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グノーシス諸派など
 Ⅰ 邦語文献など
 i 『ヘルメス文書』邦訳刊行以前以後など( ~1996)
  ii 『ナグ・ハマディ文書』邦訳刊行とその周辺など(1997~2005)
   iii 『ユダの福音書』以後など(2006~ )
   余談 イスカリオテのユダなど 
  洋書類など
   iv ナグ・ハマディ写本の発見以前など
   v ナグ・ハマディ写本の発見以降など
   vi ウィリアムズ『再考』を一応の目安に、その他
 viii マンダ教など 
 ix マニ教(マーニー教)など
 x ボゴミール派、カタリ派など
    おまけ 

* ギリシア語、ラテン語はもとより、コプト語、マンダ語などなど、勉強不足のため残念ながらわかりません。
 ともあれ例によって、多々誤りもあろうかと思いますが、ご寛恕ください。

Ⅰ 邦語文献など

i. 『ヘルメス文書』邦訳刊行以前以後など( ~1996)


 いわゆるグノーシス主義を意に留めるようになったのは、おそらく;

カート・セリグマン、平田寛訳、『魔法-その歴史と正体』、1961.7.29、pp.95-106:「グノシス説」
至福への道/グノシスの諸派など

 ここには『
信仰(ピスティス)=知恵(ソフィア)』のことが記されていました(pp.99-101)。→こちらを参照:「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁中の Pistis Sophia, 1978
 あるいは、


種村季弘、『悪魔禮拝』、1974.11.10、pp.41-64:「蛇と世界創造神」

 でしょうか。こちらにはエピファニウスが証言を残した「フィビオート」や「拝蛇教徒」が取りあげられています。
 参照源の一つとして挙げられているライゼガングについては→こちら:「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁中の Hans Leisegang, Die Gnosis, 1927/1985
 また

種村季弘、「魔術師シモン」、『怪物の解剖学』、1974.7/1979.8.10、pp.43-61

 種村季弘については→こちらを参照:「通史、事典など」の頁の「iii. 地学・地誌・地図、地球空洞説など

 怪しさ満載なのが;


澁澤龍彦、「グノーシス派の流れ」、『秘密結社の手帖』(1966)、『澁澤龍彦集成 Ⅰ』、1970、pp.250-260

 澁澤龍彦については→こちらを参照:「通史、事典など」の頁の「おまけ

 ともあれそうこうする内に、たしか大学の近くの古本屋だったかで見つけたのが

荒井献、『原始キリスト教とグノーシス主義』、岩波書店、1971.9.25
序:本書の課題と構成//原始キリスト教 原始キリスト教の成立;後期ユダヤ教/パレスチナ教団の成立/ヘレニズム教団の成立/地域教会の成立/初期カトリシズムの成立へ-結論にかえて-//
  エルサレム原始教団におけるいわゆる財産の共有制について//エルサレム原始教団におけるいわゆる「ヘブライオイ」と「ヘレーニスタイ」の問題をめぐって-使徒行伝6章1-6節に関する教会史的考察-//義人ヤコブの殉教に関する新資料について//原始キリスト教における教育思想の展開//
グノーシス主義 いわゆる「グノーシス」とその発展;反異端論者の「グノーシス」観-エイレナイオスの場合を中心として-/「魔術師」シモンとその伝承について/バルベロ・グノーシス派とオフィス派について/ヴァレンティノスの教説/プトレマイオス派のグノーシス神話-その展開と構造-//
  ナグ・ハマディ文書のグノーシス主義;ナグ・ハマディ文書の発見とグノーシス主義研究史上におけるその意義/『アダムの黙示録』におけるフォーステール/『ヨハネのアポクリュフォン』におけるソフィア・キリスト論/いわゆる『この世の起源について』における創造と無知/古代教会の伝承における使徒トマス-その宣教と神学-/『トマスによる福音書』-特に福音書正典との関係について-/『トマスによる福音書』におけるイエス/『ピリポによる福音書』におけるイエス・キリスト/『真理の福音』におけるキリスト論//
  グノーシス主義の問題点;グノーシス主義のイエス理解-いわゆる「グノーシス救済者神話」批判-/グノーシス主義の本質と起源について、など、
420ページ。

 同じ著者による→こちら(本頁下掲の『新約聖書とグノーシス主義』、1986)や、またそちら(本頁下掲の『トマスによる福音書』、1994)や、あちら(本頁下掲の『ユダとは誰か』、2007)も参照
 そちらと併せて、グノーシス主義関連の論考は
『荒井献著作集 第6巻 グノーシス主義』、岩波書店、2001
 に収められているものと思われますが、未見。


 以下、大よそ刊行年順で;

園部不二夫、「マルキオン主義批判」、『明治学院論叢』、no.31、1953.11、pp.63-91
マルキオンの歴史像/「マルキオン反駁論」に就いて/神觀/キリスト觀/一般的特色と概評/後期のマルキオン派

園部不二夫、「グノシス主義的キリスト教理解」、『明治学院論叢』、no.33、1954.6、pp.1-38
序//バシレイデスの体系;イレナェウスによるバシレイデス/ヒッポリュトスによるバシレイデス//
ウァレンティノスの体系;概觀/プレロマ内界/プレロマ外界/キリスト/救済//結び

 「宙吊りの形相」(1989)でエイレナイオスによるバシリデース(バシレイデス)を引用したのは(→こちら)、この論文によるものだったと思います。上掲の荒井献『原始キリスト教とグノーシス主義』(1971)にはバシリデースについて章立てされていないので、当初、詳しい説明といえばこれが役立ったわけです。

菊地栄三、「グノーシス主義に関する一考察」、『立教大学研究報告 人文学』、no.11、1962、pp.37-65
その起源をめぐって//
その性質について;グノーシス/教理の基本的特徴//
キリスト教的グノーシス主義者たち//資料の問題について


菊地栄三、「初期グノーシス主義の一形態-魔術者シモンをめぐって-」、『宗教研究』、no.172、1962.9、pp.49-68
「使徒行伝」におけるシモン/ユスティヌスにおけるシモン/イレナエウスにおけるシモン/「偽クレメンス文書」におけるシモン//
シモン-シモン派の多様性と統一性/シモン-シモン派の教理の展開とその特色


荒井献、「グノーシス - 主として原始キリスト教との関連において -」、『日本の神学』、no.2、1963、pp.66-74 [ < J-STAGE

赤城泰、「『原トマス』仮説」、『日本の神学』、no.5、1966、pp.26-37 [ < J-STAGE ]

持田行雄、「キリスト仮現説」、『倫理学研究』、no.14、1966.12、pp.55-79
新約聖書の伝える仮現説;パウロ/ヨハネ文書//
イグナティオスの伝える仮現説//
エイレナイオスの伝える仮現説;ウァレンティヌスとその派の人々/バシレイデスとその派の人々/カルポクラテスとその派の人々


水垣渉、「探求と発見 - 初代教父及びグノーシスにおけるマタイ七・七の解釈 -」、『日本の神学』、no.6、1967、pp.175-184 [ < J-STAGE ]

滝沢武人、「〈真珠の歌〉の宗教史的位置 - G.Quispel説をめぐって -」、『日本の神学』、no.9、1970、pp.155-167 [ < J-STAGE ]

栗原貞一、「異端者マルキオン(Marcion)の神学思想」、『桃山学院大学キリスト教論集』、no.6、1970.3.30、pp.42-58 [ < CiNii Articles

 後掲『初代キリスト教異端思想の諸相 - 異端者列伝 -』(1973)に訂正増補して再録

菊地栄三、「『聖書』とマルキオン」、『立教大学研究報告 人文学』、no.30、1971、pp.1-20
マルキオンの聖書否定/マルキオンの新しい聖書

持田行雄、「ユダヤ・グノーシス主義の諸問題-イグナティオスの異端反駁-」、『倫理学研究』、no.17・18、1971.2、pp.1-15
7つの手紙とその成立の事情/問題の所在と歴史的背景/仮現説とユダヤ主義/ユダヤ・グノーシス主義

伊藤千章、「グノーシス主義と聖書解釈-アレゴリーと予型論-」、『史観』、no.83、1971.3、pp.47-60
序論/グノーシス主義成立の歴史的背景/グノーシス主義とアレゴリー/予型論と歴史の神学/グノーシスから無知の形而上学へ

栗原貞一、「異端の源流シモン・マゴス(Simon Magus)」、『桃山学院大学キリスト教論集』、no.7、1971.3.31、pp.27-40 [ < CiNii Articles

 後掲『初代キリスト教異端思想の諸相 - 異端者列伝 -』(1973)に訂正増補して再録

滝沢武人、「グノーシス主義とハイデッガーの思惟」、『宗教研究』、no.207、1971.7、pp.23-55

滝沢武人、「〈真珠の歌〉の平行記事」、『基督教学』、no.6、1971.7.12、pp.23-27 [ < 北海道大学学術成果コレクション HUSCAP

アルベール・カミュ、滝田文彦訳、「キリスト教形而上学とネオプラトニズム」、『カミュ全集 1 アストゥリアスの反乱 裏と表 結婚』、新潮社、1972.9.5、pp.5-104
原著は Albert Camus, Métaphysique chrétienne et Néoplatonisme, 1936
アルジェ大学に提出された哲学科学士論文
差異/共通の願望/問題の位置づけと本論文の意図//
福音的キリスト教 福音的キリスト教の諸テーマ;悲劇的次元/神への希望//
  福音的キリスト教の人々;作品/人間//
  福音的キリスト教発展の困難性とその原因;加入/抵抗/問題点//
グノーシス;グノーシス派的解決の諸テーマ/グノーシス派的解決の諸要素/結論-キリスト教の進化におけるグノーシス主義//
神秘的理性 プロティノスの解決;発出による純理的解釈/回心または恍惚への道//
  抵抗//ネオプラトニズムの意義と影響//
第2の啓示;聖アウグスティヌスの心理的体験とネオプラトニズム/聖アウグスティヌスにおけるヘレニズムとキリスト教/聖アウグスティヌスの信仰と理性//
中世の門口におけるキリスト教思想//結論//書誌など

 「大学での研究論文といった性格の強いものである。…(中略)…その意味では形式といい、文体といい、後のカミュ作品とは区別されなければならない」(「解題」、p.257)。
 他方カミュは、後の『反抗的人間』(1951、『カミュ全集 6』、新潮社、1973.2.5)の「第2章 形而上的反抗」の第1節「カインの末裔たち」でも、グノーシス主義に言及しました(p.34)。

荒井献、「古代教会における正統と異端の問題 - マルキオンとグノーシス主義を中心として -」、『日本の神学』、no.11、1972、pp.116-121 [ < J-STAGE ]

滝沢武人、「〈トマスの詩篇〉について」、『基督教学』、no.7、1972.10.30、pp.29-32 [ < 北海道大学学術成果コレクション HUSCAP

栗原貞一、『初代キリスト教異端思想の諸相 - 異端者列伝 -』、キリスト新聞社、1973.4.1
歴史的思想的背景;迫害の歴史の流れ/ローマ皇帝歴代の迫害/迫害の終末とその結果//
キリスト教における異端;仏教における異端とキリスト教との比較/キリスト教における異端と分派/日曜日の制定とユダヤ教徒の取締規定/ユダヤ教の割礼の禁止/教会の特権について//
キリスト教形成の背景;密儀宗教ミトラ崇拝/呪術と初期キリスト教/シビュレ教//
ユダヤ教に対する異端者イエス ユダヤ教の歴史;ユダヤ教について/選民信仰/預言者について/律法について/バビロニア捕囚以後のヘブライ思想//
  ユダヤ教団;ユダヤ教団/パリサイ派とサドカイ派/パリサイ派/両派の教理//
  ユダヤ教における宗派と党;エッセネ教団/熱心党/ヒルレル派/シャンマイ派//
  ユダヤ教の異端律法//
異端発生の過程とその列伝 施洗者ヨハネの殉教と洗礼者の神学//
  異端の源流シモン・マゴス - 仮現説の源流者 -;シモン・マゴスの人物/呪術について/皇帝ネロとシモン・マゴス/キリスト教の多面性と統一性/キリスト教的グノーシス主義/シモン・マゴスの教説//
  異端思想の展開;シモンの弟子メナンドロス - サマリア人、呪術的密儀を説く -/サトルニノス - 仮現説を説く禁欲主義的二元論者 -/バシリデス - 霊の輪廻転生を説く -/パピアス派 - 千年至福説を説く -/ハイドロパラスタ派 - 以水清浄派 -/エンクラティス派 - 禁欲主義 -/タティアノス - 背教者にして、エンクラティス派の代表的人物 -/タスコドロキタイ派 - 不明なる異端 -/エビオン派 - イエスの神性否定 -/ユスティノス - 初期のグノーシス主義者 -/ノエトウス - 最初の天父受難論者 -/ヒッポリュトス - ノエトウスに対する異端弁論 -/カルポクラテス - エジプト系初期のグノーシス -/エピファネス - カルポクラテスの子にしてモナード・グノーシス説提唱者 -/ケルドン - 仮現論者にしてマルキオンの師 -/マルキオンの神学思想 歴史的思想的背景、グノーシス主義、グノーシス主義の諸傾向、二元論、救済の問題、イエス・キリスト,救済者、教会側の防衛、マルキオンその人と活動、マルキオンの聖書編纂、マルキオンの思想の立脚点、マルキオンの神学思想、イレナエオスの『異端を駁す』、テルトゥリアヌスの『マルキオン駁論』など、マルキオンに対する評価/アペレス - マルキオンの弟子、折衷的一元論 -/ヴァレンティノス - グノーシス最大の梟将 -/マニ、およびマニ派 - 三大異端の1つ -/モンタヌス派 預言者にして「慰めの霊」「助け主」を以て任ず、モンタヌス派に対する会議/ニコライ派 - 性的放恣と偶像奉献物の食事 -/ケリントス - ユダヤ人にして初期の仮現論者 -/サベリウス - モドウス的モナルキア主義(様態論的独裁論者) -/バルデサネス - シリア語讃美歌の編纂者、占星術家で運命論者 -/ハルモニウス - バルデサネスの子、讃美歌の作者 -/ノヴァティアヌス - 分派・ノヴァティアン主義者 -/ドナトウス派 - 北アフリカの分派 -/サモサタのパウロ 養子論者にして俗悪なる僧官、サモサタのパウロに対する会議/アルテモン - 養子論者 -/プラクセアス - モナキア論者天父受難論者 -//
初期教会の異端の分派 養子論;キリスト論/キリスト霊物論/独裁論//
  独裁論者の系譜;ロゴス・キリスト論に対する反論者たち/テオドトス - 最古の非三一論者 -//
  様態論的独裁論者//ミレティウス - ミレティウス分派の開祖 -//イレナエオスの異端に対する反論//テルトゥリアヌスの異端抗弁//
  4世紀の異端;アウディウス - 神人同形説の祖 -/アポリナリオス - キリストの神性高調論 -/パトラキタイ派 - 宝珠崇拝の一種「蛙」崇拝 -/ヘルミアス - 受肉・処女降誕・復活否定 -/ヘルモゲネス - 物質不滅論者、三位一体否認 -/テトラディタイ - 四位一体論 -/フオティノス - キリストの神性否定、サベリウス的立場 -/パウニー派 - パウロの所説のみ信認、旧約認めず -/マルキアヌス派 - マルキアニスタイ派、反三位一体論 -/オフィタイ派 - 蛇崇拝 -/サツコフォリ派 - マニ教の一派・孤独生活者 -/マケドニオス - 半アリウス主義支持者 -//
  キリスト論争;教会とローマ帝国/アリウス派論争/アリウス派論争の継続/背教者ユリアヌス/ルキアヌス - アリウスの師、アンテオケ学派の祖 -/アリウスとその派 - 異端の王者 -/アリウスの神学説 アリウス主義とアタナシウス主義、アリウス主義の起源、ニカイア会議、父子同質論を構成した思想上の過程/オリゲネスの神観 - アレクサンドリア学派の偉大なる神学者 -/プリスキリアヌス - 修道僧、禁欲主義者にして肉体の復活否定 -/プネウマトマコ - マケドニオス、聖霊同質否定論者 -/ヘルヴィディウス、ボノースス、ヨヴィニアヌス - 独身生活に関する誤り -/イシドロス - ナイル河口の修道院長 -/ペラギウス - 原罪否定論者 -/半ペラギウス説/半ペラギウス主義について/ケレスティウス - ペラギウス主義者 -//
  ネストリウス - 果して異端者か -;エペソ総公会議/アンテオケ学派とアレクサンドリア学派/「神の国・童貞聖母」の思想的背景/原始のマリア画像/マリア童貞論の思想的背景とその崇拝の確立/人間マリアの生涯について/「神の母」の問題点/ネストリウス異端に対する評価/ネストリアン教会について/エウテュケスの異端、単性論者/エペソの強盗会議/単性主義論争と第5総会議/異端の系譜など、
426ページ。

