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アッシャー家の惨劇
House of Usher
    1960年、USA 
 監督   ロジャー・コーマン 
撮影   フロイド・クロスビー 
 編集   アンソニー・カラス 
 プロダクション・デザイン   ダニエル・ハラー 
    約1時間19分 
画面比:横×縦    2.35:1* 
    カラー 

VHS
* 手もとのソフトでは1.33:1
………………………

 上記のように『禁断の惑星』(1956)の場合と同じく手もとのVHSソフトでは画面左右が半分近くトリミングされていることになり、この映画を見たとはとても言えたものではありませんが、きちんと見るのはまたあらためてとなってしまいます。ご容赦ください。以前TVで『シルバラード』(1985、監督:ローレンス・カスダン)なる西部劇を見た際、ラスト近くの決闘場面で、向かいあった2人の内1人しか画面に映っていませんでした。これはわざとそうしたのかと思ったかどうかは憶えていませんが、後にシネスコ・サイズで見る機会があってみれば、ちゃんと2人とも画面に入っている。本ソフトでも人物が画面の端でが切れていると思しい箇所があります。ことほどさようにトリミング(とカット)は止めましょうよという余談なのでした。

  さて、『凶人ドラキュラ』(1966)についての頁冒頭に再録した雑文でもふれましたが、ながらくコーマンのポーものというのがもう一つピンときませんでした。なぜなんだろうと考えてみるに、本来シネスコ・サイズで製作された作品をスタンダード・サイズで見ていたからという点もあるのかもしれませんが、いささか単純にも、怪物妖怪の類があまり活躍しないからではないかと思ったりもします。その分人間の所業が話の中での比重を増さずにはおらず、今はこうした形容を使うのかどうか、〈神経的(ニューロティック)〉な感触をたたえることになります。実際『恐怖の振子』(1961)や『姦婦の生き埋葬』(1962)のように超自然現象の起きないサイコ・スリラーに分類すべき作品もある(そう言えばユニヴァーサルの『黒猫』(1934)や『大鴉』(1935)もサイコ・スリラーでした)。そんなところが肌に合わなかったのかもしれません。
 とはいえポーならぬラヴクラフト原作の『怪談呪いの霊魂』(1963)にはちらっとではあれ怪物が登場しますし、そもそもコーマンはこれらの連作以前には『金星人地球を征服』(1956)なんて名高き〈金星ガニ〉が登場し、あわせて『夕陽のガンマン』(1965、監督:セルジョ・レオーネ)以前のリー・ヴァン・クリーフの雄姿がおがめる作品を監督していましたし、後にはオールディス原作でちゃんとフランケンシュタインの怪物が登場する『フランケンシュタイン/禁断の時空』(1990)を撮ることになります。それはおくとしても、本作品の企画に当たってAIP(アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ)の設立者の1人サミュエル・Z・アーコフから「だが、モンスターが出てこない」と言われたコーマンは、「屋敷そのものがモンスターなんだ」と(下掲の『自伝』、p.124)、古城映画愛好家には感涙ものの名言で答えたとのことです(→こちらでも引いています。ただし下掲の Joel Eisner, The Price of Fear. The Folm Career of Vincent Price; In His Own Words, 2013, pp.93-94 によると、この前後のくだりはコーマンの記憶違いかもしれないという)。これだけでも大いに株を上げてしかるべきですが、同じ『自伝』には「廊下のむこうにあるものは何か?」という実に美しい命題まで述べられています(p.126)。ここまで来ればもはや態度を翻し掌を返して大いに持ちあげる以外に選択肢はなさそうではありませんか。

