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審判
The Trial *
    1962年、フランス、西ドイツ、イタリア 
 監督   オーソン・ウェルズ 
撮影   エドモン・リシャール 
編集   イヴォンヌ・マルタン、フレデリック・ミュラー、オーソン・ウェルズ 
 美術   ジャン・マンダルー 
    約1時間59分 ** 
画面比:横×縦    1.66:1 
    モノクロ

地上波放送で放映
* [ IMDb ]では Le procès。ただし言語は英語とのこと
** [ IMDb ]による。手もとの録画では約1時間53分

………………………

 本作品については、以前ほんの少し触れたことがあります;

  △月△日
オーソン・ウェルズの『審判』を見る。ほとんど怪奇映画だった。迷宮状の裁判所、弁護士の邸宅、画家のアトリエ。美しい。やっぱり映画には城があう。
  『蟋蟀蟋蟀』、no.3、1999.7.31、「小躍り堂日乗」より、p.7。   

 厳密には古城は出てきませんし、自然な現象と対比されることでそれと認知される超自然現象も起こりません。ただ寓話風に抽象化されたお話なので、登場人物も現実に生活する人間として描かれているわけではありませんし、空間と空間のつながりもあれれと首を傾げたくなる箇所が見受けられる。この点をもって空間自体が超自然化していると見なすのはこじつけになるでしょうか。狭い意味での古城映画とは呼べないにせよ、迷宮映画のレッテルは貼れそうです。電波状態が悪い時、VHSに3倍録画したという態で、また上記からすると少しカットされているのかもしれません。きちんと見るのはまたあらためてとなってしまいますが、ご容赦ください。

  [ IMDb ]には本作のロケ先として旧ユーゴスラビア、現クロアチアのザグレブのあちこち(240 Grada Vukovara Street/Zagreb Fair, 15 Dubrovnik Avenue/People's Open University, 68 Grada Vukovara Street/Zagreb Cathedral, 31 Kaptol/Dubrava)、ローマ(最高裁判所 Palazzo di Giustizia、国防省 Ministero della Difesa)、そして美術館になる前のパリのオルセー駅 Gare d'Orsay が挙げられています。下掲のバーバラ・リーミング『オーソン・ウェルズ偽自伝』(1991)によると、屋外シーンをザグレブで撮影した後、予算不足のためパリに移動、「廃屋となっていたオルセー駅をスタジオに早変わりさせ、そこで屋内シーンを撮った」(p.471)とのことです。
 ヒチコックの『サイコ』(1960)が当たってしまったため、その後の俳優歴が歪んでしまったアンソニー・パーキンスを主演に、なぜか当時の人気女優が何人も出ています。本サイトでは『恋人たち』(1958)でお目にかかったジャンヌ・モロー、変わり種吸血鬼映画『血とバラ』(1960)でお目にかかったエルザ・マルティネリ、実に後味の悪い『追想』(1975、監督:ロベール・アンリコ)でお目にかかる予定のロミー・シュナイダーなど、いずれも出ずっぱりではありませんが、何かと印象に残ります。下宿の女将役のマドレーヌ・ロバンソンも美人さんなら、役名は何というのでしょうか、劇場の場面で主人公に伝言を伝えた女性もお綺麗でした。監督・脚本のオーソン・ウェルズも弁護士役およびナレーションで登場しますが、本サイトでは先に見た『オセロ』(1952)から10年、ずいぶん頬がふくらんでいるのに驚かされたりしたものです。


 アルビノーニのアダージョが流れるオープニング・クレジットに続いて、原作では第9章に配されていた「掟の門」の挿話が、絵を連ねる紙芝居方式で冒頭に綴られます。「掟の門」が正面から捉えられた絵では、左右から奥の方へ湾曲した弧をなす壁が伸びてきて、それぞれ手前で止まり、また奥へ弧をなして中央で合流する。その中央に半円アーチの門があるというものでした。