 グノーシス主義だけに関する著作ではなく、また個々の項目も多くは短いもので、いささか粗く見える部分も見当たるものの、見取り図として役立ってくれます。
 →こちらにも挙げておきます:「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「ii. 初期キリスト教の諸傾向など

滝沢武人、「〈アダムの黙示録〉について」、『基督教学』、no.9、1974.6.10、pp.23-25 [ < 北海道大学学術成果コレクション HUSCAP

荒井献、「黙示文学とグノーシス主義 オカルティズムの古代的表現によせて」、『ユリイカ』、vol.6-9、1974.7.20:「総特集 オカルティズム」、pp.60-65

ルドルフ・シュナッケンブルク、「初期グノーシス主義」、H.ブラウン、ハンス・コンツェルマン他、佐藤研訳、『イエスの時代』、教文館、1975、pp.238-252(手もとにあるのはこの部分のコピーのみ)

プロティノス、水地宗明訳、「グノーシス派に対して 『エネアデス』第2論集 第9論文(Ⅱ9)」、『世界の名著 続2 プロティノス ポルピュリオス プロクロス』、中央公論社、1976.1.25、pp.323-360

 『プロティノス全集』では第2巻(1987.2.25)、pp.97-149 に掲載

吉田敦彦、『天地創造99の謎 世界の神話はなぜ不滅か』、1976.2.20、pp.146-153
60 グノーシスの人類創造神話/61 人間の内から自分の霊を呼びもどそうとする神/62 グノーシスのキリスト神話/63 魂の男性的部分と女性的部分-魂と魄

 「6 霊魂のはじまり - なぜ、男は『魂』的存在で女は『魄』的存在なのか」中の60-63節にあたり、グノーシス主義者ユスティノスの『バルクの書』をとりあげています。

大貫隆訳、「ヨハネ行伝」、『聖書外典偽典 7 新約外典 Ⅱ』、教文館、1976.6.10、pp.115-189
荒井献・柴田有訳、「トマス行伝」、同上、pp.215-375(「真珠の歌」は第9行伝108-113節、pp.319-332)

 訳者による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

小林稔、「グノ-シス主義における physei sōizesthai の問題 エイレナイオス「異端反駁」第1巻1-8章を中心として」、『宗教研究』、no.229、1976.9、pp.43-65
問題点と資料//
エイレナイオス『異端反駁』第1巻1-8章の構造;主要資料(A)の人間論/3種族説(七5)の人間論/論争部分(六2,4)の問題/放埒主義(六3)の問題


Harry R. Boer、塩野靖男訳、「グノーシス主義」、「マルキオン主義」、『初代教会史』、教文館、1977、pp.96-109(手もとにあるのはこの部分のコピーのみ)
グノーシス主義;グノーシス主義者の問題/プレローマ/創造、悪、あがない/グノーシス的素描の意味/グノーシス主義とキリスト教//
マルキオン主義;新約聖書に反する旧約聖書/マルキオンの語るキリスト/マルキオンの影響


湯浅泰雄、『ユングとキリスト教』、人文書院、1978.3.10
序論 ユング心理学と宗教経験の世界 ユングにおける体験と思想;ユングの生涯と見神体験/思想家としてのユング/深層心理学のキリスト教批判//
  ユング心理学の概観;フロイト批判/無意識と宗教経験/世界内存在の日常的存在様式としての内向性と外向性/心の四機能と身体/集合的無意識の次元/元型と霊性の領域//
原始キリスト教 予言者思想の崩壊;『ヨブへの答え』/義人の苦悩についての従来の解釈/神の二重性格とサタンの役割/旧約における神人関係とその変貌//
  ヘレニズムとヘブライズムの間;オリエント神話とヨブ記/智恵と聖霊と女性的原理/黙示と人の子//
  新約的人間観の問題点;ソフィアとロゴス/聖霊の受肉/童貞聖母/現代キリスト教への提言//
グノーシス主義 キリスト教とグノーシス主義;『アイオーン』/グノーシス主義とは何か/グノーシス研究の問題点//
  グノーシス的宇宙観と人間観;グノーシス神話の宇宙観/キリストの三重身と人間性/グノーシス体験における深層心理的心像/両性具有の理念/近親相姦タブーの克服//
  キリスト教教義の深層心理学的考察;善の欠如としての悪/無からの創造//
正統と異端 三位一体論の形成;ニケーア公会議/三位一体論の問題点/バビロン神話とエジプト神話/『ティマイオス』の宇宙論//
  三位一体論における神性と人間性;東方教会のキリスト論/聖母崇拝/第四者としてのエロスと悪魔/三位一体論と錬金術//
  正統と異端の分岐点;正統信仰の確立/アウグスチヌスの三位一体論と深層心理学//
結び 西洋精神史の光と影;メタ・フィジカとメタ・プシキカ/近代精神の栄光と悲惨/鎮魂の精神史など、
308ページ。

 →こちらでも触れています:『リサと悪魔』(1973)の頁中
 ユングとグノーシス主義については→そちら(本頁下掲の大田俊寛「ユングとグノーシス主義」、2007)や、あちら(同、入江良平「ユング心理学とグノーシス」、1992)や、ここ(同、髙橋原「ユング心理学とグノーシス主義」、2001)や、またそこ(「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の「おまけ」)も参照


E.ケーゼマン、善野碩之助・大貫隆訳、『イエスの最後の意志 ヨハネ福音書とグノーシス主義』、ヨルダン社、1978.3.10
原著は Ernst Käsemann, Jesu letzter Wille nach Johannes 17, 1971
問題/キリストの栄光/「ことば」のもとなる共同体(教会)/キリスト教の一致/結論など、
266ページ。

 大貫隆による解説は pp.187-246 と、58ページを占めています(→こちらに再録:本頁下掲の『ロゴスとソフィア』、2001)。
 また大貫隆による→そちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)


柴田有、「プロティノスとグノーシス」、『思想』、no.660、1979.6、pp.31-52
本稿の課題//
Pグノーシス思想の再構成;Pグノーシスの世界拒否/造物主(デミウルゴス)と創造行為/魂の帰昇//
プロティノスの応答;プロティノスの宇宙論/プロティノスの造物主論/プロティノスの霊魂論//
他のプラトン主義者の応答


柴田有、「世界拒否としてのグノーシス ヘルメス文書研究の総括」、『エピステーメー』、vol.5 no.6、1979.6+7(終刊号)、pp.142-160
本稿の基本的視角/従来のグノーシス研究/「宇宙論」の定義/ヘレニズム期の一般的宇宙論/グノーシスの宇宙論

荒井献、「グノーシス主義の本質規定をめぐって 柴田論文の評価と批判」、同上、pp.161-170

水垣渉、「文献紹介 最近のグノーシス研究-文献を中心とする概観-」、『中世思想研究』、no.22、1980.10.20、pp.199-200 [ < 『中世思想研究』バックナンバー中世哲学会

荒井献・柴田有訳、『ヘルメス文書』、朝日出版社、1980.10.25

 細目は→こちら:「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」の頁の「xii. その他
 解説(柴田有)によると、『ヘルメス選集』中、CHⅠ(略称「ポイマンドレース」)/CHⅣ(略称「クラテール」)/CHⅩⅢ(略称「再生」)が「宇宙二元論・グノーシス的グループ」に分類される(pp.37-42)。
 ただし、後掲の
B.A. Pearson, Ancient Gnosticism, 2007, p.276 やマルクシース、『グノーシス』、2009、pp.88-89 のように、『ヘルメス選集』にグノーシス主義的性格を認めない論者もいます。

柴田有、『グノーシスと古代宇宙論』、勁草書房、1982.1.20
「ポイマンドレース」とその情況 「ポイマンドレース」の情況//「ポイマンドレース」の教え;《世界の原理》/《世界の素材》/《世界の原型》/《世界の創造》/《人間創造と堕落》/《人間の救済》/《宣教と頌栄》//
  「ポイマンドレース」のグノーシス思想;「アスクレピオス」との比較/「鍵」との比較//
  結び//補遺;二つの二元論/「ポイマンドレース」全文//
古代宇宙論の伝統 伝統陣営のグノーシス反駁;我々の課題/Pグノーシス思想の再構成/プロティノスの応答/他のプラトン主義者の応答//
  「古代宇宙論」の定義;人間生活の原理としての星辰界/人間の最高身分としての星辰界//
  文化中枢としての古代宇宙論//結び//
古代宇宙論を継承する者 アレクサンドリアの神学//〝キリストもカエサルも〟;カエサルの昇天/ユスティノスのキリスト観/キリストの昇天//
  帝国国教への転回;ラクタンティウスとコンスタンチヌス/「継ぎ木」の思想構造/ラクタンティウスの法理論//
  中世へ//
結論など、
296ページ。

 同じ著者による→こちらも参照:「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「ユスティノス」の項


エレーヌ・ペイゲルス、荒井献・湯本和子訳、『ナグ・ハマディ写本 初期キリスト教の正統と異端』(白水叢書 61)、白水社、1982.2.10
原著は Elaine Pagels, The Gnostic Gospels, 1979
序章/キリストの復活に関する論争-史実か象徴か/「唯一の神、唯一の司教」-唯一神教の政策/父なる神、母なる神/キリストの受難とキリスト教徒の迫害/どの教会が「真の教会」か/グノーシス-神認識としての自己認識/結論など、
308ページ。

 「宙吊りの形相」(1989)でも引きましたが(→こちら)、
「今日の芸術家の
集まり(サークル)と同様、グノーシス主義者は、独創的で創造的な創作力を、精神的に活動するようになる者のしるしと見なした。各人が画家や作家の弟子のように、教わったことを修正したり変形して、自分自身の知覚を表現することが期待されていた。教師の言葉をただたんに反復する者はだれでも、未熟とみなされたのである」(p.61、その前後も参照)
と述べられていたことが印象に残っています(歴史的にどこまで適用できるのかはともかく)。

 同じ著者による→そちら(本頁下掲の『禁じられた福音書』』、2005)や、あちら(同、カレン・L・キングとの共著『「ユダ福音書」の謎を解く』、2013)、またここ(「天使、悪魔など」の頁中の『悪魔の起源』、2000)も参照

 なおこんなところで本書のタイトルを目にしようとは思いもしなかったのが;

セス・ロイド、水谷淳訳、『宇宙をプログラムする宇宙』、2007、p.233

柴田有訳、「ナハシュ派の詩篇」、『聖書外典偽典 別巻 補遺 Ⅱ』、教文館、1982.12.15、、pp.259-276

大貫隆訳、「ソロモンの頌歌」、同上、p.277-390

 訳者による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

荒井献、『トマスによる福音書』(講談社学術文庫 1149)、講談社、1994.11.10
 『隠されたイエス』、1984.4 の文庫化
トマス福音書の背景;ナグ・ハマディ文書の発見とその内容/教会教父たちの証言/オクシリンコス・パピルスとの関係/外典との関係/福音書正典との関係 トマス福音書とQ、トマス福音書とマルコ資料、トマス福音書とマタイ特殊資料、トマス福音書とルカ特殊資料、トマス福音書の伝承史上の位置/「正典」と「外典」成立史上におけるグノーシス主義の位置 「正統」と「異端」、グノーシス主義「外典」、グノーシス派の「聖書」解釈原理、グノーシス主義の「聖書」解釈//
トマス福音書のイエス語録-翻訳と注解//
トマス福音書のイエス;「無知」から「覚知」へ/光-生けるイエス/「単独者」-「統合」を目指して、など、
338ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:本頁上掲の『原始キリスト教とグノーシス主義』、1971

 また第7語録(p.132)について→そちらを参照:「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁中の Howard M. Jackson, The Lion Becomes Man. The Gnostic Leontomorphic Creator and the Platonic Tradition, 1985

S.ペトルマン、神谷幹夫訳、『二元論の復権 グノーシス主義とマニ教』、教文館、1985.7.1
原著は Simone Pétrement, Le dualisme chez Plotin, les Gnostiques et les Manichéens, 1947/1982
序章//グノーシス主義の諸問題//
グノーシス的・マニ教的二元論の神話と定式;〈遠ざかる神〉/〈異邦人〉/障壁/〈二つのみ国〉/〈魂〉と〈身体〉/〈魂〉と〈霊〉/〈霊〉と〈物質〉/マニの意志的二元論/グノーシス的二元論の克服の試み//
グノーシス的・マニ教的二元論の基礎 グノーシス思想の最初の証言;新約聖書におけるグノーシス思想/フィロンにおけるグノーシス思想/〈恵み〉と啓示//
  グノーシス思想の基礎;無意識と悪/〈恵み〉/〈予定〉/〈知られざるもの〉/〈道徳〉と〈科学〉/〈
充満(プレローマ)〉/〈逆説〉/もうひとつの世界//
  グノーシス主義およびマニ教について;グノーシス主義について/マニ教について//
二元論の一般的なかたちとその価値;哲学的二元論と宗教的二元論/二元論の一般的なかたち/ザラスシュトラ Zarathoustra/二元論と国家/二元論と教会/二元論の価値/反定立と綜合//
ペトルマンの自画像-あるモラリストの顔-(神谷幹夫)など、
360ページ。

 原著の「第1部 プラトン的二元論」は訳出されてないとのこと(p.11)。
 →こちらにも挙げておきます:「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の「viii. マニ教など


荒井献、『新約聖書とグノーシス主義』、岩波書店、1986.1.16
新約聖書;方法としての文学社会学-イエスと原始キリスト教研究によせて-/Q資料におけるイエスの譬の特徴/イエスの諸像と原像-いなくなった羊の譬の伝承史的・編集史的考察-/イエスと福音書文学-「放蕩息子の譬話」によせて-/理念としての「貧者」-福音書・行伝記者ルカの「罪人」理解をめぐって-/ルカにおける「個人倫理」と「共同体倫理」/コリント人への第1の手紙におけるパウロの論敵の思想とグノーシス主義の問題/「十字架の言葉」と「知恵の言葉」//
グノーシス主義;ナグ・ハマディ写本と新約聖書/
祭儀(クルトゥス)認識(グノーシス)/隠喩としてのマグダラのマリア-グノーシス主義における女性原理とその系譜をめぐって-/シモン派のグノーシス主義と『魂の解明』/『真正な教え』と『(ブロンテー)-全き叡智(ヌース)』-シモン派のグノーシス文書?-/エイレナイオスとグノーシス主義-その教育思想をめぐって-//
補遺 ナグ・ハマディ写本-解説・翻訳・訳註;『魂の解明』(ナグ・ハマディ写本Ⅱの6)/『三体のプローテンノイア』(ナグ・ハマディ写本ⅩⅢの1)など、
524ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:本頁上掲の『原始キリスト教とグノーシス主義』、1971


 ナグ・ハマディ写本発見以前の近代的研究の達成というべきなのが;

ハンス・ヨナス、秋山さと子・入江良平訳、『グノーシスの宗教 異邦の神の福音とキリスト教の端緒』、人文書院、1986.11.30
原著は Hans Jonas, The Gnostic Religion.The Message of the Alien God and the Beginning of Christianity, 1958/ 2nd. rev. ed., 1964
序論 - ヘレニズムにおける東方と西方;西方の役割/東方の役割//
グノーシスの文学 - 主要教義、象徴言語 グノーシスの意味とグノーシス運動の広がり;時代の精神的風土/「グノーシス主義」という名称/グノーシス主義の起源/グノーシス的「知識」の本質/資料の概観/グノーシス主義の基本信条の概要//
  グノーシス的イメージとその象徴言語
異邦のもの(エーリアン)/「彼方」、「外」、「この世」、「他の世界」/諸世界、アイオーン/宇宙での居住と余所者の滞留/「光」と「闇」、「命」と「死」/「混合」、「散乱」、「一」、「多」/「転落」、「沈下」、「捕囚」/遺棄、恐怖、郷愁/麻痺、眠り、酩酊/世界の騒音/「外からの呼び声」/「異邦の人」/呼び声の内容/呼び声への応答/グノーシス的アレゴリー/付録 マンダ教語彙//
グノーシス主義の諸体系 シモン・マグス//
  『真珠の歌』;テクスト/注釈//
  世界を創造した天使たち。マルキオーンの福音;世界を創造した天使たち/マルキオーンの福音//
  ヘルメス・トリスメギストスのポイマンドレース;テクスト/注釈//
  ヴァレンティノス派の思弁;ヴァレンティノス派の思弁的原理/体系/補遺1 諸元素のなかの火の位置/補遺2 『ヨハネのアポクリュフォン』の体系//
  マニによる創造、世界史、そして救済マニの方法。彼の召命/体系/グノーシス思弁 - 二類型の再論//
グノーシス主義と古典精神 コスモスのギリシア的評価とグノーシス的評価;「コスモス」の概念とそのなかにおける人間の地位/宿命と星たち//
  ギリシアの教説とグノーシスの教説における徳と魂;グノーシス的道徳/グノーシス的心理学/結び-知られざる神//
  グノーシス主義の領域における最近の発見;ケノボスキオン文庫について/真理の福音/付記//
エピローグ - グノーシス主義、実存主義、ニヒリズムなど、
488ページ。

