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妖女ゴーゴン
The Gorgon
    1964年、イギリス 
 監督   テレンス・フィッシャー 
撮影   マイケル・リード 
編集   エリック・ボイド=パーキンス 
 プロダクション・デザイン   バーナード・ロビンソン 
 美術   ドン・ミンゲイ 
    約1時間23分 
画面比:横×縦    1.66:1 
    カラー 

VHS
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 ハマー・フィルムにおけるテレンス・フィッシャーの作品は、1960年代初頭以降、徐々にヴォルテージを落としていったとしばしば見なされているようで、実際『吸血鬼ドラキュラ』(1958)、『バスカヴィル家の犬』(1959)、『吸血鬼ドラキュラの花嫁』(1960)といった作品がたたえていた潑溂たる華やぎに比べると、64年の本作品はやや地味との感は拭えないかもしれません。それでも、今回はなぜか伊福部昭を思わせるフレーズも飛びだすジェイムズ・バーナードの音楽は相変わらずですし、何よりバーナード・ロビンソンのセットによる古城も登場します。予算の都合か物語の要請か、城内が一室しか描かれないのは残念至極といわざるをえないにせよ、その一室は充分に雰囲気を湛えており、また他の主たる舞台である画家宅の前庭や病院、そして墓地でも面白い空間を見ることができます。
 加えてピーター・クッシング(カッシング)とクリストファー・リーが共演している点も見逃せますまい。今回はクッシングは腹に一物ある秘密を抱えた人物で、これは『フランケンシュタインの逆襲』(1957)以来のことゆえよいとして、単純に悪役ともいえず、懊悩する姿はさまになっていますし、ちゃんと活劇も演じてくれます。口ひげを生やしています。他方リーは途中でちらっと顔見せした後、主に登場するのは約50分が過ぎてからで、クッシングと対面するのは、これまた途中で互いに目を合わせることなく横並びするのを前置きに、約1時間10分たってからではありますが、リーがはきはき喋る快活な教授役を演じているのはそれだけでも見ものでしょう。こちらも口ひげを生やし、オールバックに撫でつけたドラキュラとは違って髪がもじゃもじゃなのも、なかなか似合っています。
 リーのこの役どころを展開させたのが、やはりフィッシャーが監督した『悪魔の花嫁』(1968)と見なすこともできるかもしれません。ただ郊外のお屋敷が数件出てくるものの、古城度は高くはない。お話はおおよそ原作(デニス・ホイートリー、平井呈一訳、『黒魔団 デニス・ホイートリー黒魔術小説傑作選 第1巻』、国書刊行会、1983:原著は1935刊)に沿っているものの、原作で最後にロンドン近郊からパリを経て北ギリシアの山中にあるという修道院の廃墟まで足を伸ばし、〈メンデスの山羊〉も再登場するあたりが、予算の都合か物語の要請か、簡略化されているのは残念でした。また原作のド・リシュロー公爵は気弱になったりいろいろ葛藤しますが、リー演じる公爵は終始強面です。本作品での教授のようなユーモアが少し欲しかったところでしょうか。もっともクライマックスで役に立たないのは同じでした。
 話を戻せば、ゴーゴンのメイキャップは必ずしも満足のいくものではないにせよ、下に挙げた『黒沢清の恐怖の映画史』で黒沢清が、「妖女ゴーゴンは何もしない。襲ってもこない。…(中略)…ただ立ってる」(p.122)と述べている点は興味深い指摘ではないでしょうか。
 なお原作はJ・レウエリン・デヴァイン J. Llewellyn Devine のことですが、詳しいことはわかりませんでした。ゴーゴンの一人が現在まで生きながらえ、人間に取り憑くという設定がどんな風に記されているのか、何かに由来するのかどうか、気になるところです(下掲の
Mark A. Miller, Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema, 1995/2010, p.392;chapter eight, note 2 も参照)。