 主人公ヨーゼフ・K(アンソニー・パーキンス)が目を覚ますところから本篇は始まります。彼の部屋はがらんとしており、壁も天井も白い。低い位置のカメラから見上げられた天井がいやに低く見えます。奥の突きあたりに観音開きの扉、入口の扉は右の壁にある。左の壁には窓、そのまま手前に来ると左に奥まって洗面所となります。その部分の奥まる短い壁には、ゴッホのひまわりらしき絵のポスターか何かが貼ってありました。
 いつの間にやら部屋に入っていた刑事二人、それにKの会社での部下ということでしょうか、三人が何やら物色しています。奥の観音開きの扉の向こうは打って変わって壁紙に覆われ、ここは隣人の部屋らしい。
 右の扉を出ると廊下で、向かいが食堂です。このあたりの壁はグレーに見えます。下宿の女将グルーバハ夫人(マドレーヌ・ロバンソン)がくどくど言います。Kと女将はKの部屋の窓に隣接していた扉からバルコニーに出ます。さほど幅は広くありませんが、妙に長く伸びているように見える。手前で一度角になって前に迫りだしているのは、洗面所部分に応じているのでしょうか。道路をはさんで向かいにも近代的なビルの集合住宅があります。Kの部屋は少なくとも5階より上にあるようです。
 壁紙の隣室の主であるビュルストナー(ジャンヌ・モロー)が帰宅します。Kは彼女に気があるようです。ベッドに転がった彼女とKが話す場面では、カメラは上から見下ろしています。


 約25分、会社です。奥へ果てもしれず伸びていく吹抜でおそろしく広い空間、その床に規則正しく机がみっしり並べられ、社員が打つタイプライターの音が響いています。『未来世紀ブラジル』(1985、監督:テリー・ギリアム)にもこんな眺めが出てこなかったでしょうか。壁沿い2階に歩廊が巡らされ、ところによって空間を横切る橋が渡してありました。
 Kは机の間を縫って右から左へ進む。カメラはその背を追います。ちょうど橋の下、右奥に上への階段が2列横に並んでいる。そこに近づくKがかなり上から見下ろされたかと思えば、上階から秘書らしき女性がおりてきます。伝言を聞いた後Kは階段の下・左奥の扉へ向かう。中は倉庫でした。上司の副支配人が入口に立ちます。
 二人で元の方向へ歩きます。鉄骨の柱がありました。進んだ先、向かって左奥に大きなガラスの仕切りがありました。向こうは通路をはさんで壁になり、下にベンチが配されています。従妹のアーミィが向こうからガラスを叩いて呼びかけますがとりあおうとしません。Kが戻ると、彼がそれまでいたのは壇上のようなところでした。そこからおりれば机の並ぶ床となります。

 約27分、夕刻、アパートの前です。アパートの壁と並行に画面手前、広いテラスを経て左下りの階段がおりています。階段の右の方には車庫の入口らしきものがありました。そこからトランクを引きずった足の悪い女性が下りてくる。このシークエンスはずっと引きで、顔はよく見えません。来合わせたKと話ながら二人は右へ進みます。しばらくの間舗装もされていない空き地です。いかにも殺風景な眺めでした。奥にアパートと向かいあう別のビルがあります。しばらくすると少し高くなって広い道路が走っている。

 約31分、劇場です。1階の席についていたKは、後ろの席の綺麗なお姉さんから伝言を聞き、客席から出ます。
 外の廊下は客席への扉から少し離れて、円柱が並んでいます。斜め下からの視角です。列柱の左側は吹抜になっているようで、左に伸びる橋状の通路を欄干で囲ってあります。左端はまた壁沿いの通路になっている。
 廊下で待っていた刑事とKは橋状通路を渡り、その先を少し左、垂直に奥へ伸びる廊下に向かいます。この廊下の向かって左側の壁に沿って、細長い待合室のような部屋状囲いがありました。二人はそこに入り、出てくれば街路です。
 とはいえ壁と壁の隙間の狭い路地のように見えます。そこを奥へ進む。
 次いで画面左半を円筒状の構築物、右半は何やらパイプが錯綜したところです。円塔状の部分の左から中へ。
 今度は鋼鉄製の高い門が下からとらえられます。手前右は廃墟然としている。二人は奥から手前に来ます。
 そして天井に鋼の梁が走る空間がとりあえずの目的地でした。その向かい側は少し間を置いて、廃墟のように見える煉瓦壁の家屋です。少し斜めに見えます。左寄りに奥への路地が通っています。

