ホーム 宇宙論の歴史、孫引きガイド 古城と怪奇映画など 美術の話 おまけ
赤死病の仮面
The Masque of the Red Death
    1964年、USA/UK 
 監督   ロジャー・コーマン 
撮影   ニコラス・ローグ 
 編集   アン・チェウィデン 
 プロダクション・デザイン   ダニエル・ハラー 
 美術   ロバート・ジョーンズ 
 セット装飾   コリン・サウスコット 
    約1時間29分 
画面比:横×縦    2.35:1* 
    カラー 

VHS
* 手もとのソフトでは1.33:1
………………………

 上記のように手もとのVHSソフトでは画面左右が半分近くトリミングされていることになり、この映画を見たとはとても言えたものではなく、きちんと見るのはまたあらためてとなってしまいますが、ご容赦ください。

  『アッシャー家の惨劇』(1960)、『恐怖の振子』(1961)、『姦婦の生き埋葬』(1962)、『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』(1962)、連作外の『恐怖のロンドン塔』(1962)をはさんで『忍者と悪女』(1963)、また姉妹篇『古城の亡霊』(1963)をはさんで実はラヴクラフト原作の『怪談呪いの霊魂』(1963)に続くコーマンによるポー連作第7弾です。原作はタイトルどおり「赤死病の仮面」ですが、「ちんば蛙」のエピソードも加えられています。
 脚本はR.ライト・キャンベルと共同で『姦婦の生き埋葬』、『怪談呪いの霊魂』に続いてチャールズ・ボーモントが担当、音楽はデイヴィッド・リー。本作と次の『黒猫の棲む館』(1964)がイギリスで製作されたためか、連作外の『恐怖のロンドン塔』と番外篇『古城の亡霊』をのぞいてこれまで撮影を担当してきたフロイド・クロスビーに代わり、カメラマンはニコラス・ローグとなりました。ローグは『華氏451』(1966、監督:フランソワ・トリュフォー)などの撮影を担当した後、監督に転身、デュ・モーリア原作の『赤い影』(1973)、デイヴィッド・ボウイ主演の『地球に落ちて来た男』(1976)などを残しています。また下掲の『自伝』によると、「セットの倉庫に残っていた『ベケット』'63などの史劇のセットを使」ったとのことです(p.139)。
 主演はお馴染みヴィンセント・プライス。『恐怖のロンドン塔』に続いて非道な暴君役ですが、世界に対する絶望ゆえの冷笑的な態度が、しかし救済への希求と一如であるという、ロマン主義色の濃い人物像を見せてくれます。『姦婦の生き埋葬』、『忍者と悪女』に続いてヘイゼル・コートが出演、けなげな悪女に扮しています。また『アルゴ探検隊の大冒険』(1963、監督:ドン・チャフィ)でヘーラクレース役を演じたナイジェル・グリーンがヒロインの父親役で登場します。グリーンは後にハマー・フィルムの『鮮血の処女狩り』(1971)に出演しました。台詞はありませんが、やはり後にハマーの『バンパイア・ラヴァーズ』(1970)、『恐怖の吸血美女』(1971)、『ドラキュラ血のしたたり』(1971)に出ることになるハーヴェイ・ホールの顔を見つけることもできます。それではと[ allcinema ]や[ IMDb ]でチェックしてみれば、ヒロイン役のジェイン・アッシャーは『原子人間』(1955、監督:ヴァル・ゲスト→こちらを参照)に子役で、こびとの「跳ね蛙」役スキップ・マーティンは『吸血鬼サーカス団』(1972、監督:ロバート・ヤング→こちらを参照)に出ていたとのことです。やはりこびとのエスメラルダ役ヴェリーナ・グリーンロウは、かの『たたり』(1963、監督:ロバート・ワイズ)に出演していました。劇中名指されないアルフレド役のパトリック・マギーにはダニエル・ハラーが監督した『襲い狂う呪い』(1965)で再会することになるでしょう。