 タイトル・バックでは崖の上にそびえる城が木立越しに見えます。昼間です。左に太い角塔、その右で本棟が横に伸び、高い屋根の下は3~4階あります。角塔と本棟は明るい薄黄色です.。右端は少し緑がかった高い塔で、屋根が2層になっている。下は崖です。
 タイトル部分の間、3度ほど角度が微妙に変わり、それにつれて空のありさま、引いては時刻が移っていきます。
 この城はヴァンドルフ Vandorf 村を見下ろすボルスキ Borski 城とのことで、今世紀の初めに古い時代の怪物が住みついたのだという。


 アトリエでの画家とモデルの会話から物語は始まります。画家がアトリエを飛びだし、彼を追ってモデルが夜の森を通ります。道の脇に三角屋根をかぶせた小さな磔刑像が映ります。モデルは何かを見て悲鳴を上げる。
 後の場面でまずモデルの死体が発見され、容疑をかけられた画家を捕らえるべく警官たちが森を捜索すると、木に縄をかけて首を吊っているのが発見されます。成行がどうだったのかは説明されないのですが、うがった読み方をしないのであれば、先に出た画家が目的地に着いていないらしいことからして、モデルの悲鳴を聞いて戻り、その惨状を見て自害したと解することができるのかもしれません。
 なお捜索の際、警官の一人が「ここは城に近い」と述べるのが印象的でした。

 クッシング扮するドクター・マナロフの病院の正面を映した後、画面の手前で左下を向いて何かを調合しているドクターが登場します。振り向いて部屋の奥へ向かうと、床から右上へ5段ほどあがった段差の上となり、この高くなった部分は部屋の外周を取り巻くようにめぐっていることがわかります。ドクターはぐるっと回ったその先にある机で作業を続ける。カメラはそれを左から右へと1カットでとらえます。奥の壁は円に近い多角形をなしており、各面の下半はくすんだ緑、上半は白でそれぞれ半円アーチを擁しています。
 この研究室の扉の向こうには、階段の踊り場があり、細い手すりで仕切られている。踊り場には向かって右側からのぼるようです。右の方には扉口があって、木製の仕切りは緑に塗られている。
 次いで階段が上から見下ろされると、女が叫びながら駈けおりてきます。上の階の階段の手前を右から来て、まっすぐくだり、すぐに右へ折れる。階段の下には左への戸口と正面の戸口があり、前者は控え室、後者は研究室に通じているようです。後者の戸口に立つドクターの助手カルラ(バーバラ・シェリー)の背後には5段ほどののぼり階段がのぞいており、これは先にドクターが通ったところなのでしょう。

