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ヨーガ伯爵の復活
The Return of Count Yorga
    1971年、USA 
 監督   ボブ・ケルジャン 
撮影   ビル・バトラー 
 編集   ローレット・オドニー、ファビアン・D・トージュマン 
 セット・デザイン   ヴィンセント・M・クレシマン 
    約1時間37分 * 
画面比:横×縦    1.85:1 ** 
    カラー 

VHS
* [ IMDb ]による。手もとのソフトでは約1時間33分
** [ IMDb ]による。手もとのソフトでは 1.33:1

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 本作に先立つ『吸血鬼ヨーガ伯爵』(1970)は日本ではソフト化されていないのでしょうか、ともあれ大昔にTV放映された際見たはずです。とはいえ中身はほとんど忘れてしまいました。ただ→こちらでも触れたように、ラストがポランスキーの『吸血鬼』(1967)でのそれをなぞったものだったという記憶が残っています。下掲のフリン『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』(1995)によると「奇妙な城とセットは、ブラウニングの『古城の妖鬼』(一九三五)のそれを思い出させるものである」とのことなので(p.181)、ソフト化が望まれるところです。
 前作にせよ本作にせよ、フリン下掲書の該当箇所を見るに評価が高いとはいいがたい。もっとも本作に限っても、古城映画として見るならかなりの高得点を見込むべきでしょう。廊下に階段が幾種類か登場、登場人物たちは行ったり来たりのぼったり下りたりしてくれます。画面は一体に薄暗く青みを帯び、光が隅まで行き当たらない感がある。出てくる2つの建物は外壁も屋内の壁も真っ白なところが多く、それがかえって荒涼とした薄ら寒さを強めている。場面によっては往々にして音楽がつかない。1930~40年代のユニヴァーサルを始めとした作品はもとより、50年代後半以降のハマー・フィルムの諸作やコーマンのポー連作などでの、セットを主体にした撮影や照明とも感触が異なっています。 [ IMDb ]にはロケ先はサンフランシスコとしか挙がっていませんが、どこまでがロケでどこからがセットなのでしょう?『凶人ドラキュラ』(1966)のページでいい加減な形で触れた色調の変化とあわせて、これらを1970年代的と見なしてよいものでしょうか。

 監督・脚本のボブ・ケルジャン、音楽のビル・マークス、製作のマイケル・マクレディ、タイトル・ロールのロバート・クォーリー、吸血鬼と対決する役のロジャー・ペリー、伯爵の下僕役のエドワード・ウォルシュなどは前作からの続投組です。警部役のルディ・デ・ルカは、後に『突撃バンパイア・レポーター/トランシルバニア6-5000』(1985)の監督・脚本、またメル・ブルックスと組んで『レスリー・ニールセンのドラキュラ』(1995)などの脚本を担当することになる。撮影のビル・バトラーは『JAWS/ジョーズ』(1975、監督:スティーヴン・スピルバーグ、未見)を始めとしてけっこうメジャーな作品も担当しています。[ allcinema ]等でご確認ください。
 なおフリン下掲書に記された梗概では、前作から話が続くようになっていますが、手もとのソフトではそうした部分は見当たりませんでした。上記のように [ IMDb ]と手もとのソフトでは4分ほど差があり、カットされた箇所で語られていたのか、あるいは異なるヴァージョンでもあるのでしょうか?


