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忍者と悪女*
The Raven
    1963年、USA 
 監督   ロジャー・コーマン 
撮影   フロイド・クロスビー 
 編集   ロナルド・シンクレア 
 プロダクション・デザイン、美術   ダニエル・ハラー 
 セット装飾   ハリー・リーフ 
    約1時間26分 
画面比:横×縦    2.35:1** 
    カラー 

一般放送で放映
* 下掲の石川三登志「ビックリ箱の中の悪夢〈ロジャー・コーマン論〉」、p.178 には「又は『大魔城』」とあります
** 手もとの録画では1.33:1
………………………

 上記のように放映時画面左右が半分近くトリミングされていることになり、この映画を見たとはとても言えたものではなく、加えて電波状態が悪い時、VHSに3倍録画したという態なので、きちんと見るのはまたあらためてとなってしまいますが、ご容赦ください。

  『アッシャー家の惨劇』(1960)、『恐怖の振子』(1961)、『姦婦の生き埋葬』(1962)、『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』(1962)と続いてきたコーマンのポー連作が、『恐怖のロンドン塔』(1962)をはさんで再開した作品です。『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』の第2話「黒猫の怨霊」の出来に満足したコーマンは、脚本のリチャード・マシスンとともに今回も喜劇仕立てで作りあげました。音楽もレス・バクスターが続投しています。ユニヴァーサルの『大鴉』(1935)同様、原作とされた長詩は引きあいに出されるものの、お話は独自に考えだされたものです。もっともポー自身、笑劇(ファルス)を何作も残していることは思いだしておいていいかもしれません。
 主演はヴィンセント・プライスですが、「黒猫の怨霊」に続いてピーター・ローレが引っかき回してくれます。何よりボリス・カーロフが間の抜けた悪役で登場するというだけで喝采ものでしょう。カーロフは1887年生まれなので、製作当時75歳だったことになります。また『姦婦の生き埋葬』に続いてヘイゼル・コートが悪女役を生き生きと演じています。加えてポー連作に先立つコーマンの『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1960)にちょい役で出ていたジャック・ニコルスンが(その前にはコーマン製作の『クライ・ベイビー・キラー』(1958、監督:ジャス・アディス)で主演していたとのことです、未見)、ローレ扮するベドロ博士の息子役で出演します。カーロフとニコルスンは本作の姉妹篇『古城の亡霊』(1963)にも続投しました。ニコルスンは後に『イージー・ライダー』(1969、監督:デニス・ホッパー)などを経てすっかり名優になってしまいましたが、『シャイニング』(1980、監督:スタンリー・キューブリック)や『ウルフ』(1994、監督:マイク・ニコルズ)といった怪奇映画にもちゃんと出ています。
 さて、これまでのポー連作では『アッシャー家の惨劇』、『恐怖の振子』、『姦婦の生き埋葬』、『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』の第1話「怪異ミイラの恐怖」、加えて『恐怖のロンドン塔』のいずれも、冒頭で城なり館に主要人物が到着し、その後城内を主な舞台として物語が展開しました。『姦婦の生き埋葬』と『恐怖のロンドン塔』だけはクライマックスを別の場所に持っていっていますが、占める時間の比重は大きくはありません。対するに本作では、主な舞台が2つに分けられ、その間を移動場面でつないでいます。第1部にあたるプライス扮するクレイヴン博士の屋敷は、外観こそ出てきませんが、暗い廊下や納骨堂を含む地下室をちゃんと備えています。カーロフ演じるスカラバスの城が登場するのは約35分経ってからで、以後はここが舞台となります。また本作で起こる事件は一夜の内に最後までひた走り、日中の場面がありません。そのためもあってか、画面は暗さの点で一貫しており、手もとにある画質の粗い録画ではよくわからないところも少なくないのですが、それにもかかわらず全篇は狂躁的な多幸感に浸されているような気がするのでした。


