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xxi 個々の著述家など-海外 Ⅱ(20世紀後半等)

 これまで以上に中身を忘れたものが多くなりますが、おいおい補填するということで、とりあえず;

xxi. 個々の著述家など-海外 Ⅱ(20世紀後半等)

レイ・カミングス(1887-1957  マレイ・ラインスター(1896-1975 L.スプレイグ・ディ・キャンプ(1907-2000)
&M・フレッチャー・プラット(1897-1956
エドモンド・ハミルトン(1904-1977  クリフォード・D・シマック(1904-1988  エリック・F・ラッセル(1905-1978   フレドリック・ブラウン(1906-1972  
ロバート・A・ハインライン(1907-1988  
フリッツ・ライバー.(1910-1992 A・E・ヴァン・ヴォート(ヴォークト)(1912-2000 コードウェイナー・スミス(1913-1966  R・A・ラファティ(1914-2002  
M・K・ジョーゼフ(1914-1981  フレッド・ホイル(1915-2001  チャールズ・L・ハーネス(1915-2005  アーサー・C・クラーク(1917-2008 
デイヴィッド・I・マッスン(1917-2007  シオドア・スタージョン(1918-1985     フィリップ・ホセ・ファーマー(1918-2009 フレデリック・ポール(1919-2013
アイザック・アシモフ(1920-1992   スタニスワフ・レム(1921-2006   ジェイムズ・ブリッシュ(1921-1975  カート・ヴォネガット・ジュニア(1922-2007
イタロ・カルヴィーノ(1923-1985   キース・ローマー(1925-1993   ポール・アンダースン(1926-2001  フィリップ・K・ディック(1928-1982  
コリン・キャップ(1928-        
リン・カーター(1930-1988   J・G・バラード(1930-2009  ジョン・ブラナー(1934-1995   ハーラン・エリスン(1934-2018)
[→こちら(「ロマン主義、近代など」の頁中の「ハイネと〈流謫の神々〉その他」の項と、
そちら(「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の「おまけ」)]
ジョン・G・クレイマー(1934-    ロバート・シルヴァーバーグ(1935-    ロジャー・ゼラズニイ(1937-1995  バリントン・J・ベイリー(1937-2008 
ラリイ・ニーヴン(1938-   マイクル・ムアコック(1939-       
トーマス・M・ディッシュ(1940-2008   J・M・G・ル・クレジオ(1940-    ジェイムズ・P・ホーガン(1941-2010   グレゴリイ・ベンフォード(1941-   
アン・ライス(1941-    サミュエル・R・ディレイニー(1942-   ポール・プロイス(1942- クリス・ボイス(1943-1999  
クリストファー・プリースト(1943-   イアン・ワトスン(1943-   デイヴィッド・アンブローズ(1943-   ヴァーナー・ヴィンジ(1944-   
ルーディ・ラッカー(1946- )[「Ⅱ 数学系のものなど」の頁の「v.」]
  
ジョン・ヴァーリイ(1947-    タニス・リー(1947- ウィリアム・ギブスン(1948-   
ナンシー・クレス(1948- テリー・プラチェット(1948-2015      
デイヴィッド・ブリン(1950- グレッグ・ベア(1951- ダグラス・アダムス(1952-2001)
およびオーエン・コルファー(1965-
 
デイヴィッド・ジンデル(1952-  
クライヴ・バーカー(1952-   キム・スタンリー・ロビンスン(1952-    ロバート・チャールズ・ウィルスン(1953-   ロバート・リード(1956-  
スティーヴン・バクスター(1957-   ピーター・ワッツ(1958-   マイケル・スコット(1959- )
[「ロマン主義、近代など」の頁中の「ハイネと〈流謫の神々〉その他」の項
 
 
メリッサ・スコット(1960-    ロバート・J・ソウヤー(1960-   ニール・ゲイマン(1960- )
[「北欧、ケルト、スラヴなど」の頁中の「おまけ」]
グレッグ・イーガン(1961-  
J・グレゴリイ・キイズ(1963-   アレステア・レナルズ(1966-   テッド・チャン(1967-   
    その他(アンソロジー)  その他(バンド・デシネから) 

レイ・カミングス(1887-1957);

レイ・カミングス、斉藤伯好訳、『宇宙の果てを超えて』(ハヤカワ文庫 SF 9)、早川書房、1970
原著は Ray Cummings, Beyond the Stars, 1928

 本作の設定に連なるものとして、次も参照;

山本弘、『トンデモ本? 違う、SFだ! RETURNS』、2006、pp.20-23:「電子の上を歩いてみたら ジェイムズ・ブリッシュ『恒星への抜け道』」

 →こちらでも挙げました;「仏教 Ⅱ」の頁の「iii. 華厳経、蓮華蔵世界、華厳教学など」の末尾あたり

…………………

マレイ・ラインスター(1896-1975)

マレイ・ラインスター、冬川亘訳、「時の脇道」、山本弘編、『火星ノンストップ ヴィンテージSFセレクション 胸躍る冒険【篇】』、早川書房、2005、pp.65-158
原著は Murray Leinster, "Sidewise in Time", 1934

 「実はパラレル・ワールドの概念を世界で最初に提示したのは、この作品ではないかと言われている」とのこと(編者解題、p.66)。
pp.97-100、118-119、148-150 で設定に関する議論が記されています。


 ラインスターに関し、次も参照;

山本弘、『トンデモ本? 違う、SFだ!』、2004、pp.76-95:「インターミッション 報いなきSF作家に花束を マレイ・ラインスターの魅力」

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L.スプレイグ・ディ・キャンプ(1907-2000)&マレイ・フレッチャー・プラット(1897-1956)

 前者については『プラトンのアトランティス』(1954/70)を別のところで挙げましたが;

ディ・キャンプ&プラット、関口幸男訳、『神々の角笛 ハロルド・シェイ 1』(ハヤカワ文庫 FT 33)、早川書房、1981
原著は L. S. De Camp and Fletcher Pratt, The Roaring Trumpet, 1940

 舞台は北欧神話の世界

  同、  『妖精郷の騎士 ハロルド・シェイ 2』(ハヤカワ文庫 FT 37)、早川書房、1982
原著は L. S. De Camp and Fletcher Pratt, The Mathematics of Magic, 1940

 舞台はスペンサーの『妖精の女王』の世界

  同、  『鋼鉄城の勇士 ハロルド・シェイ 3』(ハヤカワ文庫 FT 49)、早川書房、1983
原著は L. S. De Camp and Fletcher Pratt, The Castle of Iron, 1941

 舞台はアリオストの『狂えるオルランド』の世界

  同、  『英雄たちの帰還 ハロルド・シェイ 4』(ハヤカワ文庫 FT 52)、早川書房、1983
原著は L. S. De Camp and Fletcher Pratt, Wall of Serpents, 1953, The Green Magician, 1954
蛇の壁/青くさい魔法使い

 舞台は前者が『カレワラ』、後者がアイルランド神話の世界
 →1と4はこちらにも挙げておきます:「北欧、ケルト、スラヴなど」の頁の「おまけ


 ちなみに、このコンビの邦訳は他に;

ディ・キャンプ&プラット、浅羽莢子訳、『妖精の王国』(ハヤカワ文庫 FT 20)、早川書房、1980
原著は L. S. De Camp and Fletcher Pratt, Land of Unreason, 1942

 シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を踏まえたもの
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エドモンド・ハミルトン(1904-1977);

エドモンド・ハミルトン、中村融編訳、『フェッセンデンの宇宙』(奇想コレクション)、河出書房新社、2004
フェッセンデンの宇宙(1937)/風の子供(1936)/向こうはどんなところだい?(1952)/帰ってきた男(1935)/凶運の彗星(1928)/追放者(1943)/翼を持つ男(1938)/太陽の炎(1962)/夢見る者の世界(1941)など、
360ページ。

 とりわけ「フェッセンデンの宇宙」。アニメ『セーラームーン』シリーズの第5期、『セーラースターズ』(1996-1997)の2回目に、「フェッセンデンの宇宙か」という台詞がありました。その後「子供の頃読んだSFで…」と説明されるのでした。
 「追放者」の中に別の宇宙の存在に関する思弁を述べる箇所があります(p.202)。「編訳者あとがき」で「『胡蝶の夢』テーマの変種」(p.354)とされる「夢見る者の世界」にも通じるところがある。
 「太陽の炎」に登場する「星の子供たち」のイメージも興味深いものでした。こちらは「風の子供」での活ける風たちに連なると見なせるでしょうか。

エドモンド・ハミルトン、中村融編、『反対進化』(創元SF文庫 637 03)、東京創元社、2005
アンタレスの星のもとに(1933)/呪われた銀河(1935)/ウリオスの復讐(1935)/反対進化(1936)/失われた火星の秘宝(1940)/審判の日(1946)/超ウラン元素(1948)/異境の大地(1949)/審判のあとで(1963)/プロ(1964)など、
400ページ。

 「呪われた銀河」は「編者あとがき」にあるように、膨張宇宙説を題材にしつつ、空間自体の膨張を、中心となるある一点からの諸銀河の拡散と取り違えるという大きな誤解を犯しており(pp.395-396)、当時そうした誤解がありえた点が逆に興味深かったりもします。それでいて、
「科学的な知見をバネに宇宙の成り立ちを解明しようとしたSF的/神話的想像力には敬服するほかない」(同、p.396)
という編者の見解にも納得させられるのでした。「反対進化」において〈進化〉が〈退化〉に反転させられるように、「呪われた銀河」では生命が疾病に逆転される点(半村良『妖星伝』が連想されます)、またその創造主が流刑に処せられる点など、マニ教やルーリア主義も含んだ意味でのグノーシス主義的な視角を読みとれなくもないかもしれません。
 他方、そこでの〈エネルギー生命体〉、「反対進化」での〈アークター人〉などのイメージは、「太陽の炎」での〈星の子供たち〉や「超ウラン元素」における〈超ウラン生命〉とあわせ、ハミルトンの想像力におけるある種の超越者の在り方を物語っているのでしょうか。もっとも「フェッセンデンの宇宙」における創造主同様、それら超越者は何らかの限界に制約されている。〈エネルギー生命体〉や〈アークター人〉が太古の存在であることからして、ハミルトンの主な発表場所の一つが『ウィアード・テイルズ』であったことを思えば(1926-48年、「編者あとがき」、p.399)、直接の接触があったかどうかは詳らかにしませんが、同時期にやはり同誌を活動の中心の一つとしていたラヴクラフトなどによるクトゥルー神話との共通点を認められなくもないかもしれません。
 この他「異境の大地」では、時間の速度という認識の枠組みを転換することで、異世界などではなくこの世界がこの世界のまま、その相貌をまったく変えてしまうというヴィジョンも興味深いものでした。

エドモンド・ハミルトン、中村融編、『眠れる人の島』(創元SF文庫 637 04)、東京創元社、2005
蛇の女神(1948)/眠れる人の島(1938)/神々の黄昏(1948)/邪眼の家(1936)/生命の湖(1937)など、
400ページ。

 上掲『反対進化』がSF傑作集なのに対し、本書は「幻想怪奇傑作集」(「編者あとがき 幻想怪奇作家としてのハミルトン」、p.395)。
 「蛇の女神」はバビロニアの発掘現場を舞台に、ティアマトとマルドゥクの対立が背景になっています。クトゥルー神話風と見なせなくもない。
 「神々の黄昏」はタイトルどおり北欧神話のラグナロクの秘話。その中で二つの世界の重ね合わせについて擬似科学的な説明がなされます(p.106)。
 「眠れる人の島」については、「ハミルトンのファンタジーには夢をテーマにしたものが多いが、本篇はその代表格」とのこと(同上、p.403)。上掲の「夢見る者の世界」ともまた違った扱いがなされます。
 「生命の湖」では地球の生命の始源に関わるテーマが扱われ、「典型的なメリット流の秘境冒険譚」(同上、p.405)ですが、主人公とチームを組む探検隊のメンバーたちの各末路が泣かせます。やはりクトゥルー神話風とも見なせます。

エドモンド・ハミルトン、安田均訳、『虚空の遺産』(ハヤカワ文庫 SF 459)、早川書房、1981
原著は Edmond Hamilton, The Haunted Stars, 1960

 月で3万年前の遺跡が発見され、そこで用いられていた言語がシュメール語と共通点を持っていたことから、一方で地球の人類の起源が3万年前月に植民したアルタイル第三惑星リンの民にあること、その月基地が別の勢力によって滅ぼされたことが判明、他方で超光速航法が復元されます。いつの間にやら超空間を経てリンにやって来た地球の探検隊は、現在のリンの民に出会うとともに、「星海の殿堂」という巨大な遺跡を訪れることになる。
 宇宙論的といえるかどうかはさておき、かなりの大風呂敷であるとは見なせるでしょう。最後には、上でも触れたようなある種の超越者との出会いが待っているのでした。
…………………

クリフォード・ドナルド・シマック(1904-1988);

クリフォード・D・シマック、団精二訳、『大宇宙の守護者』(ハヤカワ文庫 SF 156)、早川書房、1975
原著は Clifford D. Simak, Cosmic Engineers, 1950
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エリック・フランク・ラッセル(1905-1978);

エリック・F・ラッセル、矢野徹訳、『超生命ヴァイトン』(ハヤカワ・SF・シリーズ 3064)、早川書房、1964
原著は Eric Frank Russell, Sinister Barrier, 1943

 山田正紀の『神狩り』(1975)を触発したということで挙げておきます→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「山田正紀」の項。
人類家畜説の古典で、後のコリン・ウィルソン『精神寄生体』(1967)にも通じているようです。
 ちなみにラッセルは「まえがき」で、発想源の一つとしてチャールズ・フォート(1874-1932)を挙げています(pp.6-7)。フォートについてはラヴクラフトも言及していました(松井克弘、「超自然におけるラヴクラフト」(1984)、pp.200-202、東雅夫、『新訂 クトゥルー神話事典』(2001)、pp.186-187。原田実「現代オカルティズムとラヴクラフト」(2002)、pp.770-771、p.782註17。)

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フレドリック・ブラウン(1906-1972);

フレドリック・ブラウン、稲葉明雄訳、『発狂した宇宙』(ハヤカワ文庫 SF 222)、早川書房、1977
原著は Fredric Brown, What Mad Universe, 1949
…………………

ロバート・アンスン・ハインライン(1907-1988);

ロバート・A・ハインライン、矢野徹・他訳、『輪廻の蛇 ハインライン傑作集 2』(ハヤカワ文庫 SF 487)、早川書房、1982
原著は Robert A. Heinlein, The Unpleasant Profession of Jonathan Hoag, 1959
ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業(1942)/象を売る男(1957)/輪廻の蛇(1959)/かれら(1941)/わが美しき町(1949)/歪んだ家(1941)など、
358ページ。

 「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」については、こちらの末尾でふれました
 →「時よ止まれ、おまえは美しいのか? 絵と映像のA感覚」、『液晶絵画』展図録、2008 [ < 三重県立美術館のサイト
 また→そちらでも少し触れました(スタージョン「昨日は月曜日だった」について/本頁下掲の「スタージョン」の項)
 その他、「輪廻の蛇」はタイム・パラドックス・テーマ( ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『パラレルワールド』、2006、pp.173-174 でも引きあいに出されていました)、
 「歪んだ家」は多次元テーマの歴史的作品(→あちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅱ」の頁の「vi. 次元など」)