 闇に浮かんだ赤がギザギザ状にひろがっていき、画面を覆い尽くす冒頭に続いて、青みがかった夜、荒涼とした斜面を人物がのぼっていくさまが真横からとらえられます。人物の動きとともにカメラは右から左へ進む。この人物は老婆で、通り過ぎた木の根元に坐る赤フードの人物に呼び止められるのがプロローグです。
 続いて村にプロスペロ公(ヴィンセント・プライス)の馬車が訪れる。プロスペロはいかにも暴君然としています。文句をつけた若者ジーノ(デイヴィッド・ウェストン)と年かさの男(ナイジェル・グリーン)を処刑しようとするところを、フランチェスカ(ジェイン・アッシャー)が命乞いをする。するとどちらか一方だけ放免するから選べと迫る。フランチェスカは年かさの男の娘で、ジーノの恋人なのでした。そこに悲鳴が響き、行ってみれば赤死病です。プロスペロは慌てて馬車で城に戻る。村は焼き払わせ、もちろんフランチェスカを攫うことも忘れてはいません。

 馬車の一行が画面下を右から左へ走ります。左右に葉の落ちた木々が立ち、奥に山上の城が見える。シルエットの状態で、城壁と何本かの塔からなっています。
 燃える村の様子がはさまれる。手前で斜めになった十字架が燃えています。
 城門に馬車が入っていく。城門は斜め下から見上げられ、上辺沿いに鋸歯型胸壁が並んでいます。壁は右で手前に折れている。城壁の上には鋸歯型胸壁をいただいた塔、尖り屋根の塔などがそびえています。
 馬車は前庭に入り、おりたプロスペロたちが右から左へ進むと、カメラもそれを追います。先に玄関がある。プロスペロがヴェローナやフィレンツェの諸公に集まるよう連絡しろという点からして、舞台は北イタリアのようです。ヴェルガの名も挙がりますが、こちらは不明。火を放った村の名はカターニアとのことで、これが一番城に近いはずですが、シチリアのカターニアではないでしょうから、こちらも実在するのか架空の地名なのかはわかりませんでした。

 フランチェスカが無理矢理風呂に放りこまれます。あちこちにかかるカーテンを始めとして、柱やバルコニーの欄干もすべて真っ白です。浴槽の両側には大きな金の鳥型装飾が添えられています。奥の壁は黒っぽく、凹凸があるように見える六角形が連なっています。床は黒白の市松模様でした。この先の配色効果を期待させてくれるセットです。
 プロスペロはフランチェスカに城内では十字架を身につけるなと言う。


 広間です。壁は石積みですが、いろいろと豪奢に飾られています。時計、暖炉、右上がりの階段。尖頭アーチも2つ以上見えます。多方向に分岐しているようで、これは『忍者と悪女』や「怪異ミイラの恐怖」、『古城の亡霊』、『怪談呪いの霊魂』の場合に対応するプランなのでしょう。まわりに大勢の人々がいる。『怪談呪いの霊魂』で暴徒と化する村人たちが登場したものの、それ以前の連作では人数の少なさこそが特徴をなしていたのに比べると、今回はずいぶん賑やかでした。一同の中にはハーヴェイ・ホールの顔がありました。
 プロスペロは右から左へぐるっと円を描いて、ほぼ一回転広間をまわり、カメラもやや下からそれを追います。大きな犬を連れた「跳ね蛙」(スキップ・マーティン)がこびとのエスメラルダ(ヴェリーナ・グリーンロウ)をエスコートし、エスメラルダが踊りを披露しますが、白髪の貴族、[ IMDb ]によるとアルフレド(パトリック・マギー)が邪険にする。プロスペロは安息日の真夜中に仮装舞踏会を開く、ただし赤は身につけるなと言います。
 階段は床から壁に向かって数段あがり、踊り場を経て壁に沿う形で右上がりになっていることがわかります。あがると左に回廊が伸びていく。手すりの一番下の支え柱の上に燭台が置かれ、蠟燭の柱身は青でした。『姦婦の生き埋葬』、「怪異ミイラの恐怖」、『忍者と悪女』、『古城の亡霊』、『怪談呪いの霊魂』と蠟燭は基本的に赤かさもなくば白だったのが、本作と次の『黒猫の棲む館』(1964)では青、緑、白になります。イギリス製作に関係があるのでしょうか。
 プロスペロはフランチェスカを連れて、広間に面した扉口から壁一面黄色で覆われた部屋に入ります。壁の上方には6つ葉型の窓がある。部屋はさほど広くありません。黄の部屋の奥は紫の部屋につながっている。仕様は黄の部屋と同じようです。さらに白の部屋が続く。奥には黒い扉がありますが、そこはだめだと入るのを許しません。
 この間の会話から、プロスペロはさまざまな研究を重ねた末にこの世に絶望したことがわかります。広間では居並ぶ面々を笑い者にしていたのですが、その時とは打って変わった憂いを感じさせてくれます。
 プロスペロにジュリアーナ(ヘイゼル・コート)が儀式への心構えはできたと告げます。プロスペロは保身のためかといたって冷たい。ジュリアーナの身分等はよくわかりませんでした。

