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奇妙な扉
The Strange Door
    1951年、USA 
 監督   ジョセフ・ピヴニー 
撮影   アーヴィング・グラスバーグ 
編集   エドワード・カーティス 
 美術   バーナード・ハーツブラン、ネイザン・ジュラン、エリック・オーボム 
 セット装飾   ラッセル・A・ガウスマン、ジュリア・ヘロン 
    約1時間21分 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

DVD(『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.2』(→こちらを参照)より)
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 本作では超自然現象は起こりません。とはいえ冒頭を除いて物語は古城の中で展開します。複数の階段、隠し窓に隠し通路、隠し扉に地下の廊下が出てきます。

 撮影のアーヴィング・グラスバーグ、脚本のジェリー・サックハイム、美術監督の一人バーナード・ハーツブラン、セット装飾のラッセル・A・ガウスマンははいずれも翌年の『黒い城』(1952)でも続投します。ガウスマンの名は1920~40年代のユニヴァーサル作品では幾度となく見かけました→こちらを参照。美術監督の一人ネイザン・ジュランは『地球へ2千万マイル』(1957)や『シンバッド七回目の航海』(1958)、『月世界探検』(1964)といったレイ・ハリーハウゼン特撮作品の監督、また『ジャックと悪魔の国』(1962)が思い浮かびますが、もともとは建築家だったとのことです。『黒い城』が最初の監督作品になるらしい。
 主演はチャールズ・ロートン、『獣人島』(1932→こちらを参照)に続く狂気に駆りたてられた人物をにこにこしながら演じています。ロートンは後に伝説の暗黒童話『狩人の夜』(1955)を監督することになるのでした。助演のボリス・カーロフは本サイトではお馴染みの顔で、今回も一筋縄ではいかない役どころに扮しています。ちなみにロートンとカーロフは以前『魔の家』(1932)でも共演していました。
 ロートン演じるマレトロワ卿に幽閉される兄に扮したポール・キャヴァナーは、『扉の蔭の秘密』(1947)の冒頭でヒロインの兄として登場していました。またマレトロワ卿の部下タロン役のマイケル・ペイトは、見た顔だと思えばコーマン版『恐怖のロンドン塔』(1962)でリチャード3世の腹心を演じていました。カーロフともども『黒い城』にも続投することでしょう。思わず応援したくなってしまいます。
 ロバート・ルイス・スティーヴンソンの短篇が原作で、追われてもたれかかったとある館の扉が開いて中に入り、しかし出られなくなった主人公が、館の主からその姪との結婚を強いられるという大枠は変わらないものの、筋は大幅に膨らませてあります。なお原作でも超自然現象は起こりません。ちなみにカーロフにとっては『死体を売る男』(1945)に続いてスティーヴンソンを原作にした作品となるでしょうか。


 タイトル・バックは正面からとらえられたゆるい尖頭アーチ、その下で少し奥まった扉です。手前左右に木が立っている。
 続いて夜の街路です。雨が降ったのか、石畳が濡れているように見える。「赤獅子 Le Lion Rouge」の看板が風に揺れる前に、奥からやって来た馬車が停まります。右奥に半円アーチのトンネルが見える。馬車からおりた男が中に入ると、そこは酒場でした。太い梁やゆるいアーチが走り、中央は1~2段低くなっている。梁を三つ叉柱が支える。ロートン扮する男は待っていた二人と落ちあいます。常連の放蕩者(リチャード・ステイプリーことリチャード・ワイラー)に何やら目をつけているらしい。
 放蕩者は喧嘩をふっかけられ、カウンターにあった銃で相手を撃ってしまう。店を飛びだし、前に止まっていた馬車に乗りこみます。馬車後部の小窓から追っ手の様子が見える。街並みは高い建物が並んでいる。郊外の野原に出ます。「パリまで200KM」の標識がある。馬車から降ろされ、丘から林へ走ります。
 約7分弱、先に扉がある。地面近くを霧が這っています。追っ手が映された後、扉が今度はやはり正面から、ただし引きでとらえられる。手前左右から葉の落ちた並木が奥へ伸びたその先にありました。暗くて詳らかには見えませんが、扉の上にも階は重なり、すぐ左に塔らしき尖り屋根、右にも煙突の並ぶ棟があるようです。やはり地面に霧が這っている。ちなみに城の外観が登場するのはここだけでした。
 背を向けた放蕩者が扉に向かって走ります。追っ手の声に扉にもたれかかると、開くのでした。中に入るも内側に取っ手はなく、開くことができない。


