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凸凹フランケンシュタインの巻
Bud Abbott & Lou Costello Meet Frankenstein
    1948年、USA 
 監督   チャールズ・バートン 
撮影   チャールズ・ヴァン・エンガー 
編集   フランク・グロス 
 美術   ヒルヤード・M・ブラウン、バーナード・ハーツブラン 
 セット装飾   オリヴァー・エマート、ラッセル・A・ガウスマン 
    約1時間23分 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

VHS
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 怪物たちが登場するドタバタ喜劇ということで、徒花扱いされたり、いや実はきちんと作られていると弁護されたりと、評価は人それぞれになってしまいますが、愛ある記述は下に挙げた菊地秀行や石田一の文章などを見ていただくとして、この映画では古城が大きな役割をはたしています。

 フロリダのどこかの沿岸、本土から小さなボートでも行ける程度の近さの孤島、そのほとんどの土地を占めている城は、物語が始まって20数分ほどで登場します。そこに至るまでにたとえば、両側に部屋が並ぶホテルの廊下、その突き当たりに階段の手すりの影が落ちるといった面白いイメージもありますが、それはともかく、城の外観は模型なのでしょう、さほど巨大な建物ではなさそうです。本丸部分に主塔と側塔がついて、塔の上端はいずれもいわゆる鋸壁になっています。主塔は高くそびえるものの、中腹部も鋸壁で囲われた通廊でいったん区切られたりしており、垂直性を強調するゴシック風味のものではなく、箱をいくつも積みあげたように見えます。場面は夜で、大きめの窓が一つ、明かりを灯している。
 ドラキュラ伯爵変じた蝙蝠が近づくと、窓は実験室のものでした。内側に倒れるような傾きをつけられたこの窓はけっこう高い位置にあって、見下ろせば、横に長い大きな梁が低い位置を横切っています。


 玄関から入ると、まっすぐ玄関広間というか廊下が伸びていて、大きなアーチを経て、突き当たりには大きく湾曲した階段が上に続いています。城の主であるサンドラ・モルネイ博士が階段を降りてきて、廊下を突っ切り、床から数段高い玄関の扉を開いて伯爵を迎えるという、移動の場面がぞくぞくさせてくれたりするのでした。その際に扉の屋内側が映って、これが手のこんだ装飾を施されています。柱とアーチによっていくつもに分割され、一つ一つに何らかの紋様が浮彫りされているというものです。この映画の城はたしかに、おそろしく宏壮に見えるセットというわけではありませんが、内装に変化のある装飾を随所で見せてくれます。
 階段と玄関の間には、たとえば、玄関から奥を見て右側の壁に、壁自体が迫りだす形になっているのか、素性はよくわからないのですが、突きだした部分があって、その上部はやはり装飾で覆われています。続く場面では、鏡の中に、湾曲するアーチと階段が映っているというショットがあります。正面の大階段を背後に控えているということなのでしょうが、物語の展開にあまり関係なく挿入されたため、かえって印象に残ってしまいました。
 玄関から入ってすぐ左側は、少し奥まって、これも特徴的な形状の暖炉を擁しており、柱を角にして交わる壁には、本棚もしつらえられています。控えの間といった感じなのでしょうか。

 廊下をさらに進むと、階段の手前、やはり左側がへっこんでいて、角をはさんで二つ扉があります。右手のものは道具入れで、左手の扉はアーチに囲まれています。後者は地下に通じていて、かなり広い空間です。煉瓦か石の暗い壁がぐるっと湾曲している。その中を木の階段が降りていき、踊り場をはさんで折れ曲がり、さらに数段降りれば、底を満たす水面に短い桟橋が、やはり一度折れつつ伸びているさまが斜め上から捉えられます。おそらく舟で入ってこれる洞窟状の入口が、島のどこか、崖になっているであろう岸にあるはずですが、残念ながらそうした光景は登場しませんでした。
 踊り場の壁はくるっと180度回転する隠し扉になっていて、奥に隠し部屋がある。実験室同様低い梁が横切り、太い柱が何本か立っている。右手の床には地下への通風口があって、そこから光が洩れだします。壁には格子状の影が映っています。少し奥には石製の椅子が配されており、そこにフランケンシュタインの怪物が休んでいるのでした。
 後の場面では、隠し部屋にはさらに石壁の隠し扉があって、そこから通路が伸びています。この通路は実験室の隠し扉へとつながるのですが、途中で枝分かれしている。枝分かれした先は、おそらく海岸に設けられた、こちらは何度か映った、陸上の入口に通じているものと思われます。


