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怪談呪いの霊魂*
The Haunted Palace
    1963年、USA 
 監督   ロジャー・コーマン 
撮影   フロイド・クロスビー 
 編集   ロナルド・シンクレア 
 美術   ダニエル・ハラー 
 セット装飾   ハリー・リーフ 
    約1時間27分** 
画面比:横×縦    2.35:1*** 
    カラー 

一般放送で放映
* VHSソフトの邦題は『呪いの古城』
** 手もとの録画では約1時間24分
*** 手もとの録画では1.33:1
………………………

 上記のように放映時画面左右が半分近くトリミングされていることになり、この映画を見たとはとても言えたものではなく、加えて電波状態が悪い時、VHSに3倍録画したという態なので、きちんと見るのはまたあらためてとなってしまいますが、ご容赦ください。

  コーマンによるポー連作は『アッシャー家の惨劇』(1960)、『恐怖の振子』(1961)、『姦婦の生き埋葬』(1962)、『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』(1962)、『恐怖のロンドン塔』(1962)をはさんで『忍者と悪女』(1963)と続いてきましたが、また姉妹篇『古城の亡霊』(1963)をはさんで、連作第6弾として製作された作品です。ただしこの映画について記される際には必ず触れられるように、物語の原作はラヴクラフトの『チャールズ・デクスター・ウォードの事件』で、原題にもなっているポーの詩は申し訳のようにラストで一部が引用されるばかりです。ともあれタイトル・バックにはラヴクラフトの名もきちんとクレジットされており、下掲「ラヴクラフト/クトゥルー神話映画リスト」からすると本作品がラヴクラフトの映画化第1弾にあたるようです。なお本作で重要な役割を果たす肖像画と地下空間はこれまでの連作でも幾度となく登場しましたが、今回の場合原作に由来するものということになります。
 脚本は『姦婦の生き埋葬』に続いてチャールズ・ボーモント、音楽は同じく『姦婦の生き埋葬』と『古城の亡霊』のロナルド・スタイン。連作外の『恐怖のロンドン塔』と番外篇『古城の亡霊』をのぞいてこれまで連作で撮影を担当してきたフロイド・クロスビーは、続く『赤死病の仮面』(1964)と『黒猫の棲む館』(1964)がイギリスで製作されたため、ポー連作についてはこれが最後となりました。ちなみにクロスビーは『タブウ』(1931、監督:F.W.ムルナウ、言わずと知れた『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)の監督ですが未見)で第4回アカデミー賞、『真昼の決闘』(1952、監督:フレッド・ジンネマン)でゴールデン・グローブ賞を受賞したカメラマンとのことです。
 主演はお馴染みヴィンセント・プライス、ヒロインを「人妻を眠らす妖術」に続いてデブラ・パジェットがつとめる他、本作品ではロン・チェイニー(.Jr,)が出演しています。1940年代のユニヴァーサル映画では当たり役となった『狼男』(1941)のローレンス・タルボット役を始め、『フランケンシュタインの幽霊』(1942)でフランケンシュタインの怪物、『夜の悪魔』(1943)でドラキュラあらためアルカード、『ミイラの墓場』(1942)、『執念のミイラ』(1944)、『ミイラの呪い』(1944)でミイラ男と、ある意味でこの時期のハリウッドの怪奇映画を代表する俳優の1人と言ってよいでしょう。1906年生まれとのことなので、本作品の時には57歳となります。ちなみにタルボット役を演じた最後の作品『凸凹フランケンシュタインの巻』(1948)には、からみこそしないもののラストで透明人間としてヴィンセント・プライスが声だけで出演していました(もう一つついでに、クロスビーが撮影を担当した上記『真昼の決闘』にはロン・チェイニー(Jr.)が出ていました)。
 「黒猫の怨霊」と『忍者と悪女』でのピーター・ローレ、『忍者と悪女』と『古城の亡霊』でのボリス・カーロフに続いて本作でチェイニーと来れば、1956年に亡くなっていたベラ・ルゴシが出られなかったのが残念になるくらいです。たとえば後にTV番組 Alice Cooper: The Nightmare (1975→ウィキペディアの記事参照、見たのは"Welcome to My Nightmare"の部分だけです)やマイケル・ジャクソンのミュージック・ヴィデオ「スリラー」(1982、監督:ジョン・ランディス)、またティム・バートンの「ヴィンセント」(1982、未見)および『シザーハンズ』(1990)などでのヴィンセント・プライスの登用が持っていたであろうオマージュといった意味をコーマンが念頭に置いていたかどうかはわかりませんが、ある種の文化的偶像のあり方云々と理屈をつける以前、素直に嬉しいといっておきましょう。
 余談になりますがプライスに対するオマージュという点では、『スター・ウォーズ』(1977、監督:ジョージ・ルーカス)でのピーター・クッシング(カッシング)とともに、同じくスター・ウォーズ連作『エピソード2/クローンの攻撃』(2002)と『エピソード3/シスの復讐』(2005)、これもティム・バートンの『スリーピー・ホロウ』(1999)他、ピーター・ジャクスンの『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(2001~2003)などなどと、近年ではクリストファー・リーがその役割を引き継いでいます。本人の意向とはずれるのでしょうが、あたかもかつて共演したクッシングやプライス、それにカーロフら怪奇俳優たちの分もあわせて引き受けているかのごとくです。涙せずにいられましょうか(追記:リーは2015年6月11日になくなりました→こちらを参照)。


