言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など
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言葉や名前の呪術というのは、この地球の人類間ではほとんど普遍的と呼べそうなひろがりを持っているようで、これまで挙げた中でも宇宙論に関わるものとして、 道教の〈開劫度人説〉における〈天書〉であるとか(→こちらを参照:「中国 Ⅱ」の頁の「vi. 道教など」)、 空海の『声字実相義』(→そちらを参照:「仏教 Ⅱ」の頁の「v. 仏身論、密教など」) などが目につくところですが、ひとつの範例をなすのが; G.ショーレム、高尾利数訳、「神の名とカバラーの言語論」、『ユダヤ教神秘主義』、1975、pp.11-69 言語神秘主義/聖書およびラビ的ユダヤ教における神の名/『イェツィラの書』/名の魔術と神秘主義の間で/文字とセフィロート/盲人イーザクの言語論/律法の中では一度も語られない - Joseph Dan, Jewish Mysticism. Volume 3 : The Modern Period, 1999, 所収の "6. The Language of Mystical Prayer", "7. The Name of God, the Name of the Rose, and the Concept of Language in Jewish Mysticism", "8. The Language of the Mystics in Medieval Germany" また ピンカス・ギラー、中村圭志訳、『カバラー』、2014、「第9章 神の名」 なども参照 もちろん文字の神秘学はカバラーの専売特許ではなく、数秘論とない交ぜになりつつ、たとえばグノーシス諸派の内、アラビア人モノイモスやウァレンティノス派のマルコスにそうした思弁を見出せますし、イスラームには〈ジャフル〉と呼ばれる術がありました; モノイモスについて; Werner Foerster, english translation edited by R. McL. Wilson, Gnosis. A Selection of Gnostic Texts. 1. Patristic Evidence, 1972, pp.246-250 大貫隆訳、『キリスト教教父著作集 第19巻 ヒッポリュトス 全異端反駁』、2018、pp.344-349、407-408 マルコスについて; 同上、pp.198-221 Nicolas Förster, Marcus Magus. Kult, Lehre und Gemaindeleben einer valentiniaschen Gnostikergruppe. Sammlung der Quellen und Kommentar, 1999 大貫隆訳、『キリスト教教父著作集 第2巻Ⅰ エイレナイオス1 異端反駁Ⅰ』、2017、pp.57-94 大貫隆訳、『キリスト教教父著作集 第19巻 ヒッポリュトス 全異端反駁』、2018、pp.269-289 大貫隆、「グノーシスと異言(グロッソラリア)」、『宗教研究』、2010 も参照 〈ジャフル〉について; 「ジャフル」、『岩波 イスラーム辞典』、2002、pp.460-461 Gernot Windfuhr, ‘JAFR’[ <Encyclopædia Iranica ] また「フルーフィー派」の項や、 アンリ・コルバン、黒田壽郎・柏木英彦訳、『イスラーム哲学史』、1974、pp.169-175:「第4章5 言語哲学」 Ibn al-ʻArabī.The Meccan Revelations, volumeⅡ, 1988/2004 中の”The Science of Letter” なども参照 イスラームにおいては、〈神名論〉というのも、ユダヤとは別の形で展開したようです。たとえば; 五十嵐一、『イスラーム・ルネサンス』、1986、「Ⅱ 第8章 アッラーの神 - ひとつの神名論的反省 -」 W.C.チティック、「非現象から現象世界へ - イブン・アラビーの『存在一性論』」、1988 またリンク先の箇所に続いて挙げた同じ Chittick による他の著書も参照 松本耿郎、『イスラーム政治神学 ワラーヤとウィラーヤ』、1993、「第1章 イスラームの存在論と神名論」 青柳かおる、『イスラームの世界観 ガザーリーとラーズィー』、2005、「第3章 神学から神秘主義への転換-ガザーリーの神名論」および「第4章 ラーズィーの神秘思想-神名注釈書の分析」 他に; Henry Corbin, "L'initiation ismaélienne ou l'ésotérisme et le verbe", L'homme et son ange. Initiation et chevalerie spirituelle, 1983 など、さらに本頁後掲の→こちらも参照 また 塩尻和子、「クルアーンと『神の言葉』(Kalām Allāh)」、『イスラームの人間観・世界観 - 宗教思想の深淵へ』、2008、pp.101-122 ロゴスとカラーム/聖典研究の立場/「言葉」(kalām)の定義/生成された言葉/恩恵としての「言葉」 〈神名論〉については; ディオニシオス・アレオパギテース、「神名論」、1992 も参照 漢字については後でも少しふれますが(→本頁下掲のこちら)、 武田雅哉、『蒼頡たちの宴』、1994 も参照。 また 土屋昌明、「道教美術にみえる文字の問題」、『道教美術の可能性 アジア遊学 133』、2010、pp.71-82 「天書」の書法-「五篇真文」/符篆の解読と構造の問題 土屋昌明、「唐代道教の文字観 - 『雲笈七籤』巻7訳注研究」、『専修大学人文科学研究所月報 』、no.249、2011.2.28、pp.1-43 [ < 専修大学学術機関リポジトリ ] Permalink http://id.nii.ac.jp/1015/00003697/ 三浦國雄、「文字の根源へ 道教のおふだ」、『宇宙を駆ける知 天文・易・道教 知のユーラシア 4』、2014、pp.149-177 おふだの諸相/真文・祖炁の世界 →こちら(「中国 Ⅱ」の頁の「vi. 道教など」)や、あちら(同、「vii. 煉丹術・錬金術、風水など」)にも挙げておきます。 さらに; 大宮司朗、『霊符の呪法 道教秘伝』、2002 日本近世以降のいわゆる〈神代文字〉もこうした文脈に属するものなのでしょう→こちらを参照:「日本 Ⅱ」の頁の「x. いわゆる古史古伝・偽史、神代文字など」。 また近世・近代の言霊論については 鎌田東二、『記号と言霊』、1990 また 森瑞枝、「平田篤胤と『五岳真形図』」、『道教美術の可能性 アジア遊学 133』、2010 戻って、日本のいわゆる〈中世神話〉における〈大日の印文〉のモティーフも参照 →こちら(山本ひろ子、『中世神話』、1998、第2章Ⅰ「大日如来の印文神話」)や、 そちら(金沢英之、「中世におけるアマテラス - 世界観の組みかえと神話の変容」、2005)、 あちら(伊藤聡、『中世天照大神信仰の研究』、2011、第Ⅰ部第2章「大日本国説 - 密教化された神国思想」の1「大日印文」) ここ(小川豊生、『中世日本の神話・文字・身体』、2014、第Ⅲ部第3章「神話表象としての〈大海〉 - 中世叡山における大日印文説の生成」)、 その他 また、 小川豊生、「夢想する《和語》 - 中世の歴史叙述と文字の神話学 -」、1997 (上掲小川豊生、『中世日本の神話・文字・身体』、2014、第Ⅳ部第3章「幻像の悉曇 - 梵・漢・和三国言語観と文字の神話」に編入。同Ⅳ部の他の章なども参照)、 上掲伊藤聡、『中世天照大神信仰の研究』、2011、第4部第1章「梵漢和語同一観の成立基盤」 インドの文化からはとりあえず; 辻直四郎訳、『リグ・ヴェーダ讃歌』、1970、pp.307-308:「ヴァーチュ(言語の女神)の歌」) また 中村元、『ことばの形而上學 初期ヴェーダーンタ哲學史 第4巻』、1956/1981 および バルハルトリ、赤松明彦訳注、『古典インドの言語哲学 1 ブラフマンとことば』1998 同、 『古典インドの言語哲学 2 文について』、1998 ミルチア・エリアーデ、堀美佐子訳、「エクスタシー技術と秘密の言語」、中村恭子編訳、監修:堀一郎、『宗教学と芸術 新しいヒューマニズムをめざして エリアーデ著作集 第13巻』、せりか書房、1975、pp.44-69 原著は Mircea Eliade, "Techniques de l'extase et languages secrets", 1953 シャーマニズム研究の一環なので→こちらにも挙げておきます:「中央アジア、東アジア、東南アジア、オセアニアなど」の頁の「i. アルタイ、テュルクなど」。 エリアーデについて→そちらも参照:「通史、事典など」の頁の「v. テーマ別のもの諸々」 ……………………… 西欧の言語論で関係のありそうなものから; 荒俣宏、『理科系の文学誌』、1981、pp.13-79;「PART-1 言語の宇宙へ」 ケースⅠ『バベル-17』;善意の〈罠〉が必要な理由について/デカルトの ケースⅡ『ガリバー旅行記』;柿本人麻呂からスウィフトへ/暗号をめぐる三人の奇妙な関係について/暗号学左派のためのマニフェスト/叛文学としての『ガリバー旅行記』// ケースⅢ『山椒魚戦争』;言語の秘密について/母音の宇宙的解釈/言語のユートピアへ 荒俣宏、『99万年の叡智 近代非理性的運動史を解く』、1985、pp.125-137:「第1部7 神秘学としてのコンピュータ」 オフィス神秘学について - はじめに/ダイナモとマリア/自動制御する宇宙/夢の演算機械へ……/物質との対話から - 結末 同上、pp.366-378:「エピローグ 『暗号学左派』作業ノート」 テーマ/人工言語以後/フンボルト/フンボルトからウォーフへ/物理的力とのアナロジー/相対と絶対/ウォーフとドリヴェの関連性/ファーブル・ドリヴェ/ドリヴェの方法/絶対言語の政治学/ヘブライ語/言語ユートピアの転回点 - 試案/付説 - その1/付説 - その2 神尾美津雄、「第2章 分類と統語 - 普遍言語のエピステメー -」、『闇、飛翔、そして精神の奈落 - イギリス古典主義からロマン主義へ -』、1989、pp.30-74 マリナ・ヤグェーロ、谷川多佳子・江口修訳、『言語の夢想者 17世紀普遍言語から現代SFまで』、工作舎、1990 原著は Marina Yaguello, Lef fous du langage. Des langues imaginaires et de leurs inventeurs, 1984 序章 言語への愛;人工言語探求の道筋/本書で扱う3タイプの言語活動/追序// 神話からユートピアへ 言語の創造神話 言語を規定する世界観の変遷;ユートピアから生まれる「存在しない言葉」/真世界発見と言語思想の関係/聖書の言語神話// 夢想家の肖像 言語に憑かれた人々の系譜;言語考案者の妄執/言語狂分類学// 男と女の人工言語 ユートピア構築的言語とヒステリー症的言語;言語理解のふたつのアプローチ/人工言語史での女性の排除// 17~20世紀の言語思想史 未完の探求 17~18世紀における理想言語構想;普遍言語運動/哲学言語の構想/ライプニッツの結合術/空想旅行の人工言語// 科学対フィクション 18~20世紀における言語の科学的考察;普遍言語を求めて/普遍言語構想の新展開/比較文法学から言語類型学へ/進化論的視点の誤った導入/国際共通語運動// 「科学」の中の「神話」 最近のSFに見られる現代言語学理論;現代言語学SF/チョムスキー革命の影響// 言語にまつわる幻想の両極にむけて 裸の王様 ニコライ・マールの奇想言語理論;マールの言語研究の発端/言語祖先複数説/言語段階発展論による分類/未来言語宣言/階級言語と言語上部構造論/マール主義理論のその後// 夜の女王 異言における無意識と言語活動;T.フルールノワの霊媒観察/エレーヌ・スミスの異言体験/宗教的異言現象/外国語がかりの症例/異言と外国語がかりの相違/異言の構造/火星語の文法的解釈/異言の音韻論的側面/異言における「意味」/無垢の歌としての異言// 自然言語の擁護と顕揚 眠り続ける森の美女 精神の牢獄としての人工言語;自然言語と人工言語の対立/言語活動の本来の機能// 相反力の戯れ 自然言語に内在する均衡状態;人工言語の限界/人工言語の不完全性// 巻末資料 人工言語主要作品一覧(言語思想史年表)// 人工言語文献資料集;哲学言語/言語の起源に関する科学的思想の変化/原始言語の空想的復原/フィクションに見る空想言語/ニコライ・マール抄録/異言資料/人工国際言語など、 344ページ。 