 約8分、手前左から中に進む。画面左側は暗くなった壁がルプソワールの役割を果たし、その奥に広間がひろがっています。天井近くをゆるく湾曲する木の梁が手前と奥2本横切り、その下でやや左あがりの階段がのぼっていく(階段その1)。階段の上・右よりの円柱には螺旋階段が取り巻いているらしい。この螺旋階段は追って登場することでしょう(階段その2)。上の奥の方には放射状の肋がのぞいています。階段のすぐ右の壁は上で浮彫付きパネルに分割されており、階段を下りたところで右に折れています。その右下から右手前へと柵が伸びている。右手前では壁体になりますが、柵部分・壁体部分の上辺沿いはやはり浮彫付きパネルでした。壁体は下で弧をなす突き出し部分があり、また柵には右奥への開口部があるようです。この階段広間が城の中心のようで、以後細部を捉え直す機会もあるでしょう。

 位置はよくわかりませんが、放蕩者は階段広間に面しているであろう扉から中へ入ります。扉には大きく浮彫細工がついている。この城内にはこうした木の浮彫が何かと多い。
 入った部屋は書斎か居間でしょうか。背を向けた椅子に坐ってロートンが待っていました。放蕩者の名がデニス・ドゥ・ボーリューであることも知っている(フランス語読みならドゥニですが、ここは日本語字幕に従っておきます)。アラン・ドゥ・マレトロワ卿と名乗ります。にこにこしながら鍵をつけた鎖をぶらぶらさせている。デニスに「我が甥よ」と呼びかけ、姪と結婚させようとします。
 デニスはカーテンの奥へ逃げだそうとしますが、そこにいた三人組に捕まってしまう。アラン卿は部屋へ連れて行くよう命じる。部屋の壁に飾られた浮彫に覗き孔があり、そこから目が覗いていました。

 広間の階段をのぼる一行が上から見下ろされます。広間は階段の向かい側、奥の方にも少し伸びています。叫び声が聞こえてくる。問えば謎だという。階段をあがって少し左へ進み、太い円柱の周りを巡る螺旋階段をのぼっていきます。広間を見渡す場面でちらっと見えた階段です。やや下向きだったカメラが上向きに移ります。


 書斎に酒場でアラン卿と待ちあわせていた二人組が入ってくる。内一人がコルボー(ウィリアム・コットレル)、笑みを浮かべた細面のもう一人は名前が結局わかりませんでした。喧嘩騒ぎを起こした二人組も通されます。内一人テューレックが死んだ振りをしたのでした。地下通路に身を潜めるようアラン卿は命じます。
 隠し扉からヴォルタン(カーロフ)が引きずり出されます。地下へ戻って仕事をしろという。アラン卿の兄の世話を任されているようです。
 一同が引きさがった後、アラン卿は閉じてあったカーテンを開く。等身大の女性の肖像画がかけてありました。あまりよい出来ではありません。モデルの名はエレーヌ、今宵を20年待ったといいます。

 風にバタバタするアーチ型板窓をとらえたカメラは、左へ流れて前進、ベッドに近づいていきます。デニスの部屋でした。隠し扉が開く。右の壁に影が落ちます。カメラは右から左へ動く。影は女(サリー・フォレスト)でした。窓のすぐ下から床へと数段階段になっていることがわかります(階段その3)。カメラはさらに右へ向かう。低い箪笥の上の壁に横長の鏡がかかっています。箪笥の上、右寄りに1本燭台が置いてあり、その像が鏡に映っている。デニスが箪笥の左に寄りかかり、腕を伸ばして手にした1本燭台の火を移そうとします。この腕と燭台の像も映りこむ。この時画面左半は何もない壁です。なかなかかっこうのいい構図でした。
 女はアラン卿の姪ブランシュでした。足音が聞こえてくると、切り替わって暗い廊下が映されます。奥の右からランタンを手にした男が現われる。