 話がそれました。本作は闇の中で白く反射する蜘蛛とその糸から始まります。今回はクレジットは前付けです。ここで流れるロナルド・スタインのメロディーはなかなか印象的です。『吸血鬼ドラキュラ』(1958)などにおけるジェイムズ・バーナードの音楽が直線的に切り立った感じだとすれば、大きな塊が左右に揺れるがごとしとでもいえるでしょうか。最後に揚羽蝶が蜘蛛の巣に引っかかる。
 夜、霧に浸された街の通りです。カメラは左から右へ撫でる。手前に街灯がアップで映りこみます。雷鳴も鳴る。酒場の中は何やら不穏な様子です。
 通りを女が一人歩いています。墓場を通る。カメラは左から右へ動きます。酒場にいた男2人がその後を追います。1人はごつそうな顔つきで、レオ・ゴードンが演じている。後にエズラ・ウィーデンという名だとわかります。もう1人はマイカ・スミスで、きょろきょろとしそうな小男です。こちらはエリシャ・クック(Jr.)で、見たような顔だと思ったら『シェーン』(1953、監督:ジョージ・スティーヴンス)でジャック・パランス扮する黒づくめの拳銃使いに挑んであえなく撃ち殺された役の俳優でした。
 ねじくれた枝越しに城の玄関が映り、娘が入っていきます。アップになると目が虚ろでした。後ろから赤フードを黒いドレスの女がはずします。後に名はヘスター(キャシー・マーチャント)と知れます。彼女の視線を追ってカメラが右から左へ速い速度で振られると、ヴィンセント・プライスのアップとなるのでした。後に名はカーウィンと知れます。
 3人は右から左へ進みます。カメラもそれを追う。向こう側には尖頭アーチが3つほど見えます。3人が背を向けると、カメラはやや下から見上げている。先には石積み壁があり、火の消えた暖炉が控えています。その右上で燭台が壁から出ており、蠟燭はお馴染みの赤いものでした。暖炉のすぐ右手の壁で隠し扉が開きます。高さは3人の背より低い。
 切り替わると、奥から隠し扉の出入口を娘、ヘスターがくぐってくる。胸から上をやや下からとらえています。2人は右へ進み、追ってカーウィンもくぐってきます。
 暗い廊下を左奥から手前に出てきます。奥の突きあたりの壁にはアーチがあるようです。3人はそのままカメラの前を横切り左奥へ進んでいく。カメラは右から左へ追います。3人は暗がりと光のあたる箇所を交互に抜けていく。右から左へ、胸から上が真横からとらえられます。手前に立つ柱の向こうを通っていく。右奥から左手前へ、シルエットと化した格子が手前にあります。カメラは少し接近して、下から見上げます。また右から左へ、そのまま手前へ、右上から左下がりの斜線が縞状に影を落としており、3人の上にもかかります。カメラは後退する。いやあ、美しいシークエンスでした。
 壁の前で左を向いて止まります。娘のすぐ手前左の壁には上から鎖が垂れており、そのまた左で壁に縦の溝がうがたれ、その奥でも鎖が垂らしてあります。右の壁には左下がりの斜めの縞の影が落ちている。カーウィンが鎖を引くと溝の奥の鎖はあがり、すぐ右で隠し扉が開きます。やはり背が低い。
 奥から3人が正面へ進んでくる。手前に木製の下り階段があります。カメラが下からに切り替わると、階段が櫓をなしていることがわかります。左上から右下にくだり、少し水平になって右奥へ向かう。この櫓状階段は『古城の亡霊』の末尾近くで登場したものでした。さっそくの隠し通路巡りに続いてさっそくの恒例地下下りです。
 空に稲妻が光ります。かなり上から見下ろす視点に換わります。下辺沿いに横に伸びる石の床が明るく、3人は小さく画面下から上へ進む。すぐ上が暗い帯をなしており、最初は深く凹んでいるのかと思ったものです。そのさらに上では下から上への階段がのぼっています。カメラが下から上へ撫でていくと、階段は壇にあがるためのもので、壇の左右の脇にもそれぞれ階段のあることが見えてきます。壇の上面中央には円形の孔があり格子がはめてあります。壇上、手前左右には柱が立っていて、左のものは上で杯を2つのせており、右のものは少し低く、杯は1つでした。奥にも柱が2本あるようです。その向こうには三角をなす木組みが見えます。
 カメラはやや上から近づき、のぼってくる3人を正面からとらえます。手前では左下がりの縄らしきものが画面を横切っています。ずっと奥の方に櫓ののぼり階段が見え、踊り場で右に折れています。他にも何やらごちゃごちゃしています。カメラが後退すると、上に三角の木組みが枠どりをなします。ヘスターが娘の両腕を左右にひろげて上で縛る。カーウィンは呪文を唱えだします。原作に登場する呪文に応じているのかどうか、確かめるのはまたの課題にしておきましょう。脇の壺に何かを投げこむとぼっと炎があがる。この炎はそのまま村人たちが手にする松明と重ねられます。彼らは右から左へ進む。コーマンのポー連作で始めて、怪奇映画の馴染み脇役、暴徒の登場です。
 カーウィンのアップが上から引きに移り、彼は巻き上げ機を回します。壇の床にある格子が斜めに持ちあげられる。娘のアップになり、自失した表情のままうつむけば、悲鳴を上げる。もやに加えてうなり声のような音がしています。
 村人たちが城の玄関に押し寄せ、「カーウィン!」と叫ぶ。3人が出てきて対応します。娘は生け贄にされたりしたわけではなかったようです。しかしエズラが名を尋ねると答えない。村人たちが玄関の向かいにある木でカーウィンを火あぶりにしようとします。その前にカーウィンは復活と呪いの予言をなします。エズラ、マイカに加えて山羊面のウェスト(ジョン・ディークス)、まともそうなウィレット(フランク・マックスウェル)、そしてギデオンを名指しにします。[ IMDb ]によるとディークスはやはり『シェーン』に出ていた他、『姦婦の生き埋葬』で墓掘り人夫の1人、『忍者と悪女』ではクレイヴンの父のミイラをやっていたとのことです。