 吹きこむ風とともにカメラが右から左へ回りこみ、前進する。明かりを落とした白いカーテンだらけの寝室で、正面にフランチェスカの眠る寝台があります。途中で捻り柱がちらっと見えます。カメラは寝台の正面から左脇に回る。フランチェスカが飛び起きると、視線の先にはバルコニーが横に伸びており、夜空の下に風景がひろがっています。カメラは左から右へ振られる。フランチェスカは起きあがり、蠟燭を手に室内を回る。カメラもそれに従います。呪文を唱えるかのような声がどこからか聞こえてくる。部屋の両側に細かく斜め格子をうがった白塗りのパネルがあります。左手には下方でまとめたカーテンが上からかかり、その右にまっすぐ垂らされた白カーテンが2本並んでいます。2本のカーテンの間に、黒くシルエットと化した装飾的な柱が配されている。左右のカーテンの間、その奥に扉があり、こちらは粗めの斜め格子です。フランチェスカは扉から出ていきます。
 暗い廊下を右から左へ進む。カメラも引きでそれを追います。カットが切り替わると、右奥から手前に折れ、左手前に進む。カメラは肩から上をとらえつつ従います。連作ではお馴染みのショットです。
 手前に大きくシャンデリアが配される。蠟燭は白と緑です。その向こうを左から右へ進む。広間から階段をあがった先の回廊でした。右で階段を左下へおります。カメラもまた。先に半円アーチの扉があります。木の扉に金色の金属装飾が施されている。フランチェスカは階段をおりて右から左に歩み、カメラも胸から上をとらえつつその動きをなぞります。
 扉を開き中へ、背を向けてまっすぐ奥へ進む。カメラは前進します。扉をいくつか越え、4つ目の部屋では暗い中、フランチェスカ、そして椅子に腰かけるジュリアーナに赤い照明が当てられる。見下ろすとプロスペロが目を閉じて横たわっています。こちらは普通の照明でした。フランチェスカがこわごわ手を伸ばすと、かっと目を見開きます。フランチェスカは悲鳴を上げ、切り替われば背を向けて3つの部屋を通って来た方へ戻る。上から広間が見下ろされ、フランチェスカはここを斜めに横切り、階段を駈けのぼる。カメラは左から右へそれを追い、フランチェスカが曲がれば応じて左に折れる。廊下を駆けます。アルフレドに出くわすのでした。


 朝、城の外観がやや下から見上げられます。城壁といくつかの塔があり、あざやかな茶色です。手前にY字型をなす葉の落ちた木が立っています。空は水色に白い雲で占められている。
 中庭でしょうか、石積み壁に囲まれた空間で鷹が鳩をしとめます。プロスペロはフランチェスカに、自分の主はサタン、堕ちた天使だ、神は死んだと述べる。城門の前に馬車がやって来るのが高い位置から見下ろされ、2人のいたのが広めのバルコニーか何かだとわかります。中に入れてくれと懇願するスカルラッティ公をプロスペロは矢で射殺し、その妻には自殺用のナイフを投げ落とす。


 地下牢です。石積み壁に縦格子をはめたきわめて幅の広い半円アーチがいくつもあり、薄暗いといういかにもいかにもなセットでした。ただしこれまでの連作における地下下りとは違って、上の階からおりてくる過程が描かれないのはいささか淋しい(後の場面で少しだけくだるところ、また下から上へのぼるところが出てきます)。ジーノに剣が渡され、ちゃんばらが挿入されます。
 フランチェスカとプロスペロは地下牢巡りをします。暗い中を左から右へ進む。途中で手前に大きく燭台が映り、また奥に右上がりの階段が見えたりします。踏面に仄かな光が当たっている。日本語字幕によるとプロスペロはフランチェスカに、サタンは現実と真実の神だ、お前の神は死んだがサタンは我々の力でまだ生きてる、我々が力を失なえば一切は混沌の闇となるだろう、お前を傷つけるつもりはない、ともに地獄の栄光に浴そう、残酷な光を通りぬけ、漆黒の闇へと語ります。フランチェスカに対する穏やかな態度も含めて、プロスペロの絶望そのものに救済を求める態度がなかなか印象的でした。ヴィンセント・プライスの見せ場です。


