちのいる枝と平行して、うまく接触を断ちながら存在しているの。私はこれらがヒルベルト空間に存在していると思っているけど、それはじつのところ『場所』じゃないでしょ」(p.215)

と答えます。最初に中略した箇所には、

「ああ、もう、ボブったら。…(中略)…そんな馬鹿なことを言うとは思わなかったわ」

とのくだりがはさまっていたのですが、同じ物質でできた世界が干渉しあわなくなるとはどういうことなのかという点とあわせて、すいません、実のところ一番知りたいのは、この点だったりするのでした。それはともかく、〈場所〉という言葉が持ちだされるところは、

「しかし天界はいまも述べたように、全体としては
どこにも(ヽヽヽヽ)、いかなる場所のうちにも、存在しない、いやしくもその全体を包むほどのいかなる物体も存在しないからには。…(中略)…
それゆえに、上にあるもの[第一の天球]は円環的に運動するが、しかし万有一切は
どこにも(ヽヽヽヽ)存在していないのである。けだし、どこかに存在するものは、それ自身、或るなにものかであるとともに、さらにまた、このものよりほかに、このものがそれ(ヽヽ)のうちにあり、それ(ヽヽ)がこのものを包むところのそれ(ヽヽ)なる或る他のものが存在せねばならないが、しかし万有全体のほかには、なにものも万有一切の外側には存在しない、そしてそれゆえに、すべてのものは天界のうちにあるのである。けだし、天界というのは万有一切のことでもあろうから。…(中略)…この天界はもはや他のもののうちには存在していないのである」
  (『自然学』第4巻第5章、出隆・岩崎允胤訳、『自然学 アリストテレス全集 3』、岩波書店、1968、p.140)

という、アリストテレースの議論が連想されなくもありません→こちらも参照:「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」の頁の「vii. アリストテレース」。
 他方ヒルベルト空間については、

「あらゆる可能な波動関数の空間、つまりヒルベルト空間」(p.191)

と、また先立つ第4章で

「粒子の位置についての波動関数にしろ、空間いっぱいになめらかに広がる関数として描かれることが多いとはいえ、やはりひとつのベクトルである。…(中略)…このようなベクトルの数は無限にあるので、あらゆる可能な量子状態からなる空間(これを『ヒルベルト空間』という)は、一個の粒子の位置に関して無限の次元を持っている」(p.108)、

後の第13章では

「多世界理論における波動関数は、ヒルベルト空間という超高次元の数学的構成概念の中に存在する、抽象的なベクトルにすぎない」(p.344)

等と記されていました。ヒルベルト空間は多世界解釈にかぎらず、量子力学全般で用いられているそうですが(たとえば→そちらを参照:新井朝雄、『ヒルベルト空間と量子力学』、1997/「近代など(20世紀~) Ⅱ」の頁の「viii. 無限、その他」)、数学を出自とするこの概念が、物理学の領域でどうしたあり方をしているのか、残念ながら不勉強のため、いまだいっかなわかっていないのでした。ともあれ第6章での

「分岐がどれだけの頻度で起こるかはわからない。…(中略)…重ね合わせの状態にある量子系が環境と量子もつれの状態になるたびに、この分岐が起こるのである。典型的な人間の体の中では、一秒ごとに約5000個の原子が放射性崩壊を起こしている。もしも崩壊のたびに波動関数が分岐しているとすれば、一秒ごとに2の5000乗の新しい枝が生じている」(p.148)。

という話を受けて、〈枝〉とも呼ばれる分岐した諸世界の数に関し、

アリス:「世界の数に対する上限はある。ヒルベルト空間の大きさそのものよ。あらゆる可能な波動関数が含まれる空間」。
父:「しかし、ヒルベルト空間が無限に大きいことはわかっている。…(中略)…たった一個の粒子にとってさえ、ヒルベルト空間は無限次元だぞ…(中略)…」。
アリス:「私たちの実際の宇宙にとってのヒルベルト空間が、有限の次元数を持っているか無限の次元数を持っているかはよくわかっていないの」(p.204)。

アリス:「でも量子重力理論からは、個別の可能な量子状態の数が無限ではなく有限であることが示唆されるの。もしそれが真実なら、妥当に論じることのできる世界の数には最大数があって、ヒルベルト空間の次元数によって決まることになる。この観測可能な宇宙のヒルベルト空間の次元数として考えられる値は、だいたい2の10乗の122乗くらい」(p.206)。

アリス:「この観測可能な宇宙には約10の88乗個の粒子があって…(中略)…これはずいぶん過大な見積もりだけど、この宇宙のすべての粒子が相互作用して、、毎秒100万回の割合で波動関数を二つに分裂させているとする。それをビッグバンからずっと続けているとすると、ビッグバンはおよそ10の18乗秒前だから、起こった分岐の回数は、10の88乗×10の6乗×10の18乗=10の112乗で、生み出された枝の合計数は、2の10乗の112乗。
 …(中略)…これでも相当に大きな数だけど、この宇宙のヒルベルト空間の次元数よりはずいぶん小さいわ」(pp.206-207、また p.369)。

といった議論が展開されます。さらに、

アリス:「多世界理論は『あらゆる可能なことが起こる』とは言っていないということ。多世界理論は『波動関数はシュレーディンガー方程式にしたがって時間発展する』と言ってるの。だから、ある種のことは起こらない。…(中略)…だから分岐によって、電荷の量が最初の宇宙より多かったり少なかったりする宇宙が生まれることは絶対にない」(p.208)。

 他方、

「量子波導関数の振幅というのは異なる枝に異なる『重み』を持たせる…(中略)…そして一本の枝が二本に分かれても、それはただ既存の世界を複製して『また一つ宇宙を作る』わけではない。二つの新しい世界の重みの合計は、もともとの一つの世界の重みに等しくて、全体の重みはつねに変わらない。したがって分岐が進むたび、世界はどんどん細くなる」(pp.182-183、また p.216)。 