 以上をプロローグとして、約12分弱で「アーカム ARKHAM、110年後」と記されます。街路の奥に崖の上の城がのぞいています。双方明灰色の霧に覆われている。馬車が通りに入ってきて、プライスの二役でチャールズ・ウォード、その妻アン(デブラ・パジェット)をおろす。御者はこの村は呪われていると警告しますが、チャールズは超自然は信じないとうそぶきます。酒場で相続したカーウィンの家の場所を尋ねるも何も教えてもらえません。なお曾祖父がジョゼフ・カーウィンだとのことです。チャールズはニューイングランドの人は親切だと皮肉るので、アーカムがニューイングランドにあることがわかります。こちらもレオ・ゴードンの二役であるウィーデンは、あそこは狂人の館、あらゆる罪の宮殿 House of Mad Man, Palace of All the Sins だと言ったように聞こえましたが、はなはだ自信がありません。アンが「宮殿?」と首をかしげると、石を欧州のどこかから運んだとのことです。ちなみに下掲の北島明弘『映画で読むエドガー・アラン・ポー』(2009)によるとアンは"Haunted Palace?"と尋ねたとのことでした(p.93)。これまたディークスの二役でウェストがあそこには100年以上人が住んでいないと言う。
 見かねたのかマックスウェルの二役でウィレット医師が2人を連れだし、村を出て少し行き、墓場を左折すればと教え、崖の上だと指さすと、シルエットと化した城が映される。左右からいくつもの凹凸をなしながら中央にあがっていき、右寄りに上が平らな塔が立っています。画面右上は木の枝で枠どりされているようですが、トリミングのせいかちゃんと映っていませんでした。
 2人が行くと先に馬車の到着を窓からのぞいていたクック二役のスミスが酒場に入っていきます。医師は信じませんが、ウィーデンはジョゼフ・カーウィンが戻ってきたと呟く。

 城のシルエットがはさまれます。やや近づき、下から見上げたものです。相変わらず明灰色の霧が漂っています。
 左から右へ進む2人が上から見下ろされます。切り替わってまた左から右へ進み、カメラもそれを追う。先に玄関扉があります。固まった扉を何とか開くと、向こうは低くなっているように見えますが、実際は水平でした。先に低く、ゆるい尖頭アーチが待ち構えている。約19分ですが、ここから約23分強までほんの4分ほど、無人の城内を2人は探索します。羨ましさのあまりハンカチをかみ切ってしまいそうです。
 背を向け2人は奥へ進む。カメラもそれを追って前進します。入ってすぐの玄関間は暗い。
 アーチを越えると、正面左寄りに暖炉があり、その上に肖像画がかかっています。右の壁にゆがんだ十字の影が落ちている。左にゆるく曲がっていくと、先にやはりアーチがあります。『忍者と悪女』や「怪異ミイラの恐怖」、『古城の亡霊』の場合同様、玄関から少し進めば広間になり、そこから各方向に枝分かれするという布置のようです。
 また右へ戻ります。横向きから背中向きになる。カメラもゆっくり右へ動きます。またゆるく右に曲がります。テーブルに鞄を載せ、少し右へ行きかける。奥に尖頭アーチが見えます。止まって振りかえると、暖炉の上の肖像画が見えます。2人が正面・少し上からとらえられる。奥に太い柱が見え、その右で三角アーチが斜め手前に突きでています。左奥には壁沿いで左下から右上へ階段があがり、少しして踊り場に達する。
 2人は腕を組んだまま手前へ進みます。近づいてくるとカメラは見下ろす角度になり、胸から上をとらえます。アンは肖像があなたにそっくりだと言う。モデルはグリザイユで描かれていますが、背景は暗めの青が平坦に塗られています。人物の背後にねじくれた枝がかぐろく斜めに走っている。人物を描く素描は粗いものの、配色は効果を発揮しています。チャールズは一瞬魅入られたかのような表情を浮かべます。


 2人は台所へ向かいます。左から右へ進むさまが引きでとらえられる。背後、左に尖頭アーチが2つ、その右に低い三角アーチがあり壁に続きます。手前に燭台を載せたテーブルと椅子が大きく映りこんでいます。2人が右手前へ近づいてくるとカメラも右に動く。途中で幅の広いアーチをくぐります。そのままカメラの前を横切り、背を向けて先の扉を開ける。
 中に入って右に進みます。手前に上から吊されたフライパン類のシルエットが大きく映っています。さほど広くはないようです。カメラは右から左へ振られます。アンがオーヴンに触れると開いて中にガラガラ蛇がいる。
 2人は台所を出て右から左へ進み、カメラもそれを追う。向こうに左下から右上へのぼる螺旋階段が見えます。向かって左先にはアーチがある。チャールズはそこは行き止まりだと言います。アンがどうして知っているのか尋ねると想像だと答える。チャールズは右を向き、背を見せて階段の方へ進みます。2人が階段をのぼる。カメラは左から右へ、そして右上へ振られる。途中で手前のアーチの柱越しになり、半階分ほどのぼって少し水平に続き、また右上へあがっていく。カメラはかなり下からの角度に移っています。
 2階の廊下です。幅はさほど広くありません。2人は左奥から出て手前へやって来ます。曲がってきたそのすぐ前にゆるいアーチがありました。画面の手前左右を暗い壁が枠取っています。その手前で2人は左に曲がる。背を向け腰から上がとらえられ、前にある扉を開きます。
 中は暗い。チャールズはカーテンを開こうと右の方へ行きます。アンの前にいきなり左からチェイニー(Jr.)のアップが現われるのでした。約23分強のことです。顔は白っぽく、髪も灰色です。名はサイモンで、管理人だという。右から左へ進み、なぜこんな暗いところにという問いに、暗いのには慣れていると答える。意味ありげです。手前にある寝台の柱越しです。アンがここには泊まらないというと、サイモンはチャールズに向かって、でもここはあなたの家なんですよと言います。

 村の通り越しに城のシルエットがはさまれます。やはり霧つきです。
 外から窓が映され、中に灯りがのぞいています。カメラが接近すると暖炉の火でした。窓越しに男が右側にある階段を背を向けてのぼるさまが下から見上げられます。半階ほど上で左に曲がり、先に扉がある。男はウィーデンでした。扉の向こうの部屋に誰か閉じこめてあるようです。