 台座上の彫像でしょうか、しかし差しあげられた両腕の衣は風に揺れています。カメラが上から下に首を振ると、周囲に人がたくさんいました。男性は上半身裸で、首から番号を記した札をぶら下げている。奥には窓の小さな素っ気ないビルが立っています。Kは人々の間を縫い、ある建物の扉から中へ入ります。
 湾曲階段がかなり下から見上げられる。左下にパイプらしきものが走っている。この眺めは後に再登場することでしょう。
 次いで壁が上半で手前に傾いている部屋に出ます。Kは右から左へ進む。カメラは仰角で回ります。
 奥の壁にゆるいアーチの横長開口部がありました。向こうは浅い三角屋根になった天井付近の空間で、キャットウォークがずっと奥へ続いている。しかしそこには入らず、背を向けさらに左へ進みます。先の突きあたりは壁で、空間の中央を鉄骨が支えている。その左手前に洗濯する女(エルザ・マルティネリ)がいました。
 左の扉を開くと、裁判所の法廷です。人がぎっしり詰まっている。扉の壁の左には、横棒を縦に並べた運動具(何と呼ぶのだったか)があり、その上にも人がのっかっていました。吹抜の2階には劇場のような席があります。
 Kは奥の壇上にいる裁判官たちのところへ向かい、演説をぶちますが、洗濯女が扉の外へ無理矢理連れだされるのを見て追いかけます。出てきた扉はおそろしく背が高い。扉も左右の壁も白でした。

 約38分、左に柱が並び、柱と柱の間に窓のある部屋が俯瞰されます。そこを奥から手前に来ます。
 右下がりの階段をおりるさまが下から見上げられる。天井は右上がりで、トタンか何かのように見えます。階段は踊り場で折れて左下へ続く。すると下は机が並ぶ空間でした。薄暗くはあるものの、会社のようです。階段も2列並んでいました。いつの間に会社に来たのでしょうか。
 何やら声がするので、階段脇の倉庫に入ります。始めにKの部屋に来た「部下たち」が鞭打たれていたのでした。わけがわかりません。
 倉庫から逃げだしたKを秘書が呼びます。Kが出てきた扉を彼女が閉じる。前はこんな扉はなかったような気がするのですが、ともあれ広大な事務所には灯りがつき、机で社員たちがタイプを打っています。時間も跳躍したようです。机の間を横切り、奥から手前へ進むKが俯瞰されます。
 Kの机のある壇上にあがると、叔父のマックスが待っていました。終業のベルが鳴ると、社員たちは一斉に帰ります。
 Kと叔父は階段をのぼります。あがった先の壁沿いに、延々とコンピューターが設置されていました。
 Kは階段を駈けおりる。左の壁に影が落ちます。倉庫へ、それから戻ってきます。やはり壁に影が落ちる。


