ホーム 宇宙論の歴史、孫引きガイド 古城と怪奇映画など 美術の話 おまけ
ディメンシャ13 *
Dementia 13
    1963年、USA 
 監督   フランシス・フォード・コッポラ 
撮影   チャールズ・ハンナウォルト 
 編集   ステュアート・オブライエン、モートン・テュバー 
 美術   アル・ロカテッリ 
 セット装飾   エレノア・ニール(・コッポラ) 
    約1時間15分 
画面比:横×縦    1.66:1 
    モノクロ 

DVD
* TV放映時・VHSの邦題は『死霊の棲む館』
………………………

 ロジャー・コーマンのもとで助監督等をつとめていたフランシス・(フォード・)コッポラが、コーマンのプロデュースで作った監督第1作品です(ロジャー・コーマン、ジム・ジェローム、『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか-ロジャー・コーマン自伝』、1992、pp.144-146、170-171、175-177 など参照)。コッポラはその後『ゴッドファーザー』3部作(1972、1974、1990)や『地獄の黙示録』(1979)などですっかり一流監督になっていまいましたが、他方『ドラキュラ』(1992)、近年も『コッポラの胡蝶の夢』(2007)や『Virginia/ヴァージニア』(2011)を監督、また『フランケンシュタイン』(1994、監督:ケネス・ブラナー)や『月下の恋』(1995、監督:ルイス・ギルバート)の製作にあたると、怪奇映画との縁を切ってはいないようです。
 もっとも本作品には超自然現象は起こりません。前半を牽引してきた登場人物が半ばで退場するなど、この点ではヒチコックの『サイコ』(1960)が意識されていたのかもしれません。
 とはいえ主な舞台は古城です。登場人物たちも口をそろえてこの城にいるのはよくないなどと口走ります。これはコッポラ自身一部で参加したコーマンのポー連作の血を引くものと見なすこともできなくはありますまい。廊下を人物が行ったり来たりもします(残念なことに屋内の階段をのぼりおりする場面はありません)。そもそもコーマンの連作自体、『アッシャー家の惨劇』(1960)、『恐怖の振子』(1961)、『姦婦の生き埋葬』(1962)と最初の3作では超自然現象ははっきりした形では起こりませんでしたし、とりわけ最初の2作では登場人物たちがこの館はこの城は…と口走っていたものです。
 舞台となる城ですが、外観に関しては[ IMDb ]によると、アイルランドのダブリン州ホウスのホウス城
Howth Castle, Howth, Fingal, County Dublin, Ireland でロケされたとのことです。塔などのいただく胸壁がとてもギザギザしている点が特徴といってよいのでしょうか(追補:→「怪奇城の肖像(幕間)」の頁でも触れました)。
 なお音楽をコーマンのポー連作の内『姦婦の生き埋葬』、『古城の亡霊』(1963)、『怪談呪いの霊魂』(1963)に参加したロナルド・スタインが手がけています。
『ディメンシャ13』 1963 約0分:池か湖、桟橋と舟 上から   夜、池か湖の真っ暗な水面がかなり高い位置から見下ろされます。やや左寄りに、下から上へ桟橋が突きでている。少し左に傾いて見えます。
下から男、次いで女(ルアナ・アンダース)が現われます。男は何やらがあがあ音を立てるものを耳に当てており、すぐにラジオとわかります。男と女は桟橋の右側に停められたボートに乗りこみ、池だか湖に漕ぎだす。暗い水面を左から右に進み、下からのアップ、真上からのショットなどと交互に映されます。会話から2人は夫婦であり、男の母親が書いた遺言に女が大いに不満を持っており、男が女は何もわかっていないという。男は心臓に不調を抱えているのですが、案の定発作を起こし、亡くなってしまう。男が死んだと発覚すれば遺産を相続できなくなるので、女は亡骸を池だか湖に沈めます。このあたりしばらく女のモノローグがかぶせられて状況を説明します。なおここでの池だか湖が、後に出てくる城のすぐそばの池と同じものかどうかはわかりませんでした。

 上からのショット、水に放りこまれたラジオが出すひずんだ音ともに、タイトル・バックとなります。水中で人のシルエットが左から右へ浮遊し、その背後に女性の死骸、鎖紋を刻んだ十字架などの絵が掲げられます。
『ディメンシャ13』 1963 約5分:城、遠景  次いで城が引きで登場します。左右を木立が枠どり、手前には芝がひろがっている。城は背が低く、左右に伸びています。右に鋸歯型胸壁つきの塔らしきものが見える。
 女は夫がニューヨークに出張しなければならなくなったという手紙をタイプライターで打ち、サインを偽筆します。
暗い廊下を右奥から出てきて手前へ進み、すぐ右の扉の下に贋手紙を滑りこませる。 『ディメンシャ13』 1963 約8分:廊下
夫の荷物は池だか湖に放りこみます。