 本書を普及版とする、その本論にあたるのは→こちら:「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁中の Hans Jonas, Gnosis und spätantiker Geist. Erster Teil : Die mythologische Gnosis, 1988 および Hans Jonas, herausgegeben von Kurt Rudolph, Gnosis und spätantiker Geist. Zweiter Teil : Von der Mythologie zur mystischen Philosophie, 1993
 2015年秋、その邦訳が出ました→そちらを参照:本頁下掲の『グノーシスと古代末期の精神』第一部および第二部、2015

 『グノーシスの宗教』の「エピローグ - グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム」は、次の本の

 「『第11章 グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム』の英語版の翻訳である。読み比べていただくと、ドイツ語版の加筆の度合いについて、おおよその見当をつけていただけるものと思う」

とのことです(次の本の「訳者あとがき」、p.495);


ハンス・ヨーナス、細見和之・吉本陵訳、『生命の哲学 有機体と自由』(叢書・ウニベルシタス 903)、法政大学出版局、2008
原著は Hans Jonas, Das Prinzip Leben. Ansätze zu einer philosophischen Biologie, 1966/1973/1997
まえがき(1972)//
緒論 生命の哲学の主題について/存在についての理論における生命と身体の問題/知覚、因果性、目的論/ダーウィニズムの哲学的側面 補遺:生命の理論に対するデカルト主義の意義/調和、均衡、生成 - 体系概念およびそれを生命存在へ適用することについて/神は数学者か? - 物質交代の意味について 補遺1:自然を解釈する際、数学はギリシアでどう用いられたか 補遺2:ホワイトヘッドの有機体の哲学に対する注釈/運動と感情 - 動物の魂について/サイバネティクスと目的 - 一つの批判 補遺:唯物論、決定論、精神/視覚の高貴さ - 感覚の現象学の試み 補遺:視覚と運動/ホモ・ピクトル、あるいは像を描く自由について 補遺:真理経験の起源について/有機体の哲学から人間の哲学へ/理論の実践的使用について/グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム/不死性とこんにちの実存/エピローグ 自然と倫理//
解説 『生命の哲学 - 有機体と自由』について(吉本陵)/訳者あとがき(細見和之)など、
514ページ。


 グノーシス主義については、第1章「存在についての理論における生命と身体の問題」(p.23)、第5章「神は数学者か?」(p.174)、第12章「不死性とこんにちの実存」(pp.429-431)でも言及されていました。
 その第12章での該当箇所は、「Ⅴ [『生命の書』と超越的な『肖像』]」という節に含まれています;

 「『生命の書』というシンボルは私たちに何を語ることができるのだろう? ユダヤ教の伝承においては、それは天上の一種の台帳を意味している。…(中略)…言い換えれば、私が語っているのは、行為それ自体(ヽヽヽヽ)が現世に関する永遠の記録簿に登録される、という可能性である」(p.428)

と述べた後(→こちらにも挙げておきましょう;「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「本・書物(天の書)など」)、

 「もう一つの比喩、すなわち超越的な『肖像』の比喩に目を向けよう。その肖像の一つ一つの描線は、私たちが時間のなかで行なう行為によって描き加えられてゆく。この比喩はグノーシス主義の文献、とりわけイラン周辺のグノーシス主義の文献にさまざまなヴァージョンで存在している」(p.429)

として、
 マンダ教における「天上にいる、地上の人格の分身のイメージ」(同上)、
 マニ教での「時の終末に完成されるこの『最後の像』」
が挙げられます(pp.430-431)。その上で、続く「Ⅵ [仮説としての神話]」で、

 「プラトンがこういう領域で許容していた神話ないしありそうな物語」(p.433)

 「私が『正しい(wahr)』と考えたい仮説的な神話」(p.438)

として、固有の創作神話が語られることになります(pp.433-438。プラトーンにおける〈神話(ミュートス)〉に関連して→そちらも参照:「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」の頁の「vi. プラトーン」の項。また〈像〉という点で、美術に関心のある向きは、本書第9章「ホモ・ピクトル、あるいは像を描く自由について」、また第8章「視覚の高貴さ - 感覚の現象学の試み」もあわせて参照ください);

 「始まりにおいて、私たちには知りようもない選択によって、存在の神的根底は、生成という偶然と冒険と無限の多様性に身をゆだねることを決定した。しかも、それは全面的になされた。すなわち、空間と時間の冒険に入り込んだとき、神は何一つ自分の要素を残しておかなかった」(p.433)。

 「むしろ世界が存在するために、世界がそれ自体として存在するために、神は自らの存在を断念したのである」(p.434)。

と語り起こされる神の像から、前節で触れられたマニ教における〈原人(Urmensch)〉(p.431)や、『グノーシスの宗教』でも取りあげられた「真珠の歌」を連想することもできなくはないかもしれません。この神話は後の

 ハンス・ヨーナス、品川哲彦訳、『アウシュヴィッツ以後の神』(叢書・ウニベルシタス)、法政大学出版局、2009

の標題講演(1984)でも再説されているとのことですが、今のところ未見。ともあれ

 兼松誠、「信仰と責任 - ハンス・ヨナスにおける無力な神 -」、『西日本哲学年報』、第18号、2010.10、pp.51-67 [ < 聖学院学術情報発信システム: SERVE ]

によると、

 「ヨナスは、神の自己制限化についての思想をルリアのカバラ思想におけるツィムツム Zimzum に着想を得ているかのような言い方をしている」(p.55)

そうです。他方、

 「アングロサクソン圏の神学に通じた人たちからすると、ヨナスのこの神理解はプロセス神学におけるそれを想起させるようである」(p.54)

とも記されていました。他方ヨナスは「まえがき」で、

 「テイヤール・ド・シャルダンのような、生命の最高の完成を目指す、壮大でとどまることのない前進という進化論的オプティミズムを何一つ見ることはないだろうし、またA・N・ホワイトヘッドが万有の終わりなき運動の根底においた、自分自身を満たしてゆく(それゆえつえに成功を収める)創造的な新しさという原理を見ることもないだろう」(p.v)

と述べていました。第5章の補遺2「ホワイトヘッドの有機体の哲学に対する注釈」では、

 「存在と非存在の両極性は決してその体系に存在せず、したがってまた、死の現象(さらに、それに付随するものとしての悪の現象)もまた存在しない」(p.184)

と批判的に記していました。とはいえやはり、ホワイトヘッドだけでなく、テイヤール・ド・シャルダン(→あちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「x. フランスから」)、それにメイヤスーの「「亡霊のジレンマ 来るべき喪、来るべき神」」(→ここも参照:同上、その少し下)などと比較するのも興味深そうな気がします。
 なお先に引いた著者による次の論考も参照;

 兼松誠、「ハンス・ヨナスにおける責任と奇跡」、『思想としての仏教:実存思想論集』、第26号、2011.6、pp.153-170 [ < 聖学院学術情報発信システム: SERVE ]

 兼松誠、「ヨナス的神話をめぐるヨナスとブルトマンの論争」、『西日本哲学年報』、第19号、2011.10、pp.55-71 [ < 同上 ]

 ヨナスについては;

ピエール・ブーレッツ、合田正人・渡名喜庸哲・三浦直希訳、『20世紀ユダヤ思想家 来るべきものの証人たち 3』、みすず書房、2013.11.19、pp.189-270:「第8章 ハンス・ヨナス-思想の経験と世界に対する責任」
 亡命、忠誠と失望-ある人生の路程/グノーシスの鏡/有機体から自由へ - 死すべきものであることの重荷と恵み/自由から責任へ - 自然の傷つきやすさと人間のための苦悩/恐れの知恵と新たな命法/〈永遠者〉の力と限界 - アウシュヴィッツ以後の神概念/希望と責任 - 〈契約〉の二つの形象?、など

 「〈永遠者〉の力と限界 - アウシュヴィッツ以後の神概念」の節(pp.232-244)および「希望と責任 - 〈契約〉の二つの形象?」(pp.248-256)で〈仮説的な神話〉が扱われています。ここでもルーリアの〈ツィムツーム〉が参照源として挙げられています(pp.243-244、p.249)。ただし「不死性とこんにちの実存」の時点では、

 「だが奇妙なことに、その一方で彼は、カバラーが神それ自身における収縮(ツィムツーム)という概念によって無からの創造をの問題を解決する方法との類似にはまだ気づいていなかったようである」(p.266 註121)。

戸谷洋志、『ハンス・ヨナスの哲学』(角川ソフィア文庫 G 122-1)、角川書店、2022
 はじめに/ヨナスの人生/テクノロジーについて - 技術論/生命について - 哲学的生命論/人間について - 哲学的人間学/責任について - 倫理学Ⅰ/未来への責任について - 倫理学Ⅱ/神について - 神学/おわりに//
補論 『存在と時間』とヨナス/読書案内/文庫版あとがきなど、
240ページ。

 2018年刊の『ハンス・ヨナスを読む』を改題・改稿、大幅に加筆した文庫版
 第7章「神について - 神学」(pp.165-189)で〈仮説的な神話〉が扱われています。

 また;


ハンス・ヨナス、盛永審一郎・木下喬・馬渕浩二・山本達訳、『ハンス・ヨナス「回想記」』、東信堂、2010.10.30
原著は Hans Jonas, Erinnerungen, 2003
 ローレ・ヨナスの序文/ラッヘル・ザラマンデルによる前書き//
体験と出会い;戦争時代のメンヘングラートバッハでの青少年時代/栄光の夢 - シオニズムへの道/哲学とシオニズムのあいだ - フライブルク-ベルリン-ヴォルフェンヴュッテル/マールブルク - ハイデガーとグノーシスの呪縛圏のなかで/亡命、逃避、そしてエルサレムの友人たち/戦争の時代の愛/「最も深い語義におけるユダヤ戦争(bellum judaicum)」/破壊されたドイツを旅する/イスラエルから新世界へ - アカデミックな活動の開始/ニューヨークにおける校友と出会い//
哲学と歴史;ハイデガーとの訣別/生命の価値と尊厳 - 有機体の哲学と責任の倫理学/「これらすべては言い淀むことである」 -アウシュヴィッツと神の無力
/ローレ・ヨナスへの教説の手紙(1944~1945)//
付録 クリスチャン・ヴィーゼによる後書き 「だが世界は、私にとって敵地ではまったくなかった」など、
558ページ。

 第13章「『これらすべては言い淀むことである』 -アウシュヴィッツと神の無力」(pp.303-311)で〈仮説的な神話〉に触れています。
 ハイデガー、ブルトマン、ア-レントをはじめとして、さまざまな人物が登場しますが、個人的にはショーレムとの交友(pp.117-122、231-235 など)が興味を引きました(→そこにも挙げておきます:「ユダヤ Ⅱ」の頁の「ix. ショーレムの著作とその周辺」)。

他に;


 ハンス・ヨナス、「精神・自然・創造 - 宇宙論上の事実とそこから推測できる宇宙の開闢」、デュール・ツィンマリ編、尾形敬次訳、『精神と自然 自然科学的認識と哲學的世界経験の間の対話』、1993、pp.60-79 

 戻って;

野町啓、「Takashi Onuki, Gnosis und Stoa: Eine Untersuchung zum Apokryphon des Johannes (Novum Testamentum et Orbis Antiquus 9), 1989, Univeristätsverlag Freiburg Schweiz Vandenhoeck & Ruprecht, Göttingen」、『日本の神学』、no.29、1990、pp.96-101 [ < J-STAGE ]

アンリ=シャルル・ピュエシュ、神谷幹夫訳、「グノーシスと時間」、『エラノス叢書 1 時の現象学 Ⅰ』、平凡社、1990.10.15、pp.21-123+pp.274-282:「コルバンとピュエシュ - 訳者あとがきに代えて」(神谷幹夫)
原著は
Henri-Charles Puech, “La gnose et le temps”, Eranos Jahrbuch 20-1951

須永梅尾、「グノーシスからグノーシス主義へ」、『新潟青陵女子短期大学研究報告』、no.21、1991.2、pp.1-8 [ < 新潟県地域共同リポジトリ NiRR

 同じ著者による→こちらを参照:「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の「viii. マニ教など

『現代思想』、vol.20-2、1992.2、pp.39-222:「特集 グノーシス主義」
宗教的二元論(シモーヌ・ペトルマン)/造物の意志とアイデンティティ グノーシス主義の問うもの(柴田有)/〈グノーシス〉を探し求めて(アンリ・P・ピュエシュ)/グノーシス現象の射程 類型論的・歴史的アプローチ(ハンス・ヨナス)/「見よ、私は彼女を(天国へ)導く」 トマス福音書の女性観再考(荒井献)/反グノーシス的グノーシスとしての原罪概念 リクールの解釈学的グノーシス論(久米博)/ユング心理学とグノーシス(入江良平:ユングとグノーシス主義については→こちら:本頁上掲の湯浅泰雄『ユングとキリスト教』(1978)も参照)/閉塞世界とグノーシスの〈光〉(彌永信美→こちらも参照:本頁下掲の「『対を絶する絶対』と日常世界 グノーシス主義の論理構造に関して」、1998)/ベーメ的宇宙における構造と自己-組織化(バサルブ・ニコレスク)/キリスト教カバラ 神学の継子(エルンスト・ベンツ)/鳥の言葉、夜の旅(永沢哲)/バルカンの新マニ教(寺島憲治)/「老い」のグノーシス(丹生谷貴志)/記憶と空間 空間の創造的な読みをもとめて(神谷幹夫)/グノーシス主義とシュルレアリスム 通底器としてのアナーキズム(二タ村発生)/〈異教〉のロジック(中村雄二郎・湯浅泰雄)

ジョン・S・クロッペンボルグ、マルヴィン・W・マイヤー、スティーヴン・J・パターソン、ミカエル・G・スタインハウザー、新免貢訳、『Q資料・トマス福音書』、日本基督教団出版局、1996.2.25
原著は John S. Kloppenberg, Marvin W. Meyer, Stephen J. Patterson, Michael G. Steinhauser, Q - Thomas Reader, 1990
序文//言葉福音書Q;概説/参考文献/内容/省略記号/翻訳と注//
トマスによる福音書;概説/参考文献/省略記号/本文と翻訳/ギリシア語断片など、
236ページ。


筒井賢治、「マルキオンと仮現論 - 用語 phantasma をめぐって -」、『西洋古典學研究』、no.44、1996.3.15、pp.121-129 [ < CiNii Articles

マドレーヌ・スコペロ、入江良平・中野千恵美訳、『グノーシスとは何か』(serica books)、せりか書房、1997.9.25
原著は Madeleine Scopello, Les gnostiques, 1991
序//文献資料;間接資料/直接資料/資料一覧//
著者たちとテクスト;重要な教師たち/……そして匿名の著者たち//
教えの伝達およびそこに作用した諸々の影響//
言葉、イメージ、そして象徴-思索の諸々のかたち;身体は一つの牢獄である/天球を通じての再上昇/「私は汝にして、汝は私である」-結婚の神秘//
グノーシス主義者と社会;キリスト教徒から見たグノーシス主義者/彼ら自身から見たグノーシス主義者//
グノーシス文献案内(1997年)など、
172ページ。

ii. 『ナグ・ハマディ文書』邦訳刊行とその周辺など(1997~2005)

荒井献・大貫隆・小林稔・筒井賢治訳、『ナグ・ハマディ文書 Ⅰ 救済神話』、岩波書店、1997.11.27
序にかえて-ナグ・ハマディ文書とグノーシス主義(荒井献)/グノーシス主義救済神話の類型区分(大貫隆)//
ヨハネのアポクリュフォン(大貫隆訳)/アルコーンの本質(同)/この世の起源について-無表題グノーシス主義文書(同)//
プトレマイオスの教説-エイレナイオス『異端反駁』(Ⅰ, 1,1-8, 5)(小林稔訳)/バシリデースの教説-ヒュポリトス『全異端反駁』(Ⅶ, 20, 1-27, 13)(同)/バルクの書--ヒュポリトス『全異端反駁』(Ⅴ, 26, 1-27, 5)(荒井献訳)//
解説;上記6篇/救済神話(荒井献)//補注 用語解説など、
412ページ。


