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鮮血の処女狩り
Countess Dracula
    1971年、イギリス 
 監督   ピーター・サスディ 
撮影   ケン・タルボット 
編集   ヘンリー・リチャードソン 
 美術   フィリップ・ハリソン 
 セット・デザイン   ティム・ハッチンソン 
    約1時間30分* 
画面比:横×縦    1.66:1** 
    カラー 

ケーブルテレビで放映
* [ IMDb ]によると、1時間33分。
** [ IMDb ]によると、USA版では1.85 : 1
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 エルゼベエト・バートリことバートリ・エルジェーベト(1560-1614)を題材にした作品で、史実をそのままなぞるわけではさらさらないにせよ、実録ものが個人的に苦手なせいなこともあってか、以前レンタル・ヴィデオで見た時にはあまり強い印象は受けなかったとの憶えがあります。バートリの話ならお城も出てくるだろうと今回見直してみれば、おのが第1印象および記憶のいい加減さを今さらながら思い知らされずにいませんでした。古城です。廊下も大活躍します。登場人物が行ったり来たりします。階段は2つ以上あり、しかもクライマックスの舞台はその内の1つです。空間もけっこう複数の種類出てきます。隠し扉もあります。ついでに捻り柱やグロッタも登場します。美術がバーナード・ロビンソンではないとはいえ、この時期のハマー・フィルムの作品としてはセットをいくつも作っているようです。というわけでお話はともかく、古城映画的には見逃せない1本なのでした。ちなみに史実ネタとはいえ、血を浴びれば若返りするという超自然現象が起きます。
 監督は『ドラキュラ血の味』(1970)に続いてピーター・サスディ、音楽はハリー・ロビンソンことハリー・ロバートソン、主演は『バンパイア・ラヴァーズ』(1970)のイングリッド・ピットで、金髪が似合っているかどうかは微妙な気もしますが、老けた姿と若返った姿でがんばっております。助演のナイジェル・グリーンは見覚えがあると思ったら、レイ・ハリーハウゼン特撮の代表作の1つ『アルゴ探検隊の大冒険』(1963、監督:ドン・チャフィ)でヘーラクレース役でした。ロジャー・コーマンの『赤死病の仮面』(1964)などにも出ています。

 森の奥から馬に乗った男がやって来ます。葉叢の緑と地面の茶色との対比があざやかです。目を上げると木立越しに城が見えます。城壁の上、左に塔が2つ、右に1つある。左の2つの内左奥のものは円塔、右前のものは角塔で、双方鋸歯型胸壁をいただいている。右前の塔は上に尖り屋根の小塔を載せています。右手の塔は角塔で、やはり上に小塔がある。城は全体に赤みがかった茶色です。後に角度を変えた眺めも映ることでしょう。
 少し進むと先で葬儀が行なわれています。男はそこに参列します。
 [ IMDb ]の"Did You Know? - Trivia"によると、続くオープニング・クレジットで映されるのはハンガリーの画家チョーク・イシュトヴァーン Csók István ( István Csók, 1865-1961) による1896年の作品で、バートリの行状を描いたものとのことです。
 町の中に城門があります。門の右手の城壁は少し斜めに傾斜している。

 城内のある部屋でナーダシュディ Nádasdy 伯爵の遺言が開封されます。縦溝の入った円柱が何本もあります。この部屋には後に再訪しましょう。
 両脇に装飾的な柱が浮彫された扉を出ると、半円アーチがいくつもある空間です。壁は明るい灰色の石です。ここからは少なくとも2つの通路に枝分かれしているようです。半円アーチには他にも扉のついたもの、少し凹んで壁になるものも見える。この空間が本作での肝の1つでしょう。
 画面左奥への通路で伯爵夫人エリザベス(イングリッド・ピット)とドビー大尉(ナイジェル・グリーン)が話しているようです。手前に騎馬の男イムレ・トース中尉(サンダー・エレス)とファビオ博士(モーリス・デナム)が出てきて前へ進みます。カメラは後退する。2人は右に曲がり、背を見せて奥へ歩きます。左側は壁のようで、右側は吹抜に面した回廊です。欄干に沿って半円アーチが連なるとともに、回廊の天井もいくつもの半円アーチによって区切られています。この城では半円アーチが多い。
 2人は回廊の先で右へ曲がる。下への階段があります。階段の上にも半円アーチが連なっています。階段は左が壁で、右が吹抜ですが、双方に欄干があります。階段をおりた先の突きあたりには上方に薔薇窓が見えます。その下に十字架があり、祭壇というか城の礼拝堂になっているようです。
 夫人が回廊の欄干のところに立つ姿が下から見上げられる。背後の壁には様式化された騎馬像が描かれています。2人は階段をおりて手前へ進みます。奥に吹抜と回廊が見える。階段は画面の右に隠れています。回廊には半円アーチが2つ並んでおり、右のアーチの下、1階部分には奥への出入り口があります。左のアーチの下には遠く夫人がいて、2人が手前で話している間に左の方へ戻っていきます。2人は手前左側の扉に入っていく。

