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恐怖の振子
The Pit and the Pendulum
    1961年、USA 
 監督   ロジャー・コーマン 
撮影   フロイド・クロスビー 
 編集   アンソニー・カラス 
 プロダクション・デザイン、美術   ダニエル・ハラー 
 セット装飾   ハリー・リーフ 
    約1時間20分 
画面比:横×縦    2.35:1* 
    カラー 

一般放送で放映
* 手もとの録画では1.33:1
………………………

 上記のように放映時画面左右が半分近くトリミングされていることになり、この映画を見たとはとても言えたものではなく、加えて電波状態が悪い時、VHSに3倍録画したという態なので、きちんと見るのはまたあらためてとなってしまいますが、ご容赦ください。

  『アッシャー家の惨劇』(1960)に続くコーマンのポーもの第2弾です。脚本も同じリチャード・マシスンとあって、超自然現象が起こらないサイコ・スリラーである点など、前作に通じるところも少なくありません。出だしまで前作を踏襲しています。筋立ての点では『悪魔のような女』(1955、監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)を思わせたりもします。
 他方前作の館はれっきとした古城に昇格し、前回ほどそれと固有の意志を言挙げされるわけではありませんが、この舞台あってこそのお話という点では前回以上の主役ぶりと見なしてよいでしょう。前回に引き続き隠し通路も登場します。


 前作は色つきのもやもやで始まりましたが、本作も冒頭はたらしこみです。前作に続いて音楽を担当したレス・バクスターは、ここでは現代風の無調音楽を鳴らしています。ただしまだタイトル・バックではありませんでした。
 すぐに海辺を走る馬車が映され、乗っている人物が目を上げると、城の外観です。マット画でした。手前の入江をはさんで、海に面した崖の上にそびえています。ほぼシルエットと化している。城壁の上に幾本もの塔を擁する、いかにもいかにもといった感じです。左方から低い山だか丘がくだってきて崖に合流しますが、いずれも緑の見えない荒涼とした土地のようです。手前にぽつんと枯木が立っています。
 馬車は城門までは行ってくれず、入江の手前で乗客はおろされます。続いて岩だらけの浜に打ちよせる荒波を背景に、キャストが挙げられていきます。次いでタイトルのバックは城です。やはり入江越しですが、少し接近しています。ほぼシルエットなのは変わりません。左右の小塔の尖り屋根が目立ちます。先立つショットと合わせ、こちらも連作番外篇の『古城の亡霊』(1963)で使い回されることでしょう。
 乗客(ジョン・カー)が荒地から門に向かうさまが上から見下ろされます。ノッカーを叩くと応対する執事(パトリック・ウェストウッド)に追い返されそうになる点は前作そのままでした。すぐに現われた主人筋らしき女性(ルアナ・アンダース)に自分は英国から来たフランシス・バーナードで、エリザベスの兄だという。女性はキャサリンと名乗り、当主であるニコラス・メディーナの妹にあたります。エリザベスはニコラスの妻なのですが、若くして歿したという報を受け、事情を確かめるためフランシスはやって来たのでした。

 キャサリンとフランシスは前へ進みます。カメラは後退する。奥は石積み壁です。先には吹抜の広間がありました。向かって奥の壁の1階部分には右下から左上へのぼる階段が壁に沿っています。上の方で折れて右上へあがる。段は平石を積んだ態で、幅は狭そうです。手すりもない。あがった先の2階部分にはゆるい尖頭アーチが2つ並んでいます。左のアーチには格子がはまっている。その左、角をはさんで壁が手前に伸びるのですが、アーチと格子の影が左下がりで斜めになって1階の床近くまでかかっています。その下にもアーチつきの扉口が見える。
 2人は広間を突っ切って向かいの壁の中央にある出入り口に向かいます。ここも格子戸がはまっている。玄関側から2人の背を映したカメラは、切り替わると格子戸越しに2人が手前へ来るさまをとらえます。この時奥の玄関側の壁に、角をはさんで両側に大きな窓のあるのが見える。