荒井献・大貫隆・小林稔・筒井賢治訳、『ナグ・ハマディ文書 Ⅱ 福音書』、岩波書店、1998.1.29
序にかえて-ナグ・ハマディ文書とグノーシス主義(荒井献)/グノーシス主義の「福音書」について(大貫隆)//
トマスによる福音書(荒井献訳)/フィリポによる福音書(大貫隆訳)/マリヤによる福音書(小林稔訳)/エジプト人の福音書(筒井賢治訳)/真理の福音(荒井献訳)/三部の教え(大貫隆訳)//
解説//補注 用語解説など、
448ページ。


大貫隆・入江良平(聞き手)、「ナグ・ハマディ文書とは何か」、『現代思想』、vol.26-5、1998.4、「特集 聖書は知られているか」、pp.122-147

 大貫隆による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

荒井献・小谷真理(聞き手)、「聖書とグノーシス その女性性をめぐって」、同、pp.148-162

彌永信美、「『対を絶する絶対』と日常世界 グノーシス主義の論理構造に関連して」、同、pp.163-173

 前掲『現代思想』、1992.2、「特集 グノーシス主義」所収の「閉塞世界とグノーシスの〈光〉」(pp.120-135)
 また、

彌永信美、「『歴史』の発明 エロス的認識論における『普遍史』と『個人史』」、『歴史という牢獄 ものたちの空間へ』、青土社、1988.12.26、pp.167-201
でもグノーシス主義に言及しています;
アレーゴリアー解釈と聖書 - 神話と歴史/神と人との間の預言者//
歴史-神と人とのドラマとして/「汝ヤハウェを知らん」 - 愛としての知/「神の夜」の愛-魂の絶望と歓喜/「契約」のゆくえ - 「ヨブ記」と不条理の神//
「死の生成」としての「歴史」 - グノーシス主義の歴史観

 さらに→こちらも参照:「仏教 Ⅱ」の頁の「vi. 仏教の神話など


荒井献・大貫隆・小林稔・筒井賢治訳、『ナグ・ハマディ文書 Ⅲ 説教・書簡』、岩波書店、1998.5.28
序にかえて-ナグ・ハマディ文書とグノーシス主義(荒井献)//
説教;グノーシス主義と説教(大貫隆)//
魂の解明(荒井献訳)/闘技者トマスの書(同)/イエスの知恵(小林稔訳)/雷・全きヌース(荒井献訳)/真正な教え(小林稔訳)/真理の証言(大貫隆訳)/三体のプローテンノイア(荒井献訳)/救い主の対話(小林稔訳)//
書簡;グノーシス主義と書簡(大貫隆)//
ヤコブのアポクリュフォン(筒井賢治訳)/復活に関する教え(大貫隆訳)/エウグノストス(小林稔訳)/フィリポに送ったペトロの手紙(荒井献訳)/
/解説//補注 用語解説など、
568ページ。


荒井献・大貫隆・小林稔・筒井賢治訳、『ナグ・ハマディ文書 Ⅳ 黙示録』、岩波書店、1998.9.25
序にかえて-ナグ・ハマディ文書とグノーシス主義(荒井献)/グノーシス主義の「黙示録」について(大貫隆)//
パウロの黙示録(筒井賢治訳)/ヤコブの黙示録 1(荒井献訳)/ヤコブの黙示録 2(同)/アダムの黙示録(大貫隆訳)/シェームの釈義(同)/大いなるセツの第2の教え(筒井賢治訳)/ペトロの黙示録(同)/セツの三つの柱(同)/ノーレアの思想(小林稔訳)/アロゲネース(同)//
解説//補注 用語解説など、
460ページ。

 本シリーズの補遺・続篇が→こちら:本頁下掲の『ナグ・ハマディ文書・チャコス文書 グノーシスの変容』(2010/12)
 また抜粋文庫版→そちら:本頁下掲の『ナグ・ハマディ文書抄』(2022/1)


大貫隆訳・編、『グノーシスの神話』、岩波書店、1999.1.27
グノーシス主義とは何か グノーシス主義の世界観と救済観//グノーシス主義の系譜学;史料/歴史/社会学的根拠//
ナグ・ハマディ文書の神話 世界と人間は何処から来たのか;否定神学/神々の流出/ソフィアの過失/造物神/造物神による世界の創造/造物神の思い上がり/造物神による人間の創造/補論・シェームの釈義//
  世界と人間は何処へ行くのか;啓示者の到来/仮現論と反仮現論/世界史/世界の終末//
  今をどう生きるか;自己の認識と霊的復活/性的禁欲/洗礼/殉教か禁欲か/個々人の運命(個人的終末論)//
マンダ教の神話細目はこちら:「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の「vii. マンダ教など」//
マニ教の神話細目はこちら:同上「viii. マニ教など」//
結び グノーシス主義と現代;グノーシス主義の終焉と残された傷痕/移植されたグノーシス主義とその克服/新霊性運動とグノーシス主義/「終わりなき日常」とグノーシス主義/グノーシス主義のメッセージ/グノーシス主義を超えて、など、
324ページ。

 pp.66-67 に『ヨハネのアポクリュフォン』と『古事記』の神統譜の比較があります。

→五十嵐一、『イスラーム・ルネサンス』、勁草書房、1986、「第8章 アッラーの神 - ひとつの神名論的反省 -
 での「古事記の神学と流出論」、イスラームの「原像空間(アーラム・ミサール)」、「カッバーラーの神学」の比較も参照
 大貫隆による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

大貫隆、『グノーシス考』、岩波書店、2000.1.26
古代キリスト教における禁欲主義の系譜-グノーシス主義、外典使徒行伝、初期修道制 子宮としての世界-グノーシス主義の性的自然観と禁欲主義;グノーシス主義における「子宮」のイメージ/子宮としての世界 肉体の死、しなわち子宮からの脱出 肉体の誕生、すなわち子宮への墜落 実践的帰結-世界を破滅させるための禁欲/「子宮としての世界」をめぐる思想史的類例//
  禁欲の闘技者-外典使徒行伝の性倫理;性をめぐる葛藤の三つのパターン/エンクラティズム//
  「人類を神と和解させるために」-エジプトにおける独居型および共住型修道制の禁欲主義;アントニウスとパコミオス/禁欲の実践と神学//
  結びにかえて 慎み深い結婚生活-正統主義の性倫理//
  補論 狂犬病-悪霊と砂漠の媒介項;犬のイメージとマタイ福音書12章43-45節/ルカ福音書11章24-26節/ユダヤ教およびキリスト教文献の証言/ヘレニズム文化圏の証言//
ヨハネの第1の手紙序文とトマス福音書語録17-伝承史的関連から見たヨハネの第1の手紙の論敵の問題 本文の分析・問題提起//
  トマス福音書語録17の伝承史的位置;コリント人への第1の手紙2章9節との類似性/伝承の起源/伝承の経路/礼典式文の系譜/グノーシス主義の系譜/「主の言葉」の系譜/「手がまだ触れず」の問題/コリント人への第1の手紙2章9節との伝承史的関係//
  ヨハネの第1の手紙1章1節とトマス福音書語録17の伝承史的相互関係//
女性的救済者バルベーロー・プロノイアの再来-『ヨハネのアポクリュフォン』の文献学的研究 はじめに-問題の所在//
  バルベーローとプロノイアの同一視とその役割の拡大;単語「プロノイア」の分布/短写本の現況/長写本の現況//
  バルベーロー・プロノイアと世界史//『ヨハネのアポクリュフォン』の枠場面におけるプロノイア//
三つのプロノイア-グノーシス主義、ストア、中期プラトン主義の関係をめぐって はじめに//
  グノーシス主義のプロノイア論;『ヨハネのアポクリュフォン』/『この世の起源について』/その他のグノーシス主義文書//
  中期プラトン主義のプロノイア論;偽プルータルコス『宿命について』/アプレイウス『プラトンの生涯と教説』/アルキノス『プラトン哲学要綱』/学派伝承の起源の問題//
  結びにかえて-評価と展望//
否定神学の構造と系譜-中期プラトン主義とナグ・ハマディ文書 はじめに//アルキノス『プラトン哲学要綱』(抜粋)//
  『ヨハネのアポクリュフォン』との比較;否定神学/イデアとプレーローマの神々/質料と「物質」/「世界霊魂」とヤルダバオート、「他の神々」とアルコーンたち/人間の魂/人体解剖学/魂の移住と人間の相異なる死後の運命/宿命論//
  結びにかえて-評価と展望//
グノーシスと現代思想 はじめに//実存主義とグノーシス-寄る辺なき自己の神話//
  深層心理学とグノーシス;魂の内なる旅の神話/「自己」の無限膨張と他者喪失//
  新約聖書とグノーシス-結びにかえて;神の到来と自己放棄 イエス、パウロ、ユングへの答え、ヨハネ/強迫観念の体系-初期カトリシズムなど、
418ページ。


 著者による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

野町啓、「新プラトン主義の水脈;ヘルメス主義、グノーシス主義、プラトン主義」、『ネオプラトニカⅡ 新プラトン主義の原型と水脈』、2000.10.20、pp.168-184

大田俊寛、「グノーシス主義と模倣の神話理論」、『東京大学宗教学年報』、no.18、2000、pp.65-73 [ < 東京大学学術機関リポジトリ(UT Repository) ]

「グノーシス派の神話」、『世界神話大事典』、2001.3.20、pp.764-777
グノーシス派と神話 その異教性(ミシェル・タルディユ)/グノーシス派のエロス(同)/ヘカテ ギリシアの秘教(同)/グノーシス主義者ユスティヌス 諸説混合神話(同)/ナアセン派 多神教神話への依存(同)/ペラト派 古代異教文明のグノーシス派的解釈(同)など

大貫隆、『ロゴスとソフィア ヨハネ福音書からグノーシスと初期教父への道』、教文館、2001.7.10
序/ロゴスの受肉とソフィアの過失 - ヨハネ福音書とグノーシス主義における「光」と「闇」/ヨハネ福音書とグノーシス主義 - ブルトマン学派のヨハネ解釈によせて(初出は→こちら:本頁上掲のケーゼマン、『イエスの最後の意志』、1978)/グノーシス主義とエイレナイオスの自然観(初出は→そちら:「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」の頁の「xii. その他」)/ユスティノス、タティアノス、エイレナイオスの聖書論/エイレナイオスにおける「再統合」と救済史など、
314ページ。


 続く三冊ともども、著者による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

大貫隆・島薗進・高橋義人・村上陽一郎編、『グノーシス 陰の精神史』、岩波書店、2001.9.26
はじめに 原グノーシスとグノーシス的なるもの(大貫隆)//
グノーシス主義の本質;宇宙の超越と神(大貫隆)/知られざる神 - キリスト教グノーシスの否定神学 -(筒井賢治)/グノーシス神話 - 自然神話と創作神話 -(松村一男→こちらに再録:「通史、事典など」の頁の「iv. 神話・神話学など」)/流離と回帰-救済モデル-(野町啓)//
古代のグノーシス主義;グノーシス主義の衝撃 - 古代末期の宗教運動 -(大貫隆)//古代メソポタミアの神話世界からみたグノーシス創成神話(月本昭男)/プラトニズムとグノーシス主義(山本巍)/ヘレニズム哲学とグノーシス主義 - 決定論的世界観の陰画 -(荻野弘之)/ゾロアスター教とマニ教(大貫隆)/古代宇宙論・占星術・生理学とグノーシス主義(近藤均)/カバラー、メルカバー・ヘイハロット文学とグノーシス主義 - ゲルショム・ショーレムとユダヤ神秘主義の「起源」問題 -(手島勲矢)/ユダヤ教黙示文学とグノーシス主義(北博)//
正統と異端;二元論と一神教(村上陽一郎)//古代教父のグノーシス像(出村みや子)/グノーシス主義と修道制(戸田聡)/ビザンチンの教会とグノーシス派(高橋保行)/普遍論争とグノーシス主義(山内志朗)//
ルネサンスのグノーシス主義;グノーシスと陰の精神史(村上陽一郎)//ルネサンスのヘルメス主義とグノーシス主義(桂芳樹)/パラケルススとグノーシス主義(村上陽一郎)/聖杯伝説とグノーシス主義(横山安由美)/ヤーコプ・ベーメとグノーシス主義(薗田坦)/薔薇十字団とグノーシス主義(中井章子)/フリーメイスンとグノーシス主義(竹下節子)//
むすび 思想・精神運動としてのグノーシス主義(村上陽一郎)//用語解説(大貫隆)など、
390ページ。


大貫隆・島薗進・高橋義人・村上陽一郎編、『グノーシス 異端と近代』、岩波書店、2001.11.28
はじめに 哲学・文学・芸術の中のグノーシス(高橋義人)//
神秘主義とグノーシス;グノーシスは神秘思想か(島薗進)//ユダヤ教神秘主義とグノーシス主義(上山安敏)/グノーシス主義とキリスト教神秘主義(鶴岡賀雄)/イスラーム神秘主義とグノーシス主義(竹下政孝)/グノーシスと密教(津田眞一)/禅とグノーシス主義(佐藤研)//
文学とグノーシス;グノーシス的象徴と芸術(高橋義人)//ファウスト文学とグノーシス主義(村本詔司)/ヘッセとグノーシス(高橋義人)/ユゴーとグノーシス主義(稲垣直樹)/ウィリアム・ブレイクとグノーシス主義(鈴木雅之)//
グノーシスと近現代思想;グノーシスと近現代思想(高橋義人)//ドイツ観念論とキリスト教的グノーシス(山脇直司)/原罪と悪の象徴論(久米博)/ハイデガーとグノーシス主義(的場哲朗)/鏡像段階論とグノーシス主義(大田俊寛)/ユング心理学とグノーシス主義(高橋原:ユングとグノーシス主義については→こちら:本頁上掲の湯浅泰雄『ユングとキリスト教』(1978)も参照)//
グノーシスと現代;グノーシスと現代の物語(島薗進)//シュールレアリスムとグノーシス主義(小林康夫)/フェミニスト神学とグノーシス主義(出村みや子)/ルドルフ・シュタイナーとグノーシス主義(深澤英隆)/映画、歴史、不可知論-アンドレイ・タルコフスキー論の余白に-(加藤幹郎)/新霊性運動とグノーシス主義(島薗進)//
むすび グノーシス主義と精神史の現在(島薗進)など、
390ページ。


クルト・ルドルフ、大貫隆・入江良平・筒井賢治訳、『グノーシス 古代末期の一宗教の本質と歴史』、岩波書店、2001.12.14
原著は Kurt Rudolph, Die Gnosis. Wesen und Geschichte einer spätanteken Religion, 1977/1990(3. Aufl.)
資料;反異端文献と近代の研究史/「反異端論者」たちと彼らの作品/かつての資料状況/研究史/ナグ・ハマディ発掘とその意義//
本質と構造;グノーシス主義イデオロギーおよび神話の基本的特質/二元論/宇宙論と宇宙創成論/人間論と人間創成論/救済論および救済者論/魂の帰昇と世界の終末/共同体、祭儀、および行動様式(倫理)//
歴史;史的前提と成立要因 - グノーシスの起源の問題/初期の教派と体系/2世紀における大がかりな体系形成/マニ教生き残り - マンダ教徒//
展望-変容と影響史など、
522ページ。

 同じ著者による→こちら(「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁の Kurt Rudolph, Gnosis & spätantike Religionsgeschichte. Gesammelte Aufsätze, 1996)や、またあちら(「グノーシス諸派など Ⅲ」の頁の Kurt Rudolph, heogonie, Kosmogonie und Anthropogonie in den mandäischen Schriften, 1965)も参照


定方晟、「グノーシス思想とインド-資料(1)」、『東海大学紀要. 文学部』、no.79、2003.9.30、pp.108-84 [ < CiNii Articles

 同、  「グノーシス思想とインド-資料(2)」、『東海大学紀要. 文学部』、no.80、2004.3.30、pp.84-59 [ < 同上

 同、  「グノーシス思想とインド-資料(3)」、『東海大学紀要. 文学部』、no.81、2004.9.30、pp.114-88 [ < 同上

 同、  「グノーシス思想とインド-資料(4)」、『東海大学紀要. 文学部』、no.82、2005.3.31、pp.78-49 [ < 同上

 同、  「グノーシス思想とインド-資料(5)」、『東海大学紀要. 文学部』、no.83、2005.9.30、pp.78-53 [ < 同上

 同、  「グノーシス思想とインド-資料(6)」、『東海大学紀要. 文学部』、no.84、2006.3.30、pp.134-106 [ < 同上

 著者はインド思想の研究者で、仏教を含むインドの宇宙論に関する専著があります→こちら(「インド」の頁の「i. 概説など」)や、またあちら(「仏教」の頁の「i. 須弥山/三千大山世界/四大劫・六十四転大劫」)を参照