 画家の父親であるジュール・ハイツ教授(マイケル・グッドライフ)は息子の死に不審を抱き、真相を突きとめようとするのですが、いっかな協力を得られないどころか、村を出て行けと脅される始末です。
 なお、ここで人数は少ないものの暴徒が登場します。『フランケンシュタイン』(1931)以来ユニヴァーサルの怪奇映画でしばしば暴徒が出てきたことを思うと、ハマー・フィルムの作品を万遍なく見たわけではないのでたぶんにいい加減な印象ですが、少なくとも『フランケンシュタインの逆襲』、『吸血鬼ドラキュラ』、『ミイラの幽霊』、『吸血鬼ドラキュラの花嫁』などでは見かけなかった。『吸血鬼ドラキュラ』や『吸血鬼ドラキュラの花嫁』に登場する村人たちは怯えに竦んでおり、暴徒化する余力もなさそうでした。他方『ドラキュラ復活! 血のエクソシズム』(1970、監督:ロイ・ウォード・ベイカー)や『恐怖の吸血美女』(1971、監督:ジミー・サングスター)、『ハンズ・オブ・リッパー』(1971、監督:ピーター・サスディ)、『ドラキュラ血のしたたり』(1971、監督:ジョン・ハフ)ではちゃんと出てきましたので、早急な比較はできそうにないのですが(と書いたそばから、『宇宙からの侵略生物』(1957、監督:ヴァル・ゲスト)に暴徒が登場したことに気がついたりしたのでした)。
 話を戻すと、画家宅に居残ったハイツ教授は調べ物を続ける一方、ライプツィヒ大学のマイスター教授のもとにいる画家の弟(?)ポール(リチャード・パスコ)を呼び寄せます。ここで教授役のクリストファー・リーがちらっと顔を見せます。また空から見下ろした大学の眺めも映りますが、あれは既成の映像なのでしょうか。
 さて、夜アトリエにいると歌声のようなものが聞こえてきて、ハイツ教授は外のテラスに出ます。このテラス周辺が、病院に続くセットの見せ場といってよいでしょう。フランス窓から出て左奥にゆるいアーチがあります。そこをくぐると手前におりる階段がある。階段の上は左へ廊下が伸びているようです。アーチの柱は病院の研究室同様、上が白で下は緑です。階段は右へ折れ、さらに下へ続く。おりていくハイツ教授をカメラは上から1カットでとらえます。上から見て右にはアーケードがあり、といってもアーチの中はすぐ壁になる。ここも上は白、下は緑です。左上には下すぼみの吊りランプがぶらさがっています。階段をおりると右に石で囲われた池を見ながら少し進み、門につきあたります。門の右手の壁も、左手前にある棟も凹凸のある輪郭をしています。
 この門と階段の間の前庭は後にも出番があります。また『吸血鬼ドラキュラ』や『吸血鬼ドラキュラの花嫁』における墓地同様、くぼ地状の段差のある空間が登場したわけですが、空間を区切ることでセットが組みたてやすくなるという点に加えて、上下運動を演出できるという点が重視されているのでしょう。


 ハイツ教授は三角屋根の下の小さな磔刑像を脇目に、森を抜けます。下から城が見上げられる。左に角塔、その右は少し引っこんで2階分の壁となります。屋根の斜面にも窓が設けられている。さらに右にも塔らしき壁が控えています。
 教授は岩をよじ登って左へ向かう。けっこう幅の広い橋が上から見下ろされます。画面奥へ伸びており、その向こうに城が待つ。
 城内に入ると、画面左に扉口があり、扉口のある壁の右上には窓が見えます。画面奥は床からあがった壁が途中で切れ、その上は中2階が奥へ続いている。左右に列柱があります。残念ながら奥へは入らないのですが、中2階の広そうなことがこの空間の特徴なのでしょう。
 扉口の前方すぐの床には、台座の上に足を伸ばしたトルソらしき大きな石像が飾られています。《ベルヴェデーレのトルソ》(下掲の挿図参照)のようにも見えますが、もう一つはっきりしない、表面はかなり荒れた状態のようです。画面の手前右には大きな地球儀らしきものが配され、床には枯葉が吹きこんでいます。
 カメラが左から右へパンすると、中2階がずっと続いていて、右に折れて手前へ伸びているのがわかります。随所に円柱がたっているのですが、いずれも4本ほどずつ組にされている。手前に壇のように伸びてきた部分の向こう側に上への階段があるようです。まず床から幅広の段を数段、それから左へ折れて、上へ通じています。
 教授のアップを経て、カメラは中2階、扉口あたりから見下ろします。階段の最初の踊り場、右側の壁に大きな楕円形の鏡がかかっている。踊り場の先、右手も壁から中2階分の壁が出て、階段の左右を囲んでいます。カメラが右から左へパンする。上は右側にも中2階があるのですが、こちらはすぐ壁に当たる浅い空間です。ここには椅子が置いてあり、壁には角をはさんで絵が掛けられている。踊り場の鏡に階段をのぼる教授の背が映ります。
 柱の陰に何者かが現われる。教授はそちらを見て悲鳴を上げながら下へ戻る。鏡に正面向きの像が映っています。彼は岩場を通って、画家宅に戻るのでした。
 ここまで約27分半です。『吸血鬼ドラキュラ』同様、主役格の人物が交替し、以後は教授の息子で画家の弟(?)であるポールがお話を動かしていくことになるでしょう。


