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冒険者たち
Les aventuriers
    1967年、フランス 
 監督   ロベール・アンリコ 
撮影   ジャン・ボフェティ 
編集   ジャクリーヌ・メピエル 
 セット装飾   ジャック・ドヴィディオ 
    約1時間52分 
画面比:横×縦    2.35:1 
    カラー 

ケーブルTVで放映
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 『明日に向って撃て!』(1969、監督:ジョージ・ロイ・ヒル)といくつかの共通点がある本作は、どんな言葉に置き換えればいいのでしょうか、前者がニュー・シネマの内に数えられるとはいえアメリカ映画なのに対し、こちらはいかにもフランス映画といった感触をたたえています。フランソワ・ド・ルベの音楽がもたらす印象もこの点に大いにあずかっているのでしょう。いずれにせよ青春映画の古典とされる本作品に、いかにこじつけようと怪奇風味は見出せそうにありませんが、クライマックスの舞台となる要塞島は何とも忘れがたい。手短かに取りあげることといたしましょう。

  [ IMDb ]には本作のロケ場所が細かく記されていますが、問題の要塞島はポワトゥー=シャラント地域圏シャラント=マリティーム県イール=デクス(エクス島)市のフォール・ボワヤール(ボワヤール砦) Fort Boyard, Charente-Maritime で、ウィキペディア仏語版の該当頁(→こちらを参照)によると1804年から1857年にかけて建造されたとのことです。また「TV番組で脚光を浴びる要塞島フォール・ボワヤール」(2008/9/5 < [在日フランス大使館公式サイト])には「花崗岩と石灰岩でできた重厚な建造物は、縦31m、横68m、高さ20m、戦艦のように全面に砲門74を備え」云々と記されています。


 お話は大まかに三部構成となっています。彫刻家レティシア(ジョアンナ・シムカス)、レイシング・カーのエンジニアであるロラン(リノ・ヴァンチュラ)、飛行機乗りのマヌー(アラン・ドロン)がそれぞれ挫折を味わうことになるパリとその近郊、宝探しするコンゴの海、そしてレティシアの親族を探してロランとマヌーがたどりつく海辺の町とそこから見える要塞島が、それぞれの主な舞台となる。
 第1部にはロランが自作のエンジンの試運転を行なう場面が二度出てきますが、最初の回でマヌーとレティシアが白い螺旋階段を駈けおります。
 また約38分、ロランが一人寂しく行なう2度目の試運転の際、画面下方にロランとレイシング・カー、少し上から見下ろされたその背景でY字状に枝分かれする滑走路のような道が奥へと伸びていくショットは、とても鮮やかでした。道は白く、空は曇っています。ロランは白のつなぎに赤いヘルメット、トラックとレイシング・カーも赤、芝生は緑です。


 一方レティシアは高架下で個展を開きます。約35分でした。それに先だって彼女はロランの作業場の一隅を借り、廃車の部品を集めてきては、それにガス・バーナーでドゥローイングする。ロランとマヌーが車を出せないというと、モビールだと回してみせる場面もありました。もっともそれ以外に作品の様子は、残念ながらあまりよくわかりませんでした。1960年代の後半、廃品を用いた鉄の彫刻ということからして、ティンゲリやアルマン、ヌーヴォー・レアリスムあたりを連想できるかもしれない。ちなみに『ディメンシャ13』(1963)にも鉄を素材にする彫刻家が登場していましたが、そこでも作品がどんなものかはわかりませんでした。
 なお個展のオープニングは盛況で、取材も複数ありました。レティシアは金属の板をつないでできたドレスを着ています。その様子を見てロランとマヌーはレティシアに声もかけず、すごすごと引っこんでいくわけですが、無名の新人作家の個展でここまで賑やかになるというのは、いささか考えにくいような気がしなくもありません。レティシアは自腹で開くと前の段で語っていましたが、画廊なり何かの支援があったか、すでに気鋭の新人として期待を集めていたとかだったのではないでしょうか。

 マヌーは彼をペテンにかけて飛行免許を失なう原因を作った保険会社員ヴェルタン(ポール・クロシェ)から、コンゴの海に沈んだという5億フランの情報を引きだします。ヴェルタンたちがマヌーを騙す際に引きあいに出したのが日本の映画会社の重役でしたが、あらためてマヌーと密談するのも、なぜか日本料理屋でした。こちらもずいぶん賑わっています。なお宝が沈んだのはコンゴの海のキブジということです。