 タイム・パラドックスものということでは、また

ロバート・A・ハインライン、稲葉明雄訳、「時の門」、『時の門 ハインライン傑作集 4』(ハヤカワ文庫 SF 624)、早川書房、1985
原著は Robert A. Heinlein, "By His Bootstraps", 1941

 この作品については;

広瀬正、「『時の門』を開く」(1963)、『タイムマシンのつくり方 広瀬正・小説全集 6』(集英社文庫 141 F)、集英社、1982
…………………

フリッツ・ライバー.(1910-1992)については、

 ラヴクラフトを論じた


怪奇小説のコペルニクス」(1949)

ブラウン・ジェンキンとともに時空を巡る」(1963)

 を挙げていますが、東雅夫『新訂 クトゥルー神話事典』(2001、pp.399-400)はクトゥルー神話関連の小説として、

フリッツ・ライバー、後藤敏夫訳、「アーカムそして星の世界へ」、『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー 4』、青心社、1989、pp.305-323
原著は Fritz Leiber, "To Arkham and the Stars", 1966

 および

フリッツ・ライバー、深町真理子訳、『闇の聖母』(ハヤカワ文庫 SF 361)、早川書房、1979
原著は Fritz Leiber, Our Lady of Darkness, 1977

 を挙げています。

 またSFの領域から;


フリッツ・ライバー、青木日出夫訳、『ビッグ・タイム』(サンリオSF文庫 1-A)、サンリオ、1978
原著は Fritz Leiber, The Big Time, 1961

フリッツ・ライバー、永井淳訳、『放浪惑星』(創元推理文庫 625-1)、東京創元社、1973
原著は Fritz Leiber, The Wanderer, 1964
…………………

アルフレッド・エルトン・ヴァン・ヴォート(ヴォークト)(1912-2000)が亡くなったとの報を見た時、次のような文章を認めたことがあったりしました;

△月△日
ヴァン・ヴオークトが没した。とはいえ、手もとに残っていた文庫本を何冊かひっばりだしてみても、どんな筋だったかさっぱり憶えていない。ただ、設定でやたら大風呂敷をひろげる癖があり、科学的なり存在論的な概念も、勿体ぶるわりにはけっこう薄っぺらだったりするのだが、それなりに楽しめたという記憶がある。アシモフやクラーク、ハインラインに比べても、B級っぽいということになるのだろうが、その分ボップな味はした.話の派手な類いを指して、ワイドスクリーンバロックという言い方も登場したようだが(クリス・ボイスの『キャッチワールド』の解説に登場したことばが頭に残っていたもので、確かめると、オールディスが『十億年の宴』で用いたのだという)、それは定着したのかしないのか、大風呂敷主義は他方、小松左京、光瀬龍、山田正紀など日本のSFの一群に受け継がれた。とまれ近年の英米の作品でも、こうした傾向は途絶えてはいないようだ。SFはやはり、千年万年億年単位で話を作ってほしいものだ。いつか読みかえしてみよう。合掌。

                          『蟋蟀蟋蟀』、no.7、2000.6.1、「小躍り堂日乗」より、p.2。

A.E.ヴァン・ヴォクト、小笠原豊樹訳、「野獣の地下牢」、山本弘編、『火星ノンストップ ヴィンテージSFセレクション 胸躍る冒険【篇】』、早川書房、2005、pp.264-305
原著は A. E. Van Vogt, "Vault of the Beast", 1940

A.E.ヴァン・ヴォクト、浅倉久志・伊藤典夫訳、『地球最後の砦』(ハヤカワ文庫 SF 28)、早川書房、1971
原著は A. E. Van Vogt, Earth's Last Fortress, 1942

 「消されし時を求めて The Search 」(1943)を併録。この短篇は以下にも収録(伊藤典夫訳);

中村融・山岸真編、『20世紀SF① 1940年代 星ねずみ』(河出文庫 ン 2-1)、河出書房新社、2000


ヴァン・ヴォークト、中村保男訳、『(ナル)Aの世界』(創元推理文庫 767)、東京創元社、1966
原著は A. E. Van Vogt, The World of Null-A, 1945

ヴァン・ヴォークト、沼沢洽治訳、『武器製造業者』(創元推理文庫 609-3)、東京創元社、1967
原著は A. E. Van Vogt, The Weapon Makers, 1947

ヴァン・ヴォークト、沼沢洽治訳、『宇宙船ビーグル号の冒険』(創元推理文庫 609-1)、東京創元社、1964
原著は A. E. Van Vogt, The Voyage of the Space Beagle, 1950

ヴァン・ヴォークト、沼沢洽治訳、『イシャーの武器店』(創元推理文庫 739)、東京創元社、1966
原著は A. E. Van Vogt, The Weapon Shops of Isher, 1951

ヴァン・ヴォークト、沼沢洽治訳、『終点:大宇宙』(創元推理文庫 609-9)、東京創元社、1973
原著は A. E. Van Vogt, Destination: Universe!, 1952
はるかなりケンタウルス/怪物/休眠中/魔法の村/一罐のペンキ/防衛/支配者たち/親愛なるペンフレンド/音/捜索など、296ページ。

A.E.ヴァン・ヴォクト、矢野徹訳、『宇宙製造者』(ハヤカワ文庫 SF 18)、早川書房、1971
原著は A. E. Van Vogt, The Universe Maker, 1953

ヴァン・ヴォークト、沼沢洽治訳、『(ナル)Aの傀儡』(創元推理文庫 768)、東京創元社、1966
原著は A. E. Van Vogt, The Pawns of Null-A, 1956
…………………

コードウェイナー・スミス(1913-1966);

コードウェイナー・スミス、伊藤典夫・浅倉久志訳、『鼠と竜のゲーム 人類補完機構』(ハヤカワ文庫 SF 471)、早川書房、1982
序文(ジョン・J・ピアス)//
スキャナーに生きがいはない(1950)/星の海に魂の帆をかけた女(1960)/鼠と竜のゲーム(1955)/燃える脳(1958)/スズダル中佐の犯罪と栄光(1964)/黄金の船が-おお! おお! おお!(1959)/ママ・ヒットンのかわゆいキットンたち(1961)/アルファ・ラルファ大通り(1961)など、
312ページ。


コードウェイナー・スミス、浅倉久志訳、『ノーストリリア 人類補完機構』(ハヤカワ文庫 SF 1726、早川書房、1987/2009
原著は Cordwainer Smith, Norstrilia, 1960/1975

コードウェイナー・スミス、伊藤典夫訳、『シェイヨルという名の星 人類補完機構』(ハヤカワ文庫 SF 1062)、早川書房、1994
コードウェイナー・スミスのこと(ロジャー・ゼラズニイ)//
クラウン・タウンの死婦人(1964)/老いた大地の底で(1966)/帰らぬク・メルのバラッド(1962)/シェイヨルという名の星(1961)など、
348ページ。


コードウェイナー・スミス、伊藤典夫訳、『第81Q戦争 人類補完機構』(ハヤカワ文庫 SF 1180)、早川書房、1997
序文(フレデリック・ポール)//
人類補完機構の物語;第81Q戦争(1928)/マーク・エルフ(1957)/昼下がりの女王(1978)/人びとが降った日(1959)/青をこころに、1、2と数えよ(1963)/大佐は無の極から帰った(1979)/ガスタブルの惑星より(1962)/酔いどれ船(1963)/夢幻世界へ(1959)//
その他の物語;西欧科学はすばらしい(1958)/ナンシー(1959)/達磨大師の横笛(1959)/アンガーヘルム(1959)/親友たち(1963)など、
426ページ。

…………………

レイフェル・アロイシャス・ラファティ(1914-2002);

R.A.ラファティ、浅倉久志訳、『900人のお祖母さん』(ハヤカワ文庫 SF 757)、早川書房、1988
原著は R. A. Lafferty, Nine Hundred Grandmothers, 1970
邦訳は1981年刊本の文庫化
900人のお祖母さん/巨馬の国/日の当たるジニー/時の6本指/山上の蛙/一切衆生/カミロイ人の初等教育/スロー・チューズデー・ナイト/スナッフルズ/われらかくシャルルマーニュを悩ませり/蛇の名/せまい谷/カミロイ人の行政組織と慣習/うちの町内/ブタっ腹のかあちゃん/7日間の恐怖/町かどの穴/その町の名は?/他人の目/一期一宴/千客万来など、
540ページ。


R.A.ラファティ、浅倉久志編訳、『どろぼう熊の惑星』(ハヤカワ文庫 SF 1099)、早川書房、1993
このすばらしい死骸(1968)/秘密の鰐について(1970)/寿限無、寿限無(1970)/コンディヤックの石像(1970)/とどろき平(1971)/また、石灰岩の島々も(1971)/世界の蝶番はうめく(1971)/処女の季節(1973)/意志と壁紙としての世界(1973)/草の日々、藁の日々(1973)/ダマスカスの川(1974)/床の水たまり(1976)/どろぼう熊の惑星(1982)/イフリート(1982)/公明にして正大(1982)/泉が干あがったとき(1984)/豊かで不思議なもの(1986)など、
448ページ。


R.A.ラファティ、伊藤典夫・浅倉久志訳、『つぎの岩につづく』(ハヤカワ文庫 SF 1165)、早川書房、1996
原著は R. A. Lafferty, Strange Doings, 1972
レインバード/クロコダイルとアリゲーターよ、クレム/つぎの岩につづく/むかしアラネアで/テキサス州ソドムとゴモラ/金の()入りの目をもつ男/問答無量/超絶の虎/豊穣世界/夢/ブリキ缶に乗って/アロイス/完全無欠な貴橄欖石/太古の殻にくるまれて/断崖が笑った//
レインバードのころ(浅倉久志)/ぼくの会ったラファティ(伊藤典夫)など、
414ページ。

 「断崖が笑った」からエピグラフにいただいたことがあります(p.390)
 →「作品解説、あるいは幕間に潜りこもう!」、『ひろがるアート展~現代美術入門篇~』図録、2010.10 < 三重県立美術館のサイト

R.A.ラファティ、柳下毅一郎訳、『宇宙舟歌』(未来の文学)、国書刊行会、2005
原著は R. A. Lafferty, Space Chantey, 1968

R.A.ラファティ、井上央訳、『子供たちの午後』(青心社SFシリーズ)、青心社、2006
2001年刊本の復刊
アダムには3人の兄弟がいた/氷河来たる/究極の被造物/パニの星/子供たちの午後/トライ・トゥ・リメンバー/プディブンディアの礼儀正しい人々/マクグルダーの奇跡/この世で一番忌まわしい世界/奪われし者にこの地を返さん/彼岸の影//
解説(初版時/再版時)(井上央)など、
236ページ。


R.A.ラファティ、井上央訳、『翼の贈りもの』(青心社SFシリーズ)、青心社、2011
だれかがくれた翼の贈りもの/最後の天文学者/なつかしきゴールデンゲイト/雨降る日のハリカルナッソス/片目のマネシツグミ/ケイシィ・マシン/マルタ/優雅な日々と宮殿/ジョン・ソルト/深色ガラスの物語 - 非公式ステンドグラス窓の歴史/ユニークで斬新な発明の数々//
解説:「物語と永遠」(井上央)など、
228ページ。


R.A.ラファティ、伊藤典夫・浅倉久志訳、『昔には帰れない』(ハヤカワ文庫 SF 1872)、早川書房、2012
素顔のユリーマ/月の裏側/楽園にて/パイン・キャッスル/ぴかぴかコインの湧きでる泉/崖を登る/小石はどこから/昔には帰れない//
忘れた偽足/ゴールデン・トラバント/そして、わが名は/大河の千の岸辺/すべての陸地ふたたび溢れいづるとき/廃品置き場の裏面史/行間からはみだすものを読め/1873年のテレビドラマ//
浅倉さんのことその他(伊藤典夫)など、
464ページ。


 R..A.ラファティを「敬愛する」知人が、この「短編集(昔には帰れない)に、バンヴァードの阿房宮の世界最大の絵画?を題材にしたものを見つけ」たことを知らせてくれました。「大河の千の岸辺」です。クトゥルー神話色を読むとることもできなくはないかもしれません。
 なおバンヴァードについては;


ポール・コリンズ、山田和子訳、「1 バンヴァードの阿房宮 ジョン・バンヴァード」、『バンヴァードの阿房宮 世界を変えなかった十三人』、2014、pp.15-49

 そもそもこの本も同じ知人が教えてくれたものなのでした。この知人には→こちら(「怪奇城の外濠 Ⅱ」の頁の「劇場と舞台装置など」の項)や、またそちら(「怪奇城の外濠 Ⅲ」の頁の「綺想建築、その他」の項)でも触れました。

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マイケル・ケネディ・ジョーゼフ(1914-1981);

M.K.ジョーゼフ、黒丸尚訳、『虚無の孔』(海外SFノヴェルズ)、早川書房、1979
原著は M. K. Joseph, The Hole in the Zero, 1967
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フレッド・ホイル(1915-2001);

フレッド・ホイル、鈴木敬信訳、『暗黒星雲』(コスモス・ブックス)、法政大学出版局、1974
原著は Fred Hoyle, The Black Cloud, 1957

 ホイルは定常宇宙論の主唱者の一人。
 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~)」の頁の「i. ~1980年代


フレッド・ホイル、伊藤典夫訳、『10月1日では遅すぎる』(ハヤカワ文庫 SF 194)、早川書房、1976
原著は Fred Hoyle, October the First Is Too Late, 1966

 この作品のこともこちらでふれました
 →「時よ止まれ、おまえは美しいのか? 絵と映像のA感覚」、『液晶絵画』展図録、2008 [ < 三重県立美術館のサイト

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チャールズ・L・ハーネス(1915-2005);

チャールズ・L・ハーネス、中村融訳、「現実創造」、中村融・山岸真編、『20世紀SF① 1940年代 星ねずみ』(河出文庫 ン 2-1)、河出書房新社、2000、pp.403-476
原著は Charles L. Harness, "The New Reality", 1950

山本弘、『シュレディンガーのチョコパフェ』(ハヤカワ文庫 JA 914)、早川書房、2008

 の表題作への「あとがき」中で、本作の「作中で展開される奇想天外な(しかし妙に説得力のある)宇宙論」という言い回しに出くわして以来(p.410)、ずっと気になっていた作品であります。
 次も参照;

山本弘、『トンデモ本? 違う、SFだ!』、2004、pp.72-75:「地球は昔、平らだった!? これぞ究極のパカSF チャールズ・L・ハーネス『現実創造』」


 件の〈宇宙論〉を展開するに当たって、カントと〈物自体(ディング・アン・ジッヒ)〉、〈英知体(ヌーメノン)〉が引きあいに出されている点が興味を惹きます(p.413)。
「たぶんカントか超人類
(ホモ・スペリオール)なら、心がまえができるでしょう」(p.451)
と、SFでここまで持ちあげられるカントというのも、なかなかに得難いのではないでしょうか。また主人公が「
本体論学者(オントロジスト)」(p.407、他)と称されるのも面白いところです。
 とまれ認識の範疇の変化が物質界自体を変容させてきたというわけですが、
「人間が登場するまで…(中略)…宇宙はありませんでした」(p.446)。
「人間は恐ろしく単純な世界 - 現在の宇宙の根源であり、真のヌーメノンである世界で存在をはじめました」(p.441)
と開闢を説き、
「われわれの〝現実〟は、ひとつの連続体ではなく、三次元物体が雑然とかたまった
ごたまぜ(メラーンジュ)になるでしょう。時間は、かりに存在するとしても、空間的な事物とはなんの関係ももたなくなるでしょう」(p.450)
と終末までが想定されるのでした。