 暖炉のそばのテーブルです。城がアイルランドにあることがわかります。テーブルのある部屋のすぐ隣にやはり暖炉のある部屋がつながっている。女の夫はジョンで、その母(エトナ・ダン)は40歳の時に生んだキャスリーンに取り憑かれているのだとジョンの弟ビリー(バート・パットン)が述べます。キャスリーンは池で溺れたとのことです。壁に彼女の肖像画がかかっています。まだ幼い少女です。絵の出来はよいとはいいがたい。

 空港です。ロンドンからの便が到着します。ケイン(メアリー・ミッチェル)をビリーが迎えに来ました。ジョンとビリーの上に兄のリチャードがおり、またジョンの妻の名がルイーズであることもわかります。
 2人は車で城へ向かいます。城は寒いものだという話が出る。石造りの門をくぐって車は奥へ進む。
 左寄りに粗石積みの角塔が見えてきます。3階からなるようで、上辺には大きな三角形の鋸歯型胸壁をいただいています。少し奥まって右に低い棟が伸び、その右にも塔があります。最初の角塔の左奥にも棟は続いているようです。
 車の進行とともにやや下からのカメラが左へ動くと、左の棟は1階分の高さで、上辺にはやはり三角の胸壁が並んでいる。この棟は細長く、蔦に覆われています。伸びた先には3階分の角張った本棟が左に伸びており、窓も方形です。右の塔と接する部分は手前に迫りだしています。その左に幅の広い階段がのぼっている。上が玄関なのでしょう。さらに左でも手前に迫りだしています。
『ディメンシャ13』 1963 約12分:城の外観、左寄り『ディメンシャ13』 1963 約12分:城の外観、右寄り
 車はまわりこんで、しかし階段の前では止まらずそのまま右に進みます。半円アーチの扉のところに止まり、おりた2人は扉の中に入る。すぐ左がリチャードのアトリエです。
 アトリエの中では奥に前かがみになった大きな窓があり、その右の壁は煉瓦積みです。リチャード(ウィリアム・キャンベル)は何やら熔接しています追補:→「怪奇城の画廊(中篇)」でも少し触れています) 『ディメンシャ13』 1963 約13分:リチャードのアトリエ
窓の左にアーチ型の扉があり、2人が入ってきます。ケインはリチャードの許嫁らしい。

 暖炉の前に母が坐り、向かいにルイーズがいます。ルイーズの背後、奥の方に扉が見え、その左右手前には縦溝を刻まれた円柱が立っています。母は明日法事だという。キャスリーンは7年前に死んだとのことです。
 リチャードは隣の居間に移動し、母も追ってきますが、2人の間にはわだかまりがあるようです。
 馬場で馬に乗るケインをリチャードが見ています。そこへルイーズがやって来ますが、リチャードとルイーズの間もしっくりしているわけではなさそうです。
『ディメンシャ13』 1963 約18分:城の手前、高い位置から  かなり高い位置から見下ろした視角になります。画面左端を少し下ひろがりの壁が縁取っている。そのすぐ左、向こうに低い円塔があります。上辺はギザギザです。右手前は平らな地面がひろがっており、向こうが木立のある庭園になっています。庭園のはるか向こう、右遠方に教会らしき建物が見えます。奥の方からルイーズともう1人の人物が歩いてきます。かなり小さく映っています。
『ディメンシャ13』 1963 約18分:角塔、低い位置から  ルイーズが上を見上げると、かなり下から角塔が見上げられます。縦に長い方形の窓が3層で重なっている。その上は胸壁です。塔の左は下方で左からの壁につながります。角塔とここでの胸壁は各三角が段をなして左右どちらかで低くなるという、非対称なものです。右側は2階分の高さで手前に壁が伸び、こちらの上辺にも胸壁がかぶさっている。壁には十字型の刳りが刻まれ、その下に半円アーチが控えています。
 ルイーズともう1人の人物(ロン・ペリー)、管理人でしょうか、2人の背後では壁が左に伸び、下に半円アーチが見えます。壁の上辺は段々をなす三角胸壁で、アーチの上に十字があるので、先ほど角塔の右に見えた壁と同じでしょうか。2人がいるのは空港からの車が入ってきた時に見えた場所のようでもあります。
 日本語字幕によるとルイーズが秘密の通路とかありそうというと、管理人は全部知ってます、ここで20年働いてきましたと答える。思わず椅子に縛りつけて頬をぺちぺちやりながら吐け、全て吐くんだとかやりたくなったものです。


