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女吸血鬼

    1959年、日本 
 監督   中川信夫 
撮影   平野好美 
編集   後藤敏男 
 美術   黒沢治安 
 照明   関川次郎 
    約1時間18分 
画面比:横×縦    2.35:1 
    モノクロ 

DVD
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 大蔵貢が製作した新東宝の作品。中川信夫は前の1958年に『亡霊怪猫屋敷』と『憲兵と幽霊』、同じ59年に続いて『東海道四谷怪談』、翌60年に『地獄』を監督しています。原作は橘外男の『地底の美肉』よりとのことですが、未見。
 タイトルに反して、女性の吸血鬼らしき登場人物は見当たりません。あるいは天知茂扮する吸血鬼に幽閉され、20年のあいだ年をとらなかったヒロインの母親のことを指すのでしょうか。とはいえ彼女は人を襲ってはいない。吸血鬼に仕える小人、大入道、妖婆の三人組は普通の人間なのか、吸血鬼同様に不老不死なのかはっきりしませんが、後者の場合、妖婆がタイトル・ロールだというのは、しかし無理がありそうです。
 また吸血鬼の設定も本作独自のものです。日中出歩くのはよいとして、人狼風に、吸血衝動に駆られるのは月光を浴びた時で、その際には形相は変わり、乱杭歯が伸び、爪も長くなります。篇中、「月だ、怖ろしい月の光だ」と叫んでおりました。
 とまれ、1時間以上たってからの舞台となるのが、九州は島原の山中にある地底城で、内部とともに、そこにいたる通路のセットもなかなか興味深いものです。それだけでなく、前半の主な舞台となるヒロインの屋敷にも、目を引く点がいくつか見受けられました。

 さて、まずはヒロインが父親と住む屋敷です。外の塀からして、白っぽい明色を基調に、濃い色の石板を散らすというもので、視覚的な印象が強い。
 屋内に入れば、ヒロインの誕生会に集まった面々の踊る広間が俯瞰でとらえられ、次いで隣の食堂でケーキを切ることになるのですが、その際画面と平行に横長のテーブルが配され、中央に正面からヒロイン、左右に列席者たちが並ぶという、レオナルドの《最後の晩餐》を思わせる構図でした。テーブルの手前には黒っぽい椅子の背もたれが二つ顔を覗かせており、ケーキを切るべくヒロインがかがみこむと、背もたれ越しに向こうが見えます。
 一方暗い廊下に場面が変われば、和服の女性の足もとが映され、カメラは後退しながら、角を曲がって階段をのぼるさまをとらえます。同じ廊下を今度は蠟燭を手にした老執事が進む。窓から向かい側にある2階の窓に人影が浮かぶ様子を下からとらえる。執事は主と連れだって、階段をのぼります。下から二人の背をながめ、切り替わって上から二人を前から見下ろす。カメラの位置はそのままで首を巡らせ、二人が踊り場で曲がって上にいくと、その背中を見上げることになります。あがった先には尖頭アーチがあり、部屋の扉をあけると、カメラだけが前進して周囲を見回します。主と行方不明だったその妻に、カメラは近づいていく。妻の部屋でのカメラの動きは、後の場面でも変奏されることでしょう。


 翌日、診察に来た医師と主が向かいあって言葉を交わす場面で、カメラはなぜか、ゆっくりと、また少しだけ右へパンしたかと思うと、今度は左へ、また右へと動く。

 ヒロインと見舞いに来た許嫁である新聞記者が玄関を出たところで話す場面で、屋敷の外観が登場します。これがなかなか印象的でした。玄関は地面から数段あがって、角張ったアーチの奥にあります。玄関を含む1階部分の壁は画面ではグレーに見え、煉瓦造りのようです。2階の壁は白い。玄関の右隣には、粗石らしきものが積み重なったかのような、やや不定型な滝状の部分が上からなだれ落ち、また前に少し突きだしています。地の壁はさらに右へ少し続いてから、奥に折れ、また右に伸びて、少しだけ奥へ折れ、さらに右へ伸びていく。最初に折れた狭い壁に細長い窓があります。
 玄関の向かって左側は、いったん奥に折れ、向こう側から急勾配の屋根がある棟が左に伸びています。屋根は縦に分割されている。壁は白で、ここにも窓らしき暗がりが見えます。さらに左に、同じ尖り屋根に白い壁で、ただし高さは1階分だけの、方形の部分が突きでている。この部分の壁には、梯子を立てかけてあるかのように見えます。
 話している二人が少し手前に歩くと、カメラは少し上の方も映すようになり、2階あたりも少し見えてきます。玄関の上は右上がりの勾配になっていて、勾配の下にやはり梯子のような格子があって、装飾であることがわかる。粗石の滝状張り出しは2階にも及んでいて、その右にも梯子様装飾があります。その右手、角を経た右への壁にはやはり細長い窓が二つ、ただしそれぞれ高さが違っている。