チャールズ・L・ハーネス、中村融訳、『パラドックス・メン』(竹書房文庫 は 9-1)、竹書房、2019
原著は Charles L. Harness, Flight into Yesterday, 1953/別題;The Paradox Men

 オールディスによる〈ワイドスクリーン・バロック〉というカテゴリーは、本作のために案出されたそうです(「訳者あとがき - 元祖ワイドスクリーン・バロック」、pp.327-328、p.333)。
 「天の川からの光は、宇宙を横断する閉鎖回路を通過するので、360億年後にようやく帰ってくるはずだ」(p.179)
という〈閉じた宇宙モデル〉の採用、
 その展開として、
「したがって空間が有限なら、時間もそうでなければならない。そして空間と沿うように、時間は湾曲して出発点にもどるので、はじまりも終わりもない」(p.180)。
 pp.195-198 も参照。
 関連して、超能力による時間の知覚(p.188)、超光速と時間溯行の問題(pp.215-217)といったモティーフも組みこまれています。
 また「
(ノン)アリストテレス的」(p.284)、「(ナル)アリストテレス主義」(p.287)という言い回しが出てきますが、作者自身影響されたと語ったヴァン・ヴォート(「訳者あとがき」、p.330)に由来するのでしょうか?
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アーサー・チャールズ・クラーク(1917-2008);

アーサー・C・クラーク、沼沢洽治訳、『地球幼年期の終わり』(創元推理文庫 611-2)、東京創元社、1969
原著は Arthur C. Clarke, Childhood's End, 1953

 『2001年宇宙の旅』ともども、やはりこちらでふれました
 →「作品解説、あるいは幕間に潜りこもう!」、『ひろがるアート展~現代美術入門篇~』図録、2010.10 < 三重県立美術館のサイト

 また→そちらでも触れました(「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「牧野修」の項)

 ちなみに、歌詞を見ても関係あるのかどうかよくわかりませんでしたが、

Minimal Compact, The Figure One Cuts, 1987

 イスラエル+ドイツのバンドの4枚目、B面4曲目が"Childhood's End"、5分1秒。
 同じバンドによる別の曲→あちらを参照(「メソポタミア」の頁の「おまけ」)


アーサー・C・クラーク、山高昭訳、『都市と星』(ハヤカワ文庫 SF 271)、早川書房、1977
原著は Arthur C. Clarke, The City and the Stars, 1956

アーサー・C・クラーク、山高昭訳、「90億の神の御名」、『天の向こう側』(ハヤカワ文庫 SF 560)、早川書房、1984、pp。9-21
原著は Arthur C. Clarke, "The Nine Billion Names of God "(1953), The Other side of the Sky, 1958

 →ここにも挙げておきます:「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ

アーサー・C・クラーク、山高昭訳、「暗黒の壁」、同上、pp.77-105
原著は Arthur C. Clarke, "The Wall of Darkness" (1949), op.cit.

 こちらでも挙げました:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「諸星大二郎」の項

アーサー・C・クラーク、山高昭訳、「太陽の中から」、同上、pp.227-239
原著は Arthur C. Clarke, "Out of the Sun" (1958), op.cit.

アーサー・C・クラーク、伊藤典夫訳、『2001年宇宙の旅』(ハヤカワ文庫 SF 243)、早川書房、1977
原著は Arthur C. Clarke, 2001: A Space Odyssey, 1968

 映画版は

『2001年宇宙の旅』、1968、監督:スタンリー・キューブリック

 →そこでも少し触れています:「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁中の「本・書物(天の書)」の頁の「本・書物(天の書)」

アーサー・C・クラーク&スティーヴン・バクスター、冬川亘訳、『過ぎ去りし日々の光』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 1338/1339)、早川書房、2000
原著は Arthur C. Clarke and Stephen Baxter, The Light of Other Days, 2000

 バクスターの→あそこにも挙げておきます:本頁下掲の「バクスター」の項

 ついでに;

アーサー・C・クラーク、竹岡啓訳、「陰気な山脈にて もしくはラヴクラフトからリーコックへ」、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト原作、宮崎陽介漫画、『狂気の山脈 戦慄のクトゥルフ神話』、PHP研究所、2010、pp.175-190
原著は Arthur C. Clarke, "At the Mountain of Murkiness", 1940

 クトゥルー神話について→こっちを参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など
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デイヴィッド・I・マッスン(1917-2008);

デイヴィッド・I・マッスン、伊藤典夫訳、「旅人の憩い」、高橋良平編、『ボロゴーヴはミムジイ 伊藤典夫翻訳SF傑作選』(ハヤカワ文庫 SF2102)、早川書房、2016、pp.251-281
原著は David Irvin Masson, "Traveller's Rest", 1965

 舞台となる世界では時間が北に向かって〈集速(コンセレレーション)〉しています。主人公が〈南〉で20年過ごす間、〈北〉の山頂の掩蔽濠では22分ほどしか経っていませんでした(p.278)。緯度の南北に応じて通信は困難になり、場合によっては言語など文化にも差が生じる(p.271 など)。〈時間勾配〉(p.265)は気象にも影響し、
「北側の視覚バリアが長大な弧を描いて星空を隠し」
ています(pp.272-273)。
 〈北〉の山頂の掩蔽濠は〈境界〉に面し、〈敵〉と交戦しています。
「〈敵〉を見たものは、だれひとりいない。その〈敵〉は〈悠久の昔〉から〈境界〉を越えようと、あらゆる努力を傾けているのだ」(p.278)。
「〈戦争〉が、いつ、どのように始まったか知るものもいない」(p.280)。
 冒頭で「〈敵〉の〈時間〉が鏡像のようにちょうどこちらの反転で、しかも
集速(コンセレレーション)が〈境界〉まで漸近的に進んでいるとしたら」と述べられるのですが(pp.254-255)、末尾で主人公は、
「〈境界〉附近とそのかなたで、〈時間〉がどうなっているのか、だれひとり知るものはない。〈境界〉では時間集速は無限大となり、そのかなたはもはや無なのだろうか?…(中略)…もしかしたら〈敵〉など本当は存在しないのではないか?」
と考えるのでした(p.280)。
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シオドア・スタージョン(1918-1985);

シオドア・スタージョン、大森望訳、「昨日は月曜日だった」、中村融・山岸真編、『20世紀SF① 1940年代 星ねずみ』(河出文庫 ン 2-1)、河出書房新社、2000、pp.369-402
原著は Theodore Sturgeon, "Yesterday was Monday", 1941

 世界の裏側で表世界の進行を調整する者たちというイメージは、ハインラインの「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」あたりが連想されましたが、上の訳の解説では
「着想自体はのちのフィリップ・K・ディックの作品と通じなくもない」
と述べられていました(山岸真、p.370)。『アジャストメント』(2011、監督:ジョージ・ノルフィ)として映画化された「調整班
Adjustment Team 」(1954、浅倉久志編訳、『悪夢機械』(新潮文庫 テ 10-1)、新潮社、1987、pp.37-80)が思い浮かんだりもしますが、そちらの「解説」には
「現実の裏側にべつの世界、全面的に操作された世界がのぞくという、長篇の中心テーマのひとつがすでにここで試みられている」
とあります(p.434)。
 長篇というのが具体的にどれらを指すのかはさておき、ディックからスタージョンに戻れば、まず、上の事態が
「〝今日〟というのは、たまたまそのとき使われている舞台セットの呼び名でしかない。〝明日〟は、役者たちが〝今日〟を終えたあとで使われるセットを意味する」(p.382)
と、舞台になぞらえられている点が興味を惹きます(なので→こちらで引きあいに出しておきます:「オペラ座の裏から(仮)」の頁の「追補」)。
 またそれに応じて、
「俳優が舞台に上がるまで、時間は存在しないからね。…(中略)…つまり、この時間ってやつは、時の流れにそって進んでいくものじゃないってことか?」(pp.382-383)
と、時間の非連続性が設定されていました。
 さらに、天使に当たるらしきイリデルという登場人物はじめ、「プロンプター? GAだよ -
守護天使(ガーディアン・エンジェル)」(p.388)、「プロデューサー」(pp.390-391)、「辺土」(p.391、pp.394-395)、「辺土の監督官にして、黎明から永劫までのあいだでもっとも兇暴かつ強大な悪魔の息子」(p.395)などとともに、
「芝居の観客…(中略)…ある特定の - この芝居を楽しんでくれるかもしれない存在」(p.385)
に触れられている点が気になるところです。


 次も参照;

山本弘、『トンデモ本? 違う、SFだ!』、2004、pp.72-75:「水曜日はまだ製作中? あっと驚く世界の舞台裏 シオドア・スタージョン『昨日は月曜日だつた』」
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フィリップ・ホセ・ファーマー(1918-2009);

フィリップ・ホセ・ファーマー、浅倉久志訳、『階層宇宙の創造者 階層宇宙シリーズ 1』(ハヤカワ文庫 SF 133)、早川書房、1973
原著は Philip José Farmer, The Maker of Universes, 1965

  同、  『異世界の門 階層宇宙シリーズ 2』(ハヤカワ文庫 SF 151)、早川書房、1974
原著は Philip José Farmer, The Gates of Creation, 1966

  同、  『階層宇宙の危機 階層宇宙シリーズ 3』(ハヤカワ文庫 SF 159)、早川書房、1975
原著は Philip José Farmer, A Private Cosmos, 1968

  同、  『地球の壁の裏に 階層宇宙シリーズ 4』(ハヤカワ文庫 SF 163)、早川書房、1975
原著は Philip José Farmer, Behind the Walls of Terra, 1970

 The Lavalite World (1977)、More Than Fire (1993)と続きがあるのですが、邦訳が出たかどうかは不詳。

フィリップ・ホセ・ファーマー、岡部宏之訳、『果てしなき河よ我を誘え リバーワールド 1』(ハヤカワ文庫 SF 289)、早川書房、1978
原著は Philip José Farmer, To Your Scattered Bodies Go, 1971

  同、  『わが夢のリバーボート リバーワールド 2』(ハヤカワ文庫 SF 331)、早川書房、1979
原著は Philip José Farmer, The Fabulous Riberboat, 1971

  同、  『飛翔せよ、遙かなる空へ リバーワールド 3』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 516/517)、早川書房、1983
原著は Philip José Farmer, The Dark Design, 1979

  同、  『魔法の迷宮 リバーワールド 4』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 621/622)、早川書房、1985
原著は Philip José Farmer, The Magic Labyrinth, 1980

フィリップ・ホセ・ファーマー、宇佐川晶子訳、『気まぐれな仮面』(ハヤカワ文庫 SF 645)、早川書房、1985
原著は Philip José Farmer, The Unreasoning Mask, 1981
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フレデリック・ポール(1919-2013);

フレデリック・ポール、伊藤典夫訳、「虚栄の街」、高橋良平編、『ボロゴーヴはミムジイ 伊藤典夫翻訳SF傑作選』(ハヤカワ文庫 SF2102)、早川書房、2016、pp.135-195
原著は Frederik Pohl, "The Tunnel under the World", 1955

 同じ日が反復する不条理状況、それに気づいた主人公は世界の裏側へ、しかし主人公の存在はといえば・・・、それでも脱出しようとすればしかし、世界の存在はといえば・・・というお話でした。

フレデリック・ポール、矢野徹訳、『ゲイトウェイ』(ハヤカワ文庫 SF 769)、早川書房、1988
原著は Frederik Pohl, Gateway, 1977

  同、  『ゲイトウェイ2 蒼き事象の地平線の彼方』(ハヤカワ文庫 SF 786)、早川書房、1988
原著は Frederik Pohl, Beyond the Blue Event Horizon, 1980

  同、  『ゲイトウェイ3 ヒーチー・ランデヴー』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 795/796)、早川書房、1988
原著は Frederik Pohl, Heechee Rendezvous, 1984

  同、  『ゲイトウェイ4 ヒーチー年代記』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 809/810)、早川書房、1989
原著は Frederik Pohl, The Annals of the Heechee, 1987
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アイザック・アシモフ(1920-1992);

アイザック・アシモフ、深町真理子訳、『永遠の終り』(ハヤカワ文庫 SF 269)、早川書房、1977
原著は Isaac Asimov, The End of Eternity, 1955

 本作では通常の歴史である〈時間(タイム)〉以外に、〈永遠(エターニティ)〉と呼ばれる領域が存在します。

 「非空間、非時間の無限に薄いカーテンの前で、彼はもう一度立ち止まった。このカーテンが、いっぽうで彼を〈
永遠(エターニティ)〉と、もういっぽうで彼を普通の〈時間(タイム)〉とへだてているのだ」(p.11/第1章)。

 ただし〈
永遠(エターニティ)〉は自然の産物ではなく、人為的に造りあげられたものであり、組織です。24世紀に科学者ヴィッカー・マランゾーンによって〈時場〉が発明され、27世紀に〈永遠(エターニティ)〉が成立しました。

 「〈
永遠(エターニティ)〉は通常の〈時間〉を短絡し、それによって通常の〈時間〉の限界から解放された、ひとつの巨大な〈時場〉にほかならない」(p.204/第11章)。

 〈
永遠(エターニティ)〉によって〈現実矯正〉が行なわれる結果、〈時間(タイム)〉は流動的なものになっています。

 「無限の数がある〈現実〉が相手の場合には、決定論などというものは存在しない」(p.253/第14章)。

 「そこでは、〈現実〉は融通性のある、うつろいやすいものであり、彼のような人間が自分の手のうちにおさめて、より良い形につくりなおすことのできるものなのだ」(p.32/第2章)。

 「われわれは〈
永遠(エターニティ)〉の始まりから地球の終焉のときにいたる、全時域の全事象を案出するために働く。そして、あらゆる〝だったかもしれないこと(マイト・ハヴ・ビーン)〟に含まれる無限の可能性をひとつひとつ考えだし、そのなかから、〝現在の姿(イズ)〟より良いものをひとつだけ選びだして、その〝イズ〟を〝かもしれないこと(マイト・ビー)〟に変えるために、〈時間〉のどこでちっぽけな小変更を起こせばいいかを決定し、それから新しい〝イズ〟がきまると、さらに新しい〝マイト・ビー〟を求めて、どこまでも追求をつづけ…(後略)…」(p.95/第5章)。

 〈時場〉の発明と〈
永遠(エターニティ)〉成立以前の時期は〈原始時代(プリミティヴ)〉と呼ばれ(p.31/第2章)、〈永遠(エターニティ)〉が操作することはありません。主人公の「熱烈な興味」(p.32/同)の対象でもあります。

 〈
永遠(エターニティ)〉では歴史は年単位ではなく、〈世紀〉で数えられます。

 「〈
永遠(エターニティ)〉は何百万世紀にもわたってずっと存続している。あらゆる生物が死に絶えるまで、そして死に絶えたのちも、太陽が一個の新星になるmで、そしてそののちも。〈永遠(エターニティ)〉にはいかなる終わりもないのだ」(p.60/第3章)、

 「新星〈太陽〉こそ、われわれの原動力なのだからね」(同上)。

 〈
永遠人(エターナル)〉は「円函(ケトル)」に乗って「上方時域(アップホエン)」と「下方時域(ダウンホエン)」の間を移動します(pp.9-10/第1章)。ケトルに乗るということは、

 「実際には動いていないんだからな。きみはケトルの時間的延長のなかを移動しているんだ。じつをいうと - …(中略)…現在、きみもおれも、目には見えていても実際には非実在物なんだ。いまこの瞬間に、ほかに百人もの人間が、このおなじケトルを使うことができる。めいめい勝手な時間的方向へむかって、たがいに交錯しながら、てんでばらばらな速度で動いているんだ - もし動いていると言えるならな」(pp.57-58/第3章)。