 夫人の部屋です。ドビーと夫人は20年来の仲だということですが、夫人の方はイムレに気を引かれているらしい。部屋の奥には浴槽があって、さらにその奥はグロッタになっています。
 夫人の怒りを買った小間使いが泣きながら螺旋階段をのぼります。画面手前は斜め格子で覆われ、その向こうを右下から手前へ、そして左上へあがっていく。壁は湾曲しています。小間使いは下から現われ、あがった先の左手の扉へ入る。寝台以外何もない寒そうな部屋です。奥に凹みの中に小さな窓が設けてあります。
 夫人の部屋に戻れば、浴槽には天蓋がついており、それを緑がかった石製の捻り柱が支えています。色は画面によって違って見えることでしょう。小間使いの血を浴びた肌がつるつるしていることに気づいた夫人は、側仕え(?)のジュリー(ペイシェンス・コリエ)とともに小間使いの部屋へ行く。側仕えと書きましたがジュリーの身分はよくわかりません。家族ではないにせよ、単なる使用人でもないようで、後に食事の場面では夫人やドビー、博士らと同席していました。


 ドビーが町から城門に入っていきます。門の扉は半円アーチで、両脇に太めの円柱が控えていることがわかります。次いで左手前の扉を開けて出てくる。奥に吹抜の回廊、右に階段のある広間です。先にイムレと博士が出た扉にあたるのでしょうか。ドビーは背を向けて奥へ進む。左手に黒いテーブルが見えます。また階段は下方で向かって左に折れ、数段で床に達する。
 ドビーは2階の廊下を奥から手前へ歩いてきます。廊下の奥、右斜め方向に半円アーチの左半分がのぞいています。廊下は幅があまり広くはなく、薄暗い。やはり半円アーチで区切られ、右の壁は何やら壁画で飾られています。この廊下が古城映画としての本作における第2の肝でしょう。
 手前左の柱は少し斜めに見えます。これは手前の空間が方形ではなく、多角形をなしているためであることがすぐに映されます。ここは先に出てきた、広間の階段をあがり回廊を進んだ先の第1の多角形空間に対し、廊下をはさんだ第2のものとなります。第1のものは書斎に面し、第2のものはすぐわかるように夫人の部屋などにつながっています。
 ドビーは手前を横切ります。奥に装飾的な黒い鉄の仕切りがあり、その向こうは階段のようで、上に窓らしきものが見える。後の場面でジュリーがここをのぼっていきます。背中を向けて斜め右奥にある黒い扉に入ります。扉の高さは低く、両脇にやはり装飾的な柱状浮彫がある。
 扉は夫人の部屋のものでした。入るとすぐ浴槽が見えます。これは前回出た扉の反対側に位置することになる。浴槽の向かいには左右から仕切りが出て、その奥は広い窓です。前回の扉はその右側に見える。左手の壁には暖炉があります。

 翌日、城を離れていた伯爵と夫人の娘イロナ(レスリー=アン・ダウン)が馬車で戻ってきます。しかしドビーの手の者によって誘拐され、森の小屋に監禁されてしまう。
 城の広間です。テーブルの奥、回廊の下には2つ半円アーチが並び、少し凹んで双方壁画で飾られています。その右に奥への通路があるのは前にも見えましたが、今回左側にも出入り口が開いていることがわかります。向かって右が階段で、その向かい、左の壁には暖炉がある。
 イロナの監禁されている小屋では、壁から出た白っぽい仕切り壁に大きな縦長の楕円が穿たれています。