 本作品に先立っては『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1960)をコーマンは監督していました。現代の下町にある花屋のセットが主な舞台でしたが、ラスト近くでの大きなタイヤがごろごろしている場面などに面白い空間を見ることができました。
 他方本作はうってかわって古色蒼然たる館で展開します。これまた『自伝』によれば、「定評のあるSF作家、リチャード・マシスンの脚本はよくできていて、しかも文学的だった。ヴィンセント(・プライス)の演技もすばらしかった。しかし、ほんとうのスターは美術監督のダン・ハラーだったといってよいだろう。彼はユニヴァーサルへ出かけて、2500ドルでありもののセットや背景を買いこんだ…(中略)…いろいろな映画会社をまわって、柱やアーチや窓や家具を集めた。…(中略)…そしてポーの作品を撮りおえるたびに、倉庫を借りてセットを保存した。だから一連のポー作品をくりかえし見ると、おなじセットや特定の道具が何度も登場しているのがわかるはずだ」とのことです(p.125)。『吸血鬼ドラキュラ』(1958)についてクリストファー・リーがやはりその自伝で、「それから映画の本当のスターは…(中略)…美術監督のバーナード・ロビンソンだった」と記していたことが思いだされるところです(→こちら。また『来るべき世界』(1936)でのヴィンセント・コルダに関し→こちらも参照)。
 ちなみにコーマンが監督したポーものおよび関連作品を並べておくと、本作品に続いて
恐怖の振子』、1961
姦婦の生き埋葬』、1962
怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』(DVD邦題は『黒猫の怨霊』。『ポーの恐怖物語』と表記されることもあり)、1962
忍者と悪女』(または『大魔城』)、1963
古城の亡霊』、1963;ポー原作ではありません。『忍者と悪女』のセットの出来がよかったため、再利用して急遽製作された作品(『自伝』、pp.140-144)。
怪談呪いの霊魂』、1963;上で触れたようにポーではなくラヴクラフトが原作
赤死病の仮面』、1964
黒猫の棲む館』(または『リージアの墓』)、1964
となります。この多くに古城ないし館が登場します。同時期にはAIPから離れて『恐怖のロンドン塔』(1962)が監督コーマン、主演プライスで製作されました。史劇ですが主な舞台はお城で、亡霊もわんさか出てきます。
 ちなみに『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』に続いてこれらの作品で美術を担当したハラー(ホラー)はAIP製作で『襲い狂う呪い』(1965)、コーマンが製作総指揮の『ダンウィッチの怪』(1970)とラヴクラフト原作の映画を2本監督しています。またこの間にはフランシス・フォード・コッポラの監督第1作『ディメンシャ13』(1963)がやはりコーマンによって製作されました。

 前置きが長くなりました。本篇は霧たなびく荒地を騎馬の人物が進むところから始まります。ぽつぽつとはえた木はいずれも枯れており、いかにも荒涼としています。この人物が先を見上げると、さっそく館の外観です。少し下から見上げた眺めはマット画によるものです。2階に破風屋根の棟が横に伸び、がっしりした量塊感を感じさせます。緑がかって古びた質感です。屋根には3本ずつ組になった煙突でしょうか、3組ほどそびえています。中央は玄関でしょう、少し前に迫りだしている。左奥にも低くなった棟が続いているようです。大きめの窓がいくつも設けられています。館の手前にもぽちぽち枯木が見える。
 人物が進むと、左に門柱でしょうか、頂きには翼をひろげた鷲らしき鳥の像をいただいています。『女ドラキュラ』(1936)のラストといい、『吸血鬼ドラキュラ』(1958)といい、城とくれば鷲の石像というものなのでしょうか。人物はさらに接近します。また別の柱が左にのぞき、下の方に"USHER"と刻まれている。その右には円を連ねた植物紋の透かし扉がついていて、その影が柱に落ちています。右から騎馬の人物が左へ進めば、カメラもそれに寄り添います。アーチの下の扉の前を横切り、手前で馬から下りて手綱をつなぐ。扉には正方形と十字を斜めに連ねた浮彫が施されています。
 ノッカーを鳴らす。扉を開いた執事のブリストル(ハリー・エラービー)に来訪者はフィリップ・ウィンスロップ(マーク・ダモン。後にマリオ・バーヴァの『ブラック・サバス 恐怖!三つの顔』(1963)に出演することでしょう)と名乗り、自分はマデリン(マーナ・ファイ)の婚約者だという。扉の向こうの壁に綴織がかかっているのが見えます。執事は追い返そうとしますが、ごり押しされてやむなく中に入れる。