 約43分、酷評を受けて失意のレティシアがロランの作業場に戻ってくると、旧式の潜水服でロランとマヌーが海に潜る練習をしています。ロランが試運転の際にかぶった、顔をすっぽり覆う白いマスク、なぜか鼻の部分がとんがって突きだしているのですが、そちらも加わってアフリカン・パーティーになだれこむ。
 次いで約43分、舞台はアフリカに移ります。ただし最初に登場するのはセルジュ・レジアニ扮する文無しの元パイロットです。日本語字幕では彼の名前は出なかったように思われるのですが、 [ IMDb ]にも記されていないところからすると、役名はついていなかったのかもしれません。
 マヌーとロランが出てくると、二人は髭もじゃになっています。元パイロットに比べて、食料だの船の借用料だの資金があるようなのが、いささか訝しい。
 マヌー、ロラン、レティシアが楽しく宝探しする船に元パイロットが忍びいります。かくして約55分、モノクロの回想場面となる。富豪を乗せた飛行機を操縦するのが元パイロットでした。富豪を警護してきた軍人(ハンス・マイヤー)がいかにも悪役の似合いそうな強面です。富豪は軍人にブリュッセルで会おうと約束します。フランス領コンゴがコンゴ共和国、ベルギー領コンゴがコンゴ民主共和国として独立するのがともに1960年とのことなので、その時期の逸話なのでしょう。空港の場所はわかりませんが、海に面しているのは元フランス領の方です。

 元パイロットから飛行機が墜落した位置を教えられ、三人組はそこに向かいます。それを海岸からうかがっている男がいる。
 マヌーの質問にレティシアは、お金が入ったら海に浮かぶ家を買うと答えます。ラ・ロシェル市にあるとのことです。ラ・ロシェルはシャラント=マリティーム県の県庁所在地。家というより要塞だと言い直す。そこで創作に励む、もう発表はしない。マヌーはレティシアを口説きたそうですが、少し後でレティシアはいっしょに暮らしたいとロランに言います。ロランは「マヌーは?」と間抜けな受け答えをしてしまう。


 元パイロットが墜落地点を見つけます。彼は白シャツですが、他の三人は皆黒を着ています。
 潜水して飛行機を発見、座席の骸骨の腕に鞄が手錠で結んでありました。飛行機は海の谷底に落ちていきますが、鞄の回収に成功します。
 3つに山分けという元パイロットに、マヌーとロランは4つだと答える。
 ほっとしたのも束の間、警察の巡視艇が臨検だと近づいてくる。乗っていた軍人に気づいた元パイロットがレバー・アクションのライフルを撃ち、銃撃戦になります。悪者たちは退散しましたが、レティシアは流れ弾を受けていました。
 第1部の最後に出てきていた旧式の潜水服にレティシアの亡骸を入れ、海の底へと放ちます。女声のスキャットがオルガンの伴奏で流れる。約1時間15分のことでした。


 約1時間17分、屋根瓦として粗削りな石板を積みあげた家々が並ぶ村にマヌーとロランが現われます。二人とも髭を剃っています。羊がいっぱいいます。短い場面ですが、村の眺めはとても印象的でした。日本語字幕ではタンプル村とのことです。[ IMDb ]には、南フランスのラングドック=ルシヨン地域圏ロゼール県ケザック市のル・トンプル村 Le Tomple (Hameau du Tomple), Quézac, Lozère が挙げられていました。
 そこで二人は一時レティシアを預かっていた老夫婦を見つけだす。レティシアの名字がヴァイスで、ユダヤ系であることがわかります。彼女は親族のいるシャラント地方に移ったという。送られてきた絵葉書の裏に、要塞島の空撮写真がのっていました。約1時間19分のことです。


 二人はレティシアの叔父夫婦が住む村にやってきます。叔父が戻るのは夕方だというので、その間に博物館に寄る。小さな施設で、少年が受付兼案内役をしています。[ IMDb ]によるとエクス島のアフリカ博物館 Musée Africain, 30 rue Napoléon, Île d'Aix とのことです。
 夕方に訪ねると、叔父は何か厄介事かと身構えています。二人が遺品だけ渡して帰ろうとしたところに入ってきたのが、博物館の少年でした。レティシアの従弟に当たるという。二人は気を取り直し、レティシアの遺産として従弟が成人したら大金が遺贈されるよう手続きすると告げます。ちょうど少年が帰宅しなかったらどうするつもりだったんだろうとか、そもそもレティシアの死亡確認、宝石の換金等どうしたんだろうとか、訝しいところです。本作品にはこうした設定がよくわからない点がいくつかありますが、それはそれと言うことにしておきましょう。

