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西アジア
i. カナアン、ウガリット、ヒッタイトなど
ii. フェニキア、その他
iii. ハッラーンのサービア教徒
  おまけ 

* このページに登場する諸文化の言語の日本語表記は、勉強不足のため残念ながらわかりません。
 そもそもどういう言葉が用いられたかもわかっていません。
 ともあれ例によって、多々誤りもあろうかと思いますが、ご寛恕ください。

i. カナアン、ウガリット、ヒッタイトなど

 まずは;


ジョン・グレイ、森雅子訳、『オリエント神話』、青土社、1993
原著は John Gray, Near Eastern Mythology, 1969/1982
 5章から8章までがカナアン。
歴史地理;土地/文化の発達//
宗教;カナアン文書/主神エル/バアル - 天の宮廷の行政官/女神たち/下位の神々/農業のサイクル//
神話;バアル神話/バアルとアナト/家の建造/バアルの死と冥界への下降/バアルの再生とモトの死/優雅で美しい神々の誕生/呪文の中の神話 - 〈ホロンと蛇〉/〈酔っているエル〉/〈月神と月の女神の結婚〉//
王;ケレト伝説/ダニエル王の伝説/アクハトの誕生/アクハトの死/豊饒の分配者としてのダニエル/アクハトの死に対する「乙女」の復讐/聖なる王権など
(pp.163-284)。

 他は;
メソポタミア(1-4章)、イスラエル(9-13章)など、
422ページ。


 原典からの翻訳として;

古代オリエント集 筑摩世界文學体系 1』、1978
 

ウガリット;「バアールとアナト」(芝山栄訳、pp.275-312)、、

ヒッタイト;「クマルビ神話」(轟俊二郎訳、pp.349-366)、
  「竜神イルルヤンカシュの物語」(杉勇訳、pp.367-369)、
  「テリピヌ伝説」(丸田正数夫訳、pp.370-374)

 などが収められています。

 他に;

ウガリット;アクハト/ケレト/ニッカルと月の結婚

アラム;賢者アヒカルの言葉

 翻案として;

H.ガスター、矢島文夫訳、『世界最古の物語 〈バビロニア・ハッティ・カナアン〉』(現代教養文庫 805)、社会思想社、1973
原著は Th.H. Gaster, The Oldest Stories in the World, 1952

 「ハッティの物語」の部に;

「姿を消した神様」(pp.134-149;「テリピヌ伝説」)、

「石の怪物」(pp.150-182;「クマルビ神話」)、

「計略で捕えた竜」(pp.183-193;「竜神イルルヤンカシュの物語」「狩人のケッシ」(pp.194-212)など、

 「カナアンの物語」の部に;

「バアルの物語」(pp.276-310;「バアールとアナト」)

 など所収、
バビロニアの物語」など
とあわせて全322ページ。

 また;


ジョルジュ・ゴントノー、「古代西方アジアの諸宗教」、E.ドリオトン、G.ゴントノー、J.デュシェーヌ・ギュイユマン、稲垣良典訳、『古代オリエントの宗教(カトリック全書 141)』、ドン・ボスコ社、1959、pp.89-181
原著は E. Drioton, G. Contenau, J. Duchesne-Guillemin, Les religions de l'orient ancien, 1957.
ヒッティト人とフーリト人(pp.97-107)、フェニキア(pp.109-121)、メソポタミア(pp.123-181)など。

 他に
エジプトの宗教」、「イラン宗教」所収。


S.H. フック、吉田泰訳、『オリエント神話と聖書』、山本書店、1967
原著は S.H. Hooke, Middle Eastern Mythology, 1963
 3章と4章がウガリットとヒッタイト;
ウガリットの神話;バール神話/ケレト伝説/アカト伝説/朝と夜の誕生(シャハトとシャリム)/ニカルの誕生とカティラート//
ヒッタイトの神話;ウリクミス神話/イルヤンカス神話/テレピヌス神話など

 他に;
序章/メソポタミアの神話エジプトの神話ヘブライの神話/ユダヤ教黙示文学の神話的要素/新約聖書における神話的要素/キリスト教の神話と儀礼など、
282ページ。