 屋内の場面に換わると、カメラはゆっくり後退しながら上昇します。玄関を入ってすぐ向かいには両側から仕切りが出ています。仕切りの内側の間では絨毯が斜めに配されている。音を立てないよう乗馬靴を脱ぐことを求められたフィリップは、背を向け左から右へ進む。奥に扉が見え、その手前左右にやはり焦茶色の仕切りが出ています。こちらは少し前方に出て柱で支えています。
 この仕切りの向こうには広い扉口が見え、そのすぐ右に上への階段があがっていきます。4段ほどのぼって、右に折れ上へ伸びていく。のぼった先は右に回廊へつながっているようです。
 執事はスリッパを渡し、フィリップを案内します。カメラは上から、奥から手前へ階段をのぼる2人を見下ろす。2人は右から左へ進み、カメラの前を横切ると、のぼっていく2人をカメラは見上げる。ハマー・フィルムの作品でお馴染みのタイプのショットです。階段は2階に達する前に上の方でもう一度右に折れていました。数段で2階に達します。その先の吹抜に面した回廊も短い。2人があがったところでカメラは水平になる。回廊の左側に扉口があり、2人はそこに入る。ここまで1カットでした。
 扉口の先は廊下につながっています。2人は右奥から現われて手前へ進む。カメラは逆に前進していきます。少し進んで左側の扉をノックする直前に内側から扉が開かれる。当主であるロデリック(ヴィンセント・プライス)の登場です。髪が白い。


 ロデリックとフィリップの会話の中で、館はボストンから馬で来ることのできる距離であるとわかります。ロデリックの部屋は快適そうです。暖炉の上に絵がかかっており、館を描いたもののようです。赤が多用され、何かの顔とも見えるいくつもの円を描くように構成されています。とうてい19世紀中盤の作品には見えません。後に出てくる肖像画群とあわせて、 [ IMDb ]によるとバート・シェーンベルク Burt Schoenberg が制作したものとのことです。本篇中ではロデリックの自作とされます。
 フィリップは灯りをつけてもいいか、この館の中は暗いといいます。ただし少なくとも手もとのソフトではそんなに暗くは感じられませんでした。ソフトの原版のせいか、当初どうだったのかはわかりませんが、他方手もとのソフトでは色味は比較的よく出ているような気がします。


 フィリップがあてがわれた部屋で荷物をひろげていると、地震が起こります。窓を開けて外を見れば、かなり下から見上げられた壁が映ります。これもマット画でしょう。左から右下に伸びてきた壁が角を経て手前に出、すぐ右下へ折れていく。壁なかばには横に梁が伸びており、左と右の壁には方形の窓枠が設けられています。その間の手前に出るつなぎの壁には上下に大きな割れ目が走っている。上の空には暗雲が垂れこめています。この下から見上げる館のマット画は、次回作『恐怖の振子』以後の連作で展開されることになるでしょう。また今回と同じショットには『古城の亡霊』中、主人公が始めて城を訪れる場面で再会することができます。

 フィリップは部屋を出て左へ進む。先に廊下が伸びています。奥のすぐ手前には左右に焦茶の仕切りが出ている。この仕切りの上辺はやや右下がりに見えます。フィリップは背を向け奥に進み、右へ曲がります。
 右奥から出てくると、左側に1階へ下りる階段があります。カメラはやや下からとらえ、手前に吹抜のシャンデリアがシルエットと化して大きく映っています。階段をおりたところでシャンデリアが落ちてくる。
 2階の扉口からロデリック、マデリン、執事が現われます。マデリンは階段を駈けおりる。1カットです。


 食堂での場面の最中にまた下から見上げた壁のショットが挿入されます。フィリップはこの辺には緑がないという。
 同じ食堂か、別の部屋なのかわかりませんでしたが、3人が食後にくつろいでいる居間には、窓際に大きな地球儀が置いてあります。カメラは上から見下ろしつつ後退し、水平になります。ロデリックは絵を描くだけでなく作曲もたしなみ、リュートを弾いたりしています。
 館の外観が挿入されます。やはりやや下からです。手前を霧が速い速度で流れていく。
 マデリンの部屋にフィリップが訪れます。ベッドの頭側の仕切りは装飾的な斜め格子です。