 翌日でしょうか、ベッドのデニスを捉えたカメラは、左から右へ流れます。扉を開けて男が2人入ってくる。内一人はタロン(マイケル・ペイト)、左の眉に傷跡があります。
 脱出口を問うデニスにタロンは、窓の外を示します。窓の下の階段をあがる二人がやや下から捉えられる。真上から見下ろすと、真下に水車と川(?)がありました。窓の外・下からデニスとタロンが見上げられ、また真上からのショットに切り替わる。タロンが普通の水車じゃない、カブリッサー(誰でしょう?)を知っているかといえば、デニスは拷問で有名だ、タロン:大好きな実験のために作った城だというのでした。また真上からのショットです。


 食堂です。壁をアーケード型の浮彫が覆っています。アラン卿とコルボー、もう一人が朝食をとっている。タロンが入ってきます。タロンは何やら鬱屈するところがあるようです。

 天を見上げる聖女の半身像、17世紀風といえるでしょうか。ネタがありそうですが不勉強のためわかりませんでした。柵の向こうの壁に掛けられています。手前でブランシュが背を向けている。
 広間の階段をアラン卿が下りてきます。その手前・右にブランシュと柵が位置する。
 今度はデニスが階段を下りてきます。階段の欄干、下端の柱の上にオベリスク風の装飾が立っています。階段をあがって少し進んだ突きあたりには縦長の半円アーチ窓がある。その右手前が螺旋階段なのでしょう。逆の左側は、窓より手前で壁が左に伸び、壁龕の中に彫像を配してあります。その手前で欄干が左右に走っている。欄干の下・階段のすぐ左、1階には装飾的な机が置いてある。階段を下りた左側は、少しして壁になります。壁に寄せられたテーブルの上には燭台の他に、木彫でしょうか、台座を頭上に支える異人の像が置いてある。
 ブランシュにはアルマンという若い将校の恋人がいますが、消息が知れない。カメラがズーム・インすると、階段の左の机のある壁につけられた装飾に覗き孔があいていました。奥から覗く目があります。
 アラン卿は階段を下りてすぐ右の方に入って行きます。階段を下りたところと手前の仕切り柵の間で奥に行けるようになっているらしい。階段右の壁に歪んだシャンデリアらしきものの影が落ちています。
 アラン卿が進んだ先の廊下、右の角にコルボーがいました。
 柵の向こうにブランシュ、手前にデニスが位置します。奥の壁に欄干か何かが大きな影を落としている。話す二人を階段の上から笑みを浮かべたタロンが見下ろしていました。

 地下の廊下です。幅は狭く天井も低い。壁はごつごつ不規則な粗石積みで、何やらいろいろとあります。低い梁とそれを支える斜めのつっかい柱、下ひろがりの柱もある。奥からヴォルタンが進んできます。背を向け手前右へ、カメラも右向きになる。
 奥左下は格子をはめた半円アーチの手前と向こうで水路になっており、上から何か吊りさがっています。その右向こうに5~6段ののぼり階段があり(階段その4)、その上はさらに1段上がって左に通路になっているようです。階段をのぼりかけますが、叫び声を聞いて戻ります。階段の右下には鉄の処女らしきものが見える。柱越しにカメラは右から左へ動く。進んでいくと向かって左に尖頭アーチ型の頑丈な扉がある。
 中は地下牢でした。アラン卿の声がする。カメラが後退します。牢にはアラン卿の兄エドモン(ポール・キャヴァナー)が幽閉されている。精神に異常を来している様子です。20年前に死んだことになっているという。格子を両手でつかんで話すアラン卿のアップ、下から光が当たる。しかしアラン卿が出ていくと、狂人の振りをしていたことがわかります。ヴォルタンはエドモンに忠実に仕えている。牢の鍵を持っているのはアラン卿だけでした。結婚の話を聞いたエドモンは、結婚させるな、、始末しろと命じる。下向き気味のヴォルタンはにんまりと口を下向き三日月にします。