 昼間、ポールは画家宅のテラスのアーチへ向かいます。左上から下へカメラが動くと、階段の踊り場で右に折れて下へおりていく。踊り場部分の右には、少し突きでた明るい茶色の壁があることがわかります。その下方はゆるい半円アーチになっている。周辺は上が白、下が緑です。階段をおりた先にある池は石の直線的な囲いで区切られており、階段側が広く、門側で折れて狭くなっていました。
 ポールは階段の上へ戻る。アトリエのフランス窓の向かいには上が三角屋根になった欄干が伸びており、向こうには野原がひろがっています。画面の左手前に緑の柱があって、その縁にぶつぶつの突起が出ているのは何かと思いましたが、後にカーテンであることがわかります。その右には緑の桟と白い柱に縁取られた窓がはまっている。上は透明で、下半は磨りガラスのようです。


  ポールは父の残した遺言から、ゴーゴン三姉妹の生き残りメゲーラの魂がこの地にやってきたことを知る。ゴルゴー(ン)三姉妹は呉茂一『ギリシア神話』(1956)上巻 p.30 ではステンノー、エウリュアレー、メドゥーサですが(また下巻 pp.66-68 では長女はステノーと表記。メドゥーサについては上巻 p.242 も参照)、ここではティシフォニー、メドゥーサ、メゲーラとされています。 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』(1960)によると、ティーシポネーとメガイラは三柱からなる罪の呵責を司る女神エリーニュスのメンバーとのことです(p.72)。ちなみにもう1柱はアーレークトー。
 ポールが語る伝説はそのまま、カルラに切り換えられます。彼女は肩から上をやや下から映されるのですが、またカットが換わると、左手前に左向きのドクターが大きく、少し奥に立つ彼女は右を向いている。遠近・大小・顔の向きが対比されるとともに、ドクターは陰が濃く、カルラにはフラットな光が当てられています。カルラのアップと二人のショットの交替は何度かくりかえされます。


 ポールが夜アトリエにいると、突風が吹きこんできます。庭へ出て、下の池の水面をのぞきこむ。水面が上から見下ろされる。ポールの顔、追って異形の顔が映るのでした。

 ポールは病院のベッドに横たわっている。背を向けたポールに、向こうに立つドクターが円鏡を見せるさまが、下からとらえられます。顔だけが映った鏡の像は、全身あわせて見た時以上に、やつれて見える。
 夜、ポールはうなされています。掛け布団の赤があざやかです。奥の壁にかかる時計は上に丸い影を落とし、同時に左下に斜めにひずんだ大きな丸い影も見えます。手前にある小さな円鏡の影なのでしょうか。ベッドの頭側の壁にも、上から吊された丸い影がある。下からカルラを見上げれば、天井には窓の桟の影が落ちています。上からポールを見下ろすと、髪の毛が白く変じているのでした。


 墓地でポールが父親の柩を掘り起こしています。すぐ上に3本の円柱を支える台座があります。その左に3段、右に4段、幅の広い階段が上へのぼっている。階段の右側にも台座があり、円柱を2本のせています。この作品では随所で上を白、下を緑に塗った壁を見かけるように、円柱は複数本を一組にして立ちあげるのが通例であるかのごとくです。柱セットは前年の『吸血鬼の接吻』(1963)ですでに登場していました。さらに右上には少し斜めになったあがり階段がのぞいています。画家宅の庭同様、墓地にも高低差があるわけでした。
 カットごとに見え方も変化します。手前に大きく4本の円柱のセットが映れば、その向こうには右下がりの手すりがのぞいています。その前にカルラが現われる。
 切り替われば、円柱はさほど背が高いものではなく、すぐ上に軒があることがわかります。左のセットは前に3本でその後ろにも円柱が控えているのかもしれない、右は2本かける2で、左右のセットを上でゆるいアーチがつないでいます。右の円柱セットはさらに右で壁だか斜面に接しているようです。