 約47分、扉の横長の覗き孔から女の目がこちらを見ます。叔父に連れられKは弁護士宅にやってきたのでした。入ると右に扉が来て、その奥は壁沿いにずっとファイル・ケースが続いています。突きあたりは上方で段違いになった窓らしきものがある。その下を奥へ、仕切られたもう一つ奥、さらに奥の右の扉から入っていきます。薄暗い廊下となる。叔父が奥から手前へ進んできます。左にある柱は、上方で三つ叉になっていました。その右の天井は、右下がりの天窓です。手前に出ると広くなります。天窓が右上がりになっている。
 Kと案内してきた女性は奥から手前に来る。天井は右下がり、左の壁はファイル・キャビネットの並び、奥に上りの階段がのぞいています。その左で数段あがるとベッドです。煙草の煙が吹かしまくられています。女性は看護士でレーニ(ロミー・シュナイダー)、雷鳴が鳴ります。弁護士はアルバート・ハスラー(オーソン・ウェルズ)です。奥にもキャビネットが続き、その向かいの斜め天窓の下は本棚でした。灯りは燭台だけのようです。玄関からここ、そして奥へと仕切られるこの家は、鰻の寝床のように伸びているわけです。さらに奥にぽつんと椅子があり、そこに裁判所の事務局長がいました。
 叔父と弁護士が話している間にKは元の方へ戻ります。部屋は鏡状のガラスで仕切られており、向こうにレーニがいるのですが、ガラス一枚ごとにKとレーニが交互に映っています。
 二人は書斎から出て一部屋通りぬけ、奥の部屋に入ります。床一面に本だか書類が文字どおり山となって積みあげられています。レーニは三本の指の間に水かきがありました。壁の上方に窓があり、向こうでは格子が錯綜している。大きな肖像画が横倒しになっています。裁判所の予審判事がモデルだという。
 事務官が帰るとの声に、二人は別の方から書類山の部屋を出ます。Kは廊下沿いの別の部屋に、そこからまた別の部屋を左から右へ横切り、廊下からある扉の中に入る。間取りはよくわかりませんでした。
 中は奥に丸窓、左にのぼり階段のある狭い部屋で、男が一人いました。追いついたレーニによると依頼人が待っているのだという。

 Kは屋外に出ます。雨が降っている。出てきた扉の上には2階分窓があり、扉のある壁は右で手前へ曲がっています。角をまたいで2階3階とガラス張りでした。

 約1時間、裁判所に入る前にも出てきた階段がやはり下から見上げられます。Kは階段をのぼり、上すぼみの部屋に出る。またぐるりと回ると、前は洗濯していた女が今度はミシンをかけていました。
 奥にあった扉から法廷として使われていた部屋に入る。かなり上から見下ろされます。左に2階へののぼり階段のあることがわかる。女の名はヒルダ、廷吏の妻で、キスしていたのは法学生だという。
 二人は壇と壁の間の隙間に来ます。手前にシルエットで壇の下部が配される。このあたりの壁は白い。奥の扉に小さくシルエットが浮かぶ。法学生バートでした。壇の下をくぐってきます。上は椅子だらけです。法学生はヒルダを肩に担ぎあげ、壇の奥を横切り、上への階段のある廊下を抜け、上すぼみの部屋に出ます。扉をくぐり廊下を曲がり、手前左の扉の中に入る。追ってきたKは手前へ出ます。

 約1時間6分、三角天窓のキャットウォークを、奥から手前へ禿げ男が頭をかがめながら進んでくる。Kの背後には鏡がかかっており、Kの背と禿げ男、そして三角天窓が映っています。右手前に禿げ男の背が配される。禿げ男はヒルダの夫で廷吏でした。
 廷吏は左へ進む。がらくたが積みあげられています。さらに奥へ、部屋の中央に何やら大きな木組みが置いてある。X字状の仕切りが壁に影を落としています。さらに奥、壁に窓があります。