 格子戸をくぐると暗い空間です。2人は左奥の扉から手前へやってくる。すぐに右下へ何段かおりたようです。カメラは下から見上げます。次いで水平になる。奥の壁に映る2人の影が濃い。カメラは左から右へ動く。ちょっと進んでまた数段あがり、折れて手前へおりてきます。カメラは後退しつつ、左から右へ振られ、2人を見下ろします。階段は湾曲しており、段裏の下が空洞になっています。階段のすぐ奥には円柱があり、この柱を取り巻くように曲がっているのでしょう。半階分ほどで床に着きます。すぐ向かいに格子戸がある。ここまで1カットでした。古城映画ここにありといったところでしょうか。
 格子戸を開けて2人は前進します。2人のアップをとらえつつカメラは後退する。何やら機械音のようなものが響き、フランシスは左手の扉に向かいます。開けようとしたところで向こう側から開かれ、ニコラス(ヴィンセント・プライス)が顔を出します。これも前作と同パターンでした。ただし今回、髪は黒い。
 3人はもとの道筋に戻り、また格子戸に出くわします。入って右に折れる。先の通路は2つほどの低い梁によって横切られています。その先にエリザベスの柩を収めた壁があるのでした。


 岸辺に打ちよせる波のカットに続いて、城の外観です。今度はさらに近づき、かなり下から見上げられます。尖り屋根の塔2つと、その手前に欄干が見える。このショットはポー連作『姦婦の生き埋葬』(1962)、『忍者と悪女』(1963)、『古城の亡霊』(1963)にも流用されることでしょう。
 フランシスの部屋です。扉から見て右の壁に肖像画が2点かかっています。前作での表現主義調とは異なり、今回は比較的写実的ですが、やはり出来がいいとは申しかねます。1点はニコラスそっくりで、父と叔父の似姿だという。反対側の壁には大きな綴織がかけられ、扉の向かいの壁には暖炉があります。
 エリザベスの部屋に案内されます。大きなフランス窓が設けられている。そこで小間使いのマリア(リン・バーニー)と出くわします。紅のカーテンの奥にはエリザベスの肖像画が飾ってあります。
 次は食堂です。暖炉のそばにテーブルがある。キャサリンはふだんバルセロナ在住であることがわかります。食堂は広間とつながっている。向こうの扉口から医師のレオン(アントニー・カーボーン)が来訪します。向かって右の壁の階段が、手前から奥へ数段あがり、折れて左上に上がっている点が見てとれます。階段のある側の右奥に食堂が位置し、広間と食堂の間には奥から仕切り壁が伸びていました。

 日本語字幕によればエリザベスの死因は城の陰惨な妖気だとニコラスが語ります。一同は地下へおりていく。このあたりも前作を踏襲しています。ニコラスが先頭で松明を手にしています。機械音のした扉に入る。壁沿いに数段おります。そこから見下ろすと、下方の奥に2つ幅広の半円アーチがあり、左のアーチにはやはり格子がはまっています。フランシスは拷問室と呟きます。ニコラスの父が使っていたもので、彼は異端狩りで名高かったというのです。
 カメラは水平から下向きの角度になる。ニコラスとフランシスの頭越しに下を見る。また水平になります。右下への段をおりていきます。階段は奥の壁沿いに設けられており、太い円柱の前で手前に、また右下へとおりていきます。右奥には太い梁が上下を分かっている。その向こうに右下へくだる斜めの柱が見えます。下端で右上にあがっており、V字型をなしている。磔台でしょうか。階段をおりた先は左側アーチの格子の手前です。さらに右へまわる。ここまで1カットでした。右側のアーチの向こうでは奥方向に格子が伸びています。
 ニコラスの回想が始まります。画面は最初青く染められ、次いで紫になり、また青、紫と変わっていきます。エリザベスの生きた姿が映しだされます。バーバラ・スティールです。『血ぬられた墓標』(1960)などイタリア怪奇映画の花形女優であります。カメラは斜めになります。ニコラスと医師は広間の階段をのぼりかけるのですが、悲鳴を聞いて駈けおり、地下へ向かう。エリザベスが〈鉄の処女〉に閉じこめられていたのでした。