「そこの住人からすると何も変わっていないけれど」(pp.216-217)

と述べられたりもするものの、〈世界が細くなる〉とは、具体的にどのような態を指すのでしょうか?
 この他;

「この波動関数のすべての枝の集合は、宇宙論でよく『マルチバース(多宇宙)』と呼ばれているものとは別物である。宇宙論でのマルチバースは、そのままの意味での空間領域の集合体で、一般にそれらの空間領域は互いから遠く離れており、それぞれで局所的条件が大きく異なって見える」(p.151)。

「2013年、フアン・マルダセナとレオナルド・サスキンドから、量子もつれの状態にある粒子は、時空の微視的な(そして貫通不可能な)ワームホールによってつながれていると考えるべきだと言う提案が出された」(p.351)。

和田純夫、『量子力学の解釈問題 多世界解釈を中心として』(SGCライブラリ 161)、サイエンス社、2020
はじめに//
本書の立場;本書の主な主張/量子力学の公理系//
解釈問題序論;ニュートンの運動方程式の「解釈」/観測されていないときの波動関数とは?/存在確率ではないこと - 2スリット実験から/コペンハーゲン解釈/標準解釈/実証主義と実在主義/実在主義的見方その1:隠れた変数の理論/実在主義的見方その2:共存から多世界解釈へ/経路積分・共存度/密度行列(密度演算子)/物理量と演算子/確率論か決定論か:不確定性関係//
共存 - 1粒子の場合;偏光状態の共存/偏光板付き2スリット実験:量子消去と遅延選択/マッハ-ツェンダー干渉計と遅延選択/無相互作用測定/ゼノン効果付き無相互作用測定//
エンタングルメント;共存とエンタングルメント//EPRパラドックスと局所実在論/ボーアの視点とアインシュタインの視点/隠れた変数の理論/2粒子の場合 - ベルの不等式/実験による検証 - 第1世代/実験による検証 - 第2世代以降//
2粒子状態の共存;HOM干渉計とKSC実験(2光子干渉・量子消去)/XWM実験(M<Z干渉計・下方変換)/KYKS実験(遅延選択・量子消去)/ウォルボーンの実験(2スリット干渉・経路情報・遅延選択)//
GHZ状態と状況依存性;GHZ状態/GHZ状態の実験による生成/バイドマンのGHZゲーム/ハーディ-ヨルダンの2光子状態/マーミンの魔方陣と状況依存性//
ハーディのパラドックスと弱値;ハーディのパラドックス/負の「確率」と弱値/弱値と弱測定/三つ箱のパラドックス/2スリット干渉実験での弱値//
確率とボルンの規則;統計的確率(頻度主義)と主観確率(ベイズ主義)/標準/コペンハーゲン解釈でのボルンの規則の意味/相対頻度の直接的導出の手順/相対頻度の導出(2モードの場合)/相対頻度の導出(多モードの場合)/有限粒子系の無限のセット/期待値の意味/無限自由度の問題/なぜ二乗か?/その他のアプローチ/頻度演算子//
デコヒーレンス;2スリット実験と経路の観測/デコヒーレンスの散乱モデル/C70分子による干渉実験/デコヒーレンスと環境/基底の問題/一意的な結果の認識/密度行列/振動子モデル/カルデイラ-レゲット・モデル/古典軌道の出現/ゼノン効果と状態の凍結//
量子ベイズ主義(現代的コペンハーゲン解釈)と多世界解釈;Qビズムとは/Qビズムでの状態の収縮/Qビズムと奇妙な遠隔作用/Qビズムと多世界解釈//
補遺A 多世界解釈への批判;主な論点/ワインバーグ/イエーガー/ケント//
参考文献など、
196ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『量子力学が語る世界像』、1994

高水裕一、『時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて』(ブルーバックス B-2143)、講談社、2020
はじめに/「時間」に目覚めた人類/時間のプロフィ-ル/相対性理論と時間/量子力学と時間/「宿敵」エントロピー/時間は本当に1次元か/量子重力理論と時間/サイクリック宇宙/始まりなき時間を求めて/生命の時間 人間の時間/誰が宇宙を見たのか?/おわりに、など
272ページ。

 第2章の2番目の節「次元数 - なぜ1次元なのか」の見出しにあるように、

「空間が3次元なら時間もであるほうが、ずっとシンプルで、普通のことに思えないでしょうか」(p.34)

と問い、第6章で扱う点がなかなか意想外でした。また第4章で量子力学を解説しつつ、

「エネルギーが不連続ということは、そのパートナーである時間も飛び飛びなのでは?」(p.93)

として、ロヴェッリ『時間は存在しない』が参照されます(pp.163-167)。
 第8章では超弦理論から展開したブレーン宇宙について、

「この世界の時空が、超弦理論の予言どおり9+1次元だとします。しかし、そのある一部の狭い領域に粒子やエネルギーが集中して、私たちが住む3+1次元の時空をつくっている…(中略)…粒子やエネルギーの局所的な集中は『ソリトン』と呼ばれ…(中略)…このようなソリトンが9+1次元時空で発生し、それがブレーンという平たい膜となったものが、私たちの住む3+1次元時空であるというのです」(179-180)

と述べてあります。第9章では、ダークエネルギーより強い斥力をもつ〈ファントム〉という物質を改訂して、2007年に「バウムとフランプトンは、サイクリック宇宙にこのファントムを組み込んだ修正モデルを提唱した」(pp.209-210)として、

「最終的には、『強い力』による束縛にも宇宙膨張が打ち勝って、すべての物質は、最小構成要素である素粒子にまで分解されてしまうと考えられています。この破局的なシナリオは『ビッグリップ』と呼ばれています。
 肝心なのはこっからです。ファントム入りのサイクリック宇宙では、このビッグリップが起こる直前に、宇宙のある領域だけが部分的に切り取られます。そして、その宇宙の切れ端が、次の宇宙となり、インフレーションで加速膨張し、揺らぎから構造の『種』が生まれ……」(p.210)