 フィリップの部屋では、扉の手前の丸机に大きな砂時計が見えます。物音にフィリップは扉を出て左を見る。廊下の1階へ続く側とは反対の方向のようです。右手の扉がぎ~と閉まります。マデリンの部屋でした。そこをのぞいてベッドに彼女のいないのを認めたフィリップが出てくるのは、廊下の1階への階段側に向かって右手前からでした。背を向けて奥へ進み、右に曲がります。カメラもそれを追う。
 上から吹抜に面した2階回廊が見下ろされます。カメラは左から右へ進む。今度は下から、回廊の欄干の向こうに立つフィリップを見上げる。欄干は外れかけます。左隣の半柱もぐらぐらする。欄干の上辺に触れると、ぼろぼろと崩れそうです。この場面はなぜか頭にこびりつきました。
 階段をおりるフィリップを、カメラは上から斜めになって見下ろします。灯りは消されていて画面は暗めです。
 階段をおりた右手に、奥まって扉があります。声をかけると反響する。カメラは左から右へパンします。暗がりを経て祈禱台が見えます。上には磔刑像がかけてある。カメラはそちらに接近します。
 横たわるマデリンを見つけると、蠟燭を手にした執事が現われて夢遊状態だといって、寝室に運んでいきます。


 館の外観をはさんで、翌朝フィリップは厨房を訪れます。朝食の準備をする執事は、勤めだして60年になるという。子供の頃から館に住んでいたとのことです。ちなみに他に使用人はいないようです。ある意味でこの執事こそが、本作品の陰の主役と見なせるでしょう。この作品では後にふれる夢の場面をのぞけば、登場人物はロデリックとマデリンの兄妹、外からの来訪者であるフィリップ、そして執事の4人だけです。そして執事以外の3人がいずれも自分のことにかまけて他を顧みる余裕を持たないのに対し、執事だけが成行を見つめているのでした。それでいて館がなくなる時は自分も死ぬ時だという彼は、まったくの傍観者でもない。
 さて執事はフィリップに、地震は感じられないほど昔からあって、今では館の一部だと告げます。


 マデリンとフィリップは地下へおりていきます。画面は暗い。階段が右から左へくだり、折れてやや右にさがる。カメラは下から見上げていたのが2人の動きを追って上から見下ろす形になります。
 階段の下、右手に戸棚があり、マデリンはそこから鍵を取りだしすぐ前の扉を開く。扉のすぐ先には鉄格子がはまっています。その奥が納骨堂です。マデリンの曾祖父母、祖父母、父母の棺に加えて兄と自分の分まですでにあるという。話していると祖母ミリアムの棺が転げ落ち、骸骨をさらけだします。なお地下下りというモティーフは、『黒猫の棲む館』を除く連作全てで登場することでしょう。


 ロデリックとフィリップがバルコニーに出ます。カメラは上から見下ろす。下は沼です。ロデリックが生まれる前の昔は豊かな池だったといいます。それがある時異変が起こった。一族の悪行の報いだとロデリックは語ります。なおバルコニーという空間は、毎回ではないにせよ、以後の連作で何度か登場することでしょう(『恐怖の振子』、『忍者と悪女』、『怪談呪いの霊魂』、『黒猫の棲む館』)。
 屋内、1階の階段広間に面したところにあるようですが、壁に一族の肖像画が飾ってあります。ロデリックは一人一人何をなしたかを物語る。計5人でした。ロデリックの部屋にあった館の風景画ではまだ目立ちませんでしたが、人物を描いたものになると、いかにもおどろおどろしい表現主義調で、あまり出来のいい絵とはいいかねます。なお肖像画というモティーフも、毎回ではないにせよ、以後の連作で何度か登場することでしょう(『恐怖の振子』、『姦婦の生き埋葬』、 『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』第1話「怪異ミイラの恐怖」、『忍者と悪女』、『古城の亡霊』、『怪談呪いの霊魂』)。
 アッシャー家は英国の出身で、後にアメリカに渡ってきたこともわかります。ロデリックは屋敷自体が悪意を抱いているのだといいます。暖炉の火がはねたのも、シャンデリアが落ちたのも、回廊の手すりが外れたのも偶然ではない。
 フィリップは何としてもマデリンにこの家を出ようと誘う。手もとのソフトではマデリンの顔が右で切れていますが、これはトリミングのせいでしょう。
 ところがマデリンは死んでしまう。礼拝堂です。手前下辺に沿って横たわるマデリンが大きく映されます。その向こう、左にフィリップ、右奥に執事がいる。執事の右手前にはロデリックがいるのですが、手もとのソフトでは映っていない。もともとそういう構図なのかトリミングのせいなのか、今のところわかりません。右手の壁には〈十字架の留〉を描いた油絵が2点掛かっています。その左、奥まったところにもう1点見える。マデリンの指がかすかに動くのですが、ロデリックは急いで柩の蓋を閉じてしまいます。
 3人で柩を地下へおろします。階段をおりていくさまが上から見下ろされます。3人が去った後、悲鳴が響く。