 チャールズがテーブルに近づくさまが少し引きでとらえられます。本作では引きのショットがやや多いような気がします。背後には角をはさんで尖頭アーチが2つ見える。左のものはアーチが2重になっており、右のものの右下に右上への階段の下方5段ほどがのぞいています。チャールズが手前へ来て、カメラの前を横切り左へ進みます。カメラも右から左へ振られる。暖炉から火をとり煙草につける。見上げるとカメラは下から上へ振られ、肖像画を映します。チャールズは心乱されたかのようで後ろ向きになり、あらためてこちらを向くと表情が変わっています。それを奥の方でサイモンが見ている。

 朝の城が下から見上げられます。やはり霧が薄くたなびいている。右下に柵が斜めになって映りこんでいます。右から上辺へと木の枝が伸びて枠をなしています。
 窓越しにアンが映され、荷造りが出来たというと、やはり窓越しでバルコニーに立つチャールズの背が見えます。返事がないのでアンは手前へ来てフランス窓を越えて右に回ります。カメラも右へそれを追い、しかしカメラだけさらに右へ振られます。下からチャールズのアップがとらえられると、表情が変わっています。背後の壁に蔦が這っている。チャールズは手入れすれば城が売れるだろう、それまで2~3週間いようと言う。アンがでも気味が悪いと答えると、じゃあ帰れと冷たく言い放ちます。とたんに表情は柔らかくなり、すまないと謝る。しかしすぐには帰れない、知りたいことがあると決心を変えません。チャールズは背を向けて室内に入り、アンはやはり背を向けバルコニーに残っています。胸から上が映され、2人とも黒っぽい服を着ている。
 なお、バルコニーは『アッシャー家の惨劇』、『恐怖の振子』、『忍者と悪女』でも登場していました。いずれもちょこっと出てくるだけではありますが、コーマンのポー連作において空間をひろげる脇役の1つと見なしてよいのでしょう。
 テーブルで医師がアーカムは呪われていると言います。怖れと罪悪感に囚われている、ある夜のことだと語る。城でチャールズとアンに話しているのでした。テーブルの上に赤蠟燭の燭台が2つ載っています。150年前カーウィンがここに来た、妻は出産で死んだが村きっての美人を妾にする。これがヘスターで、エズラ・ウィーデンの許嫁だったとのことです。怖ろしい音が聞こえ、村の娘たちがいなくなる。娘たちは朝には前夜の記憶をなくしていた。
 3人は話ながら右から左へ移動します。途中で奥に三角アーチがのぞく。小テーブルのもとで止まり、グラスを取っては左から右へ動く。カメラは後退しながらそれを追います。奥にゆるいア-チがのぞいています。カメラがやや速めに左から右へ振られると、チャールズが暖炉から火を取り、医師の煙草につけます。またカメラは右から左へ振られたかと思うと、少し右へ、やや下からの角度になっています。
 腰かける医師が上から見下ろされます。村の噂ではカーウィンは『ネクロノミコン』という本を持っていた。医師は立ちあがり左に歩む。背後、右手には右上への階段、左にアーチ、その左前方に太い柱が見えます。その本にはかつて地上を支配し、今は闇の世界にいる神々が復活を狙っている旨が記されていると、村人たちは信じているという。他に2人悪者がいた。カーウィンは魔の血を引いた子を作ろうとしたが実験は失敗、だが幾世代も異常が続いた。先にウィーデン家の2階に閉じこめられていたのもそうした者だということなのでしょう。とはいえ説明がここだけだったのでピンと来ませんでした。


 『恐怖の振子』から城の仰角全景ショットが挿入されます。雷つきです。
 寝室で眠るチャールズとアンが映されます。窓から風が吹きこみカーテンが揺れ、チャールズは目覚めてバルコニーに出る。下で波が打ちよせている。これも『恐怖の振子』からの使い回しでしょう。室内に戻り右から左へ動く。胸から上です。1度止まり振り向きかけますが、また右へ進みます。
 広間の肖像画が下からアップで見上げられます。カメラは左上から右下へ、水平になって右へ動く。チャールズが引きでとらえられる。背後には3つアーチが見えます。左から2つ目の下から柱をはさんで1つ目にかけ螺旋階段がのぞいている。チャールズは右へ歩みだします。3つ目のアーチの右端から奥へ、低い三角アーチの影が右へ長く伸びています。チャールズはカメラの前を横切り、背を向けて右奥へ、先にゆるい半円アーチがある。引きのままです。

 夜のシルエット化した城が見上げられる。右から上辺への枝と雷つきのショットです。
 チャールズが玄関から出てきます。いろいろな声が響いています。手前の木のもとへやって来ます。カメラは上昇しつつある。切り替われば水平になり、胸から上をとらえている。左を向いていた姿勢から振り向いて右向きになる。カメラも左から右へ振られます。また左向きになる。カメラは右から左へ。また右を向くとサイモンがコートを肩にかけてくれます。大勢の人の声が響く。サイモンはカーウィンならご存知だと言う。


 肖像画です。下に背を向けたチャールズが立っている。振り向くと先にサイモンがいます。チャールズの表情が変わっています。サイモンがお帰り、110年ぶりだと言う。チャールズはジャベスは?と問うと、向こうにある3つの尖頭アーチの奥から手前に出てくる。禿頭で、サイモン同様蒼白い(ミルトン・パーソンズ)。チャールズはまた3人いっしょになれたと嬉しそうです。しかし気がかりがある、私がからだを借りている曾孫が私にたてついている。でもじきに支配する、本をくれと言えば『ネクロノミコン』でした。左からジャベス、サイモン、チャールズと横に並び、だんだん背が高くなります。
 その時右上から左下へアンが螺旋階段をおりてきます。右手前に赤蠟燭のシャンデリアが大きく映りこんでいる。カメラは右から左へ振られ、階段下方の湾曲に沿います。下で左から右へ、斜め後ろ姿が上から見下ろされる。先でチャールズがテーブルに突っ伏していました。少し引きです。背後右手には暖炉があり、左にゆるい半円アーチが見えます。アンがどうしたのと尋ねるとチャールズはわからないと答え、ここを出ましょうと言ってもできないと話すばかりなのでした。