と語られます。
 第10章の3節目は「星は生物なのか」との見出しで、生物の定義を挙げた上で、

「ところで私は、生物ではないはずなのに、これらの定義にあてはまるものがあるような気がしているのです。それは、星です」(p.231)

と記されます。

上掲の
 松田卓也・二間瀬敏史、『時間の逆流する世界』、1987
も参照
 同じ著者による→こちらを参照:下掲の『物理学者、SF映画にハマる 「時間」と「宇宙」を巡る考察』、2021

ケイティ・マック、吉田三知世訳、『宇宙の終わりに何が起こるのか』、講談社、2021
原著は Katie Mack, The End of Everything (Astrophysically Speaking), 2020
宇宙について大まかに/ビッグバンから現在まで/ビッグクランチ 終末シナリオ その1 急激な収縮を起こし、つぶれて終わる/熱的死 終末シナリオ その2 膨張の末に、あらゆる活動が停止する/ビッグリップ 終末シナリオ その3 ファントムエネルギーによって急膨張し、ズタズタに引き裂かれる/真空崩壊 終末シナリオ その4 「真空の泡」に包まれて完全消滅する突然死/ビッグバウンス 終末シナリオ その5 「特異点」で跳ね返り、収縮と膨張を何度も繰り返す/未来の未来/エピローグなど、
368ページ。

 この本のことは知人が教えてくれました。
 相対論以後の物理学的宇宙論における宇宙の未来・終末像については、宇宙論全般についての本の中で触れられているものはおくとして、本頁で挙げたものの内、書名に出てきたものだけでも、これまで;

 杉本大一郎、『宇宙の終焉 熱的死かブラックホールか』、1978
 リチャード・モリス、『宇宙の運命 新しい宇宙論』、1982
 J.N.イスラム、『宇宙の未来はどうなるか』、1984
 ポール・デイヴィス、『宇宙最後の3分間』、1995
 フレッド・アダムズ+グレッグ・ラフリン、『宇宙のエンドゲーム 生命と物質 - 永遠に繰り返される「終焉」の物語』、2002
 吉田伸夫、『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』、2017

などがありました。また;

 ポール・ハルパーン、『輪廻する宇宙 - ニーチェからホーキングまで -』、1997
 ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック、『サイクリック宇宙論 ビッグバン・モデルを超える究極の理論』、2010
 横山順一、『輪廻する宇宙 ダークエネルギーに満ちた宇宙の将来』、2015
 マーチン・ボジョワルド、『繰り返される宇宙 ループ量子重力理論が明かす新しい宇宙像』、2016

なども挙げておきましょう。さらに;

 デニス・オーヴァバイ、『宇宙はこうして始まりこう終わりを告げる 疾風怒濤の宇宙論研究』、2000
 スティーヴン・W・ホーキング、『ホーキング、未来を語る』、2001
 ロジャー・ペンローズ、『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』、2014

あたりも加えてよいでしょうか? それぞれ重なる部分がありつつ、重点の置き場が変化しているのが興味深いところです。
 さて、戻って本書から、まず第2章で;

「あるいは、もっと正確にいうなら、もしもその数学がうまくいき、もう一つ別の、少し異なる仮定(たとえば、宇宙は完全に無限大ではないが、きわめて大きく、その端を知覚することはおそらくできないという仮定)もうまくいくが…(後略)…」(p.46)。

 また第4章で

「この『宇宙定数問題』の解決策として提案されたものの一つが、宇宙定数は私たちの観測可能な宇宙では小さいが、ずっと遠方ではさまざまに違った値である可能性があり、私たちがどこにいるかは偶然による、という仮説である」(p.138)。

 さらに第6章で

「真空崩壊がどこで起ころうが、そこには、真の真空の微小な泡が生じる。この泡の内部には、まったく異なる空間が含まれている。その空間では、物理学のプロセスが異なる法則に従っており、…(後略)…」(p.241)。

「宇宙のどの点も、それ自体の、つねに深まり続ける時間の球の中心であり、その球の最も外側は炎の殻で包まれている」(p.51)


「したがって、特異点というものはすべてを始動させたであろうものについての一つの仮説にすぎず、確実なことは何もいえない」(p.62)。

 また

「プランク時代とは、宇宙時間ゼロから約10
-43秒」までである。…(中略)…そして、誤解のないようにお断りしておくと、プランク時代以降のことがすべて説明できる(ヽヽヽ)わけではない一方、現在私たちには、プランク時代以前のことはいっさい説明できない(ヽヽヽヽ)」(pp.66-67)。

「特異点は空間のみならず時間の始まりでもあるので、それより『前』などないから」(p.62)。

 また

「特異点には情報交換のための時間は存在しなかったし(なぜならそれまで時間jはなかったから)…(後略)…」(p.73)。

 さらに、第4章で宇宙の熱的死死に関して、

「その時点以降は、宇宙の総エントロピーが増大することはありえず、きわめて現実的な意味で、時間の矢は消失してしまう」(p.165)。

「十分小さい尺度まで時空を拡大してみると、空間と時間は離散的な粒子のようにふるまうのだろうか? それとも、ひょっとすると、干渉しあう波動のようにふるまうのだろうか? ワームホールは存在するのだろうか? ドラゴンがいるのだろうか?? --まったくわからない」(p.65)。

 ちなみにドラゴンはもう1度、少し後に登場します;

「プランク時代のころ、理由はともかく重力は他の力と(ドラゴン、あるいは、そのころあった他の何かとも)統一されていたという信念が、物理学者のあいだに広まっている」(p.69)。

 第4章での宇宙の熱的死をめぐる議論の中で、

量子論的な(ヽヽヽヽ)尺度で、あるいは、それより大きな尺度でも十分長い時間を待てば、予測不可能なゆらぎが時折、系の一部をランダムに『エントロピーが低い状態』にシフトさせてしまうのである
…(中略)…宇宙の熱的死のあと、なんでも自然にパッと出現しうるなら、『別の宇宙』が出現してもいいのではないか?」(p.167)。