 冒頭、夕刻なのか青い空と白い雲の下、さっそく館の外観が映されます。本棟は2階建てでしょうか、左側に塔がある。右手に灯りのついた窓が1つ、下の方は暗く沈んでいます。ハレーションを起こした眺めに始まり、徐々にくっきりしますが、暗さも増します。
 続くオープニング・クレジットの間、次々に館の細部が切り替わっていきます。下からの塔、上からのテラス、正面から捉えられたドーム天井の部屋、壁は白く奥に暖炉がある。
 屋内の屈曲する階段が見上げられます。やはり壁は白く、下からの光で壁に欄干の影が落ちている。他方右の階段の裏も白い。
 正面から食堂、天井には何本も横に梁が走っています。天井とそれに接する壁は白、その下の壁は暗色でした。テーブルの向こうに暖炉、左の壁沿いに大きな燭台が2基配されている。
 やや幅の狭い廊下がやや下から、暗い。
 甲冑の間が下から、やはり暗い。
 寝室がやや上から、右に暖炉が見えます。壁は緑でしょうか。
 広めの廊下がやや上から、白い天井ではアーチが交叉しています。
 アーチ天井の部屋は奥に玉座のようなものがあり、そこに向かって赤い絨毯が道をつけている。画面手前左右を格子装飾の黒っぽい扉が縁取っています。
 正面・やや上から広めの廊下、前のものとは違うようです。天井も壁も白く、奥に赤絨毯が伸びている。
 前と同じ食堂でしょうか、長テーブルの長辺の向こうに扉口が開いている。画面左右は暗い。
 地下室のような暗い空間です。
 以上、いずれも無人でした。おそらくこれらの空間が今後登場するのだろうと予想させる。わくわくせずにいられましょうか。


 画面が真っ白になります。太陽が見えてくる。
 カメラは下へ、かなり高い位置から林の間の空き地が見下ろされます。黄色いボールを追うシルエットが小さく入りこみます。下の「おまけ」あるいは→こちらに掲げたヴァロットンの《ボール》や、ヴァロットンとのつながりを感じさせなくもない岡田三郎助《富士ビューホテルの庭》(→こちら)が連想される構図でした。
 カメラは左へ流れます。ボールを追っていた少年(フィリップ・フレイム)に続いて、「ウェストウッド孤児院」の標識、「シンシア」と呼ぶ牧師(トム・トウナー)の姿をはさんで、これが孤児院なのでしょう、青いが明るくない空の前、やはり白い壁に褐色の屋根の2階建てで、前の館ほど幅の広くない正面右端に3階分の角塔、左寄りの壁からは小円塔が迫りだしています。1階部分はやはり迫りだしてアーケードになっている。やや下から引きでとらえられ、画面手前左と上で木の枝が縁取っている。
 シンシアらしき女性(マリエット・ハートレイ)が微かな風を感じます。手前下に白い欄干らしきものがある。「サンタ・アナの風 Santa Ana winds」(→英語版ウィキペディアの頁)が来るという。牧師はこの風に何やら怖れを抱いているようです。
 トミーを見たか尋ねます。これがボールを追っていた少年の名前なのでしょう。そのトミーはといえば、墓地を駆け抜けていました。地面から両腕が突きだされます。一組にとどまりません。這いでてきたのは皆女性でした。トミーは逃げだしますが、誰かにぶつかります。マントをまとった男性(ロバート・クォーリー)でした。


 孤児院の基金を調達するための催しとして、子供たちが合唱しています。トミーの姿もある。講堂のような場所ですが、客たちの数は講堂の広さに対してやや寂しい。ただ皆仮装した姿でした。ドラキュラに扮した者もいます。
 シンシアは外の廊下だかロビーに出ます。いやに暗く、彼女がもたれかかった柱だけが白く反射している。ヨーガ伯爵が現われ、自己紹介します。紳士的です。マントの内側が赤い。お隣の「門扉邸 Gateway Mansion」を買ったのだという。
 ピアノを弾いているのは長髪の少年です。牧師はトマス孤児院長でした。彼を口のきけないジェニファー(イヴォンヌ・ワイルダー)が手助けしている。シンシアの婚約者デヴィッド(ロジャー・ペリー)はシャーロック・ホームズ姿でした。
 シンシアが指を切ると、伯爵は東欧の作法だといって指から血を吸います。トミーは眠れないという。仮装で優勝したのはドラキュラ姿の客でした。伯爵は吸血鬼を見たことがあるという。女性が倒れているのが見つかります。