 空に稲妻が走ります。シルエット化した十字架の上部がアップになる。上と左右の腕の先が三つ葉状をなしています。カメラは右下から左上へ湾曲して動く。チャールズが墓を掘り起こしています。
 酒場ではスミスが、1週間何をしているんだろうと話しています。
 霧の墓場が上から見下ろされる。チャールズ、サイモン、ジャベスの3人が柩を運んでいます。城内を右から左へ進むさまが上から見下ろされます。向かう先は暖炉右の隠し扉です。チャールズが2人に続こうとするとアンの呼び声が聞こえます。カメラは左から右へ振られる。アンのもとへ向かい、最初居丈高ですが、すぐに揺らぎだします。右上からの視角で右にチャールズ、左下少し奥にアンが立っている。カメラは少し右から左に動き、声をかけようとすると宙に呼び声が響く。カメラが右下から左上へ振られれば、呼び声は肖像画のものでした。チャールズのアップが上から見下ろされます。背後に右上への螺旋階段がのぞいています。下から少し引きで肖像画が映され、また上からチャールズがとらえられる。少し手前へ出るとカメラは少し後退します。肖像画の顔が、次いで目元がアップになる。カメラは上から前進してチャールズの方に向かいます。左には背を向けたアンがおり、その少し奥に尖頭アーチが2つ見える。右側のアーチの向こうにチャールズがいます。アンは右に向かう。斜め下から肖像画の顔がアップになり、やや下からチャールズがとらえられれば、肖像画とチャールズの声が同調します。すばやく振り向くとカメラは右下へ動き、背を向けたチャールズが少し上から、右下に小さく映っている。前向きのアンのすぐ後ろには右上への螺旋階段があります。アンの右上をアーチ右側が枠どりしている。チャールズが奥へ進むとともにカメラも前進する。左に後ろ向きのチャールズ、右にアンが上から見下ろされます。2人の背後に大きく螺旋階段が映っている。


 チャールズは背を向け隠し扉に向かいます。途中の廊下は飛ばされ、左から櫓の階段をおりるチャールズの背が斜め下から見上げられます。カメラは左上から右下に撫でていく。背後右側の壁に大きな車輪図が描かれています。階段からおりてきたチャールズが斜めにとらえられる。手前に柩があり、その向こう左右にサイモンとジャベス、奥からチャールズが合流する。カメラは下から見上げます。サイモンが負けたか?と問うと、チャールズは今は。思ったより意志が強い、カーウィンの血筋だと答える。3人で柩の蓋を外し、「ヘスター」とチャールズが呟きます。

 眠るアンが上から見下ろされます。目覚めて寝台の脇を左まわりにフランス窓へ向かう。外へ出ようとしますが吹きこんだ風に吹き戻されたかのように右から左に動きます。窓に対し背を向け、切り替わると扉から前向きで出てきます。胸から上です。暗い廊下を左から右へ進めば、カメラも後退しつつそれを追います。背を向け奥へ、左奥へ折れる。カメラは右寄りに後退します。右上から階段をおりてくるアンが下から見上げられます。画面を右上から左下へシルエットと化したアーチが枠取っています。アーチの柱の向こうを左下へ、階段をおりると右へ向かう。
 軋むような音に背を向けた姿で左から右へ顔を振ります。肩から上のまま右奥へ進む。カメラは右から左へ振られる。前には大きく柱があり、その向こうに背を向けたアンがいる。奥にある三角アーチの扉の方へ行きます。そこを入ると、手前を大きくシルエット化した格子が占め、その向こう、左は壁になっています。斜めになった格子の影が落ちている。その右奥からアンが出てきて左へ進むにつれ、陰に入ったり光が当たったりする。格子のすぐ向こうで右へ進む。蜘蛛の巣だらけの廊下を左奥から手前へ出てきます。胸から上の姿で手前まで来ると、扉が開くような音がする。びくっとして左へ向かい、右奥から左手前へ、カメラも右から左に振られつつ後退します。鼠に怯え、さらに左へ、背を向け右から左へ進む。左手に扉がある。
 入れば左奥から出て手前へ来る。カメラの前を横切り胸から上の姿で左へ、カメラも右から左に追います。左端で蜘蛛の巣に触れ、アップで右を振り返ると、視線の先で左奥から人のシルエットが現われる。その少し手前、左右には柱があります。シルエットは左右に手をつく。アンのアップを経て、人影が奥から手前に進んできます。暗がりからサイモンがアップで顔を出します。アンは気絶する。ところでこの廊下は1階に隠し通路とは別にあるということでいいのでしょうか。それともアンはいつの間にやら隠し通路に迷いこんでしまったのか。いずれにせよ同じセットで撮影されたのでしょう。


 カメラは斜めに左下から右上の角度をとると、少し奥に右を向いたチャールズが見えます。左奥からサイモンが前に出てくる。チャールズはアンのことを「馬鹿な女だ、愛を知らない」と言う。2人は揃って右下を向く。左に寄っています。チャールズは呪文を唱えます。首から上がより下から見上げられる。ざわつくような音がして、右下から女のミイラが起きあがります。
 とたんに飛び起きるアンがアップでとらえられる。狼の遠吠えが聞こえます。アンは扉に向かいますが鍵がかかっていました。
 かなり高いところから-櫓の上でしょうか。プロローグ部分にもあった視野です-柩を覗きこむ3人の背が映されます。平行に並んで右下を向くサイモンとチャールズがやや下から見られる。すぐに左にジャベスもいることがわかりますが、トリミングのせいで切れていたのでしょうか。サイモンが時間がかかりすぎると言うと、チャールズはまだ続けようと答える。と、2階へ連れていってくれとサイモンに頼むチャールズが下から見上げられます。またほぼ真上から、柩の下方へ急ぐ3人が見下ろされる。カットが切り替わった時の落差が大きい。柩だけが画面に残り、左下へ影を伸ばしています。
 寝室に戻ってきたチャールズは、憶えていない、明日の朝城を出ようとアンに言います。