 暗い廊下が正面からとらえられる。奥の右から夫人とイムレが出てきます。夫人は廊下左側の壁画がラファエッロのものと言いますが、画面には映りません。カメラが左から右へ首を振るとともに、2人はその前を横切って背を見せます。多角形の空間その2です。左の壁に伯爵の祖父の肖像画、奥に階段と窓のある前出の仕切りをはさんで、右の壁には祖母の肖像画がかけられています。祖母の肖像画の壁のさらに右は夫人の部屋の扉です。
 2人はさらに右へ行き、暗い部屋に入ります。奥には紫の布をかぶせたベッドがあり、その手前は半円アーチをいただいています。ベッドの右に鉄の柵がある。高さは首あたりまででしょうか。その上にも半円アーチがあります。柵の向こうには壁龕が見え、蠟燭が3本置いてある。ここを左へまわると、ベッドの左側・奥に出ます。その前は鉄格子で区切られています。その右奥にも飾り格子が見えます。


 中庭らしきところに、大きな6角形の木製の鳥籠が配されています。おそらくはこれと同じであろうものに『ドラキュラ血のしたたり』(1971)で再会できるはずです。その奥は左右に壁があり、左奥が外への出口になっている。左側の壁は鳥籠の少し向こうで左に折れ、尖頭アーチが穿たれその奥に扉があります。
 夜の城の外観が映る。城は丘の上にあるようです。冒頭とは角度が違っていて、3つの塔は間をあけて見えます。左の塔は上に鋸歯型胸壁、真ん中の塔も同様で、しかし右上に小塔がある。真ん中の塔と右の塔との間の城壁は左の塔と真ん中の塔との間のそれより高く、鋸歯型胸壁を走らせています。右の塔は上すぼみの台形の屋根で、左上に真ん中の塔のものより細い小塔が附属しています。
 中庭でイムレが上を見上げると、かなり斜め下からの角度で、右に奥行きがあまりない扁平な角塔が映されます。その半分くらいの高さから左へ城壁が伸びており、鋸歯型胸壁をのせています。右端の塔となるのでしょうか。角塔の中央には小さな窓があり、そこに灯りがともる。
 灯りを見てイムレは尖頭アーチの奥の扉を入ります。中は螺旋階段です。右上に篝火がさしてありますが、内部は薄暗い。上から若返った夫人がおりてきます。左下の壁はゆらゆらした光を大きく照り返している。
 2人が階段をのぼると出てくるのは、壁に嵌められた鏡台が奥へ回転して開く隠し扉でした。鏡台の左右の壁にはバロック風というのかロココ風というのでしょうか、浅浮彫が彫られています。2人は向こうを下からあがってくる。隠し通路の登場はうれしいかぎりですが、考えてみると中庭に面した入口から直接隠し扉に通じるというのはあまり意味をなしますまい。中庭からの螺旋階段と隠し扉の向こうの階段との間にもう1段階なければいけないはずですが、それは諸般の事情により描かれなかったということにしておきましょう。
 さて隠し扉のあるのはどこかの室内ではなく、多角形空間です。鏡台の左に扉があり、そのさらに左で奥への廊下が伸びています。廊下を進んだ先にも別の多角形空間があり、2人はそこを右へ曲がります。他方、廊下口をはさんで左側の扉から博士が顔を出します。博士が中に戻るとそこは遺言状が開封された部屋で、奥は書斎になっているようです。ということはこれは第1の多角形空間で、廊下の先が第2号ということでしょうか。他方2人が向かったのは前に出てきた紫のベッドのある部屋でした。抱きあう夫人は、しかし鏡に映った顔が元に戻っていることに気づく。