 装飾的な格子扉の向こうから伯爵が手前に進んできます。背後には侍従らしき姿がある。広間には柩がいくつも置かれ、そこから娘たちが起きあがります。計6人でした。いずれも白塗りです。個々の意志や他の面子との違いを感じさせない匿名的な群衆としてのあり方は、たしかどこかで指摘されていたかと思うのですが、映画における吸血鬼というより(土俗的なものではなく)、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968、監督:ジョージ・A・ロメロ)におけるゾンビを連想させるものです。冒頭での墓場から起きあがる姿からは、『吸血ゾンビ』(1966)を思いだしてもよいかもしれません。
 ギザギザの白いロープで囲われたテントの中には椅子が据えられ、その手前から1~2段あがるようになっている。やや下から見上げられます。前作でも伯爵はこんな椅子に坐っていたような気がしますが、定かではありません。

 約17分、湾曲階段を若い娘がおります。最初カメラは下から、切り替わると上から背を見下ろす。
 居間のフランス窓の前にシンシアがいました。この家は随所で幾何学的な抽象ないしオプ・アートを飾っていました。ヴァザルリ風のものもあれば、後の場面ではアルバースによるオレンジと黄の《正方形讃》も見かけられました。イタリア映画ですが同年公開の『血みどろの入江』(1971)の一場面が思いだされたりもします。この時期のある種の流行なのでしょうか、他にも類例があることと思われます。
 ここはシンシアの家らしく、居間に父、母、先ほどの娘が集まっている。風に女性陣は不安を覚えているようです。がたがた物音がする。黄のボールを抱えたトミーが入ってくる。
 窓ガラスを突き破って吸血娘たちが来襲してきます。トミーは黄ボールを抱えたまま突っ立っている。シンシア以外は皆毒牙にかかったようです。
 抱えあげられて運ばれたのはシンシアでしょうか。切り替わるとベッドでうなされていました。伯爵が記憶を消すよう暗示をかけます。


 ジェニファーが装飾的な格子扉を開けて庭に入ってくるさまが俯瞰されます。白い廊下を通って、扉から居間に入る。皆が倒れていました。トミーは立ちっぱなしです。ジェニファーはトミーを連れて湾曲階段の下にある扉から出ていく。
 昼間です。刑事たちがやって来る。院長もいっしょです。家に入るも何の痕跡も残っていない。窓ガラスも割れていません。トミーはみんな行ったという。置き手紙も残っていました。
 男が屍体を沼に沈めています。
 ジェニファーが目覚める。窓から顔を出した後、庭に下りていくと猛犬を連れた侍従(エドワード・ウォルシュ、 [ IMDb ]によると名は Brudda、前作の頁では Brudah ですが、日本語字幕には出てこなかったようです)に出会います。顔の左半分にひどい傷跡がある。
 サンフランシスコの街中です。デヴィッドが青年(後に名がジェイスンと知れます、たぶん合唱=仮装会の場面に出てきたのでしょう、デヴィッド・ランプソン、遠藤周作原作、篠田正浩監督の『沈黙 SILENCE』(1971)に出ているそうです、未見)に吸血鬼疑惑を話します。
 いささか胡散臭い民俗学の教授への面会を経て、孤児院の2階でジェニファーが寝ています。窓から下を見るとトミーが暴力的になっている。トミーは館へ向かいます。ジェニファーは後をつける。

 2つの方形扉口が奥へ連なっています。手前は暗い。このあたりの壁は素っ気ない造りです。奥の台の上に柩が置いてあります。侍従が蓋を開けると、伯爵が起きあがる。
 伯爵は占い婆(コリンヌ・コンリー)にお伺いを立てます。恋をしたのだという。婆は殺せと応えます。婆は[ IMDb ]では「魔女 Witch」となっていましたが、どういう位置づけなのでしょうか?
 オープニング・クレジットに出てきた天井に梁が並列する食堂です。長テーブルの両端にシンシアと伯爵が坐しています。伯爵はやはりオープニング・クレジットで出てきた長テーブルの端の奥の扉から出ていく。

 伯爵は外へ、車に乗りこみます。
 酒場です。テレサという歌手が歌っている。客席に伯爵の姿がありました。カップルが店を出ます。伯爵は追う。
 カップルは波止場に来ました。ヨット住まいらしい。灯りが不調になり男が調べに外へ出ます。両腕を前に伸ばし口を大きく開いた白塗りの伯爵が走ってくるのでした。正面からのショットです。男に突進するカメラのショットが続く。言葉で聞くと失笑ものかもしれませんが、実際の画面では非人間性が滲みでており、決して雰囲気を欠くものではないように思われます。前作でもやっていたのでしょうか?