 館の外観が挿入されます。霧が下から上へのぼっていきます。
 フィリップは階段をおりて厨房に入ります。執事に別れを告げにきたのです。話の中で一族に仮死に陥った者がいたことを聞いて、厨房を飛びだす。カメラは少し斜めになっています。階段の左手、奥の右の扉から出てきます。少し手前にある左右の仕切りの左に走る。そちらが地下への入口のようです。
 フィリップは地下への階段を駈けおり、戸棚から鍵を出し、扉に向かう。カメラは下から見上げていたのが水平になります。1カットです。
 柩の錠を壊して蓋を開けると、中は空なのでした。ただちにロデリックの部屋へ急ぐ。ロデリックはマデリンが秘密の場所 secret place にいるという。フィリップはまた2階から1階への階段を駈けおり、続いて地下へ走ります。カメラは上から見下ろす。

 執事がフィリップを部屋へ連れ戻します。眠りに落ちたフィリップは夢を見る。フィルターか照明か、画面は青く染まっています。下半には霧がたなびいている。正面奥に階段が見え、そこをおりてきます。右へ進む。壁には下向き三角やアーチ、縦長の方形の影が落ちています。そこをフィリップの影が横切っていく。背を向けて奥へ進む。先には縦長の方形があります。ピントはややぼけている。階段をおり、右手の礼拝堂に入ると、肖像画で見た一族の人々が群らがっています。青い画面に人物は紫がかったピンクです。なお悪夢などで惑乱する場面は、毎回ではないにせよ、以後の連作で何度か登場することでしょう(『恐怖の振子』、『姦婦の生き埋葬』、 『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』第2話「黒猫の怨霊」『赤死病の仮面』、『黒猫の棲む館』)。

 何度目かの館の外観が挿入されます。今回は稲光つきです。
 フィリップは目覚め、リュートの音を聞いてロデリックの部屋に向かう。カメラは下から坐るロデリックをとらえ、その背後をまわるフィリップとともに左から右へ振られます。
 フィリップはまた地下へおりる。柩群が荒らされていました。壁に隠し扉を発見します。一緒に来たロデリックは上へあがってしまいますが、執事が追ってきます。奥に柩があり、血がついています。隠し扉をあけると階段があり、左上へ湾曲しています。執事は隠し通路 secret passage に入るのは屋敷に詳しい者でも危険だといいます。何てすてきなんでしょう。
 階段を駆けあがるフィリップの足もとがアップになります。これはいけません。ちゃんと階段を引きで映してほしいところです。石壁の廊下をフィリップが奥から手前に進んできます。これはよろしい。隠し通路はちゃんとある程度の引きで映しましょう。
 ロデリックが戻った自室では嵐で窓が開きます。イーゼル上の絵は、不定形の中に顔らしきものが見えます。
 再び階段をのぼる足もと、廊下を奥から手前に進むさま、ここでは顔がアップになります。そしてまた階段のアップです。隠し通路が長いことが伝えられる点をもってよしとしましょう。
 通路を左に折れると、壁に隠し扉の出口があります。そこを出ると大階段の下でした。すぐに肖像画の間です。床に続く血痕を追って扉を開けると、形相の変わったマデリンに首を絞められます。執事は壁が崩れ始めたという。
 館の外観をはさんで、ロデリックの部屋では暖炉の火が床に飛び移ります。下からの壁のショットが再登場、裂け目の奥で炎が走ります。執事はフィリップを助けようとした後、天井が焼け落ちてくると、もつれあうマデリンとロデリックの方へ走ります。焼け落ちる天井の格子は、まず真下からとらえられ、次いで斜め下から映されます。このショットは以後のポー・シリーズで何度も再見することになるでしょう(「怪異ミイラの恐怖」、『忍者と悪女』、『怪談呪いの霊魂』、『黒猫の棲む館』)。
 複数の叫びが響きます。フィリップは階段をおります。肖像画に火が移ります。
 館の外です。アッシャーの表札がある門柱と右手の格子扉が映ります。館全体に火が回る。また斜め下から炎上する天井の格子を見上げるショットがはさまれます。館の外観に戻ると、上階は燃え落ち、奥からフィリップがよろよろと出てきます。足もとは霧に覆われている。左には鷲の石像をいただいた柱が見え、次いで表札のある門柱と格子扉が映る。
 火が鎮まります。左手前に鷲像の柱が映りこんでいます。奥では館が沼に音もなく沈んでいく。地面はやはり霧が敷きつめられています。画面は緑がかっている。この作品ではクレジットはエンド・マークの後で掲げられるのでした。