 この議論の延長で参照される〈ポアンカレの回帰定理〉とは、

「無限の長さの時間が使えるのなら、その系が取りうるどんな状態も必ず、しかも無限回、ふたたび取ることができる」(p.168)

 とのことで、これは上掲のビレンケン『多世界宇宙の探検』(2007)、テグマーク『数学的な宇宙』(2016)、そしてバロウ『宇宙論大全』(2013)での〈複製のパラドックス〉と同型の議論で、ここでもニーチェの『悦ばしき知識』が引用されています。あわせて→あちら(「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁、「xi. 個々の著述家など Ⅴ」中の「ニーチェ」の項)にも挙げておきましょう。
 〈ポアンカレの回帰定理〉については→「近代など(20世紀~) Ⅱ」の頁の「viii. 無限、その他」で挙げた鈴木真治、『巨大数』、2016、pp.40-42:第2章3「永劫回帰時間
および
 鈴木真治、「歴史的に観た巨大数の位置づけ」、『現代思想』、vol.47-15、2019.12:「特集 巨大数の世界 アルキメデスからグーゴロジーまで」、pp.87-88
も参照。
 ここからアンドレアス・アルブレヒトは、「()ジッター平衡状態(ヽヽヽヽヽヽヽヽ)」について、

「私たちの宇宙と、その中で起こるすべてのことは、宇宙定数だけを含みながら永遠に膨張する宇宙で生じたランダムなゆらぎを起源として,その結果生まれたと考えることができる」

 と論じたという(pp.169-170)。さらに敷衍すると、〈ボルツマン脳〉という概念が導かれます;

「宇宙全体が量子力学的なゆらぎによって真空から出現するのなら、たった一つの銀河…(中略)…、一つの恒星系、あるいは、1個の惑星のほうがいっそう出現しやすいだろう。
 実際、それよりもはるかに可能性が高いのが、ゆらぎによって真空から人間の脳がただ1個だけ出現することだ。…(中略)…
 『この、出現したならほとんど即座に量子ゆらぎによってふたたび真空へと戻る運命にある不運な脳は、宇宙全体よりもはるかに出現する可能性が高いので、私たちの宇宙を生み出すのにランダムなゆらぎを使いたければ、じつは私たちがすべてのことを脳内で想像しているだけなのだという可能性のほうがはるかに高いことを受け入れなければならない』」(p.173)。

 第5章で〈ビッグリップ〉の様子として、銀河の解体、惑星の破壊、原子の崩壊と進んできた最後に、

「そして最後の瞬間 - 空間の構造そのものが引き裂かれていく」(p.192)

の文でこの節が閉じられます。空間の構造が引き裂かれるというのがどういう状態を指すのかは、残念ながら説明されませんでした。上掲の佐藤文隆/R.ルフィーニ『ブラックホール 一般相対論と星の終末』(1976)で、ブラックホールの増加によって未来の宇宙では

「空間にもひびが入っていくのである」

という一文(p.273)が連想されます。

 第7章のエピグラフはお馴染み、『ハムレット』からの「胡桃の殻」の台詞でしたが(p.260→「バロックなど(17世紀)」の頁の「おまけ」参照)、2015年の重力波の検出について述べた後で、

「重力波は、私たちの宇宙の形状と起源についての新しい視点を提供し、宇宙の外側(ヽヽヽヽヽ)に何かが存在するかどうかを決定する可能性をもたらしてくれるかもしれないのである」(p.263)

と記し、〈大きな余剰次元〉の理論に関し、

「私たちの時空のうち、空間にあたる次元はすべて、三次元の『ブレーン』とよばれるものの中に閉じ込められている。それに対して、『大きな余剰次元』はその外側で、人間の限られた脳には数学的に概念化するほかない、なんらかの新しい方向(つまり次元)のなかに伸びている」(p.271)、

「私たちがいるブレーンの外側にある余剰空間ののことを『バルク(
bulk)』と呼び習わしている」(p.272)

と解説して、ニール・トゥロックらによる〈エキピロティック宇宙モデル〉に話を進めます。 少し上で並べたポール・J・スタインハートとニール・トゥロックの『サイクリック宇宙論 ビッグバン・モデルを超える究極の理論』(2010)を参照ください。なお
 ローリ・アン・ホワイトとケン・ウォートンの『ミックスト・シグナルズ』
というSF小説で、この宇宙モデルが用いられていたということです(p.275)。
 戻ってかの宇宙モデルにおける二つのブレーンには、

「『世界の端(エンド・オブ・ザ・ワールド)』という名のブレーンとして公式な論文に記されている」(p.278)

とのことです。ちなみに「訳者解説」で補足されていたように、本書では〈多宇宙説〉が詳しく取りあげられることはないものの(p.364)、〈ブレーンワールド〉説にからめて p.281 で、他に〈ランドスケープ〉説について pp.338-339、350-351 で言及されています。

 第7章ではニール・トゥロックらによる、

「ビッグバンは転換点にすぎないとする、まったく新しい宇宙モデル」(p.292)

 にも触れています;

「この『CPT対称性宇宙モデル』は、私たちの宇宙と、それを時間反転させた宇宙とが、ビッグバンの瞬間において、先端どうしが接触した二つの円錐のように接していると示唆する。最近の論文で彼らは、この描像を、『無から出現する、宇宙-反宇宙(つい)』とよぶ」(pp.292-293)。
 