 町にサーカスが来ます。また城の台所が映ります。台所は後にも再登場することでしょう。
 再度若返った夫人が馬に乗って町の方へ向かう姿が背中側からとらえられます。その際通りをはさむ左右の町屋の壁が中央に傾いでいるように見えます。2人は遠乗りに出かける。川沿いの森です。ハマー・フィルムお馴染みのロケ地でしょうか。
 階段の上から博士が広間を見下ろします。暖炉の左手で壁が折れ、そちらに窓のあることがわかります。階段をおりてきた博士がドビーと話すさまが、やや下からとらえられる。背後に階段が見えます。階段は下方の踊り場で折れて一方で広間におりてくるわけですが、踊り場からまっすぐ伸びるものにも枝分かれてしていることがわかります。ドビーは階段の方へ背を向けて進む。この構図にも後に再会することでしょう。
 イロナの監禁された小屋の中が暗かったり、森でサーカスの占い女の死体が発見されたりした後、ドビーとイムレは町の酒場に入ります。壁に対して斜めの角度で撮影され、右奥には縦の装飾柱が並ぶ窓、角をはさんで左奥にはアーケード状の窓が同時に見えます。手前には斜めになったテーブルが大きく配される。梁は低い。
 また酒場の女が噂話として、夫人は悪魔と取引した魔女の血を引いており、祖先はドラゴンと関係があると語ります。これは同郷のドラキュラのことを暗示しているのでしょうか。
 眠る夫人がうなされ、また老化してしまう。画面の手前を斜め格子が覆い、その向こうから夫人がはりつきます。あたかも牢のようです。暗い部屋で嘆く夫人をとらえるカメラは揺れます。

 画面両側から灰緑色の石壁が迫っています。奥には尖頭アーチがあり、まわりは柿色、アーチの内側は黒い。上から見下ろした角度で、アーチの位置は低く、手前に階段があります。酒場女、イムレ、ドビーがあがってくる。
 あがった先は鏡台の隠し扉でした。すぐ右の扉を入ります。中は狭い部屋です。
 嘆く夫人をカメラは浴槽の奥からまっすぐとらえます。両脇で赤く見える捻り柱がかすんでいる。突きあたりに窓が見えます。
 ドビーは狭い部屋を出て、左奥から手前へ進む。上に半円アーチがあります。すると右側の壁画が、描かれた人物の頭の輪郭に沿っているかのように開く。中から博士が出てきます。珍しい地図を見つけた、秘密の通路だ、通路の順番を考えてみたというのです。残念至極にもその詳細は展開されません。
 博士は奥へ戻り、それを見送るドビーの背が映ります。カメラの位置が逆転すれば、博士は手前左の扉に入ります。書斎です。ドビーは手前を向いてから、奥へ背を見せて廊下を進む。
 その先で扉を開けると夫人の部屋です。カメラは斜めから水平に、また斜めになる。横から2人を斜めに映したりもします。
 廊下の奥に夫人の部屋の扉が見えます。ドビーと夫人は手前へ進んでくる。手前右側の扉を開くと、狭い部屋で、すぐ先にベッドが横に配されています。
 またドビーと夫人は廊下を奥へ背を向けて進みます。それを博士が扉の影でうかがっています。
 酒場女の血は効果がありませんでした。
 ドビーは廊下を奥から手前へ走ってきます。手前で左に折れて書斎に入る。カメラも左へ首を振ります。ドビーは背を向けて中へ入ります。書斎の奥では縦縞入りの円柱が何本もセットになり、しかもセットが何組もあります。この柱群の配置に構造的な意味はあまりなさそうです。奥の扉から夫人が入ってくる。博士はドビーの探していた本の「血の贄の章」を開き、処女の血でないと効果がないという。


 町で市が開かれています。ドビーとともにカメラは右から左へ動きます。
 朝になってイムレが右側の扉から出てきます。左に廊下があり、奥から小間使いがやって来て手前を左へ曲がる。イムレは廊下を奥へ進みます。行き先は紫のベッドの部屋です。元に戻った夫人がいます。イムレはここをイロナの部屋と思っていました。夫人はイムレを「息子よ my son」と呼びます。
 小屋でイロナは脱出をはかるも失敗します。
 廊下を奥からイムレが進んできます。博士から事情を聞こうとする。
 塔の螺旋階段にイムレが現われる。カメラはやや下からとらえます。奥の壁は松明の光にゆらゆらしています。隠し扉から出ていったん廊下の奥へ進み、様子をうかがってから戻り書斎に入る。中は暗い。奥へ行くと博士は円形の天窓の下にかかったシャンデリアで首を吊っていました。それをカメラは下からとらえます。そのままカメラが右下を向くと、いったん暗がりになり、書棚が映る。その下でドビーが椅子に坐っています。