 岩に打ちよせる波を経て、下から見上げた近接外観が再登場します。今回は窓に灯りがともっています。
 バルコニーでフランシスとキャサリンが話しています。これも前作を思いださせる。ただし今回はすぐ奥に広い窓が見えます。キャサリンの回想が始まります。といっても子供の頃のニコラスの話です。やはり青染めから紫になる。ニコラスが拷問室に入りこんでいると、両親と叔父のバートロミーが入ってくるさまを、カメラは下から見上げます。冒頭の御者と合わせて、今回の登場人物はこれで出そろいました。前作同様少ない。ただし父はプライスの兼任です。父による弟殺しの場面では、赤く染まるとともに、カメラは斜めになり、しかも像が縦にひずんでいます。
 2度にわたる回想場面(後にもう1度出てくる)は、前作での悪夢の場面を引き継いだものでしょう。次の『姦婦の生き埋葬』(1962)にも登場し、これもまたパターンの1つと化しているかのごとくです。後にコーマンが監督する『白昼の幻想』(1967)もその延長線上にあるのかもしれません(といっても昔見たはずの中味はまったく憶えていません)。他方、本サイトでとりあげた作品だけでも『狂恋:魔人ゴーゴル博士』(1935)、『女ドラキュラ』(1936)、『狼男』(1941)、『フランケンシュタインの館』(1944)、『ドラキュラとせむし女』(1945)などで恒例行事のように挿入されたフラッシュバックに対応するものと見なせるでしょうか。


 例によって波の後に城の外観が映ります。夜です。今回は少し離れており、しかしやはり、かなり下からの仰角です。下方には崖の岩が見え、その上に折れ曲がる城壁、そのすぐ内側に隅に塔や小塔を擁した本棟が控えている。マット画ですが石造の質感は読みとれます。前作でも壁の隅が仰角でとらえられ、本作でも何度か接近した下からのショットが登場しましたが、全景を思いきり下から見上げるのはこれが初めてです。約30分のこととなります。このショットは先の近接仰視とあわせて以後の連作でも何度か用いられ(『忍者と悪女』(1963)、『古城の亡霊』(1963)、『怪談呪いの霊魂』(1963))、コーマンといえばこのショットという固定観念を植えつけてくれました。『キャットピープルの呪い』(1944)や『ハムレット』(1948)の方が先行するにもかかわらず、同様のショットにコーマン作品を連想したのもそのせいなのでしょう。たしかコーマン以外の作品でも見た憶えがあるのですが、今のところどの作品だったか思いだせずにいます。

 石積み壁に銘が嵌めてあります。"ELIZABETH MEDINA / 1517-1546"と言うわけで、このお話が1546年か翌年に起こったことがわかります。16世紀半ばといえば美術史上はマニエリスムの時代ですが、これはあまり関係なさそうです。カメラは銘に左から接近する。オーヴァラップして左から右へ動けば、磔刑像が映ります。またしてもオーヴァラップ、拷問室の階段下付近です。やはり左から右へ。今度は広間を左から右へ撫でる。礼拝堂(?)の祭壇が正面からとらえられます。そのままカメラは後退する。また左から右へ、フランシスの部屋で、彼がベッドで本を開いているさまが映されます。
 何かに気をとられたのか、彼は部屋を右から左へ向かいます。カメラもそれを追う。扉から出れば、廊下の向かって左でした。手前へ進むとカメラは後退します。格子越しにすぐ下を見下ろします。後ろからキャサリンも合流します。背後の廊下の右奥から医師も現われる。チェンバロを奏でる音が響いています。ニコラスはチェンバロを弾いたことがないという。
 3人は格子の左側に出て、下り階段へ向かう。フランシスの部屋のある廊下は広間の2階、格子のあるアーチの奥に位置するわけです。階段をおりるさまが前からとらえられます。左に格子、右では奥に尖頭アーチが連なっているさまがのぞきます。ぞくぞくします。その下に左下がりの階段がある。3人はおります。すぐ折れて右下へ、下方で折れて前に出ます。カメラは下から見上げていたのが下向きになり、そして水平に落ち着く。右から小間使いが出てきます。彼女を戻らせて3人は右手前へ、カメラは右へ動く。キャサリンが「ニコラス」と呟くと、カメラは急速に左から右へ走り、ニコラスのアップをとらえるのでした。階段をおりだしてここまで1カットでした。
 フランシスは先にある扉を開きます。窓は閉まっており、他に扉はないという。ニコラスを部屋まで連れていき、3人は廊下を右奥へ向かいます。廊下の突きあたりには祭壇が見える。フランシスの部屋で医師は、ニコラスが妻を早すぎた埋葬に処してしまったのではないかと恐れているのだという。彼の母もまた父によって生きながら壁の墓に封じられたのでした。前作でも〈早すぎた埋葬〉のモティーフは用いられていましたが、それは原作に準じたものだとして、今回再登場、さらに連作次回作の『姦婦の生き埋葬』(1962)では主題にまで昇格します。この固執ぶりには何か理由があるのでしょうか。