 ただし「七万世紀から十五万世紀にわたる時代」は〝神秘の世紀〟と呼ばれ、

 「これらの世紀では、〈
永遠人(エターナル)〉は〈時間(タイム)〉にはいることができない。〈永遠(エターニティ)〉と〈時間(タイム)〉とのあいだには、通り抜けられない扉が存在するのだ。なぜ? それはだれも知らない」(p.59/同)。

 後には、〈
永遠(エターニティ)〉とは異なる立場が登場、

 「わたしたちはべつの〈現実〉を計算はしません。ただそれらを見るのです。それらを非現実の状態で見るのです」
 「一種の実体のないネヴァ=ネヴァ・ランドってわけか、〝
あるいは実在したかもしれないもの(マイト・ハヴ・ビーンズ)〟たちが、〝仮定(イフ)〟をもてあそんでいる?」(p.328/第18章)

 「あなたがたはたったひとつの〈現実〉しか知らない〈
時間人(タイマー)〉の無知を笑います。わたしたちは、〈現実〉はたくさんあることを知っていても、一時にはそのうちのひとつしか存在しないと思いこんでいる〈永遠人(エターナル)〉の無知を笑います」(同上)。

 「〈現実〉の数は無限です。それぞれの〈現実〉のどんな亜綱の数もまた無限です」(p.329/同)。

 「わたしたちがどんなに精密に定められた〈現実〉に焦点を合わせようと、それはつねに非常によく似た無限の数の〈現実〉を代表しているにすぎません」(p.331/同)。

アイザック・アシモフ、小尾芙佐訳、『神々自身』(海外SFノヴェルズ)、早川書房、1980
原著は Isaac Asimov, The Gods Themselves, 1972

 両作品は

ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『パラレルワールド』、2006、pp.137-139, 174

 でも引きあいに出されていました。
 また

セス・ロイド、水谷淳訳、『宇宙をプログラムする宇宙』、2007、pp.193-194

 および

ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック、水谷淳訳、『サイクリック宇宙論』、2010、pp.214-215、p.217

 の双方で引きあいに出されていたのが;

アイザック・アシモフ、風見潤訳、「最後の質問」、伊藤典夫他訳、『停滞空間』(ハヤカワ文庫 SF 357)、早川書房、1979、pp.283-304
原著は Isaac Asimov, "The Last Question", Nine Tomorrows, 1959
 初出は1956(p.377)

 他の収録作は;
見よ、いまここに成し遂げる!//
プロフェッション/ナンバー計画/やがて明ける夜/ヒルダぬきでマーズポートに/やさしいハゲタカ/世界のあらゆる悩み/ZをSに/停滞空間//
返送票//
解説(風見潤)など、
380ページ。


A.ベリー、小林司訳、『一万年後』(下)、1975、第8章「亜空間飛行」

 の始めでは、アシモフの『塵のような星』からの一節が引用されていました(p.40、p.42)。邦訳では

アイザック・アシモフ、沼沢洽治訳、『暗黒星雲のかなたに』(創元推理文庫 727)、東京創元社、1964、pp.49-50
原著は
Isaac Asimov, The Stars like Dust, 1951

 〈超空間〉の〈跳躍〉について、たとえば同じアシモフから、

アイザック・アシモフ、厚木淳訳、『銀河帝国の興亡 1』(創元推理文庫 791)、東京創元社、1968、p.12
原著は Isaac Asimov, Foundation, 1951
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スタニスワフ・レム(1921-2006);

スタニスワフ・レム、飯田規和訳、『ソラリスの陽のもとに』(ハヤカワ文庫 SF 237)、早川書房、1977
原著は Stanisław Lem, Solaris, 1961

スタニスワフ・レム、吉上昭三・村手義治訳、『泰平ヨンの航星日記』(ハヤカワ文庫 SF 203)、早川書房、1976
原著は Stanisław Lem, Cyberiada, 1967

スタニスワフ・レム、深見弾訳、『宇宙創世記ロボットの旅』(ハヤカワ文庫 SF 376)、早川書房、1980
原著は Stanisław Lem, Dzienniki gwiazdowe, 1971

スタニスワフ・レム、沼野充義・工藤幸雄・長谷見一雄訳、『完全な真空』(文学の冒険シリーズ)、国書刊行会、1989
原著は Stanisław Lem, Doskonala próżnia, 1971
完全な真空(スタニスワフ・レム)/ロビンソン物語(マルセル・コスカ)/ギガメシュ(パトリック・ハナハン)/性爆発(サイモン・メリル)/親衛隊少将ルイ16世(アルフレート・ツェラーマン)/とどのつまりは何も無し(ソランジュ・マリオ)/逆黙示録(ヨアヒム・フェルゼンゲルト)/白痴(ジャン・カルロ・スパランツァーニ)/あなたにも本が作れます/イサカのオデュッセウス(クノ・ムラチェ)/てめえ(レイモン・スーラ)/ビーイング株式会社(アリスター・ウェインライト)/誤謬としての文化(ヴィルヘルム・クロッパー)/生の不可能性について/予知の不可能性について(ツェザル・コウスカ)/我は(しもべ)ならずや(アーサー・ドブ)/新しい宇宙創造説など、
312ページ。

 架空の本の書評集。


スタニスワフ・レム、長谷見一雄・沼野充義・西成彦訳、『虚数』(文学の冒険シリーズ)、国書刊行会、1998
原著は Stanisław Lem, Wielkość urojona i Golem XIV, 1973/1981
序文/『ネクロビア』(ツェザーリ・シチシビシ)/『エルンティク』(レジナルド・ガリヴァー)/『ビット文学の歴史』第1巻(ジュアン・ランベレーほか)/『ヴェストランド・エスクテロペディア』/『GOLEM XIV』など、
330ページ。

 未来の本への序文集。


 →こちらにも挙げました:「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「本・書物(天の書)」
…………………

ジェイムズ・ブリッシュ(1921-1975);

ジェイムズ・ブリッシュ、浅倉久志訳、『時の凱歌 宇宙都市 4』(ハヤカワ文庫 SF 322)、早川書房、1978
原著は James Blish, Cities in Flight, 1970
…………………

カート・ヴォネガット・ジュニア(1922-2007);

カート・ヴォネガット・ジュニア、浅倉久志訳、『タイタンの妖女』(ハヤカワ文庫 SF 262)、早川書房、1977
原著は Kurt Vonnegut, Jr., The Sirens of Titan, 1959

カート・ヴォネガット・ジュニア、伊藤典夫訳、『猫のゆりかご』(ハヤカワ文庫 SF 353)、早川書房、1979
原著は Kurt Vonnegut, Jr., Cat's Cradle, 1963
…………………

イタロ・カルヴィーノ(1923-1985);

イタロ・カルヴィーノ、米川良夫訳、『レ・コスミコミケ』(ハヤカワ文庫 SF 639)、早川書房、1986
原著は Italo Calvino, Le cosmicomiche, 1965

イタロ・カルヴィーノ、脇功訳、『柔らかい月』(ハヤカワ文庫 SF 436)、早川書房、1981
原著は Italo Calvino, Ti con zero, 1967

イタロ・カルヴィーノ、米川良夫訳、『マルコ・ポーロの見えない都市』、河出書房新社、1977
原著は Italo Calvino, Le città invisibli, 1972

 本作とほぼ同時期に独立して執筆され、相通じる主題を扱ったギョルゲ・ササルマンの『方形の円 偽説・都市生成論』(初版:1975)は→こちらで触れました(「四角は丸いか」(1991)の頁の「おまけ」)

イタロ・カルヴィーノ、河島英昭訳、『宿命の交わる城』、講談社、1980
原著は Italo Calvino, Il castello dei destini incrociati, 1973

 →「怪奇城の図書室」の頁でも触れました

C.マラビーニ&I.カルヴィーノ、和田忠彦構成・訳、「カルヴィーノと見えない都市 都市の神々」、『現代思想』、vol.11 no.7、1983.7:「特集 隠喩としての都市 都市論の新しい地平」、pp.176-187
原著は Claudio Marabini, "Calvino e una città invisible", Le città dei poeti, 1976 + Italo Calvino, "Gli dèi della città", Una piatra sopra, 1980

イタロ・カルヴィーノ、「人・宇宙・象 - プリニウスの『博物誌』について
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キース・ローマー(1925-1993);

キース・ローマー、矢野徹訳、『多元宇宙の帝国』(ハヤカワ文庫 SF 293)、早川書房、1978
原著は Keith Laumer, Worlds of the Imperium, 1962

キース・ローマー、矢野徹訳、『多元宇宙SOS』(ハヤカワ文庫 SF 33)、早川書房、1971
原著は Keith Laumer, The Other Side of Time, 1965

キース・ローマー、冬川亘訳、『時の罠』(ハヤカワ文庫 SF 310)、早川書房、1978
原著は Keith Laumer, The Time Trap, 1970
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ポール・アンダースン(1926-2001)については、

 「北欧、ケルト、スラヴなど」のページの「おまけ」で


折れた魔剣』(1954)

魔界の紋章』(1961)

 を、「グノーシス諸派など Ⅲ」のページの「おまけ」で

大魔王作戦』(1971)

 を既に挙げましたが、また;

ポール・アンダースン、深町真理子・稲葉明雄訳、『タイム・パトロール』(ハヤカワ文庫 SF 228)、早川書房、1977
原著は Paul Anderson, Guardians of Time, 1960

ポール・アンダースン、浅倉久志訳、『時の歩廊』(ハヤカワ文庫 SF 356)、早川書房、1979
原著は Paul Anderson, The Corridors of Time, 1965

ポール・アンダースン、浅倉久志訳、『タウ・ゼロ』(創元SF文庫 638-05)、東京創元社、1992
原著は Paul Anderson, Tau Zero, 1970

 この作品は

ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『パラレルワールド』、2006、pp.97-99, 347-348

 でも引きあいに出されていました。


ポール・アンダースン、小隅黎訳、『アーヴァタール』(上下)(創元SF文庫 638-3/4)、東京創元社、1981
原著は Paul Anderson, The Avatar, 1978
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フィリップ・キンドレッド・ディック(1928-1982)については

 「イラン」のページの「おまけ」で


宇宙の操り人形』(1956)

 「グノーシス諸派など Ⅲ」のページの「おまけ」で

ヴァリス』(1981)

聖なる侵入』(1981)

 を既に挙げましたが、他に;

フィリップ・K・ディック、小尾芙佐訳、『逆まわりの世界』(ハヤカワ文庫 SF 526)、早川書房、1983
原著は Philip K. Dick, Counter-Clock World, 1967

フィリップ・K・ディック、飯田隆昭訳、『死の迷宮』(サンリオSF文庫 3-B)、サンリオ、1979
原著は Philip K. Dick, A Maze of Death, 1970

 →こちらでも少し触れました(スタージョン「昨日は月曜日だった」について/本頁上掲の「スタージョン」の項)

ダヴィッド・ラプジャード、堀千晶訳、『壊れゆく世界の哲学 フィリップ・K・ディック論』、月曜社、2023
原著は David Lapoujade, L'Altération des mondes. Versions de Philip K. Dick, 2021
序 錯乱について/諸世界/因果/思考する事物/幻想的なもの/エントロピーと退行/世界を掌握する者たち/人工世界/デジタル人間(あるいはアンドロイドとは何か)/狩りとパラノイア/生と死のあいだで/ブリコラージュすること(あるいはランダムな変数)//
訳者解説 未来の記憶、ペシミズム、オプティミズムなど、
222ページ。

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コリン・キャップ(1928- );

コリン・キャップ、浅倉久志訳、「ラムダ・1」、山本弘編、『火星ノンストップ ヴィンテージSFセレクション 胸躍る冒険【篇】』、早川書房、2005、pp.343-408
原著は Colin Kapp, "Lambda 1", 1962

 「SFにはよく超空間とか亜空間と呼ばれるものが出てくる」(編者解題、p.344)、
その本作版「タウ空間」の様相を主題にした作品。
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リン・カーター(1930-1988)については、

ファンタジーの歴史 - 空想世界』(1973)

陳列室の恐怖」(1976)

クトゥルー神話の魔道書」(1956)

クトゥルー神話の神神」(1956)および

『クトゥルー神話全書』(1972)

ネクロノミコン」(1989)

 などの論著等をいくつか挙げ、また

ロバート・M・プライス編、『エイボンの書』(2001)

 にはいくつかの短篇が含まれていますが、それ以外に;

リン・カーター、多田雄二訳、『ゾンガーと魔術師の王 レムリアン・サーガ 1』(ハヤカワ文庫 SF 80)、早川書房、1973
原著は Lin Carter, Thongor and the Wizard of Lemuria, 1969

  同、  『ゾンガーと竜の都 レムリアン・サーガ 2』(ハヤカワ文庫 SF 95)、早川書房、1973
原著は Lin Carter, Thongor and the Dragon City, 1966/1970

  同、  『邪神と闘うゾンガー レムリアン・サーガ 3』(ハヤカワ文庫 SF 135)、早川書房、1974
原著は Lin Carter, Thongor against the Gods, 1967

  同、 関口幸男訳、『ゾンガーと魔道師の都 レムリアン・サーガ 4』(ハヤカワ文庫 SF 259)、早川書房、1977
原著は Lin Carter, Thongor in the City of Magicians, 1968

  同、  『時の果てに立つゾンガー レムリアン・サーガ 5』(ハヤカワ文庫 SF 287)、早川書房、1978
原著は Lin Carter, Thongor at the End of Time, 1968

  同、  『海賊と闘うゾンガー レムリアン・サーガ 6』(ハヤカワ文庫 SF 311)、早川書房、1978
原著は Lin Carter, Thongor Fights the Pirates of Tarakus, 1970

 以上6巻中、宇宙論という点でもっとも興味深いのは5巻『時の果てに立つゾンガー』でしょう。この巻で主人公は、冥界行とそこでの試練、天界行、地球史のヴィジョンなど、往昔の黙示文学を思わせる体験をすることになります。また同巻にはエピグラフの形ですが、神統譜が記されたりもしています(第4部、p.154)。
 他の巻でも随所で基本的な設定として、宇宙の外から侵入しようとする混沌界の神々について語られます。まとまった形では、6巻『海賊と闘うゾンガー』の第1部第3章「灰色の魔道師」などが挙げられるでしょうか。この他4巻『ゾンガーと魔道師の都』のクライマックスには、〈神性顕現〉の場面があったりもします。
 また『時の果てに立つゾンガー』の巻末に収められた「レムリアン・サーガの基礎資料について」は執筆にあたって参照したネタを明かしたものです。『プラーナ』(→このあたりも参照:「インド」の頁の「iv. 叙事詩、プラーナなど」)が『ヴェーダ』や『ウパニシャッド』(→そのあたりも参照:同「iii. ヴェーダ、ブラーフマナ文献、ウパニシャッドなど」)より古いものとされているのはいかなる情報源に依拠したのか気になったりするのはともかく、それに加えてブラヴァツキーの『シークレット・ドクトリン』(→あのあたりも参照:「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「x. ブラヴァツキーと神智学など」)、『王書(シャー・ナーメ)』(→ここいらも参照:「イラン」の頁の「iii. 神話、『王書』など」)、『チベットの死者の書』(→そこいらも参照:「中央アジア、東アジア、東南アジア、オセアニアなど」の頁の「ii. チベットなど」)などなどと、並々ならぬ研鑽ぶりがうかがえます。
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ジェイムズ・グレアム・バラード(1930-2009)