ジェイムズ・ノウルソン、浜口稔訳、『英仏普遍言語計画 デカルト、ライプニッツにはじまる-』、工作舎、1993 原著は James Knowlson, Universal Language Schemes in England and France 1600-1800, 1975 序// 真正の文字の言語 - 知的背景 -;共通語としてのラテン語/人類最初の言語/「真正の文字」の探求/秘密の文字から普遍的文字へ/速記記号と代数記号の普遍性/ヒエログリフと漢字との関連/諸言語、言語、真正の研究/コメニウスの言語教育改革/現存する言語への批判/学問の進歩と普及のための言語// 共通の文字と初期の諸計画;初期の普遍的文字構想/デ・ヴァレの「母なる言語」/ル・メールの普遍的アルファベット/ベデルとジョンスンの計画/ウィルキンズの普遍的文字/ロドウィックの共通文字/ベックの数の辞書の体系// 哲学的言語;デカルトとメルセンヌ/メルセンヌの置換言語理論/真正の存在の鏡としての普遍的文字/記憶術論がもたらした影響/ルルス主義とカバラ/隠秘学的伝統/ダルガーノとウィルキンズの目的/ウィルキンズの「真正の文字と哲学的言語」/ウィルキンズ『試論』の賛同者/ライプニッツ瞥見// 想像の旅と理想の言語;トマス・モアのユートピア言語/ゴドウィンの音調言語/シラノの身振り言語/サルマナーツァールの台湾語/フォワニーのアウストラル語/ヴェラスのセヴァランビア語// 18世紀 - 言語の起源・一般的文法・普遍言語 -;ティエボーによる普遍言語の見直し/ド・ブロスの原始言語再建/人間思考の普遍的原則// 1790年代のパシグラフィー;ドロルメル、アンペール、コンドルセの計画/ド・メミィエの普遍的書字の構造// 記号と思考;言語記号が思考に及ぼす影響/コンディヤックが指摘した言語の欠陥/コンディヤックとライプニッツの類似性/コンディヤック以後の言語改革の試み/言語と記号の役割をめぐる議論// イデオローグと完全な言語;分析的言語創設への反論/数学的観念と道徳的観念の相違/哲学的言語の不可能性への論証/言語と知性の完全性/改革の挫折と継承// 補遺A 普遍言語としての身振り;聾啞者との意志疎通の可能性/聾啞者教育の手段/身振りの普遍性/身振り言語の限界// 補遺B 17・18世紀における普遍的文字と言語の諸計画一覧など、 420ページ。 同じ訳者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「ステープルドン」の項 モーリス・オランデール、浜崎設夫訳、『エデンの園の言語 アーリア人とセム人:摂理のカップル』(叢書・ウニベルシタス 473)、法政大学出版局、1995 原著は Maurice Olender, Les langues du paradis. Aryens et Sémites : un couple providentiel, 1989 序文(ジャン・ピエール・ヴェルナン)// エデンの園の古文書館;ヘブライ語からサンスクリット語へ/専門的な発明品/歴史の忘却/誰一人知らない者はいない……// 神[=摂理]の母音(R.シモン、R.ロース、J.G.ヘルダー);発音の秘密/崇高の詩学/きわめて特異な神// 「選ばれた諸民族」の輪舞(J.G.ヘルダー);律法の孤独な番人/神の作劇法の迷宮// 崇高なものと忌まわしいものの間(E.ルナン);苦労知らずの一神教/「諸人種の肖像」/壮大な罠/花と 多義的な語の危険性へ(F.マックス・ミュラー);神の呼称/戦略上の科学// アーリア人の一神教徒としての使命(A.ピクテ);骨と語/若き読者ソシュール/神[=摂理]の指// 天上の婚礼 - ケーニヒスベルクの神学の(R.F.グラウ);二人の処女と向き合う神/インド・ゲルマン人の「女性的性質」// アーリア人としてのセム人(I.ゴルトツィーハー);神話(学)に対する諸民族の権利/ヤハウェの「世界主義的性格」/ルナンの独断的な優雅さ/救世主の科学の夢// 鍛冶場の秘密など、 336ページ。 ウンベルト・エーコ、上村忠男・廣石正和訳、『完全言語の探求』(叢書ヨーロッパ)、平凡社、1995 原著は Umberto Eco, La ricerca della lingua perfetta nella cultura europea, 1993 緒言(ジャック・ルゴフ)/日本語版によせて(同)// 序// アダムから「言語の混乱」へ;『創世記』2章、10章、11章/ヨーロッパ以前と以後/副産物/自然言語の記号論的モデル// カバラの汎記号論;トーラーの読解/宇宙的結合術と名前のカバラ/祖語// ダンテの完全言語;ラテン語と俗語/言語と発話行為/アダムへの最初の賜物/ダンテと普遍文法/光輝ある俗語/ダンテとアブラフィア// ライモンドゥス・ルルスの「大いなる術」;結合術の基本原理/アルファベットと4つの図形/「知識の樹」/ニコラウス・クザヌスにおける普遍的一致// 単一起源仮説と複数の祖語;ヘブライ語への回帰/ポステルの普遍主義的ユートピア/語源探索熱/規約主義、エピクロス主義、多起源説/ヘブライ語以前の言語/国民主義的諸仮説/インド=ヨーロッパ語仮説/単一起源説に反対する哲学者たち/なかなか死のうとしない夢/新たな単一起源説的諸展望// 近代文化におけるカバラ主義とルルス主義;魔術における名前とカバラ主義におけるヘブライ語/ステガノグラフィーにおけるカバラ主義とルルス主義/ルルス的カバラ主義/ブルーノ - 結合術と無数世界/無数の歌と言葉// 像からなる完全言語;ホラポロンの『ヒエログリュフィカ』/エジプトのアルファベット/キルヒャーのエジプト学/キルヒャーの中国語/キルヒャーのイデオロギー/後世の批判/エジプトの道と中国の道/エイリアンにとっての像// 魔術的言語;いくつかの仮説/ジョン・ディーの魔術的言語/完全性と秘密性// ポリグラフィー;キルヒャーのポリグラフィー/ベックとベッヒャー/内容の組織化にむけての初期的企て// アプリオリな哲学的言語;ベイコン/コメニウス/デカルトとメルセンヌ/記号と特徴についてのイギリスでの論争/原始概念と内容の組織化// ジョージ・ダルガーノ// ジョン・ウィルキンズ;図表と文法/即物的記号/辞書-同義語、迂言法、隠喩/開かれた分類?/分類の限界/ウィルキンズのハイパーテクスト// フランシス・ロドウィック// ライプニッツから『百科全書』へ;記号法と計算/原始概念の問題/百科事典と思考のアルファベット/盲目の思考/『易経』と二進法的記数法/副産物/ライプニッツの「図書館」と『百科全書』// 啓蒙主義から今日にいたるまでの哲学的言語;18世紀のさまざまな計画案/哲学的言語の晩期/宇宙での言語活動/人工知能/完全言語の亡霊たち// 国際的補助言語;混合的な諸体系/アポステリオリな言語のバベル/エスペラント/最適化された文法/いくつかの理論的な異議とそれらへの反論/国際的補助言語の「政治的」可能性/国際的補助言語の限界と表現能力// 結論;バベルの再評価/翻訳/アダムへの賜物など、 534ページ。 同じ著者による→こちらを参照:「キリスト教(西欧中世)」の頁の「おまけ」 互盛央、『言語起源論の系譜』、講談社、2014 はじめに/序章 人類最初の言語を聞く/「神」が言語を与える - 聖書の時代:中世から15世紀まで/複数のアダムたち - 国民言語勃興の時代:16世紀から17世紀へ/人間が言語を作る - 「自然」創出の時代:17世紀/起源を証明する - 「社会契約」の時代:17世紀から18世紀へ/起源をめぐる闘争 - 乱立する言語起源論の時代:18世紀/起源を復元する - 言語学の時代:18世紀から19世紀へ/終章 「起源の言語」を語る天使たちなど、 432ページ。 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「xv. 時間論、その他」 横山茂雄、『神の聖なる天使たち ジョン・ディーの精霊召喚 1581~1607』、2016、pp.145-196+註;第8章『エノクの書』/第9章「始原の言語」など また別名義での同じ著者による; 稲生平太郎、「異界の言葉 - テオドール・フルールノワ『インドから火星へ』」(1996)、『定本 何かが空を飛んでいる』、2013、pp.218-224 西欧ではありませんが; 亀山郁夫、『甦えるフレーブニコフ』、1989、「第8章 言葉の神々の嵐」や「第9章 詩と絵画」など 合わせて、 大石雅彦、「詩的言語の前哨 - ザーウミの系譜」、『彼我等位 日本・モダニズム/ロシア・アヴァンギャルド』、2009 さんざんあちこちに出てくるので、やはり挙げておきましょう; ヴァルター・ベンヤミン、「言語一般および人間の言語について]」、浅井健二郎編訳、久保哲司訳、『ベンヤミン・コレクション 1 近代の意味』(ちくま学芸文庫 ヘ 3-1)、筑摩書房、1995、pp7-36 原著は Walter Benjamin, "Über Sprache überhaupt und über die Sprache des Menschen", 1916 同じ著者による→こちらを参照:「天使、悪魔など」の頁の「i. 天使など」 ついでに文庫で見ることができるものとして; ルソー、増田真訳、『言語起源論 旋律と音楽的模倣について』(岩波文庫 青623-7)、岩波書店、2016 原著は Jean-Jacques Rousseau, Essais sur l'origine des langues où il est parlé de la mélodie et de l'imitation musicale 歿後出版。執筆は1750年代後半から1762年前半にかけてとのこと(p.138)。 序文草案// われわれの考えを伝えるためのさまざまな方法について/ことばの最初の発明は欲求に由来するのではなく、情念に由来するということ/最初の言語は比喩的なものだったにちがいないということ/最初の言語の特徴的性質、およびその言語がこうむったはずの変化について/文字表記について/ホメロスが文字を書けた可能性が高いかどうか/近代の韻律法について/諸言語の起源における一般的および地域的差異/南方の諸言語の形成/北方の諸言語の形成/この差異についての考察/音楽の起源/旋律について/和声について/われわれの最も強烈な感覚はしばしば精神的な印象によって作用するということ/色と 解説など、 156ページ。 言語起源論と関連するものとして; レオン・ポリアコフ、アーリア主義研究会訳、『アーリア神話 ヨーロッパにおける人種主義と民族主義の源泉』(叢書・ウニベルシタス 158)、法政大学出版局、1985 原著は Léon Poliakov, Le mythe aryen. Essai sur les sources du racisme et des nationalismes, 1971 序文// 古い起源神話;スペイン - ゴート神話/フランス - 2つの人種の争い/イギリス - セムの血統とノルマンのくびき/イタリア - アエネアスの子孫/ドイツ - 言語と人種/ロシア - ユーラシアの人種のるつぼ// アーリアの起源神話 プレリュード;アダム以前に人間がいたとする人たち/大発見/新しい系譜/理性のユートピア// 啓蒙時代の人類学;穏健な人類学者たち(人類単一起源論)/極端派の人類学者たち(人類複数起源論)// 新しいアダムを求めて;インドの魔力/アーリア神話の出生証明書/インド ゴビノーとその同時代人;革命、イデオロギー、生理学/人種 - 歴史の原動力/形而上学者と誇大妄想狂// アーリアの時代;言語学者の専制/アーリア主義と普仏戦争/人種的二元論/アダム以前に人間がいたとする論者たちから精神分析学へ/適者生存/アーリアの神秘// 結論など、 538ページ。 鍛冶哲郎・福井一光・森哲郎編、『経験と言葉 - その根源性と倫理性を求めて -』(宝積比較宗教・文化叢書 3)、大明堂、1995 経験と言葉;理性の記憶 - ヘーゲルにおける〈被りしもの〉の変容 -(中岡成文)/経験と言葉 - 沈黙の語り -(藤田正勝)/存在意識の変革について - ヤスパースの「形而上学的経験」と「暗号文字」の問題を中心として -(福井一光)/経験と言葉をめぐって - 語・真理・行為 -(尾崎誠)/《経験と言葉》あるいは《表現》 - 西田幾多郎の「純粋経験」に関連して -(森哲郎)// 宗教と神話;神話としての宗教的体験の優先 - その倫理的次元の復興に向かって -(J.W.ハイジック)/現代における神話 - ヤスパースとブルトマンの神話論争 -(A.チェザーナ)/カフカにおける「宗教の起源」(U.アップ)/宗教における言語と音楽 - ルターの詩編解釈をとおして -(竹原創一)/混沌の自覚から表現へ - 禅仏教における言葉の捉え方の一側面 -(M.モール)// 日本人と言葉;日本人の基礎経験と日本語の論理構造 - 1930年代における国語学の思想的意義 -(田中久文)/「探検記」の言語(川村湊)// 芸術と言葉;「言語的音楽観」と西洋音楽の「近代化」 - バロック期における音楽修辞学の盛衰とその背景 -(渡辺裕)/「言葉に関して経験をなすこと」 - ハイデガーにおける詩と言葉 -(岡田紀子)/転回の詩学 - パウル・ツェラーンにおける詩的経験と夢 -(鍛冶哲郎)など、 370ページ。 小野文、「想像言語の比較研究ノート あるいは母語からいかに飛翔するか」、『ユリイカ』、no.811、vol.55-14、2023.11 臨時増刊号:「総特集 J・R・R・トールキン 没後50年 - 異世界ファンタジーの帰還」、pp.219-323 母語を粉砕する - ウルフソンのケース/地球から火星へ、あるいは言語の祝祭 - エレーヌ・スミスのケース/母語(を/に)翻訳する - トールキンのケース/言葉の亡霊のおとづれ - 結論に代えて 小澤実、「トールキン・ルーン文字・JRPG」、同上、pp.233-248 オルクリスト、グラムドリング、アンドゥーリル/中世学者トールキンと北方世界/『指輪物語』と戦後ポピュラー・カルチャー/ルーン文字とJRPG トールキンについて→こちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「トールキン」の項 ……………………… 文字について(宇宙論史にあまりからまないかもしれませんが); A.コンドラートフ、磯谷孝・石井哲士朗訳、『文字学の現在』、勁草書房、1979 原著はキリル文字なので割愛。1975年刊。 アルファベットの初歩知識/絵による言語/地球の隅々で/シュメール人が最初だった/トルクメンからクレタ島まで/ピラミッドの国の文字記号/サハラ砂漠の南方/新世界の象形文字/「ものいう木」/コハウ・ロンゴ=ロンゴ/中心はひとつか、ふたつ以上か?/「中国式読み書き」/象形文字の海/楔の次もまた楔/アルファベットの揺籃地/誰が最初に「A」といったか?/大樹の枝々/解読に成功するための公式/普遍的性質を求めて/文字と脳/文字の社会学/神々、神官、文字/文字のあとに来るものなど、 382ページ。 