 朝の城が下から見上げられます。尖り屋根の左の塔のさらに左、壁が少し伸びて先の塔より少し低い塔のあることがわかります。屋根はドーム状のようにも見えます。その左奥にも、塔らしきものがかすんでいる。
 背後に欄干のある道だか橋をポールが右から左へ進みます。欄干の手前には倒木が並んでいる。先で右に折れると、向こうに数段あがって扉があります。その両脇にも欄干がついている。二枚の扉の内、右のものは開いており、左のものには窓が設けてあります。
 城内に入ったところをカメラが上から見下ろすと、扉が右に見え、少しおいて奥の方、壁の続きに別の出入り口のあることがわかります。カルラが中2階の椅子にすわっているところを、引きで下から見上げます。階段をのぼった先にも扉があり、その左には赤い背もたれの椅子が置いてある。
 階段を手前におりてくるカルラが下からとらえられます。その後ろにポールがいます。次いで上から、右手前にポールの背が見え、左下にカルラがいる。広間と階段を区切る低い壁は、左側に2本円柱セットをのせ、その右手前で幅が狭くなっていることがわかります。その下に四つ葉状の飾りが見える。この間、下からのショットと上からのショットが交互に切り換えされます。

 少し前に到着していたリー扮するマイスター教授は窓を乗り越えて病院に忍びこみ、カルテをあさります。研究室前の階段は、1階近くの踊り場で左右双方におりていくことが映されます。右側のくだり階段の上には木製の小さな馬蹄形アーチが3つ連なり、その右手、通路の上では3列の斜め格子になっています。この斜め格子の列は、研究室、扉付近の壁の上方にもありました。

 マイスター教授の調査で、カルラは7年前に村へ来たのですが、5年前の1905年に記憶喪失にかかっていたことがわかります。この5年前こそ、最初の怪死事件が起こった年なのでした。冒頭のモデルの事件以前に、5年間で計7件の変死があったことは始めの方で語られていました。またカルラの記憶喪失は満月ごとに発症するのだという。朝に城でポールと会っていたカルラは、ポールに村を出ようと誘われるのですが、「昨日なら行けた。今日は無理」と答えていました。今日は満月なのです。城の中2階の椅子に坐っていたあたりからカルラは、単なるきれいなお姉さんではすまない何かを感じさせるようになっていきます。なお朝の会話では、城に最後の住人がいたのが50年前だという話も出ていました。

 アトリエの窓の1つは、多くの円で区切られており、その中を色ガラスで埋めたものであることがわかります。またテラスの左側、家屋と下へおりるアーチの間には馬車の通れるだけの道がありました。マイスター教授に城へ行かないよう2階の1室に閉じこめられていたポールは窓から抜けだし、この道を進みます。雲のたなびく夜空には満月が皓々と照っている(このショットは前にも挿まれていました)。下から見上げた城のシルエットも挿入されます。
 ポールが城内に入ると、剣を手にしたドクターが待っていました。ポールは長い燭台をとって応戦します。カメラは上になり下になります。髪を振り乱すクッシングがたまりません。
 赤茶の壁を背に緑衣のゴーゴンが立っています。二人は争いながら階段を上へあがりますが、ドクターはポールを突き落とします。奥に踊り場の鏡が見えます。ドクターはゆっくり振り返り、顔の前に腕をかざしながらゴーゴンの方へ進む。しかしいざ剣を振るおうとする際、思わず腕をのけてしまうのでした。階段をよろけ落ち、踊り場で倒れます。
 一方息を吹き返したポールが踊り場へ向かうところが上から見下ろされます。鏡の下の床に円形の光が落ちている。縁が茶色の鏡がアップになります。手前にはポールの背が見えます。ゴーゴンが階段をとととととっとおりてくる。『吸血鬼ドラキュラ』でのルーシーが思いだされるところです。ゴーゴンの背後、階段上の扉付近は緑に染まっています。鏡は画面左寄りを占め、右はグレーの壁です。ポールは紺の背広を着ています。そしてポールは振り向いてしまう。
 ポールを追ってきたマイスター教授は城内に入り、いつの間にか中2階にあがっています。ゴーゴンの背後にそっと近づき、ドクターが落とした剣を拾いあげて、ゴーゴンの首をはねるのでした。転げ落ちるゴーゴンの首が上から俯瞰されます。ポールが鏡にもたれながらずり落ちるとともに、カメラも上から下へ向きを変えていきます。マイスター教授が欄干の上から下を覗く姿が、下から見上げられます。彼の背後には四角の鏡があり、その左に扉が見えます。這い寄るポールの顔は白面化しています。ゴーゴンの頭部から蛇が引っこむ。階段をおりるマイスター教授を下から見上げます。カメラは左から右へ動き、踊り場の奥には大きな窓があって、向こうに木が立っていることがわかります。這い寄るポールがやや下から、カルラに戻る首を上から、ポールと首のカットが何度か切り換えられます。石に化しつつ手を伸ばすポールの姿はなかなかに悲痛です。下から見上げられたマイスター教授も沈鬱でした。力尽きるポールに続いてカルラの首を映して、終幕となるのでした。