C.H. ゴールドン、高橋正男訳、『ウガリト文学と古代世界』、日本基督教団出版局、1976
原著は Cyrus Herzl Gordon, Ugarit and Minoan Crete : The Bearing of their Texts on the Origins of Western Culture, 1966
ウガリトとその重要性/ウガリト文学とグレコ-=ヘブライの類縁関係/ミノア文明期のクレータ/ウガリト詩歌/ウガリトの散文テクストなど、
286ページ。

 「バアルとアナトに関する神話」(pp.77-163)、
 「ケレト叙事詩」(pp.163-227)
 の訳文を含む。

F.M. クロス、輿石勇訳、『カナン神話とヘブライ叙事詩』、日本基督教団出版局、1997
原著は Frank Moore Cross, Canaanite Myth and Hebrew Epic, 1973
導入 - 伝統的物語と初期イスラエル諸慣習の復元//
カナンの宗教とイスラエルの神;父たちの神/エールと父たちの神/ヤハウェとエール//
イスラエル宗教連合の祭儀;序論/神の戦士/海の歌とカナン神話//
連合と王国;ヤハウェとバアル/初期イスラエルの祭司の家系//
王と預言者;王国期における王理念 - 条件契約と永遠の布告/列王記の主題と申命記学派的歴史の構造//
捕囚と黙示;祭司的文書/クムランにおける黙示的共同体の初期の歴史など、
598ページ。


 「ユダヤ」のページの「viii. 神話、魔術など」の項にも挙げておきましょう→こちら
 →そちらでも少し触れています:「原初の巨人、原初の獣、龍とドラゴンその他」の頁

「西セム諸族の神話・宗教」、『世界神話大事典』、2001、pp.203-238
宗教と神話 方法の問題(モーリス・スニセル)/紀元前2000年紀のシリア(同)/アラブ人とナバテア人の宗教 イスラム化以前(同)/アラム人とパルミラ人の宗教(同)/ウガリトの神々と神話(同)/フェニキア人とポエニ人の宗教(同)など

「西アジアの神話・宗教」、『世界神話大事典』、2001、pp.239-254
その定義と問題(エマニュエル・ラロシュ)/ヒッタイトにおける神々の構造 小アジアの神々(同)/ヒッタイトの洞窟神殿ヤズルカヤとその銘石(同)/ヒッタイトの動物とその形態 アナトリア(同)/フルリ人 バビロニア様式の借用(同)/フルリ人の偉大な神とその陪神 テシュブとヘバト(同)/リュキア テルミレ族の神々の名(同)など

吉田大輔、「ヒッタイトの太陽神」、松村一男・渡辺和子編、『太陽神の研究 宗教史学論叢8』(下巻)、リトン、2003、pp.63-82
アナトリア印欧語族系の太陽神/ハッティ・ヒッタイト系の太陽神/図像に表わされた太陽神など

池上正太、『オリエントの神々(Truth in Fantasy 74)』、新紀元社、2006

 第1章「オリエント世界とは」(pp.25-29)、第2章「メソポタミア周辺の神々」(pp.125-154、171-172,195-202)にウガリト、カナアン、ヒッタイトそれぞれの神話・神々について記されています。


 その他、

谷川政美訳、『ウガリトの神話 バアルの物語』、新風舎、1998

 あるも、未見。

 事典類としては、メソポタミアのページに記した『大英博物館版 図説古代オリエント事典』(2004)、『古代オリエント事典』(2004)参照。
………………………

Maurice Vieyrat, ‘La naissance du monde chez les hourrites et les hittites’, La naissance du monde. Sources orientales Ⅰ, 1959, pp.153-174.
「フルリおよびヒッタイトにおける世界の始まり」
諸観念;
フルリの神統譜/神話の神々/場面//
テクスト;〈天上の覇権〉神統譜/ウルリクムミの歌/ウルリクムミの生誕/イシュタルと海/戦いの準備/神々の戦い/雷雨の神の敗北/神々の集会など

André Caquot, ‘La naissance du monde selon Canaan’, La naissance du monde. Sources orientales Ⅰ, 1959, pp.175-184.
「カナアンによる世界の始まり」
ウガリト的資料/エル、創造神/宇宙開闢論の痕跡/後代の伝承など