 奥を右へ、切り替わると白壁の吹抜でした。壁の左寄りの扉から吹抜の壁沿いを巡る歩廊が手前へ伸びている。俯瞰のカットをはさみ、二人は下り階段をおります。天井は明るく、その下で梁が交叉している。さらに下る。奥に中2階歩廊、その右に下り階段、上には半円アーチが見えます。下には人物のシルエット、少し右に書類棚が伸びていく。
 廊下です。片側にガラスの仕切りが伸びています。仕切りには扉になったところもある。鍵がないと廷吏はいう。
 右の中2階歩廊がかなり下から見上げられる。二人は奥から手前へ、カメラは後退します。右の壁は上へとガラス張りです。頂きで湾曲しているらしい。駅舎のように見えるそれはオルセー駅でロケされたのでしょう。
 1階には被告たちが屯しています。半円天井ははるか上でした。巨大な蒲鉾状空間の下、独立した平屋が奥に伸びています。
 Kは奥へ向かう。斜め格子の扉を開け、白壁の部屋を左へ進みます。多くの人が待機しています。
 書類棚がずっと伸びる部屋です。上はやはり蒲鉾空間でした。女性の管理人がいます。
 書類棚とキャビネットの部屋に替わります。ここの天井は水平で、ガラス張りでした。ガラスの上から照明されている。


 外です。巨大な半円アーチが下から見上げられます。その手前で左右に湾曲階段がおりてくる。階段の左には坐像が配されています。
 2階吹抜の巨大な回廊を奥へ向かう。左から右へ横切ります。
 そこを抜けると従妹がいました。装飾的な柱にはさまれた門でしょうか。下り階段が仰視されます。鐘の音が響く。出てきた門が3階分以上あることがわかります。ローマの最高裁判所前景なのでした。
 約1時間14分、左に幅広下り階段、間に踊り場、右にも下り階段があります。かなり上からの俯瞰です。二人の背、右下の影も見える。階段の蹴込みは陰、踏面は明るく、相まって抽象的な相貌の画面でした。


 近代ビルの街を経て、約1時間15分、蒲鉾ドームの下の平屋の一室です。かなり奥に深い部屋で、レーニと依頼人のブロック(アキム・タミロフ)がいます。レーニは縦割りのガラスの前を走る。つまりここは弁護士宅なわけです。前段では出口こそ映ったものの、弁護士宅の全景は出てこなかったので、その一部が実は蒲鉾ドームの下にあったのだとしても必ずしも矛盾ではないのかもしれませんが、蒲鉾ドームを介して弁護士宅と裁判所がつながり、他方裁判所は会社とつながっていた……しかしやはり、腑には落ちますまいし、腑に落ちないことこそを本作における空間のありようと見なすべきなのでしょう。
 とまれ、相似た仕切りの前をブロックとKが左へ進みます。着いた先は台所でしょうか、吹抜です。左奥の棚の上に所狭しと蠟燭が並んでいます。向かいの棚も同様でした。左奥の棚の上には広い窓があり、壁はその右手で奥に凹んでいます。ここにも鉄骨の柱があります。
 三人は廊下へ、先の部屋には丸窓があります。前にKが覗いた部屋でしょうか。その際見かけた待機中の依頼人がブロックということか。
 書斎の右の部屋に移る。次いで右下がり天窓の廊下を奥から進んできます。右の壁では窓が伸びている。
 手前を左へ、奥に金属の螺旋階段があります。
 左へ進めば、弁護士の寝台があるところでした。弁護士は上から見下ろされ、Kは下から見上げられる。
 ブロックが呼ばれる一方、Kは右奥へ向かいます。右に上りの階段がのぞきます。レーニは裁判官お抱えの画家ティトレリのことを話す。


 約1時間32分、Kは建物の中に入る。少女がやたらたくさんいます。吹抜の周りを方形に巡る階段をKと少女たちがあがっていきます。カメラはまず上から、次いで下から、また上から、そして下から捉える。ジャズ・ピアノに少女たちのガヤガヤが重なっています。
 左下の扉から出てくるさまが俯瞰される。右に円筒状の壁があり、その右、蹴込みのない木の階段が上へ続きます。下からの視角に換われば、木の階段をずっとのぼっていく。カメラは左から右へ流れます。階段はけっこう長い。平行して梯子があり、そこを少女たちがのぼっていきます。
 上には屋根が右上がりの木の小屋がありました。その上の天井は太い格子と天窓付きです。小屋がティトレリのアトリエでした。壁の横板は隙間だらけで、そのため影と光が縞をなしています。横板と横板の隙間から少女たちの目が覗きこんでいる。最高裁判所は誰にも手が届かない、誰も知らないとティトレリはいう。