 他方、ジュリアーナはベリアルに祈りを捧げ、焼き鏝で自らの胸に逆十字の烙印を押している。
 また下から階段上部がとらえられ、欄干に腰かけていた跳ね蛙は、アルフレドと階段をおりながら宴での余興を持ちかけます。2人が階段をおりる際カメラは右上から左下に撫で、広間に着くと水平になる。2人が暖炉の前で話す時には暖炉の火越しに映します。跳ね蛙が趣向を話すさまは少し上からとらえられ、手前に大きく緑蠟燭がとりこまれる。

 カメラが左から右へ振られると、再び明かりを落とした部屋の寝台で眠るフランチェスカです。目を開くとカメラは右から左へ動く。起きあがって右から左へ進みます。カメラもそれを追う。ジュリアーナが入ってきます。くたびれた様子です。バルコニーに通じる柱にもたれかかります。開口部をはさんで右に白い捻り柱があります。風でカーテンが揺れる。
 日本語字幕によればジュリアーナはフランチェスカに、次は第2の儀式だ、純真さは消え悪徳に代わる、その時こそ公をわが手にすると語ります。先の場面でプロスペロからは保身と決めつけられていましたが、ここでの印象はむしろ一途な純愛のそれでしょう。ヘイゼル・コートの見せ場でした。ジュリアーナはフランチェスカに、あなたがいなくなってくれたらと、地下牢の鍵を渡します。


 階段をおりてくるフランチェスカの足もとが、アップで下から見上げられます。薄紫の服を着ています。カメラが左から右へ動くと、全身がとらえられる。フランチェスカ単独での地下牢巡りです。牢番たちの詰め所の向こうをこっそり抜け、奥から手前へ進む。右の格子戸を開け中に入ります。地下牢なので暗い。肩から上の姿で、右から左へ、次いで奥から手前へ、また左から右へ、換わって奥から手前を経て右へ進みます。ジーノと父を見つけだし、2人とともに左手前から奥へ、切り替わって右から左へ、次いで右奥から左手前へ進む。右に折れ奥へ行き、今度は右から出てきて詰め所の向こうを左へ進みます。牢番たちが出てきて格闘になる。何とか倒して右から左へ、次に右奥から左手前へ、幅の狭い階段をのぼる。奥から手前へやって来てカメラの前を横切り右へ、すると城壁の歩廊に出ました。背を向けた番兵が立っています。ジュリアーナが話をつけたと言っていたので声をかければ、兵士姿のプロスペロなのでした。

 広間で宴が催されています。まもなく仮装の準備だとプロスペロが告げます。ここまでで約46分強、ほぼ半分でした。
 その前にと、ジーノとフランチェスカの父が引きだされ、プロスペロがその前にテーブルに突きたてていた5本の短剣で自分に傷をつけろと命じる。5本の内1本だけ毒が塗ってあるというのです。父から始めます。ハーヴェイ・ホールのアップが混ざります。5本目になったところでプロスペロの表情に揺れが浮かび、最後の短剣を取ろうとした父を自ら刺す。いったんジーノも殺せといい、お前の神はどこにいると問う。ジーノが楽園で会うと答えると、止めた、自由にしてやる、村へ放てと命じる。村には赤死病が蔓延しているわけです。フランチェスカが自分もいっしょにというと、気遣わしげに行かせられないと止める。
 プロスペロのフランチェスカに対する態度は、当初無垢なものを堕落させることを目的としており、それは最後まで変わらないのでしょうが、それにしてもフランチェスカとともにいることに執着しているようです。なかなか泣かせる点でした。
 プロスペロは仮装の準備にかかれ、真夜中以前に姿を見せるなと皆に言います。