 記者がヒロインを「上野の二期会展」に連れだします。ピカソ風の絵が二点ほど見えたかと思うと、戻ってきた母にそっくりの裸婦像に出くわすのでした。裸婦はアングルの《グランド・オダリスク》(1814、ルーヴル美術館)よろしく、ソファに後ろ向きで、半身を起こし首を手前に回しています。人物が写実的なのに対し、背景はポリアコフ風の幾何学的な色面分割です。映画にオリジナルの絵が出てくる場合、あまり出来がよいとはいいがたいことが少なくないのですが、画面で見るかぎり今回もその例に漏れないようです。他方、展示室内のソファーの前には灰皿が置いてありました。当時は実際にこんな感じだったのでしょうか?
 美術館の場面はこれだけで終わらず、夜の閉館後にも続きます。画面左手前に半跏思惟像の右側面が映っています。奥には階段があって、まっすぐのぼり、踊り場で右上へ折れる。踊り場より下の手すりの上面が白く反射しています。踊り場突きあたりの壁にまずぼんやりした影が落ち、ついで小人が真っ黒なシルエットとして現われます。階段をおり、右手、数段あがったところが二期展会場でした。


 会場でヒロインに声をかけた天知茂扮する人物が宿泊するホテルに舞台は変わります。月光を浴びて変身した彼は、うなり声を聞いて入ってきた女給に牙を剥く。まず壁に、右から二本の手の影が落ちます。次いで足もとが映され、床に迫る影が浮かぶのでした。
 次いで廊下が映され、そこに置かれたソファに女給が放りだされています。こちらにのけぞった顔を向けている。廊下の奥は何段かくだりになっていて、カットが切り替わって女給の足の方からの視点になった時は、カメラもくだった下から撮影しています。


 他方、ヒロインの家には上野の美術館から盗みだされたという件の絵が、何者かによって届けられていました。そこに訪れた記者を出迎えるべく、ヒロインは居間から玄関に向かいます。画面は正面から廊下をとらえ、右奥に居間への出入り口がある。突きあたりには2階への階段がまっすぐのぼり、上に踊り場の壁に設けられた窓が見えます。窓にはカーテンがかかっている。階段の左側は奥へ続いていて、突きあたりに扉があります。玄関は右手前にあり、半円アーチに上半が斜め格子を配した扉を開くと、控えの空間、そして外扉になる。
 さて、発見されて以来眠ったままだった母親は、夜、何かに引き寄せられるように起きあがり、暗い階段をおりてくる姿が下からとらえられます。
 母親は絵を見て、記憶を取りもどす。ここから回想が始まります。20年前、島原の山中でイーゼルの前に立つ男に出会った母は気を失ない、気がつけば真っ暗な闇の中でした。左右には幕があり、暗がりの中、ソファーと二つ折りの衝立だけが浮かびあがっています。手前に大きく蠟燭だけが現われ、それを手にした男が下から上へ映される。ソファーに横たわる母親の胸を、立った男は燭台の尻で何度も打ち据えます。それが下からとらえられる。
 次いで、ソファーの母親を男は油絵に描いています。背景はやはり闇です。男が振り向くと、豪奢な額にはめられた鏡がある。鏡像は指さす男から、半裸の女たちに入れ替わる。金の十字架をつけて蠟に固められたのだといいます。
 その後母親は「洞窟から」何とか脱出するのに成功します。画面は半円アーチを正面からとらえ、内側の両端には帷がかかっています。母親は手前中央からまっすぐ奥へ進み、段々小さくなって、上端の闇の中に消える。かなり上から見下ろしているということなのでしょう。