高水裕一、『物理学者、SF映画にハマる 「時間」と「宇宙」を巡る考察』(光文社新書 1164)、光文社、2021
はじめに//
「時間」を巡る;タイムトラベルの可能性と限界 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ/過去に戻った捜査官に自由意志はあるのか 『デジャヴ』/「逆行」という新しいタイムトラベル 『TENET』/殺人マシンは5次元世界を旅してきたか 『ターミネーター』シリーズ/限りなく時が止まった世界を体感するには? 『HEROES』//
「宇宙」を巡る;宇宙に投げ出されたときの最後の移動手段 『ゼロ・グラビティ』/〝ファミコン〟で目指した月面着陸 『ファースト・マン』/火星で植物を栽培するもう1つの理由 『オデッセイ』/論文にもなったブラックホールのリアルな姿 『インターステラ-』/星間飛行に必須のアプリケーション 『スター・ウォーズ』シリーズ/宇宙人と交流するならマスクを忘れずに 『メッセージ』/「宇宙人の視力」と「恒星」の密接な関係 『V』//
おわりに、など、
216ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:上掲の『時間は逆戻りするのか』、2020

須藤靖、『宇宙は数式でできている なぜ世界は物理法則に支配されているのか』(朝日新書 849)、朝日新聞出版、2022
まえがき/
本書に登場する数式の鑑賞法/世界を支配する法則とは/宇宙観の変遷とニュートン理論/宇宙は一般相対論に支配されいるのか/宇宙最古の古文書に刻まれた暗号を数学で解読/ブラックホールと重力波で宇宙を見る/法則、数学、そして宇宙/
あとがき/参考文献など、
232ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲『不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?』、2019


野村泰紀、『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論』(講談社ブルーバックス B-2199)、講談社、2022
まえがき//
現在の宇宙;宇宙論の扱う宇宙/宇宙観を一変させる発見/ダークマター(暗黒物質)/ダークエネルギー(暗黒エネルギー)//
ビッグバン宇宙 Ⅰ - 宇宙開闢約0.1秒後「以降」;変化する宇宙/若い宇宙は見えている!/構造の形成/ビッグバン原子核合成//
ビッグバン宇宙 Ⅱ - 宇宙開闢約0.1秒後「以前」;さらに初期の宇宙/超初期の宇宙で起きたこと/ダークマター候補1「ウィンプ」/ウィンプの実験的探索/ダークマター候補2「アクシオン」/なぜ物質が反物質より多いのか//
インフレーション理論;初期の宇宙に残る謎/ビッグバン宇宙に残された謎を解く/原始揺らぎの生成/原始重力波//
私たちの住むこの宇宙が、よくできているのはなぜか;私たちの宇宙の全貌/光速とは何か/素粒子、その不思議な構造/本当に基本法則なのか?/真空のエネルギーの大いなる謎//
無数の異なる宇宙たち - 「マルチバース」;真空のエネルギー密度と「人間原理」/超弦理論、余剰次元、そしてたくさんの宇宙/生成される宇宙は永久に無数にある?/私たちの宇宙は泡宇宙なのか/ユニバースからマルチバースへ/マルチバースと観測//
エピローグ~私たちの宇宙の将来など、
264ページ。

 第1章第2節で宇宙の膨張について述べる時点では、

「この現象は、宇宙が何かより高い次元の空間に埋め込まれているということを意味しません」(p.24)

とのことです。
 第4章第1節では、宇宙が「ほぼ一様」である点に関し、

「どうせ一様でないならば、なぜ『全然一様でない』宇宙にはならず、『ほぼ一様な』宇宙になったのか」(p.127)

と記されています。逆に、「『全然一様でない』宇宙」とはどんなものなのでしょうか、気にならずにいません。
 第6章第1節ではワインバーグの多宇宙論にからめて、

「想像を絶するほど巨大な空間の中のいくつもの領域が、異なる真空のエネルギー値を持った異なる宇宙に見えるのかもしれませんし、異なった真空のエネルギー値を持つ宇宙が時間が経つにつれ繰り返し実現されるのかもしれません。もしくは、いくつもの宇宙が『パラレルワールド』のように並行して存在するという可能性だって考えられるでしょう」(p.199)

とありました。第2節での超弦理論に続いて、第3節で語られる〈永久インフレーション〉における〈泡宇宙〉は、

「時空がAの状態から始まったとすると、その中にいくつものBの『泡宇宙』ができ」(p.220)、

「Bの泡たちは広がっていくのですが、その間の空間」(同上)、

「Aの空間はBで埋めつくされることなく存在し続ける」(同上)

等と書かれている点からすると、3つの可能性の内第1のものにあたるようです。その際、

「負のポテンシャルエネルギー密度を持つ宇宙が、一つも泡宇宙を作れない前に潰れてしまうことはあり得ます」(p.222)

といった但し書きが挿入されたりもします。いずれにせよ「Aの空間」は先に引いた「何かより高い次元の空間」でなくともよい、地続きの3次元空間と見なしてよいものなのでしょうか?

 第6章第4節では、前著『マルチバース宇宙論入門』やビレンケン『多宇宙世界の探検』(2007)でも論じられていた、

「泡宇宙が小さく生まれて大きくなっていくことと、宇宙が生まれた瞬間からどこまでも同じように続く無限の大きさを持っていて常に一様であるということは、お互いに矛盾しないのです!」(p.225)

として、

「1970年代後半から1980年にかけて、ハーバード大学のシドニー・コールマンらは、泡宇宙が時空でどのように生成されるのかを解析しました。その内容を紹介しましょう」(p.229)

と、ペンローズ図を用いて、

「なぜ泡の中と外から見た場合に、時間の取り方が変わるのか」(p.232)

が解説されるのですが、個人的にはやはり、うまく消化できないでいます。ともあれ、

「泡宇宙の中の観測者から見たときの『宇宙が始まる前には何があったのか』という問いと、泡宇宙の外の観測者から見たときの『宇宙の外には何があるのか』という問いは、同じなのです。そしてこの問いに対する答えは、私たちの宇宙がその中に泡として生じる別の宇宙、『親宇宙』です」(pp.238-239)