彌永信美、「はるかなる悉曇文字」、『現代思想』、11巻9号、1983.9:「増頁特集=密教 現実を超越する身体技法」、pp.121-131 同じ著者による→こちらを参照:「仏教 Ⅱ」の頁の「vi. 仏教の神話など」 『季刊 iichiko』、no.9、1988 AUTUMN、pp.4-105:「特集・文字の文化学 象形・儀礼・使う」 漢字の思考(白川静)/エジプト古文字(屋形禎亮)/マヤ文字の世界(八杉佳穂) ジョルジュ・ジャン、矢島文夫監修、高橋啓訳、『文字の歴史』(知の再発見双書 01)、創元社、1990 原著は Georges Jean, L'écriture : mémooire des hommes, 1987 日本語版監修者序文// 文字の誕生/神々の発明/アルファベットの革命/写本職人と印刷術/拡大する文字の世界/解読者たち// 資料集 - 文字をめぐる考察 -;世界の文字体系/様々なアルファベット/技術の影響/書の芸術/中国と日本の書/数学-数の図形的表現/楽譜を書く/文字への讃歌/『ギルガメシュ叙事詩』など、 212ページ。 世界の文字研究会編、『世界の文字の図典』、吉川弘文館、、1993 文字と文化/絵文字/エジプト文字/楔形文字/エーゲ海地方の古代文字/西セム文字とその系統の文字/アラビア文字// アルファベット;ギリシア文字/エトルリア文字/ローマ字/古代北ヨーロッパ文字/キリル文字// インド系文字/漢字とその伝流/その他の文字/数字/記号、文字でない文字/付録など、 638ページ。 〈神代文字〉の項目もあります;pp.520-522。 ジェイ・デイヴィッド・ボルター、黒崎政男・下野正俊・伊古田理訳、『ライティング スペース 電子テキスト時代のエクリチュール』、産業図書、1994 原著は Jay David Bolter, Writing Space - The Computer, Hypertext, and the History of Writing, 1991 序/イントロダクション// ヴィジュアル・ライティング・スペース;新たなライティング・スペースとしてのコンピュータ/テクノロジーとしてのライティング/ライティングの要素/見ること、書くこと// 概念的なライティング・スペース;電子書籍/新しい対話/インターアクティヴなフィクション/批評理論と新しいライティング・スペース// ライティング・スペースとしての心;人工知能/電子の記号/精神を書く/文化を書く// 結論など、 466ページ。 古屋俊彦、「文字の存在論」、『国士舘大学情報科学センター紀要 』、20号、1999.3、pp.1-34 [ < 国士舘大学 図書館・情報メディアセンター ] 古屋俊彦、「文字の単位と機能 (文字の意味論1)」、『国士舘大学情報科学センター紀要 』、21号、2000.2、pp.1-33 [ < 同上 ] 古屋俊彦、「文字の形態と進化 (文字の意味論2)」、『国士舘大学情報科学センター紀要 』、22号、2001.3、pp.10-50 [ < 同上 ] 古屋俊彦、「文字と線の研究 哲学的文字論の試み」、『法政哲学 』、11号、2015.3.20、pp.15-26 [ < 法政大学学術機関リポジトリ ] ……………………… 漢字、その他(宇宙論史にあまりからまないかもしれませんが); 白川静、『漢字 - 生い立ちとその背景-』(岩波新書 C95)、岩波書店、1970 象形文字の論理/神話と呪術/神聖王朝の構造/秩序の原理/社会と生活/人の一生など、 206ページ。 白川静、『文字逍遙』、平凡社、1987 文字逍遙;遊字論/道字論// 鳥の民俗学;鳥を食う王の話/鳥占と古代文字// 漢字古訓抄// 漢字の諸問題;漢字のなりたち/漢字の展開/線の思想/文字学の方法/漢字と文化/国語雑感/古代文字と生命の思想など、 324ページ。 同じ著者による→こちらを参照:「中国」の頁の「ii. 中国の神話とその周辺」 阿辻哲次、『漢字学 「説文解字」の世界』、東海大学出版会、1985 第1部;序論=漢字と中国2000年の文字学/『説文解字』前史=実用的文字学の時代/『説文解字』の背景=許慎とその時代/『説文解字』=文字の体系化とその手法/文字解釈の基盤=小篆/文字解釈の基盤=六書/『説文解字』の構成=文字のコスモロジー// 第2部 段玉裁『説文解字注』論;『説文解字注』の背景=段玉裁とその時代/『説文解字讀』と『汲古閣説文訂』=『説文解字注』への道程/『説文解字注』の方法/『段注』を読むために、など、 296ページ。 阿辻哲次、『漢字の文化史』(ちくま学芸文庫 ア 26-1)、筑摩書房、2007 1994年刊本の文庫化 漢字の誕生をめぐって/文字文化の黎明期/文字文化の多様化/文字文化のひろがり/漢字研究のはじまり/古代日本と漢字など、 256ページ。 中野美代子、「漢字の空間学」、『龍の住むランドスケープ 中国人の空間デザイン』、1991、pp.246-263 窫窳という怪物/怪物専用の漢字/天円地方説と漢字/線の個性と聖性/方形の宇宙/漢字のパターン認識/仮名文字の空間/アジアの文字宇宙 中野美代子、『チャイナ・ヴィジュアル 中国エキゾティシズムの風景』、1999、「Ⅲ スクリプト・ヴィジュアル」 風景を侵す文字 - 「自然」を権威づけるもの -/スクリプト・ヴィジュアル - 読めない文字の読みかた -/ジョットとパスパ文字 - 文様としての文字 -/滅びる文字と生きる文字 - 文化意志の問題として -/四角い宇宙は生きのびる - 漢字文化圏の未来 -/難読字カタログ - 中国神怪命名考 - 同じ著者による→こちらを参照:「中国」の頁の「i. 概説、通史など」 柳父章、「言葉の形」、形の文化会編、『アジアの形を読む 形の文化誌[1]』、工作舎、1993、pp.66-74 言葉の形/形の言葉/漢字の働き/漢字の機能の理論/「かたち」と形 - 日本文化の二重構造 河野六郎、『文字論』、三省堂、1994 文字の本質/六書について/諸聲文字論/轉注考/假借論/漢字論雜考/隣接諸民族における漢字の適応とその発展/アルファベットの発生/ハングルとその起源など、 168ページ。 馬渕和夫、『五十音図の話』、大修館書店、1993 はじめに/現代の「五十音図」/江戸時代の「五十音図」/中世の音図/平安時代の音図 - 明覚以後/音図の発生 - 明覚以前/おわりに、など、 192ページ。 小野恭靖、「嘘字・鈍字の世界」、『大阪教育大学紀要. I, 人文科学』、第50巻1号、2001.8.31、pp.57-65 [ < 大阪教育大学附属図書館 ] 「江戸時代初期には成立し、盛んに読まれていた『 『小野◆■字盡』 ((◆=:たけかんむりに「愚」、■=ごんべんに「虚」) の画像が; 「小野〓〓字尽」 [ < 近代書誌・近代画像データベース < 国文学研究資料館 } ……………………… 記憶術・結合術に関わって「ルネサンス、マニエリスムなど(15~16世紀)」のページで ジュリオ・カミッロ、『劇場のイデア』、2009 フランセス・イエイツ、『世界劇場』、1978 「バロックなど(17世紀)」のページで ライナルド・ペルジーニ、『哲学的建築 理想都市と記憶劇場』、1996 などを挙げましたが、さらに; グスタフ・ルネ・ホッケ、種村季弘訳、『文学におけるマニエリスム 言語錬金術ならびに秘教的組み合わせ術』(全2巻)、現代思潮社、1977 原著は Gustav René Hocke, Manierismus in der Literatur - Sprach-Alchimie und esoterische Kombinaionskunst, 1959 Ⅰ 序 《ヨーロッパ文学におけるマニエリスム》// 魔術的文字;緒言 変則的なものの伝統のために/ヨーロッパの隠れた緊張の場/言語的二重生活/変則詩/ 形象のなかの世界; 異-修辞学と綺想主義;錬金術と言葉の魔術/意識的まやかし/効果のメカニズム/美の公式/マニエリスムの綱領起草者たち/謎術としての寓意画法など、 352ページ。 Ⅱ 芸術的虚構としての人間;音楽主義/ジェスアルド・ダ・ヴェノーサからストラヴィンスキーまで/音楽のカバラ学/ダイダロスとディオニュソス/マニエリスム的演劇/迷路小説/叙事詩的怪物// 結論部 マニエリスム的テーマとしての人間;神性の夜の側/白い神秘思想と黒い神秘思想/決疑論と放縦主義/神の発明家/ 付録 ヨーロッパの綺想体-ミニアチュア-アンソロジー;スペイン/イタリア/フランス/英国/アメリカ合衆国/ロシア/ドイツなど、 318ページ。 →こちらでも触れました:「怪奇城の肖像(前篇)」の頁 P.ロッシ、清瀬卓訳、『普遍の鍵』(世界幻想文学大系 45)、国書刊行会、1984 原著は Paolo Rossi, Clavis universalis. Arti mnemoniche e logica combinatoria da Lullo a Leibnitz, 1960 序// 14、15世紀にみるイメージと場所記憶;記憶の「規定」に対する人文主義者の反論/古代、中世における記憶術の典拠/14世紀における記憶術と説教術/15世紀における記憶術/ピエトロ・ダ・ラヴェンナ『不死鳥』/自然と技術/記憶術・アリストテレス思想・医学/イメージの組み立て// 16世紀百科全書思想と結合術;ルルス思想の復興/アグリッパと大いなる術の特質/ルルスの伝統にみる術・論理学・宇宙論/知恵の樹と16世紀百科全書派/ライムンドゥス・ルルスの書にみる 世界劇場;象徴思想と記憶術/記憶術のイギリス、ドイツへの普及/シュバンゲルベルギウス/グロタローロの記憶医学/世界劇場にみるルルス思想とカバラ// ジョルダーノ・ブルーノの空想論理学;ブルーノのルルス記憶術著作/17世紀における結合術・ 人工記憶と新しい論理学-ド・ラ・ラメー、ベーコン、デカルト;ピエール・ド・ラ・ラメー-論理学の一部門としての「記憶」/ベーコンとデカルト-記憶を玩ぶ人々にたいする論争/ベーコンとデカルトにみる記憶術とルルス思想/記憶術の新しい論理学への仲間入り// 百科全書思想と汎智論;普遍記憶術体系-ハインリッヒ・アルシュテート/汎智論と大教授学-コメニウス/17世紀の百科全書思想と結合術/ジョン・ヘンリー・ビスターフィールド哲学的アルファベット// 普遍言語の形成;イギリスのベーコン学派-普遍言語構想/言語記号と数学記号/コメニウス学派-普遍言語と普遍キリスト教/完全言語の形成/普遍言語の記憶作用-自然科学にみる分類法/普遍言語と対峙するデカルトとライプニッツ// ライプニッツ記号法の淵源// ヨーロッパ古代・中世百科全書思想の系譜(清瀬卓)など、 410ページ。 種村季弘、『ある迷宮物語』(水星文庫)、筑摩書房、1985、pp.214-227:「断片からの世界 - 記憶術の横領について -」 同じ著者による→こちらも参照:「通史、事典など」の頁の「iii. 地誌・地学・地図、地球空洞説など」 フランセス・イエイツ、玉泉八州男監訳、青木信義・井出新・篠崎実・野崎睦美訳、『記憶術』、水声社、1993 原著は Frances A. Yates, The Art of Memory, 1966 序/古典的記憶術に関するラテン語三大文献/ギリシアにおける記憶術……記憶と霊魂/中世における記憶術/中世における記憶術とイメージの形成/記憶術論考/ルネサンスの記憶術……ジュリオ・カミッロの〈記憶の劇場〉/カミッロの〈劇場〉とヴェネツィア・ルネサンス/記憶術としてのルルの思想/ジョルダーノ・ブルーノ……『影』の秘術/記憶術としてのラムス主義/ジョルダーノ・ブルーノ……『秘印』の秘術/ブルーノ記憶術とラムス記憶術の衝突/ジョルダーノ・ブルーノ……記憶術に関する後期の著作/記憶術とブルーノのイタリア語対話篇/ロバート・フラッドの〈劇場〉記憶術体系/フラッドの〈記憶の劇場〉とグローブ座/記憶術と科学的方法の成長など、 524ページ。 同じ著者による→こちらを参照:「ルネサンス、マニエリスムなど(15~16世紀)」の頁の「vi. ブルーノなど」 メアリ・カラザース、別宮貞徳監訳、柴田裕之・家本清美・岩倉桂子・野口迪子・別宮幸徳訳、『記憶術と書物 中世ヨーロッパの情報文化』、工作舎、1997 原著は Mary Carruthers, The Book of Memory - A Study of Memory in Medieval Culture, 1990 序論/記憶の諸モデル/記憶の神経心理学的解釈/初歩の記憶法/記憶術/記憶と読書の倫理/記憶と権威/記憶と書物/著者あとがき// 付録;サン・ヴィクトルのフーゴー/アルベルトゥス・マグヌス/トマス・ブラドウォーディンなど、 540ページ。 ジョン・ノイバウアー、原研二訳、『アルス・コンビナトリア 象徴主義と記号論理学』、ありな書房、1999 原著は John Neubauer, Symbolismus und Symbolische Logik, 1978 まえがき/テーマ/序文/結合術の伝統/初期ロマン派の抱いたライプニッツ・イメージに表われたる結合術、記号論、および百科全書理論/概念計算と発明術/記号論/「百科全書化計算」/C.F.ヒンデンブルクの結合術/論理主義、批判哲学、弁証法的論理学/現にある世界とありうる世界/結合術の機知/結合術的小説の理論/『ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン』と近代小説/「純粋詩」の根拠/まとめにかえて、など、 304ページ。 桑木野幸司、『叡智の建築家 記憶のロクスとしての16-17世紀の庭園、劇場、都市』、2013 桑木野幸司、『記憶術全史 ムネモシュネの饗宴』(講談社選書メチエ 689)、講談社、2018 プロローグ ムネモシュネの饗宴 - 開宴の辞/記憶術の誕生/ルネサンスの記憶術/忘却術とイメージの力/天国と地獄の記憶 - ロッセッリ『人工記憶の宝庫』/饒舌なる記憶 - デル・リッチョ『記憶術』の世界/テクストの中の宇宙 - チトリーニ『ティポコスミア』が描き出す建築的情報フレーム/混沌の森から叡智の苑へ - デル・リッチョの記憶術的理想庭園/記憶術の黄昏 - シェンケルの「方法的」記憶/エピローグ 終わらない宴など、 352ページ。 