 月の光を浴びた男が狂乱し、6人の女性を殺害するという場面を経て、屋敷に戻れば、母親の寝室の扉が開かれ、カメラは前進します。右側の窓から風が吹きこんでカーテンをたなびかせる。カットを切って、窓が正面からとらえられます。カメラは左側の鏡を見ながら前進、楕円形の鏡の正面に来ると、そこに男が映っているのでした。寝台に横たわる母の頭部に続いて、棚の上にこちらは方形の鏡があり、右から男の影、次いで本体が現われる。目をそらす母のアップから、寝台を奥に配したショットに切り替わる。左から男が近づいたかと思うと、右からも出てくる。左の像は鏡に映ったもののようです。今度は床付近からの視角に変わり、画面上端にテーブル掛けか何かの端が垂れています。奥に寝台、右に男の膝から下、脚は寝台の方へ近づく。ここまで台詞はありませんでしたが、「地下の宮殿へ戻ろう」と告げ、母の首を絞めようとする男の姿を少し斜めにとらえる。
 カメラは扉の外に変わり、扉を開ける夫の背をとらえる。奥には男がいて、前に進んできては、夫の首を絞めて放り投げる。ここまで1カットで、次に1階から階段が見上げられると、夫が転げ落ちてくるのでした。
 なお翌日、警察が到着した後で、再び背を向けた夫が、寝室の奥へ進むさまが映されますが、今度はカメラは後退し、扉の外まで出てしまいます。


 男が自動車で母を島原まで運びます。検問では免許証をちゃんと示しているのが面白いところでした。
 一方ヒロインと記者は母の行方を求めて、島原にやってくる。すると「化物のいる城」を見たという強盗犯の話が出て、その現場へ向かう警官たちに同行することになります。山中の地面には雪が残っています。
 ヒロインをさらわれた記者は、吸血鬼の従者たちを追って、地面からそびえる巨岩にたどり着く。岩は自ら割れながら、咲き開いたかのようです。そこに裂け目があって、下へおりることができる。ここからの通路が古城映画的見せ場の一つです。
 入り組んだところをカメラはなぞるように、くだりながら前進する。さらに下への階段が見えます。
 切り替わって階段を下から見上げれば、記者は奥からおりてきて、右へ進む。その先は玄武洞のようなさまです。記者は奥から手前に歩み、カメラは後退します。
 手前と上の方は暗く、奥に上への階段がある。途中でわずかに折れています。背を向けた記者が、手前から奥へ向かう。カメラはそれを追って前進します。
 記者の胸もとがアップになります。明暗の対比が強い。くだっていくと、奥に上への階段があります。カメラは上から見下ろし、そのまま回りこんで、下への階段をとらえる。奥には廊下が伸びています。
 洞窟状の細い廊下を奥から手前へ進んでくる。左側には半円アーチの扉があり、右手の壁に骸骨がぶらさがっています。
 背を向けて扉を開くと、向こう側は明るく、右下で数段上への段があります。
 カットを切り換えながら廊下を進むシークエンスは、遅れてきた警官たちの一団によって、次いで逃げだしたヒロインと彼女を追う小人、さらに逃亡を図る強盗犯によって反復されることでしょう。幸せです。


 城内でまず登場するのは、ヒロインが連れてこられた部屋です。左手に出入り口があり、奥では円柱が低くなった梁を支えています。左半分にはカーテンがかかっており、寝台があるようです。右半分は向こうの方から光が射しています。手前にはシルエットと化した椅子が、左と右に見える。壁は不定型な石板と石板の間を漆喰か何かで埋めたかのようです。ここで吸血鬼はヒロインを虜にしようとするのですが、従者の妖婆が諫めるに、親子二代はだめだという掟があり、それを犯すと「この如月城」が神の怒りに触れるのだという。

 隙を見て逃げだしたヒロインは、奥にある出入り口から出てきます。出入り口の手前は下に数段くだっている。出入り口の右側には石を積み重ねたような出っ張りがあり、その右にも扉があります。出入り口の左側にも石の出っ張り、その左にはアーチがある。ヒロインは石の出っ張りの奥の柱の向こうを通って、アーチのところに回ります。アーチは左奥へ続く一方、手前にはやはり下へ数段くだっています。先の出入り口前の階段とは角をはさむかっこうで、双方の階段の下はもやに覆われている。飛びこんできた記者と格闘になった大入道は、しかしあっけなくこのもやの下に沈んでしまいます。ここは底無し沼なのでした。


