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血とバラ
Et mourir de plaisir
    1960年、フランス・イタリア 
 監督   ロジェ・ヴァディム 
 撮影   クロード・ルノワール 
編集   ヴィクトリア・メルカントン、マウリツィオ・ルチディ 
 美術   ジャン・アンドレ、ロベール・ギガン 
 セット装飾   ロベール・クリスティデス(クリスティード) 
    約1時間27分* 
画面比:横×縦    2.35:1
    カラー、一部モノクロ 

地上波放送で放映**
* [ IMDb ]によるとUSA版は約1時間14分、ドイツ版は約1時間18分となっています。
** 吹替、クレジット部分は英語、英題は Blood and Roses。放映時間は約1時間14分、画面比は1.33:1
………………………

 上記のように放映時画面左右が半分近くトリミングされていることになり、 [ IMDb ]からすると放映時間はUSA版にほぼ準じているようですが、フランス版からは13分前後カットされている。日本語吹替なのはともかく、何よりどう見ても放映に用いられた原版はかなり褪色したものです。この映画を見たとはとても言えたものではなく、加えて電波状態が悪い時、VHSに3倍録画したという態なので、きちんと見るのはまたあらためてとなってしまいますが、ご容赦ください。何か事情があるのか日本ではソフト化されていないようですが、ぜひともきちんとした状態で出してほしいものであります。

 吸血鬼小説の古典の1つであるレ・ファニュの「カーミラ」(1871~72)に想を得た映画としては本作以前にドライアーの『吸血鬼』(1931/32)、後にはマストロチンクエの『女ヴァンパイア カーミラ』(1964)、ロイ・ウォード・ベイカーの『バンパイア・ラヴァーズ』(1970)などがあり、これ以外にも何度か映画化されているようですが、見る機会のあったのはこれまでのところ以上に留まります。とはいえドライアー版同様筋立ては完全に換骨奪胎されてています。フランス語原題は『そして悦びに死ぬ』の意。
 舞台はほぼ城内とその周辺、近隣の廃墟などに限られていますが、残念ながら登場人物が充分に廊下をうろうろしたり階段を上り下りしたりしてくれているとはいいがたい。とはいえ面白い空間を欠いているわけでもないので、メモしておくことといたしましょう(追記:イタリア語で不勉強のため中身はよくわからないのですが、ロケ先に関しウェブ上で出くわした"LOCATION VERIFICATE: Il sangue e la rosa (1960)"([ < il Davinotti ])を参照))

 撮影のクロード・ルノワールはジャン・ルノワールの甥にあたり、後者の監督作品でしばしばカメラを担当しました。本サイトで扱った作品では『大いなる幻影』(1937)でアシスタント・カメラマンをつとめています。ヴァディムの作品でも撮影を担うことが多かったようで、『世にも怪奇な物語』(1968)第1話や『バーバレラ』(1968)などでもクレジットされています。ちなみに本作でアイリッシュ・ハープのメランコリックなテーマ曲が印象的なジャン・プロドロミデスは、『世にも怪奇な物語』(1968)第1話でも音楽を担当しています。
 主演のアネット・ヴァディムことアネット・ストロイベルグは当時のヴァディム夫人です。ちなみにヴァディムがアネット以前にブリジット・バルドーと、アネットの後にはカトリーヌ・ドヌーヴ、ジェイン・フォンダと結婚していたり恋愛関係にあったりしたことは下掲の『世界の映画作家13 ロジェ・ヴァディム ロマン・ポランスキー』(1971)でも事細かに記されており、当時有名な話だったようです。
 もう1人のヒロインを演じるエルザ・マルティネリといえば、ハワード・ホークス監督、ジョン・ウェイン主演の『ハタリ!』(1962)あたりがすぐ思い浮かびますが、ほぼ怪奇古城映画と見なせなくもないオーソン・ウェルズの『審判』(1962)にも出ていたそうです。いずれ確認する機会もあるでしょう。
 男性側の主役であるメル・ファーラーは、オードリー・ヘプバーンと共演した『戦争と平和』(1956、監督:キング・ヴィダー)だとか、ヘプバーン主演での監督作『緑の館』(1959)だとか、ヘプバーン主演で製作にまわった『暗くなるまで待って』(1967、監督:テレンス・ヤング)だとかが[ allcinema ]を見ると挙がっていますが、さらに『レディ・イポリタの恋人/夢魔』(1974、監督:アルベルト・デ・マルティーノ)だの『悪魔の沼』(1977、監督:トビー・フーパー)だのといった作品にも出演していたとのことです。

 タイトル・バックは白のひろがりの向こうにもやっとしたピンクの形が浮かぶというもので、アイリッシュ・ハープの旋律が静かに奏でられる。
 続いて飛行機の機内となります。ミラルカによるナレーションがかぶせられる。日本語吹替ではミラルカの声(北浜晴子)とアネット・ヴァディム演じるカルミーラの声(上田みゆき)は別の声優によって分担されていましたが、原語版ではどうなっていたのでしょうか?
 飛行機の窓から地上の城が見下ろされる。イタリアのカルンシュタイン家のものとのことです。あまり背は高くはなさそうで、水平に長く伸びています。左手前には池があり、その縁に沿って柱が並んでいるらしい。右の方には廃墟らしきものが見えます。
 次いで地面の高さで夜の壁が映されます。3階分ほどの窓がある。