筒井賢治、『グノーシス 古代キリスト教の〈異端思想〉』(講談社選書メチエ 313)、講談社、2004.10.10
紀元2世紀という時代//ウァレンティノス派;ウァレンティノス派のプトレマイオス/プトレマイオスの教説/ウァレンティノスとウァレンティノス派//
バシレイデース;バシレイデースの宇宙創成神話/「無からの創造」/キリスト仮現論//
マルキオン;マルキオンの教説/マルキオンの聖書//
グノーシスの歴史//結びと展望//付録 ナグ・ハマディ写本とは、など、
238ページ。


エレーヌ・ペイゲルス、松田和也訳、『禁じられた福音書 ナグ・ハマディ文書の解明』、青土社、2005.3.25
原著は Elaine Pagels, Beyond Belief. The Secret Gospel of Thomas, 2003
主の晩餐からニカイア信経まで/対立する福音書-『ヨハネ』と『トマス』/神の言葉か、人の言葉か/真理の規範とヨハネの勝利/コンスタンティヌスとカトリック教会など、
260ページ。

 同じ著者による→こちらも参照:本頁上掲の(『ナグ・ハマディ写本』、1982


大田俊寛、「力を持つ言葉 - キリスト教正統主義とグノーシス主義における -」、『東京大学宗教学年報』、no.23、2005、pp.23-35 [ < 東京大学学術機関リポジトリ(UT Repository) ]

iii. 『ユダの福音書』以後(2006~ )

ハーバート・クロスニー、稲葉稔・尾澤和幸編、関利枝子・北村京子・村田綾子・花田智恵・杉浦茂樹・田辺久美江・藤井留美・竹熊誠・佐藤利恵・金子周介訳、『ユダの福音書を追え』、日経ナショナル・ジオグラフィック社、2006.5.8
原著は Herbert Krosney, The Lost Gospel, 2006
はじめに(バート・D・アーマン)//
プロローグ/砂漠の墓/大金を求めて/イエスを裏切る/大物の古美術商たち/窃盗事件/最初の調査/ナグ・ハマディの栄光/煉獄/学者たちの追跡/米国にいた「ユダ」/ガリアの異端糾弾者/フェリーニとの対立/風化/暴露/パピルスのパズル/『ユダの福音書』/エピローグなど、
392ページ。


ロドルフ・カッセル、マービン・マイヤー、グレゴール・ウルスト、バート・D・アーマン、尾澤和幸・稲葉稔編、藤井留美・田辺喜久子・村田綾子・花田智恵・金子周介・関利枝子訳、『原典 ユダの福音書』、日経ナショナル・ジオグラフィック社、2006.6.5
原著は The Gospel of Judas, 2006
はじめに(マービン・マイヤー)//
原典 ユダの福音書(ロドルフ・カッセル、マービン・マイヤー、グレゴール・ウルスト英訳)//
チャコス写本と『ユダの福音書』(ロドルフ・カッセル)/よみがえった異端の書(バート・D・アーマン)/リヨンのエイレナイオスと『ユダの福音書』(グレゴール・ウルスト)/『ユダの福音書』とグノーシス主義(マービン・マイヤー)など、
216ページ。


大田俊寛、「表象のミクロ分析学 グノーシスからラカンへ」、『大航海』、no.59、2006、pp.151-157 [ < 宗教学探究:大田俊寛の研究室

マービン・マイヤー、エスター・A・デ・プール、藤井留美・村田綾子訳、『イエスが愛した聖女 マグダラのマリア』、日経ナショナル・ジオグラフィック社、2006.12.4
原著は Marvin Meyer, Esther A. de Boer, The Gospel of Mary, 2004
神秘と偏見のベールを脱ぎ捨てて/新約聖書の福音書とペトロの福音書/マリアの福音書/トマスの福音書/フィリポの福音書/救い主との対話/ピスティス・ソフィア/マニ教詩篇「ヘラクレイデスの詩篇」/いま、なぜ、マグダラのマリアなのか(エスター・A・デ・プール)など、
244ページ。

池上正太、『オリエントの神々(Truth in Fantasy 74)』、新紀元社、2006.12.26、pp.263-297:「第4章 伝播した神々」
 その内 pp..271-283, 287-297

カレン・L・キング、山形孝夫・新免貢訳、『マグダラのマリアによる福音書』、河出書房新社、2006.12.30
原著は Karen L. King, The Gospel of Mary of Magdala. Jesus and the First Woman Apostle, 2003
序//『マリア福音書』;序説 初期キリスト教と『マリア福音書』、発見と公刊/日本語テクスト/福音、啓示、対話//
『マリア福音書』における救済者の教え;肉体とこの世/罪、裁き、律法/人の子/幻と心/魂の上昇/マリアの教えをめぐる論争//
初期キリスト教における『マリア福音書』;イエス伝承 『マリア福音書』におけるイエス伝承、補遺:文学的依存関係を決定する諸基準/パウロ/『ヨハネによる福音書』/使徒集団 レビ、アンデレ、ペトロ、マグダラのマリア/キリスト教史など、
344ページ。

 p.310 註3 での、「一部の専門家は今や、グノーシス主義という用語をセツ派に限定して使用し始めている」とか、p.313 註38 での、「グノーシス主義という(規範的な)修辞的範疇を一枚岩的な歴史的実体として具体化することが支持しがたいものであることは、ますます明らかになっている」といった箇所が印象に残っています。
 同じ著者による→→こちらも参照:「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁の What Is Gnosticism?, 2003


J.M.ロビンソン、戸田聡訳、『ユダの秘密 「裏切り者」とその「福音書」をめぐる真実』、教文館、2007.2.25
原著は James M. Robinson, The Secrets of Judas. The Story of the Misunderstoos Disciple and His Lost Gospel, 2006
序言 2006年のイースターの狂騒/新約聖書のユダ/歴史上のユダ/グノーシスのユダ/『ユダの福音書』、ジュネーヴに出現/『ユダの福音書』の売り歩き/『ユダの福音書』の刊行と意義/『ユダの福音書』など、
394ページ。


J.ファン・デル・フリート、戸田聡訳、『解読 ユダの福音書』、教文館、2007.6.25
原著は J. van der Vliet, Het Evangelie van Judas. Verrader of bevrijder?, 2006
序説//
10項目で見るグノーシス主義;グノーシス主義とグノーシス/対立する諸見解/1 二元論/2 ふたりの神/3 二つの世界/4 2種の人間/5 反世界と反身体/6 悪霊についての理解/7 解放者・照明者たるキリスト/8 聖書-修正と寓意的解釈/9 終末論/10 神話/様々な相違/捉えどころのない「セツ派」//
エジプトに由来するグノーシス主義写本;グノーシス主義と修道制/写本と図書館//
『ユダの福音書』の写本-マガーガ・グノーシス主義写本;形態と古さ/4つを1冊に/さらに3つのグノーシス主義文書/美しき廃墟//
『ユダの福音書』-タイトルとジャンル;短いタイトル、長いタイトル/対話/対話と福音書/過越祭への途上で/秘教的?/ユダによる文書?/ユダに関する文書?//
『ユダの福音書』/本文の構成//
神・世界に関する見方;光世界/天的人間/天的算数/下界とその支配者たち/生成から産出へ/秘密の名/12のアルコーン/12の星座//
神と人間;像と似姿/二重のエバ/運命、そして専制の限界/死性と不死性/ガブリエル対ミカエル//
グノーシス主義的観点;二つの世界/アルコーンに抗して/邪悪な創造者/結論//
教会に関する見方;イエスに関する良い見方・誤った見方/上なる種族/「人類」の種族/弟子たちの夢/木とその実/サクラスへの献げ物/聖体拝領に反対して/水、天使、星/ユダの夢/結論//
ユダに関する見方;真のユダを求めて/黒から白へ/強力-しかしなお、十分に強力ではない/12人と13番目/12の把握において/13番目にして最後/天地の間で/ユダの献げ物/戦略としての十字架上の死/ユダに対する讃美/結論//
回顧と評価;論争と終末論/なぜユダか?/古さ/出所/価値と意義//
グノーシス主義に関するさらなる読書のために、など、
308ページ。

 「本訳書に掲載する『ユダの福音書』の翻訳は、日本語訳者(戸田)がコプト語から直接訳したものである」とのこと(p.85)。


筒井賢治、「キリスト教グノーシスにおける『霊』と『肉』 - 『ペトロの黙示録』(NHC VII,3)からの考察 -」、『比較宗教思想研究』、no.7、2007.3.28、pp.27-45 [ < 新潟大学学術リポジトリ Nuar

大田俊寛、「ユングとグノーシス主義 - その共鳴と齟齬 -」、『宗教研究』、no.354、2007.12.30、pp.603-625 [ < CiNii Articles

 ユングとグノーシス主義については→こちら(本頁上掲の湯浅泰雄『ユングとキリスト教』、1978)も参照

大貫隆、『グノーシス 「妬み」の政治学』、岩波書店、2008.7.18
序章 古代における「妬み」の詩学と哲学 旧約聖書における「妬み」と「嫉妬」;財貨と価値の配分に関わる「妬み」/関係の排他性と信義に関わる「嫉妬」/「わたしの他に神はいない」//
  新約聖書における「妬み」//ヘレニズム思潮における情念論と「妬み」//グノーシスとグノーシス神話//方法-「歴史的宗教心理学」について//
グノーシス神話と「妬み」 否定神学と神統記//ソフィアの過失//
  造物神の妬み;上位者の存在に傷つく妬み/自分の持てる価値を他者に分与しない妬み//
  造物神による人間の創造;心魂的人間の肢体の合成/光り輝く人間//
  啓示者の到来;「教示者」としての蛇/蛇以外の啓示者/「楽園でアダムを妬むサタン」-初期ユダヤ教と初期キリスト教の伝承//
「妬み」の非神話化と克服 グノーシス主義者の自己認識-「世から妬まれている者たち」//
  グノーシス主義者の現実;妬みに拘束された存在/すでに妬みを克服した存在//
  終末論的倫理;個人的終末論/普遍史的終末論//
  妬みの克服-深層動態的統合;ストア派および初期ユダヤ教の情念論との違い/深層動態的統合-非神話化とその可能根拠/啓示としての神話テクスト//
グノーシスと政治(シリア・エジプト型) ヘレニズム思潮における「妬み」と政治;ギリシア/ヘレニズム・ユダヤ教と初期キリスト教//
  ローマの支配とイデオロギー;「ローマの平和」と皇帝礼拝/支配の定型イデオロギーと「妬み」//
  グノーシスの反対命題;M.ウェーバーとH.キッペンベルクの見解/「王なき種族」//
グノーシスと政治(マニ教型) マニとマニ教文書;マニ/西進したマニ教/東進したマニ教//
  マニ教神話と「妬み」;神話の再構成/「妬み」についての発言//
  政治との親和性;マニ自身の宣教/東進したマニ教//
  マニ教の政治関与の神話論的根拠-まとめ//
むすび 近代論とグノーシス;M.ウェーバー説へのプロとコントラ/現代思想への提言など、
318ページ。


 次の本もあわせて、著者による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

ゲルト・タイセン、大貫隆訳、『原始キリスト教の心理学 初期キリスト教との体験と行動』、新教出版社、2008.8.1
原著は Gerd Theißen, Erleben und Verhalten der ersten Christen : Eine Psychologie des Urchristentums, 2007
序論 原始キリスト教という宗教の心理学-その問題設定と方法論-;原始キリスト教の心理学の方法論的限界と可能性 歴史的宗教心理学はどのように作業するか/原始キリスト教の心理学の豊富な対象 歴史的宗教心理学は何を研究するのか/宗教心理学の理論を求めて//
魂とからだ 古代における内的人間の発明と原始キリスト教におけるその革新;古代における内的人間の発明/原始キリスト教における内的人間の革新//
経験と体験 宗教としての原始キリスト教における霊性の次元;原始キリスト教における宗教的経験の総括概念としての「プネウマ」/宗教的知覚:透視と幻視/宗教的情動:恐れと喜び/宗教的発語:祈りと異言/宗教的変化:回心と改宗/宗教的結合:ことば信仰と奇跡信仰//
神話と知恵 宗教としての原始キリスト教における認識の次元;序論:神話と知恵についての理論的考察/宗教認知論的解釈の主導概念としての「知恵」と「ケリュグマ」/悪の因果帰属と神義論のアポリア/初期ユダヤ教文書における悪の因果帰属/イエスとパウロにおける悪の因果帰属/後期新約諸文書の神学における悪の因果帰属/宗教的アポリアに対する解釈としての神理解 根本的公理としての神信仰:倫理的一神教、「神の国」の神話:終末論的一神教/宗教的アポリアに対する解釈としての世界理解 知恵の公理としての創造信仰:故郷としての世界、サタン神話:敵対的な世界/宗教的アポリアに対する解釈としての人間理解 罪の赦しの信仰という公理:回心する人間、贖罪神話:救われた人間/宗教的アポリアに対する解答としてのキリスト理解//
儀礼と共同体 宗教としての原始キリスト教における社会的次元;序論:儀礼と共同体についての理論的考察/キリスト教徒の共同性を主導する概念としての「教会」/共同体への加入:回心と再生のための洗礼/共同体における生:聖なる食事と礼典としての聖餐式/禁忌違反を伴わない聖なる食事としての聖餐式/共同体における支配:カリスマと職制/共同体における生:教会とセクト//
エートスと実践 宗教としての原始キリスト教における実践的次元;序論:エートスの意義についての理論的考察/聖書のエートスの主導概念としての「愛」/攻撃行動とその克服:原始キリスト教における衝動の抑制/性と禁欲:原始キリスト教における衝動の制御/律法と勧告:原始キリスト教における規範による方向づけ/良心とさばき//
神秘主義とグノーシス 宗教としての原始キリスト教がグノーシスにおいて遂げた変容;序論:宗教性の二つの基本型およびグノーシスの成立をめぐる歴史的条件についての理論的考察//
  経験と体験;新約聖書における変容の神秘主義:キリストの姿への変容/新約聖書の合体の神秘主義:相互的な内在/グノーシスの認識神秘主義:悪夢からの目覚め/グノーシスの認識神秘主義:酩酊からの目覚め/グノーシスの認識神秘主義:光における合体と認識/グノーシスの認識神秘主義:合体/グノーシスの認識神秘主義:否定神学/新約聖書とグノーシスにおける体験//
  神話と教え;「救済されていない原因は人間にある」/「救済されていない原因は造物神にある」/「救済されていない原因は神に敵対する世界にある」/新約聖書とグノーシスの世界解釈//
  儀礼と共同体;洗礼と封印/聖餐式と新婦の部屋/グノーシスの敬虔と新約聖書の敬虔における儀礼//
  エートスと実践;遍歴のカリスマティカーと教会信徒たちによる通常の禁欲/エンクラティズムとグノーシスの過激な禁欲//
まとめと結びの考察など、
864ページ。


津田謙治、「場(locus)と神の唯一性 - 反異端教父エイレナイオスの修辞学及び哲学的反駁」、『日本の神学』、no.47、2008、pp.113-131 [ < J-STAGE ]

 同じ著者による→こちらを参照:本頁下掲の『マルキオン思想の多元論的構造』、2013

C.マルクシース、土井健司訳、『グノーシス』、教文館、2009.4.25
原著は Chiristoph Markschies, Die Gnosis, 2001
導入;「グノーシス」という概念/「グノーシス」それとも「グノーシス主義」/「グノーシス」の類型論的モデル/最近の議論の主要問題//
資料 オリジナルのテクストを伝えるグノーシス批判の古代の著作家;リヨンのエイレナイオス/アレクサンドリアのクレメンス/ローマのヒッポリュトス/オリゲネス/サラミスのエピファニオス
  異端報告を行っているグノーシス批判の著作家(異端反駁論者);哲学者にして殉教者ユスティノス/テルトゥリアヌス/その他の著作家//
  グノーシスのオリジナル資料、とりわけコプト語資料;アスケビヌス写本とプルキアヌス写本/ベルリン写本(BG)/ナグ・ハマディ文書(NHC)/トゥルファン出土のマニ教文書の発見/メディネット・マディ文書/ケルンのマニ写本/ダクレー・オアシスでの発見//
  非・グノーシス資料;ヘルメス文書(CH)/ヘーハロート文学//
古代におけるグノーシスの初期形態 ユダヤ教グノーシス?//
  新約聖書におけるグノーシス;ヨハネによる福音書/エフェソの信徒への手紙とコロサイの信徒への手紙//
  グノーシスの初期の主唱者;魔術師シモン/メナンドロス/サトゥルニス/バシリデス/グノーシスの初期状態-まとめ//
古代グノーシスの大規模な体系化;マルキオンとマルキオン派/ヴァレンティノスとヴァレンティノス派/いわゆる「バルベロ・グノーシス派」 セツ派グノーシスとは?//
頂点にして終点としてのマニ教;マニの生涯/マニの教説//
グノーシス者たちによる古代の共同体?//古代と現代におけるグノーシスなど、
176ページ。