 廊下奥の壁にまず影だけが落ちます。次いで右の角からシルエット、そしてヴォルタン本体が出てくる。手前に進みます。少し進んでまた角になる。その先、突きあたりがデニスの部屋でした。扉の前には見張りのタロンが坐っていますが、居眠りしている。
 ヴォルタンは忍び寄ります。カメラはそれを追う。途中左に扉が一つありました。背を向けタロンの頭に握った右の拳を振りおろし、振りかえる。すぐ右にカーテンがあり、奥へ続いているようです。1段上がる。そこにタロンを隠します。
 部屋に入りベッドのデニスのもとへナイフを手に近づきますが、ちょうど隠し扉からブランシュが入ってきます。目覚めたデニスはヴォルタンを見て「誰なんだ、この悪夢は」という。失礼です。デニスに抜け道をというブランシュに、ヴォルタンはどうせえちゅうんじゃといった様子です。


 約40分、古城映画的山場です。城を脱出するには古い武器庫を通らねばならないという。ヴォルタンとデニスは廊下を手前に進みます。切り替われば螺旋階段を下りてくる。左へ進みます。カメラはやや上からです。広間の階段をあがったところなわけです。ヴォルタンが壁龕のディアーナ像を回すと、すぐ左の突きあたりの石壁が右へ滑るのでした。ディアーナ像は支えたままにしておかなければならない。
 隠し扉の先は下りの階段です(階段その5)。7~8段でしょうか。湾曲しています。画面右端・手前にドラゴンか何かの石像が映りこんでいる。カメラは右から左へ、おりて少し左へ、扉があります。
 中が武器庫でした。少し進んでまた下り階段となります(階段その6)。階段の上、右にも中2階通路が伸びている。階段は幅が広く、やや湾曲しているようです。手すりは中央に走っています。奥・右の壁にはゆるやかで大きな半円アーチがあり、すぐ下で壁、その下にも半円アーチの凹み二つが見えます。階段を下りる二人をカメラは俯瞰する。おりきると切り替わってカメラは水平になり、手前の鎧越しに右から左へ回りこむ。
 奥の低い扉から二人組が出てくる。酒場の贋被害者たちです。チャンバラになる。ヴォルタンはゆるいアーチの中2階通路へと動き、上と下で戦いが続く。階段から蹴落として相手を片づけた後デニスも刺そうとしますが、デニスの相手の背に当たってしまいます。困惑気味です。

 階段広間で宴の準備が始まりました。使用人がたくさんいます。招待状も発送される。
 タロンがコルボーに耳打ちし、コルボーがアラン卿に酒場の二人組が死体で発見されたことを伝える。
 広間の階段の向かいがかなり深いことがわかります。奥に暖炉、その左に扉、左の壁にゴシック風の木の浮彫パネルが貼ってある。前に食堂と見たところと同じらしい。
 階段の上からデニスが下りてきます。婚姻届の日付は9月14日で、デニスが来た日に当たる。結婚の公示に必要な一定期間の猶予も満たしているという。
 手前の仕切り柵の中央に開口部のあることがわかります。柵の向こうにはやはり何やら欄干らしきものの大きな影が落ちている。これは柵の上段、幅が狭い部分の影のようです。


 舞踏会が開かれています。カメラは少し斜めです。細長い広間です。アップになったアラン卿の向こうに例の扉がある。
 客の一人グラッサン伯爵(アラン・ネイピア)が到着します。手前に暖炉の炎、つまり暖炉の中に位置するカメラは、酒を並べたテーブルが横に配され、デニスと伯爵がその向こうに立つと二人の方へ前進します。伯爵は実はデニスの父の友人で、デニスが助けを求めると、城に詳しい(なぜなのでしょうか?)、南側に墓地に面した扉がある、そこで夜中の2時に馬車で待つといいます。
 二人がいるのと反対側が階段でした。やはり階段広間だったわけです。階段の上・左、壁龕のある壁の奥・左からアラン卿とブランシュが出てきます。やはり階段下・右の壁にシャンデリアらしきものの歪んだ影が落ちている。
 アラン卿とブランシュは仕切り柵の手前を右に折れます。角の壁に燭台を支える飾りがあり、覗き孔があいている。
 内側の暗く狭い廊下にヴォルタンがいました。奥を左へ進みます。右にも通じているらしい。隠し通路内の様子が映る唯一の場面なのでした。