J.G.バラード、中村保男訳、『結晶世界』(創元推理文庫 629-2)、東京創元社、1969
原著は J. G. Ballard, The Crystal World, 1966

 →こちらで触れました:「怪奇城の地下」の頁、同じく→そちら

J.G.バラード、増田まもる訳、『夢幻会社』(創元推理文庫 629-10)、東京創元社、1993
原著は J. G. Ballard, The Unlimited Dream Company, 1979
 邦訳は1981刊本の再刊
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ジョン・ブラナー(1934-1995);

ジョン・ブラナー、関口幸男訳、『次元侵略者』(ハヤカワ文庫 SF 209)、早川書房、1976
原著は John Brunner, Meeting at Infinity, 1961
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ジョン・G・クレイマー(1934- );

ジョン・クレイマー、小隅黎・小木曽絢子訳、『重力の影』(ハヤカワ文庫 SF 1157)、早川書房、1996
原著は John Cramer, Twistor, 1989
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ロバート・シルヴァーバーグ(1935- );

ロバート・シルヴァーバーグ、中村保男訳、『時間線を遡って』(創元SF文庫 649-1)、東京創元社、1974
原著は Robert Silverberg, Up the Line, 1969
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ロジャー・ゼラズニイ(1937-1995)

 「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」のページの「おまけ」で


わが名はコンラッド』(1966)

 「インド」のページの「おまけ」で

光の王』(1967)

 「アメリカ大陸など」のページの「おまけ」で

アイ・オブ・キャット」(1982)

 を既に挙げましたが、さらに;

ロジャー・ゼラズニイ、岡部宏之訳、『アンバーの9王子 真世界シリーズ 1』(ハヤカワ文庫 SF 316)、早川書房、1978
原著は Roger Zelazny, Nine Princes in Amber, 1970

  同、  『アヴァロンの銃 真世界シリーズ 2』(ハヤカワ文庫 SF 418)、早川書房、1980
原著は Roger Zelazny, The Guns of Avalon, 1972

  同、  『ユニコーンの(しるし) 真世界シリーズ 3』(ハヤカワ文庫 SF 419)、早川書房、1980
原著は Roger Zelazny, Sign of the Unicorn, 1975

  同、  『オベロンの手 真世界シリーズ 4』(ハヤカワ文庫 SF 448)、早川書房、1981
原著は Roger Zelazny, The Hand of Oberon, 1976

  同、  『混沌の宮廷 真世界シリーズ 5』(ハヤカワ文庫 SF 458)、早川書房、1981
原著は Roger Zelazny, The Courts of Chaos, 1978

ロジャー・ゼラズニイ、遠山峻征訳、『ロードマークス』(サンリオSF文庫 38-C)、サンリオ、1981
原著は Roger Zelazny, Roadmarks, 1979

ロジャー・ゼラズニイ、黒丸尚訳、『地獄に堕ちた者ディルヴィシュ』(創元推理文庫 686-3)、東京創元社、1988
原著は Roger Zelazny, Dilvish, the Damned, 1981

  同、  『変幻の地のディルヴィシュ』(創元推理文庫 686-5)、東京創元社、1990
原著は Roger Zelazny, The Changing Land, 1981

 後者の解説(中村融、「ゼラズニイのプライヴェートな神話」)では、ホジスン『異次元を覗く家』およびラヴクラフト=クトゥルー神話の影響が指摘されています(pp.340-341)。〈旧き者 Old Ones〉トゥアルア、〈齢長けた神々〉、さらに部屋の角から入ってくる〈サンドロスの犬〉なんてのが登場し、〈超時間城〉が宇宙の終末と開闢を往き来したりします。

 そのものずばりのクトゥルー神話が;

ロジャー・ゼラズニイ、森瀬繚訳、『虚ろなる十月の夜に』(竹書房文庫 ぜ1-1)、竹書房、2017
原著は Roger Zelazny, A Night in the Lonesome October, 1993

 ナイフ使いのジャックの他、「博士(グッド・ドクター)」とその「実験体」、人狼の「ラリー・タルボット」、吸血鬼である「伯爵」、「名探偵とその友人(コンパニオン)」などなどが登場します。
 →こちらにも挙げておきましょう:『凸凹フランケンシュタインの巻』(1948)の頁の「おまけ」。そこから上に列挙した内の2番目と3番目に関連して枝を伸ばしています。


 戻って、〈流謫の神々〉にまつわるお話という点で、→そちらでも名が挙がっています:「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「ハイネと〈流謫の神々〉その他」の項
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バリントン・J・ベイリー(1937-2008)については、まずは次の短編集冒頭の作品から;

バリントン・J・ベイリー、浅倉久志・他訳、『シティ5からの脱出』(ハヤカワ文庫 SF 632)、早川書房、1985
原著は Barrington J. Bailey, The Knights of the Limits, 1978
宇宙の探求/知識の蜜蜂/シティ5からの脱出/洞察鏡奇譚/王様の家来がみんな寄っても/過負荷/ドミヌスの惑星/モーリーの放射の実験/オリヴァー・ネイラーの内世界など、
352ページ。


バリントン・J・ベイリー、大森望訳、『スター・ウィルス』(創元SF文庫 697-03)、東京創元社、1992
原著は Barrington J. Bailey, The Star Virus, 1970

バリントン・J・ベイリー、大森望訳、『時間衝突』(創元SF文庫 697-1)、東京創元社、1989
原著は Barrington J. Bailey, Collision with Chronos (Collision Course), 1973

 →こちらで触れました(J.W.ダンの時間論にちなんで:「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「ダン」の項)

バリントン・J・ベイリー、大森望訳、『ロボットの魂』(創元SF文庫 697-04)、東京創元社、1993
原著は Barrington J. Bailey, The Soul of the Robot, 1974

バリントン・J・ベイリー、冬川亘訳、『カエアンの聖衣』(ハヤカワ文庫 SF 512)、早川書房、1983
原著は Barrington J. Bailey, The Garments of Caean, 1978

バリントン・J・ベイリー、坂井星之訳、『永劫回帰』(創元SF文庫 697-2)、東京創元社、1991
原著は Barrington J. Bailey, The Pillars of Eternity, 1983

バリントン・J・ベイリー、酒井昭伸訳、『禅銃(ゼン・ガン)』(ハヤカワ文庫 SF 579)、早川書房、1984
原著は Barrington J. Bailey, The Zen Gun, 1983

バリントン・J・ベイリー、大森望訳、『光のロボット』(創元SF文庫 697-05)、東京創元社、1993
原著は Barrington J. Bailey, The Rod of Light, 1985

バリントン・J・ベイリー、大森望・中村融訳、『ゴッド・ガン』(ハヤカワ文庫 SF 2104)、早川書房、2016
 日本オリジナルの短篇集
ゴッド・ガン/大きな音/地底潜艦(インタースティス)/空間の海に帆をかける船/死の船/災厄の船/ロモー博士の島/ブレイン・レース/蟹は試してみなきゃいけない/邪悪の種子など、
320ページ。

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ラリイ・ニーヴン(1938- )も山ほど邦訳がありますが、とりあえず;

ラリイ・ニーヴン、小隅黎訳、『リングワールド』(ハヤカワ文庫 SF 616)、早川書房、1985
原著は Larry Niven, Ringworld, 1970

ラリイ・ニーヴン、小隅黎・他訳、『無常の月』(ハヤカワ文庫 SF 327)、早川書房、1979
原著は Larry Niven, All the Myriad Ways, 1971
時は分かれて果てもなく/路傍の神/霧ふかい夜のために/待ちぼうけ/ジグソー・マン/終末も遠くない/未完成短篇 1番/未完成短篇 2番/スーパーマンの子孫存続に関する考察/脳細胞の体操-テレポーテーションの理論と実際-/タイム・トラベルの理論と実際/無常の月/マンホールのふたに塗られたチョコレートについてきみは何が言えるか?/地獄で立往生など、
322ページ。


 「時は分かれて果てもなく」は

ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『パラレルワールド』、2006、pp.416-418

 でも引きあいに出されていました。


L.ニーヴン&J.パーネル、小隅黎・他訳、『インフェルノ-SF地獄篇-』(創元推理文庫 654-3)、東京創元社、1978
原著は Larry Niven and Jerry Pournelle, Inferno, 1976
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マイクル・ムアコック(1939- );

マイクル・ムアコック、安田均訳、『メルニボネの皇子 エルリック・サーガ 1』(ハヤカワ文庫 SF 587)、早川書房、1984
原著は Michael Moorcock, Elric of Melniboné, 1972

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『この世の彼方の海 エルリック・サーガ 2』(ハヤカワ文庫 SF 589)、早川書房、1984
原著は Michael Moorcock, The Sailor on the Seas of Fate, 1976

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『白き狼の宿命 エルリック・サーガ 3』(ハヤカワ文庫 SF 595)、早川書房、1985
原著は Michael Moorcock, The Weird of the White Wolf, 1967/1970/1977

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『暁の女王マイシェラ エルリック・サーガ 4』(ハヤカワ文庫 SF 606)、早川書房、1985
原著は Michael Moorcock, The Vanishing Tower (previous: The Sleeping Sorceress), 1970

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『黒き剣の呪い エルリック・サーガ 5』(ハヤカワ文庫 SF 611)、早川書房、1985
原著は Michael Moorcock, The Bane of the Black Sword, 1967/1970/1977

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『ストームブリンガー エルリック・サーガ 6』(ハヤカワ文庫 SF 626)、早川書房、1985
原著は Michael Moorcock, Stormbringer, 1963/1965/1967/1977

マイケル・ムアコック、小尾芙佐訳、『堕ちた天使』(World SF)、集英社、1982
原著は Michael Moorcock, The War Hound and he World's Pain, 1981

 後に『軍犬と世界の痛み 永遠の戦士フォン・ベック 1』としてハヤカワ文庫に収められました(2007、未見)。
 次の本とあわせて→こちらにも挙げておきます:「天使、悪魔など」の頁の「おまけ

マイクル・ムアコック、小尾芙佐訳、『秋の星々の都 永遠の戦士フォン・ベック 2』(ハヤカワ文庫 SF 1661)、早川書房、2008
原著は Michael Moorcock, The City in the Autumn Stars, 1986, and "The Pleasure Garden of Felipe Sagittarius", 1965/1992

 『堕ちた天使』から約150年後の物語で、同じ一族ながら主人公も別の人物に交替するものの、ルシファーはちゃんと登場します。
 ただ『永遠の戦士』シリーズへの編入は別にしても、前作および本作での〈神〉がいったいどういう存在なのか、はっきりとは記されないだけにとても気になるところです。

 なお『堕ちた天使』とともに挙げた箇所とともに、本書の主なモティーフの一つ錬金術に関連して→そちらにも挙げておきます:「錬金術など」の頁の「おまけ

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『真珠の砦 エルリック・サーガ 7』(ハヤカワ文庫 SF 883)、早川書房、1990
原著は Michael Moorcock, The Fortress of the Pearl, 1989

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『薔薇の復讐 エルリック・サーガ 8』(ハヤカワ文庫 SF 1040)、早川書房、1994
原著は Michael Moorcock, The Revenge of the Rose, 1991

 以上の内『エルリック・サーガ』1~8巻は後に同じハヤカワ文庫から『永遠の戦士エルリック』1~4巻として再編されました(2006、未見)。『メルニボネの皇子』も井辻朱美訳になっており、原著の改訂に伴い訳も改訳されているものとも思われますが、未確認。
 続きが以下3巻となります。


マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『夢盗人の娘 永遠の戦士エルリック 5』(ハヤカワ文庫 SF 1589)、早川書房、2006
原著は Michael Moorcock, The Dreamthief's Daughter, 2001

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『スクレイリングの樹 永遠の戦士エルリック 6』(ハヤカワ文庫 SF 1596)、早川書房、2007
原著は Michael Moorcock, The Skrayling Tree, 2003

マイクル・ムアコック、井辻朱美訳、『白き狼の息子 永遠の戦士エルリック 7』(ハヤカワ文庫 SF 1603)、早川書房、2006
原著は Michael Moorcock, The White Wolf's Son, 2005

 ムアコックの〈永遠の戦士(エターナル・チャンピオン)〉シリーズにはこの他に、紅衣の公子コルムもの、『ルーンの杖秘録』と『ブラス城年代記』からなるホークムーンもの、エレコーゼ・サーガ、火星の戦士ケインなどがあるとのことですが、今のところ未見。
 とまれ、当初のエルリック・サーガ完結篇にあたる『ストームブリンガー エルリック・サーガ 6』が世界の終末と更新を描いて一応の決着を経て後、番外篇にあたる『真珠の砦 エルリック・サーガ 7』および『薔薇の復讐 エルリック・サーガ 8』あたりからムアコック流の〈多元世界〉に関する思弁の比重が大きくなっていきます。当初〈永遠の戦士〉シリーズとは別の構想に属した『永遠の戦士フォン・ベック』を経て、フォン・ベック一族ものと合流した『永遠の戦士エルリック』5~7巻からなる「新三部作」ではその傾向がますます著しい。
 その分、宇宙論だけとれば面白がれはするものの、時として筋運びに渋滞を感じさせなくもないような気がしたりもします。いささか抹香臭いというべきか。『薔薇の復讐』の「訳者あとがき」で井辻朱美が、
「私が多大な共感と、いささかの懐疑を覚えるのは、その点である」(p.363)、
「だがそれと、フィクションとしてのドラマトゥルギーのうねりが要求するものはまた別だ、とも思う」(p.364)
と述べるのも、この点と関係しているように思われるのでした。

 ところでムアコックといえば、一部のロック・ファンにとってはサイケデリック・スペース・ロックの雄ホークウィンドとのつながりによって記憶されています。上記『暁の女王マイシェラ エルリック・サーガ 4』および『ストームブリンガー エルリック・サーガ 6』の「訳者あとがき」にも記されていますが(各pp.250-252、pp.335-336)、→こちら(「通史、事典など」の頁の「おまけ」)でも挙げた

Hawkwind, Space Ritual, 1973(邦題:ホークウィンド『宇宙の祭典』)

 に曲を提供したりしています。
 また2枚組ライヴ『宇宙の祭典』で一段落したバンドは、続く
Hall of the Mountain Grill (1974、邦題:く『永劫の宮殿』)においてメロディーを強調、メロトロンを使いまくったりしつつ、基本線は同じという作風に変化し、同じ路線を踏襲した次のアルバム

Warrior on the Edge of Time, 1975(邦題: 『絶体絶命』→そちらでも挙げました:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ」)

 ではムアコックが全体のコンセプトを担当しています。ムアコック自身のリーダー・アルバムもあるとのことですが、そちらは未見。
 ホークウィンドに戻れば、少し時間を置いて


The Chronicle of the Black Sword, 1985(邦題: 『黒剣年代記~ザ・クロニクル・オブ・ザ・ブラック・ソード』)

 はムアコックのエルリック・サーガを主題にしたアルバム。、
 そのステージを収録したライヴ盤が


Live Chronicles, 1986(1994:完全版、邦題: 『ライヴ・クロニクル』)

 で、完全版ではムアコックが詩を朗読しています(『ストレンジ・デイズ』、no.123、2010.2、「Hawkwind Albums」、pp.8, 11-12。『ユーロ・ロック・プレス』、vol.44、2010.2、p.7, p.93)。
 ちなみに『スクレイリングの樹 永遠の戦士エルリック 6』の第3部18章は「鷹の風(ホーク・ウィンド)」と題されていました。
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トーマス・M・ディッシュ(1940-2008);