Hugh Rowland Page, Jr., The Myth of Cosmic Rebellion. A Study of its Reflexes in Ugaritic & Biblical Literature, E.J. Brill, Leiden, New York, Köln, 1996
『宇宙的叛乱の神話 ウガリトおよび聖書におけるその反射の研究』
序論/研究史の検討/テクスト上の証言の一致/実例を選ぶ際の根拠/アシュタル - 概観/アシュタル - ウガリトの資料再考/ヘブライの聖書における〈宇宙的叛乱〉像 - 分析/ヘブライの証言の要約/原〈宇宙的叛乱〉 - 予備的再構成など、
244ページ。

ii. フェニキア、その他

 最初にどこで見かけたのか思いだせずにいるのですが、フェニキアの神統譜・宇宙開闢論というのが頭に引っかかっていました。サンクニアトンの著述に基づくビュブロスのピローン(ビブロスのフィロン)『フェニキア史』の断片が、エウセビオス『福音の準備』に引用されるという形で残ったというものです。上掲
André Caquot, ‘La naissance du monde selon Canaan’ではその「資料的価値はいまだ議論されている」(p.183)とされ、下記マーコウ『フェニキア人』では「フィロンの解説はギリシャ神話からの類推にひどく汚染されてはいるが、基本的には青銅時代後期のウガリト神話に類似のものがみられるので、信頼できるだろう」(p.158)とされ、他方、下記 Attridge & Oden, Jr. では「ピローン主張するところの古の典拠の真正性という中心的な論題に対する自分たちの立場は、研究者間で優勢な合意よりは、いくぶん懐疑的だ」(p.vii)とされてはいますが、ともあれ、

サイト Βάρβαροι! (Barbaroi!) 中の「ヘレンニオス・ピローン 断片集[ < Βάρβαροι! (Barbaroi!)

 に日本語訳が掲載されています。

 また

Harold W. Attridge and Robert A. Oden, Jr., Philo of Byblos. The Phoenician History. Introduction, Critical Text, Translation, Notes, (The Catholic Biblical Quarterly Monograph Series 9), The Catholic Biblical Association of Amerika, Washington, DC., 1981
『ビュブロスのピュローン フェニキア史:序論、校合テクスト、翻訳、註 』
序論/ビュブロスのピローン:証言/ビュブロスのピローン:『フェニキア史』:断片など、
120ページ


グレン・E・マーコウ、片山陽子訳、『フェニキア人』(世界の古代民族シリーズ)、創元社、2007
原著は Glenn E. Markoe, The Phoenicians, 2000
歴史/都市/経済 - 商業と産業/言語と文学/宗教/美術・工芸/海外への商業発展など、
318ページ。

 サンクニアトンの宇宙開闢論については pp.158-159 で言及。


 エジプトのページでも挙げていますが;

José Nunes Carreira, ‘Hermopolitan traditions in Philo Byblius' Phoenician History,CADMO. Revista do Insituto Oriental da Universidade de Lisboa, no.1, 1991, pp.31-44
………………………

佐藤信夫、『新アルメニア史 人類の再生と滅亡の地』、泰流社、1989、pp.214-230、「第三章 アルメニアの宗教」
キリスト教以前からのアルメニアの神々/主神ハルディス/女神とエア神/アナーヒター信仰とキリスト教/キリスト教とアルメニア/『ミロ』の浄めなど。

 この他、
序章は「ギルガメシュとノアの方舟」、
第2章「アルメニアの歴史」中に「7. アルメニアの建国神話」の項(pp.65-69)や「12. アルケサス王朝」の項ではズルヴァーン教
が言及されています(pp.99-105、→こちらも参照:「イラン」の頁の「ii. ゾロアスター教関連 - 邦語文献」)。

ウディ・レヴィ、持田鋼一郎訳、『ナバテア文明』、作品社、2012
原著は Udi Levy, Die Nabatäer. Versunkene Kultur am Rande des Heiligen Landes, 1996 / translated by Christian von Arnim, The Lost Civilisation of Petra, 1999
忘れられた文明への接近/羊飼い、王、十字架・民族の発展の段階/ナバテアの宗教とその変容/ナバテア芸術の言語/遊牧民から農民へ/ナバテア人とユダヤ人 - 対照的な隣人同士/ペトラ-祭司と王の都/シブタ-教会と貯水槽の都市など、
254ページ。


徳永里砂、『イスラーム成立前の諸宗教 イスラーム信仰叢書 8』、国書刊行会、2012
序章/古代南アラビアの宗教/古代北西アラビアの諸都市の宗教/砂漠の碑文に見られる神々/イスラーム以前の一神教/古代文化とイスラームなど、
240ページ。