と答えるのでした。
 同じ著者による→上掲の『マルチバース宇宙論入門』、2017

白井仁人、『量子力学の諸解釈 パラドクスをいかにして解消するか』、森北出版、2022
はじめに//
プロローグ;実在とは何か/量子力学と哲学/COLUMN 「心の哲学」と「量子力学の哲学」//
量子力学のパラドクス;第1のパラドクス - 粒子波動二重性 -/第2のパラドクス - 波動関数の収縮 -/第3のパラドクス - NOGO定理/COLUMN 日本の科学者たちの考え方/参考文献//
実在主義的な解釈;ド・ブロイの先導波解釈、ボームの軌跡解釈/確率過程解釈/統計解釈、アンサンブル解釈/交流解釈/参考文献//
観測の理論;観測理論、デコヒーレンス理論/多世界解釈/無矛盾歴史アプローチ/GRW理論/参考文献//
経験主義的な解釈;量子論理、様相解釈/コペンハーゲン解釈、量子ベイズ主義/参考文献//
エピローグ;諸解釈の特徴/あなたはどの道を選ぶか/量子力学と実在/COLUMN 量子力学と哲学と就職/参考文献//
付録A NOGO定理;不確定性関係/ベルの定理/フォン・ノイマンのNOGO定理/コッヘン-シュペッカーの定理/参考文献//
付録B 全体論的なアンサンブル解釈;シュレーディンガー方程式のアンサンブル解釈/理論形式のアンサンブル解釈/パラドクスの解消/決定論、非決定論、超決定論/参考文献//
おわりに、など、
220ページ。

 第2章2の「確率過程解釈」では、

「その確率過程は(通常の過去から未来へ向かう過程だけでなく)、未来から過去へ向かう過程も含むため、方程式が時間対称となる」(p.50)。

「シュレーディンガー(E.Schrödinger)はシュレーディンガー方程式を、時間前向きの拡散方程式(分布が過去から未来へと拡散する)と時間後ろ向きの拡散方程式(未来から過去へと拡散する)の組み合わせで考えようとしたことがあった」(p.51)

として、ネルソン(E. Nelson)の理論(1966;pp.52-58)や長澤正雄の理論(2012;pp.58-62)が取りあげられています。

「長澤理論では未来が過去に影響を与えうるのである」(p.63)。

「長澤理論は図2.10に示したように過去が未来に依存し、未来が過去に依存する理論となっている」(p.64)。

 ちなみに、8世紀インドの仏教認識論者プラジュニャーカラグプタの〈未来原因説〉および20世紀イギリスの分析哲学者マイケル・ダメットによる〈逆向き因果〉について
こちらを参照:「仏教」の頁の「ii. アビダルマの自然学、刹那滅論など」で挙げた護山真也「仏教認識論の射程 - 未来原因説と逆向き因果」(2020)

 第3章2の「多世界解釈」には、

「多世界解釈にはいろいろなバージョンがある。ドウィットやバイドマン(L. Vaidman)は観測のたびに状態(世界)が分岐すると考えたが(図3.3(a))、ドイチ(D. Deutsch)は無数の世界が分岐前から存在していて、その数は不変だと考えた(図(b))。つまり、平行世界(パラレル・ワールド)である。さらに最近では、時間逆行型の多世界解釈についても議論されている」(p.101)

とありました。バイドマンの多世界解釈について、

「分岐は観測者M1の場所からM1→M2→M3と徐々に広がっていくのではなく、全世界的に瞬時に起こる。観測の相互作用は局所的に起こるが、世界の分岐は非局所的に起こると考える」(p.105)。

 第3章4の「GRW理論」は

「波動関数の収縮が自発的に起こる(観測と関係ない)とする理論」(p.121)

で、ジラルディ、リミニ、ウェーバーによって提唱されましたが(1986)、

「その後、2種類の発展版へと進化した。その第1は、『物質密度存在論(matter density ontology)』に基づく理論である。…(中略)…この解釈では『物質密度場(matter density field)』という場が空間の中に存在すると考える。
…(中略)…GRW理論の第2の発展版は『閃光存在論(flash ontology)』に基づく理論である。…(中略)…閃光存在論は"flash(閃光)"とよばれる時空中のイベントによって構成され、数学的には時空中の点で記述される。閃光存在論に於いて物質は、世界線をもつ粒子でもなければ、物質密度存在論のような連続分布でもない。図3.6に示すような多数の離散的な点(閃光)である」(pp.124-125)。

「物質密度存在論では物質密度場 m(x, t) が存在物(beable)の本質だと考える。そのような場が本当に存在し、しれが急激に収縮すると考える。したがって、この理論では、物質の本質は『波』である。
 次に、閃光存在論では閃光が物質の本質だと考える。時空内に多数の閃光があり、その各点で収縮が起こる。そして、その閃光(点)の連なりが物質だと考える。閃光(flash)は粒子(particle)ではない。粒子は時空内の世界線で描かれるが、閃光は時空内の点であり、その多数の集まり(連なり)が物質になる」(p.126)。

 「エピローグ」には次のくだりがありました;

「経験主義に近い人たちはいつも数学的な道具を組み合わせながら量子現象を扱い、あたかもヒルベルト空間でものごとが起こっているようなイメージで話をする。しかし、量子現象はやはり実在世界の中で起こっているのだと思う」(p.162)、

「ペレスは次のように述べている。

 量子現象はヒルベルト空間ではなく、実験室で起きている。
   (A.ペレス(大場一郎ほか訳)、『量子論の概念と方法』、丸善(2001)、p.374)」(p.163)

和田純夫、『量子力学の多世界解釈 なぜあなたは無数に存在するのか』(ブルーバックス B2219)、講談社、2022
はじめに/原子の世界/量子力学の誕生/光は波か粒子か/波の収縮と確率 - コペンハーゲン解釈/状態の共存から多世界解釈へ/同時進行する複数の状態/コラム 多世界解釈とは何か - 中間的な「まとめ」とっして/ボーア=アインシュタイン論争からエンタングルメントへ/光子の干渉実験/デコヒーレンス - 干渉性の喪失/世界の分岐/確率則/多世界解釈の世界像など、
268ページ。