トーマス・M・ディッシュ、中桐雅夫訳、『虚像のエコー』(ハヤカワ文庫 SF 370)、早川書房、1979
原著は Thomas M. Disch, Echo round His Bones, 1967
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ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ(1940- );

J.M.G.ル・クレジオ、高山鉄男訳、『向こう側への旅』(新潮・現代世界の文学)、新潮社、1979
原著は J. M. G. Le Clézio, Voyage de l'autre côté, 1975

 ル・クレジオによる→こちら(「アメリカ大陸など」の頁の「ii. メソアメリカ」中の「マヤ」の項)と、またあちら(同、「アステカ」の項の後)を参照

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ジェイムズ・パトリック・ホーガン(1941-2010);

ジェイムズ・P・ホーガン、池央耿訳、『星を継ぐもの』(創元推理文庫 663-1)、東京創元社、1980
原著は James Patrick Hogan, Inherit the Stars, 1977

  同、  『ガニメデの優しい巨人』(創元推理文庫 663-2)、東京創元社、1981
原著は James Patrick Hogan, The Gentle Giants of Ganymede, 1978

  同、  『巨人たちの星』(創元推理文庫 663-3)、東京創元社、1983
原著は James Patrick Hogan, Giants' Star, 1981

ジェイムズ・P・ホーガン、山高昭訳、『創世記機械』(創元推理文庫 663-4)、東京創元社、1981
原著は James Patrick Hogan, The Genesis Machine, 1978

ジェイムズ・P・ホーガン、小隅黎訳、『未来からのホットライン』(創元推理文庫 663-6)、東京創元社、1983
原著は James Patrick Hogan, Thrice upon a Time, 1980

ジェイムズ・P・ホーガン、小隅黎訳、『時間泥棒』(創元SF文庫 663-12)、東京創元社、1995
原著は James Patrick Hogan, Out of Time, 1993

ジェイムズ・P・ホーガン、内田昌之訳、『量子宇宙干渉機』(創元SF文庫 663-19)、東京創元社、1998
原著は James Patrick Hogan, Paths to Otherwhere, 1996

ジェイムズ・P・ホーガン、内田昌之訳、『揺籃の星』(上下)(創元SF文庫 663-23/24)、東京創元社、2004
原著は James Patrick Hogan, Cradle of Saturn, 1999

 「本書は、『あの』イマニュエル・ヴェリコフスキーの『衝突する宇宙』を下敷きにした小説である」(金子隆一、「解説」、『(下)』、p.370)。

 三部作の第一作とのことでしたが、次に挙げる第二作は上梓されたものの、著者が歿したため完結篇は執筆に至らなかったようです;

ジェイムズ・P・ホーガン、内田昌之訳、『黎明の星』(上下)(創元SF文庫 663-25/26)、東京創元社、2008
原著は James Patrick Hogan, The Anguished Dawn, 2003
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グレゴリイ・ベンフォード(1941- );

グレゴリイ・ベンフォード、 山高昭訳、『夜の大海の中で』(ハヤカワ文庫 SF 658)、早川書房、1986
原著は Gregory Benford, In the Ocean of Night, 1972-1977

  同、  『星々の海をこえて』(ハヤカワ文庫 SF 662)、早川書房、1986
原著は Gregory Benford, Across the Sea of Suns, 1984

  同、  『大いなる天上の河』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 805/806)、早川書房、1989
原著は Gregory Benford, Great Sky River, 1987

  同、  『光の潮流』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 879/880)、早川書房、1990
原著は Gregory Benford, Tides of Light, 1989

  同、 冬川亘訳、『荒れ狂う深淵』(ハヤカワ文庫 SF 1121)、早川書房、1995
原著は Gregory Benford, Furious Gulf, 1994

  同、  『輝く永遠(とわ)への航海』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 1194/1195)、早川書房、1997
原著は Gregory Benford, Sailing Bright Eternity, 1995

 シリーズ最後の作品から1文をエピグラフとして引いたことがあります(下巻、p.298)
 →「滝の裏に洞穴二つ」、『館勝生』展図録 2001.7三重県立美術館のサイト


グレゴリイ・ベンフォード&ゴードン・エクランド、 宮脇孝雄訳、『もし星が神ならば』(ハヤカワ文庫 SF 802)、早川書房、1988
原著は Gregory Benford and Gordon Eklund, If the Stars Are Gods, 1977

グレゴリイ・ベンフォード、 山高昭訳、『タイムスケープ』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 773/774)、早川書房、1988
原著は Gregory Benford, Timescape, 1980

グレゴリイ・ベンフォード、 山高昭訳、『アレフの彼方』(ハヤカワ文庫 SF 591)、早川書房、1984
原著は Gregory Benford, Against Infinity, 1983

グレゴリイ・ベンフォード、 山高昭訳、『時の迷宮』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 901/902)、早川書房、1990
原著は Gregory Benford, Artifacct, 1985
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アン・ライス(1941- );

アン・ライス、柿沼瑛子訳、『悪魔メムノック』(上下)(扶桑社ミステリー ラ 2-7/8)、扶桑社、1997
原著は Ann Rice, Memnoch the Devil, 1995

 〈ヴァンパイア・クロニクルズ〉第4部にあたります。
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サミュエル・R・ディレイニー(1942- );

サミュエル・R・ディレイニー、岡部宏之訳、『バベル-17』(ハヤカワ文庫 SF 248)、早川書房、1977
原著は Samuel R. Delany, Babel - 17, 1966

 →こちらにも挙げておきます:「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ

サミュエル・R・ディレイニー、伊藤典夫訳、『アインシュタイン交点』(ハヤカワ文庫 SF 1148)、早川書房、1996
原著は Samuel R. Delany, The Einstein Intersection (A Fabulous, Formless Darkness), 1967

サミュエル・R・ディレイニー、伊藤典夫訳、『ノヴァ』(ハヤカワ文庫 SF 753)、早川書房、1988
原著は Samuel R. Delany, Nova, 1968

サミュエル・R・ディレイニー、浅倉久志・伊藤典夫・小野田和子・酒井昭伸・深町眞理子訳、『ドリフトグラス』、国書刊行会、2014
スター・ピット(1967)/コロナ(1967)/然り、そしてゴモラ……(1967)/ドリフトグラス(1967)/われら異形の軍団は、地を這う線にまたがって進む(1968)/真鍮の檻(1968)/ホログラム(1968)/時は準宝石の螺旋のように(1968)/オメガヘルム(1973)/ブロブ(1988)/タペストリー(1970)/プリズマティカ(1977)/廃墟(1968)/漁師の網にかかった犬(1971)/夜とジョー・ディコスタンツァの愛することども(1970)/あとがき - 疑いと夢について(1981)//
エンパイア・スター(1966)//
ディレイニー小伝(髙橋良平)/「時は準宝石の螺旋のように」のこと(伊藤典夫)/「エンパイア・スター」推測だらけの訳者補記(酒井昭伸)/収録作品データ(国書刊行会編集部)など、
582ページ。


 「本書は今まで単行本未収録の短篇を入れた、おそらく最終版といえる短篇集 Aye, and Gommorah and Other Stories (Vintage, 2003) に、同じくヴィンテージ・ブックス版の Empire Star (2001) を合わせた日本オリジナルの短篇集である。作品の収録順は原書にしたがった」 (「収録作品データ」、p.577)。

 ディレイニーについて論じたものとして;

安藤礼二、『祝祭の書物 表現のゼロをめぐって』、2012、pp.131-146:「第9章 迷宮」
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ポール・プロイス(1942- );

ポール・プロイス、小隅黎・久志本克己訳、『天国への門』(ハヤカワ文庫 SF 533)、早川書房、1983
原著は Paul Preuss, The Gates of Heaven, 1980

ポール・プロイス、小隅黎・久志本克己訳、『地獄への門』(ハヤカワ文庫 SF 574)、早川書房、1984
原著は Paul Preuss, Re-Entry, 1981
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クリス・ボイス(1943-1999);

クリス・ボイス、冬川亘訳、『キャッチワールド』(ハヤカワ文庫 SF 431)、早川書房、1981
原著は Chris Boyce, Catchworld, 1975
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クリストファー・プリースト(1943- );

クリストファー・プリースト、安田均訳、『逆転世界』(サンリオSF文庫 43-B)、サンリオ、1983
原著は Christopher Priest, Inverted World, 1974

クリストファー・プリースト、中村保男訳、『ドリーム・マシン』(創元推理文庫 655-2)、東京創元社、1979
原著は Christopher Priest, A Dream of Wessex, 1977
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イアン・ワトスン(1943- );

イアン・ワトスン、細見遙子訳、『川の書 黒き流れ 1』(創元SF文庫 695-02)、東京創元社、1994
原著は Ian Watson, The Book of the River, 1983

  同、  『星の書 黒き流れ 2』(創元SF文庫 695-03)、東京創元社、1994
原著は Ian Watson, The Book of the Stars, 1984

  同、  『存在の書 黒き流れ 3』(創元SF文庫 695-04)、東京創元社、1994
原著は Ian Watson, The Book of Being, 1985
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デイヴィッド・アンブローズ(1943- );

デイヴィッド・アンブローズ、渡辺庸子訳、『リックの量子世界』(創元SF文庫 735-01)、東京創元社、2010
原著は David Ambrose, TheMan Who Turned into Himself, 1993
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ヴァーナー・ヴィンジ(1944- );

ヴァーナー・ヴィンジ、中原尚哉訳、『遠き神々の炎』(上下)(創元SF文庫 705-01/02)、東京創元社、1995
原著は Vernor Vinge, A Fire upon the Deep, 1992
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ジョン・ヴァーリイ(1947- );

ジョン・ヴァーリイ、深町真理子訳、『ティーターン』(創元推理文庫 673-1)、東京創元社、1982
原著は John Varley, Titan, 1979

  同、  小野田和子訳、『ウィザード』(上下)(創元SF文庫 673-02/03)、東京創元社、1994
原著は John Varley, Wizard, 1980

 このシリーズには後 Demon, 1984 があるのですが、邦訳が出たかどうかは不詳

ジョン・ヴァーリイ、風見潤訳、『ミレニアム』(角川文庫 731-1)、角川書店、1988
原著は John Varley, Millenium, 1983
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タニス・リー(1947- )については「インド」のページの「おまけ」で;

タマスターラー』、1987

 を挙げましたが、また;

タニス・リー、浅羽莢子訳、『闇の公子』(ハヤカワ文庫 FT 45)、早川書房、1982
原著は Tanith Lee, Night's Master, 1978

タニス・リー、室住信子訳、『死の王』(ハヤカワ文庫 FT 86)、早川書房、1986
原著は Tanith Lee, Death's Master, 1979

タニス・リー、浅羽莢子訳、『惑乱の公子』(ハヤカワ文庫 FT 89)、早川書房、1986
原著は Tanith Lee, Delusion's Master, 1981

タニス・リー、浅羽莢子訳、『熱夢の女王』(上下)(ハヤカワ文庫 FT 121/122)、早川書房、1989
原著は Tanith Lee, Delirium's Mistress, 1986

タニス・リー、浅羽莢子訳、『妖魔の戯れ』(ハヤカワ文庫 FT 140)、早川書房、1990
原著は Tanith Lee, Night's Sorceries, 1987

 以上、〈平たい地球〉シリーズです。
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ウィリアム・ギブスン(1948- )については、

 ヴードゥーに関連して「アメリカ大陸など」の頁の「おまけ」で


モナリザ・オーヴァドライヴ』(1988)

 「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」のページの「おまけ」でブルース・スターリングとの共著

ディファレンス・エンジン』(1990)

 を挙げましたが、三部作の最終編にあたる『モナリザ・オーヴァドライヴ』に先立つのが;

ウィリアム・ギブソン、黒丸尚訳、『ニューロマンサー』(ハヤカワ文庫 SF 672)、早川書房、1986
原著は William Gibson, Neuromancer, 1984

ウィリアム・ギブソン、黒丸尚訳、『カウント・ゼロ』(ハヤカワ文庫 SF 735)、早川書房、1987
原著は William Gibson, Count Zero, 1986
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ナンシー・クレス(1948- );

ナンシー・クレス、金子司訳、『プロバビリティ・ムーン』(ハヤカワ文庫 SF 1688)、早川書房、2008
原著は Nancy Kress, Probability Moon, 2000

  同、  『プロバビリティ・サン』(ハヤカワ文庫 SF 1694)、早川書房、2008
原著は Nancy Kress, Probability Sun, 2001

  同、  『プロバビリティ・スペース』(ハヤカワ文庫 SF 1696)、早川書房、2009
原著は Nancy Kress, Probability Space, 2002
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テリー・プラチェット(1948-2015);

テリー・プラチェット、安田均訳、『ディスクワールド騒動記 1』(角川文庫 ン 13-1)、角川書店、1991
原著は Terry Pratchett, The Colour of Magic, 1983

 →こちら(「インド」の頁の「iv. 象・亀・蛇など」)でもふれた、巨大な亀の背中に4匹の象がのり、象たちが円盤状の世界を支えているという設定のシリーズ。
 宇宙の構造だけでなく、魔法や呪文、神々についても面白い設定がなされています。《4分33秒》(ジョン・ケージ)ならぬ
「何人たりとも4分32秒以上は(この数字は、200年にわたる注意深い実験の結果、はじき出されたものだ)とどまることを許されない部屋……」(第2章、p.130)
なんて1節があったりもしました。

 邦訳はシリーズ全てではありませんが、ぼちぼち出ているようで、以下、とりあえず手元にあるものだけ;


テリー・プラチェット、久賀宣人訳、『魔道士エスカリナ』、三友社出版、1997
原著は Terry Pratchett, Equal Rites, 1987

 『ネクロテレミコン』なる本の名が挙がったりします(第6章、p.223)。→そちらにも挙げておきます:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など

テリー・プラチェット、久賀宣人訳、『死神の館』、三友社出版、1997
原著は Terry Pratchett, Mort, 1987

テリー・プラチェット、久賀宣人訳、『三人の魔女』、三友社出版、1997
原著は Terry Pratchett, Wyrd Sisters, 1988

テリー・プラチェット、久賀宣人訳、『ピラミッド』、鳥影社、1999
原著は Terry Pratchett, Pyramids, 1989

 →あちらにも挙げてあります:「エジプト」の頁の「おまけ

テリー・プラチェット、久賀宣人訳、『刈り入れ』、鳥影社、2004
原著は Terry Pratchett, Reaper Man, 1991

テリー・プラチェット、久賀宣人訳、『異端審問』、鳥影社、2000
原著は Terry Pratchett, Small Gods, 1992

テリー・プラチェット、久賀宣人訳、『ソウル・ミュージック』、鳥影社、2006
原著は Terry Pratchett, Soul Music, 1994

 プラチェットからはニール・ゲイマン(1960- )との次の共作が邦訳されています;

ニール・ゲイマン、テリー・プラチェット、金原瑞人・石田文子訳、『グッド・オーメンズ』(上下)(角川文庫 ケ7-6/7-7)、角川書店、2019
 2007年刊本の文庫化
原著は
Neil Gaiman and Terry Pratchett, Good Omens : The Nice and Accurate Prophecies of Agnes Nutter, Witch, 1990