 朝、下からの城、右上に枝の枠どり、そして霧つきです。
 螺旋階段をおりていくアンとチャールズの背が上から少し斜めに見下ろされます。カメラは右から左へ動く。下でサイモンが待っています。3人は奥から手前へ進み、カメラは後退します。サイモンは出ていくのは止めませんが、経費をくださいといたって世俗的なことを言います。
 サイモンが領収書を取りに左奥へ消え、中央に立つチャールズはアンを馬車が待つ右へやります。腰からの上のチャールズに、カメラはかすかに上昇しつつ少しだけ近づきます。チャールズは右を向いていたのがゆっくり首を手前へ、さらに左へ向けます。視線の先に肖像画が下から見上げられます。肩から上のチャールズが下からとらえられ、右から左へ動く。カメラも付き従います。カメラの前を横切り背を向けると、左上に肖像画がそびえている。音楽はテーマ曲にティンパニが規則的にどんどんと鳴らされるというものです。
 カメラが左から右へ、少し引きで馬車が左から右へ進むさまが木々越しにとらえられます。馬車をおりてきた医師はアンに、昨夜ヘスターの墓が荒らされたと告げる。右奥の扉からチャールズが出てきて左に歩みます。自信に満ちた口調で話す。カーウィンが火あぶりにされた木のもとへ歩み寄り、また左から右へ進む。アンは医師に、最初の晩から人が変わったと言います。
 手前にサイモンとジャベスの背中、チャールズは前向きで少し下からの角度です。チャールズは「勝った、チャールズは死んだ」と言う。ジャベスはでは作業 the work をと促す。チャールズはまだだ、先にやることがある、復讐だと答えます。サイモンとジャベスは〈作業〉を進めたい様子です。
 アンと医師は玄関前を奥から手前へ進みます。カメラは後退する。左手前に御者が待っています。少し上からのアンのアップに続いて少し下からの医師のアップとなります。背の高さに応じるとともに女性を非力な立場に置いているのでしょう。
 下辺に沿って暖炉の炎が少し下からとらえられる。その向こう、右でチャールズが椅子に坐っています。左向きです。左奥からアンが現われる。チャールズがキスをと言うとアンはためらい、キスするものの奥へ逃げ帰ります。

 酒場でウィーデンやスミスたちがしゃべっています。医師のことは自分たちと同類だという。
 斜め下から2階の扉がとらえられ、アンは両手と腰から下だけで映されつつ錠をかけます。
 ウィーデンは自宅に戻りますが、閉じこめていた男に襲われ、2人して暖炉に倒れこむ。それをチャールズが見下ろしており、手にしたリストのウィーデンの名を線で消します。
 昼間の葬儀の場面が約1時間弱で、続いて霧の中、通りを歩くスミスが油をかけられ火をつけられる。
 テーブルにつくチャールズを右下に配し、左上からサイモンがまだ復讐は足りないのかと問う。手前に大きく赤蠟燭の燭台が映っています。
 ベッドのアンが左下、右上にチャールズという構図が交互に映され、1つ画面になったかと思うとまたアンが左下に配されます。アンはチャールズを拒み、肩から上をさらけだして泣き崩れる。


 かなり上から櫓階段がとらえられます。右斜めに松明がさしてある。左上からおりてくるチャールズの下半身が現われ、まわりこんで右向きになると、少し奥の壁に有機的な網状の影が落ちています。チャールズは左から回って正面向きになる。その左に右下がりの斜線の束の影が見えます。チャールズは奥から手前へ出てくる。黒服が映えます。柩の向こうに立つさまが斜め下から見上げられ、「ヘスター」と呼びかけては蓋を開けます。左からサイモンが来て「だめだ」と言う。チャールズは「もう1度試そう」と答えます。

 医師が扉をノックします。雷鳴が轟く。アンが出てきて、2人は奥から手前に進む。少し上からの角度のカメラが後退します。けっこう歩いて止まると、「あの人は別人」とアンが言う。右に振りかえれば下から肖像画が見上げられます。胸から上の2人は右を向きます。アンは右へ歩く。カメラは後退しつつ左から右へ振られる。奥に幅の広い尖頭アーチが見えます。カメラのみ右を向けば、また肖像画です。
 左下の2人がやや下から見上げられる。奥の壁が画面を広く占めています。アンだけ右へ進み、気を取り直して左の椅子に腰かけます。
 右手からチャールズが現われる。きわめてにこやかです。手前に出つつ右へ進む。カメラもそれを追います。背後に尖頭アーチが2つ、右少し手前に三角アーチが見えます。チャールズは医師と話しながら左から右手前へ出てくる。「アンはこの家のせいでおかしくなった。私が別人だという。家内こそ別人だ。ボストンへ帰したい。私では怖がる。私も後から行く、必ず」と言います。

 アンと医師が去った後、暖炉右の隠し扉へ向かいます。櫓階段が斜め下からとらえられる。上の方で左からチャールズが現われ、右でサイモンと合流します。2人で右から回って左下へおりる。カメラは上向きから下向きに移行していきます。2人は右から左下へ、踊り場で曲がり、右下へおりていく。後ろにジャベスもいます。カメラは上から見下ろす角度になっている。階段をおりると奥の壁に斜線が見えます。これは階段の段裏の影で、左に手すりの影も落ちています。
 奥から手前へ、前に柩が置いてあります。カメラは左奥から右前へ流れる。斜めのまま柩の向こう、左上にチャールズ、右に少し低くなってサイモンが配される。「さあ、もう1度」。右のサイモンと、トリミングで切れていますが左にいたジャベスが蓋を外します。チャールズが呪文を唱える。


 上から街路が見下ろされ、左から馬車が入ってきます。カメラも左から右へ動く。村人たちが騒いでいます。アンと医師が馬車からおりますが、壇上に立つウェストの煽動を聞いて急いで馬車で戻ります。
 チャールズのアップが下からとらえられる。左から右へ向くと、復活したヘスターにキスします。
 左から右へ進む馬車が上から見下ろされます。2人は馬車をおり玄関へ急ぐ。カメラもそれを追います。
 村人たちが動きだす。2度目の暴徒です。