 同じ著者による上掲の『量子力学が語る世界像』(1994)を
「出版してからも解釈問題についての議論は続いてきたが、いまだに決着していない。私自身の考えは基本的には変わっていないのだが、知識も増えて整理された部分、その後に行われた実験によって強められた部分、そして批判を受けて緻密化が必要になった部分などがある。そして2年前、それらをまとめて『量子力学の解釈問題:多世界解釈を中心として』(サイエンス社)という本を出版した。これは数式の入った、ある程度の知識をもった人のための本である。それをふまえて、より幅広い読者に向けて、ブルーバックスの前著を全面的に改訂したのが本書である。
 前著をもとにして書きはじめたが、結局、半分ほどは新たに書きおろすことになった。また、もとの説明を残した部分も、叙述にはかなり手を入れることになった」(pp.3-4)
とのことです。


真貝寿明、『宇宙検閲官仮説 「裸の特異点」は隠されるか』(ブルーバックス B2223)、講談社、2023
はじめに//
一般相対性理論とは;ニュートンが完成させた力学/2つの相対性理論/コラム アインシュタインのノーベル賞受賞//
アインシュタイン方程式の解;アインシュタイン方程式の厳密解/ブラックホールの解/膨張宇宙の解/コラム  相対性理論のもう一つの結論「重力波」//
特異点定理;特異点を定義する/特異点定理への準備/特異点発生する条件/コラム ペンローズとエッシャー//
宇宙検閲官仮説;裸の特異点と宇宙検閲官仮説/弱い宇宙検閲官仮説をめぐって/強い宇宙検閲官仮説をめぐって/コラム タイムトラベルの論文を書いたソーン//
特異点定理と宇宙検閲官仮説の副産物;ブラックホールの面積増大則/ペンローズ不等式/ブラックホールの唯一性定理/ブラックホール熱力学/現在の研究の潮流//
あとがき;ホーキングとソーンの賭け/一般相対性理論はどこまで正しいか、など、
256ページ。

 第4章-3「強い宇宙検閲官仮説をめぐって」で、ブラック・ホールの特異点に関し、

「強い宇宙検閲官仮説の主張するところは、そもそも現実の時空には裸の特異点は存在しないという予想でした。これは、裸の特異点が存在すれば、それは私たちの時空からは切り離されているとも解釈できます」(pp.182-183)

とありました。また「コーシー地平面(初期条件がもたらす因果的領域の境界)」(p.183)の

「不安定性は時空構造を歪めますが、時空を切り裂くほどのものではなく…(後略)…」(p.184)

という時、「時空を切り裂く」とはどんなイメージなのか、気になるところです。
 第5章-5「現在の研究の潮流」では、超弦理論とループ量子重力理論に続いて、〈ホログラフィ原理〉が紹介されるのですが(pp.223-226)、やはり消化できずにいます。
 その後は〈ブレーンワールド〉の話です。p.227 図5-4 でブレーン(4次元時空)と他のブレーンとの間を占める「バルク(余剰空間)」のことがとても気になります。
 次の「高次元ブラックオブジェクト」なる見出しのところでは、

「5次元時空では無限に細長い、紐のようなブラックホールが存在できて、ブラックストリングと呼ばれています。しかし、ブラックストリングは長波長のゆらぎに対して不安定であることが以前から知られていました」(p.230)、

「理論的な解析を進める研究によると、時空の次元が13次元を超えると、この不安定性が消えるようだという話もあります。
 高次元では空間の自由度が増えるために、さまざまな形のブラックホールが存在することもわかっています。5次元ではドーナツ型の地平面をもつブラックリングが存在します」(同上)、

「さらに別の解として、中心にブラックホールがあってそのまわりにドーナツ型のブラックリングがあるもの(ブラックサターン、サターンは『土星』の意味)、リングの外側にさらにリングがあるもの、などなど、奇妙な形のブラックホール解が存在することもわかっています。これらをすべてまとめて、ブラックオブジェクトと呼ぶようにもなりました」(pp.230-231)

と、これまで知らなかった、あるいは頭に刻まれていなかった面白そうな話題に触れていました。さらに、

「2019年になって、アルムヘイリ・ハートマン・シャグーリアン・タジディーニの4人は、ファイウンマンの発案した経路積分という手法を用いて、量子論的な時空での可能な重ね合わせをすべて考えると、複数のブラックホールにホーキング放射を加え合わせた時空では、ブラックホール間を結ぶワームホールの生成確率が高くなることを報告します。彼らは、ブラックホール内部が他のブラックホールとつながる部分を『アイランド』と呼びました」(pp.233-234)。
 

おまけ

 〈シュレーディンガーの猫〉の発案者による

エルヴィン・シュレーディンガー、『自然とギリシャ人 原子論をめぐる古代と現代の対話』、1991

 は「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」のページの「v. ソークラテース前派(ソクラテス前派)、含む;エピクーロス派」の項で挙げました。

 また「バロックなど(17世紀)」のページの「ii. ケプラー(1571-1630)など」の項では

W.パウリ、「元型的観念がケプラーの科学理論に与えた影響」、C.G.ユング、W.パウリ、『自然現象と心の構造 非因果的連関の原理』、1976

 を挙げましたが、パウリについてはまた;

アーサー・I・ミラー、阪本芳久訳、『137 物理学者パウリの錬金術・数秘術・ユング心理学をめぐる生涯』、草思社、2010
原著は Arthur I. Miller, Deciphering the Cosmic Number. The Strange Friendship of Wolfgang Pauli and Carl Jung, 2009
プロローグ/ユングとユング心理学の生い立ち/若きパウリの栄光と挫折/ユング心理学と錬金術の深い関係/パウリの排他原理と「ジキル博士とハイド氏」/3と4の戦い - 錬金術と近代科学の夜明け/パウリとハイゼンベルク - 量子物理学の大躍進/チューリヒでの新生活がもたらしたもの/パウリの夢を分析し、治療する/曼荼羅と分析の終わり/物理学と心理学の融合を追い求めて/2人の共同研究の成果/3から4への移行/パウリの昨日への道/CPT定理の発見とパウリの夢/謎めいた数、137/エピローグ パウリとユングが遺したものなど、
480ページ。