 反キリストとハルマゲドンの預言、黙示録の四騎士、神の創造の意図などを巡って、一応の主人公であるエデンの東の門を守っていた天使アジラフェールと誘惑の蛇・悪魔クローリーのコンビが右往左往するというお話。
 天界や地獄の事情も随時触れられるので、→こちらにも挙げておきます(「天使、悪魔など」の頁の「おまけ」)
 ゲイマンについては→そちらも参照(『アメリカン・ゴッズ』等:「北欧、ケルト、スラヴなど」の頁の「おまけ」)]

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デイヴィッド・ブリン(1950- );

デイヴィッド・ブリン、酒井昭伸訳、『スタータイド・ライジング』(上下)(ハヤカワ文庫 FT 636/637)、早川書房、1985
原著は David Brin, Startide Rising, 1983
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グレッグ・ベア(1951- )

 「アメリカ大陸など」のページの「おまけ」で


女王天使』(1990)

 に登場してもらいましたが、さらに;

グレッグ・ベア、宇佐川晶子訳、『無限コンチェルト』(ハヤカワ文庫 FT 104)、早川書房、1987
原著は Greg Bear, The Infinity Concerto, 1984

  同、  『蛇の魔術師』(ハヤカワ文庫 FT 118)、早川書房、1988
原著は Greg Bear, The Serpent Mage, 1986

 前者は→こちらにも挙げておきます:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ

グレッグ・ベア、小川隆訳、『ブラッド・ミュージック』(ハヤカワ文庫 SF 708)、早川書房、1987
原著は Greg Bear, Blood Music, 1985

 →そちら(「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など」の項の中の黒史郎、『童提灯』(2015)で、
 また→あちら(「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「牧野修」の項)でも触れました


グレッグ・ベア、酒井昭伸訳、『永劫』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 726/727)、早川書房、1987
原著は Greg Bear, Eon, 1985

 本作品は

ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『パラレルワールド』、2006、pp.361-363

 でも引きあいに出されていました。


グレッグ・ベア、酒井昭伸訳、『久遠』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 929/930)、早川書房、1991
原著は Greg Bear, Eternity, 1988
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ダグラス・アダムス(1952-2001)およびオーエン・コルファー(1965- );

ダグラス・アダムス、風見潤訳、『銀河ヒッチハイク・ガイド』(新潮文庫 赤 196-1)、新潮社、1982
原著は Douglas Adams, The Hitch-Hiker's Guide to the Galaxy, 1979

  同、  『宇宙の果てのレストラン』(新潮文庫 赤 196-2)、新潮社、1983
原著は Douglas Adams, The Restaurant at the Edge of the Universe, 1980

  同、  『宇宙クリケット大戦争』(新潮文庫 赤 196-3)、新潮社、1985
原著は Douglas Adams, Life, the Universe and Everything, 1982

  同、 安原和美訳、『さようなら、いままで魚をありがとう』(河出文庫 ア 4-4)、河出書房、2006
原著は Douglas Adams, So Long, and Thanks for All the Fish, 1984

  同、 安原和美訳、『ほとんど無害』(河出文庫 ア 4-5)、河出書房、2006
原著は Douglas Adams, Mostly Harmless, 1992

 アダムス歿後の公式の続篇;

オーエン・コルファー、安原和美訳、『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』(上下)(河出文庫 コ 5-1/2)、河出書房、2011
原著は Eoin Colfer, And Another Thing... : Douglas Adams's Hitchhiker's Guide to the Galavy Part Six of Three, 2009

 下記リンク先で触れたようにトールやアスガルドが登場するなど、下の『長く暗い魂のティータイム』同様、神々が物語上重要な位置を占めています(〈流謫の神々〉の主題に属するものとして→こちらでも挙げています:「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「ハイネと〈流謫の神々〉その他」)。その露払いに留まるとはいえクトゥルフも現われてくれます(上巻、第6章、pp.189-196。下巻、第11章、p.224 も参照)。
 ちなみにこの世界では

「神々が存在しはじめたのは、ビッグ・バンの数百万分の一秒後のことである。したがって、この宇宙を創造したのは基本的に神ではない。むしろ、この宇宙が神々を創造したのだ。これは神の
宮居(みやい)においては耐えがたい話題であり、ディナーの席で持ち出すことは完全に禁じられている」

とのことでした(上巻、第6章、p.198)。

 また別の連作;

ダグラス・アダムス、安原和見訳、『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』(河出文庫 ア 4-6)、河出書房新社、2017
原著は Douglas Adams, Dirk Gently's Holistic Detective Agency, 1987

ダグラス・アダムス、安原和見訳、『長く暗い魂のティータイム ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』(河出文庫 ア 4-7)、河出書房新社、2018
原著は Douglas Adams, The Long Dark Tee-Time of the Soul, 1988

 『宇宙の果てのレストラン』や『宇宙クリケット大戦争』、コルファー『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』などともからめて→こちらで触れました:「北欧、ケルト、スラヴなど」の頁の「おまけ」。
 また、→そちらでも引きました:ミケランジェロ《聖家族(トンド・ドーニ)》(1503-04)の頁の「おまけ


ミチオ・カク、斉藤隆央訳、『パラレルワールド』、2006、p.177, p.415

 でも引きあいに出されていました。


 ちなみに、
上西園誠訳、『ピンク・フロイド 全スタジオ・アルバム徹底検証』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2019、pp.74-75:ジェム・ロバーツ、「特別な関係」
 は、
「作家で風刺家、フロイド・ファンだったダグラス・アダムズはバンドのよき友人とな」(p.74)
ったことを記しています。p.105 も参照。

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デイヴィッド・ジンデル(1952- );

デイヴィッド・ジンデル、関口幸男訳、『ありえざる都市』(全3巻)(ハヤカワ SF 1099-1101)、早川書房、19956
原著は David Zindell, Neverness, 1988
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クライヴ・バーカー(1952- );

クライヴ・バーカー、酒井昭伸訳、『ウィーヴワールド』(上下)、集英社、1989
原著は Clive Barkerm Weaveworld, 1987

クライヴ・バーカー、山本光伸訳、『不滅の愛』(上下)(角川文庫 ハ 9-1/2)、角川書店、1991
原著は Clive Barkerm The Great and Secret Show, 1989


 バーカーの原作に基づく映画シリーズ「『ヘル・レイザー』 1987 『ヘルレイザー2』 1988 『ヘルレイザー3』 1992 『ヘルレイザー4』 1996」を、「『Meiga を探せ!』より、他」の出張所頁として取りあげました→こちら
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キム・スタンリー・ロビンスン(1952- );

キム・スタンリー・ロビンスン、内田昌之訳、『永遠(とわ)なる天空の調(しらべ)』(創元SF文庫 707-01)、東京創元社、1996
原著は Kim Stanley Robinson, The Memory of Whiteness, 1985

 →こちらにも挙げておきます:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ
 著者はプログレッシヴ・ロックのファンだそうで、上の作品も「イエスへのオマージュ」とのことです。

巽孝之、「キメラの音楽」、『ユリイカ』、no.418、1999.5:「特集 モンスターズ!」、p.83(巽孝之、『プログレッシヴ・ロックの哲学』(serie 'aube')、平凡社、2002、p.100)。

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ロバート・チャールズ・ウィルスン(1953- );

ロバート・チャールズ・ウィルスン、茂木健訳、『時間封鎖』(上下)(創元SF文庫706-03/04)、東京創元社、2008
原著は Robert Charles Wilson, Spin, 2005

  同、  『無限記憶』(創元SF文庫706-05)、東京創元社、2009
原著は Robert Charles Wilson, Axes, 2007

  同、  『連環宇宙』(創元SF文庫706-06)、東京創元社、2012
原著は Robert Charles Wilson, Vortex, 2011

 下掲のピーター・ワッツ『エコープラクシア』と立て続けに読んだせいか、本三部作で〈仮定体〉と呼ばれる存在の在り方、また三作目に登場する集合精神など、モティーフに通じる点があるように思われました。
 また三作目の最終章では、時空をすっ飛んでくれます。
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ロバート・リード(1956- );

ロバート・リード、伊藤典夫訳、『地球間ハイウェイ』(ハヤカワ文庫 SF 1466)、早川書房、2004
原著は Robert Reed, Down the Bright Way, 1991
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スティーヴン・バクスター(1957- );

スティーヴン・バクスター、古沢嘉通訳、『天の筏』(ハヤカワ文庫 SF 1043)、早川書房、1993
原著は Stephen Baxter, Raft, 1991

スティーヴン・バクスター、小野田和子訳、『時間的無限大』(ハヤカワ文庫 SF 1097)、早川書房、1995
原著は Stephen Baxter, Timelike Infinity, 1992

スティーヴン・バクスター、内田昌之訳、『フラックス』(ハヤカワ文庫 SF 1129)、早川書房、1996
原著は Stephen Baxter, Flux, 1993

スティーヴン・バクスター、小木曽絢子訳、『虚空のリング』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 1143/1144)、早川書房、1996
原著は Stephen Baxter, Ring, 1994

スティーヴン・バクスター、中原尚哉訳、『タイム・シップ』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 1221/1222)、早川書房、1998
原著は Stephen Baxter, The Time Ships, 1995

 ウェルズの「タイム・マシン」(1895)の続篇

スティーヴン・バクスター、古沢嘉通・他訳、『プランク・ゼロ ジーリー・クロニクル 1』(ハヤカワ文庫 SF 1427)、早川書房、2002

  同、  『真空ダイアグラム ジーリー・クロニクル 2』(ハヤカワ文庫 SF 1430)、早川書房、2003
原著は Stephen Baxter, Vacuum Diagrams, 1997

 アーサー・C・クラークとの共作『過ぎ去りし日々の光』は→こちらを参照:本頁上掲「アーサー・C・クラーク」の項
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ピーター・ワッツ(1958- );

ピーター・ワッツ、嶋田洋一訳、『エコープラクシア 反響動作』(上下)(創元推理文庫 SF ワ 3-3、3-4)、東京創元社、2017
原著は Peter Watts, Echopraxia, 2014, with "The Colonel"

嶋田洋一訳、『ブラインドサイト』(上下)(創元推理文庫 SF ワ 3-1、3-2)、東京創元社、2013(原著は Peter Watts, Blindsight, 2006 )の続篇

 →こちらで少し触れました:本頁上掲「ロバート・チャールズ・ウィルスン」の項。


ピーター・ワッツ、嶋田洋一訳、『巨星 ピーター・ワッツ傑作選』(創元推理文庫 SF ワ 3-5)、東京創元社、2019
天使/遊星からの物体Xの回想/神の目/乱雲/肉の言葉/帰郷/炎のブランド/付随的被害/ホットショット/巨星/島//
解説(高島雄哉)など、
368ページ。


 「日本オリジナル短編集」(扉ページ)。
 「遊星からの物体Xの回想」(
"The Things", 2010)は邦題どおりジョン・カーペンターの映画『遊星からの物体X』(1982)のお話を"The Thing(s)"の視点で語り直したもので、映画のことを知っていれば短編集もっとも取っつきやすいかもしれません。

「わたしは宇宙に広がり、無数の世界に出会い、交霊した。適合者が不適合者を再形成することで、宇宙全体が喜びの中、ごくわずかづつ上方に向かっていた。わたしは兵士で、敵はエントロピーそのものだった。わたしは創造がそれ自体を完成させるための手にほかならなかった」

なんてくだりがありました(p.36)。
 「乱雲」(
"Nimbus", 1994)は雲が生きものと化した世界の話。ただし雲とのコミュニケーションはこの時点ではとりえないものと見なされているようです。フレッド・ホイルの『暗黒星雲』とかレムの『ソラリス』が連想されたりもします。有川浩の『空の中』(2004)はどうでしたっけ。「古き者たち、旧約の神々、ギリシャ神話の神々」が引きあいに出されるのはさておき(p.97)、

「イングランドのロック・バンド、ジェスロ・タルの全曲CDコレクション?」

というくだりを見かけるやいなや(p.87)、拍手する向きもいらっしゃることでしょう。
 「ホットショット」(
"Hotshot", 2014)、「巨星」("Giants", 2014)、「島」("The Island", 2009)は「Sunflowers cycle と呼ばれる連作」で、「本書では作中時系列順に収録」したとのこと(p.222)。「ホットショット」で主人公はある種の〈幻視(ヴィジョン)〉を見ます(pp.248-249);

「わたしは蜘蛛の巣のような宇宙を見ていた。すべてがすべてとつながっている。…(中略)…開かれなかったドア、辿られなかった道筋の中からアンプリテュヘドロンが自己生成するのを見ている。そこでは膨大な可能性が失われ、多くのゲートが一ピコ秒のあいだにいっせいに閉じられる。物理法則が確定し、無数の自由が永遠の消滅する…(後略)」。

 引用中のアンプリテュヘドロン
amplituhedron は2013年に Nima Arkani-Hamed and Jaroslav Trnka によって導入された幾何学的構造で、いくつかの量子場理論において、粒子の相互作用の計算の簡略化を可能にするとのこと(→英語版ウィキペディアの該当ページ)。また p.235 で触れられる「スモーリンの宇宙論」は編集部解説ページ(p.222)にもあるように、上掲『エコープラクシア(下)』に附された「参考文献」中で解説されていました(件の p.202)。スモーリンの邦訳は→こちら(「近代など(20世紀~)」の頁の「ii. 1990年代前後」)で挙げた『宇宙は自ら進化した』(2000)以外にも何冊かあるようです。
 「島」は「乱雲」以上に大規模な生きものが登場、主人公は

「わたしはまだ神々を信じる準備ができていなかった」(p.321)

と述べるのですが……というお話。
…………………

メリッサ・スコット(1960- ) ;

メリッサ・スコット、梶元靖子訳、『天の十二分の五』(創元SF文庫 687-02)、東京創元社、1992
原著は Melissa Scott, Five-Twelfths of Heaven, 1985

 →こちらにも挙げておきます:「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ

  同、  『孤独なる静寂』(創元SF文庫 687-03)、東京創元社、1992
原著は Melissa Scott, Silence in Solitude, 1986

  同、  『地球航路』(創元SF文庫 687-04)、東京創元社、1992
原著は Melissa Scott, The Empress of Earth, 1987
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ロバート・J・ソウヤー(1960- );

ロバート・J・ソウヤー、内田昌之訳、『さよならダイノサウルス』(ハヤカワ文庫 SF 1164)、早川書房、1996
原著は Robert J. Sawyer, End of an Era, 1994

ロバート・J・ソウヤー、内田昌之訳、『スタープレックス』(ハヤカワ文庫 SF 1257)、早川書房、1999
原著は Robert J. Sawyer, Starplex, 1996

ロバート・J・ソウヤー、内田昌之訳、『ホミニッド - 原人 -』(ハヤカワ文庫 SF 1500)、早川書房、2005
原著は Robert J. Sawyer, Hominids, 2002

  同、  『ヒューマン - 人類 -』(ハヤカワ文庫 SF 1520)、早川書房、2005
原著は Robert J. Sawyer, Humans, 2003

  同、  『ハイブリッド - 新種 -』(ハヤカワ文庫 SF 1535)、早川書房、2005
原著は Robert J. Sawyer, Hybrids, 2003
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グレッグ・イーガン(1961- );

グレッグ・イーガン、山岸真訳、『宇宙消失』(創元SF文庫 711-01)、東京創元社、1999
原著は Greg Egan, Quarantime, 1992

グレッグ・イーガン、山岸真訳、『順列都市』(上下)(ハヤカワ文庫 SF 1289/1290)、早川書房、1999
原著は Greg Egan, Permutation City, 1994