 海辺で従弟少年とロランが話していると、従弟少年が見つけたという宝物の話になり、そこへ案内してくれます。堤防の右の方にのぼり階段が見える。
 約1時間30分、宝とは要塞島でした。横長で左端に塔らしきものが見えます。3階建てのようです。島の向こうの方にも陸地が回りこんでいる。
 船着場からあがる階段が上から見下ろされます。階段の上、すぐ右に入口があり、少しはさんで向こう側に中庭がのぞいている。中庭の向こう側も半円アーチが並んでいます。
 要塞は上から見ると角丸長方形をなしています。屋上にもぽつぽつ草が生えている。
 中庭をアーケードが囲んでおり、壁が白く映えます。2階、3階にも歩廊があります。
 屋内では半円アーチが連なる回廊が映ります。手前左にのぼりの階段がある。螺旋階段でしょうか。
 屋上に上がると、外縁を囲む塀は幅が広く、その上を歩けます。随所で7段ほど塀へののぼり階段が設けられている。また半円アーチの扉口があり、下への階段に通じているようです。従弟少年はそこをおりて、銃や弾薬のある部屋に案内します。屋上からしか行けないという設定のようです。とまれ従弟少年の秘密だということなので、彼はひとりで要塞を探検したのでしょう。何と羨ましいことでしょうか。
 外壁に開いた窓は皆ゆるい半円アーチです。上の引用にあったように、本来は砲門なのでした。


 マヌーはロランと別れてパリに戻ります。置いていかれたロランは玩具のヨットを手にしており、いささか間が抜けています。マヌーは飛行場を再訪したり賭博場でギャンブルしたりします。
 ロランは従弟少年と遊んでいます。少年は将来博物館の管理人になりたいという。
 マヌーは以前つきあっていたイヴェット(オディール・ポワッソン)とよりを戻します。二人をつける車がある。中には責められた元パイロットも乗せられていました。あいつかと問われて知らないと答える。撃ち殺されてしまいます。悪者たちの行動基準もよくわからない点です。なぜ元パイロットを宝発見の時点まで泳がせていたのか、また換金も終わったなぜ今頃になってマヌーたちを追い回すのか、事情が読みとれないためあたかも外界からの障害を象徴するかのごとくです。ただし象徴だ何だと意味づけすると面白くなくなってしまうので、この辺にしておきましょう。
 マヌーは以前レティシアが個展を開いた高架下にやってきます。からっぽです。下すぼみの台形の支柱が見える。頭上には高架道路がV字状に枝分かれしています。これも印象的な眺めでした。


 マヌーは村に戻り、ロラン宅を訪ねる。黒のカーディガンとズボン、シャツは白です。不在と知って要塞島に船をだしてもらいます。船着場の階段が今度は下から見上げられます。
 ロランは青シャツに黒ズボンでした。要塞島を買ったのだという。勘違いの余談ですが、今回再見して、要塞島を買いホテルの構想を嬉々として語ったのはマヌーの方だとずっと思いこんでいたことに気づきました。この映画は大昔にTV放映されたのを1度以上見ており、ずっと後にはVHSでも見ているのですが、記憶の何といい加減なことでしょうか。
 屋上の内側の縁に、ゆるい三角屋根、両側が少し迫りだし、中央に円形の穴が穿たれた突起物のあることがわかります。その手前は一段くだりになっている。外縁の塀の内側は、明褐色の煉瓦積みです。屋上自体、途中で段差があり、内側が少し低くなっている。
 悪漢たちがやってきます。回廊に散らばる。マヌーは弾薬庫に走り、拳銃を引っ張りだして応戦しますが、撃たれてしまいます。鉄製のように見える階段が上から見下ろされます。ロランは手投げ弾で悪者たちを一掃する。
 マヌーのところに戻ってきて、レティシアはお前と暮らしたがってたと告げますが、嘘つきめと苦笑いしてマヌーは息を引き取ります。茫然と立ちつくすロランを見下ろして、空撮のカメラが右から左へと回りながら上昇していく。塔状の部分が右の方に回ってきます。カメラはさらに回りながら上昇し、白い要塞と薄緑の海が小さく映されるのでした。

Cf.,  Le Samouraï / Les Aventuriers F. de Roubaix J.P. Melville / R. Enrico, 1967/2005
(邦題:『「サムライ」/「冒険者たち」 オリジナル・サウンドトラック』)
封入されたパンフレットには
ステファン・ルルージュ、村松えり訳、「心の中の冒険」
濱田高志、「補遺:本作について」
が掲載されていました。

 2015/12/2 以後、随時修正・追補
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