 アトリエの右の扉をくぐると、ファイルが立ち並んでいます。天井は低く平らで、上から照明されている。前にも通った裁判所事務室でした。奥へ人々が向かう。
 約1時間42分、扉から中へ入ります。横に伸びる板を重ねた壁が左右に来る狭い通路です。板と板の間は隙間だらけで、そのため内側はアトリエ同様縞々です。通路は屈曲しつつ伸びていく。相似た眺めを夢=迷宮映画の佳作『ドリームデーモン』(1988、監督:ハーレイ・コークリス)でも見かけなかったでしょうか。Kは奥から手前へ進みます。カメラは後退する。少女たちの騒ぐ声がまだ聞こえます。
 蒲鉾状の通路に出ます。壁は粗石積みで、地下なのでしょうか。少女たちはまだ追ってきている。壁上部の開口部の向こうに彼女たちの姿が見えます。


 約1時間43分、屋外に出ました。「ヨーゼフ・K」と呼び声がする。説教壇から神父が現われます。声にはエコーがかかっている。
 Kはカーテンの中に入り、左から右へ進みます。弁護士が現われます。鋼の柱があり、天井は錯綜している。Kは左から右へ、スライドが上映されます。冒頭の紙芝居です。弁護士が映しているのでした。


 Kは戻り、教会から外へ出ます。正面ののぼり階段をおりてきた二人の男がKを連行する。夜の昔ながらの街路を経て、近代的なビルのはた、ひずんだパイプ管のはた、前にも出てきた台座上の彫像のそば、川のはたを通り過ぎてたどり着いたのは殺風景な空き地でした。地面に大きな穴がうがたれており、そこに落とされます。底は岩だらけでした。若干のやりとりを経て、ダイナマイトが放りこまれ、爆発するのでした。
 オーソン・ウェルズの声がキャストを紹介、背後には門の絵が映っています。

Cf.,  フランソワ・トリュフォー、山田博志訳、「ウェルズとバザン」、『シネアスト』、no.2、1985.9:「特集 オーソン・ウェルズ」、pp.55-56

粉川哲夫、「《アメリカ》の復讐」、同上、pp.81-85

バーバラ・リーミング、宮本高晴訳、『オーソン・ウェルズ偽自伝』、1991、pp.469-471 など

原作については各種の邦訳があることと思いますが、とりあえず;
カフカ、立川洋三訳、『審判』、『集英社版 世界文学全集 74 審判/変身 他 ヤ-コプ・フォン・グンテン』、集英社、1979、pp。1-189
原著は Franz Kafka, Der Prozess, 1914-15、未完・生前は未刊行
なお同書には他に;
カフカ;『変身』(城山良彦訳)/「流刑地にて」(柏原兵三訳)//
ヴァルザー;『ヤーコプ・フォン・グンテン』(藤川芳郎訳)//
解説 カフカ&ヴァルザー(藤川芳郎)など、410ページ。

ちなみにローベルト・ヴァルザー(1878-1956)『ヤーコプ・フォン・グンテン』(1909)を原作とするのが;
『ベンヤメンタ学院』、1995、ブラザーズ・クエイ


『審判』第9章「大寺院」に含まれ(上掲邦訳では pp.178-184)、単独で発表されたのが;
「掟の門」、池内紀編訳、『カフカ短篇集』(岩波文庫 赤 438-3)、1987、pp.9-12
原著は "Vor dem Gesetz", 1914.11-12, 1915発表


ついでに;
カール・エーリヒ・グレーツィンガー、清水健次訳、『カフカとカバラ フランツ・カフカの作品と思考にみられるユダヤ的なもの』、1995


また;
『KAFKA/迷宮の悪夢』、1991、監督:スティーヴン・ソダーバーグ

 2016/3/27 以後、随時修正・追補
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