 三角アーチ越しに、右上から左下へ医師が階段をおりてきます。カメラは右から左へ動く。左からアン、右から医師が走り寄る。背後には角をはさんで尖頭アーチが2つ並ぶ。引きのショットです。2人は誰もいないことを確認しあい、肖像画を破ろうとしたら現われたという話に、医師は壁を探ります。右から左へ、そして隠し扉を探りあて、左上のスイッチも見つけだす。
 中に入って右手前に進みでる。下から首から上がとらえられます。扉が閉じたのに、振り返って駆け寄ります。あきらめて右手前へ進む。奥に三角アーチがある廊下を左奥から出てきます。暗い。右手前へ、カメラもまた。背を向け左奥へ急ぎます。首から上のまま右から左へ。格子越しに首から上が右から左へ進む。突きあたりの壁に左下がりの斜め縞の影が落ちています。暗めです。左奥から手前に出れば、左の壁に太い柱とそれ貫く左下がりの線の影が落ちています。こちらは明るめです。2人が早足な分、カメラの動きも速い。
 下からとらえられた2人が右へ進む。櫓がかなり下から見上げられます。カメラがゆっくり上から下へ撫でる間、2人はジグザグにおりてきます。右上から左下へ、踊り場を経て左上から右下におりてきて右に進み、まわるようにして左下へ。
 奥から手前へ進むと、下辺沿いを柩のシルエットが幅広く占めています。かすかに右下がりです。背後には左に櫓、その右に階段の段裏と手すりの影が落ちています。
 柩の向こうを右へ進むさまが真上から見下ろされる。2人は下から上へ背中を向けて進み、画面上にのぼり階段があります。カメラは下から上へ、それにつれ壇の左右の階段も映るようになる。階段をのぼる2人は背を向け、シルエットと化しています。
 手前上に水平の梁、その下に三角をなす斜めの梁が枠どりをなす。カメラは少し上から見下ろしています。2人は奥から手前へやって来る。背後に櫓の下の方、のぼり階段が見えます。
 2人は腰から上で右から左に進む。先に本が置いてあります。医師は「よせ」と言いますがアンは「たかが本」と答え、医師は「怖ろしい本だ」と付け加える。
 医師は右下の円孔を見下ろします。格子越しに緑の何かがうごめいています。アンが何?と言ったところへ「これはこれは」と声がかかる。2人は奥へ振り向きます。
 櫓の上の方に3人いるのがかなり下から見上げられます。さらにもう1人、3人の背後を右下へ先行し、3人も続きます。
 墓場を奥から手前に駆けてくる村人たちの姿がはさまれます。
 壇上にあがってくる4人が上からとらえられる。カメラは後退します。チャールズは思ったより古い建物だろう、何100年も前にトルケマダが住んでいたと言います。口調が嬉しげです。右の鉢に何か投げこむと炎があがります。「計画があったが邪魔が入って中断した、それを再開する」。カメラは左へ右へと振られます。「人類史上もっとも重要な計画だ。だから恐れている。我々もわからない、見守るだけだ」。サイモンは医師にナイフを突きつけ、下へ連れていく。ヘスターとジャベスはアンを縛りつけます。チャールズが呪文を唱えると、下の円孔からでしょうか、煙が沸きあがります。
 櫓の階上が上から見下ろされる。ジャベス、医師、サイモンがいます。左下に壇上が見え、階上との落差が大きい。換わってかなり斜め下から、櫓の手すり越しに3人が映されます。ジャベスが彼女には名誉なことと言います。
 円孔の格子が律動音とともに上にあがります。巻き上げ機を回すチャールズと交互に映される。アンが下を見ると、あざやかな緑色で、うなり声をあげる何かがいました。アンはアップになり悲鳴を上げます。上から壇上が見下ろされれば、チャールズとヘスターが手前に進みます。アンの胸から上が下から見上げられる。ゆらめく緑の化生は半魚人のようにも見えます。
 村人たちが左から右へ向かうさまが上からとらえられ、カメラもそれに従います。玄関に着くと「ジョゼフ・カーウィン!」と叫ぶ。城内になだれこみ火をつけ始める。肖像画にも火をかけます。
 肖像画に火がつくその瞬間、悶えるチャールズのアップに切り替わる。右上に櫓の階上の5人、左下に壇上が上から見下ろされる。壇上では円孔が青緑に光り、悲鳴が響きます。また下からのチャールズのアップです。櫓階上が見下ろされると、チャールズが下へ走り、サイモンとジャベスが追います。斜め下から櫓が見上げられ、3人がおりてくる。悲鳴がまたあがる。カメラは斜めになって上から下へ撫でます。チャールズは階段をおりて手前に走る。斜め下から壇が見上げられ、背を向けて手前からチャールズが駆けあがる。
 斜め上からアンの縛めをほどくチャールズが、首から上のアップでとらえられます。サイモンとジャベスが下からあがってくる。斜め下から争う男たち、一方医師はアンを連れて逃げます。サイモンとジャベスはチャールズを押し倒す。ゆらめく緑と化生が上から見下ろされる。両の鉤爪を前にかかげています。
 左手の扉口から医師とアンが飛びだしてきます。右奥へ背を向けて走る。左の壁には柱と斜め線の影が、突きあたりの壁には斜線の束の影が落ちています。
 炎上する広間は『アッシャー家の惨劇』からのフィルムの使い回しです。右から左へ、腰から上の2人が走り、左の扉に取りつきます。左上に開閉装置がありました。扉を開くとしかし、向こうは火の海です。暖炉の右から2人が右へ出ていく。広間を右奥から左手前へ、アンを押しやって医師は奥へ戻ります。
 上から玄関前が見下ろされます。村人たちが見守っている。息も絶え絶えにアンが出てきます。ウェストともう1人がアンを保護し、振り返ります。
 炎の広間のショットを経て、櫓を駈けおりる医師が下から見上げられます。真上からのショットに換わり、医師は下から上へ、壇の方へ走る。カメラも下から上へ振られます。チャールズを助け起こします。他に人影はありませんでした。
 また玄関前が上から見下ろされ、雷鳴が轟きます。炎の中、医師とチャールズが左奥から右前に進み、玄関前に出てきます。チャールズは右から左へよろけ、木に寄りかかる。下から背中が見上げられれば、お礼を言い、「必ず」と付け加えたところで口調が微妙に変化します。アンが大丈夫?と問う。下から振り向くアップで"Perfectly sure"と答え、もう1度同じ台詞を繰り返すとともに雷が鳴る。右下を見下ろすようにしてかすかな笑みを浮かべたアップを経て、ポーの詩句が下からテロップであがってくるのでした。