 約49分、古城映画的山場その1です。物音にシンシアは部屋を出る。背を向け暗い廊下を奥へ、右の扉、次いで突きあたりの扉をがちゃがちゃするも開かない。奥を左へ進みます。
 下り階段が下から見上げられる。上・右に欄干が伸び、その影が階段で縞を作っています。左の白壁にも影が落ちている。
 左向きで上半身が捉えられたかと思えば、カメラのみ右に先行します。角を曲がると薄暗い廊下が奥へ伸びている。壁は上半が白、下半がグレーの事務棟風素っ気なさです。左にいくつか扉、暗がりに沈んでいますが右にも扉があるようです。突きあたりに真っ暗な扉があり、その前で右に曲がっているらしい。手前左から出てきたシンシアは背を向け奥へ、扉ごとにがちゃがちゃしますが、進むにつれシルエット化する。
 左3つ目の扉が開いていました。甲冑室がやや下から捉えられます。奥の扉から出てくる。右から左へ、次いで左から右へ、何やら笑い声が聞こえ、また右から左へ戻る。カメラは下から斜めになってその姿を追います。また右へ、鎧にぶつかって倒してしまう。赤紫になった記憶が甦りかけます。また笑い声、今度は扉が開く。
 足もとのみが左から右へ進みます。
 扉の中に入り、左から右へ、カメラもそれを追います。物置風でしょうか、彫像もあります。左の扉が閉まり、右から左へ戻る。アップを経て歪み入り主観カメラが右から左へ室内を撫でる。またアップになり、「シンシア」の声、そして笑い声。右へ左へ首を回す。カメラも同様に動いてから、ぐるりと回ります。赤紫の記憶の断片の挿入、次いで上からの引きになる。
 左の扉が開きます。顔半分のみ扉の向こうに隠れている。廊下です。壁に何やら影が落ちている。奥の右から出てくる。カメラのみ右へ先行します。扉から入る人影がありました。シンシアはそれを追い、とりつきます。また右から左へ、ここまでで約56分でした。


 トミーが皆から問いつめられています。階段の下の空間で、階段は左にあがり、折れて右上に続いている。欄干は白く、その向こうは真っ黒でした。院長の背後のカーテンも真っ黒に見えます。
 波止場で捜査が行なわれています。前にも出てきた警部(ルディ・デ・ルカ)にデヴィッドは血液検査を依頼しますが、相手にしてもらえない。
 ベッドで眠るシンシアのところへ占い婆が忍び寄ってきます。奥の陰になった椅子に坐っていた伯爵が「出ていけ」という。

 夜の孤児院がやや下から引きでとらえられる。トミーが階段を下りてきます。下にジェイスン青年がいました。彼はシンシアの妹エレンの彼氏でした。
 約1時間2分、伯爵が書斎でテレヴィを見ています。放映されているのは『バンパイア・ラヴァーズ』(1970)のスペイン語吹替版でした。イングリット・ピット扮するカルミーラが森で医師を襲う場面であります。前年公開の作品ですから、ずいぶん早い。
 古城映画的山場その2です。トミーとジェイスンが廊下の奥から出てきて手前に来ます。右の壁は浅い凹凸が波打っている。
 手前左から奥へのぼり階段があがっています。シルエット化した背を向け二人のあがっていくさまが、下から見上げられます。上で折れて左に続く。のぼってくるさまが上から見下ろされます。
 前にもシンシアが通った欄干の影が縞をなす階段が、下から見上げられる。また上からの俯瞰に切り替わります。
 伯爵が何かのスイッチを操作する。扉が開くと娘たちがいました。
 ジェイスンは廊下の右奥から出てきて手前へ進む。左の扉から中に入る。紳士服を着せた首無しマネキンがいくつかありました。エレン(カレン・エリクソン)が現われます。哄笑します。口から牙が伸びている。他の娘たちもいます。ただエレンのみはなぜかゾンビ状ではない。
 ジェイスンは扉から廊下に出る。奥から両腕を前に突きだした伯爵が迫ってきます。2回目のここではスロウ・モーションです。なぜかマントの裏が銀になっている。襟の裏は赤い。首を絞めるだけです。
 ジェイスンを侍従が娘たちのもとに投げだします。ここまでで約1時間7分でした。