 ヒロインが小人に追われる一方、記者は吸血鬼との格闘に突入します。ここから本作は活劇調になるのですが、カットの切り換えが頻繁に行なわれ、城の内部をたどっていくのでした。
 まずは、争う記者と吸血鬼が画面右から飛びだしてくる。出入り口の奥にはカーテンが見えます。出たところの奥では、階段が上へのぼっています。のぼった先は、廊下が奥へ続いている。カメラが少し左へ寄ると、左の壁に吸血鬼の影が落ちます。ここまで1カット。吸血鬼が剣を振るい、二人は前後を変えながら階段をのぼる。カメラは下から少し上を向いています。
 記者が通ってきた道を下る警官たちを映した後、階段の上の階なのでしょう、廊下が正面からとらえられます。右側には列柱が並び、柱と柱の間はくぼんでいるようです。左の壁にはステンドグラスのような窓がある。カメラは床近くの高さで、奥に小さく吸血鬼と記者が現われ、手前へ進んでくる。
 また洞窟通路を通る警官たちを映した後、次に登場するのがこのセットのハイライトでしょう。大きな半円アーチが額縁をなす、その向こうは二層に分かれていて、柱で区切られています。二階にあたる通廊を、二人は右から左へと戦いながら進む。壁に二人の影が、実物より大きく落ちています。二人はそのまま左へ抜ける。
 次のカットでは二人は左から右へと動きます。右に下がる階段を下から見上げ、吸血鬼はまず影、次いで実物が現われる。右の方では布が垂れています。
 その間に警官たちは骸骨を脇の壁にかけた扉の前までたどりつきました。切り替われば2階の回廊で、二人は左から右へ進む。手前には間を開けて円柱が二本並び、その向こうで回廊はいったん折れて手前へ曲がっています。回廊についた手すりの端が見えますが、端の切れ目はがたがたと段差がある。手すりの手前には、何やらビニールで包まれたような、上に細く、ふくらんで、また下に細くなる柱のようなものが並んでいる。回廊の端から右へ進むと、段差があって下の床は丸石を埋めた廊下です。カメラは左から右へ進み、二人が言葉を交わしながら手前へ来ると、ゆっくりと後退する。これも1カットです。
 次いでアーチと底無し沼の空間が再登場し、手前からヒロインと彼女を追う小人のカットが参戦します。
 また右に階段、奥に2階の回廊の見えるところに出る。左へ進むと広間になるようです。手前の円柱の下には台のようなものが見えます。吸血鬼と記者が階段の下で争っています。
 吸血鬼が床に落とした剣を奪いあう二人の手が、上から見下ろされる。
 記者が剣をとってそれを振るえば、カットが換わって、吸血鬼は後ろ向きのまま、階段を数段飛ばしで跳びあがる。手前左右には粗石のアーチの上部が見える。
 次いで吸血鬼のバスト・ショットになります。また到着した警官たちの足音が響きます。
 右に階段のある広間が下から見上げられ、右奥から警官たちが現われる。階段の下には背を向けた記者がいます。吸血鬼は階段の上にいて、回廊を左へ走ります。
 円柱の前にいる吸血鬼をカメラが下からとらえる。右側に階段が前面は陰になっているのですが、側面に光があたり、段ごとに真ん中が少し凸部をなしていることがわかります。
 また1階からの視角にもどれば、記者は階段を半ばまでのぼっており、警官たちが散らばっているさまが、下からとらえられる。吸血鬼は左へ消えます。
 警官たちが背を向けて階段の方へ進む一方、その後尾にいた強盗犯はそっと手前へ抜けだす。吸血鬼・記者組に警官たちが合流したのも束の間、今度は強盗犯のシークエンスが分岐するわけです。
 次はしかし、ヒロインの場面です。正面から階段がとらえられ、左右は影に閉ざされています。階段は上からやや右下へくだり、途中で左上からの別の階段が合流する。その下では右から左へうねるようにして、また右へうねって床に達する。ヒロインは奥から手前へおりてきて、そのまま廊下を進みます。それをカメラは後退しながらとらえる。階段の上から小人が追ってきます。
 切り替わって、2階回廊から下を見下ろします。右側は半円の右半で縁取られています。警官たちが奥から手前へ駆けつけると、画面左端から蠟燭の先がにゅっと突きでます。カメラが急速に後ずさると、燭台を手にした吸血鬼の背が下への視界を塞ぎます。
 カメラはさらに後退する。左から剣を手にした記者が現われる。前にあるのが半円アーチ型の窓になっていることがわかります。吸血鬼と記者は前後を入れ替え、一方奥では2階回廊を警官たちが、大きな影を壁に落としながら、左から右へ進む。
 暗い階段を下から見上げ、奥からヒロイン、次いで小人が現われるカットを経て、1階から2階の回廊を見上げるショット。右手の階段では吸血鬼と警官たちが争いますが、前者はまた上の回廊を左へ走ります。
 骸骨つきの扉が映り、強盗犯が奥から走ってきて、右へ消えます。
 切り替わって、洞窟状の廊下を進む強盗犯の背が、手前から奥へ向かう。カメラは前進してそれを追います。