 屋内です。左奥に半円アーチがあり、右手前に煉瓦積みの柱が立っています。その前にいる男性二人が右へ進むと、カメラもそれを追います。煉瓦柱は半円アーチをなしており、その下の壁龕に聖母子像が置いてあります。アーチ右側の煉瓦柱の右側が奥へつながっている。
 男たちの内一人は執事で、もう1人の客人を奥の居間に案内します。さほど高くない天井は、ゆるいアーチをなす梁で縦横に区切られています。アーチの交差点を柱が支えている。柱や壁の一部はやはり煉瓦積みで、その他の壁は漆喰塗りでしょうか。この城ではこうした煉瓦積みの柱や梁によって細かく区分けされた空間が基調となっているようです。居間自体もさほど広くはないようですが、奥の方でいくつか別の空間につながっていく。ピアノの見える部屋もあります。
 客人は花火技師のルッジェーリ(アルベルト・ボヌッチ)で、彼を出迎えたレオポルド・デ・カルンシュタイン(メル・ファーラー、声は前田昌明)が居間にいる客たちを紹介します。一人一人カメラはまず右から左へ、そしてまた左から右へ戻って、一周したかのように最後にレオポルドと花火技師に戻ります。同じ年の『血ぬられた墓標』での一周カメラが思いだされたりもする。
 モンテヴェルディ判事(マルク・アレグレ、この人は映画監督だそうです。声は岸野一彦)とその娘ジョルジア(エルザ・マルティネリ、声は小沢紗季子)、ジョルジアはレオポルドの婚約者とのことです。黒髪で白いドレスを着ています。髭のヴェラーリ医師(ルネ=ジャン・ショファール、声は今西正男)、近所の友人グイド・ナルディ(レナート・スペツィアーリ)、そしてオーストリアの分家の当主で従妹のカルミーラ(アネット・ヴァディム)です。カルミーラは金髪で黒いドレスを着ています。ジョルジア同様豪華な首飾りをつけている。二人並ぶと黒と白のドレスが引き立てあいます。吹替ではオーストリアにある方が分家とされていましたが、ドイツ語系の姓からすると逆のような気もします。ちなみに東欧からイタリアにやってきた一族と吸血鬼の話というと、後の『バンパイア・イン・ベニス』(1988、監督:アウグスト・カミニート)が連想されたりもする。
 この他に暖炉で火の世話をする革ジャンのジュゼッペ(セルジュ・マルカン、声は納谷六朗)、酒のグラスを給仕するメイドのリサ(ギャビー・ファリノンことガブリエッラ・ファリノン、声は落合美穂)もいる。
 花火技師が花火を設置するのにいい場所を見つけたといいます。ここから4~500メートル離れた丘の斜面にある古い教会でした。それを告げたとたん、カルミーラ、革ジャンのジュゼッペ、メイドのリサがはっと息を呑みます。レオポルドによるとそこは墓地なのでした。しかしレオポルドはあまり気にしていない様子で、200年以上空き家だとも付け加えます。
 ジュゼッペが手伝いは集まらないかもというと、レオポルドは説明する必要を感じたのでしょう、村人たちは墓地に吸血鬼がいると恐れているのだという。そして吸血鬼はカルンシュタイン家の人間にほかならない。義父となる予定の判事がそんな話は聞いていないと抗議すると、1765年に吸血鬼と縁は切れたと応えます。この年村人たちが謀反を起こしたとのことです。
 吸血鬼たちは滅ぼされましたが、ただ一人柩が空だった者がいる。それが居間の奥にかけられた肖像画のモデルです。肖像画はあまり達者な出来ではありませんが、ともかくカルミーラは自分に似ているでしょうと言います。モデルはミラルカで、従兄のルドヴィッチに恋していた。しかしルドヴィッチこそが村人たちを率いたのでした。
 カルミーラがほらと言うと、窓のカーテンが揺れます。主観カメラが一人一人順にとらえていく。ルドヴィッチはレオポルドに似ているのだという。カルミーラの表情は凍てついているかのごとくです。
 なお肖像画のミラルカが手にした薔薇は色褪せています。吸血鬼が触れると花は萎れるとのことです。この設定は後に出てくる動物が吸血鬼に怯えるという点と対をなしているだけでなく、英題や邦題にもあるように重要なイメージとして位置づけられています。設定の由来はよくわかりませんが(種村季弘、『吸血鬼幻想』、薔薇十字社、1970、p.15 も参照)、後の萩尾望都による『ポーの一族』連作(1972-76)で意味づけを変えて重用されることになるでしょう。