 夜の城門が斜め下から見上げられます。ジーノはつまみ出され、森を右へ進みます。声に見上げると城壁が下からとらえられます。また右へ進み、切り替われば左へ走る。つまずいて倒れると、木の下に赤フードの人物がいます。ジーノが怖いんだというと、彼にカードを1枚与え、意味は?と問う。人だとのことです。ジーノは右奥へ走ります。
 城内の1室ではアルフレドが類人猿に扮し、跳ね蛙がおだてています。
 夜の森でジーノは葬列に出会います。彼らは城へ向かっているのでした。ジーノは止めようとしますがかないません。

 ジュリアーナが赤いドレスで祈っています。杯の赤い酒を飲み干すと、画面が歪み青く染まります。『忍者と悪女』、『古城の亡霊』、『怪談呪いの霊魂』では出てこなかった惑乱場面の復活です。カーテンの間を上を見ながらさまよい、次はベッドで動けなくなっている。蛮人が踊り、白装束の老人、東洋人、また蛮人が登場します。太鼓がドンドン鳴っています。
 ジュリアーナは腰かける。上から見下ろすカメラがゆっくり後退します。「まだだ」の声に白い部屋に行く。声はプライスのものです。また「まだだ」で紫の部屋へ、次いで黄の部屋へ、そして広間に奥の尖頭アーチから出てきます。アーチの向こうに黄の部屋が見える。このアーチの左に小さな半円アーチがあり、2段ほどのぼれば暗がりに通じています。手前では時計の振子が大きくシルエットと化して揺れています。ジュリアーナは鷹に襲われるのでした。フランチェスカと他の一同、そしてプロスペロが現われる。プロスペロの態度はいたって冷たく、ジュリアーナの亡骸を片づけさせる。
 プロスペロとフランチェスカの本筋に対し、ジュリアーナの副プロットと跳ね蛙のプロット筋が設けられているわけですが、いずれもクライマックスの前に収束します。ただ、とりわけジュリアーナの部分は本筋に対する位置づけがいささかわかりづらいような気がしました。
 とまれプロスペロは舞踏会だと告げる。約1時間4分でした。


 葬列が城門前まで来たのが、城壁の番兵によって上から見下ろされます。ジーノは止めようとしますが、村人は魂より躰だ、お前は赤死病を知らんという。ジーノは君たちは牢を知らんと答える。プロスペロは弓隊を呼び、子供は残せと言う。

 プロスペロが背を向け回廊から見下ろすと、下の広間で色とりどりの面々が踊っています。プロスペロはフランチェスカの手を取り、右手の階段をおります。カメラは左から右へ振られ、踊り場では2人をほぼ真上から見下ろします。
 一方ジーノは城壁に鉤をつけたロープを投げあげる。城壁はかなり下からとらえられています。ジーノが城壁をよじ登る姿が、斜め下から見上げられる。左上から右下にかけて城壁が伸び、奥にはごつい方形の棟が高くそびえています。何とか上に登り切ると、赤フードが待っていました。顔の部分は暗がりになっています。
 今度は一室でエスメラルダで踊りの稽古をしています。そこへ跳ね蛙がやってきて、舞踏会には出なくていい、私を信じてくれと言う。
 階段から類人猿に扮したアルフレドがおりてきます。跳ね蛙は下におろした緑蠟燭のシャンデリアに類人猿を縛りつけ、吊りあげる。そしてエスメラルダをいじめた罰だといって火をつけるのでした。その様子を見ていたフランチェスカはしかし、無感動の態です。