 ヘーハロート文学にまでふれる一方で、マンダ教についての言及が見あたらなかったことが印象に残っています。
 同じ著者による→こちらも参照:「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁の Alexander Bölig und Christoph Markschies, Gnosis und Manichäismus. Forschungen und Studien zu Texten von Valentin und Mani sowie zu den Bibliotheken von Nag Hammadi und Medinet Madi, 1994


ヨアン・P・クリアーノ、桂芳樹訳、『霊魂離脱(エクスタシス)とグノーシス』、岩波書店、2009.5.26
原著は Ioan P. Couliano, Expérience de l'extase, 1984
序文(ミルチャ・エリアーデ)//
序論//「霊魂離脱」の語義に関する覚書//巫医//
宇宙の神霊化とグノーシス二元論;天上終末論/天上の地獄/宇宙の神霊化/グノーシス二元論の形成//
天上の戦いとグノーシス//古代末期の密儀宗教における霊魂帰昇//魔術飛行//プルタルコスにおける参籠とカタレプシー//天球の秩序と無秩序//難橋//玉座の神秘学からミウラージュ伝説へ//
訳者跋文など、
414ページ。

 →こちら(マガーリヤについて/「ユダヤ」の頁の「vi. マガーリヤその他と天使論」)や、
 そちら(ミウラージュについて/「イスラーム」の頁の「ii. 思想史・哲学史的なもの」の項の終わり近く)、
 またあちら(いわゆる〈イスラーム的宇宙論〉について/「イスラームy Ⅲ」の頁の「x. クジャタ、バハムート、ファラク、その他」)
でも挙げました
 同じ著者による→ここを参照;「通史、事典など」の頁の「ix. 他界観・来世観など


津田謙治、「善なる神と被造物における悪 - ヘルモゲネスの神義論的問題 -」、『宗教と倫理』、no.9、2009.10、pp.19-31 [ < 宗教倫理学会

 同じ著者による→こちらを参照:本頁下掲の『マルキオン思想の多元論的構造』、2013


大田俊寛、『グノーシス主義の思想 〈父〉というフィクション』、春秋社、2009.11.20
序章//グノーシス主義前史;古代都市の信仰-〈父〉というフィクション/プラトン主義的形而上学/ストア主義的自然学/混淆主義的変身譚//
二つのグノーシス神話;『ポイマンドレース』/『ヨハネのアポクリュフォン』//
鏡の認識;グノーシス主義と精神分析/プレーローマの成立と破綻/奪われた自己像/仮現論-真実の神の変容/新婦の部屋//
息を吹き込まれた言葉-グノーシス主義とキリスト教;グノーシス主義とキリスト教/神の三つのペルソナ-キリスト教教義の要約/言葉の分裂/真の神の名など、
286ページ。

 同じ著者による→こちら(「日本 Ⅱ」の頁の「xi. 近代など」)や、あちら(「近代など(20世紀~) Ⅲ」の頁の「xvi. 20世紀神秘学の歴史など」)も参照
 また、著者によるサイトがあります→[ 宗教学探究:大田俊寛の研究室

大田俊寛、「『トマスによる福音書』についての覚書」、『春秋』、no.519、2010、pp.5-8 [ < 宗教学探究:大田俊寛の研究室

鈴木順、「古代末期禁欲論研究」、『古代末期禁欲論とエヴァグリオス』、2009.12.15、pp.15-125
はじめに 本論考の射程/序章 ヘレニズム思想と禁欲//
新プラトン主義における悪霊論と禁欲言説;新プラトン主義における宇宙論・人間論・禁欲論/プラトン主義におけるダイモン論の系譜/ポルピュリオスの宇宙論における悪霊の位置づけ/悪霊に支配された世界/大衆への無関心//
キリスト教初期修道制における悪霊論と禁欲言説;初期修道制に関する資料/堕落以前のアダムへの回帰としての禁欲/宇宙論的悪霊論の不在/世界を悪霊から救う禁欲? 世界への旺盛な関心//
グノーシス主義における悪霊論と禁欲言説;過誤の結果たる宇宙の生成・過誤の結果とその解消手段たる人間/宇宙/身体を解体する終生の禁欲/他者への旺盛ならざる関心 沈黙するグノーシス者//
終章


大貫隆、「認識から体験へ - グノーシス主義の変容? -」、Heidegger-Forum、vol.4、2010.9.1、pp.116-130 [ < Heidegger-Forum in Japan

大貫隆、「グノーシスと異言(グロッソラリア)」、『宗教研究』、vol.84 no.2、2010.9.30、pp.205-226 [ < CiNii Articles

 →こちらにも挙げました:「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁
 次の本もあわせて、著者による→そちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)


荒井献・大貫隆編訳、『ナグ・ハマディ文書・チャコス文書 グノーシスの変容』、岩波書店、2010.12.3
序論 神話から神秘主義へ(大貫隆)//
神話論的グノーシス;ユダの福音書(荒井献訳)/ヴァレンティノス派の解説(大貫隆訳;以下同様)/知識の解明/われらの大いなる力の概念/メルキゼデク/ヒュプシフロネー//
哲学的グノーシス;ゾーストリアノス/マルサネース//
ヘルメス文書;第8のものと第9のものに関する講話/感謝の祈り 完璧な教え//
知恵文学、外典使徒行伝;シルワァノスの教え/セクストゥスの金言/ペトロと12使徒の行伝/使徒パウロの祈り//
解説//補注 用語解説など、
584ページ。

 本頁前掲『ナグ・ハマディ文書』全4巻(→こちら:Ⅰ~Ⅱ(1997/11~1998/1)およびそちら:Ⅲ~Ⅳ(1998/5~1998/9)の補遺・続篇にあたります。
 また抜粋文庫版→そちら:本頁下掲の『ナグ・ハマディ文書抄』(2022/1)


ハンス・.ブルーメンベルク、青木隆嘉訳、『神話の変奏』、2011.4.15、とりわけ第二部Ⅱ「基本神話と芸術神話」など

岡田明憲、「ゾストリアノス」、藤巻一保・岡田明憲、『東洋秘教書大全』、2012.9.11、pp.394-397
キリスト教とグノーシス主義/ゾストリアノスの霊智の旅/哲学者たちを魅了した文献など

津田謙治、『マルキオン思想の多元論的構造 プトレマイオスおよびヌメニオスの思想との比較において』、一麦出版社、2013.02.21
序論 研究の課題//研究史;第1の潮流(新旧訳聖書とマルキオン)/第2の潮流(グノーシスとマルキオン)/第3の潮流(哲学とマルキオン)/研究史のまとめ//
  研究の方法;方法論/研究の順序//
  資料;マルキオン/プトレマイオス/ヌメニオス//
神的原理の多重的構造 マルキオン;二神論/他資料との比較//
  プトレマイオス;三原理論/他資料との比較//
  ヌメニオス;三つの神/他資料との比較//まとめ//
善の神、至高神、第1の神 マルキオン;至高神 より優れたる神もしくは至高神、知られざる神、善なる神/キリスト 善の神のキリスト、様態論的特徴、仮現論//
  プトレマイオス;最も善き神 完全なる神、一なる神・善なる神/救済者 律法の完成者、神の子//
  ヌメニオス;単一なる存在としての第1の神/善そのものおよび第1の知性としての存在/第1の神と世界の生成//
  三者の至高神概念に関する比較考察;至高神の善/至高神の知られざる神性/至高神概念のまとめ//
創造神、第2(第3)の神 マルキオン;創造神 神としての創造者、創造神の無知、世界と人間の創造、義の神と裁き、創造神の与えた律法/創造神のキリスト//
  プトレマイオス;律法の神と創造神/中間者/義の神//
  ヌメニオス;第2の神 世界の製作者、善の模倣者、二重の者/第3の神//
  三者の創造神概念に関する比較考察;創造神の善/創造神の義/創造神と律法//創造神概念のまとめ//
質料 マルキオン;質料からの創造/質料の悪//
  プトレマイオス;質料的概念/質料と悪魔//
  ヌメニオス;質料の諸性質/質料の悪//
  三者の質料概念に関する比較考察;質料の永遠性/質料の悪//質料概念のまとめ//
比較考察 概観//「至高神(第1の神)」と「創造神(第2の神)」の関係;静と動/善と義//
  「至高神(第1の神)」と「質料」の関係;デミウルゴスによる関係のつながりと断絶/至高神と天的な質料//
  「創造神(第2の神および第3の神)」と「質料」の関係;質料からの創造/創造神の悪と質料の悪//
  3つの神的原理間の総体的関係;世界生成論と神論/救済論と神論//議論の総括//
結論;結語など、
252ページ。

 →こちら(「ギリシア、ヘレニズム、ローマ Ⅱ」の頁の「ix. 中期プラトーン主義」)、またあちら(「有閑神(デウス・オーティオースス)、デーミウールゴス、プレーローマなど」の頁)にも挙げておきます
 同じ著者による→こちら(本頁上掲の「場(locus)と神の唯一性 - 反異端教父エイレナイオスの修辞学及び哲学的反駁」、2008や、そちら(本頁上掲「善なる神と被造物における悪 - ヘルモゲネスの神義論的問題 -」、2009)、またあちら(「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「アンティオケイアのテオフィロス」の項)、ここ(「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「iii. 教父神学など」)、そこ(「ユダヤ」の頁の「iv. アレクサンドリアのフィロンとヘレニズムなど」)を参照
 著者による翻訳→そこ:本項下掲のアドルフ・フォン・ハルナック、津田謙治訳、『マルキオン 異邦の神の福音』(2023)
 なお、上掲書でプトレマイオスとして取りあげられているのは『フローラへの手紙』で、いわゆるウァレンティヌス派=プトレマイオス派の神話ではありません。この点に関連して;


津田謙治、「エイレナイオスの伝えるプトレマイオス派の神話と『フローラへの手紙』 ― 翻訳を介した二つの資料の関連」、『日本の神学』、vol.52、2013、pp.74-97 [ < J-STAGE ]

 やはりプトレマイオス『フローラの手紙』を比較の対象にしたのが→あちら(「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「ユスティノス」の項)を参照

エレーヌ・ペイゲルス、カレン・L・キング、山形孝夫・新免貢訳、『「ユダ福音書」の謎を解く』、河出書房新社、2013.10.30
原著は Elaine Pagels and Karen L. King, Reading Judas. The Gospel of Judas and the Shaping of Christianity, Viking, 2007
E.ペイゲルス&K.L.キング ユダを読む;ユダ-裏切り者か寵愛された弟子か?/ユダと12弟子/犠牲と霊の命/王国の秘義//
K.L.キング ユダ福音書;原典ユダ福音書/いくつかのコプト語に関する訳語について/ユダ福音書への注解など、
260ページ。


 ペイゲルスによる著書として→こちらも参照:(本頁上掲の『ナグ・ハマディ写本』、1982
 キングによる著書として→そちらも参照:「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁のKaren L. King, What Is Gnosticism?, 2003


青木祐一郎、『「ユダの福音書」再考 - 新たな救世主像とユダ像の提示による考察 -』、博士学位論文、2014.3.24 [ < 新潟大学学術リポジトリ(Nuar) ]

ハンス・ヨナス、大貫隆訳、『グノーシスと古代末期の精神 第一部 神話論的グノーシス』、ぷねうま舎、2015.9.18
まえがき(ルドルフ・ブルトマン)/第2版への著者の「まえがき」から/第3版への「まえがき」//
序論 研究史と方法論について//
神話的形態のグノーシス グノーシスのロゴス(ことば)(→こちらで少し挙げています:「世界の複数性など」の頁)//
  グノーシスの現存在の姿勢;コスモス/「ヘイマルメネー」(宿命)/ヘイマルメネーとプロノイア/ヘイマルメネーとプシュケー(心魂)/補論Ⅰ 「プネウマ」の同義語/補論Ⅱ 二段階あるいは三段階構成の人間論/グノーシスの革命的要素/補論Ⅲ プラトンの用語が果たす役割について/補論Ⅳ 擬態とギリシア憎悪//
  グノーシスの神話論と思弁;マンダ教の宇宙創成論マニ教の救済ドラマ(イラン型)/真珠の歌/シリア・エジプト型/ヴァレンティノス派の体系/結びと第二部への移行//
  グノーシスの新しい本文;ナグ・ハマディ文書について/バルベーロー・グノーシス派の文書/ヴァレンティノス派の文書『真理の福音』//
  補遺 「第3章2 マニ教の救済ドラマ」への補遺/研究文献の補遺など、
568ページ。


ハンス・ヨナス、大貫隆訳、『グノーシスと古代末期の精神 第二部 神話論から神秘主義哲学へ』、ぷねうま舎、2015.10.23
まえがき 1954/第2版に寄せて 1964/最終版に寄せて 1993(出版社)//
序論 客観化とその形態変化の問題に寄せて;神話の客観化/客観化としてのグノーシス神話/客観化に基づくグノーシス概念/さまざまな実践的意味のグノーシス概念//
グノーシスの領域における古代の「徳性」概念の解体;ヘルメス思想の場合/「キリスト教的グノーシス主義/教会のキリスト教/マンダ教とマニ教/アレキサンドリアのフィロン//
「終末」の先取りとグノーシス的な「徳性」概念の形成;教会宗教にとって否定的な見解/ヘルメス思想における見神と完成/「ミトラ儀礼」における「不死化」/密儀宗教における見神と完成/付論 密儀宗教における神話解釈のプロセスについて//
アレキサンドリアのフィロンにおける神認識、見神、完成;細目はこちら:「ユダヤ」の頁の「iv. アレクサンドリアのフィロンとヘレニズムなど」//
後2世紀から3世紀へ、あるいは神話論的グノーシスから哲学的・神秘主義的グノーシスへ//
後3世紀の3つの体系 その1 オリゲネス;細目はさおちら:「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「オーリゲネース」の項//
プロティノスに関する断章;細目はあちら:「ギリシア・ヘレニズム・ローマ Ⅱ」の頁の「x. 新プラトーン主義」//
訳者解説(大貫隆)/訳者あとがき(大貫隆)など、
500ページ。


 上記二部作の原著→ここ:「グノーシス諸派など Ⅱ」の頁中の Hans Jonas, Gnosis und spätantiker Geist. Erster Teil : Die mythologische Gnosis, 1988 および Hans Jonas, herausgegeben von Kurt Rudolph, Gnosis und spätantiker Geist. Zweiter Teil : Von der Mythologie zur mystischen Philosophie, 1993
 なお第2部第7章は除外(pp.460-461)
 本書の普及版→そこを参照:本頁上掲『グノーシスの宗教』、1986
 訳者による→あそこも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)


秋山学、「アレクサンドリアのクレメンス『テオドトスからの抜粋』 - 全訳 -」、『文藝言語研究』、68巻、2015.9.30、pp.31-62 [ < つくばリポジトリ


 教文館から『キリスト教教父著作集』全22巻が刊行中で、その内

2/Ⅰ エイレナイオス 1 異端反駁Ⅰ(小林稔訳)

2/Ⅱ エイレナイオス 2 異端反駁Ⅱ(小林稔訳)

3/Ⅰ エイレナイオス 3 異端反駁Ⅲ(小林稔訳) 1999.5.20

3/Ⅱ エイレナイオス 4 異端反駁Ⅳ(小林稔訳) 2000.3.24

8 オリゲネス 3 ケルソス駁論Ⅰ(出村みや子訳) 1987.91.1

9 オリゲネス 4 ケルソス駁論Ⅱ(出村みや子訳) 1997.2.10

10 オリゲネス 5 ケルソス駁論Ⅲ(出村みや子訳)

19 ヒッポリュトス 全異端反論(荒井献訳)

 が関連すると思われるものですが、日付のないものは残念ながら2013年12月現在未刊です(『エイレナイオス 異端反駁』の内、ヴァレンティノス派を主とするグノーシス諸派が記述されるのは、未刊の前半。また『ケルソス駁論』でいわゆる〈オピス派の図表〉が記されるのは第6巻で、翻訳ではやはり未刊の『ケルソス駁論Ⅲ』にあたる)。最初に出たのが『8 オリゲネス 3 ケルソス駁論Ⅰ』なので、4半世紀を越えたことになります……(→こちらでも一部触れています:「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「iii. 教父神学など」)。


 追補(2017/11/9);上に挙げた内 2/Ⅰ、2/Ⅱ、および挙がっていなかった3/Ⅲがそれぞれ2017/1/30、2017/5/30、2017/9/30付けで刊行されました。予定されていた訳者小林稔は亡くなられたとのこと( 2/Ⅰ、p.169)。ご冥福をお祈りします;