 入江越しに下からの城の外観がはさまれます。広間でカメラは少し斜めに、階段の方へ近づいていきます。悲鳴が上がると、カメラは急激に上を向く。右からフランシスが飛びだしてきます。キャサリンがエリザベスの部屋だと告げる。廊下を左から右へ進みます。奥の壁に装飾格子の影が落ちています。カメラも左から右へ動く。フランシスは背を見せ、奥へ向かいます。扉から小間使いが出てくるのと鉢合わせします。カメラは室内を右から左へ撫で、ベッドのところで停止して下を向き床を映す。

 食堂で3人が話していると、騒音が聞こえてきます。3人はエリザベスの部屋へ急ぐ。鍵が閉まっていました。ニコラスの部屋の扉を叩き、鍵をもらってとって返します。室内は荒らされていました。
 部屋に残ったフランシスが肖像画の下の箪笥を動かすと、奥に隠し通路への入口が開いていました。中に踏みこみます。暗い。右から左へ進みます。ニコラスの部屋で他の面子が話していると、石壁が開きます。
 フランシスに追求され、ニコラスは自分がやったのではないかと疑いを抱いてしまう。確かめる方法は1つとニコラスが言えば、医師が墓を暴けとの合いの手です。
 納骨堂でフランシスと医師が銘の嵌めてあった石壁を崩します。こんな風に密封するものでしょうか。ニコラスも作業に加わり、目元がアップになると子供の頃の回想に移ります。青紫に染まっています。奥の壁につながれた母の手前の壁を父が閉ざしているのでした。壁が崩され、向こうの部屋に柩が安置されています。蓋を開けると、苦悶したミイラの姿がありました。ニコラスは「本当だった True! True!」と叫ぶ。


 接近した下からの城の外観がはさまれます。シルエット化しています。雷が鳴っています。
 ニコラスは部屋に飛びこみ、銃を取りだす。キャサリンが駆けつけます。
 離れた下からの城の外観がはさまれます。やはりシルエット化しており、雷が轟く。打ちよせる波に続いて、今度は入江越しの外観です。
 カメラが接近すると、バルコニーが映ります。窓の向こうに医師のいるのが見えます。少し下から、右に大きくニコラスの横顔が陰に浸されているのをとらえる。左から近づく医師がアップになります。次いで少し上からのニコラスのアップに換わる。
 こちらは広間です。画面下辺沿いを暖炉の火が占め、そのすぐ向こうでキャサリンが左から右へ横顔を見せて動く。奥に離れて小さく、左上から右下にさがる階段をフランシスがおりてきて、手前に向かってきます。2人が話した後、同じ構図で今度は小さなフランシスが奥へ戻っていく。
 階段をのぼるフランシスが上からとらえられます。おりてきた医師と話す。