 ビリーが池の端でキャスリーンのことを回想しています。ケインが話しかける。今日は葬式の日とのことです。木に斧が突きたてられており、ビリーはそれを1度外し、また突きたてます。下方の岸辺からサイモン(カール・シャンツァー)が顔を出します。また密猟かとビリーがいう。猟銃を持っていますが、ビリーによると30年この方撃ったことはないそうです。

 庭の一角に墓石があります。その前に母と兄弟が傘をさして立つ。城壁の上からルイーズが背を向けてその様子を見下ろしています。
『ディメンシャ13』 1963 約24分:角塔の鋸歯型胸壁、低い位置から 切り替わると、下から見上げられる。前には段々の胸壁があり、各胸壁が三角屋根をなしていることがわかります。左奥に上への塔か何かがあるようです。
『ディメンシャ13』 1963 約24分:角塔、低い位置から 下の3人を映して、また下からのショットになる。少し引いています。ルイーズがいるのは角塔の上で、左背後に高めの小塔、右手前に細めのやや低い小塔があって、その間にいることになる。2つの小塔はやはり左右非対称です。左下で手前に壁が伸びています(追補:→「怪奇城の高い所(完結篇) - 屋上と城壁上歩廊など」の頁でも触れました)。
 3人は墓のまわりを時計の向きで巡り、背後から花を投げていく。突然母が悲鳴を上げて気が遠くなります。奥の方からルイーズが駆けつける。墓に触れると花が枯れたと母はいう。

 母の寝室です。介抱しながらルイーズは、この部屋に何かいると吹きこみます。それは母に〈印〉を見てと懇願しているのだという。

 ルイーズは部屋を出て、暗い廊下を右から左へ進みます。アップです。床を奥から手前へ進む男物の靴のアップが、上から見下ろされます。ルイーズが右奥から出てきて手前にやってくる。右手にある扉のノブを回します。足のアップが右から左へ進む。ドアは開かずルイーズが右前へ胸から上の姿で進みます。右に折れるとすぐに角を経て右に壁が伸びるのですが、その左の短い壁に窓がある。ルイーズはそこから入ります。
 部屋の中から、磨りガラスの窓をまたぎこしてくるルイーズが映されます。子供部屋のようで、玩具類が並んでいます。ゼンマイじかけのおもちゃが動きだすさまを、下から光を当て、アップでとらえる。いかにもいかにもです。ルイーズはいくつか袋に放りこみ、また窓から出ます。
廊下をもとの方へ背を向けて戻る。 『ディメンシャ13』 1963 約32分:左に廊下、右に子供部屋の窓
きちんと閉まっていなかった窓を閉ざす手がアップになります。
 ルイーズが右から左へ進む。カメラは後退しつつそれを追います。 『ディメンシャ13』 1963 約32分:廊下の壁に落ちる錯綜した影
しばらく歩いているとリチャードに出くわします。リチャードはここは君の部屋とまるで方角が違うという。そんな言い方が成立するほど広いわけです。羨ましい。

 夜の庭です。ルイーズが現われ、大きな花生けの台座にもちだした人形類を並べ、紐でつなぎます。この花生け(呼び方は何というのでしょうか)は後にも再登場することでしょう。カメラは横から、引きで上から、下からのアップと切り替わっていきます。ルイーズはなぜか下着姿になります。人形に何か液体をかけ、何をするのかと思ったらそれを持って池に潜ります。水中撮影です。人形を水草に結びつけ、戻ろうとするとベッドか何かで眠るキャスリーンを見つけます。慌てて岸に上がろうとすると、斧を振るう人物が待っていたのでした。約35分のことです。悪役扱いとはいえ、ここまでお話を駆動してきたのはまぎれもなくルイーズでした。後半部でルイーズほど魅力のある動きを示す人物はついに現われません。

 暖炉の前に男の足が映ります。ここは母の寝室で、男は医師でした。少なくとも日本語字幕では母同様、医師の名は見当たりませんでしたが、[ IMDb ]のキャスト表から消去法で残るジャスティン・ケイレブ(パトリック・マギー)がそうなのでしょう。いささか胡散臭げです。母はメイドにルイーズを捜すよう言付けます。