 客たちが退出していきます。例の扉からです。デニスは呑んだくれている。
 連れられて花嫁の部屋に向かいます。廊下を奥から手前へ、左が目的地です。後退していたカメラは左に向きを変える。室内は廊下より1段分高い。中にも段差があります。横長9角形の額に入ったクピドー群像図をかけた壁が隠し扉になっている。この隠し扉がデニスの部屋に通じるものかどうかは不明でした。クピドーの群像図もネタがありそうです。


 約57分、古城映画的山場その2です。暗く幅の狭い廊下を右奥から出て手前に進む。手前は開けており、右上がりの湾曲階段が見えます。手前右にはドラゴンの像らしきものが映りこんでいる。これは前にも出てきたものでした。つまり階段その5をおりた所というわけです。カメラはやや上からです。
 先に武器庫への扉がある。中の階段その6を下りる様子が上から俯瞰されます。
 以前酒場の喧嘩二人組が出てきた扉の中に入ります。扉の内側に斜めになった縦格子の影が落ちている。中を右から左へ進む。手前の柱越しにカメラも平行します。柱のすぐ向こうにはテーブルがあり、使用人たちが酔いつぶれている。黒猫もいます。その背後をそっと進むわけです。奥の壁は高い位置に窓が並んでいる。格子入りです。この影が扉とその右の壁に落ちていたのでしょう。左に扉口があります。

 手前から奥への幅の広いのぼり階段が下から捉えられる(階段その7)。階段の上にはアーチがあり、左奥にアーケードのある歩廊です。屋外でしょうか。階段の上、左からさらに左上への階段がのぼっているようです。暗く、しかし稲光が射します。
 カメラは上から下へ、次いで左から右へ流れます。階段を下りたすぐ右に馬車が停まっていました。

 馬車が進む先にアーチ門があります。その右に尖り屋根の低い望楼らしきものがある。
 切り替われば墓地です。地面に霧が這っている。止まった馬車の扉を開けたのはコルボーでした。同乗していたグラッサン伯爵の背にはナイフが突きたっている。身元のはっきりした貴族を殺すのは後々まずいと思うのですが。
 ブランシュに迫る男を背後から現われたヴォルタンが倒しますが、コルボーに銃で撃たれてしまう。よろよろとよろめいて十字架のたもとに倒れるのでした。


 ブランシュとデニスは書斎に連れてこられます。アラン卿が待っている。アラン卿はカーテンを開き、肖像画を示す。モデルはブランシュの母でした。母娘はそっくりです。アラン卿はブランシュにアルマンの指環を渡す。以前刳りぬいた本の中に隠していたものです。

 ヴォルタンが起きあがる場面を経て、約1時間5分、向こうに地下廊下が伸びるさまが映ります。手前左上の階段からアラン卿たちがおりてくる(階段その8)。廊下には何本も鎖が垂れさがっている。手枷付きのものもある。左に地下牢への扉があるところを通り過ぎ、左から右へ進みます。柱越しにカメラも平行する。先には前にも出てきた5~6段ののぼり階段その4がある。
 階段をあがって水路の上の短い通路を左へ、扉があります。開けると水車のすぐ向こうをめぐる通路です。扉は右に位置し、そこから左へ通路が伸び、水車の左で折れ曲がって数段のぼる(階段その9)。あがった通路の向こうには低い石の欄干が見えます。欄干には円形の凹みが刳られて並んでいる。手前には木の粗末な手すりが階段から続いています。水面には霧が這っている。
 通路の曲がり角の壁に仕掛けがありました。それを作動させると、離れていた直交する歯車が噛みあう。
 アラン卿たちは屋内に戻ります。ブランシュとデニスを銃で指図するコルボーの影が壁に濃く落ちています。一方ヴォルタンは水に入る。