 また切り替わり、カメラは上から見下ろす。廊下の奥から強盗犯が手前へ進み、そのまま右へ回れば、腰周辺のアップになる。
 さらに切り替われば、カメラは上から後退しつつ、暗い階段を奥からのぼってくる強盗犯をとらえます。
 地底城出口の岩が外からとらえられる。強盗犯はいったん逃げだせたのに、置き忘れた300万円のことを思いだし、また戻ってしまうのでした。
 玄武洞状の廊下を手前から奥へ、その背中をカメラは前進しながら追い、下への段をくだります。
 同じような廊下で重なるかのように、ヒロインと彼女を追う小人の背が手前から奥へ進み、やはりカメラは前進する。奥を右へ曲がれば、視界からはずれたヒロインの悲鳴が聞こえてきます。カメラが右へ首を振ると、右手の少し高くなった洞窟から小人に連れ戻されたヒロインが現われ、左へ行きます。カメラは後退する。
 階段を下から見上げた眺めになると、強盗犯が奥からくだってきて、右へ向かいます。
 また洞窟状の廊下、強盗犯は奥から進んでくる。カメラは後退します。
 今度は強盗犯は左から登場し、彼が下を向くとカメラもそれに従う。土砂に埋まった強奪金を掘りだそうとするさまを、カメラは見下ろします。
 狭い廊下を奥からヒロイン、次いで小人が進むカット。
 また強盗犯を上からカメラは見下ろし、そのまま後退します。と、床が崩れ落ち、引きずられるように強盗犯も下に落ちてしまう。
 カットが換わって階段広間に移っても、強盗犯の叫喚は響き続けます。天井が崩れてきて、それとともに一帯は暗くなり、光は奥から射すばかりです。
 崩れた天井を見上げれば、向こうに満月が煌々と照っています。
 階段広間を下から見上げると、円柱下の台の上に立った吸血鬼が月光を浴びて身もだえする。警官たちが取り囲みます。
 血まみれになった強盗犯が見下ろされるカットをはさんで、身もだえる吸血鬼の上半身が水平にとらえられる。奥は明るいもやです。
 変身した吸血鬼の姿に、後ずさる記者たちを少し下からとらえます。
 また吸血鬼のカット、彼はマントをかぶります。
 記者たちのカットをはさんで、マントから顔を出せば、白髪ぼうぼう、顔は皺だらけになっています。この事態の原因はよくわからないのですが、ともあれ吸血鬼が立ちあがると、胸あたりのアップが映されます。
 カメラは少し引いた位置にもどり、やや下から映す。吸血鬼は右の方へ走ります。
 すると少しうつむいた女性のバストショットが映されます。
 またカットが換われば、画面手前は石の半円アーチで枠取られ、向こうの右側には台座の上に立つ女、左手の階段を吸血鬼がおりてきます。二人の間に濃い影が落ちます。さらに右は暗がりです。
 また女のバストショットを経て、吸血鬼のバストショットが少し上から映されます。「永遠の生命が滅び去る時、最後のあがきを見よ」と叫ぶ。
 半円アーチ越しのショットをはさんで、また吸血鬼のバストショット。彼が振り向くと、カットが換わって、アーチと底無し沼の空間です。すぐ隣にあるということのようです。柱をはさんで右側の段に吸血鬼は背を向けて立ち、奥から警官たちが追ってきます。吸血鬼はいったん上・左奥に消え、また現われては、再度左奥へ消え、また現われます。言葉で記すと何のこっちゃとなってしまいますが、ともあれこの間カメラは静止しています。
 吸血鬼が下を向くバストショット。哄笑しながら下へおり、アーチと底無し沼のショットに換われば、自ら沼に沈んでいくのでした。
 ところ変わって武器庫のような部屋です。大きな石の十字架もあります。燭台を手にした妖婆がかがむとともに、カメラも下を向く。導火線に火をつけると、カメラは後退します。手前からヒロイン、次いで小人が入ってきます。ヒロインは直ちに引き返します。
 アーチと底無し沼の空間に、左のアーチの奥からヒロインが現われる。彼女が右を向くと、切り替わって台座の上の女です。蠟で固められた母親なのでした。左右手前には警官たちが背を向け、アーチの代わりを務めているかのようです。ヒロインは左から現われ、記者が続きます。
 ヒロインと母親が何度か交互に映されます。その後武器庫に換われば、妖婆と小人が左奥へ消えるとともに爆発が起こる。バストショットでとらえられたヒロインが左へ振り向きます。
 台座上の女もその周辺もぐらぐらと揺れだす。ヒロインたちは左へ向かいます。
 まず、アーチと底無し沼の空間を奥へ逃れ、次いで階段のある広間を左へ、骸骨を脇にした扉を奥から手前へ、そのまま回って右奥へ。骸骨が上下するさまがアップでとらえられます。
 今度は階段を上から見下ろせば、下の奥から記者たちがあがってくる。次は廊下、奥から来て、右へ回ります。脇に階段が見える。また廊下のショット、今度は手前から奥を進む背を映す。奥に数段ある暗い廊下を、奥から手前へ、そして左へ。狭い階段を下からのぼって手前へ出れば、次に岩の外に出ます。一行が山の斜面へ逃れると、岩も爆発してしまう。手前にそれを見るヒロインと記者の背が映っていました。