 入江越しの城の外観が挿入されます。やはり雷が鳴っている。
 ニコラスが自室の蠟燭を消していると、呼び声が聞こえる。隠し扉が少し開きます。左右は平滑な石壁で、積み石の区切りの垂直線によって分割されています。開いた部分は真っ黒です。マティスの《コリウールのフランス窓》(1914、ジョルジュ・ポンピドゥー・センター近代美術館、パリ)が連想されたりもするところです。ニコラスは隠し通路に入っていく。奥から手前へ進み、カメラは後退します。
 下からの離れた城の外観がはさまれます。雷つきです。窓と風に揺れるカーテンが映る。片側の窓は開いています。
 ニコラスは奥から来て手前左へ進む。左から右に来ると蜘蛛の巣が通路を塞いでいます。右手前から左奥へ背を向けて進みます。奥の壁には甲冑が立てかけてあります。これは以前フランシスが通った際にも映っていました。
 ニコラスの部屋にキャサリンが入ってくる。左を向くと、カメラはそのまま右から左へとめぐる。隠し扉は閉まっています。キャサリンは部屋を出て、手前から奥に向かう廊下を右奥から左手前へと、斜め向かいにあるフランシスの部屋に行きます。
 ニコラスは左上から右下におりていく。装飾的な格子越しのショットです。これは隠し通路に以前フランシスが通ったのとは別の分かれ道があるということでしょう。すばらしい。隠し通路たるものこうでなくてはいけません。ニコラスは水平に右から左へ進み、背を向けて奥に行きます。奥の方に〈鉄の処女〉が見える。2階から地下までくだってきたことになります。回りこむように進み、奥からアーチを越えれば、手前には崩した壁をはさんでエリザベスの柩がある。
 柩の蓋が少し持ちあがり、隙間から手が出てくる。前作にもあったイメージです。『魔人ドラキュラ』(1931)など吸血鬼映画でお馴染みのものでもありますが、〈早すぎた埋葬〉つながりということで、下のおまけに19世紀半ばのヴィールツの作例を挙げておきましょう。
 シルエットと化した人物が起きあがる。ニコラスが逃げだすと、人物は追ってきます。ニコラスは扉の向こうへ出ます。拷問室に続く階段です。バーバラ・スティールのアップが映されます。以前登場した時は回想場面中で、青だの紫に染められていたので、ここで始めてちゃんと映されたことになります。約1時間2分でした。
 ニコラスは転げ落ち、笑いだすアップが上から見下ろされます。エリザベスもにんまりします。下からのアップです。エリザベスの背中越しに下にいるニコラスが見下ろされます。その体勢のままエリザベスの白い横顔が振り向く。なかなか綺麗です。下から扉を通っておりてくる医師がとらえられます。
 ニコラスを見下ろすカットに換わって、下からの視角で医師が扉を閉め、左から右へ走るさまが映されます。医師とともにカメラも動きます。途中で手前にある円柱越しになる。医師はエリザベスのすぐ後ろに立ってから、さらに下までおりてきてニコラスのもとに急ぐ。カメラは左上から右下に動きます。そしてニコラスの様子を見て「死んだ He's gone」と言う。ここまで1カットでした。
 エリザベスと医師が話しているとニコラスが息を吹き返し、笑いだす。そしてエリザベスと医師に「イザベラ」、「バートロミー」と呼びかけます。ニコラスの父の妻と弟の名前です。まんまとしてやったと思っていた2人は、一転して怯えだします。ここまで一貫して怯えてきたニコラスと攻守逆転となるのでした。
 エリザベスが悲鳴を上げるとともに〈鉄の処女〉の蓋が閉じられます。医師は気絶から醒めて逃げだします。右下から左上へ走る。しかし上で追いつかれ、右下へ突き落とされます。カメラは左上から右下へ動く。
 フランシスが左上から右下へ動くさまが下からとらえられます。ニコラスと医師は争っています。ここは水平です。医師は奥の方へ逃れ、扉を開いて中に入る。しかしすぐに落下してしまいます。下からの仰角です。扉の奥も拷問室上と同じくすぐに階段か通路が吹抜に面していたらしい。
 フランシスが左上から右下へ急ぐ。ニコラスが下から見上げられます。背後の壁は青く照らされています。フランシスは左上から右下へ、右で壁に落ちる影のみになります。

 次の場面ではフランシスが横たわっているさまが上からのアップでとらえられます。下からニコラスが見上げられる。黒頭巾をかぶっています。回想中の父が身につけていたものです。フランシスは縛りつけられています。斜めになった引きのショットに続いて、下からニコラス、上からフランシスと切り換えられます。キャサリンが左から右へ動く。カメラは水平です。
 これらのカットに続いて、真下から三日月状の振子が映されます。『大鴉』(1935)以来の登場と言ってよいのでしょうか。振子が揺れだします。引きとアップが交互に切り換えられ、壁に黒頭巾をかぶった人物のようなイメージがいくつも並んでいるさまが挿入されます。引きでフランシスと振子が上から見下ろされる。キャサリンは広間に戻り、執事に拷問室の扉を壊すよう頼みます。
 揺れる振子の影が壁に落ちる。左上に格子のはまった窓らしきものが見えます。フランシスの目元が上からのアップになる。歯車だけが斜め下からのアップになります。ニコラスが下から歪んで映される。赤く染まっています。フランシスの引きとアップを経て、壁でしょうか、抽象的な緑のひろがりが青紫、黄、青、赤へと移っていく。そして壁と窓になります。上からのフランシスのアップをはさみ、下からの振子は青く、次いで歯車は緑に染まっています。また赤く染まった斜め下からの歪んだニコラスです。ここでの照明による色彩効果は、回想の中の悪夢と映画内の現実が溶けあってしまったことを物語っているのでしょう。