アラン・ライトマン、浅倉久志訳、『アインシュタインの夢』(ハヤカワepi文庫 ラ-1-1 17)、早川書房、2002
原著は Alan Lightman, Einstein's Dream, 1993
 邦訳は1993年刊本の文庫化
 「本書は、特殊相対性理論の論文完成前の約2ヶ月半、時間の概念にとりつかれていたアインシュタインが夜ごと見たかもしれない(ヽヽヽヽヽヽヽヽ)さまざまな時間に関する夢を、30篇のショート・ショート形式で配列し、若き日のアインシュタインが登場するプロローグとエピローグとインタールードで全体をまとめあげた、風変わりな小説である」(訳者あとがき、pp.156-157)。

 同じ著者による→こちらを参照:上掲のホーキング、キップ・S・ソーン、ライトマン他、林一訳、『時空の歩き方 時間論・宇宙論の最前線』、2004
 
 美術の領域から;

 クプカ 《宇宙の春 Ⅰ》 1913-14
クプカ《宇宙の春 Ⅰ》、1913-14年

* 画像をクリックすると、拡大画像とデータが表示されます。
 音楽方面から;

コスモス・ファクトリー、『ブラックホール』、1976(1)

 3枚目となるA面1曲目のタイトル・チューン。
1.ヌメロ・ウエノ、たかみひろし、『ヒストリー・オブ・ジャップス・プログレッシヴ・ロック』、マーキームーン社、1994、pp.97-98。→こちらも参照:「怪奇城の外濠 Ⅲ」の頁の「おまけ

Can, Soon over Babaluma, 1974(2)

 6枚目のB面2曲目というか後半が
"Quantum Physics"、8分33秒。
2.  『ユーロ・ロック集成』、マーキームーン社、1987/90、p.116。
 『ジャーマン・ロック集成 ユーロ・ロック集成2』、マーキームーン社、1994、p.52。
 明石政紀、『ドイツのロック音楽 またはカン、ファウスト、クラフトワーク』、水声社、1997、pp.74-76。
 小柳カヲル、『クラウトロック大全』(ele-king books)、Pヴァイン、2014、p.23。
 松山晋也監修・編集、『カン大全 - 永遠の未来派』(別冊ele-king)、Pヴァイン、2020、p.127。
 同じアルバムから→そちら:「アメリカ大陸など」の頁の「おまけ」や、あちら:『血みどろの入江』(1971)の頁の「おまけ」、
 カンのアルバムから→ここ:「原初の巨人、原初の獣、龍とドラゴンその他」の頁の「おまけ」や、そこ:「中国 Ⅱ」の頁の「おまけ」、
 メンバーだったホルガー・シューカイのアルバムから→あそこ:「イラン」の頁の「おまけ」も参照
 

Rush, A Farewell to Kings, 1977(邦題:ラッシュ『フェアウェル・トゥ・キングス』)(3)

 5枚目の6曲目、元のLPではB面4曲目というか後半が
"Cygnus X-1"(「シグナス X-1 第1巻『航海』」)、10分21秒。
3.舩曳将仁監修、『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック DISC GUIDE SERIES #039』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2009、p.31。
 『ラッシュ その軌跡と栄光』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2021、pp.58-59。
 同じアルバムから→こちらを参照:『市民ケーン』(1941)の頁の「おまけ
  
 その続きが;

Rush, Hemispheres, 1978(邦題:ラッシュ『神々の戦い』)(4)

 6枚目のA面全てが
"Cygnus X-1 Book II. Hemispheres"(「シグナス X-1 第2巻『神々の戦い』」)、18分4秒。6部構成で
"I. Prelude"(「プレリュード」)、4分29秒、
"II. Apollo Bringer of Wisdom"(「アポロ」)、2分30秒、
"III. Dionysus Bringer of Love"(「ディオニソス」)、4分36秒、
"IV. Armageddon The Battle of Heart and Mind"(「アルマゲドン」)、2分55秒、
"V. Cygnus Bringer of Balance"(「シグナス」)、5分2秒、
"VI. The Sphere A Kind of Dream"(「天球」)、1分6秒。 
4.舩曳将仁監修、『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック DISC GUIDE SERIES #039』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2009、p.31。
 『ラッシュ その軌跡と栄光』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2021、pp.60-61。
 さらに; 

Rush, Permanent Waves, 1980(邦題:ラッシュ『パーマネント・ウェイブス(永遠の波)』)(5)

 7枚目の6曲目、元のLPではB面3曲目というか後半が
"Natural Science"(「自然科学」)、9分17秒。3部構成で
"I. Tide Pools"(「潮だまり」)、2分19秒、
"II. Hyperspace"(「超空間」)、2分48秒、
"III. Permanent Waves"(「永遠の波」)、4分10秒。 
5.舩曳将仁監修、『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック DISC GUIDE SERIES #039』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2009、p.31。
 『ラッシュ その軌跡と栄光』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2021、pp.62-63。
 同じアルバムから→こちらを参照:「階段で怪談を」の頁の「文献等追補」の内「その他、フィクションから」 
  

News from Babel, Letters Home, 1986(6)

 2枚目のB面1曲目が
"Dark Matter"、4分20秒。 
6.『オール・アバウト・チェンバー・ロック&アヴァンギャルド・ミュージック』、マーキー・インコーポレイティド株式会社、2014、p.34。
 →こちらも参照:「近代など(20世紀~ ) Ⅱ」の頁の「おまけ
2014/05/01 以後、随時修正・追補
近代など Ⅱ
数学系、哲学系、神秘学系のものなど
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