 映画はカチコチいう時計の音から始まります。『恐怖の振子』同様のたらしこみにプライスのナレーションがかぶさり、やがてアニメーションによる鴉のシルエットが現われる。と思うとこちらも『恐怖の振子』と同じ打ちよせる波のショットに換わり、蓋が半開きになった柩をはさんで(『アッシャー家の惨劇』からだったか『恐怖の振子』からか)、2つの塔と欄干のある城を下から見上げる、やはり『恐怖の振子』で用いられたショットが挿入されます。仰角近接版で、窓に灯りがともっています。
 次いで暗い室内で、空中に光線による鴉のシルエットを魔法で描くプライスの登場です。始めから超自然現象を出し惜しみしません。彼は部屋を出て左から右へ進みます。カメラもそれを追う。部屋の外も暗い。手前に何本か柱が立つ向こうを通ると、先に柩が置いてあります。目をあげれば肖像画がかかっている。いささか粗い筆致です。双方死んだ妻レノーアのものなのでした。そこに娘のエステル(オリーヴ・スタージェス)が顔を出します。エステルにとっては義母に当たるということです。
 書斎に戻ると、机の上に小さな天球儀が見えます。ノックの音に扉の外をのぞきます。見回すとカメラが左から右へ振られる。暗いのですが、向かいに右上がりの階段がちらりと見えます。誰もいないので室内に戻る。と窓の外に鴉がいました。
 中に入れると鴉は人語を喋り、ワインを所望します。そしてもとの姿に戻せという。なお会話の中でこの家は菜食主義であることがわかります。鴉を人に戻すための魔法は知らなかったのですが、鴉が指定する材料は地下の父の研究室にあるかもしれない。20年入っていないとのことです。

 広間が上から見下ろされます。右から左へ進む。手前に2階のものらしき手すりが映りこんでいます。次いで手前の格子戸を通して、奥から出てくるさまがとらえられます。暗い廊下を右から左へ進むと、先に扉があります。
 入れば地下への階段です。カメラは下から見上げる。恒例の地下降下となります。右上から左下へくだり、一度折れます。最初は背中が映っていたのが、踊り場で前向きになる。少し進んで、また半階分ほどのくだり階段があります。この間にカメラは右から左へ動き、下に着く頃には上から見下ろす角度になっています。
 実験室の棚に残されていた埃だらけの壜類から怪しげな成分を選びだし、薬が調合される。飲むと鴉は人間になります。ベドロ博士(ピーター・ローレ)と名乗り、この時点でプライス演じる人物の名がクレイヴン博士だとわかる。後に上の名がエラスマスであると知れる。ベドロはロンドンの魔術学会で会ったことがあるという。魔術協会会長のスカラバスともめたため鴉に変えられたとのことです。と気づけば腕が鴉の翼のままでした。
 薬を調合し直すことになりますが、死人の髪が品切れです。地下の納骨堂に父の遺体があるのでそこから取ろうということになり、左へ向かいます。扉を出て右へ、先に格子戸がある。そこから入って右へ進む。手前にある数本の柱の向こうを通ります。先にある扉から入り、右から左へ進む。手前に格子があり、奥の方にも別の格子が見えます。その先に父の柩がある。なお途中の会話で、父が27年間会長を務めたこと、ベドロを鴉に変えた魔法をスカラバスは手を動かすことで操った、手の魔法は最高の術であることが語られます。
 さて、父の柩には"RODERICK CRAVEN / 1423-1486"とあります。実験室に20年入っていなかったとのことでしたから、物語は1506年以降、16世紀の初めに起こったわけです。『恐怖の振子』の時代設定より40年ほど前、盛期ルネサンスであります。とまれ柩の蓋を開けるとミイラが眠っています。のぞきこむクレイヴンの背後の壁には曲線紋様の影が落ちています。クレイヴンが髪を切っているとミイラの手が動きだし、首をつかんで引き寄せては「用心しろ」と囁く。

 ベドロの腕は無事元に戻り、書斎で祝杯をあげます。机の上に妻の小さな肖像がありました。こちらは写真です。2年前に死んだとのことですが、ベドロは城で会ったという。2人は左奥の扉から出てきます。カメラはかなり上から見下ろしています。奥から手前へ進んでくる。柩を開けるとミイラがあります。でもベドロは会ったといいはる。クレイヴンはもしや魂をスカラバスに操られているのではと疑います。
 なおこの作品では2度柩が開かれ、2度ミイラが登場したことになります。ちなみにミイラはこれまでのポー連作で『恐怖の振子』、『姦婦の生き埋葬』の冒頭、『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』の第1話「怪異ミイラの恐怖」と3度出てきました。最初の2つは〈早すぎた埋葬〉による苦悶を示しています。また『アッシャー家の惨劇』と『姦婦の生き埋葬』後半では柩なり納骨堂から骸骨が転がりだします。朽ち果てた屍が不可欠とでもいわんばかりなのでした。ただし連作外の『恐怖のロンドン塔』では人はぼんぼん死に亡霊もたくさん出てきますが、年ふりた亡骸は映されませんでした。
 とまれクレイヴンは禿頭の召使に馬車の準備を頼みます。その間広間がまず上から見下ろされ、次いで水平になると、階段の手すりの影が奥の壁に太く落ちています。クレイヴンが玄関に向かうと扉がいきなり開いて気を失なってしまう。戸口に現われたた召使は斧を手にベドロとエステルを追い回す。気がついたクレイヴンは指先から緑の交線を発して召使を気絶させます。召使は息を吹き返すと何も憶えていません。
 3人が玄関に向かうとまた扉がいきなり開きます。今度はベドロの息子レックスフォード(ジャック・ニコルスン)でした。母の使いでベドロを迎えに来たのですが、ともにスカラバス城へ行くことになる。
 レックスフォードが馬車を御し、エステルは乗車席は嫌いだと御者台にあがります。馬車は海辺の道を右から左へ走る。召使が操られたらしいという話をしていると、レックスフォードも顔つきが変わって馬車を疾走させます。崖沿いの道を奥から右手前に走るさまがマット画との合成で挿入されたかと思うと、また海辺の道を右から左へ走る。


