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禁断の惑星
Forbidden Planet
    1956年、USA 
 監督   フレッド・M・ウィルコックス 
撮影   ジョージ・J・フォルシー 
 編集   フェリス・ウェブスター 
 美術   セドリック・ギボンズ、アーサー・ロナーガン 
 プロダクション・デザイン   アーヴィング・ブロック、メンター・ヒューブナー 
 セット装飾   ヒュー・ハント、エドウィン・B・ウィリス 
    約1時間39分 
画面比:横×縦    2.55:1* 
    カラー 

VHS
* 手もとのソフトでは1.33:1
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 上記のように手もとのVHSソフトでは画面左右が半分近くトリミングされていることになり、この映画を見たとはとても言えたものではありませんが、きちんと見るのはまたあらためてということで、とりあえず気になる点のみ手短かにふれておきましょう。
 さて、SF映画の古典ということで、設定の上では超自然現象は起こりません。とはいえ、主たるアイデアである〈イドの怪物〉にせよ、それが遙か昔に滅びた文明の遺物によって引き起こされる点といい、見ようによっては怪奇色を読みとることもできなくはありますまい。失なわれた種族の亡霊という点については、クトゥルー神話(→こちらも参照)や光瀬龍(→こちらも参照)のいくつかの作品、あるいはハマー・プロのクエイターマス(クォーターマス)映画版第3作『火星人地球大襲撃』(1967、監督:ロイ・ウォード・ベイカー→こちらで少し触れました)などが連想されるところです。
 なお本作品は、シェイクスピアの『あらし』ないし『テンペスト』から着想を得たとのことです。

 物語は地球から派遣された宇宙船が、アルテア4 Altair 4 という地球型惑星に近づくところから始まります。この星は地球から20光年の距離にあるとのことで、20年前に消息を絶った探検隊の生存者を確認するというのがその任務でした。
 宇宙船は円盤型で、操舵室も円形に見える。天井が高く、壁に沿って中2階の回廊がめぐらされています。部屋の中央には天球儀のようなものが設置されており、これで操縦するようです。この頃には〈ハイパードライヴ〉が開発されているという設定で、超空間から通常空間に出る際には、乗員たちは壁際に並ぶ縦の円筒チューブに一人ずつ入ります。移行時にはこのチューブが青く発光するのでした。
 後の場面での(日本語字幕の)台詞によると、乗員は船長を除いて18名、すべて男性で、平均年齢は24.6歳とのことです。航行には378日を要しました。
 着陸に先立って、アルテア4の衛星と星系の恒星が蝕になるところが映され、宇宙を舞台にしたSFであることを実感させてくれます。ちなみにこの映画の音楽は、ハリウッド風のオーケストラによる劇伴ではなく、終始ぴゅるるる~といったベベ・バロンおよびルイス・バロンによる無調の電子音で、この点もまた雰囲気の醸成に貢献していました。


 20年前の探検隊の生き残り、モービアス博士の家も円盤型をしています。食堂ないし居間にあたる部屋は薄緑の梁および同じ色で逆三角形をなす柱に支えられており、すぐ外が庭になっています。一方には斜めの板が並ぶ黒い影のようなものが見えます。屋外の岩の脇に上への階段がのぞいていましたが、同じものなのでしょうか。