 夜の庭で仮装舞踏会が開かれています。ジョルジアとレオポルドをおさえた後でカメラは上昇、生け垣の向こうにひろがる芝生とそこで興じる人々を高所から見下ろします。奥には半円を正面とする蒲鉾状の建物が見えます。その左手前にはアーケードが伸びている。骨格だけの半円アーチを水平の梁でつないだもので、左右より中央のアーチが高い。
 次いで奥にやはり蒲鉾状建物、その手前に池があります。向こう岸には彫像が一列に並んでいる。医師と連れの女性が左奥から進んできて、カメラの前を横切り、背を向け右へ向かいます。カメラもそれを追う。医師はカルミーラが子供の頃13年間ここで暮らしたといいます。池の右端はアーケードに囲われ、奥に館が見える。


 カルミーラの部屋です。彼女は黒いガウンを羽織り、レコードをかけベッドの上で跳ねている。レオポルドが入ってきて怒ります。赤いドレスを投げつける。
 レオポルドが出ていった後、カルミーラも部屋から出ます。切り替わると右の煉瓦アーチから出てきて、左の狭い螺旋階段に向かう。螺旋階段の手前・左右には角柱が控え、その上を顔つきの装飾がつないでいます。
 残念ながら螺旋階段をのぼる様子は映されず、次いで手前に白いドレスが配された空間となります。後にカルミーラの部屋は2階にあることがわかるので、ここは3階かそれより上ということになる。ミラルカのナレーションが白いドレスは彼女の花嫁衣装だと告げます。ドレスの向こうにはガラス戸があり、その奥で灯りがつく。右奥からカルミーラが入ってきます。


 廃墟で花火技師たちが準備を進めているところが下から見上げられます。奥の上には崩れた大きなアーチらしきものが見えます。

 居間です。ジョルジアとレオポルドの前に使用人たちが勢揃いし、代表で二人の娘が祝いの言葉を捧げています。この二人娘は後にも狂言廻し的に登場しますが、素性も二人の関係もよくわかりません。[ IMDb ]でマリア(ナタリー・ラフォリー、後に映画の編集に携わるとのこと)とマルタ(カミーラ・ストロイベルグことカルミーラ・ストロイベルグ)とあるのががそうだと思われるのですが、後者の俳優さんの名前は何かいわくがあるのでしょうか。[ IMDb ]には他に出演作等はあげられていませんでした。
 ジョルジアとレオポルドの背後に短い廊下のような空間があって、その左の壁にミラルカの肖像画がかかっています。さらに奥、左側の階段からカルミーラがおりてくる。白いドレスを着ています。肖像画の隣に立ちます。それを見た二人娘はそそくさとお祝いを告げると、そそくさと逃げだします。
 花火が始まります。一同は庭に出る。フランス窓のところに残ったカルミーラにグイド・ナルディが話しかけます。彼はカルミーラに懸想しているようですが、彼女がレオポルドが好きなことには気づいており、本当のことを言って怒らせてしまいます。カルミーラは往復ビンタにもう一発、計3回の連発ビンタを速射で喰らわせる。偏見かもしれませんがフランスの映画だなあと思ってしまうのでした。『世にも怪奇な物語』第2話はヴァディムではなくルイ・マルの監督ですが、そこではブリジット・バルドーがアラン・ドロンに7連ビンタをお見舞いしていました。

 池が真横からとらえられる。水面には何やら白い塊が4つ逆さに映っています。向こう岸をカルミーラが右から出てきて、中央あたりで腰かける。坐ったカルミーラのアップがやや左から、次いで花火、見上げるジョルジアとレオポルドと、3つのカットが交互に繰り返されます。
 廃墟の壁の奥で爆発が起こる。手前にくだりの階段があります。駆けつけたレオポルドに、花火技師はこんなことはいまだかつてなかった、陰謀だとぷんぷんしています。
 墓地でしょうか、傾いた十字架が右に見えます。奥から光が射している。蛙の鳴き声が聞こえます。奥の木の向こうからカルミーラが出てきて、手前に進みます。切り替わって背を向け廃墟の方に進むさまが下から見上げられる。上の方にはアーチだか凹みだかがいくつか見えます。また爆発が起こり、壁が崩れる。こんなところにいては危ないと思うのですが、カルミーラはそのままです。
 崩れた壁あたりにアーチがあります。ミラルカのナレーションが納骨堂だと告げる。中に入っていきます。下りの階段になっているようです。階段の天井は不定型な洞窟状で、そこを主観カメラがおりていきます。かなり上からの角度で見下ろしている。右下に横臥像(ジザン)をのせた石棺があります。
 降り口付近の壁も洞窟状です。カルミーラが横臥像(ジザン)に触れると、石棺の蓋がぎぎとずれていきます。カルミーラの背後では低くゆるい半円アーチが交差しています。壁には壁画らしきものも描かれているようです。
 カルミーラは後ずさる。彼女を追って主観カメラが前進します。目元のアップになるまで進み続ける。悲鳴が発せられます。手もとの録画ではここまでで約25分でした。