大貫隆訳、『キリスト教教父著作集 第2巻Ⅰ エイレナイオス1 異端反駁Ⅰ』、教文館、2017.1.30
緒言(序)//
プトレマイオスの教説の正体暴露;プレーローマの成立/プレーローマの危機と回復/中間界/この世//
教会の一致した信仰と相互の違いが目立つ異端者たちの教説;教会の信仰の一致/異端説の諸変異体/「真理の規準」//
ヴァレンティノス派の起源;ヴァレンティノス派の先駆者たち/「グノーシス派」すなわちヴァレンティノス派の直接の先祖たち//
第1巻の結びなど、
200ページ。


 第2部ではヴァレンティノスとその諸派、とりわけマルコス派、
 第3部ではシモン・マゴスとメナンドロス、サトルニノスとバシリデース、カルポクラテス、エビオン派とニコライ派、ケルドンとマルキオン、バルベーロー・グノーシス派、オフィス派グノーシス主義、カイン派などが扱われています。

 マルコスについて→こちらでも挙げています:「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁

大貫隆訳、『キリスト教教父著作集 第2巻Ⅱ エイレナイオス2 異端反駁Ⅱ』、教文館、2017.5.30
緒言(序)//
創造神の上にあるというプレーローマに関するヴァレンティノス派の教説への反論;プレーローマあるいは本当の神の外にあると思われている世界/天使あるいはデーミウールゴスによって作られたと思われている世界/世界がその中に作られたという「空虚」/世界がそこに由来するという「無知」/プレーローマの現実の「似像」/結論//
アイオーンたちの発出とソフィアのパトスおよび種子に関するヴァレンティノス派の教説への反論;三十のアイオーンたち/発出という出来事/プレーローマの構造/発出の形態/ソフィアとエンテューメーシス(思い)およびパトス(情念)/霊的種子/結論//
数に関するヴァレンティノス派の思弁への反論;プトレマイオス派の釈義/マルコス派の思弁/グノーシス派の思い上がり//
最後の完成とデーミウールゴスに関するヴァレンティノス派の説への反論;三つの本性ないし実体の最終的な運命/デーミウールゴスの本性を心理的だと思いこんでいる//
ヴァレンティノス派以外の人々の若干の主張に対する反論;前置き/シモンとカルポクラテスの主張/諸天の大いなる数に関するバシリデースの主張/神々が多数だという「グノーシス派」の主張//
第2巻の結びなど、
226ページ。


 第3巻以下も簡単に挙げておくと;

小林稔訳、『キリスト教教父著作集 第3巻Ⅰ エイレナイオス3 異端反駁Ⅲ』、教文館、1999.5.20
緒言、聖書による証明(序)/序 聖書の真理//
万物の創造者なる唯一の神/自分の被造物の再統合のために人の子となった、神の子なる唯一のキリストなど、
260ページ。


小林稔訳、『キリスト教教父著作集 第3巻Ⅱ エイレナイオス4 異端反駁Ⅳ』、教文館、2000.3.24
緒言(序)//
両契約の一致のイエスの語録による証し/新約の預言としての旧契約/両契約の一致のイエスの譬えによる証しなど、
328ページ。


大貫隆訳、『キリスト教教父著作集 第3巻Ⅲ エイレナイオス5 異端反駁Ⅴ』、教文館、2017.9.30
パウロの手紙が証しする肉体の復活/創造神と父なる神との同一性を証しするキリストの生涯における三つの出来事など、
182ページ。


 巻末の著作集一覧の予定では上掲『19 ヒッポリュトス 全異端反論』も大貫隆訳に変更されていました。『10 オリゲネス 5 ケルソス駁論Ⅲ』(出村みや子訳)ともども、順調に刊行されんことを。
 次の本もあわせて、大貫隆による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)


 追補2(2018/12/14);上に挙げた『19 ヒッポリュトス 全異端反論』がついに、2018/12/10付けで刊行されました。ありがたいことであります;

大貫隆訳、『キリスト教教父著作集 第19巻 ヒッポリュトス 全異端反駁』、教文館、2018.12.10
序論 ヒッポリュトス『全異端反駁』について(大貫隆);ヒッポリュトスという人物 - 生涯・思想・著作;著者は誰か/ヒッポリュトスの生涯/「ヒッポリュトスの分裂」/ヒッポリュトスの品性/著作一覧//
  『全異端反駁』(別名『哲学誌』)について;写本と校訂本/表題と構成/失われた第二巻と第三巻の内容/資料/著作年代/グノーシス研究上の意義について//
第一巻(哲学誌);自然哲学者(1-17章) タレース(1)、ピュタゴラス(2)、エンペドクレス(3)、ヘラクレイトス(4)、アナクシマンドロス(6)、アナクシメネース(7)、アナクサゴラス(8)、アルケラオス(9)、パルメニデース(11)、レウキッポス(12)、デーモクリトス(13)、クセノファネス(14)、エクファントス(15)、ヒッポーン(16)/倫理哲学者(18-19章) ソクラテス(18)、プラトン(19)/弁論術哲学者(20-21章) アリストテレス(20)、ストア派(21)/エピクロス(22章)/ピュローン派哲学(23章)/蛮族の哲学(24-25章) ブラーマン哲学(24)、ドリュイダイ人の哲学(25)/ヘシオドス(26章)//
第四巻;占星術について(1)(1-27章)/魔術について(28-42章)/占星術について(2)(43-51章)//
第五巻;ナハシュ派(6-11章)/ペラータイ派(12-18章)/セート派(19-22章)/グノーシス主義者ユスティノス(23-28章)//
第六巻;シモン(7-20章)/ヴァレンティノス(21-37章) ピュタゴラス再論(23-28)、ヴァレンティノス派の神話(29-37)/セクンドス(38章)/マルコス(39-55章)//
第七巻;バシリデース(14-27章) アリストテレス再論(15-19)、バシリデースの神話(20-27)/サトルニロス(28章)/マルキオン(29-30章) エンペドクレス再論(29)/プレポーン(31章)/カルポクラテース(32章)/ケリントス(33章)/エビオーン派(34章)/テオドトス(1)(35章)/テオドトス(2)(36章)/ケルドーンとルキアノス(37章)/アペレース(38章)//
第八巻;ドケータイ派(8-11章)/モノイモス(12-15章)/タティアノス(16章)/ヘルモゲネース(17章)/ニサン十四日派(18章)/フリュギア派(19章)/エンクラティータイ[克己派](20章)//
第九巻;ノエートス派(7-10章) ヘラクレイトス再論(9-10)/カリストス派(11-12章)/エールカザイとアルキビアデース(13-17章)/ユダヤ教徒(18-30章)//
第十巻;諸々の哲学説の総括(6-7章)/すべての異端説の総括(8-29章) ナハシュ派(9)、ペラータイ派(10)、セート派(11)、シモン(12)、ヴァレンティノス(13)、バシリデース(14)、グノーシス主義者ユスティノス(15)、ドケータイ派(16)、モノイモス(17)、タティアノス(18)、マルキオン(19)、アペレース(20)、ケリントス(21)、エビオーン派(22)、テオドトス(23-24)、フリュギア派(25-26)、ノエートス(27)、カリストス(27)、ヘルモゲネース(28)、(エールカザイとアルキビアデース(29))/真正な教理(30-34章)//
訳註/訳者あとがき/索引など、
584ページ。


 ヒッポリュトスは160年代(p.13)-235年、本書の著作年代は222年と235年の間(pp.44-45)。
 序論Ⅱの「4 資料」中の「4・3 第5巻-第10巻」で、ヒッポリュトスが用いたエイレナイオス以外の資料、とりわけ「三原理主義」で編纂されていたであろう「資料集」について触れられている点が興味を惹きます(pp.41-43)。
 モノイモスとマルコスについて→こちら(「言葉、文字、記憶術/結合術、書物(天の書)など」の頁)で、
 エールカザイとアルキビアデースについて→そちら(「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「ii. 初期キリスト教の諸傾向など」)で、
 ピュータゴラースの項の中で出てくる「カルデア人のザラタス」こと「ツァラツストラ(ゾロアスター)」のものとされる宇宙論に関し→あちら(「イラン」の頁の「vi. ヘレニズムへの波及など」)で、
 占星術についての項(2)の中で出てくるエジプト人のものとされる数秘学的宇宙開闢論に関し→ここ(「エジプト」の頁の「おまけ」)で、
 「ブラーマン哲学」について→そこ(「インド」の頁の「おまけ」)で、
 また魔術に関し→あそこ(「魔術、神秘が宇、隠秘学など」の頁)、
 「超宇宙的」「超世界的」の語に関し→こなた(「世界の複数性など」の頁の「追記」)で挙げています
 

 追補3(2023/1/20);上に挙げた『10 オリゲネス 5 ケルソス駁論Ⅲ』がついに、2022/12/30付けで刊行されました。『Ⅰ』が1987.91.1付け、『Ⅱ』が1997.2.10付けなので、25年ぶりとなります。『Ⅰ』からすると35年。感無量というべきでしょうか;

出村みや子訳、『キリスト教教父著作集 10 オリゲネス 5 ケルソス駁論Ⅲ』、教文館、2022

 上でも触れたように、いわゆる〈オフィス(オピス)派の図解(ディアグランマ)〉が記されるのは第6巻24-25節で、邦訳では pp.28-29。
 続く箇所でも、「アルコーン」(27節/p.31, 30節/p.33、31節/pp.35-37, 33節/p.38, 35節/p.40, 37節/p.42)だの「ヤルダバオート」(31節/p.35, 32節/p.38)、「サバオート」(31節/p.36, p.38))また「アイオーン」(35節/p.40)、「ヴァレンティノス派」(35節/p.40)などなどといった、グノーシス主義ゆかりの言葉が見受けられます。
 またマルキオン(53節/p.60, 74節/p.82)の名が挙げられていました。
 この他、ヘラクレイトス(42節/p.47, 43節/p.49)、ペレキュデス(42節/p.p.47-48, 43節/p.49)なども見られます。
 さらに、〈オフィス派の図解〉の箇所のすぐ前では、「ミトラ教の密儀(テレテー)」について述べられていました(22節/pp.25-27)。なので→こちらにも挙げておきます:「ギリシア・ヘレニズム・ローマ」の頁の「iv. ミトラス教
 またオフィス派の図解中のレヴィアタンに関連して→そちらでも触れました:「ユダヤ Ⅱ」の頁の「xi. メルカヴァー/ヘーハロート神秘主義など」の項
 

大貫隆、『終末論の系譜 初期ユダヤ教からグノーシスまで』、2019.1.15、pp.478-500+注:「第三部第XVIII章 万物の発出と回帰 - グノーシス主義」
「万物」の定義替え/グノーシス主義の系譜学/『ヨハネのアポクリュフォン』/グノーシス主義の終末論/まとめ

 著者による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

荒井献・大貫隆・小林稔・筒井賢治編訳、『新約聖書外典 ナグ・ハマディ文書抄』(岩波文庫 青 825-1)、岩波書店、2022.1.14
はじめに(大貫隆)//
イエスの知恵(小林稔訳・解説/Ⅲより)/ペトロの黙示録(筒井賢治訳・解説/Ⅳより)/ヨハネのアポクリュフォン(大貫隆訳・解説/Ⅰより)/トマスによる福音書(荒井献訳・解説/Ⅱより)/エジプト人の福音書(筒井賢治訳・解説/Ⅱより)/ユダの福音書(荒井献訳・解説/Ⅴより)//
ナグ・ハマディ文書とグノーシス主義(荒井献/Ⅰ~Ⅳの「序にかえて」を解題・再録)//
補注・用語解説・索引など、
512ページ。


 本頁前掲『ナグ・ハマディ文書』全4巻(→こちら:Ⅰ~Ⅱ(1997/11~1998/1)およびそちら:Ⅲ~Ⅳ(1998/5~1998/9
およびその補遺・続篇(→あちら:『ナグ・ハマディ文書・チャコス文書 グノーシスの変容』(2010/12))
から6文書を選んで文庫化したもの(上記各文書の訳・解説者の後に元の巻数を記しました。「Ⅴ」は『グノーシスの変容』)。選択の規準として、
 ①キリスト教グノーシス主義の文献(「はじめに」、pp.4-8)
 ②「新約聖書外典」文書(同、pp.9-16)
 ③写本の保存状態(同、pp.16-18)
の3点が挙げられています。
「各文書の翻訳本文、それに先立つ目次、および巻末の解説は、原則として出典元のままである」(同、p.19)
ただし訳注、巻末の「補注・用語解説・索引」などは簡略化(同、p.20)


アドルフ・フォン・ハルナック、津田謙治訳、『マルキオン 異邦の神の福音』、教文館、2023.05.31
原著は Adolf von Harnack, Marcion : Das Evangelium vom Fremden Gott : eine Monographie zur Geschichte der Grundlegung der katholischen Kirche ; Neue Studien zu Marcion, 2te verb. und verm. Aufl., 1924
第二版への序文(1924)/初版への序文(1920)//
導入 - マルキオンのキリスト教宣教に関する宗教史的な前提と、彼が現れた当時のキリスト教世界の内的状況;知られている神と、知られざる異邦の神 - マルキオン/古代キリスト教における混淆主義と明確性との緊張 - 「使徒的」宣教、パウロ、異端者たち、マルキオン/救済宗教 - マルキオン//
マルキオンの生涯と影響//
マルキオンの出発点 - 律法と福音、そして世界、律法、創造者からの救済//
批評者にして修復者 - マルキオン聖書//
マルキオンの『対立命題』//
マルキオンのキリスト教信仰と彼の宣教;議論の根拠/世界創造者、世界、人間/ユダヤ人の神としての世界創造者、道徳的なものとしての義 - 律法、預言者、メシア、そしてユダヤ人の神の聖なる書物/異邦の神、そして上位の神としての救済神/善の神としての救済神、この神がイエス・キリストにおいて顕れたこと、救済の業、使徒パウロの召命//
救済される者たちの聖なる教会と生活の規範(典礼、組織、倫理)//
マルキオン派教会の歴史 - 中心的な神学学派とアペレスの分派;マルキオン派教会の外的歴史/マルキオン派教会の内的歴史/アペレスとその分派//
カトリック教会成立に対するマルキオンの歴史的位置づけとその意義//
教会史的および宗教哲学的考察によるマルキオンのキリスト教信仰;反律法主義と旧約聖書の拒絶/異邦の神の福音と汎キリスト主義//
訳者あとがきなど、
308ページ。

 「補遺を除く本文の邦訳である。原文では、本文の全235ページに対し、補遺は全455ページある。13から成る補遺は当時のマルキオン研究の状況を知る手掛かりとしては有益なものではあるものの、専門的な議論が多いために、今回の翻訳には含めなかった」(「訳者あとがき」、p.303)。

 「…(前略)…いくつかの批判は当然正鵠を射ていたものの、本書が出版されて百年以上経過しているにもかかわらず、マルキオン研究において避けることのできない基本書であり続けていること、そのために近年になって英仏伊など各国語の翻訳が刊行されていることなどから、当時の批判に本書が十分に耐えうるものであったことが推測される」(同上、p.306)。

 「…(前略)…仮現論や様態論などのキリスト論、新約聖書正典の成立、グノーシス的諸概念の分析など、教理史や教会史の分野でマルキオンを視野に入れて考察するにあたって、批判的に用いることも含めて、ハルナックの『マルキオン』を等閑視することは依然として困難であると言えるであろう」(同上、p.307)。

 他方

 「H・ヨナスが指摘するように、マルキオンとグノーシスの関係をハルナックのように軽視するべきではない」(同上、p.306)

として、ヨナスの
 大貫隆訳、『グノーシスと古代末期の精神 第一部 神話論的グノーシス』、2015、p.305
 秋山さと子・入江良平訳、『グノーシスの宗教』、1986、p.203
を挙げています。ハルナック自身の見解としては、たとえば本書原注 pp.271-273 の(1)を参照。

 訳者による→こちら:本項上掲『マルキオン思想の多元論的構造 プトレマイオスおよびヌメニオスの思想との比較において』(2013)