 斜めにかなり上から玄関前が見下ろされます。左から右下がりに階段の手すりが見える。車が到着し、ビリーとケインがおりて、画面では上へ向かいます。上辺沿いの陰からメイドが現われて、画面では下におります。
 下からビリーが見上げられ、肘の下では欄干が右に上がって上で水平になって左に伸びています。水平になった途中には大きな石の壺が置いてあります。階段をあがると狭めのテラスをはさんですぐ奥は本棟で、窓が2層になっています。本棟の前のテラスもそんなに幅の広いものではなく、向かって左は奥ですぐ角になって右から左へ城壁が伸びている。城壁は2階分の高さで、2階は少し迫りだしています。その上に幅の広い胸壁が並んでいます。
 2人が階段をあがると、階段から見て右側も見えてきます。こちらもすぐに行き止まりです。右に伸びるテラスの欄干の上にも、石の壺が置かれています。テラスの床は斜めの市松模様で覆われている。

 手前に広く芝がひろがる、その奥には左右に伸びる棟が見えます。左は3階分あり、上辺はギザギザ胸壁です。その右手は2階分になってしばらく伸びていく。中央で少し迫りだしています。右端で角を迎え、手前に折れます。しばらく前にくると高くなっているようです。カメラが後退しつつ左から右へ動くことで、これらの眺めが全体像を現わしてきます。手前のテーブルにはリチャードが坐っています。右に伸びていた壁は、その右でまた奥まっており、1階分の高さで右へ伸びていきます。このあたりから母と医師が出てきて、手前に歩いてくる。
『ディメンシャ13』 1963 約40分:城の前面、左寄り『ディメンシャ13』 1963 約40分:城の前面、右寄り
 テーブルを置いたところのさらに手前に池があるようです。この池から人形が浮かびあがるのでした。それを掬いあげようとするビリーは、キャスリーンの姿を思いだす。

 アトリエでリチャードとケインが話します。妹が死んだ時ビリーはまだ13歳だったことがわかります。

 次いで夜の池端でサイモンが猟銃を撃ちます。先だってビリーが30年間撃ったことがないといっていたのはどこへやらです。視界の悪い暗がりで間違いがあったらどうするのだろうと心配になります。蛙だか虫の声が響く。サイモンは匍匐前進する。斜面に大きな穴が開いていました。木菟が飛びだします。サイモンは匍匐前進で穴に潜りこむ。中には眠るキャスリーンの姿があります。慌てて出てくると、上から斧で首を落とされるのでした。約47分のことでけっこう立て続けの感があります。犯人はキャスリーンを抱きあげる。

 夜、車を洗う管理人のところへ医師がやってきて、池の水を抜くようにと鍵を渡します。管理人の顔色が悪いという。

 母は子供部屋からキャスリーンの首飾りを持ちだし、〈人形の家〉へ持っていこうといいます。
 小屋でしょうか、その位置等はよくわかりません。中でキャスリーンが椅子に腰かけており、背後に斜め格子をはめた窓が見えます。今度は斜め格子越しにキャスリーンの首の後ろが見え、向こうから母がやって来ます。頭上には大きな三角をなす梁が低い位置でかぶさっています。斧が外から突きたてられ、壁を破ります。
 母は背を向けて手前から奥へ逃げだす。左に煉瓦壁があります。
『ディメンシャ13』 1963 約51分:厩、二階への階段あり 芝を右から左へ走る。背後に低い厩らしきものが見えます。左右に伸びている。
引きのショットに続き、奥から手前へ走ってくるさまが大きくとらえられる。
『ディメンシャ13』 1963 約51分:城の前面、夜 次いで右から左へ、芝の真ん中で気を失なって倒れます。奥に玄関へののぼり階段が見えます。
 斧男はキャスリーンをまた抱きあげる。
 芝の奥からメイドとケインが駆けつけ、ケインはリチャードを大声で呼びます。管理人、次いでビリー、後からリチャードが現われる。


 暖炉のそばにビリーがいます。ケイトが現われ声をかける。ビリーは自分の部屋が50年間誰も住んでいない廊下の向こうにある、どこそこで誰がどうしたこうしたという。言葉だけですが素晴らしい。
 またビリーが子供の頃見た夢の話になります。壁から男がよじ登ってくる。男はリチャードだった。