 納骨堂からカルミーラが上がってきます。朝になっているようです。引きで丘の階段をおりるさまがとらえられる。アイリッシュ・ハープの旋律が流れます。
 俯瞰で池の右端が弧を描いているさまがとらえられます。その右手を囲うアーケードが折れ曲がっていることもわかります。奥に館が見える。
 石造りの塀が左右に伸びている。左寄りに方形の出入り口が開いています。奥から自動車が進んでくる。その大きさからすると、出入り口及び塀はかなりの高さがあるようです。塀の上方には方形の銃眼が並んでおり、向こうにこれまた背の高い杉が2本ほどのぞいています。
 カルミーラが出ていく車とすれ違います。車に乗っている連中は徹夜で騒いでいたようです。それが当たり前なのでしょうか。カルミーラは中に入っていく。


 厨房でジョルジアとレオポルドが喋っています。ジョルジアがかなり口が悪いことがわかります。自信満々ですが、後に揺るがせられることでしょう。二人は厨房から出る。
 奥へ廊下が伸びています。突きあたりは奥まって半円アーチがかぶさり、さらにその奥に窓がある。その右に上への階段が見えます。二人は右手前から上がってきます。下に階段があるわけです。あがった先には煉瓦の角柱が控えています。角柱の上は交差する半円アーチにつながっている。天井は板貼りです。左側の壁は煉瓦積みで、途中にジョルジアの部屋の扉があります。
 部屋に入ると、扉の上にゆるい半円アーチがかぶさっています。この周辺はやはり煉瓦積みです。入って数段上がります。ベッドにはカルミーラが眠っていました。酔っぱらってるんだとレオポルドは彼女を抱きあげ、廊下に出ます。
 右手に交差するアーチを支える柱が見える。その右は短い欄干が右の壁まで伸びています。下に下り階段があるわけです。カメラが左から右へ動くと、下り階段の右にはのぼりの階段が続いていることがわかります。5~6段で踊り場となり、左上に折れていく。アイリッシュ・ハープの曲が流れています。
 階段の右手、数段あがって扉があります。こちらがカルミーラの部屋です。途中でジョルジアがレオポルドを追い越して扉を開けています。素晴らしい。
 この部屋は入って数段おります。左にベッドがあり、その左や右奥にも半円アーチがあり、交わっては柱を下ろし、部屋をいくつにも区切っています。1階の居間にも見られたこうした空間の分節がこの城の特徴のようで、好感度急上昇です。

 ベッドに横たえたカルミーラからジョルジアがドレスを脱がせます。レオポルドは面映ゆそうなものの向こうを向いたりしません。ここからカルミーラとレオポルドの関係が必ずしも性愛的なものではないことが察せられます。もっとも後の会話で、子供の頃下着だけではずかしかったとカルミーラが思い出話をしたりと、その関係は微妙な揺れを欠いてもいません。ベッドの頭側の向こうにも半円アーチがあります。
 二人はいったん退出しますが、灯りを落としにジョルジアが戻ってきます。その手をカルミーラがつかみ、自分の手をジョルジアの頬にさしのべるのでした。ジョルジアは氷のように冷たいと言います。

 屋外の檻です。向こうからジョルジアが覗きこんでいます。子狐が罠にかかったのでした。ジュゼッペはすぐに殺すと言いますが、ジョルジアは飼うから紐につないでくれとごねます。
 ジョルジアの隣にカルミーラがやってきます。狐は怯え、紐をふりほどいて逃げだします。それを追うジョルジアとカルミーラ。まばらな林です。
 爆発の調査が進められています。そこに馬に乗ったレオポルドがやってきます。第二次大戦中にドイツ軍が残した地雷に引火したとのことです。花火技師はほれ見ろと鼻高々です。危険、入るなという標識が打ちこまれていますが、その文面は英語でした。
 狐を追いかけていたジョルジアとカルミーラがくだびれて木の根元でへたりこみます。下からの視角です。ジョルジアはごろんと寝転ぶ。その脇にカルミーラが坐ります。陰に入っている。太陽がまぶしいとのことです。ジョルジアの方にかがみこもうとした時、土手の上から馬上のレオポルドが声をかける。

 食堂でしょうか。奥にゆるいアーチがあり、その向こうに枝分かれする木の幹が見えます。実物か飾り物かはわかりませんでした。ハプスブルク家の皇太子が退位したのは1749年と判事が話すと、すかさずカルミーラは1759年と訂正します。日照りのひどかった年とのことです。判事も納得します。
 カルミーラは黒いドレスを着ています。手前で2段下りてレコードをかけようとしますが、うまくいかない。ジョルジアが回転数が間違っていると訂正します。向こうに直交する煉瓦アーチの梁がいくつも見えます。
 レコードがかかると、ルネサンス風といっていいのでしょうか、舞曲です。レオポルドがこんなの踊れないというと、見本に踊って見せます。レオポルドもすぐに把握して2人して舞うのでした。