Cf.,  北島明弘、『映画で読むエドガー・アラン・ポー』、2009、pp.80-84

ロジャー・コーマン、ジム・ジェローム、石上三登志・菅野彰子訳、『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか-ロジャー・コーマン自伝』、早川書房、1992、pp.123-130
原著は
Roger Corman with Jim Jerome, How I Made a Hundred Movies in Hollywood and Never Lost a Dime, 1990
こちらそちら、またあちらこなたそなたあなたここそこでも挙げています

マーク・ジャンコヴィック、『恐怖の臨界 ホラーの政治学』、1997、pp.124-127

原作等については→『アッシャー家の末裔』(1928)のページ

また;

石川三登志、『吸血鬼だらけの宇宙船』、1977、pp.172-193:「ビックリ箱の中の悪夢〈ロジャー・コーマン論〉」
こちらそちら、またあちらでも挙げています

ホラー・ワールド』、no.1、1980.3、pp.60-63:「ロジャー・コーマンのB級世界」

北島明弘、「ロジャー・コーマン&AIPの全て」、The Horror Movies, 1、1986、pp.129-138
本作について;p.139、また→こちら(『古城の亡霊』)そちら(『恐怖の振子』)あちら(『姦婦の生き埋葬』)ここ(『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』)でも挙げています


José María Latorre, El cine fantástico, 1987, "Capítulo 22 Poe, entre Corman y Fellini" より pp.349-362
同じ章から→こちらにも挙げました

さらに;
トム・ウィーバー、那智史郎訳、「偉大なるヴィンセント・プライス」、『日本版ファンゴリア』、no.1、1994.9、pp.60-64

Joel Eisner, The Price of Fear. The Film Career of Vincent Price; In His Own Words, Black Bed Sheet Book, Antelope, CA, 2013
序文(pp.i-ii)はピーター・クッシング(→こちらにも挙げておきます
『アッシャー家の惨劇』については pp.91-96
また→こちら(『恐怖のロンドン塔』1939版)そちら(『呪われた城』)あちら(『肉の蝋人形』)こなた(『恐怖の振子』)そなた(『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』)あなた(『恐怖のロンドン塔』1962版)ここ(『忍者と悪女』)そこ(『怪談呪いの霊魂』)あそこ(『赤死病の仮面』)こっち(『黒猫の棲む館』)そっち(『バンシーの叫び』)でも挙げています。
余談になりますがプライスは1976年、The Devil's Triangle (監督:Richard Winer)というドキュメンタリー映画にナレーションを当てているとのことで、タイトルからうかがえるようにキング・クリムゾンの曲(→こちらも参照)を用いたらしい(p.180)。


なおポーについては→「viii. エドガー・アラン・ポー(1809-1849)など」(<「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」<「宇宙論の歴史、孫引きガイド」)も参照

コーマンについて;
『コーマン帝国』、2011、監督:アレックス・ステイプルトン


本作の一部場面が挿入されるのが;
『マッドハウス』、1974、監督:ジム・クラーク
こちらで少し触れました

おまけ  Deep Purple, "Vincent Price"(邦題:ディープ・パープル、「ヴィンセント・プライス」、Now What?!, 2013(『ナウ・ホワット?!』)所収)
なる曲のミュージック・ヴィデオを見る機会がありました。遊園地か何かのお化け屋敷に若い男女のカップルが入ったところ、待ち受けていたのは……というものです。ただしヴィンセント・プライス似(?)は吸血鬼、その他にフランケンシュタインの怪物やミイラ男など、登場するのは1930~40年代のユニヴァーサルの怪物たちなのでした。
 
 2015/3/26 以後、随時修正・追補
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