 かくして約35分、城の登場です。画面左に城が配され、右半を水平線が伸びています。右から小さく馬車がやって来る。城門に灯りがともり、その右上に尖り屋根の塔があります。城門の上が本丸で、その上にも塔をいただいている。マット画です。水平線の上辺沿いは仄かに明るく、その上は暗い雲に覆われています。
 気を取りもどしたレックスフォードが見上げると、また別のマット画です。かなり下から見上げた全景で『恐怖の振子』からの使い回しにほかなりません。一行は手前で馬車からおり、左へ進みます。また『恐怖の振子』からの仰角ショットで、今度は近接版です。2つの塔と欄干、灯りの点された窓に、雲が空を流れていきます。

 城門から濠にかかる橋が真横から引きでとらえられる。一行は右から左へ渡っていきます。左端が城門です。橋の真ん中あたりには2本の角柱が立ち、左側には斜めの支え柱がついています。角柱の右手に篝火がある。右の岸にはねじくれた葉の落ちた木々が見えます。橋の向こう側が仄かに明るい。
 4人は暗い通路を右奥から手前へ出てくる。カメラの前を横切って左へ進みます。先に玄関扉がある。ぎ~と軋みながら自動で開きます。向こう側には奥へ向かってゆるい尖頭アーチが2つ、その奥に少し尖った尖頭アーチが連なっている。さらに奥、中央に大きな火床があり、炎を高く燃え立たせています。その向こうで幅広の階段が上へ、踊り場で右に折れている。なお仮に火床と記しましたが正確には何と呼べばよいのでしょうか、部屋の床に設けられたこうした設備には『黒猫の棲む館』(1964)で再会できることでしょう。
 4人が入ると扉は自動で閉じます。右側に燭台があり蠟燭は赤い。『姦婦の生き埋葬』、「怪異ミイラの恐怖」に続く赤蠟燭の登場です。この後に出てくる蠟燭も皆赤でしょう。
 奥の上から見下ろすと広間の火床の周囲には外向きのグリフォンの石像が四方に配してあります。4人は中へ入っていきます。カメラは水平になって右から左に動く。手前の火床越しです。カメラが急速に右から左へ振られると、スカラバス(ボリス・カーロフ)のアップになる。約39分にしての登場です。さすがに年をとっています。スカラバスは階段の踊り場、右寄りに立っている。踊り場の奥は窓になっており、また階段の右手には暗い半円ア-チが見えます。スカラバスはおりてきます。
 スカラバスはクレイヴンに挨拶します。カーロフは朗々とした口調で話す。切り替わると手前にクレイヴンとベドロの背が配され、スカラバスは前向きになる。手もとの録画では背後いっぱいを左下から右上への階段が占めています。かっこうのいい構図でした。ただしトリミング如何で実際は今のところ不明です。階段の踏面には光があたり、蹴込みは暗く沈んでいます。
 スカラバスは父ロデリックと親友だったと語りますが、クレイヴンは信じない。がっくりしたスカラバスが腰かけることで、火床のグリフォンとグリフォンの間がベンチになっていることがわかります。
 クレイヴンの背後で暗い廊下が奥へ伸びています。そこから女が現われる。クレイヴンは妻のレノーアかと思いますが、小間使いでした。けっこう綺麗ですがここにしか登場しません。
 一行は食堂に移動します。といっても別の部屋ではなく、広間の一部に長テーブルが置いてあるのです。奥に階段、左に火床が見えます。階段の左の壁には大きな綴織がかけられ、婦人たちが描かれているようですが、よく見てとれませんでした。
 ベドロがスカラバスに挑みます。ベドロは道具で魔法を使うのです。杖を振るいますがスカラバスに軽くあしらわれる。鞄から球形の枠を出します。球は回転し内側で火花が散る。スカラバスがこっそり指を動かすと雷が鳴ります。ベドロの球は勢いを増しますが、空から窓越しで稲妻が落ち、ベドロが消えたかと思ったら床に残っていたのはジャムでした。