大貫隆、『グノーシス研究拾遺 ナグ・ハマディ文書からヨナスまで』、YOBEL, Inc.、2023.6.25
はじめに//
私のグノーシス研究 - 序にかえて;修学と留学(1970-1980年)//
  ナグ・ハマディ文書の翻訳;私訳の蓄積/『ナグ・ハマディ文書Ⅰ』(1997-1998年)の刊行//
  『グノーシスの神話』と論文集の刊行;グノーシスの神話』(1999年)/『グノーシス考』(2000年)/『ロゴスとソフィア - ヨハネ福音書からグノーシスと初期教父への道』(2001年)/『グノーシス 陰の精神史』と『グノーシス 異端と近代』(2001年)//
  歴史的心理学からグノーシスの政治学へ(2007-2010年);歴史的心理学/『グノーシス 「妬み」の政治学』(2008年)//
  『グノーシスの変容』(2010年)//
  ハンス・ヨナス『グノーシスと古代末期の精神Ⅰ-Ⅱ』の翻訳(2015年)//
  エイレナイオスとヒッポリュトスの原典訳(2017-2019年)//
  八木-荒井論争を超えて - 結びにかえて//
  本書の収録論考について//
『三部の教え』(NHC I, 5)の三層原理;はじめに//
  「プレーローマ」の中の三層構造;「父性のプレーローマ」/「父」・「御子」・「アイオーンたちの教会」の三層構造/「プレーローマ(アイオーンたち)の教会」内部の三層構造/まとめ//
  最大規模の三層構造 - 「上のプレーローマ」・「ロゴスのプレーローマ」・「経綸」の成立;「物質的な者たち」/「心魂的な者たち」/「ロゴスのプレーローマ」と「霊的な者たち」//
  中間規模の三層構造 - 「霊的な者たち」・「心魂的な者たち」・「物質的な者たち」について;「心魂的な者たち」と「物質的な者たち」の位階制/「心魂的な者たち」の内部の位階/最下位の「経綸」について//
  最下位の三層構造 - 「霊的秩序」・「心魂的秩序」・「経綸の秩序」;「奴隷の秩序」/「物質的な者たち」の中に下降した「霊的秩序」/「物質的な者たち」の中に下降した「心魂的秩序」//
  まとめ//
トマス福音書語録77とグノーシス主義のアニミズム - ナグ・ハマディ文書の中のマニ教的なもの;問題提起//
  「汎キリスト論」的再解釈は何時行われたのか//
  トマス・コプト語訳者の「汎キリスト論」の中身;シリア・エジプト(=西方)型の場合//
    マニ教(=東方型)の場合;マニ教におけるアニミズムの成立根拠/マニ教のアニミズムについての証言/トマス福音書語録77のマニ教的読解の可能性/「マニ教以前」か「マニ教以後」か//
  コプト語トマス福音書の神話論的統一性の問題 - 結びにかえて//
ストアの情念論とグノーシス - ヨハネのアポクリュフォン§51-54(NHC II)における反ストア的編集について;本文の翻訳と問題設定/本文(§51-54)に関する文献学的分析/古ストア学派の情念論/古ストア学派の情念論の影響史/『ヨハネのアポクリュフォン』§51-54の情念論 - むすび//
グノーシスの変容 - 物語論から体験論へ;はじめに//
  ハンス・ヨナスの所説//
  留保と修正//
  『ゾーストリアノス』(NHC VIII, 1);写本と内容について/「私にとっての実行可能性」 - 存在論的行為としての覚知/啓示の内容 - 存在論/神話から「存在の純粋な内在的法則」へ//
  プロティノスの批難;ポルピュリオスが証言する『ゾーストリアノス』/プロティノスは『ゾーストリアノス』の何を拒絶するのか//
  魔術文書における「呪文」//
  神秘主義的グノーシスと「異言」(グロッソラリア)//
  むすび//
ハンス・ヨナス『グノーシスと古代末期の精神』を読む;はじめに/ヨナスを翻訳しての最大の発見/ヨナスを読みながら抱いて来た最大の疑問/バシリデース派の例外性/まとめ/山本巍氏のコメントへの応答//
あとがき//
書評再録(『ヨハネ福音書解釈の根本問題』 評者:森一郎、東よしみ)など、
366ページ。


 著者による→本書目次中でリンクを張った各所、他(本頁中)、また→こちら(「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「i. 『新約聖書』とその周辺」)なども参照

余談 イスカリオテのユダなど

 一時期の〈天使〉本や近年の〈クトゥルー神話〉本ラッシュほどではないのかもしれませんが、こちらはあきらかに『ユダの福音書』をめぐる話題に便乗してのことなのでしょう、イスカリオテのユダに関する本がいくつか刊行されました。

 おそらく『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1973、監督:ノーマン・ジュイソン)を見て以来、ユダのことは気になっており、 何度も挙げている『百億の昼と千億の夜』の萩尾望都による漫画版(1977/1978)が光瀬龍の原作(1973→こちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「光瀬龍」の項)と異なる点の一つが、ユダに原作以上の活躍をさせていることだったり、永井豪の『魔王ダンテ』(全3巻、サンコミックス、朝日ソノラマ、1973→そちらもを参照:同頁の「永井豪」の項)でユダがちらっと登場したりしたこと(第1巻、p.92)が思いだされたりするのでした。高遠るい『ミカるんX』第6巻(2010)第弐期第玖-壱拾話にも登場していました。

 さかのぼれば太宰治の「駆け込み訴え」(1940)があり、近くは『ドラキュリア』(2000、監督:パトリック・ルシエ)なんてのもありました。
 後者とほぼ同時期に独立して、夢枕獏の『黒塚 KUROZUKA 』(連載:1997-2000、単行本初版:2000)でも相通じる設定が見られました(→あちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅵ」の頁の「夢枕獏」の項)。『黒塚』におけるイエス像については、半村良の『石の血脈』(1974→ここを参照:『鮮血の処女狩り』の頁の「おまけ」)と比べることができるかもしれません。


 「ユダヤ Ⅲ」のページの「おまけ」(→そこ)でも挙げてましたが、

渡辺啓助、『クムラン洞窟』(ふしぎ文学館)、出版芸術社、1993 の表題作(1959)

 には『イスカリオテのユダによる福音書』が登場します。

カール・バルト、川名勇編訳、『イスカリオテのユダ 神の恵みの選び』、新教出版社、1963.10.20
神の恵みの選び〈序論〉;神の恵みの選びに関する義しい教説の課題/イエス・キリストの選び/教会(ゲマインデ)の選び/個人の選び//
イスカリオテのユダ〈本論〉;使徒の一人としてのユダ、およびユダの罪について/選ばれた者としてのユダ、および神の引き渡しについて、など、
214ページ。


 「本書は Karl Barth 《Die Kirchliche Dogmatik》(教会教義学)第2巻《Die Lehre von Gott, 1942》(神に関する教説)の第2分冊のうち《Gottes Gnadenwahl》(神の恵みの選び)の第35節《Die Erwählung des Einzehlen》(個人の選び)の第4項《Die Bestimmung des Verworfenen》(棄てられた者の規定)を本論とし、序論として Otto Weber 《Karl Barths Lirchliche Dogmatik, Ein einführender Bericht, 1956》(カール・バルトの教会教義学入門)の68-76頁の翻訳を中心にバルトの原著を適宜、挿入した紹介をつけ加えたものである」(p.209)。

鷲巣繁男、「ユダ・イスカリオテの祈り」、『鷲巣繁男詩集』、1972、pp.25-26

ホルヘ・ルイス・ボルヘス、「ユダについての三つの解釈」、『伝奇集』、1975.4.30、pp.170-177

 ボルヘスについて→こちらも参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「ボルヘス」の項

ヘンリック・パナス、小原雅俊訳、『ユダによれば』、恒文社、1978.12.20
原著は Henryk Panas, Według Judasza, 1973

 ユダの1人称による回想が綴られる小説。扉ではタイトルの後に〈外典〉の語が加わっています。
326ページ。
 エピグラフとしてエイレナイオス、テオドレトス、エピファニオスによるカイン派についての証言が引かれています(p.4)。


岩本泰波、『ユダと提婆達多 救いなき人間の救い』(レグルス文庫 157)、第三文明社、1983.12.10

 細目は→こちら:「仏教 Ⅱ」の頁の「おまけ」

 次の本はクロスニー、『ユダの福音書を追え』、2006.5.8 とほぼ同じ時期に刊行されました;

利倉隆、『ユダ イエスを裏切った男』(平凡社新書 324),平凡社、2006.5.10
ユダの図像学;描かれたユダ/シモンの家の宴/ユダの契約/最後の晩餐/ユダはどこにいる/レオナルド・ダ・ヴィンチの晩餐図/アルプスの彼方では晩餐図に犬がいた/弟子の足を洗うイエス/ゲッセマネの祈り/ユダの接吻/ユダの悔悛/裏切り者の死//
裏切りの動機;贖罪の山羊/銀貨30枚のために/悪魔が彼に入った/荒野の誘惑者/受難劇の悪魔とユダ/影のスメルジャコフ/嫉妬は愛の姉妹/ダビデ王の再来か/イエス審問/二つの王国/神の救済計画のもとに/イエスは知っていたか/ユダの福音書/ユダ伝説/運命の糸//
光の子・闇の子;死に至る病/ユダの木/楽園の木/木にかけられた神/タロット・カードの男/恥辱の図/木にかけられた二人/虚像としてのユダ/影の人びと/ユダの左手//
エピローグ;再び接吻をめぐって/ユダよ、語れ、など、
254ページ。

 『ユダの福音書』については反異端論者の報告に基づき、「現存しない」(p.150)ものとして記されています(pp.149-152)。


 さて、以下が『ユダの福音書』刊行後に出版されたものとなります;

ウィリアム・クラッセン、森夏樹訳、『ユダの謎解き』、青土社、2007.2.20
原著は William Klassen, Judas : Betrayer or Friend of Jesus?, 1996
序 ユダはどんな人物として見られてきたのか/ユダの資料にはどんな特徴があるのか/「イスカリオテのユダ」という名の意味/ユダが行ったこと-伝統的な視点から見ると/密告者としてのユダ/マルコの目から見たユダ/マタイが描いたユダ/ルカの文書に登場するイスカリオテのユダ/第4福音書(ヨハネ)/ユダの死/神学者が見たイスカリオテのユダ/ユダヤ人学者のユダ観/エピローグ ユダはこんな人物だった/ユダの自殺ノート(紀元30年頃)など、
476ページ。


大貫隆編著、『イスカリオテのユダ』、日本キリスト教団出版局、2007..3.23
はじめに(大貫隆)//
正典福音書と使徒言行録;「12人」の一人/転向者ユダとサタン(悪魔)/「引き渡し」の予告と横領疑惑/接吻の合図とイエスの逮捕/自殺と「血の畑」//
新約外典;『ペテロ行伝』第8章/『使徒ユダ・トマスの行伝』第32章/『ピラト行伝(ニコデモ福音書)』・補遺1/『ピラト行伝(ニコデモ福音書)』・補遺2/『(アラビア語)イエスの幼児物語』/『バルトロマイ福音書』 断片1、断片2、断片3/『アンドレとパウロの行伝』//
グノーシス文書 プトレマイオス派の神話//
カイン派の神話;エイレナイオスの報告(『異端反駁』Ⅰ・31-1)/偽テルトゥリアヌスの報告(『全異端反駁』Ⅱ・5-6)/エピファニオスの報告(『薬篭』38-1・2-5、38-3・3-5)/フィラストリウスの報告//
教父文書;パピアス 断片1、断片3/『ポリュカルポスの殉教』第6章/オリゲネス『ケルソス駁論』第2巻11,12,18,20章/ヨアンネス・クリュソストモス『マタイ福音書読解説教』 第80説教第2-3節、第81説教第1-3節/アウグスティヌス 『ヨハネによる福音書講解説教』第26説教11節、『ヨハネによる福音書講解説教』第50説教10節、『ヨハネによる福音書講解説教』第62説教2節、『神の国』第1巻17章//
中世の伝説;『黄金伝説』/『トーレードート・イエシュ(イエスの系図)』//
文学・心理学;ゲーテ『詩と真実』15章/フランソワ・モーリヤック『イエスの生涯』/太宰治「駆け込み訴え」/遠藤周作『イエスの生涯』/ワルター・イェンス『ユダの弁護人』/笠原芳光『イエス 逆説の生涯』/坂井信夫「イスカリオテのユダから見たイエス」/佐藤研『悲劇と福音』/インゲボルク・ドレーウィッツ「イスカリオテのユダ」/井上洋治『わが師イエスの生涯』//
組織神学・新約聖書学;ダフィト・フリードリヒ・シュトラウス『イエスの生涯』/ジョセフ・エルネスト・ルナン『イエス伝』/アルバート・シュヴァイツァー『イエスの生涯-メシアと受難の秘密』/マルティン・ディベリウス「ユダとユダの接吻」/マルティン・ディベリウス『イエス』/カール・バルト『イスカリオテのユダ』/エーテルベルト・シュタウファー『イエス その人と歴史』/オスカー・クルマン「第12番目の弟子」/オスカー・クルマン『イエスと当時の革命家たち』/ギュンター・ボルンカム『ナザレのイエス』/ヨーゼフ・プリンツラー『イエスの裁判』/ヨエル・カーマイケル『キリストはなぜ殺されたか』/荒井献『イエスとその時代』/前島誠『ナザレ派のイエス』//
結びに代えて H.J.クラウク『ユダ-主の弟子の一人』;冷静な諸事実/問題の多い解釈/解釈のカオスなど、250ページ。


 大貫隆による→こちらも参照;本頁下掲の『グノーシス研究拾遺』(2023)

荒井献、『ユダとは誰か 原始キリスト教と「ユダの福音書」の中のユダ』、岩波書店、2007.5.30
ユダの共観表//
原始キリスト教とユダ;イスカリオテのユダ-名称の由来とその意味-/イエスとの再会-マルコ福音書のユダ-/銀貨30枚の値打ち-マタイ福音書のユダ-/裏切りと神の計画-ルカ文書のユダ-/盗人にして悪魔-ヨハネ福音書のユダ-//
使徒教父文書・新約聖書外典と『ユダの福音書』のユダ 正統と異端の境-使徒教父文書と新約聖書外典のユダ-;使徒教父文書におけるユダ 『ヘルマスの牧者』、『ポリュカルポスの殉教』、『パピアスの断片』/新約聖書外典におけるユダ 『ペトロ行伝』、『トマス行伝』、『ヨハネ行伝』//
  13番目のダイモーン-『ユダの福音書』読解- 古代教会の証言//『ユダの福音書』の発見、本文の発表・公刊//反異端論者の証言と新発見の『ユダの福音書』//
    『ユダの福音書』の文学形式と宇宙・人間論;序/「子ども」として/感謝の祈り、あるいは聖餐式/イエス、笑う/「ほかの世代」と「聖なる世代」/「完全なる人間」/ユダの告白/セツ派/見えざる霊/アウトゲネース/ソフィア/ヤルダバオート/人間の創造/星//
    『ユダの福音書』におけるユダとイエス;13番目としてのユダ/すべての弟子たちを超えるユダ/ユダの変容?/イエスの変容/ユダの「引き渡し」/表題/ユダの復権//
ユダとは誰か 歴史の中のユダ;裏切りの理由/裏切りの予告/捕縛/死/イエスとの再会/イエスの十字架はユダを受容した//
ユダの図像学(石原綱成)など、
262ページ。


荒井献、『ユダのいる風景』(双書 時代のカルテ)、岩波書店、2007.6.6
予断・診断・独断 誰の内にもユダは棲む?/ペトロとユダ 赦された者と赦されざる者(図像構成 石原綱成)/ユダは救いの内に/ユダは救いの外に/ユダは救いの遂行者/ユダは地獄に/ユダとユダヤ人/ユダの復権/終章 誰の内にもユダは棲む、など、
136ページ。

 「ユダのいる風景を、古代、中世、近・現代へと連ね、各時代におけるユダの位置づけを例示的に叙述してゆく」というもの(p.vii)。


渡辺和子、「キリスト教神話の『発展』 - マリアとユダをめぐって -」、松村一男・山中弘編、『神話と現代 宗教史学論叢 12』、2007.12.12、pp.281-326
神話・物語・歴史・時間;神話と物語と歴史/歴史と時間と物語/歴史と神話と物語//
マグダラのマリアと現代;『ダ・ヴィンチ・コード』/『マリアによる福音書』の再評価//
イスカリオテのユダ;『ユダの福音書』の発見と公刊/『ユダの福音書』のユダ像//
ユングの「キリスト教神話」論;「聖母被昇天」の教皇令/『ヨブへの答え』と女性性/母・花嫁/歴史としての神話//
考察-キリスト教神話の「発展」;「歴史の神話」の研究/「民衆」と複数の「女性性」/グノーシス/キリスト教神話の未来

 同じ著者による→こちらを参照:「メソポタミア」の頁の「神話、信仰等について


竹下節子、『ユダ 烙印された負の符号の心性史』、中央公論新社、2014.4.10
序章/ユダの神学とキリスト教の成立/ユダの両義性/ヨーロッパにおけるユダ像のヴァリエーション/プロテスタントとユダ/ロシアのユダ/反ユダヤ主義とユダ/終章//
コラムなど、
216ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:「キリスト教(西欧中世)」の頁の「i. 文化史的なものなど

 映画におけるイメージについて;

岡田温志、『映画とキリスト』、みすず書房、2017、「Ⅵ 脇役たちの活躍 - イスカリオテのユダとマグダラのマリア」
2013/12/20 以後、随時修正・追補
グノーシス諸派など Ⅱ
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