Cf.,  The Horror Movies, 4、1986、p.77

黒沢清+篠崎誠、『黒沢清の恐怖の映画史』、2003、pp.121-123

Peter Hutchings, Hammer and Beyond. The British Horror Film, 1993, pp.82-86

Mark A. Miller, Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema, 1995/2010, pp.129-144: "8. Dark Winds of Fatalism. The Gorgon (1964)"

David Miller, Peter Cushing. A Life in Film, 2000/2013, pp.101-102

The Christopher Lee Filmography, 2004, pp.132-135

Jonathan Rigby, English Gothic. A Century of Horror Cinema, 2002, pp.106-108
おまけ 《ベルヴェデーレのトルソ》
《ベルヴェデーレのトルソ》
1632


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ゴルゴー(ン)については上掲の呉茂一『ギリシア神話』の他、やはり上掲の;
高津春繁、『ギリシア・ローマ神話辞典』、1960、pp.127-128


ハリソン、佐々木理譯、『ギリシャ神話論考』、1943、「三 山母」の「一 ゴルゴーン」(pp.92-97)

ジャン=ピエール・ヴェルナン、及川馥・吉岡正敞訳、『眼の中の死 古代ギリシャにおける他者の像』(叢書・ウニベルシタス 419)、法政大学出版局、1993
原著は
Jean-Pierre Vernant, La mort dans les yeux. Figures de l'autre en Grèce ancienne, 1985

ギリシアのの神話・宗教」、『世界神話大事典』、2001 中のJ. カルリエ、「ゴルゴン」(p.413)

上村くにこ、「異界と中心の激突」、2006、とりわけ pp.187-198:「異界に人間を引き込む怪物=ゴルゴン」
なども参照

ちなみにメドゥーサが登場するのが;
『タイタンの戦い』(1981、監督:デズモンド・デイヴィス)
レイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した最後の長篇です。
またその再製作版;
『タイタンの戦い』(2010、監督:ルイ・ルテリエ)

 
日本のバンドから;
アルスノヴァ、『黄泉の女神達』、1996/2006(1)
3曲目が
"THE GORGONS. Never Look at Her Eyes"。歌抜きのキーボード・トリオです。 
アルスノヴァ、Lacrimaria、2001/2006
(→こちらを参照)のボーナス・トラックとして、"The Gorgons ~ Sahara 2001 ~ Dance macabre ~The Gorgons"(Live Version)が収録されています。
1. 『ユーロ・ロック・プレス』、vol.28、2006.2、pp.9-11。 舩曳将仁監修、『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック DISC GUIDE SERIES #039』、シンコーミュージック・エンターテイメント、2009、p.146。Cf., ヌメロ・ウエノ、たかみひろし、『ヒストリー・オブ・ジャップス・プログレッシヴ・ロック』、マーキームーン社、1994、p.60。同じアルバムから→こちらも参照
 
 2015/1/29 以後、随時修正・追補
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