 怪奇映画で一件落着、しかしその実……という終わり方はポランスキーの『吸血鬼』(1967)あたりから蔓延しだしたのではないかと思っていたのですが、考えてみれば本作もそのパターンでした(マリオ・バーヴァの『バンパイアの惑星』(1965)も加えることができるかもしれません)。ハマー・フィルムの『王女テラの棺』(監督:セス・ホルト、マイケル・カレラス)も本作と相似たパターンですが、こちらは1971年の作品です。『吸血鬼ヨーガ伯爵』(1970、監督:ボブ・ケルジャン→こちらを参照)はポランスキーの『吸血鬼』を真似たのでしょう。もっともやはりハマーの『フランケンシュタインの復讐』(1958、監督:テレンス・フィッシャー)もこれに近いといえなくはない。ただ、その前作である『フランケンシュタインの逆襲』(1957)と違ってここでの男爵は極悪非道などではなかったとの憶えがあり、ニュアンスが少し違っています。とまれこうした結末は一度きりのやったもん勝ちではないかと個人的には思ったりするのですが、その後一般化してしまいました。
 本作品に戻れば、カーウィンがやろうとしていた実験の目的ははっきりせずじまいでした。娘たちを縛りつけたのは生贄にするためではないとして、ラヴクラフトの「ダニッチの怪」(→こちらも参照)あるいはそれに先行するマッケンの「パンの大神」(→こちらで少し触れました)などよろしく、化生の子を宿らせるためかとも考えられますが、さだかではありません。またサイモンとジャベスはカーウィンの死後110年間ずっと生きていたのか、あるいは亡霊なのか。2人ともメイクが蒼白かったのはどちらかを表わしているのでしょうが、これまたあきらかにはされない。そして医師がウォードを助けに戻った時、2人およびヘスターの姿はありませんでしたが、どうなったのかもわかりません。
 と、いろいろわからない点はあるのですが、広間にはいくつもアーチがあり、螺旋階段も出てくれば隠し通路も仕掛けられている。暗い廊下に地下への櫓階段と盛りだくさんです。何より本作品では、連作のこれまでの作品以上にカメラはよく左右に動き、時には上下に、また人物の前後に動くような気がします。またアップやバスト・ショットが引きと対比され、極端に上からのショットや下からのショットも交えられて、人物の配置に遠近・大小でめりはりがつけられている点をもってよしとすべきでしょう。

Cf.,  北島明弘、『映画で読むエドガー・アラン・ポー』、2009、p.93

石川三登志、「ビックリ箱の中の悪夢〈ロジャー・コーマン論〉」、『吸血鬼だらけの宇宙船』、1977、pp.178-180

Joel Eisner, The Price of Fear. The Film Career of Vincent Price; In His Own Words, 2013, pp.143-144

原作等については;
宇野利泰訳、「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」、『ラヴクラフト傑作集 2』(創元推理文庫 523-2)、東京創元社、1976、pp.79-296

原著は Howard Philippes Lovecraft, "The Case of Charles Dexter Ward", 1927-28

タイトルのもとになったポーの詩の邦訳は;
入沢康夫訳、「幽霊宮殿」、『ポオ全集 3』、東京創元新社、1970、pp.131-133
原著は
Edgar Allan Poe, "The Haunted Palace", 1839

なおラヴクラフトについては→「xix. ラヴクラフトとクトゥルー神話など」(<「近代など(20世紀~) Ⅳ」<「宇宙論の歴史、孫引きガイド」)も参照

ポーについては→「viii. エドガー・アラン・ポー(1809-1849)など」(<「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」<「宇宙論の歴史、孫引きガイド」)も参照

本作品を含めてラヴクラフトの映画化について;
菊地秀行、「ラヴクラフト・オン・スクリーン」、『怪奇映画の手帖』、1993、pp.164-171

こちら(『襲い狂う呪い』)でも挙げています

菊地秀行、「ブロック、マシスン&ラヴクラフト」、『魔界シネマ館』、1987、pp.154-161

鷲巣義明、「映画におけるクトゥルー神話」、『秘神界 歴史編』、2002、pp.689-703
青木淳編、「ラヴクラフト/クトゥルー神話映画リスト」、同上、pp.(38)-(64)

→後者はこちら(『襲い狂う呪い』)そちら(『ダンウィッチの怪』)でも挙げています

殿井君人、「クトゥルー神話シネマ・ガイド」、『クトゥルー神話の本 エゾテリカ別冊』、2007、pp.165-174
こちら(『襲い狂う呪い』)そちら(『ダンウィッチの怪』)でも挙げています

その内本作品と同じく『チャールズ・デクスター・ウォードの事件』を映画化したのが;
『ヘルハザード 禁断の黙示録』、1992、監督:ダン・オバノン
この映画についてはまた;
大瀧啓裕、「♡9 映像化されたラヴクラフト」、『魔法の本箱』、青土社、1994、pp.258-262


なお本作の一部場面が挿入されるのが;
『マッドハウス』、1974、監督:ジム・クラーク
こちらで少し触れました

 2015/4/14 以後、随時修正・追補
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