 ジャーヒリーヤについては→こちらも参照:「イスラーム」の頁の「i. 『クルアーン』とその周辺


 その他、

M.J. フェルマースレン、小川英雄訳、『キュベレとアッティス その神話と祭儀』、新地書房、1986

 あるも、未見。
………………………

「アルバニア・アルメニアの神話・宗教」、『世界神話大事典』、2001、pp.728-732
アルバニアの神話(アルシ・ピパ)//
アルメニアの宗教と神話;神々/アルメニアの伝説と神話(ジョルジュ・シャラシジェ)など


 →トルコ/テュルクについてこちらも:「中央アジア、東アジア、東南アジア、オセアニアなど」の頁の「i. アルタイ、テュルクなど

iii. ハッラーンのサービア教徒

矢島文夫、「サービ教徒と星学」、『オリエント』、vol..20 no.1、1977、pp.191-204 [ < J-STAGE

Tamara M. Green, The City of the Moon God. Religious Traditions of Harran, E.J. Brill, Leiden New York & Köln, 1992
『月の神の都 ハッラーンの宗教的伝承』
序論//
ハッラーンの宗教:都市の創設からナボニドスの敗北まで;歴史的背景:紀元前2000-539年/ハッラーンの宗教//
ハッラーンの宗教:アレクサンドロスからイスラームによる征服まで;歴史的背景:紀元前539-紀元後640年/ハッラーンの宗教:残存と連続性//
ハッラーンの宗教:諸神混淆主義と同化;諸伝承の同定//
イスラームによる征服以降のハッラーン:ムスリムたちとサービア教徒たち;歴史的背景:640-1271年/ハッラーンとハッラーン人のアイデンティティー//
イスラームの資料;序説/(イルム)法学(フィクフ)神学(カラーム)哲学(ファルサファ)神学(カラーム)と秘教的イスラーム//
ハッラーンの異教とイスラーム;序説/イブン・ナディーム『目録』とビールーニー『年代学』の暦/『目録』と『年代学』における伝統的崇拝/『目録』における星辰礼拝の証拠/結論//
ハッラーン、ヘルメース主義と秘教的イスラーム;序説/ギリシア哲学とハッラーン/ハッラーンとヘルメース的伝承/ハッラーンと秘教的諸学/「純正同胞団」とハッラーン人//
イスラームの資料によるサービア教徒の諸密儀;序説/イブン・ナディームの『目録』/ブガダリスの家の諸密儀/マンダ教徒とサービア人の諸密儀/「純正同胞団」とサービア人の諸密儀/『賢人の目的』/マスウーディー/結論など、
240ページ。


 エデッサ(現在のシャンウルファ、通称ウルファ)の南南東約40キロメートルに位置した北メソポタミアの都市ハッラーン(ハラン)は、紀元前2000年頃には史料類で言及され、月の神シン崇拝の拠点でもありました。また創世記11.31-32ではアブラム(後のアブラハム)の父テラの歿した地と、同12.4-5でアブラムがカナンに向かった際の出発地として述べられ、ユダヤ人およびキリスト教徒からも重視されたとのことです。西アジアの各文化が交わる坩堝ではあり、後にはヘレニズムの文化が流入、イスラームの支配下にあっても啓典の民の一つとしてのサービア教徒と目されることで多神教を保持する一方、ギリシア語文献の(おそらくシリア語訳を介して)アラビア語への翻訳の一角を担うことになる。サービア教徒は、とりわけイスマーイール派との関係が取りざたされるイフワーン・アッサファー(純正同胞団、10世紀頃→こちらを参照:「イスラーム Ⅲ」の頁の「イフワーン・アッサファー」の項)などからヘルメース主義的な思潮との関連が証言されているとのことです。とはいえいずれも間接証言であり、しかも各証言の内容が往々にして一致しないので、その実態を見定めることは容易ではない。本書はそうした資料の状況を歴史的に位置づけようとしたものですが、むしろその困難さこそが解消できないものとして印象づけられることになっているようです。