J.A.コメニウス、井ノ口淳三訳、『世界図絵』(平凡社ライブラリー 129)、平凡社、1995 原著は Johann Amos Comenius, Orbis sensualium pictus, 1658 1988年刊本の文庫化 読者への序言/入門/150項目/結び// コメニウスの生涯(井ノ口淳三)/『世界図絵』の意義(同)/解説-コメニウス・リヴァイズド(高山宏)など、 388ページ。 「1 神」、「2 世界」、「3 天空」、「4 火」、「5 空気」、「6 水」、「7 雲」、「8 大地」に始まり、「78 絵画」、「79 鏡」、「103 天球」、「104 惑星の位置」、「105 月の状態」、「106 日食・月食」、「107 地球」などなどを経て、「149 神の摂理」、「150 最後の審判」に至ります。 『ライプニッツ著作集 1 論理学』、1988 『ライプニッツ著作集 10 中国学・地質学・普遍学』、1991 も参照 また; アビ・ヴァールブルク、伊藤博明、加藤哲弘、田中純、『ムネモシュネ・アトラス ヴァールブルク著作集 別巻1』、ありな書房、2012 序 アビ・ヴァールブルクと『ムネモシュネ・アトラス』(伊藤博明)// パネルA~C、1~79// 『ムネモシュネ・アトラス』序論(アビ・ヴァールブルク)/『ムネモシュネ・アトラス』序論 解説(田中純)// 解題;ヴァールブルクの天球へ-『ムネモシュネ・アトラス』の多層的分析(田中純)/不在のペルセウス-『ムネモシュネ・アトラス』と占星術(伊藤博明)など、 768ページ。 ヴァールブルクによる→こちら(「アメリカ大陸など」の頁の「i. 北アメリカなど」)や、またあちら(「ルネサンス、マニエリスムなど(15~16世紀)」の頁の「おまけ」)を参照 また下記の山口昌男『本の神話学』、1977 中の「20世紀後半の知的起源」なども参照 ……………………… 本・書物(天の書); Patrick Boylan, Thoth. The Hermes of Egypt, 1987, pp.59-60 によると、〈神的な書〉というイメージがピラミッド・テクストに現われます。ただしそれは、〈運命の書〉ではなく、太陽神の治世の細部が記されたものだとのことです(p.60。p.210 も参照)。 同書 pp..94-95 には〈神的な言葉の書〉が登場、こちらはトトが著者とされる聖なる式文を集めたものとされます。 他方 Wayne Horowitz, Mesopotamian Cosmic Geography, 1998, pp.166-167 によると、シュメルには神々が用いるラピスラズリでできた〈天の星々の銘板〉というイメージがありました。空自体も、ラピスラズリからできていると考えられていたようです。また MIHO MUSEUM編、アンソニー・グリーン監修、『メソポタミアの神々と空想動物』、2012、p.21 には「運命の粘土板『メ』」の項目があります。 「最高位のアンまたはエンリルの持物」 で、 「追記不能の証書もしくは条約のようなものであった。つまり、『メ』を手にすると、宇宙万物の運命を決定する力が与えられた」 とのことです。 道教では 「司命神は天上にあって人の寿命台帳である命籍を管理し、人間の行為の善悪を見て、その人の寿命の増減を行うとされた」(『道教事典』、1994、p.237:「司命」) とのことですが、また 田中文雄、『仙境往来 神界と聖地』、2002、「第2章 3 経典のくだる聖地」 によれば、 「天から、文字に書かれた経典が、ある特定の人物に授けられる」(p.85) と見なされていたとのことです。本ページ冒頭で挙げた〈開劫度人説〉における〈天書〉であるとか(→こちらを参照)は、そうしたイメージを宇宙規模に拡大したものといえるでしょうか。 インドにおけるヴェーダの捉えられ方、そこからつながるであろうマントラ・真言(→こちら(「インド」の頁の「ヴェーダーンタ学派など」の項)や、そちら(同、「ミーマンサー学派など」の項)などを参照)、 冒頭でも挙げた空海の『声字実相義』(→あちらを参照:「仏教 Ⅱ」の頁の「v. 仏身論、密教など」)、 また日本における〈言霊〉(→ここ:「日本」の頁の「i. 概説、通史など」や、そこ:「日本 Ⅱ」の頁の「viii. 近世から近代にかけてのいわゆる麗学・古神道など」などを参照) など、つながる領域はまだまだあることと思われますが、ともあれ、〈天の書物〉というイメージをくっきりした形で展開させたのは、ユダヤとイスラームそれぞれの伝承のようです。 ユダヤについてはまず、やはり冒頭で挙げたショーレムの論文(→こちら)を見ていただくとして、同じショーレムによる ゲルショム・ショーレム、「ユダヤ教神秘主義における『トーラー』の意味」、『カバラとその象徴的表現』、1985 も併せて見るべきでしょう。 またカバラー以前の段階については、 Geo Widengren, The Ascension of the Apostle and the Heavenly Book, 1950 Leo Koep, Das himmlische Buch in Antike und Christentum, eine religionsgeschichtliche Untersuchung zur altchristlichen Bildersprache, 1952 あたりが関係ありそうなのですが、残念ながらいずれも未見。なのでとりあえず 手島勲矢、「成文律法と口伝律法」、手島勲矢訳編、『ユダヤ人から見たキリスト教』、1986、pp.143-194 トーラーの歴史的概観/天にあるトーラーという思想について/口伝律法とは何か 同じ著者による→こちらを参照:「ユダヤ」の頁の「vii. ユダヤ思想史など」 Howard Schwartz, Tree of Souls. The Mythology of Judaism, 2004 "Book Five : Myths of the Holy Word" 中の”The Letters of the Alphabet”や”The Primordial Torah”内の諸項 また "Book Three : Myths of Heaven" 中の”The Seven Heavens”から”219. The Pargod”や”220. The Map of Time and Space” などを参照ください。 M.ハルバータル、志田雅宏訳、『書物の民 ユダヤ教における正典・意味・権威』、教文館、2015 さらに; ハンス・ヨーナス、細見和之・吉本陵訳、『生命の哲学 有機体と自由』(叢書・ウニベルシタス 903)、法政大学出版局、2008、pp.428-432:第12章Ⅴ「[『生命の書』と超越的な『肖像』]」 イスラームについては 大川(黒宮)玲子、「『書かれたもの (キターブ)』と運命論 - クルアーン、『天の書板』、『記録の書』 -」、2002 大川玲子、『聖典「クルアーン」の思想 イスラームの世界観』、2004、「第3章 『天の書』とクルアーン」 大川玲子、『イスラームにおける運命と啓示 - クルアーン解釈書に見られる「天の書」概念をめぐって -』、2009 また Toufy Fahd, “La naissance du monde selon l'Islam”, La naissance du monde. Sources orientales Ⅰ, 1959 中の pp.243-249:”Les choses créées avant les cieux et la terre”から pp.244-245:”La Tablette et la Plume” Heinz Halm, Kosmologie und Heilslehre der frühen Ismāʻīlīya. Eine Studie zur islamischen Gnosis, 1978, pp.38-52 : "Der Thron und die Buchstaben" Anton M. Heinen, Islamic Cosmology. A Study of as-Suyūṭī's al-Hayʾa as-sanīya fi l-hayʾa as-sunnīya, 1982, pp.81-85, 135-137, 192-196;それぞれ"Tablet and stylus"についての歴史的分析、本文、註釈 なども参照 シュタイナー『アーカーシャ年代記より』1976/1978 でおなじみの〈アーカーシャ年代記ないし記録〉も同様の発想によるものでしょうし、事によったら『2001年宇宙の旅』(1968)に登場する〈モノリス〉も同じ系統のイメージと見なせるかもしれません。 ちなみに〈ジヤーンないしはジャーンの書〉なるイメージと併せて、ブラヴァツキーの聖典論について、 H.P.ブラヴァツキー、『シークレット・ドクトリン 宇宙発生論[上]』、1989、「序論」を参照。 他方、上掲ホッケの『文学におけるマニエリスム』(1977)の第1部第4章「 E.R.クルツィウス、南大路振一・岸本通夫・中村善也訳、『ヨーロッパ文学とラテン中世』、みすず書房、1971、「第16章 象徴としての書物」 比喩に関するゲーテの論/ギリシア/ローマ/聖書/中世初期/中世盛期/自然という書物/ダンテ/シェイクスピア/西と東 原著は Ernst Robert Curtius, Europäische Literatur und lateinisches Mittelalter, 1948/1954 →「怪奇城の図書室」の頁で少し触れました 山口昌男、『本の神話学』(中公文庫 M60)、中央公論社、1977、「もう一つのルネサンス」 蒐集家の使命/世界の本とルネサンス/ルネサンスと本の世界/カバラの伝統 - ゲーテ、フロイト、ボルヘス/知の越境者 1971年刊本の文庫化 他の章は; 20世紀後半の知的起源/ユダヤ人の知的熱情/モーツァルトと「第三世界」/「社会科学」としての芸能/補遺 物語作者たち//解説(大江健三郎)など、 260ページ。 美術史をかじった者にとっては、「20世紀後半の知的起源」において、ワールブルク文庫が取りあげられている点が感慨深いものでした(1971年時点で)。 ヴァールブルクについては→こちら(「アメリカ大陸など」の頁の「i. 北アメリカなど」)や、そちら(「ルネサンス、マニエリスムなど(15~16世紀)」の頁の「おまけ」)、またあちら(本頁上掲の「記憶術・結合術など」の項)などを参照 同じ著者による→ここを参照:「アフリカ」の頁の「i. 概観など」 横山正、「本と建築」、『透視画法の眼 ルネサンス・イタリアと日本の空間』、1977、pp.56-63 亀山郁夫、『甦えるフレーブニコフ』、1989、「第18章 一冊の書物」 原克、『書物の図像学 炎上する図書館・亀裂のはしる書き物机・空っぽのインク壺』、三元社、1993 序文// 炎上する図書館、あるいはふたりの凡庸な筆耕生……知の図像としての書物と図書館のイメージの変遷;古文書が発掘され、印刷に回されることからすべてが始まる - エーコ/書物の書物が聖俗革命に巻き込まれるの段 - クルツィウス、ダンテ/宇宙は膨大な書庫になり、読者の巡歴が企画される - 百科全書派/「整理のゆきとどいた完ぺきな図書館」 - ノヴァーリス/旅先で正体不明の本を見つけた時のためのマニュアルあります - ラッハマン/ふたりの凡庸な筆耕生のアナーキズムが、図書館を揺るがす - フローベール/悪夢の焚書、狂気の文献学者か正気のダダイストか - カネッティ/ゆがむ図書館、あるいは盗まれる蔵書 - ボルヘス、アルノ・シュミット// 習字教本と処刑装置……近代的著者像の政治解剖学;適切な光線、それは左側からくる光線がもっともよい - 『小学生むけ発生学的筆記法詳述』/大きな袖口、あるいはペンをもつ手 - ホフマン/とりとめのない思い、あるいは下手くそな字 - 『カロ風幻想作品集』/判読できない判決文、あるいはあらかじめ下された死刑判決 - カフカ// 書き物机とインク壺、あるいは蹉跌する文具たち……『審判』に見る、近代的著者の空間にはしる亀裂;侵犯される書き物机、揺れる近代的著者像の中心的トポス - ゲーテ『ドイツ避難民閑談集』/とまってしまう鉛筆、あるいは侵犯される執務室 - カフカ/空っぽのインク壺 - ニーチェ『オイフォリオン断片』/メディアの筆写生たち、あるいは突然鳴る電話 - オットー・ブルクハーゲン『実践ハンドブック』// 権力装置としての室内装飾……『変身』に見る、権力闘争と、文字の体系;室内装飾、あるいは閉じ込めの空間 - カフカ/見えない窓、あるいはあらかじめうばわれた視線/鳴らない目覚時計/家具、あるいは倒錯した身振り/花模様の壁紙/居間、あるいは明かりのついたテーブル/薄く開けた扉、あるいはキメ細かい世話/消える扉、あるいは完成する監視体制/欠勤届、あるいはファイルされる記憶/郊外への散歩、あるいは外部のシミュレーション - ベンヤミン// 結びにかえて、など、 284ページ。 「西欧近代の文学テキストにおける〈書物〉の隠喩の系譜をたどる旅にでかけてみよう。それが本書のねらいである。〈書かれた知〉の隠喩としての書物の図像を、近代から現代にいたるまで、たどってみようというのである。その際の水先案内人は、ヴァルター・ベンヤミンの『一方通行路』であり、とりあえずの目的地はフランツ・カフカのテキスト群である」 とのこと(p.9)。 清水徹、『書物について その形而下学と形而上学』、岩波書店、2001 書物の考古学;書物の誕生から確立へ/象徴としての書物/コデックス革命/《書物》の達成// 近代性と書物;グーテンベルク革命/図書館をめぐる マラルメと《書物》// バベルのあとなど、 392ページ。 