 赤フードが背を向け奥へ向かうのを見かけたプロスペロは、赤い衣装は禁じておいたのにと、フランチェスカとともに追いかけます。赤フードは黄の部屋へ入っていき、踊る面々の向こうを左から右へ進む。プロスペロとフランチェスカも続きます。そのまま紫の部屋がやや下から見上げられ、カメラも壁越しで左から右へ平行に動く。さらに白の部屋を経て、黒の部屋です。ここでは照明が赤く、窓も赤い。
 サタンの来訪と思いこんだプロスペロが顔を見たいというと、赤フードは死神に顔はない、私は使者にすぎないと答えます。右手前に大きく赤フードの背が、左少し奥にこちら向きのプロスペロ、奥右寄りに少し小さくフランチェスカが配されます。
 赤フードは仮面を外す時だと告げ、右から左へ、黒の部屋、白の部屋、紫の部屋、黄の部屋、そして広間に出ます。「新しい踊りは死の舞踏だ」といって赤いマントを掲げると、その向こうにいた人物は赤死病の症状を示すのでした。ティンパニから始まる曲が流れ、人々はいったん動きを止め、それから踊り始めます。
 プロスペロはフランチェスカのことを、この娘は誰よりも篤い信仰を持っている、お助けをと乞う。それに対し赤フードは屋根へ行けと答えます。プロスペロは行け、すんだら私も行くと言い添える。フランチェスカはプロスペロの頬にキスし、行きかけては振り返り、そして退場するのでした。
 上から赤フードとプロスペロが見下ろされます。背後では一同が踊っている。プロスペロが王よと呼びかけると、赤フードは死に王はいないという。プロスペロが神は死んだ、サタンが殺したといえば、赤フードは各人が自分の王だ、自分の地獄を創造すると答えます。
 どうもおかしいとプロスペロは顔を見せろと詰め寄る。仮面を外したその顔は赤く染まったプロスペロ自身のものでした。無表情です。お前の地獄だ、そしてお前の死の瞬間だと赤プロスペロが告げる。プロスペロは"No!"と叫びます。他の面々が彼にまとわりつき、最後に他の面々は皆倒れてしまう。
 プロスペロは右から左へ動きます。カメラは斜め上から、そして右から左へ回りこむ。背を向け黄の部屋へ入るさまが上から見下ろされます。振り向き振り向きしながら紫の部屋へ、次いで白の部屋に入っていくさまがやや下からとらえられる。カメラは揺れています。一番奥の黒と赤の部屋にたどり着くと、赤プロスペロがすでに待っているのでした。「なぜ死を恐れる? 魂はとうに死んでいるのに」。


 木のたもとで赤フードが少女とカード遊びをしています。黒フード、そして黄フード、白フードが合流する。あちらで何万人、こちらで何万人に平穏をもたらしてきたと報告しあう。赤フードは6名だけ残った、若者と娘、こびとと小さなダンサー、この娘、村の老人が1人という。フードたちは左から右へ去っていき、エンド・マークとなるのでした。死神たちはプロスペロが求めたサタンではなく、といってフランチェスカが信じた神でもなく、善にも悪にも関わらない不可避の力をただ行使するだけなのでしょう。
 今回はクレジットは後付けです。冒頭同様、黒にギザギザした赤がひろがっていき、一面の赤となる。物語の縮図ということなのでしょうか。上寄りに縦長のカードが置かれ、その下にカードを並べていく手が真上からとらえられます。露出過多になり、最後の1枚のみ斜めに傾いて、他のカードが消えると斜めのカードには髑髏が描かれています。

Cf.,  北島明弘、『映画で読むエドガー・アラン・ポー』、2009、pp.94-95

ロジャー・コーマン、ジム・ジェローム、『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか-ロジャー・コーマン自伝』、1992、pp.138-140

Jonathan Rigby, English Gothic. A Century of Horror Cinema, 2002, pp.105-107

Jonathan Rigby, Studies in Terror. Landmarks of Horror Cinema, 2011, pp.124-125

Joel Eisner, The Price of Fear. The Film Career of Vincent Price; In His Own Words, 2013, pp.144-145

原作等については;
松村達雄訳、「赤死病の仮面」、『ポオ全集 2』、東京創元新社、1970、pp.99-107
原著は
Edgar Allan Poe, "The Masque of the Red Death", 1842

永川玲二訳、「ちんば蛙」、『ポオ全集 2』、東京創元新社、1970、pp.560-571
原著は
Edgar Allan Poe, "Hop-Frog", 1849

ポーについては→「viii. エドガー・アラン・ポー(1809-1849)など」(<「ロマン主義、近代など(18世紀末~19世紀)」<「宇宙論の歴史、孫引きガイド」)も参照

なお本作の一部場面が挿入されるのが;
『マッドハウス』、1974、監督:ジム・クラーク
こちらで少し触れました

 2015/4/16 以後、随時修正・追補
   HOME古城と怪奇映画など赤死病の仮面 1964