 朝食の席です。同席していた医師を管理人(ここで名がアーサーと知れます)が呼びだし、池の水を抜いた、見てほしいものがあるという。
出ていく2人をリチャードが追い、ケインとビリーも続きます。 『ディメンシャ13』 1963 約58分:裏口(?)から、奥に食堂
『ディメンシャ13』 1963 約58分:塀に開いた半円アーチ、奥にも  戸外の半円アーチを医師と管理人が抜けてきます。アーチのずっと奥にも別の半円アーチがのぞいています。
『ディメンシャ13』 1963 約58分:裏口(?)  テラスから地面にくだる10段ほどの階段をリチャードがおります。階段は左右に末広がりになっており、太い欄干がついています。上のテラスはすぐ奥にフランス窓があります。これは玄関の階段とは別のものです。
おりて右から左へ向かう。向こうに半地下の窓が見えます。半円アーチは左先です。このアーチの先にも半円アーチがあるようで、こちらが先に医師たちが通った方なのでしょう。
 池の底には石造の慰霊碑がありました。彫刻家であるリチャードが作ったものかと医師が問うと、リチャードは自分は鉄しか使わないと答えますが、医師は6年前は石を扱ったという。リチャードは皆父に彫刻をならったと述べます。

 余談ですが鉄を使う彫刻となれば、伝統的なものではなく、いわゆる現代彫刻なのでしょう。残念ながらどんな作品かは映されませんでした。これまた余談の上塗りとなりますが、映画に出てくる鉄を使う彫刻家とくれば、『冒険者たち』(1967、監督:ロベール・アンリコ)でジョアンナ・シムカスが演じたレティシアが思い浮かぶのでした追補:→「怪奇城の画廊(中篇)」でも少し触れています)

 話している人物たちの背後には、芝をはさんで奥の棟が、左から伸びてきて角で手前に折れています。折れてすぐのところでいったん前に少し迫りだしていることがわかります。迫りだしのある左向きの壁に半円アーチが見えます。この翼の右では1階の高さの棟が右に伸びている。右端に角塔があり、上辺はギザギザ胸壁です。先だっても登場した視野ですが、実在する城のロケではあり、きちんと整理すれば配置もはっきりするのでしょう。


 枯葉が積もった床を奥から手前に歩く足が、上から見下ろされます。
視線が水平に換わると、奥へ続く通路が映ります。天井は半円形で、アーチがいくつも連なっていきます。地下でしょうか、通路の幅はあまり広くありません。手前右には暗い扉口があります。奥から人影が出てくる。この地下道の位置やそこへの経路が示されないのははなはだもって遺憾というほかありません。天井はあるのだから屋内ですが、枯葉が吹きこむような場所でもあるわけです(追補:→「怪奇城の地下」でも触れました)。 『ディメンシャ13』 1963 約1時間0分:地下道(?)
 リチャードが奥から手前へ進んできます。かなり下からの角度です。 『ディメンシャ13』 1963 約1時間1分:地下道(?)
引きになり、首から上になる。カメラは後退します。後ろからケインが追ってきます。
リチャードは背を向け、突きあたりを右に曲がる。 『ディメンシャ13』 1963 約1時間1分:地下道(?)
 奥から扉を開け、またぎこして入ってくるさまが斜め下からとらえられます。またぎこすのは子供部屋でのルイーズに続いて2度目です。少し手前に低く半円アーチがあります。アーチの手前を左へ、少し低くなっている。カメラは後退しつつ左に振られます。手前左に石の胸像が入ってくる。他にも古典主義風の石像がいくつもあって、アトリエのようです追補:→「怪奇城の画廊(中篇)」でも少し触れています)
ケインも追って入ってきます。なぜかネグリジェ姿です。 『ディメンシャ13』 1963 約1時間2分:父のアトリエ
リチャードは父のアトリエだという。画面手前にハンモックのようなものがかかっています。カメラが後退すると手前・下にキャスリーンが横たわっていますが、2人は気づきません。

 酒場で医師はビリーに子供の頃の夢の話について尋ねます。ビリーは歌を口ずさむ。

 母が文句をいえない内にと、ケインとリチャードが結婚式を挙げます。いいのでしょうか。リチャードの姿を探すケインに医師が警告を発します。医師は童歌のことが気になるようです。
『ディメンシャ13』 1963 約1時間10分:厩、二階への階段あり  厩前です。幅の広い扉の右に、壁に沿った右上がりの階段がのぼっています。その上に小さな扉がある。リチャードと合流したケインは2人してそこに入ります。
中は干し草が積んであり、ラヴ・シーンにぴったりです。

 医師の頭部が右から左に進みます。左手の扉をあける。カメラが下から上へ撫でると、鉤に引っかけられたルイーズの無惨な姿がありました。壁の下に横たわるキャスリーンを抱きあげ、扉を出て左から右へ進みます。

 厩の2階にいたケインとリチャードのもとに悲鳴が響いてきます。2人は人が集まっていた大きな花生けのところへ駆けつけるのでした。かくしてクライマックスを迎えることになります。

 
 2015/4/21 以後、随時修正・追補
   HOME古城と怪奇映画などディメンシャ13 1963