秋山学、『教父と古典解釈 - 予型論の射程 -』、創文社、2001、pp.23-48:第1部第1章「地中海世界における書物史 - カイサレイアのアレタスまでの文献史」 古代書物の外的状況/寓意的解釈の展開 - ヘレニズム期/初期キリスト教時代における書物と書物観/東西教父たちの書物観/ビザンティン時代における書物観/フォティオスと『図書総覧』/カイサレイアのアレタスの蔵書内容/愛書家としてのアレタス/結 - アレタスの地平の解明に向けて ハンス・.ブルーメンベルク、山本尤・伊藤秀一訳、『世界の読解可能性』(叢書・ウニベルシタス 831)、法政大学出版局、2005 原著は Hans Blumenberg, Das Lesbarkeit der Welt, 1981 本書について/経験可能な全体のためのメタファー/書物世界と世界書物/書物としての天上、天上の書物/字母の比喩/啓示の書物と自然という書物、後者の台頭と遅滞/世界という書物の読者としての文盲の俗人/神の二つの書物は一致する/読解可能性の不均衡/人間世界の暗号化と解読/世界の年代記、あるいは世界の公式/ロビンソン世界対ニュートン世界/十九世紀への接近における諸傾向/ハンブルクの自然という書物とケーニヒスベルクでのその反映/額のしるし、天上のしるし/「どのようにして自然という書物が私にとって読解可能になるのか…」/「世界はロマン化されねばならない」/絶対的書物の理念/自然という書物のような自然についての書物/空虚な世界書物/夢解釈の準備/夢を読解可能にする/遺伝子コードとその読者など、 512ページ。 →「怪奇城の図書室」の頁で少し触れました 同じ著者による→こちらも参照:「通史、事典など」の頁の「光について」の項 アルベルト・マングェル、原田範行訳、『読書の歴史 あるいは読者の歴史』、柏書房、1999 原著は Alberto Manguel, A History of Reading, 1996 読書の意味 - 訳者はしがきに代えて// 最後のページ// 読書すること;陰影を読む/黙読する人々/記憶の書/文字を読む術/失われた第一ページ/絵を読む/読み聞かせ/書物の形態/一人で本を読むこと/読書の隠喩// 読者の力;起源/宇宙を創る人々/未来を読む/象徴的な読者/壁に囲まれた読書/書物泥棒/朗読者としての作者/読者としての翻訳者/禁じられた読書/書物馬鹿// 見返しのページ// 訳者あとがきなど、 396ページ。 アルベルト・マングェル、野中邦子訳、『図書館 愛書家の楽園』、白水社、2008 原著は Alberto Manguel, Library at Night, 2006 はしがき/神話としての図書館/秩序としての図書館/空間としての図書館/権力としての図書館/影の図書館/形体としての図書館/偶然の図書館/仕事場としての書斎/心のあり方としての図書館/孤島の図書館/生き延びた本たち/忘れられた本たち/空想図書館/図書館のアイデンティティ/帰る場所としての図書館/終わりに、など、 342ページ。 →こちらでも少し触れています:ブレー《王立図書館拡張のために計画された新しいホールの眺め》の頁の「Cf.」 同じ著者による→そちらを参照:「通史、事典など」の頁の「x. 事典類など」 明治大学人文科学研究所編、『書物としての宇宙 明治大学公開文化講座』、風間書房、2014 松岡正剛「ブックウェアの仮説-コンテクストの中のテクスト-」/鹿島茂「コレクション-蒐められた本の宇宙-」/安藤礼二「祝祭の書物・書物の祝祭-平田篤胤、折口信夫とポーとマラルメ-」など、 182ページ。 講演録、総合司会:高山宏。 安藤礼二による→こちらを参照:「日本 Ⅱ」の頁の「xi. 近代など」 ゲリー・ケネディ、ロブ・チャーチル、松田和也訳、『ヴォイニッチ写本の謎』、青土社、2006 原著は Gerry Kennedy and Rob Churchill, The Voynich Manuscript. The Unsolved Riddle of an Extraordinary Book Which Has Defied Interpretation for Centuries, 2004 まえがき/醜いアヒルの子/ロジャー・ベーコンの暗号/秘術師、透視家、エジプト学者/暗号の迷宮 その1/暗号の迷宮 その2/天界の快楽の園/聖別された意識/偽作説今昔/正体見たりシュレーディンガーなど、 394ページ。 安形輝、安形麻理、「文書クラスタリングによる未解読文書の解読可能性の判定 - ヴォイニッチ写本の事例」、Library and information science、no.61、2009、pp.1-23 [ < KOARA 慶應義塾大学学術情報リポジトリ ] 市川裕・鎌田繁編、『聖典と人間』(宝積比較宗教・文化叢書 6)、大明堂、1998 聖典と社会の相関;叡尊の思想 - 西大寺叡尊像納入文書などを使って -(松尾剛次)/近代日本の新宗教における信仰形成と「教え」 - 金光教の布教者、湯川安太郎の場合 -(福嶋信吉)/禮学の伝統におけるテキストを生成する場 - 魏晋南北朝時代における祖先祭祀指南書群について -(池澤優)/『バガヴァッド・ギーター』とガンディー - 神が戦士に戦いを促す「ヒンドゥ聖典」を非暴力の使徒はいかに読んだか -(近藤光博)/ユダヤ教聖書解釈の宗教学的意義 - 神的強制と自発的意志の葛藤 -(市川裕)/プリミティブ・メソディストと民衆的福音主義の展開(山中弘)/創出される聖典 - O.S.ロイターの『エッダの謎』の解釈学 -(深澤英隆)// 聖典解釈の思想;道教における聖典 - その多様性と被規定姓 -(鈴木健郎)/バラモン伝承における聖典 - ヴェーダ観念の拡張と空洞化 -(永ノ尾信悟)/イスラームの啓示観 - ファフルッディーン・ラーズィーの啓示(ワフイ)観 -(大川玲子)/不可知界への参入 - モッラー・サドラーの聖典解釈論 -(鎌田繁)/「読むこと」から「言うこと」へ - 十六世紀スペインの神秘家たちの雅歌解釈 -(鶴岡賀雄)/聖典という問題系 - 「信仰と理性の相克」の一断面 -(飯田篤司)など、 280ページ。 挙げられた本の選択基準にいささか困惑させられるブック・ガイドおよび事典各1件; 『総解説 世界の奇書』、自由国民社、1991 奇書による大世界巡り// 鏡が映す本、が私を映す 「奇書」の近代(高山宏)// 神話学/博物誌と旅行記/聖書学/偽書・暗号書/奇想文学/擬似科学とオカルト学・予言学/悪魔学/性文学/その他の奇書など、 336ページ。 →こちら(キルヒャー『支那図説』/「バロックなど(17世紀)」の頁の「キルヒャー」の項)や、そちら(ファーブル・ドリヴェ『哲学的人類史』/「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「ファーブル・ドリヴェ」の項)にも挙げておきます 『ユリイカ』、no.806、vol.55-9、2023.7、pp.41-309:「特集 奇書の世界」 対談;奇書は(人間にしか)書けない(円城塔×酉島伝法)// 綺譚;綺書周游 - 一名、駄本地獄 〈人外魔境の巻〉(稲生平太郎)/奇書もどき(春日武彦)// 驚異の好奇心;Curiouser and Curiouser 奇書のマニエリスム(高山宏)/架空珍妙動物学を学ぶための奇書コレクション(倉谷滋)/形而上学の逸楽境 哲学史における奇書(佐々木雄大)/変なこと書く人 奇妙と驚異のSF小説史(橋本輝幸)// 奇人(から)の呼び声;わかるものわからないもの(樺山三英)/イルでファンキーな宇宙世紀を讃える(南木義隆)// 稀な成り行き;三大奇書の外側から(小松史生子)/ミステリにおける奇書の再考 内在する〈狂い〉について(鈴木優作)/奇書としての『死霊』 埴谷雄高と澁澤龍彦のデモノロギイ(藤井貴志)/大西巨人『神聖喜劇』 論理のネットワークを駆けめぐる数奇な旅(橋本あゆみ)// 座談会;特殊版元探訪 事例・国書刊行会のエコシステム(竹中朗×山本貴光×吉川浩満)// 運動としての奇書;「奇書」だけが癒す渇き 戦前昭和における〝変態趣味の大家〟と(大尾侑子)/囚われの奇書 あるポーランド知識人の自己検閲と文学的欠乏(中井杏奈)/怪文書のススメ(逆巻しとね)/「奇書」としての『家畜人ヤプー』(河原梓水)// レファレンスとサジェスト;奇書の定義と入手法 列挙書誌から考える(小林昌樹)/「奇書」に寄りつく解釈と解説(三崎律日)// 書物の奇異と奇跡;奇なる書の道(宮紀子)/奇術としての製本 『四回の講座』(M.F.作)(野村悠里)/書物としての奇書/オブジェとしての書物(山中剛史)/本とは何か 奇書、あるいは滝口修造の〈本〉(山腰亮介)// 奇書に誘われて;中華圏の奇書をめぐる(立原透耶)/幻臭と幻獣(川野芽生)// 奇書と奇書でないもの;神器と魔法の古代書(川村悠人)/聖女の奇書 ハッケボルンのメヒティルト『特別な恩寵の書』と西洋中世の神学(三浦麻美)/世紀転換期ドイツの一知識人が見た地獄あるいはユートピア シュレーバーの『ある神経病者の回想録』をめぐって(熊谷哲哉)/『フィネガンズ・ウェイク』のABCD(今関裕太)/バベルの図書館における奇書 ボルヘス以降のミクロコスモス(棚瀬あずさ)// 伝導の道行き;MU BOOKS GUIDE - 出張版 今、日本語で読める「奇書」11選(星野太朗) 山北篤監修、『幻想図書事典』(Truth In Fantasy 事典シリーズ 10)、新紀元社、2008 あいうえお順、 536ページ。 架空の本の事典というわけではなく、英語題は Dictionary of Fantasy and Glamour Books となっています。魔道書の類が「この事典の主要項目」で、その他 「最古の書物といえる時代の本」の「有名どころ」、 「宗教書も、この事典の主要項目の一つ」 で、 「それぞれの宗教の経典を、面白そうなもの、創作に登場しそうなものから紹介」、 「創作幻想小説や、奇書の類も、面白そうなものは極力入れるようにしている。とはいえ、あまりに最近の本は採用せず、ある程度年月が経って古典・基本図書となったものから選択」、 「多くの創作の元となった本、多くの創作に引用される本もいくらか取り入れ」 ているとのこと(pp.4-5)。 →こちらにも挙げておきます:「魔術、神秘学、隠秘学など」の頁 ブック・ガイドとして、また; 藤巻一保・岡田明憲、『決定版 東洋の魔術書』、2012 ヘイズ中村、『決定版 西洋の魔術書』、2012 久米晶文、『図説 異端の宗教書』、2012 奇書、魔法書と来て欠かせないのが、〈偽書〉となるでしょうか。日本の中世のところで; 小川豊生、「偽書のトポス - 中世における《本》の幻像 -」、1998 (上掲の小川豊生、『中世日本の神話・文字・身体』、2014、第Ⅴ部第2章として改稿。また同Ⅴ部の他の章も参照) 佐藤弘夫、『偽書の精神史 神仏・異界と交感する中世』、2002 錦仁・小川豊生・伊藤聡編、『「偽書」の生成 中世的思考と表現』、2003 その他を挙げましたが、「日本 Ⅱ」中の「X. いわゆる古史古伝・偽史、神代文字など」では; 久野俊彦・時枝務編、『偽文書学入門』、2004 小澤実編、『近代日本の偽史言説 歴史語りのインテレクチュアル・ヒストリー』、勉誠出版、2017 などなどをはじめとして、あの項に載せたもの全てが偽書に関するものといってよいのでしょう。 『ユリイカ』、52巻15号(通巻767号)、2020.12、pp.35-365:「特集 偽書の世界 - ディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書まで」 [対談]文書をめぐる冒険 - 古文書・偽文書・公文書(馬部隆弘・小澤実)/ 偽書跳梁の八年間 安倍政権がとりもどそうとした「日本」(原田実)/歴史学界と偽書 『甲陽軍鑑』を事例に(呉座勇一)/ 偽書と引用/偽書と憑依 漢文仏典、中世日本の「宗教」文献の中で(彌永信美)/予言を読む 中世日本の未来はいかに訪れたか・〈聖徳太子未来記〉を中心に(小峯和明)/秘伝の行く末 歌学秘伝における思想の伝播と権威のメカニズム(梅田径)/「炎上」する江戸の言説空間 宣長・秋成と藤貞幹の「偽書」(一戸渉)/神代文字の時空間 古代への幻想と国粋主義者たち(吉田唯)/ ニセ偽書事始(乗代雄介)/ 偽書考 あるいは欲望の実体化について(横山茂雄)/偽書の条件 本の生態誌という見方(山本貴光)/偽書と書誌学(安形麻理)/偽書の思想史 ルネサンスからポストモダンまで(大橋完太郎)/ アレの話など(中島悦子)/ ディオニュシオス・アレオパギテースの勝利 ヨーロッパにおける新プラトン主義の残存と神秘主義の興隆(伊藤博明)/ある魔術的偽書のつくり方 アルテフィオの予言の書「過去・現在・未来について」(大橋喜之)/借景 あるグノーシス主義者(鈴木創士)/偽アリストテレスの『宇宙論』、真作と偽書のはざまで(アダム・タカハシ)/文字を残してはならない、と彼は言った ピュタゴラス教偽書と死者としての文学(黒川巧)/ ヴァンパイアのいる世界(鍛治靖子)/ 帝国の遺文、異聞の帝国(宮紀子)/歴史の真正性をめぐる論争のなかの『書経』(新居洋子)/『源氏物語』と異本 校訂と真贋をめぐって(越野優子)/偽書さまさま 詩人ゲーテの周辺から(石原あえか)/獄門晒し首と斬首処刑人と密偵(野崎六助)/ トンデモと学術の狭間から(小澤祥子)/ 修辞と予型、ほんとうの物語 古代末期地中海世界における偽書的思考(中西恭子)/アンニウスがみた起源の夢 16世紀フランスにおける民族神話の流行と国語意識の芽生え(久保田静香)/「失われた大陸」と「幻の偽書」(庄子大亮)/〈正統〉と〈神聖〉の在りか 戦後天皇(制)をめぐる〈偽〉なるものの想像力(茂木謙之介)/ 文学作品における架空の書物 スタニスワフ・レムの 言の葉に隠れる偽りと真こと(串田純一)/ウンベルト・エーコと偽書(橋本勝雄)/言語学者は何語の夢をみるのか(小野文)/非人間的な文字列 譁・■怜喧縺代・螟夊・然主義的概念化(■ 凵の左辺が下に伸びる)(廣田龍平)/ 交換日記(樋口恭介)/ パラレルワールドへと進化した偽史 ファクトとフィクションのはざまに(井辻朱美)/神話や聖典とフィクション作品に違いはあるのか? 