グレッグ・イーガン、山岸真編訳、『祈りの海』(ハヤカワ文庫 SF 1337)、早川書房、2000
貸金庫(1990)/キューティ(1989)/ぼくになることを(1990)/繭(1994)/100光年ダイアリー(1992)/誘拐(1995)/放浪者の軌道(1992)/ミトコンドリア・イヴ(1995)/無限の暗殺者(1991)/イェユーカ(1997)/祈りの海(1998)//
編・訳者あとがき/解説(瀬名秀明)など、
466ページ。


グレッグ・イーガン、山岸真編訳、『しあわせの理由』(ハヤカワ文庫 SF 1451)、早川書房、2003
適切な愛(1991)/闇の中へ(1992)/愛撫(1990)/道徳的ウイルス学者(1990)/移相夢(1993)/チェルノブイリの聖母(1994)/ボーダー・ガード(1999)/血をわけた姉妹(1991)/しあわせの理由(1997)//
編・訳者あとがき/解説(坂村健)など、
448ページ。


グレッグ・イーガン、山岸真訳、『万物理論』(創元SF文庫711-02)、東京創元社、2004
原著は Greg Egan, Distress, 1995

グレッグ・イーガン、山岸真訳、『ディアスポラ』(ハヤカワ文庫 SF 1531)、早川書房、2005
原著は Greg Egan, Diaspora, 1997

グレッグ・イーガン、山岸真編訳、『ひとりっ子』(ハヤカワ文庫 SF 1594)、早川書房、2006
行動原理(1990)/真心(1991)/ルミナス(1995)/決断者(1995)/ふたりの距離(1992)/オラクル(2000)/ひとりっ子(2002)//
編・訳者あとがき/解説(奥泉光)など、
440ページ。


グレッグ・イーガン、山岸真編訳、『TAP』(奇想コレクション)、河出書房新社、2008
新・口笛テスト(1989)/視覚(1995)/ユージーン(1990)/悪魔の移住(1991)/散骨(1988)/銀炎(1995)/自警団(1986/87)/要塞(1991)/森の奥(1992)/TAP(1995)//
編訳者あとがきなど、
374ページ。


グレッグ・イーガン、山岸真編訳、『プランク・ダイヴ』(ハヤカワ文庫 SF 1826)、早川書房、2011
クリスタルの夜(2008)/エキストラ(1990)/暗黒整数(2007)/グローリー(2007)/ワンの絨毯(1995)/プランク・ダイヴ(1998)/伝播(2007)//
編・訳者あとがき/解説(大野万紀)など、
416ページ。


グレッグ・イーガン、山岸真訳、『白熱光』(A Hayakawa Science Fiction Series 5012)、早川書房、2013
原著は Greg Egan, Incendescence, 2008
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J.グレゴリイ・キイズ(1963- );

J.グレゴリイ・キイズ、岩原明子訳、『水の都の王女』(上下)(ハヤカワ文庫 FT 237/238)、早川書房、1997
原著は J. Gregory Keyes, The Waterborn, 1996

  同、  、『神住む森の勇者』(上下)(ハヤカワ文庫 FT 246/247)、早川書房、1998
原著は J. Gregory Keyes, The Blachgod, 1997
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アレステア・レナルズ(1966- );

アレステア・レナルズ、中原尚哉訳、『啓示空間』(ハヤカワ文庫 SF 1533)、早川書房、2005
原著は Alastair Reynolds, Revelation Space, 2000

アレステア・レナルズ、中原尚哉訳、『量子真空』(ハヤカワ文庫 SF 1674)、早川書房、2008
原著は Alastair Reynolds, Redemption Ark, 2002
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テッド・チャン(1967- );

テッド・チャン、浅倉久志他訳、『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫 SF 1458)、早川書房、2003
原著は Ted Chiang, Stories of Your Life and Others, 2002
 バビロンの塔/理解/ゼロで割る/あなたの人生の物語/72文字/人類科学(ヒューマン・サイエンス)の進化/地獄とは神の不在なり/顔の美醜について-ドキュメンタリー//
作品覚え書き//解説(山岸真)など、
518ページ。


 「バビロンの塔」は→こちら(「図像、図形、色彩、音楽、建築など」の頁の「おまけ」)や、そちら(「怪奇城の外濠 Ⅲ」の頁の「おまけ」)でも触れています。またバベルの塔にちなんで→あちら(「メソポタミア」の頁の「おまけ」)や、→あちらの2:「怪奇城の外濠 Ⅱ」の頁の「塔など」も参照

 表題作は映画化されました;

『メッセージ』、2016、監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
原題は Arrival

 原作の大筋をほぼ忘れた状態で見た時は、ドンパチなしでちゃんとSFしてる映画だなあと思ったものですが、あらためて原作を読み返せば、ずいぶんドラマティックに脚色されており、また視覚的な要素が重視されていたことでした。
 ちなみに〈
七本脚(ヘプタポッド)〉は映像で見ると、クトゥルー神話は『狂気の山脈にて』に登場する〈古のもの〉を連想させなくもないのではないでしょうか。

テッド・チャン、大森望訳、『息吹』、早川書房、2019
原著は Ted Chiang, Exhalation, 2019
 商人と錬金術師の門/息吹/予期される未来/ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル/デイシー式自動ナニー/偽りのない事実、偽りのない気持ち/大いなる沈黙/オムファロス/不安は自由のめまい//
作品ノート/訳者あとがきなど、
432ページ。


 宇宙論的なテーマを扱っているのは、とりわけ表題作、そして「オムファロス」、「不安は自由のめまい」でしょうか。
 表題作は機械めいた生命が住む宇宙のエントロピーと、他の宇宙の存在、
 「オムファロス」は「〝若い地球〟創造説」(「作者ノート」、p.409、また「訳者あとがき」、pp.427-428 に「〝若い地球説〟
(Young Earth creationism)」)、
 「不安は自由のめまい」では量子論の多世界解釈において、分岐した世界間が〈プリズム〉という装置によって、制約付きではあれ連絡可能になったという設定が扱われています。
 以上3篇を含め、他の短篇でもしばしば、宿命と自由意志の間での選択という、ある意味倫理的な主題が核をなしているようです。
…………………

 この他、アンソロジーで;

J・J・アダムズ編、中原尚哉・他訳、『黄金の人工太陽 巨大宇宙SF傑作選』(創元SF文庫 SF ン 10-4)、東京創元社、2022
原著は Edited by John Joseph Adaams, Cosmic Powers, 2017
序文(ジョン・ジョゼフ・アダムズ)//
時空の一時的困惑(チャーリー・ジェーン・アンダーズ)/禅と宇宙船修理技術(トバイアス・S・バッケル)/甲板員ノヴァ・ブレード、大いに歌われた経典(ベッキー・チェンバーズ)/晴眼の時計職人(ヴィラル・カフタン)/無限の愛(ジョゼフ・アレン・ヒル)/見知らぬ神々(アダム=トロイ・カストロ&ジュディ・B・カストロ)/悠久の世界の七不思議(キャロリン・M・ヨークム)/俺たちは宇宙地質学者、なのに(アラン・ディーン・フォスター)/黄金の人工太陽(カール・シュレイダー)/明日、太陽を見て(A・マーク・ラスタッド)/子どもたちを連れて過去を再訪し、レトロな移動遊園地へ行ってみよう!(ショーン・マグワイア)/竜が太陽から飛び出す時(アリエット・ド・ボダール)/ダイヤモンドとワールドブレイカー(リンダ・ナガタ)/カメレオンのグローブ(ユーン・ハ・リー)/ポケットのなかの宇宙儀(カット・ハワード)/目覚めるウロボロス(ジャック・キャンベル)/迷宮航路(カメロン・ハーレイ)/霜の巨人(ダン・アブネット)//
解説(堺三保)など、
550ページ。


 邦題の表題作カール・シュレイダー「黄金の人工太陽」では、〈同じものの永劫回帰〉とそこでの選択がテーマとなっています。宇宙マイクロ波背景放射、
「このビッグバンの残り火は、時間の始まりから届く光ではない。巨大な閃光の残り火として見える過去は、前回の宇宙のかすかな残光なのだ。
 宇宙は140億歳ではない。無限に古い。想像もつかない長い時間のなかでビッグクランチとビッグバンをくりかえし、みずからを更新してきた。しかし明白なことが一つあった。現世代の宇宙と前世代の宇宙で物理法則は同じだ。変わっていない。無限のサイクルのなかで物質とエネルギーは結合と再結合をくりかえし、あらゆる組み合わせを試して、何度も再スタートしてきた」(o.267)。
「『時間は有限であり、万物は反復する。ゆえにーー』
『--起こりえることがすべて起きるわけではない』」(p.279)
「しかし宇宙は記憶を持たない。だから、過去にやったことを回避してほかの事象の組み合わせを試そうとはしない」(p.280)。
 なお人工太陽エオスは
「わたしは一人ではなく、多数の姉妹とともに太陽コロナの上で踊っています」(p.266)
と語ります。 

 ジャック・キャンベル「目覚めるウロボロス」では、宇宙の終わりと再開闢が描かれます。
「無限が圧縮されて特異性に変わるには長い時間がかかる。…(中略)…いま世界の外には特異性しかない。そのまわりをめぐっている」(p.463)。
「時空間が極限まで引きのばされ、すべての物質とエネルギーが極小の一点に圧縮された結果、宇宙の法則が変わって、この世界は特異性を不安定化できるポテンシャルを獲得した」(p.478)。

 宇宙そのものをテーマにしているのは以上二作ですが、いくつもの作品で、現在の地球の生物の尺度を超えた、巨大な規模の存在であるとか、あるいはきわめて長い時間を生きる存在であるとかが登場するのが印象的でした。

 たとえばチャーリー・ジェーン・アンダーズ「時空の一時的困惑」における、「お広様」は、
「宇宙に浮かぶ丸い肉のかたまりで、よくある太陽系の半分くらいの大きさがあり、何十億というぬるぬるの
眼口(アイマウス)で虚空をにらみながら、青く大きな太陽、ナクソスの周回軌道を回っている」(p.13)
というものです。なお、
「時空に〝一時的困惑〟を生み出すことで機能する」
という「装置。超航行シンクロトリックス」が登場します(p.21)。

 キャロリン・M・ヨークム「悠久の世界の七不思議」で主人公プライムは、
「時空に小さなひだを作り、崩壊する神殿の被害を受けない場所に子供を生みだした。人間の姿を与えるつもりだったのに、時空のひだのせいでその子は時間の外におかれ、あらゆる時に存在する者となってしまう。人間の姿が重なりあって一列に連なり、果てしなく長い蛇のように永遠の時のなかをのびていく者」(p.219)
とのことです。

 A・マーク・ラスタッド「明日、太陽を見て」には
「宇宙規模の体を圧縮して鎧のなかに閉じこめた」(p.310)、
「太陽王」たちが登場します。

 ヴィラル・カフタン「晴眼の時計職人」では、それ自身「創造者」の被造物であるウモスがある惑星の生物進化を司ります。
「だれかが創造者をつくったはずだからです。その創造者もだれかがつくった。起源はどこのだれでしょうか?」(p.131)

 カット・ハワード「ポケットのなかの宇宙儀」では、人々は数多くの〈ポケット宇宙〉をペットのようにしていますが、尺度の取り方によっては、〈ポケット宇宙〉はそのまま実物大の宇宙で、人々は創造神なのだと見なすこともできるかもしれません。

 ジョゼフ・アレン・ヒル「無限の愛」には「太古の宇宙神にちょっかいを出すのは好ましくないというのが、文化と種族を横断して一般的に合意されているからだ」(p.155)
とのくだりがありました。なお「透明ピンクのゼリー塊」である「ビーブラックス」について、
「ゼリーと移動速度のせいで少しだけぼやけて見える、果てしなく広がる群れ。その一つ一つの内部に、アリア自身の別バージョンーー存在しうるあらゆる宇宙において、ビーブラックスと旅した、あるいは旅することになる、すべてのアリアがいる。その全員が、瞬間瞬間の連なりがつくる超空間の急流を、日差しのなかで躍る埃のように流れくだっていく」(p.139)
なんてイメージも出てきました。

 アダム=トロイ・カストロ&ジュディ・B・カストロ「見知らぬ神々」でも、文字どおりの神々が登場します。

 遠未来や宇宙規模の空間を舞台にする時、人間の尺度を超えた神的存在が呼びこまれる、といったイメージの傾向でもあるのでしょうか。


追補:余談になりますが、上記「時空の一時的困惑」の著者チャーリー・ジェーン・アンダーズによる長篇『空のあらゆる鳥を』(市田泉訳、創元海外SF叢書 15、東京創元社、2020)では、

 「木は赤いか?」

という問いが何度か発せられます(p.126:第15章、p.344:第32章、p.362:第34章)。もとの勤め先が所蔵するルドンの《アレゴリー - 太陽によって赤く染められたのではない赤い木》(1905)が連想されずにいませんでした。タイトルの由来はわかっていないのですが。ちなみに作品解説を何度か書いたことがあって、その内の一つが→こちら(美術館のコレクション2006年度第2期展示(2006.9.12)の際の解説パンフレット) [ < 三重県立美術館のサイト
 ちなみにエリン・モーゲンスターンの『夜のサーカス』(宇佐川晶子訳、早川書房、2012)に、

 「彼が真紅の木のほうをむくと、輝きが増して、燃えさしのような弱々しい色が、赤々と燃えさかる暖かな赤になった」(p.370)

との一文がありました。同じ著者による『地下図書館の海』について→こちらで触れました:「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ

 チャーリー・ジェーン・アンダーズに戻ると、別の長篇『永遠の真夜中の都市』(市田泉訳、創元海外SF叢書 17、東京創元社、2022)に登場する、「ワニ」とも「ゲレト」と呼ばれる生物は、

 「密生した毛の下に、もっと分厚い甲羅」(p.28)、「長い触手」と「頭から突き出した鋏」(p.29)を有し、鋏の「中心に、小指くらいの大きさのうごめく無数の舌が固まって生えている」(同上)

と描写されます。とはいうものの、もう一つからだ全体のイメージがつかめない。「解説」(三村美衣)では、

 「私の貧相なイマジネーションではワニの着ぐるみをきたクトゥルーさんを想い浮かべるのが精一杯」(p.404)

なんて書かれていましたが、実際この種族は、舞台となる惑星に地球の人類がやって来る前から棲んでいて、高度な文明を営んでいました。その点で、山田正紀の「銀の弾丸」や『アビス』(1989、監督:ジェイムズ・キャメロン)流に反転した、良き〈古のもの〉に近いと見なすこともできなくはないかもしれません(→そちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「山田正紀」の項)。
 ちなみに舞台となる惑星の環境は、ラヴクラフトの「狂気の山脈にて」の舞台である南極以上に苛酷で、さらに、二つの都市の間にひろがる「人殺しの海」では、「バイソン」(p.132 など)や「巨大イカ」(p.302 など)といった生物が襲撃してくるのでした。
 
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 最後にバンド・デシネから-こちらもまたまったく詳しくないので(→こちらも参照:「怪奇城の外濠 Ⅲ」の頁の「おまけ」)、例によってたまたま目についたものということで;

ピエール・ワゼム作、フレデリック・ペータース画、鈴木賢三訳、『KOMA 魂睡』、パイ インターナショナル、2014
原著は Pierre Wazem et Frederik Peeters, KOMA, 2003-2008

 →「暖炉の中へ、暖炉の中から - 怪奇城の調度より」の頁の「プロローグ」で触れました
2014/06/08 以後、随時修正・追補
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