 第1多角形空間の奥の扉からドビーとイムレが出てきます。2人の背が廊下を奥へ進むとともにカメラは前進する。突きあたりの扉を入ります。カメラは右を向き、血まみれの若返った夫人が浴槽にいました。イムレが夫人を拒むと、夫人は居直って戸棚の奥に隠した酒場女の死体を示し、あなたが殺したという。そして今度は若い姿で「息子よ my son」と呼ぶのでした。イングリッド・ピット、迫力があります。

 博士の死体とともに階段をおりる一行をカメラは真横からとらえます。次いで下向きになり、一行の背を上から見下ろす。階段を踊り場からまっすぐおりた先の床が青く照り返しています。一行はそちらへ進む。広間で話すドビーと警視がやや下からとらえられます。奥に階段があって、以前のドビー+博士と同じ構図です。カメラは右から左へ動き、奥に回廊が見えます。
 その頃台所では使用人2人が「この城は呪われている」と言って出ていこうとします。曹長がそれを止めると、今度は呼び声がかかる。曹長たちは奥へ進み、いったん数段のぼり、カットが換わると向こうにあるらしき階段を奥からおりてきます。その先は酒蔵です。そこで女たちの死体が見つかります。
 階段をおりてくる若返った夫人、ジュリー、それに魂の抜けたようなイムレをカメラは正面・下から見上げます。広間で一同が尋問を受けるさまをやや下からとらえる。階段をおりたその先、向かって右は奥まっており、イコンのかかった壁が見えます。その右には2連尖頭アーチがある。この壁の裏側が礼拝堂なのでしょう。


 ジュリーがイムレにイロナは自分が取りあげた、ここが我が家だと言います。夫人の娘に対する感情が描かれないのに対し、ジュリーは後にイロナを助けようともします。それでいて夫人の所業を手助けするのにためらいはなさそうです。『吸血鬼ドラキュラの花嫁』(1960)におけるグレタが連想されるところですが、残念ながらグレタの鮮烈さをもっては描かれておらず、なりえたはずの陰の主役にまではなりきれませんでした。

 夜明けでしょうか、横からの城の外観がシルエットと化しています。左の塔の下の方で、左に下り階段が出ていることがわかります。階段の下は宙空になっている。
 夫人はジュリーに信を置く一方、ドビーに対しては疑いを抱きだしたようです。ドビーが女を用意したと言うが罠かもしれない、城に女がいるか確認してくれとジュリーを送りだす。ジュリーは廊下の奥で壁の松明を手にとり、すぐ右の扉を開く。紫の部屋です。壁に松明の照り返しがゆらゆらし、ベッドの奥の壁にかけられた鏡らしきものに松明の像らしきものが映っています。ベッドの天蓋が赤く見える。そこををのぞき、すぐ廊下に戻って手前へ来ます。前向きのジュリーをカメラは後退しながらとらえます。すると後ろからドビーが現われ、「誰を探している?」と声をかける。ドビーは廊下手前の右の扉に入ります。
 ジュリーの背に視点が変わります。廊下を奥へ進む。第2多角形空間に出て、肖像画にはさまれた仕切り戸をあけてその向こうの階段をのぼります。突きあたりには半円アーチがあって、その奥に斜め格子の窓がある。
 ジュリーが奥へ進むと、今度は螺旋階段を下からのぼってくる姿が、斜め格子越しにとらえられます。始めの方で泣きながら小間使いがのぼってきたのと同じ構図です。カメラは右下から左上へ追い、階段をのぼる背中を下から見上げます。のぼった先の左の扉に入れば、以前小間使いの部屋だったそこでイロナを見つける。