 カルミーラが白いドレスのもとへやって来ます。
 森の土手でジュゼッペが罠を仕掛けています。焚き火越しに向こうの方から白いドレスの人物が進んでくる。ジュゼッペは怯えて逃げだします。


 馬場です。馬が怯えるのが下から見上げられます。カルミーラのアップが上から見下ろされます。これらのカットが交互に反復される。
 その場を立ち去るカルミーラをジョルジアが追いかけると、あなたも私が怖いんでしょうといわれます。カルンシュタイン家の人間はわからないと呟くジョルジアでした。これだけ歩み寄ってるのにとでもいいたそうです。


 画面の手前に煉瓦柱とアーチが配されています。その向こうに廊下が伸びている。左奥には2連アーチが並んでいます。手前の方のアーチからメイドのリサが白いドレスを手に出てきて、手前に進みます。右奥から左へカルミーラが現われる。リサが手前に来るとカメラは後退します。彼女が左手に消えると、カメラは右へ、柱の前を通り、その右で奥に通じているのですが、そこにカルミーラの姿がありました。彼女は左へ柱の向こうを進みます。カメラもそれを追う。映画はこうでなくっちゃといった感じです。
 ガラス戸越しに向こうの部屋でテーブルにドレスを寝かせ、リサが繕っています。手前から奥へ、背を向けたカルミーラが進みます。リサが上から、カルミーラが下から交互に映されます。カルミーラはリサの帰りの時間など、知っているはずのことを訊ねて訝しがられるのでした。


 厨房です。奥に右上がりの階段の木の手すりがのぞいてます。ジュゼッペが白い幽霊のことを二人娘に話しています。自分のからだを通りぬけたと話がオーヴァーになっている。

 森の間の道です。両脇に低い塀が伸びている。リサが手前に進んできます。
 大きな門の間からカルミーラが現まれます。前に出てきた高い塀の門なのでしょう。白いドレスを着ています。リサはからだ冷えるとショールを渡そうとしますが受けとりません。礼をして別れますが、「リーサ」と呼びかけます。様子がおかしいと怖くなったリサは塀沿いに走ります。カルミーラが追いかけます。カメラは左から右へそれを追います。木立の中に駆けこんだリサは右で立ち止まり、「止めてくださいお嬢様」といいます。カルミーラの姿は映っておらず、わざとそうしているのかとも思ったのですが、しかしこれはトリミングのせいかもしれません。
 また逃げだしたリサは木に背をもたせかけます。木の向こうはいったん凹んで、それから丘のような斜面になっています。そこに廃墟だか家屋らしきものがいくつか見えます。リサに向かってカメラは前進します。カルミーラのアップが前進します。悲鳴が上がる。手もとの録画ではここまでで約45分でした。


 レオポルドがピアノを弾いています。アイリッシュ・ハープの曲です。かたわらにはジョルジアが坐り、この間カルミーラが弾いていた曲だといいます。その場面はカットされているのかもしれません。200年前に一族の者が作曲したのだが、未完成とのことです。
 ジョルジアが立った後、別のピアノの音が聞こえてきます。レオポルドは奥へ進む。画面の左半をガラス戸が占め、その下の方にピアノについたカルミーラが映っています。白ドレスを着ています。やって来たレオポルドの姿がその上にかぶさる。翌年の『回転』での一場面と比較できそうです。
 今度はピアノが手前からとらえられます。奥でカルミーラが鍵盤に向かっているのですが、その右上にピアノの斜めの蓋がかぶさり、そこにカルミーラの鏡像が映っています。実体と逆さになった鏡像は頭のてっぺんで接しています。左からレオポルドがやってくる。そうそう続きはそれでいいんだ、明日まで憶えていられるかいといいます。
 レオポルドは隣に坐り、二人は楽しげに戯れます。レオポルドは身振り、カルミーラはピアノを担当する。思い出話も花咲きます。その末にレオポルドは、カルンシュタイン家の人間で幸せをつかんだ者はいない、ジョルジアが僕自身から僕を救ってくれたといいます。

 カルミーラはふと鏡を見ます。鏡の左に赤い蠟燭の燭台が大きく配されています。蠟燭は斜めになっており、下で蠟の赤い滴が二つつららをなしている。鏡に映った白いドレスの胸もとに、赤がべっとりついているのでした。
 カルミーラは奥へ駆けだし、2段ほど上がって左に折れます。
 廊下です。途中で半円アーチが横切っており、その奥で一段上がります。突きあたりはフランス窓のようです。カルミーラは手前右から出てきて、背を向け奥へ進む。廊下に置かれていたと思われる鏡でも、やはり胸に赤がついていました。
 左から右へ進む。背を向け右奥の扉から入る。入って1~2段下ります。カルミーラの部屋です。先ほどの廊下は2階にあり、前に映された時とは逆の方から見られたということになるのでしょう。
 部屋は上に水平の木の梁が走っており、奥には右4分の1アーチが見えます。その手前に姿見がある。
 鏡像を映したカメラは、右から左へ、今度は実体を捉えます。カルミーラは血のついた部分を引きちぎって鏡に投げつけます。鏡が割れる。なぜドレスの布くらいで鏡が割れるのかわかりません。
 追ってきたレオポルドが入ってくるのがやや上から見下ろされます。鏡の左手前がベッドで、左奥には城門風の壁画らしきものが見えます。
 レオポルドはカルミーラにキスしてしまいます。レオポルドが許してくれというと、もう許すことも愛することもできないと呟く。