Şinasi Gündüz, The Knowledge of Life. The Origins and Early History of the Mandaeans and their Relation to the Sabians of the Qur'ān and to the Harranians, Journal of Semitic Studies Sipplement 3, Oxford University Press, 1994
『生命の知 マンダ教徒の初期の歴史とクルアーンのサービア教徒およびハッラーン人との関連』
序論/イスラームの資料によるサービア教徒/マンダ教資料/マンダ教におけるさまざまな外的要素とマンダ教の西方とのつながり/マンダ教に対する東方の資料とメソポタミアにおける早い時期の出現/ハッラーンの人々の崇拝と信仰/マンダ教とハッラーンの宗教との比較など、
264ページ。

 〈サービア教徒〉として時に同一視されるマンダ教とハッラーンの宗教を比較して、それぞれの特徴を示そうとした論考です。
 →こちら(「グノーシス諸派など Ⅲ」のページ、「vii. マンダ教など」の項)にも挙げておきます

 基本文献は

D. Chwolsohn, Die Ssabier und der Ssabismus, 2 vols, St.Peterburg, 1856
『サービア教徒とサービア教』

 のようですが、未見。
 本書の主な主張とそれに対するさまざまな反応については、

上掲の
T.M. Green, The City of the Moon God, 1992, pp.101-123

 を参照


Henri Corbin, Temple et contemplation, 1958/2006, “Temple sabéen et ismaélism”, pp.171-202: “Ⅰ. Rituel sabéen et Temple spirituel”

C. E. Bosworth, ‘ḤARRĀN’、[ Encyclopædia Iranica
「ハッラーン」

清水和裕、「中世バグダードのサービア教徒とイスラーム的学術」、『アジア遊学』、no.86、2006.4.20:「特集 アラブの都市と知識人」、pp.10-20
サービア教徒とギリシア的学術;サービア教徒/ギリシア的諸学の興隆//
バグダードのサービア教徒;サーヒド・ブン・クッラとその子孫/サーヒド・ブン・スィナーン//
アブー・イスハーク・サービー - 書記術と歴史学;書記となるサービア教徒/『タージーの書』//
歴史家ヒラール・サービーの改宗;書記ヒラール・ブン・ムハッスィン/改宗//
異教徒知識人からイスラーム教徒知識人へ


ギュンター・ゴールドシュミット、「中世錬金術」、『DUKDUK ダクダク 3 小栗虫太郎関連資料集 特殊:錬金術』、2013、pp.67-106
初出は『チバ時報』、no.110、1940.9

 この中に「ハランのサビヤ教徒」という項がありました(pp.73-76)。


江原聡子、「イスラーム期における都市ハランの宗教 - イブン・アン=ナディームの『目録の書』を中心に -」、『アジア地域文化研究』、17号、2021.3.31、pp.101-133 [ < 東京大学学術機関リポジトリ
DOI : https://doi.org/10.15083/0002002879

坂本貴志、『〈世界知〉の劇場 キルヒャーからゲーテまで』、2021、「第8章 有機的な力 ヨーハン・ゴットフリート・ヘルダー」

の中で、ヘルダーの『人類最古の文書』(1774-76)が〈サービア教徒〉を

 「『古代神学』的な系譜において重視」(p.226)

ことが記されていました(pp.226-230)。クヴォルソンの上掲『サービア教徒とサービア教』(1856)も参照されます(p.229)。ただし後の『人類史の哲学についての考察』(1784-91)では、

 「かつてヘルダーが熱心に描き出した古代神学の『サービア教/星辰信仰』は、真なるものを含む伝統ではあるが、それは唯一ではなく、他の伝統とともにひとつの根源から派生して全体を構成するという認識が、『人類史の哲学についての
考察(イデーン)』では前面に出てくることである」(p.234)

と述べられます。


 「イスラーム」の頁の「iv. 科学史・天文学史的なもの、その他」で挙げた

中西悠喜、「エッセイ・レヴュー:アラビア・イスラム文化圏におけるヘルメス関連文書とヘルメス観の歴史」、『慶應義塾大学言語文化研究所紀要』、no.53、2022.3、pp.239-278