 交叉アーチの部屋です。奥に暖炉がある。かたわらに伯爵がいます。その背後に木の浮彫パネルがある。左手前に大きく、侍従に連れられたシンシアが入ってきます。伯爵とシンシアの間には大きな地球儀が置いてある。シンシアの出現でもろい感情を抱くようになったと伯爵はいう。
 昼間の孤児院です。警部たちがパーティーの時の写真を見る。そこにいたはずの伯爵の姿が映っていませんでした。ジェニファーもトミーもやつれています。


 夜の館の外観です。シンシアの部屋を出たところの、おそらくは2階廊下、食堂、やや下から別の廊下、奥に半円アーチ、その向こうに扉が見える。白いドーム状天井の部屋に替わる。いずれも無人で、白が鮮やかです。
 院長が椅子に坐っています。酒を飲む。電話をかけます。
 電話のベルが鳴ります。階段室、続いてジェニファーの部屋です。ベッドに倒れたジェニファーは死んでしまったのでしょうか。カメラは左へ、左の壁を経て画面が真っ暗になります。
 屋外が上から見下ろされる。
 車内にデヴィッド、警部、もう一人の若い刑事(クレイグ・T・ネルソン)、院長もいます。


 院長が伯爵に面会に来る。伯爵は赤いガウンまとっています。
 その隙に三人が館に侵入する。約1時間16分、古城映画的山場その3にして大詰めです。
 暗い廊下です。地下でしょうか、奥からデヴィッドが出てきます。右に円形の開口部らしきものが見える。手前を左に曲がります。
 別の廊下です。折れ曲がっている。刑事二人組が奥から出てきます。
 庭を伯爵と院長が右から左へ進む。院長は底無し沼に足を踏みいれてしまいます。銀の十字架を掲げながら沈んでいく。
 暗く狭い階段が上から見下ろされます。デヴィッドがのぼってくる。
 前にも出てきた右の壁が浅い凹凸に波打つ廊下です。二人組が奥から出てきて、手前でやはり奥へののぼり階段を、背を向けつつシルエット化してのぼります。
 右手の裏が白い階段のある空間です。デヴィッドが背を向け上へのぼる。踊り場でシルエット化、左の壁にも影が落ちます。
 デヴィッドが2階らしき廊下の奥から出てくる。手前右の扉に取りつきますが、開きません。さらに手前左の扉を開けると、ジェイスンらしき姿がありました。
 二人組が奥から手前へ進んでくるさまが上から見下ろされます。間を置いて数段ずつのぼりになっているのでしょうか。奥の壁にまず影、次いでトミーが現われる。二人組は気づかず、手前を左に折れます。
 暗い部屋です。いるのは占い婆でしょうか。
 おそらくは伯爵の手がスイッチを操作する。娘たちが動きだします。
 ベッドです。シンシアが起きあがる。
 扉が開きます。左右は真っ暗です。向こうに男のシルエットが見える。その奥の壁は白く、床より下辺が高くなった扉口がありました。シルエットは進んできて手前左へ、扉が閉じます。
 扉からデヴィッドが出てきます。男物の服を着せた首無しマネキンの部屋です。奥の扉から向こうへ行く。
 やや斜めになったカメラが、半円アーチの向こう、右下がりの階段を下りてくる二人組を捉えます。階段は右奥で右上がりに折れている。下りた先の向こう、背を向けた娘たちが今回は7人いました。ここで警部の名前がマッデン、部下がオコーナーだとわかります。約1時間20分のことでした。二人組は逃げだす。階段が下から見上げられます。少し喜劇調でしょうか。
 事務棟風廊下です。半ばの左から二人組、切り替わって手前からデヴィッドが出てくる。奥からは娘たちがやって来ます。銃は効き目がない。
 おそらく2階の廊下です。奥左からデヴィッドが出てくる。2回目ということでしょうか。今度は手前右の扉が開きます。中にシンシアがいました。彼女を連れて廊下を戻り、欄干の影が縞をなす階段を下ります。仰角です。
 俯瞰で左の扉へ、入って右に進みます。背後から侍従が現われる。十字架を掲げるも効き目はありません。侍従に投げ飛ばされれば湾曲階段の右下に出ます。鎧にぶつかる。棘々球で侍従に向かいます。かなり下からやや斜めに見上げれば、上辺が半円アーチになっており、向こうに湾曲階段がのぞいていました。湾曲階段の裏は白で段々になっています。手前右には赤褐色のカーテンらしきものがある。
 狭い階段をデヴィッドとシンシアがおりてくるさまが、下から見上げられます。
 二人組は右の扉から左の扉へ横切る。右の扉の奥から娘たちが追ってきます。左の扉を開けると血まみれになった侍従がいました。今度は銃が効きます。
 階段を駈けおりる二人組が俯瞰される。奥・上の壁に右上がりの欄干の影が落ちています。しかし下の扉が閉まり、あがってきて右へ、奥へ、そして左へ進む。
 エレヴェーターが上昇します。中に伯爵がいる。
 機械室か地下室のような廊下です。奥から二人組が出てくる。手前左半分を占める壁に欄干の影が落ちています。右半の向こうには半円アーチの開口部があり、そこへ左から男の姿が現われます。手前左からは女の頭部が大きくとらえられる。占い婆でした。
 廊下です。左の壁と奥の壁に綴織がかかっています。奥の壁のすぐ前では半円アーチが区切っている。向こう左から二人組が出てきて手前左へ、カメラは右から左に流れる。先に装飾的な格子の扉がありました。その奥にはドーム状天井の部屋が覗いています。部下の刑事のみ扉の中に入りますが、警部の前で板の落とし戸が閉まってしまう。部下は入ってすぐ1~2段下ります。背後から娘の一人に襲われるのでした。
 警部は呼び声を聞いて廊下の奥を右へ進みます。ナイフを胸に突きたてられて後ずさってくる。立ち去る足もとはトミーでしょうか。