 下からの城の外観が挿入されます。雷は鳴り止まない。
 おりてくるキャサリンと執事が下から見上げられます。2人が飛びこんできてニコラスは執事と格闘となり、突き落とされてしまいます。キャサリンと執事が振子を止めようとするさまが下からとらえられます。フランシスと2人が見下ろすと、振子台のある階よりさらに下があって、そこに医師とニコラスが倒れています。
 3人が出ていくさまをカメラが下から見上げる。キャサリンがここには誰も入らないようにすると宣言すると、カメラは急激に左から右へ動く。〈鉄の処女〉の開口部にエリザベスの見開かれた目元と指の先が映されます。悪者役とはいえむごいことです。『恐怖の精神病院』(1946)でのラストが連想されるところでもあります。コーマンのポー連作では前回のマデリンといい次回作のヒロインといい、女性はろくな目に遭わないようです。
 画面は冒頭のたらしこみに戻り、ポーからの一節を経てクレジットとなるのでした。ここでの音楽はいささか軽快なサスペンスもの風とでもいえるでしょうか。


 前作でも地下の納骨堂は登場していましたが、本作では地下の空間の規模がいちじるしく拡張されています。1階広間から納骨堂までに吹抜の階段を一度おり、次いで拷問室へ行くにも納骨堂と同じ階の扉の奥に吹抜が控えている。さらに拷問室の階の扉をくぐって振子の間にも吹抜があるのみならず、そこからニコラスと医師が落ちた穴が穿たれているわけです。吹抜を単純に2階分とすれば地下6階+落とし穴ということになります。
 もとより撮影に用いられたセットがどんな風だったかというのは別の話になりますが、地下空間の強調は後の『怪談呪いの霊魂』(1963)でさらに展開されることになるでしょう。古城を舞台にした映画で納骨堂だの地下牢が出てくるのは約束事の1つととることもできますが、それにしてもずいぶん強調されているような気がします。『オペラの怪人』(1925)や『女吸血鬼』(1959)のような先例とともに、ゲームにおける〈ダンジョン〉などのイメージが連想されたりもするところです。
 地下への下降には冥界への道行きといった含意がこめられているのでしょうが、それはともかく、コーマンのポー連作において、垂直軸の上下運動が重要な役割を担っていると考えてよいものでしょうか。上でふれた極端な仰角による城の外観のマット画は、ある意味で地下への下降と対をなしていると見なせるかもしれません。他方、恐怖映画とはいえここでの登場人物は空を飛んだりはできないので、下降するにせよ上昇するにせよ階段や傾斜を曲がりくねりつつ辿らなければならない。これが空間の曲折ぶりを保証してくれるわけです。その段取りを省略してしまうと、本作でのニコラスのように文字どおり冥界落ちするほかはない。

Cf.,  北島明弘、『映画で読むエドガー・アラン・ポー』、2009、pp.84-86

ロジャー・コーマン、ジム・ジェローム、『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか-ロジャー・コーマン自伝』、1992、pp.130-132

The Horror Movies, 1、1986、p.142

Joel Eisner, The Price of Fear. The Film Career of Vincent Price; In His Own Words, 2013, pp.96-97

原作等については→『大鴉』(1935)のページ

また〈早すぎた埋葬〉については;
田中西二郎訳、「早まった埋葬」、『ポオ全集 2』、東京創元新社、1970、pp.334-352
原著は
Edgar Allan Poe, "The Premature Burial", 1844
このモティーフを用いた作品として→連作第3弾の『姦婦の生き埋葬』(1962)とともに、ドライヤーの『吸血鬼』(1931)や『吸血鬼ボボラカ』(1945)も参照

なおポーについては→「viii. エドガー・アラン・ポー(1809-1849)など」(<「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」<「宇宙論の歴史、孫引きガイド」)も参照

本作の一部場面が挿入されるのが;
『マッドハウス』、1974、監督:ジム・クラーク
こちらで少し触れました

おまけ  ヴィールツ《早すぎた埋葬》1854

ヴィールツ
《早すぎた埋葬》
1854


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 2015/4/1 以後、随時修正・追補
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