 階段から広間へおりていったん左に進んだ奥まりの向かって左には鉄の柵があり、その奥に祭壇が見えます。また広間のテーブルは方形ではなく多角形のようです。
 ジュリーはイムレをイロナに引きあわせ、彼女を逃すよう頼みます。2人は螺旋階段で相談します。
 昼間の城の外観が木立越しに斜め下から映されます。冒頭と同じ角度ですが、今回はよりはっきりしており、左に寄った2基の塔の下部に出っ張りのあることがわかります。
 階段をおりた先の突きあたりにある薔薇窓がやや下からとらえられます。その手前・上には尖頭アーチがある。カメラが後退すると、いくつも枝を縒りあわせた仮設アーチが連なっています。
 階段をおりてくる夫人とドビー、その後ろにジュリーが正面・やや下から映されます。3人が前進するとカメラは後退する。踊り場からまっすぐ進みます。夫人とイムレの結婚式です。ジュリーは2人を送り届けるとすぐ場を外します。
 螺旋階段を下から見上げると、上にジュリーとイロナがいます。影が濃い。2人がおりてくるとカメラは左から右へ動く。にぎやかな気配にジュリーの制止を振り切ってイロナが駆けつけます。「お母様にも会いたい」と娘の方は母親に親愛感をもっているようです。上から階段の下の方、そして結婚式のさまを見下ろす。
 正面から夫人とイムレが映り、神父が十字を切ると夫人は老化してしまう。
 カメラは階段に対し正面から下を見下ろします。手前にイロナとジュリーの背があります。夫人が階段をのぼってくる。「生娘はどこ?」とナイフを振りかざす。イロナは「お母様」と言いますがもはや見分けもつかないようです。止めようとしたイムレを振り向きざまに刺すのでした。その姿にやっと気がつき愕然とする。


 やや下からの視角で、上に半円アーチ、その下は大まかな段状をなしています。ベッドでしょうか。段の上に小さな窓が開いている。下に坐っているのはジュリーでしょう。上の段に寝ていた夫人が起きあがって窓から外を見ます。通りでは執行人がやってきたという話で、一人の女が"Countess Dracula"と呟くのでした。ドビーはどうなったのでしょうか?
Cf.,  ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、p.110/no.062

Peter Hutchings, Hammer and Beyond. The British Horror Film, 1993, pp.169-171

Jonathan Rigby, English Gothic. A Century of Horror Cinema, 2002, p.175
おまけ バートリ・エルジェーベトについてはいろいろあることでしょうが、とりあえず思い浮かぶものだけ;
澁澤龍彦、「エルゼベエト・バートリ」、『世界悪女物語』(1964)、『澁澤龍彦集成Ⅴ 評伝・創作・翻訳篇』、桃源社、1970、pp.99-107

同じ著者による→こちらを参照

種村季弘、「生きている吸血鬼」中の「エルゼベエト・バトリー」、『吸血鬼幻想』、薔薇十字社、1970、pp.183-189
同じ著者による→こちらを参照

岸田理生、『私の吸血學』、白水社、1985、「第11章 女性吸血鬼の肖像」より pp.190-197

また「バートリ・エルジェーベト」[ < ウィキペディア]も参照

バートリ・エルジェーベトをモデルにした映画として、本作以外に;
『血の伯爵夫人』、2009、監督:ジュリー・デルピー


おまけの余談になりますが、
半村良、『石の血脈』(ハヤカワ文庫JA JA23)、早川書房、1974
の中で登場人物の1人について、「ホセは夢みるような眼つきになった。『部屋の入口も窓も、いっさい石で塞がれたのです。その中で、エリザベス・バトリーがどうなったか、いつ死んだか、それともまだ死なないのか、誰も知りはしないんだ』/ホセはうっとりと言った」(p.449;第15章4節の末尾)とあったのが印象に残っています。

同じ著者による→こちらを参照

また
島田荘司、『アトポス』(講談社ノベルス シ C-13)、講談社、1996
中の「長い前奏」の章・前半も「エルザベート・バートリ伯爵夫人」を扱っていました(pp.27-172)。

 2015/3/1 以後、随時修正・追補
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