 斜め下からの城の外観が挿入されます。全景ですが前回とは角度が異なり、左に寄っています。雷つきです。
 エステルはクレイヴンの部屋の前でおやすみをいい、左へ進みます。向こうから格子戸を開けて手前を右へ行く。カメラも左から右へ動きます。少し進むと、奥は廊下で、方形台座に太い円柱が3本、左側の壁の少し前に立って奥に続いています。突きあたりには階段が見えます。エステルの立つ位置から階段へまっすぐ絨毯が伸びて奥行きを強調しています。
 さらに右へ行くと、すぐ奥に壁が来て、先に扉がある。入るとレックスフォードが待っていました。2人で出ようとすると扉に錠がおりています。レックスフォードは奥の壁上方にある窓から抜けだします。見下ろすとかなり下で岩だらけの岸に波が打ちよせている。壁に張りだした梁を伝って右に行きます。
 一方クレイヴンが部屋にいると軋むような音が聞こえてくる。扉から外をのぞきますが何もありません。冒頭と同じパターンです。戻って振りかえると窓の格子の外にレノーアの姿がありました。窓の外はバルコニーです。右へ行きますが見つかりません。
 今度は壁の隠し扉からレノーアが出てきます。スカラバスの部屋でした。残念ながら隠し通路の内部は映されません。スカラバスはお前の冷たさが気に入っておるといい、レノーアは分かってると思うけどあなたに惚れたわけじゃない、金と魔力に惹かれたのだといってのけます。2人は一枚岩ではないようです。ヘイゼル・コートはしゃきしゃきした口調で語ります。レノーアはここに来て2年になるとのことです。
 他方レックスフォードは蔦を伝って地面におります。ということはエステルやクレイヴンに割り当てられた部屋は2階にあったわけです。先にちらりと映った廊下奥ののぼり階段は、3階へ通じていることになる。レックスフォードはそばの窓から中に入る。すると口を塞がれ、格闘になります。ベドロでした。スカラバスに死んだと見せかけたんだといいます。2人が左奥の扉から出て、左を見ると奥に廊下が続いている。左右に方形台座つきの太い円柱が並んでいますが、先だって登場したものと違って突きあたりは窓です。ただ床にはやはり手前から奥へと絨毯が伸びています。この廊下は1階にあることになる。廊下の奥に小さくスカラバスとレノーアがやってくるのが見えます。ベドロはレックスフォードを右手の小さな尖頭アーチの方に行かせます。奥に続いているようです。自分はもとの扉に戻る。こちらも尖頭アーチをいただいています。スカラバスとレノーアもこの部屋に入っていきます。
 レックスフォードは奥に階段の見える方の2階廊下の手前を右に曲がります。エステルが閉じこめられた部屋から彼女を出し、廊下を階段の方へ進もうとする。しかしエステルは父もと、左へ向かいます。
 スカラバスとレノーア、ベドロは密談中です。ベドロは12月の寒空を鳥として飛ぶのは寒かった、しかも鷹に3度も狙われたと愚痴をこぼします。とまれ12月なわけです。
 クレイヴンたちは左から格子戸を開けて右へ、2階廊下奥の階段の方へ行きかけますが、ベドロを救わねばとまた戻って今度は右へ向かいます。
 スカラバスたちは扉から出て左の廊下を奥へ進みます。階段ではない、1階の方です。
 階段をおりるクレイヴンたちが上かつ横からとらえられます。おりて左から右へ進む。手前にグリフォンの火床が映りこむ。いつの間にやら階段の踊り場に立つスカラバスが下から見上げられます。クレイヴンは魔法で石化してしまう。また踊り場が見上げられる。スカラバスにレノーアが抱きつく。右上の階段の途中にはベドロがいます。