 約1時間26分、まだ続きます。のぼり階段がやや上からとらえられます。デヴィッドとシンシアがのぼってくる。手前を左に曲がると、画面が真っ暗になります。
 伯爵の声、続いて笑い声が響く。広めの廊下をカメラが後退します。
 廊下から別の廊下へ、次いで階段を下りてくるさまが仰視される。
 カメラは左上から右下へ、半円アーチの向こうで階段はさらにおりていきます。下・奥に廊下が伸びており、向こうから占い婆が現われます。引き返すと、カメラは右下から左上へ、元の階段を10段ほどのぼった先で白い扉が閉まる。
 階段を下りて左へ、奥に暗い廊下が伸びています。カメラは少し斜めになっている。暗い向こうから来るのは娘たちでしょうか。
 また戻って右下へ、さらに戻って左へ、扉から中に入ります。ここまで笑い声は響き続けていました。
 デヴィッドは扉に錠をかけますがよろめく。シンシアは左に動く。正面・やや上から見下ろした廊下の奥に娘たち、そして占い婆が勢揃いしていました。右から左へカメラが娘たちの肩から上を舐めたその頭越し、奥左で赤ガウンに白塗りの伯爵がこちらを無言で見ている。右からシンシアが現われ、やはりこちらを向きます。やはり無言です。正面・やや上からのショットに戻ってゆっくり進む娘たちと手前で戻ろうとするデヴィッドをとらえた後、伯爵とシンシアは連れだって背を向けそのまま左へ消える。カメラが右から左に振れれば、その左手前に無言のトミーがやはりこちら向きで立っていたことがわかります。トミーの背後に装飾格子扉がのぞいています。約1時間27~28分、1分にも満たない音のないこのシークエンスはけっこうかっこうがよかったのではないでしょうか。
 デヴィッドは廊下奥の装飾格子扉に向かいますが、開きません。格子扉の向こうには少し間を置いて木の扉が2つ並んでいます。娘たちが迫ってくる。