 城の2階では、まずモルネイ博士の居室が映されます。丁寧に内装されたそこは、少なくとも3部屋からなっているようです。その内二つの部屋で、女性二人が鏡台に向かうのですが、開いたままの戸口越しに会話を交わしつつ、鏡に映る像によって相手の様子を探るという、面白い空間の使い方がなされていました。
 物語のクライマックスになると、まずは異様に低い大きな梁のある実験室が舞台となります。実験室と隠し部屋双方に、低く横に走る梁が据えられているというのは、何か理由があるのでしょうか。
 実験室の大きな扉を出ると、まっすぐに廊下が伸びている。廊下の壁はやはり上の方に装飾が施され、家具や椅子、絨毯も適宜配されています。廊下の両側にはいくつもの居室に通じる扉が並び、モルネイ博士の部屋もその一つなのでしょう。フランケンシュタインの怪物に追いかけられた凸凹コンビと、狼男に追いかけられたドラキュラ伯爵がそれぞれ、これらの部屋をいったりきたりする。ごく狭い寝室だったり、奥に別の部屋のある寝室だったり、バルコニーがついていたりするのでした。
 ドタバタの追っかけであるがゆえに、廊下を軸にしつつ複数の部屋を映す機会となったわけで、セットの設営にあたってそうそういくつも部屋を組みたてるわけにはいかないことの方が普通であろうことを思えば、これは得難い事態だったのかもしれません。

 ともあれ廊下を実験室の大扉に向かって右手前には、上下に伸びる階段があって、この階は2階だったようです。上階に上がる場面は残念ながらありませんが、おそらく塔に通じているということなのでしょう。
 次の場面では屋外に移動して、門を経て桟橋が最後の場面となります。階段を駆けおり、廊下を駆け抜け、玄関から飛びだす場面がなかったのは残念ですが、1階、2階、地下にそれぞれ複数の空間を映し、さらに隠し通路まで設定してくれたことをもって、諒とすべきだというほかありますまい。

Cf.,  菊地秀行、「我がドラキュラ映画の時代」、『妖魔の宴 スーパー・ホラー・シアター ドラキュラ編 1』、1992、pp.300-302
 同、 「我が狼人間(ウィアウルフ)映画の時代」、『妖魔の宴 スーパー・ホラー・シアター 狼男編 1』、1992、pp.286-287
 同、 「我がフランケンシュタイン映画史」、『妖魔の宴 スーパー・ホラー・シアター フランケンシュタイン編 1』、1992、pp.245-251

ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、pp.78-80、83/no.035

石田一、「ドラキュラ100年史《前編》」、1997、pp.114-118

Jonathan Rigby, American Gothic: Sixty Years of Horror Cinema, 2007, pp.301-302
おまけ ジェフ・ロヴィン、友成純一訳、『狼男の逆襲』(扶桑社ミステリー ロ10-1)、扶桑社、2006
原著は Jeff Rovin, Return of the Wolf Man, 1998
『凸凹フランケンシュタインの巻』のラスト・シーンを、視点を変えて描いたのがプロローグとなっています。本篇はその数十年後の顛末。アボット&コステロ・コンビが演じた役や、透明人間の存在もなかったことにはされず、一応とはいえ言及されています。

同じ著者による→こちらを参照
訳者に関連して→こちらでも挙げています


また同じくオール・スター・キャストの小説が;
ロジャー・ゼラズニイ、森瀬繚訳、『虚ろなる十月の夜に』、2017


クライマックスが桟橋で展開、そこに炎が放たれる怪物競演ものという点で本作を参照しているのかもしれないのが;
『フレディVSジェイソン』、2003、監督:ロニー・ユー

 2014/09/12 以後、随時修正・追補
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