 崖の下で二人娘がリサを発見します。
 警察署です。アーチがあちこちにあります。リサの首にはあざがついている。
 ジュゼッペは二人娘に、吸血鬼は毎晩1度は墓に帰らねばならないと語っています。これは原作の「カーミラ」にあった設定です。女の吸血鬼は女のみを襲う。他方他の人間に乗り移ることができるという新説も開陳しています。
 ジュゼッペが運転する車でレオポルドと二人娘が城に戻ります。雷が鳴り、やがて雨も降ってきます。飛行機の場面をのぞけば、このくだりが本作で唯一、城とその周辺から出た場面でした。


 手もとの録画では約58分、雨の流れ落ちる温室のガラス越しにジョルジアが雨宿りしています。カメラは右から左へ、ジョルジアも左に進んで扉を開き、出ようとしますが、奥に映ったカルミーラは置いてかないでといいます。双方白のブラウスに黒のカーディガンです。二人とも髪が雨でべっとり濡れています。カルミーラはこわばった表情です。レオポルドを愛しているのは知っているとジョルジがいうと、カルミーラは死んだと応える。
 ジョルジアは赤薔薇を一本手にしています。カルミーラはそれを受けとりぎゅっと握ります。ジョルジアの唇に血が一滴ついていました。カルミーラがアップで前進します。ジョルジアの唇に吸いつく。
 ジュゼッペの声が二人を捜しています。床に落ちた赤薔薇が色褪せます。


 玄関扉が奥に、手前にのぼり階段が上から見下ろされます。ジョルジアが階段をのぼりかけていると、玄関からレオポルドが入ってくる。カメラがやや上向きになります。ジョルジアは振り返って駈けおり、レオポルドに抱きつきます。
 カルミーラは階段をのぼります。踊り場で左上に折れています。ジョルジアがカルミーラを追い抜いて階上に向かいます。
 雨の窓越しにジョルジアがとらえられます。。唇近くに手をやります。
 本作でのミラルカ/カルミーラは原作のように同性愛者というわけではなく、ジョルジアにキスしたのはあくまで唇についた血を吸うためでした。ここではむしろ、ジョルジアの方が動揺しているように見えます。


 居間です。判事にレオポルドは、結婚式はここではなくヴェネツィアのお宅で行なえないかと頼みこみます。揺れているのはレオポルドも同じのようです。ただし彼の場合、カルミーラにキスしてしまった時の動揺とともに、警察から帰る途中でジュゼッペたちから聞きだした状況から推測したことが掛けあわされているらしい。この時点ではミラルカと一体化したカルミーラが一番落ち着いているのかもしれません。ただしこちらも落ち着いたままではいられない。

 食堂です。左右に赤い蠟燭を3本ずつ立てた燭台が置かれています。
 判事が自分の用件のせいでということにしてヴェネツィアでの結婚式について話します。それを聞いたカルミーラは、手にした赤ワインのグラスをテーブルに振りおろします。柄が折れた状態のまままた口元にもっていき、ワインを飲んでテーブルに置く。グラスは倒れ赤ワインが手前に流れだします。カルミーラの凍てついた表情が印象的でした。