 伯爵とシンシアは暖炉の前に来ます。タイル床を走る足もとが少し斜め近く・上からとらえられる。シンシアの首筋に咬みつこうとする伯爵にデヴィッドの呼び声が聞こえてくる。伯爵はシンシアの手を引いて右に向かう。
 右奥へ伸びる廊下がやや下から捉えられ、右奥から左前へシルエットが走ります。伯爵とシンシアは右から左へ進む。湾曲階段が仰視され、背を向けたシルエットがのぼっていきます。伯爵とシンシアは奥から出てきたかと思えば、手前から奥へ暗い荒れた廊下を進む。デヴィッドは右から左へ、壁に掛けられた斧を取り、暗い荒れた廊下を奥へ向かいます。
 狭いのぼり階段が下から見上げられ、そこを伯爵とシンシアがのぼっていく。切り替わると狭い階段をのぼってくるデヴィッドが上から見下ろされます。1度踊り場で180度向きを変え、またのぼってくるところが俯瞰される。左上から伯爵の脚がデヴィッドを蹴ります。仰角に換わり、伯爵は上を左へ行きます。
 俯瞰でデヴィッドがのぼってくる。あがると左から両腕を前に突きだした伯爵が迫ってきます。デヴィッドを叩きのめすと伯爵は少し戻る。2つ狭い方形扉口が続く、その奥にいたシンシアの手を取って、手前と奥の扉口の間を右へ、階段をのぼっていきます。
 踊り場に落ちたデヴィッドが下から、続いて階段をのぼるデヴィッドが上からとらえられる。あがると何かに足を引っかけます。下は中庭でしょうか、3階分ほどの高さがあるようです。望楼でした。欄干上で円柱が周囲を区切っています。また両腕を前に突きだした伯爵が迫る。赤紫の記憶の断片が明滅するシンシアは、床に落ちた斧を拾いあげ、伯爵の胸に打ちこみます。伯爵はまず右手を差し伸べ、次いで両腕を前によろよろとシンシアに近づきます。情けなくも哀れな表情です。それをそっと案内するようにデヴィッドが突き落とす。下からの仰視で三人のいたのは角塔だったことがわかります。またはるか上から地面に落ちた伯爵が見下ろされる。抱きあう二人ですが、デヴィッドは吸血鬼化していました。

 ボール遊びするトミーに続いて、孤児院の外観と暗めの青空、そこへ駆け戻っていくトミーの姿を引きでとらえて幕を閉じるのでした。

 吸血鬼が人間に恋情を抱くというモティーフが全体の調子の中で功を奏しているかどうかは、いささか疑問なしとしない気がします。またうろ憶えに間違いがなければ、前作に続いて1度ならず2度までも性懲りもなく、ポランスキー『吸血鬼』の落ちを繰り返すというのは、個人的には減点ものでした。他方本作で恐怖を引きだすための焦点の一つは、吸血鬼に仕えることとなった少年の振舞でしょう。その行動は超自然の影響下にあるとして、同時に「怖いのは人間」を前提とした〈邪悪な子供〉のモティーフも混ざってきているようで、そのあたりは必ずしもすっきり割り切れない。
 とまれニュー・シネマ以後のいささか殺伐とした雰囲気の中、上で古城映画的山場と呼んだ3つのシークエンスを大ざっぱに足してみれば、どこがどうつながっているのかよくわからない薄暗い廊下や階段を、約27分近くにわたって延々と登場人物たちが行ったり来たりするさまは、本作を古城映画として記憶するに大いに値するものとしているのではないでしょうか。

Cf.,  The Horror Movies, 4、1986、p.154

ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、pp.182-183/no.183。前作『吸血鬼ヨーガ伯爵』(1970)について;pp.181、183/no.182

おまけ  ヴァロットン《ボール》1899
ヴァロットン
《ボール》
1899

 
岡田三郎助《富士ビューホテルの庭》1938
岡田三郎助
《富士ビューホテルの庭》
1938


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 2016/4/23 以後、随時修正・追補
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