信仰における「偽書」とは(谷内悠)/薔薇十字文書からゴシック文学へ ブルワー=リットン『ザノーニ』における薔薇十字団と魔術(田中千惠子)/薔薇十字、ボルヘス、インターネット(木澤佐登志) なお宇宙論がらみとは言いかねるものの、やはり挙げておきましょう; 種村季弘、『偽書作家列伝』(学研M文庫 C-た 12-1)、学習研究社、2001 『ハレスはまた来る 偽書作家列伝』(1992)の改訂文庫化 プロローグ 千の仮面舞踏会// Haresu はまた来る エーゴン・フリーデル/サタンの偽者 ヴィルヘルム・ハウフ/蚤と才女 ゲーテ偽作とベッティーナ・フォン・アルニム/天使と悪党の間 トマス・チャタトン/シェイクスピアを作る少年 W.H.アイアランド/偽温泉誌漫遊記 ハインリヒ・ホフマン// フランス万歳 ヴラン・ドニ=リュカ vs. M.シャスル/ある錬紙術師の冒険 コンスタンティン・シモニデス/歴史を偽造する男 フリードリヒ・ヴァーゲンフェルト/王妃の真筆 マリー=アントワネットをめぐる偽書簡/寸借詐欺師キリスト マリー・ルイーゼ・ブラウン/二十世紀の錬金術師 フランツ・タウゼント vs. ハワード・ヒューズ/肖像ノイローゼ症候群 ディプロマ詐欺師たち// ボヘミアの薔薇 ケーニギンホーフ手稿/贋物創始 ウラ・リンダ年代記/中世貸します コンスタンティヌス大帝贈与/偽書検閲官の偽書 ヴィテルボのアンニウス// エピローグ 顔のない偽書作家など、 320ページ。 同じ著者による→こちらを参照:「通史、事典など」の頁の「iii. 地誌・地学・地図、地球空洞説など」 エドワード・ブルック=ヒッチング、髙作自子訳、『愛書狂の本棚 異能と夢想が生んだ奇書・偽書・稀覯書』、日経ナショナルジオグラフィック社、2022 原著は Edward Brooke-Hitching, The Madman's Library. Yhe Strangest Books, Manuscripts and Other Literary Curiosities from History, 2020 はじめに;これまでに存在した本の数/最上級の奇書の棚/書物の海から奇書を探す// 「本」ではない本 本は紙でできているとは限らない;骨と粘土の古代の本/ミイラを包んでいた書物/呪文を記した鉛板/服にリサイクルされた手書きの書/東洋で印刷が始まる/インカ帝国の紐文字/天体観測の本/木の本コレクション/戦争の記録/壊す本、壊される本// 血肉の書 生き物が素材の本;「紙」が登場する前/ 人皮装丁本 おぞましい本はなぜ作られたのか;人間の皮をなめす/ハイヒールからズボンまで/殺人犯の皮膚/死体泥棒の横行/米国の人皮装丁本事情/思い出を残すために// 血で書かれた書物 魂が込められたインク;水からの血で写経/孤島で得たペンギンの血/サダム・フセインの血// 暗号の書 暗号を使って伝えたかったことは何か;文字を隠す方法/文字や単語を置き換える/魅惑のヴォイニッチ手稿/オカルトや秘密結社/宝探しの暗号書/現代のお宝暗号騒動// 偽りの書 人はなぜ欺くために本を書くのか;誰かをだますための本/謎の「台湾人」の偽自伝/風刺作家スウィフトの偽書/偽の古書オークション/新聞社のいたずら/嘆きが生んだ偽航海記/幻のロシア人文豪/裁判にまで発展した偽詩集/ベストセラーのポルノ小説/ハワード・ヒューズの伝記/ヒトラーの偽日記// 驚異の収集本 何を集めようと本の世界では自由;辞書や事典を作る/プリニウスらの動物寓話集/俗説を検証するも/楽しい海の生き物図鑑/クック船長にまつわる布の本/卑猥な言葉を集めた辞書/恐ろしき学府の崩壊/ひどくて最高の会話入門書// 神秘の書 いつの世も人は「魔」に取り憑かれる;古代エジプトの「魔術書」/キリスト教と魔導書/魔導書の名作『ピカトリクス』と『ヘプタメロン』/反対勢力の誤算/有名な『ソイガの書』/様々な悪霊たち/死者が書いた本/現代も続くオカルト本// 宗教にまつわる奇書 正史ではわからない真面目で愉快な宗教本;魚の腹から見つかった本/結婚させられた本/身に付けて守る本/誤記は楽しみの宝庫/印刷された聖書の誤字/地獄図の戒め/地獄の魔王とイエスの対決/タイ仏教のサムット・コーイ/福音書の記憶術/修道院のひげ騒動/アダムの言語はスウェーデン語/日本で生涯を送ったキリスト/地獄の魅力は止まらない// 科学の奇書 科学の進歩を裏側から見ると;血液の「 並外れたスケールの本 本のサイズや長さに作者の執着が見える;最も短い詩// 小人国リリパットの本 より精巧な技への挑戦;小人郷の小さな本/世界の「豆本」/小さな宗教書/精巧な技術/ミクロの世界に突入する// 巨人国ブロディンナグの本 長い小説、巨大な本;なぜ長い本を書くのか/多作の新興宗教創設者/人知れず書かれた長い小説/長い長い日記/悪魔の助けで書いた巨大本/20世紀の巨大な本// 変わった書名 タイトルはエンターテインメント// 主な参考文献など、 256ページ。 同じ著者による→こちらを参照;『世界をまどわせた地図』(2017)/「通史、事典など」の頁の「iii. 地学・地誌・地図、地球空洞説など」 偽書に続くべきは実在しない本でしょうか(上掲の 小川豊生「偽書のトポス - 中世における《本》の幻像 -」(1998)も参照)。こちらも『ネクロノミコン』(→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など」。また下のおまけの→そちらも参照:「本を巡るフィクション」の項)は言わずもがな、→あちら(「仏教」の頁の「i. 須弥山/三千大千世界/四大劫・六十四転大劫など」の冒頭)で触れた『摩尼宝楼閣一切瑜伽瑜祇経』や→ここ(「仏教 Ⅱ」の頁の「おまけ」)で挙げた『無嘆法経典』などなどを始めとして枚挙に暇がありますまい(追補:「『Meiga を探せ!』より・他」中の『虹男』(1949)の頁でも触れました→そこ)。とまれ上の種村『偽書作家列伝』で「架空書評」の「きわめつけ」とされたのが(p.34); スタニスワフ・レム、沼野充義・工藤幸雄・長谷見一雄訳、『完全な真空』、1989 あわせて架空の本の序文集; スタニスワフ・レム、長谷見一雄・沼野充義・西成彦訳、『虚数』、1998 さんざんあちこちに出てくるので、やはり挙げておきましょう; マラルメの『ディヴァガシオン Divagations 』(1897)中の「書物はといえば Quant au livre 」中の「書物、精神の楽器 Le Livre, Instrument spirituel 」(松室三郎訳)、『マラルメ全集 Ⅱ ディヴァガシオン 他』、筑摩書房、1989、pp.263-269 その最初の断章だか段落だかが、 「一つの提案が私から発せられて - あるいは私への讃辞において、あるいはまた非難しようとして、あのようにも、様々に、引用されたのだったが - これを私は、以下にひしめき合うことになる他の提案とともに、わが身に取り戻す - それは大略つぎのような主張である、すなわち、この世界において、すべては、一巻の書物に帰着するために存在する」 というものなのでした(p.263)。 原文は; Une proposition qui émane de moi — si, diversement, citée à mon éloge ou par blâme — je la revendique avec celles qui se presseront ici — sommaire veut, que tout, au monde, existe pour aboutir à un livre. (Wikisource; Stéphane Mallarmé, Divagations (1897) / "Le Livre, Instrument spirituel" より→こちら) 本や図書室などについて、以上の文献、それに以下の「おまけ」で挙げる諸資料も含めて、→「怪奇城の図書室」の頁も参照 |
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おまけ 文字と絵などについて; 江上綏、『葦手絵とその周辺 日本の美術 478』、至文堂、2006.3 「葦手」の語の範囲/西本願寺36人家集/久能寺経/葦手朗詠集/厳島神社の歌絵檜扇/平家納経/金剛寺の宝篋印陀羅尼経/冷泉家時雨亭文庫の元輔集/平安・鎌倉移行期の葦手絵下絵/付論 やまと絵と葦手絵など、 98ページ。 『文字絵と絵文字の系譜』展図録、渋谷区立松濤美術館、1996 工芸にみる文字の意匠 - 漆芸品を中心として -(小松大秀)/江戸時代の文字遊び(稲垣進一)/大小暦略説(大久保純一)// 図版;文字と絵/文字絵/絵文字/絵暦// 文字絵と絵文字の系譜 - 作品解説を織り込んで -(矢島新)など、 136ページ。 『書くことと描くこと 日本的なるもの』展図録、岐阜県美術館、2002 書くこと描くこと論(廣江泰孝)// 書くということ/描くということ その1/描くということ その2など、 64ページ。 『躍る文字・弾む活字 - 現代における文字世界』展図録、O美術館、1994 文字は寝そべっていない(松岡正剛)/躍る文字・弾む活字 - 現代における文字表現(天野一夫)// 浅葉克己/石川九楊/木村卓/グラハム・ウッド/幸村真佐男/徐冰/竹清仁/立花ハジメ/ネヴィル・ブロディ/ポリゴン・ピクチュアズ/ニャー・マーダウイなど、 72ページ。 『現代美術と文字』展図録、北海道立函館美術館、1996 「現代美術と文字」展の開催にあたって(柴勤)/スピリチャル・フラグメント - ニホン的精神としての文字(穂積利明)// 図版;荒川修作/石川九楊/刈谷博/白川昌生/平林薫/宮前正樹など、 84ページ。 吉川美穂、「復古大和絵派の図像 - 為恭の葦手絵、歌絵を中心に」、『美術フォーラム21』、vlo.41、2020.5:「特集 図像の誕生と伝播」、pp.68-73 復古大和絵派における古画研究/冷泉為恭の葦手絵、歌絵/おわりに 岩崎均史、「判じ絵の図像」、同上、pp.74-78 はじめに/判じ絵とは/判じ絵の絵画的不条理/系統の具体例/「携帯絵文字」と「ピクトグラム」/結論/おわりに Catalogue de l'exposition Croisement de signe, L'Institut du Monde Arbe, Paris, 1989 『記号の交差』展図録 諸干渉(Abdelkébir Khatibi)/書と諸記号をめぐる所見と小話(Gilbert Lascault)/現代の西欧絵画における書(Jeaan-Clarence Lambert)/アラブ世界における書道と近代美術(Jabra Ibrahim Jabra)/痕跡、記号(Abdelwahab Meddeb)/浸透と線(峯村敏明)// Ben Bella;Mahdjoub Ben Bella の絵画(Gérard Dirozoi)// Degottex;記号の通過(Gneviève Breerette)/覚書(Jean Degottex)// Gysin;通過点 - Gysin の芸術(William S. Burroughs)/覚書(Brion Gysin)// Shakir Hassan Al-Said;痕跡を求めて……(Souhail Sami Nadir)/覚書(Shakir Hassan Al-Said)// 李禹煥;風の翼の上に描く(Pierre Restany)/覚書(李禹煥)// 分かつ最初の線……(François Cheng)など、 150ページ。 本の形をした美術作品といえば、西村陽平、村岡三郎とかキーファーとかが思い浮かび、他にもいろいろろとあるでしょうが、とりあえず目にとまった資料として; 中川素子、『本の美術誌 聖書からマルチメディアまで』、工作舎、1995 一冊の本/複数の本/人間の時代/本の虫への皮肉/ヴァニタス/読書する女/学問の道具/アートワークとしての本/記憶と創造力/大量消費生産物/滅亡のしるし/メディア/未来など、 222ページ。 山本和弘、「メディアとしてのアーティスト・ブック フルクサスからデジ・ブックまで」、『美術手帖』、no.745、1997.8:「特集 アートブックの魅力」、pp.94-105 アナ/デジ論争/近代芸術としてのアーティスト・ブック/本の脱構築としてのアーティスト・ブック/再びアナ/デジ論争 『本と美術 20世紀の挿絵本からアーティスト・ブックまで』展図録、徳島県立近代美術館、2002 本と美術の競演 - はじめに// カタログ;芸術家と本/アヴァンギャルドの時代/多様な戦後/60年代以降 アーティスツ・ブックスの時代/80年代以降// 今そこにある本-大竹伸郎、大久保英治、藤本由起夫(友井伸一)/主要参考文献など、 172ページ。 中川素子+坂本満編、『ブック・アートの世界 絵本からインスタレーションまで』、水声社、2006 共同の実験室(田中友子)/磁場のマティエール(山田志麻子)/記憶の函(中川素子)/オブジェの夢想(森田一)/越境の扉(中川素子)/「 270ページ。 森田一、「アートとしての本を見る/考える」、REAR、no.32、2014.8、pp.81-84 西村陽平の本を主題にした作品については 『彫刻を聞き、土を語らせる - 西村陽平展』図録、愛知県陶磁資料館、2012 に何点も掲載されています。その内の1点については 「作品解説、あるいは幕間に潜りこもう!」、『ひろがるアート展~現代美術入門篇~図録、2010.10 [ < 三重県立美術館のサイト ] で記したことがあります(cat.no.19)。 