 地下でしょうか、位置のよく分からない部屋です。向こう側が牢になっているようで、クレイヴン、エステル、ベドロ、レックスフォードの4人が縛られて横に並んでいます。格子もあります。壁からはグリフォンの浮彫が突きでており、その口に火がともっている。スカラバスと召使が1人います。これで登場人物はすべて顔見せしたことになります。主要人物6人に召使い3人と相変わらず少ない。レノーアが快活です。ベドロは自分だけ助けてくれという。スカラバスは裏切りぶりに感動して、彼をまた鴉に変えてしまいます。エステルがさらし台につながれる。鴉になったベドロがレックスフォードのところに現われる。ベドロ鴉が逃げたと思ったかと問うと、レックスフォードは父さんならやりかねないと答えます。ベドロ鴉に縄を解いてもらったレックスフォードはクレイヴンを解放し、召使を椅子でノックアウトします。それを見たスカラバスは指から青光線を発する。クレイヴン対抗して緑光線です。2色の光線が交錯します。2人の手前にはグリフォンつきの柱があり、左奥に尖頭アーチの扉が見えます。押されたスカラバスは「充分だ」といって決闘を提案する。

 舞台は広間に替わります。かなり上から見下ろされる。スカラバスとクレイヴンは向かいあって後ずさり、椅子に坐ります。魔術合戦の始まりです。台詞のないパントマイムで、随所で斜め下からのアップがはさまれる。カーロフとプライスは終始きまじめな表情を崩しません。合戦の模様は実物でご確認ください。何の意味もない狂想曲はそのばかばかしさゆえ大いに楽しめます。本作品では恒例の惑乱場面が見当たりませんでしたが、この魔術合戦がそれに対応していると見なすこともできるかもしれません。
 エステルにレックスフォード、レノーアは階段だか回廊だか、文字どおり高見の見物です。最後に光線合戦が始まるとカメラは斜めになり、城は炎上、天井も崩れだします。クレイヴンが優勢と見るやレノーアは階段を駈けおり、「操られていたのよ」と快活にいいます。クレイヴンはさすがに相手にせず、彼女を放って他の2人+鴉と出口に急ぐ。追おうとするレノーアをクレイヴンが抱き留めます。下から炎上する天井の格子を撮った『アッシャー家の惨劇』でのフィルムが使い廻される。
 城に到着した時と同様、濠にかかる橋を真横から引きでとらえたショットとなります。今回は左から右へ走る。左で城に炎が立っています。また『アッシャー家の惨劇』ショットがはさまれる。さらに引きで左に城のシルエットが映され、背後に炎が立ちのぼっています。右の地平線はわずかに右上がりになっているように見えます。こちらも構図は城に到着した時と同じです。『アッシャー家の惨劇』、「怪異ミイラの恐怖」に続いて連作で城が最後に燃えあがるのは3度目ですが、いずれも建物の後ろで火が燃えるのは合成の都合なのでしょうか。
 3人は馬車で去ります。崩れた城内で瓦礫の下からレノーアとスカラバスが這いだします。今回は誰も死ななかったわけで、よかったよかったというところでしょうか。レノーアがドレスを何とかしてよというのがまた素晴らしい。スカラバスはできなくなったと答える。下掲の『自伝』によると性的な意味がかけられているとのことです(p.134)。


 最後はクレイヴンの屋敷に戻ります。鴉のままのベドロは相変わらず減らず口を叩いています。クレイヴンは鴉の口を閉じさせ、ポーの詩にあるリフレイン"Nevermore"を唱えるのでした。
 本作でもキャスト、スタッフのクレジットは最後に流されます(『姦婦の生き埋葬』、それに『恐怖のロンドン塔』では冒頭)。この部分での音楽はサーカス風でした。

Cf.,  北島明弘、『映画で読むエドガー・アラン・ポー』、2009、pp.90-93

ロジャー・コーマン、ジム・ジェローム、『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか-ロジャー・コーマン自伝』、1992、pp.133-138

石川三登志、「ビックリ箱の中の悪夢〈ロジャー・コーマン論〉」、『吸血鬼だらけの宇宙船』、1977、pp.185-187

Joel Eisner, The Price of Fear. The Film Career of Vincent Price; In His Own Words, 2013, pp.132-136
 

原作等については→『大鴉』(1935)のページ

なおポーについては→「viii. エドガー・アラン・ポー(1809-1849)など」(<「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」<「宇宙論の歴史、孫引きガイド」)も参照

本作の一部場面が挿入されるのが;
『マッドハウス』、1974、監督:ジム・クラーク
こちらで少し触れました

 2015/4/8 以後、随時修正・追補
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