 厨房では二人娘がニンニクの首輪をつけています。

 見張りをしていたレオポルドが暖炉の前で眠りこんでしまったのを見計らって、白ドレスのカルミーラがジョルジアの部屋に入ってきます。ジョルジアは眠っています。カルミーラはベッドの頭側の格子の向こうを右から左に回ってきます。ジョルジアは寝言で「ミラルカ」と呟きます。ここで呼ばれる名がカルミーラではなくミラルカなのはいささか謎めいています。その首筋にカルミーラが近づく。
 手もとの録画では約1時間6分、画面がモノクロームになります。カルミーラは首筋まで達することなく、遠ざかり、手もとの録画では画面から消えます。カメラが上昇する。
 ジョルジアが目覚めます。カルミーラが立っています。破れた半袖の服を着ているように見えます。左下には蜘蛛の巣が張っている。服の首あたりから赤が音を立ててひろがっていきます。
 「ジョルジア様」と呼ぶ声が聞こえる。窓が映されます。ガラスの向こうは水で満たされています。右上から逆さになったリサが現われます。楽しそうに呼んでいます。
 ジョルジアはレインコートを羽織って窓に向かいます。リサは上下まともになっています。ジョルジアは水面に飛びこみます。
 雨の落ちる水たまりが上から接近してとらえられます。手前から背を向けた脚が奥へ進む。
 カメラが上昇します。庭で仮装した人々が踊っています。
 壁に門が開いています。手前には自転車がいくつも散乱している。風の音に無調の音楽が加わります。
 門の向こうでは馬に乗った2人が手前へ進んでくる。手もとの録画ではよくわからないのですが、下掲の石川三登志「『血とバラ』 〈現代吸血鬼考〉」には「巻頭、同じ馬の上の二人を、正面から同一ショットでとらえ、二人を同時に登場させた」とあり(p.286)、この場面は手もとの録画ではカットされているのですが、ここが使われているのだろうかとも思ったところ、しかし同じテクストの続きには、「モノクロームの塀の外に、そこだけカラーで、馬に乗ったカーンスタインがカーミラを抱いてやって来るのをジョルジアは見る」(p.287)。よくわからないけれど(褪色した手もとの録画ではそもそもカラーかどうかもはっきりしない)確かに一方は男のようでもあります。
 次いでアーチの連なる回廊が奥に伸びています。カメラは左寄りです。右手の壁にはベンチがずっと伸びており、人々が坐っています。ガヤガヤいっている。手前から背を向けたジョルジアが奥へ進みます。坐っている人々は皆若い女でした。ミラルカの犠牲者たちなのでしょうか。
 カメラは右から左へ、速度を上げます。その先にはジョルジアが正面向きで立っている。背後から二人看護士(双方女性です)が現われます。ジョルジアの腕をつかみ奥へ連行する。十字が2つあるカーテンをくぐります。
 カーテンは扉に変わり、そこから中へ出てきます。背後は真っ暗です。前方には斜めになった手術台らしきものがあり、両腕両脚をひろげた人物が横たえられています。顔と腰には布がかけられている。その奥には何人も看護士が並んでおり、いずれも長手袋だけが赤い。顔は仮面のようにも見えます。横たわる人物は女性で、胸をはだけています。顔にかぶさる布にはチューブのようなものがついている。
 右手にいた担当医はカルミーラでした。これまでより大人びて見えます。「私はミラルカ、カルミーラは死んだ、パーティーの夜私が殺した」といって、手術台の人物の顔にかぶせられたチューブ付きの布を剥ぎとる。カルミーラでした。
 カルミーラ/ミラルカとジョルジアが踊りの体勢にあります。回転しながらカメラに接近する(あるいはカメラが接近する)。それとともにジョルジアの首筋にカルミーラ/ミラルカが近づく。ジョルジアは悲鳴を上げます。そのままベッドで悲鳴を上げる姿に切り替わります。


 悲鳴を聞いたレオポルドは部屋から飛びだし、廊下を奥から進んできます。少し手前を右へ、そこがジョルジアの部屋でした。ベッドの上の梁、そして左下の壁にも縦格子の影が落ちています。
 ジョルジアの首には2つの傷がついています。うわごとで「ミラルカは死ぬ」という。やはりなぜカルミーラではなくミラルカの名なのでしょうか。


 朝です。庭でレオポルドと医師が話しています。背後にアーケードが見える。
 カルミーラのアップが画面を大きく占めます。かすかに右向きですが、視線は左にやっています。これまでの凍てついた表情ともはしゃぐさまとも異なり、寄る辺なさげです。『白い肌に狂う鞭』(1963)の一場面が連想されたりもします。
 医師が合理的・心理学的な解釈を開陳します。
 カルミーラは背を向け廃墟の方へ進みます。
 軍隊の喇叭が吹き鳴らされ、木の根元で眠っていた二人娘が目を覚まします。外泊です。白ドレスの姿を目撃します。
 カルミーラのアップとレオポルド/医師のペアのカットが何度か切り返されます。レオポルドと医師の向こう側で二人娘が館に駆けこもうとします。
 右下に尖った木の杭が突きでている、少し高くなった土手を向こうからカルミーラがやってきます。レオポルドが呼んでいます。「カルミーラ」から「ミラルカ」に変わる。
 斜め上からのカルミーラのアップです。ほとんど子供のように見えます。
 爆風に吹き飛ばされ、下の杭に突き刺さってしまいます。白いドレスに赤い血がひろがる。同時にジョルジアが胸に手を当てて飛び起きます。カルミーラの無惨な姿を見つけたレオポルドが土手の上で瞑目します。ジョルジアにもレオポルドにも、深い喪失感が襲ったかのごとくです。


 最後にまた飛行機の機内です。ジョルジアとレオポルドが寄り添っています。城に戻ってくる途中とのことです。ミラルカのナレーションがかぶさりますが、あたかも自分に言い聞かせるかのごとくだととれなくもありません。それでいてジョルジアが手にした赤薔薇は色褪せるのでした。