村岡三郎の本状作品については; 『村岡三郎作品集』、カサハラ画廊、1991、pp.24-25、no.30:《アイアン・ブック》、1986 Oxygen Saburo Muraoka, KENJI TAKI GALLERY, 1994, pp.60-61 『村岡三郎展 熱の彫刻 - 物質と生命の根源を求めて』図録、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、1997-1998、pp.34-39、82:no.6 キーファーの本状作品については; 多木浩二、『シジフォスの笑い アンセルム・キーファーの芸術』、1997、「第6章 本の文明」 媒体としての本/主題と形式の探求/本としての形式 高木茂男、『Play Puzzle Part 3 パズルの百科』、平凡社、1986、pp.115-162:「3 本の遊び」 動く本/とび出す絵本/かくし絵/3-D絵本/豆本/ゆがみ絵/切り抜く絵本/さかさま絵本/ゲーム絵本/実物つき推理小説/アドベンチャー・ゲームブック/点だけの本 Bibliomania. Das Buch in der Kunst, Kunstmuseum Villa Zanders, Bergisch Gladbach, Deutschland, 2022 『愛書狂 芸術における書物』 前書き(ペトラ・エルシュレーゲル)/書物の意味と地位についての幾ばくかの思考(ヴィオラ・イルデブラント=シャート)/一冊の本がどうだというのか - 書物の世界に対する芸術家的な反応(ペトラ・エルシュレーゲル)/想像空間としての書物(ザビーネ・エルザ・ミュラー)/図書館 - 時間と空間に渡された橋(ピア・ジモン)など、 208ページ。 図書館のイメージとしては、後出のブレーなどの他、 『空想の建築 - ピラネージから野又穫へ -展』図録、町田市立国際版画美術館、2013 で知ったのですが、フランスの版画家エリック・デマジエールに《バベルの図書館》(1998)の連作があるとのことです(pp.108-113 / cat.nos.87-92、p.43、p.98)。 また Catalogue de l'exposition Érik Desmazières. Imaginary places, Musée Jenisch Vevey & 5 Continents, 2007, pp.109-124 : "Libraries" 中野裕介/パラモデル、『かなたをよむ:海と空のあいだのP』、P出版、2024 宇城市不知火美術館・図書館で2022/8/13~10/15に開催された展覧会のカタログ 朴株顯、「李亨禄筆《冊架図》における西洋画法の受容 - 遠近法と陰影法を手掛かりに -」、『美術史』、185号、vol.LXVIII no.1、2018.10、pp.153-169 現存最古作・張漢宗筆《冊架図》の分析;形式/モチーフ/遠近法/陰影法// 李亨禄筆《冊架図》六点の分析;文献/現存作品/遠近法/陰影法// 冊架画の設置場所と制作目的 冊架画 chaekkado, chaegkado は朝鮮王朝で18世紀後半以降に記録や作例が見出されるというジャンルで、 「書籍や文房具、陶磁器、花、果物などを並べた棚を西洋画法によって描く屛風形式の絵画のことで、管見の限り、現在三六点が伝わっている」 とのこと(p.153)、また 「冊架画より広い概念として、冊巨里(チェッコリ)がある。冊巨里とは、書籍や文房具、陶磁器、花、果物などを描く屛風もしくは掛軸のことで、器物が置かれる場所によって、三種類に分けられる。すなわち、器物を本棚に収納した状態で描くものを本棚型、器物を床に分散させて描くものを床置き型、器物をテーブル上に積み重ねて描くものをテーブル型と呼び、それぞれ四五点、三〇余点、数百点が伝わっている。本論で扱う冊架画は、本棚型に含まれるものである」(p.167註3)。 とまれ論中で挙げられていたのが(p.167註6); Edited by Byungmo Chung and Sunglim Kim, Catalogue of the exhibition Chaekgeori. The Power and Pleasure of Posessions in Korean Painted Screens, Charles B. Wang Center, Stony Brook University, Spencer Museum of Art of Kansas, The Cleveland Museum of Art, 2016-17 『 序 物質文化における冊巨里屛風(Byungmo Chung and Sunglim Kim)// ヨーロッパから朝鮮へ:絵画における蒐集物の驚異の旅(Sunglim Kim and Jpy Kenseth)/朝鮮屛風絵における事物としての本(Kris Imants Ercums)/古代を追って:冊巨里屛風における中国青銅器(Ja Won Lee)/卓越の趣味:学者の装具の絵(Sooa McCormick)/冊巨里の神秘的な魅力、本と事物(Byungmo Chung)/冊巨里の進化:その発端と李氏朝鮮から今日にいたる展開(Jinyoung Jin)// カタログ;nos.1~12:冊架図、nos.13~15:冊巨里、no.16:豹皮の帷の向こうの冊巨里、no.17~34:冊巨里、no.35:冊巨里と文字図など、 250ページ。 また; 蘆戴玉、「朝鮮王朝時代の絵画『チェッコリ』についての一考察」、『立命館産業社会論集』、55巻1号、2019.2、pp.29-42 [ < 立命館学術成果リポジトリ ] URI : http://hdl.handle.net/10367/12437 Permalink : http://doi.org/10.34382/00003792 『高麗美術館蔵品目録』、財団法人高麗美術館、2023、pp.99-101, 206-207 / cat.nos.120-121 鄭喜斗、「高麗美術館所蔵の『チェッカド』(冊架図)について」、『高麗美術館館報』、第129号、2024.9、pp.2-4 上掲の 中川素子、『本の美術誌』、1995、pp.114-123:第7章「学問の道具」 李朝の文房図 - 斬新な書架の絵/絵画への知的な思考/本が奏でる夢空間/ゆるやかな教育 ウェブ上から拾った例を二点;
* 画像をクリックすると、拡大画像とデータが表示されます →こちらでも挙げました:「寄木細工、透視画法、マッツォッキオ、留守模様」の頁。 本棚から洋物についての歴史ということで、 ヘンリー・ペトロスキー池田栄一訳、『本棚の歴史』、白水社、2004 原著は Henry Petroski, The Book on the Bookshelf, 1999 本棚の本/巻物から 302ページ。 「この難点は本書の第一章と最終章に著しく、個人的エピソードを羅列したところはあまりにも冗長であったため、訳者の判断でかなり刈り込んだ」とのこと(p.287)。 海野弘、『部屋の宇宙誌 インテリアの旅』、1983、pp.161-176:「バロックの図書館」 海野弘、『書斎の文化史』、TBSブリタニカ、1987 神話空間としての書斎/ギリシア人の書斎/中世の書斎/ゴチックの書斎/ルネサンスの書斎/学者と画家の書斎/バロックの書斎/ロココの書斎/19世紀の書斎/世紀末から現代へ、など、 260ページ。 →こちら(「戸棚、三角棚、鳥籠、他」の頁)や、またそちら(ベネデット・ダ・マイアーノ《マッツォッキオ、FEDE(信仰)と綴る文字のあるインクスタンド、アストロラーベ、天球儀のある戸棚》(1474-76)の頁の「Cf.」)で挙げました 同じ著者による→あちらも参照:「怪奇城の外濠 Ⅱ」の頁の「いろいろなど(1)」 まだまだいろいろあるのでしょうが、ここは定番のセーヘルスとブレーで;
ルネサンス期イタリアの寄木細工ことタルシーア(インタールシオ、インタルシア)では、歴史画的な主題も取りあげられますが、興味深いのは街景図、およびだまし絵風に棚を描いた作品でしょう。後者にはしばしば書物も描きこまれるので、例によってウェブ上から拾った例を二点;
「寄木細工、透視画法、マッツォッキオ、留守模様 - 幻想絵画の周辺(仮)より」のページもご覧ください。 上のセーヘルスもブレーも、またタルシーアや冊架画も出てこないものの、どんな風に探したのかと思うほど、西欧を中心に現代美術にいたる豊富な作例の図版を掲載、しかし選択や配列の規準がさっぱりわからないのが(この点で→こちらでも触れました:「怪奇城の外濠 Ⅱ」の頁の「vii. 建築画、街景図、紙上建築など」/『366日 絵のなかの部屋をめぐる旅』、2021); デイヴィッド・トリッグ、赤尾秀子訳、『書物のある風景 美術で辿る本と人の物語』、創元社、2018 原著は David Trigg, Reading Art : Art for Book Lovers, 2018 352ページ。 扉に目次、「はじめの」(9ページ)、p.342 以降の索引等以外ほとんどが図版頁で、一部の作品に解説、ところどころに本にまつわるさまざまな著作者による言葉を挙げた頁がはさまれています。 ……………………… 言葉についてのフィクションというと、これもきりがないものと思われます。とりあえずここでは、既に挙げた ブラックウッド、『人間和声』、1910 ボルヘス、「神の書跡」、1957 アーサー・C・クラーク、「90億の神の御名」、1953 R・ディレイニー、『バベル-17』、1977 や 川又千秋、『幻詩狩り』、1984/1985 山田正紀、『ジュークボックス』、1990 および 山田正紀、『ジャグラー』、1991/2002 神林長平、『言壺』、1994 山本弘、『時の果てのフェブラリー - 赤方偏移世界 -』、2001 同、 「シュレディンガーのチョコパフェ」および「メデューサの呪文」、『シュレディンガーのチョコパフェ』、2008 同、 「オルダーセンの世界」および「夢幻潜航艇」、『アリスへの決別』、2010 などがすぐに思い浮かびますが、その他; 倉坂鬼一郎、『文字禍の館』(祥伝社文庫 く 8-1)、祥伝社、2000 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など」 と来れば; 中島敦、「文字禍」、1942 と来ればさらに; 円城塔、『文字渦』、2018 牧野修、「インキュバス言語」、『楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史』、2007 伊藤計劃×円城塔、『屍者の帝国』、2012 本をめぐるフィクションも、これまた際限なくあることでしょう。たとえばクトゥルー神話ですが、そのガイドブック類(→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など」)に必ず魔術書のセクションがあることを思えば、それらの作品の少なからずが、書物を軸にしていると見なせることでしょう。「無名都市」や「狂気の山脈にて」といった〈年代記〉ものも、ある意味で歴史書を読み解くという体裁のものですが、とりわけ既に挙げた ヘンリイ・ハーセ、「本を守護する者」、1937 は印象的でした。また、 ヴィクター・ラヴァル、藤井光訳、『ブラック・トムのバラード』(はじめて出逢う世界のおはなし アメリカ編)、東宣出版、2019 原著は Victor Lavalle, The Ballad of Black Tom, 2016 このお話はラヴクラフトの「レッド・フックの恐怖」(1925、邦訳は大瀧啓祐訳、『ラヴクラフト全集 5』(創元推理文庫、東京創元社、1987)など)を語り直したものなのですが、「至上のアルファベット the Supreme Alphabets 」という小道具が登場します(pp.21, 93, 122, 148)。ラップ音楽に由来するというこのイメージについては、「訳者あとがき」の pp.163-165 を参照。 また少し下で挙げた『ナイトランド・クォータリー』、vol.20、2020.4:『バベルの図書館』に 岡和田晃、「魔術的な他者が神話を書き換える - ヴィクター・ラヴァル『ブラック・トムのバラード』」 あり(p.157)。 クトゥルー神話がらみでもう1点; 殊能将之、『黒い仏』(講談社 NOVELS シL-03)、講談社、2001 ひかわ玲子、『千の夜の還る処』、1998 に登場する〈予言の書〉は、幾度となく名を挙げられながら、最後までその実体をあきらかにしませんでした。 『R.O.D Read or Die』(OVA、全3巻)、2001~2002、監督:舛成孝二、原作・脚本:倉田英之 『R.O.D THE TV』、2003~2004、監督:舛成孝二、原作・脚本:倉田英之 OVA版冒頭で描かれる主人公の生活の一齣は、本好きにとってはある意味での理想といえるかもしれません。 →「怪奇城の図書室」の頁でも触れました マーク・Z・ダニエレブスキー、嶋田洋一訳、『紙葉の家』、ソニーマガジンズ、2002 原著は Mark Z. Danielewski, House of Leaves, 2000
エリン・モーゲンスターン、市田泉訳、『地下図書館の海』、東京創元社、2023 原著は Erin Morgenstern, The Starless Sea, 2019