 つい延々とメモしてしまいましたが、冒頭で触れたように地底城に入るのは開幕後1時間以上してからなので、残りは20分に満たない長さでした。そもそも実物を見れば一目瞭然でしょう(それを言えば本サイトはみんなそうなのですが)。またこの作品では、設定や状況、人物の行動の動機など、え?という点も少なくない。現在の時点から見れば大人しいとはいえ、大蔵貢製作になる新東宝の作品というだけあって、エログロ風味にも事欠かない。同じ監督による同年の『東海道四谷怪談』が傑作と見なされているのに対し、本作についてはそのついでに言及されることが多いような気もします。とこうしつつも、地底城のクライマックスが活劇調の追いかけっこで、怪奇幻妖なる雰囲気渺々としてとはとても言えないものの、人物の前に出、背後に回り、前進したり後退したり、上から下からとカットを切り換えて、城内とそれに至る通路を行ったり来たりしてくれた点をもって、古城映画として顕彰することといたしましょう。
Cf.,  コロッサス編、『大特撮 日本特撮映画史』、朝日ソノラマ、1980/1985、p.318

川部修詩、『B級巨匠論 中川信夫研究』、静雅堂、1983、p.119、p.200

滝沢一・山根貞男編、『映画監督 中川信夫』、リブロポート、1987、p.216

菊地秀行、「我がドラキュラ映画の時代」、『妖魔の宴 スーパー・ホラー・シアター ドラキュラ編 1』、1992、pp.302-303

ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、pp.163-164/no.136

日本特撮・幻想映画全集』、1997、p.93

山田誠二、『幻の怪談映画を追って』、洋泉社、1997、pp.213-216

泉速之、『銀幕の百怪 本朝怪奇映画大概』、2000、pp.40-41、45、283

鈴木健介編、『地獄でヨーイ・ハイ! 中川信夫 怪談・恐怖映画の業華』、ワイズ出版、2000、p.10

浦山珠夫、「女吸血鬼 中川信夫監督による異色の洋風ホラー」、『最恐ホラー大全【邦画編】』、2004、p.40
 2014/12/30 以後、随時修正・追補
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