 本作に触れて種村季弘は「没落するアドレッサンスの王国への郷愁」と記していました(上掲『吸血鬼幻想』、p.19)。石川三登志が下掲の「『血とバラ』 〈現代吸血鬼考〉」でカルミーラとジョルジアを同じ一人の人間に宿る2つの面として解釈するのも、その際の倫理臭はともかく、なるほどと思うところがないわけではありません。それでも三人の姿で現われたイメージは、あくまで見た目のままに三人なのだととりたいと個人的には思ってしまうのでした。ただ三人には当然接点があり、それが種村いうところの「没落するアドレッサンスの王国」なのでしょう。グイド・ナルディもジョルジアも医師も、おそらくはレオポルド自身、カルミーラはレオポルドが好きだと思っていました。確かに好きなのかもしれませんが、それを恋愛というと少しずれているような気がします。むしろ離れがたいほど仲のよい兄妹だったのではないでしょうか。
 もともとは性的に未分化であった楽園はしかし、詳しくは語られないもののカルミーラにしてからがいったん離れていた以上、すでに失楽園の相にある。だからレオポルドはカルミーラに対し性的にキスしてしまう。もともとは無関係のはずのジョルジアもまたそれに引きずられて同性への愛に動揺してしまう。ミラルカから抜け出られたカルミーラは、子供の寄る辺なさに戻ってしまい、しかしもはや楽園からは追放されている以上、レオポルドが呼ぶ声に応えることができない。
 しかし心理学的な読解で事済ますのは、やはり諒とできるものではありますまい。やはり人間だけでなくお化けに登場してほしいものです。肖像画以外にはその実体を持たなかった吸血鬼ミラルカは、楽園と失楽園の間に開いた亀裂から浮かびあがり、カルミーラに呼びかけるだけの力をえることができたのかもしれません。


 なお、吸血鬼が他の人間に乗り移るという設定は、後に本作からタイトルをえたと思しい『血を吸う薔薇』(1974、監督:山本迪夫)や、言及されるだけですがハマー・フィルムのカルンシュタインもの第3作『ドラキュラ血のしたたり』(1971)に引き継がれました。
Cf.,  『世界の映画作家13 ロジェ・ヴァディム ロマン・ポランスキー』、キネマ旬報社、1971
同書中「ロジェ・ヴァディム編」は
ロジェ・ヴァディムの世界(矢島翠、p.30)/ロジェ・ヴァディムの美学(荻昌弘)/ロジェ・ヴァディム伝(田山力哉、pp.51-52)/ロジェ・ヴァディム全自作を語る(田山力哉訳・編、pp.69-70)/シナリオ「課外授業」(ジーン・ロッデンベリー 採録・三木宮彦)
からなり、この他
対談 二人のコスモポリタン(品田雄吉・中原弓彦、pp.119-120)/二人の作家の海外論(村上英訳・編、pp.231-232)
( )内で頁を記した箇所などで『血とバラ』が取りあげられています。
こちら(『悪徳の栄え』)や、そちら(『世にも怪奇な物語』)あちら(『バーバレラ』)でも挙げています
同書中「ロマン・ポランスキー編」は→こちらを参照


石川三登志、『吸血鬼だらけの宇宙船』、1977、pp.282-289:「『血とバラ』 〈現代吸血鬼考〉」

The Horror Movies, 2、1986、p.77

ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、pp.144-145/no.096

Danny Shipka, Perverse Titillation. The Exploitation Cinema of Italy, Spain and France, 1960-1980, 2011, pp.269-271

原作に関して→こちら(『吸血鬼』1931)、またそちら(『バンパイア・ラヴァーズ』)を参照

忘れていましたが、ヴァディムについて以前次のような駄文を書いたことがありました;

  △月△日
ロジェ・ヴァディムが没した。とはいえ、そんなに作品を見たわけでもなく、ただ、吸血鬼ものの古典の一つ『血とバラ』を撮った監督として憶えているのだった。見たといっても、もともとさして長くもない映画を、TVの一時間半枠用にカットし、フィルムはかなり褪色した状態だったが。とまれ、甘美に耽美的な雰囲気とノスタルジーに満ちているは、舞台はお城だし、レ・ファニュの『力-ミラ』と、萩尾望の『ポーの一族』や大林宣彦の 『ハウス』をつなぐ位置にあるという、重要な役割をはたした作品である。いつかDVD化されるのを待つとしよう。合掌。

 
  『蟋蟀蟋蟀』、no.7、2000.6.1、「小躍り堂日乗」より、p.2
 
 
おまけ  本作への献辞をもって始まるのが;
『ÉMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ』、1967、監督:大林宣彦


赤川次郎、「血とバラ」(1979)、『血とバラ 懐かしの名画ミステリー』(角川文庫 緑 497-2)、角川書店、1981、pp.54-103

ヴァディムの映画に触発された短篇で、映画における主人公3人の関係、吸血鬼のモティーフなどが取り入れられています。
赤川次郎は吸血鬼の主題に関心があるようで、→こちらで触れた『吸血鬼はお年ごろ』のシリーズの他に、

赤川次郎、『ぼくが恋した吸血鬼』(講談社ノベルス アA-13)、講談社、1988

 
 2015/8/20 以後、随時修正・追補
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