多崎礼、『〈本の姫〉は謳う』(全4巻)(C・NOVELS)、中央公論新社、2007~2008 法月綸太郎、「バベルの牢獄」、『ノックス・マシン』(角川文庫 の 6-3)、角川書店、2015 2013年刊本の文庫化 紙の書物がデータに置き換えられた未来が舞台ですが、綴じ本ないし冊子の形態が重要な役割を果たします。 なお、同書に収められた他の中短篇3篇のいずれも、本がテーマになっています。 レイモンド・F・ジョーンズ、伊藤典夫訳、「子どもの部屋」、高橋良平編、『ボロゴーヴはミムジイ 伊藤典夫翻訳SF傑作選』(ハヤカワ文庫 SF2102)、早川書房、2016、pp.75-134 原著は Raymond F. Jones, "The Children's Room", 1947 ピーター・アクロイド、真野明裕訳、『チャタトン偽書』、文藝春秋、1990 原著は Peter Ackroyd, Chatterton, 19879 風間賢二、『怪異猟奇ミステリー全史』(新潮選書)、新潮社、2022 に 「しかも本書そのものが、実はオスカー・ワイルドの中編『W・H氏の肖像』(1889年、工作舎)の手の込んだ贋作になっている!」(p.24) とありました。そこで; ワイルド、福田恆存・福田逸訳、「W・H氏の肖像」、『アーサー卿の犯罪』(中公文庫 C18)、中央公論社、1977、pp.129-185 原著は Oscar Wilde, "The Portrait of Mr. W. H.", 1889 作中の一節について→こちらで触れました;「戸棚、三角棚、鳥籠、他 - 怪奇城の調度より」の頁中 またこの邦訳短篇集から→そちらも参照:『幽霊西へ行く』(1935)の頁の「Cf.」 〈書物〉のイメージについては、「魔術、神秘学、隠秘学など」のページの「魔術書など」の項目や「おまけ」等も参照ください。 重なるところも少なくありませんが、他方、図書館といえばいやおうなく、まずは ボルヘス、「バベルの図書館」、1941 ( J.L.ボルヘス、木村榮一訳、『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』、2017、pp.9-30:「書物」 も参照) 「バベルの図書館」といえば 山尾悠子、「遠近法」、1977 『ナイトランド・クォータリー』、vol.20、2020.4:『バベルの図書館』 から、「ボルヘス『バベルの図書館』の現代版」((晃)、「(扉頁解説)」、p.69)というのが; 樺山光英、「post script」、pp.69-84 また 岡和田晃、「『バベルの図書館』の解釈学」、pp.41-46 同誌からは→少し上のこちら(ヴィクター・ラヴァル、藤井光訳、『ブラック・トムのバラード』)や、そちら(J.B.キャベルに関して/「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」の頁の「ハイネと〈流謫の神々〉その他」の項)も参照 さらに p.29;岡和田晃、「今福龍太『ボルヘス「伝奇集」 - 迷宮の夢見る虎』を素描する - 「バベルの図書館」の解釈学補遺」 および p.16;岡和田晃、「『図書館情調』から始まる図書館幻想文学の世界」 で知ったのが; 今福龍太、『ボルヘス 伝奇集 - 迷宮の夢見る虎』、2019、「Ⅲ 〈完全なる図書館〉の 日比嘉高編、『図書館情調 Library & Librarian シリーズ 紙礫 9』、皓星社、2017 図書館情調(萩原朔太郎 1922)// 図書館を使う;出世(菊池寛 1920)/図書館(宮本百合子 1947)/文字禍(中島敦 1942)/世界地図を借る男(竹内正一 1934)// 図書館で働く;柴笛詩集(抄)(渋川驍 1946)/小年達(新田潤 1941)/司書の死(中野重治 1954)/図書館の秋(小林宏 1975)// 図書館幻想;深夜の道士(富永太郎 1927)/S倉極楽図書館(笙野頼子 2002)/図書館幻想(宮澤賢治 1921頃)/図書館あるいは紙魚の吐く夢(高橋睦郎 1981)/図書館(三崎亜記 2004)// 解説(日比嘉高) 図書館を使う;エリートたちの書楼/もう一つの「学校」/市民の図書館へ// 図書館で働く;司書という媒介者/働く図書館員をまなざす/図書館と戦争// 図書館を幻想する;図書館の無限/異界へ向かう幻想/過去に向かう幻想/オルタナティブな知へ向かう幻想// 図書館の恋 - おわりに、など、 278ページ。 カルロス・ルイス・サフォン、木村裕美訳、『風の影』(上下、集英社文庫 サ 4-1~2)、集英社、2006 原著は Carlos Ruiz Zafón, La sombra del viento, 2001 / 2004 カルロス・ルイス・サフォン、木村裕美訳、『天使のゲーム』(上下、集英社文庫 サ 4-3~4)、集英社、2012 原著は Carlos Ruiz Zafón, El juego del ángel, 2008 カルロス・ルイス・サフォン、木村裕美訳、『天国の囚人』(集英社文庫 サ 4-5)、集英社、2014 原著は Carlos Ruiz Zafón, El prisionero del cielo, 2011 カルロス・ルイス・サフォン、木村裕美訳、『精霊たちの迷宮』(上下、集英社文庫 サ 4-6~7)、集英社、2022 原著は Carlos Ruiz Zafón, El laberinto de los espíritus, 2016 / 2017 以上四作は「忘れられた本の墓場」四部作と呼ばれ、四作に共通して出てくる〈忘れられた本の墓場〉は特異な図書館です。また四作のいずれもが、本をめぐる物語でもあります。そこで→こちらにメモの頁を設けました。 図書館は直接出てきませんが つばな、『バベルの図書館』(F×COMICS)、太田出版、2014 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「xxiii. 日本の漫画、アニメーションその他」 バベルの図書館を連想させずにいないのが、 レナード・M・ワプナー、佐藤かおり・佐藤宏樹訳、『バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ?』、2009、pp.178-181 で紹介されている、イアン・スチュアートが著書『ここから無限へ』(1996)で述べたという、「万能辞書( 「これは英語の26個のアルファベットを用いてつくられるすべての可能な単語がおさめられた辞書である。有限個の文字から構成される各単語は、アルファベット順に記載されている。この辞書は、各単語に意味があろうとなかろうと、単なる定義のない単語の一覧である」(pp.178-179)。 この辞書の出版計画の顛末も興味深いものです(pp.180-181)。 図書館に戻って ウンベルト・エーコ、『薔薇の名前』、1990 高橋留美子、『うる星やつら 8』(少年サンデーコミックス)、小学館、1981、「Part 10 ああ、図書館」 そのアニメ版 『うる星やつら』、第32回(第51話):「ドッキリ図書館お静かに!」、1982、監督:押井守 やはりアニメで 『ヤミと夜と帽子の旅人』、2003-2004、監督:山口祐司 諸星大二郎の『栞と紙魚子』シリーズは二人のヒロインの内一人の家業が古本屋とあって、本にまつわるエピソードが一度ならず登場します(追記:すっかり忘れていましたが、もう一人は新刊書店の娘でした)。とりわけ 諸星大二郎、『栞と紙魚子と夜の魚』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)、朝日ソノラマ、2001 中の 「古本地獄屋敷」。 →「怪奇城の図書室」の頁や、→カルロス・ルイス・サフォン「忘れられた本の墓場」四部作(2001-17) メモの頁でも触れました 加えて同書 pp.236-237 には「宇論堂奇書珍書目録」として、シリーズに登場した本が紹介されています。 また 諸星大二郎、『栞と紙魚子と青い馬』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)、朝日ソノラマ、1998 中の「ラビリンス」はタイトルどおり迷宮をめぐる話ですが、〈バベルの図書館〉も引きあいに出されています。 ついでに、このシリーズにはセミ・レギュラーとして「クトルーちゃん」とその家族などの人物がいるのですが、 諸星大二郎、『栞と紙魚子の百物語』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)、朝日ソノラマ、2008 中の「百物語」には「禁断の魔書『根暗なミカン』」が登場します(p.142)。→こちらにも挙げておきます:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など」の冒頭 ちなみに 諸星大二郎、『西遊妖猿伝 大唐篇』、第3回(第1巻)、pp.74-76 には『 同じ著者による→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅷ」の頁の「諸星大二郎」の項 やはり〈バベルの図書館〉の名が挙がるのが; 西川魯介、『野蛮の園 2』(JETS COMICS 023)、白泉社、2004、pp.117-132:「第17話 我がまどろみは覚めがちに」 松崎有理、『架空論文投稿計画 でっちあげられた数章』、光文社、2017 樋口恭介編、『異常論文』、2021 空洞地球が出てくるので→こちらにも挙げておきます;「通史、事典など」の頁の「iii. 地学・地誌・地図、地球空洞説など」 同じ著者による→そちら(「近代など(20世紀~) Ⅴ」の劉慈欣の項)を参照 スティーヴン・ミルハウザー、柴田元幸訳、「展覧会のカタログ - エドマンド・ムーラッシュ(1810-46)の芸術」、『三つの小さな王国』、白水社、1998、pp.197-281 架空の画家の回顧展のカタログの作品解説。 →こちらにも挙げました:『アッシャー家の末裔』(1928)の頁の「おまけ」 同じ著者による→そちらを参照:「怪奇城の地下」の頁の「追補」 |
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人工言語といえば、〈コパイア語〉を創造したのがフランスのプログレッシヴ・ロック・バンド、マグマでした。手もとにあるのは3枚目; Magma, Mekanïk Destruktïẁ Kommandöh, 1973(邦題:マグマ、『呪われし地球人たちへ』)(1) と Magma, Live / Hhaï, 1975(マグマ、『ライヴ!』)(2) |
1. 『フレンチ・ロック集成 ユーロ・ロック集成3』、マーキームーン社、1994、p.176。 大鷹俊一監修、『ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・プログレッシヴ・ロック』、音楽之友社、1999、p.193。 松山晋也監修、『プログレのパースペクティヴ MUSIC MAGAZINE 増刊』、ミュージック・マガジン、2000、p.103。 片山伸監修、『ユーロ・プログレッシヴ・ロック The DIG Presents Disc Guide Series #018』、シンコーミュージック、2004、p.18。 立川芳雄、『プログレッシヴ・ロックの名盤100』、リットーミュージック、2010、p.68。 2. 『ユーロ・ロック集成』、マーキームーン社、1987/90、p.84。 『フレンチ・ロック集成 ユーロ・ロック集成3』、マーキームーン社、1994、p.176。 大鷹俊一監修、『ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・プログレッシヴ・ロック』、音楽之友社、1999、p.193。 『200CD プログレッシヴ・ロック』、立風書房、2001、p.104。 片山伸監修、『ユーロ・プログレッシヴ・ロック The DIG Presents Disc Guide Series #018』、シンコーミュージック、2004、p.18。 松井巧監修、『ジャズ・ロック The DIG Presents Disc Guide Series #035』、シンコーミュージック、2008、p.130。 |
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高円寺百景、Angherr Shisspa, 2005(3) 日本語版ウィキペディアの該当ページによると(→こちら)、「歌詞の言語は造語であり、これもマグマのコバイア語からの影響が大きい」とのこと。手もとにある上のアルバムは4枚目。 ドラムスの吉田達也の活動について→そちらでも触れました:「アメリカ大陸など」の頁の「おまけ」 |
3. 『ユーロ・ロック・プレス』、vol.26、2005.8、pp.94-96。 『オール・アバウト・チェンバー・ロック&アヴァンギャルド・ミュージック』、マーキー・インコーポレイティド株式会社、2014、p.236。 |
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本に関する曲というのもいろいろありそうですが、ここではとりあえず; Happy the Man, Crafty Hands, 1978(邦題;ハッピー・ザ・マン、『クラフティー・ハンズ』)(4) 2枚目の6曲目(元のLPではB面2曲目)が "Open Book"(「オープン・ブック」)。4分54秒、器楽曲。 この曲は Happy the Man, Live, 1978/1994 でも3曲目に収められていました。6分34秒。 |
4. 『ユーロ・ロック・プレス』、vol.4、2000.2、p.30。 舩曳将仁監修、『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック DISC GUIDE SERIES #039』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2009、p.61。 1枚目から→こちらも参照:「マネ作《フォリー・ベルジェールのバー》と絵の中の鏡」の頁の「おまけ」 |
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2014/07/18 以後、随時修正・追補 |
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