 「2.ハッラーン人の星辰崇拝:前イスラム期からアッバース朝下での改変まで(6-10世紀)」以下を参照

おまけ

 フィクションの領域では、ラヴクラフトの「ダゴン」(原題;‘Dagon’, 1917;大瀧啓裕訳、『ラヴクラフト全集 3』(創元推理文庫 523-3、東京創元社、1984)や「インスマウスの影」(原題;‘The Shadow over Insmouth’, 1931;大西尹明訳、『ラヴクラフト傑作集 1』(創元推理文庫 523-1、東京創元社、1974)以来、クトゥルー神話でおなじみになったダゴンが思い浮かびます。もっとも『大英博物館版 図説古代オリエント事典』(2004)によると、「ダゴン」はダガンのヘブライ語読みなのですが、「少なくとも紀元後4世紀にさかのぼる、ダガンを魚の神とする伝承があるが、これは誤りである」とのこと(p.324)。
 ちなみにスチュアート・ゴードン監督の『ダゴン』(2001)の原作は「ダゴン」ではなく「インスマスを覆う影」(1931)でした。
 クトゥルー神話がらみでは、フレッド・チャペル、尾之上浩司訳、『暗黒神ダゴン』(原題;
Dagon, 1968)(創元推理文庫 F ラ 1-12、東京創元社、2000)もありました。
 ラヴクラフトとクトゥルー神話について→こちらを参照:「近代など(20世紀~) Ⅳ」の頁の「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など

 他方、アイヴァン・ライトマン監督『ゴースト・バスターズ』(1984)に登場する、「門番ズール
Zuul, Gatekeeper」、「ビンツ、鍵 Vinz Clortho, Keymaster」そして「災厄の神ゴーザ Gozer」は、ヒッタイトの神という設定でした(スペルはSynopsis for Ghost Busters (1984) [ < IMDb ] から)。
 上述のようにトルコ/テュルクについては中央アジア等」のページの「i アルタイ、テュルクなど」の項に送っていますが、音楽方面はこちらに挙げておくとして; 

The Dave Brubeck Quartet, “Blue Rondo à la turc”, Time Out, 1959(邦題:デイヴ・ブルーベック、「トルコ風ブルー・ロンド」、『タイム・アウト』)(1)
1. 中山康樹、『ジャズの名盤入門』(講談社現代新書 1808)、講談社、2005、pp.88-91。
 菊池成孔編、『200CD 菊池成孔セレクション ロックとフォークのない20世紀』、学習研究社、2005、p.226。
 後藤雅洋、『一生モノのジャズ名盤500』(小学館新書 101)、小学館、2010、p.149。
ムーンライダーズ、『イスタンブール・マンボ』、1977(2)

 3枚目のB面2曲目が「ウスクダラ」、3分18秒、続いて3曲目がタイトル曲、4分52秒。
 2曲目のタイトルはイスタンブールに隣接するユスキュダルのこと。日本語ウィキペディアの該当頁(→こちら)によると、トルコの民謡に基づいて1953年にアーサー・キットが歌い、翌54年に雪村いずみが「ウシュカ・ダラ」として、同年江利チエミが「ウスクダラ」として録音、1976年に江利チエミとムーンライダーズが「イスタンブール・マンボ」などともどもセッション、その時点では没になったものの、ムーンライダーズが独自に上のアルバムに収録したとのこと。
 
2. ムーンライダーズ+アストロ・チンプス、『フライト・レコーダー』、JICC出版局、1990、p.80、p.93、pp.322-323。
 『ミュージック・マガジン』、514号、2006.6:「特集 ムーンライダーズの30年」、p.48。

 同じアルバムから→そちら:「北欧、ケルト、スラヴなど」の頁の「おまけ」、
 他のアルバムから→あちらを参照::『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)の頁の「おまけ
 
 またフランスのグループで

Asia Minor

 というのもありました(3)。手もとにあるのは;


Crossing the Line, 1979

Between Flesh and Divine, 1980

3. 『ユーロ・ロック集成』、マーキームーン社、1987/90、p.73。
 『フレンチ・ロック集成 ユーロ・ロック集成3』、マーキームーン社、1994、p.96。
 片山伸監修、『ユーロ・プログレッシヴ・ロック The DIG Presents Disc Guide Series #018』、シンコーミュージック、2004、p.26。
る*しろう、『8・8』、2004(4)

 ピアノ、ギター、ドラムスの三人組による一枚目、9曲目が「トルコの... Turkish...」。5分27秒、器楽曲。
4. 『オール・アバウト・チェンバー・ロック&アヴァンギャルド・ミュージック』、マーキー・インコーポレイティド株式会社、2014、pp.244-245。
2013/05/17 以後、随時修正・追補 
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