 隊長たちがモービアス邸を訪れている間、宇宙船のそばには警備が二人ついているのですが、カメラはその脇を、やや上方から見下ろしつつ前進し、階段をのぼっていきます。

 モービアス邸の居間の一方の壁は石板でできているように見え、それが書斎への扉になっています。書斎には窓がなく、扉と反対側の壁も開きます。その向こうには、横長の菱形を下の方で切った形をしたアーチが見え、さらに奥へ続いていく。モービアス博士が隊長たちに説明したところでは、この星にはかつてクレル Krell という名のきわめて高度な文明が発達していたのだが、20万年前に一夜にして滅びてしまいました。アーチの形状はおそらくクレルの民の身体的特徴に対応しているのだろうということです。
 アーチの一番高いところは地球人の男性より少し高いくらいでしょうか、それを三つほどくぐると次の部屋になります。中央には台の上に操作盤があり、その向こうには数段あがる階段がある。そこにもアーチが見えます。
 そちらの廊下を進むと、今度は研究室の一つです。入口から床までは3段ほど下にあり、幅の広い階段の左右には青い手すりがつけられています。
 この研究室がお話の肝になるわけですが、それはさておき、研究室の奥からはシャトル・カーに乗ることができ、地下設備の案内がさらに続くのでした。着いた先は巨大なシャフトのようなもので、カメラは斜め上から見下ろします。上下にある電極が電光を放ちながら昇降し、やはり上下に配された電球のようなものが下の方からのぼってきたかと思えば、またくだっていきます。カメラが左から右へ回転すると、シャフトを横断する橋がかけられていることがわかり、その上に豆粒のような博士たちが見えるのでした。
 (日本語字幕の)博士の説明によると、この設備は両側に32キロひろがっており、今いるのは400ある換気口の一つだという。各換気口につき7800のレベルがあります。少し後には「8600キロ立方に及ぶ建物」とも述べられます。もちろん言葉で何を言われても、それがイメージとして実感できなければSF映画としては失敗ということになるのでしょうが、本作品のマット画は、たしかに想像を絶した巨大さと、それでいて人っ子一人いないという感触を伝ええていたように思われます。
 手もとのソフトがトリミングされているので、今目にしているのはもとの映像の中央あたりだけなのですが、ともあれ左側に壁がそびえ、奥から手前へと天井のない廊下がまっすぐ伸びてきます。この廊下は随所で左右に、ほぼ同じ幅で枝分かれしています。右に伸びた部分と、その前後のものとの間では、下から支え軸がのぼってきて、その上に球体を載せています。画面右手前には斜めになった装置が見える。
 博士たちが奥から進んできて、廊下が手前で切れたところでは、下にもずっと設備が続いているのが見えます。そこを左へ折れると、動力装置の管理室です。装置は「星の内部まで降りる。80キロの下だ」という。


 クレルの遺構巡礼は、宇宙船に何者かが侵入して一部の装置が破壊されたことを受けての博士邸訪問の際に行なわれたのですが、その間に二度目の侵入がなされます。この時は宇宙船の階段が目に見えない重みによってたわむのでした。
 二度目の侵入では犠牲者も出てしまい、宇宙船側は防御の陣を固めます。ここで登場する光線砲がなかなか面白いデザインで、三枚のぶ厚い正方形をなす金属板を重ねた部分が主体で、中央には球がなかば埋まり、四隅から細い銃砲が突きでています。裏側の操作部では、金属板を支える太い管のようなものが曲線をなしているという形状でした。
 この光線砲やバリアでの目に見えない怪物との攻防を経て、艦長たちは博士邸に急行、そこで怪物の秘密とクレル滅亡の真相があかされ、クライマックスになだれこむことになります。

Cf.,  石川三登志、『吸血鬼だらけの宇宙船』、1977、pp.133-134

ホラー・ワールド』、no.2、1980.7、pp.16-35:「禁断の惑星」

菊地秀行、『魔界シネマ館』、1987、pp.95-98

ジョン・ブロスナン、福住治夫訳、『ムービー・マジック SFX映画物語』、1990、pp.197-198

菊地秀行、「ある作家の告白 我が映画記〈最終回〉」、『日本版ファンゴリア』、no.18、1996.12、pp.80-81

北島明弘、『世界SF映画前史』、2006、pp.178-180

José María Latorre, El cine fantástico, 1987, pp.193-194

美術監督の一人セドリック・ギボンズについては→こちらを参照

『あらし』ないし『テンペスト』については各種の邦訳があることと思いますが、とりあえず;
シェイクスピア、福田恆存訳、『夏の夜の夢・あらし』(新潮文庫 赤 20H)、新潮社、1971

シェイクスピアに関連して→こちらでも触れています
 2015/1/9 以後、随時修正・追補
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