 地下牢のある部屋の扉へ向かい、中に入ります。アラン卿はブランシュとデニスを牢内に入れ、残り長くて15分だと告げる。牢の左右の石壁がゆっくり狭まってくるのでした。『大鴉』(1935)が思いだされたりもする。
 アラン卿の目に、ブランシュの顔と肖像画がオーヴァラップします。くるくると微妙に変化する表情はチャールズ・ロートンの見せ場でしょう。

 ヴォルタンが川の流れに身を任せる一方、水車のところに出て来たアラン卿にコルボーが悪党としての覚悟を糺します。コルボーがなかなかかっこうがいい。アラン卿はこの期に及んでやや動揺気味でしたが、後戻りできないよう装置の金具を水に投げこむ。
 川から這いあがったヴォルタンがコルボーの背後に現われます。また撃たれるも両手で首を絞める。墓場での絞殺に続いて、『フランケンシュタイン』(1931)等が連想されずにいません。いったん屋内に入っていたアラン卿が戻ってきてヴォルタンの背をナイフで刺しますが、川に投げ落とされてしまう。水車を大きく配した引きの画面です。
 すかさず牢の鍵を奪い取っていたヴォルタンは、よろめきながら中の階段を下ります。
 アラン卿はよじ登ろうとしますが、歯車にはさまれてしまう。無惨です。水面に霧が這っている。
 ヴォルタンは牢の部屋に入りますが、倒れてしまう。それでも這いながら進む。アラン卿がはさまったため止まっていた壁の動きがまた始まります。危機一髪という次第です。


 壁が間にはさまった机を押しつぶして閉まり、画面はいったん真っ暗になる。続いて手前右からデニスとブランシュが出てきて、背を向け奥へ、柵の右を通り、暖炉のある空間の手前右に例の扉がありました。取っ手を取りつける作業が行なわれています。屋外からやはりそちらにも取っ手がつけられた扉がとらえられ、閉じられてエンド・マークに重なるのでした。

 『奇妙な扉』というタイトルの「奇妙さ」の所以は、本篇を見るだけではもう一つよくわかりませんでした。これは原作の筋を膨らませたため、扉の存在が小さくなったということにもよるのでしょう。クライマックスで一応の主人公たるべきデニスがほぼ役立たずなのも、ある意味面白がれるかもしれません。大活躍したのはヴォルタンで、忠臣でありつつ、主の命をかなえるためならば殺人にためらいがないという役どころは、ボリス・カーロフの独壇場でしょうか。主の命令とブランシュの依頼との板挟みになって右往左往するのも見せ場になっていました。他方チャールズ・ロートンは『獣人島』や本作によって、『M』(1931、監督:フリッツ・ラング)、『狂恋:魔人ゴーゴル博士』(1935)、『五本指の野獣』(1946)、『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』(1962)の第2話などなどのピーター(ペーター)・ローレとともに、永く記憶されることでしょう。
 とはいえ本作の主役はやはり、城にほかなりますまい。とりわけ階段は、きちんと映されるかどうかは別にして、少なくとも9つ登場したことは特筆すべき点でしょう。加えてデニスの部屋に至る廊下、地下通路が複数回往き来され、あまつさえ少しとはいえ隠し通路までその内部が映されるのですから、超自然現象が起きないという瑕瑾を補うところ少なしとしません。

Cf.,   Jonathan Rigby, American Gothic: Sixty Years of Horror Cinema, 2007, p.307

原作の邦訳は他にもあるようですが、とりあえず;
ロバート・ルイス・スティーヴンソン、河田智夫訳、「マレトルワ邸の扉」、『ねじけジャネット スティーヴンソン短篇集』、創土社、1975、pp.145-178
原著は
Robert Lewis Stevenson, ""The Sire De Malétroit's Door", 1877
 2016/02/28 以後、随時修正・追補
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