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ジャックと悪魔の国
Jack the Giant Killer
    1962年、USA 
 監督   ネイザン・ジュラン 
撮影   デヴィッド・S・ホースレイ 
 編集   グラント・ウィトック 
 美術   フェルナンド・カッレーレ 
 セット装飾   エドワード・G・ボイル 
 特殊効果   オージー・ローマン 
 特殊写真効果   ハワード・A・アンダーソン 
 ストップ=モーション・アニメイター   ジム・ダンフォース、フィル・ケリスン、トム・ホランド、ドン・セイリーン、ジーン・ウォーレン、デヴィッド・パル、ラス 
    約1時間34分 
画面比:横×縦    1.66:1* 
    カラー 

DVD
* 手もとのソフトでは 1.33:1。左右がいささかトリミングされていることになります。
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 監督をネイザン・ジュラン、主演にカーウィン・マシューズに加えて魔術師役でトリン・サッチャー、そして齣撮りによる人形アニメーションを立役者にした作品ということで、『シンバッド七回目の航海』(1958)の「柳の下のドジョウ」(下掲ブロスナン、『ムービー・マジック SFX映画物語』、p.180)を狙ったわけですが、特撮はハリーハウゼンではなく、ジム・ダンフォースらが担当しました。アニメーション自体の出来云々以前に、いかんせん怪物たちのデザインがあまりといえばあまりな仕上がりであるためにかなり損をしていますが、一篇の映画としてはそれなりに楽しめないわけでもありません。何より二つのお城が舞台となりますので、手短かにとりあげることとしましょう。

 およそ1000年前のイギリス南西端、コーンウォールの宮廷から物語は始まります。謁見の間は内装は明るいのですが、ハリウッド映画としては狭く感じるようなセットなのが逆に意外なほどです。かつて追放された魔術師が仮の姿で王女に贈った贈り物は、鋸歯型胸壁をいただく角塔の形をしています。また王女の部屋では、中ほどをアーケードが仕切っているのですが、アーチの梁が左右からのぼってきて交差した上で、上方反対側に伸びていくというX字形をしているのが目を引きます。
 次いで城門付近、城壁に沿った石段をのぼる足だけが映され、石畳を敷いたバルコニーから王女の部屋の窓のそばにつきます。またこの窓ともとの階段の間には、ゆるい尖頭アーチが入口を囲っていて、奥に扉が見えます。左上には篝火が点されている。ちょっとした場面ではありますが、城の空間が連絡するさまを描きだしてくれていました。
 贈り物の中にいた道化人形が巨大化します。王女の寝台に落ちる影が大きくなっていく。王女の悲鳴を聞きつけて人々が、二つの廊下をそれぞれ通って部屋の前に駆けつけます。ここも空間の分岐を暗示してくれる場面でした。
 王女をさらった巨人は城の中庭に出ます。中庭を取り囲むのは、あまり高くはない、幅の広いいくつもの棟です。横に並び、左では前後に重なり、鋸歯型胸壁をいただくものもあれば斜めの屋根も見えます。幅の広いアーチが一つに、その右には少し低く幅も狭いアーチが連なっています。ここも雰囲気を出しています。
 巨人は城門から出ようとします。左側に城門があって、右にはさほど高くない城壁が伸びています。城壁の上は鋸歯型胸壁のある歩廊で、地面から左上がりの階段が城壁に沿っています。城門の左右には操輪が設置されており、右側のものは城門の格子戸を上げ下げするため、左側のものは外の濠にかかる吊り橋を操作します。


 巨人は船で魔術師の城へ渡るべく、海辺へ向かいます。近くには主人公の家があり、水車を脇に、右手では1階、左手では2階の高さになっていて、屋根は藁葺きです。2階ある側の中は大きな粉挽き臼が占めています。縦横に直交するように組みあわされた石臼が印象的です。梯子で上階へのぼることができます。小屋の形態や石臼は、主人公と巨人との戦いで意味をなすべく設計されていることがわかります。この展開はけっこう悪くないというべきでしょう。

 巨人と合流しようとしていた魔術師の従者はひとまず城へ逃げ帰る。まずは島の一部が映されます。左上から岩壁がくだってきて、右側の低くなった岩壁と高い位置にある橋でつながれています。右の方低くには建物らしきものが見えます。
 カットが換わると、城門側から前に伸びる廊下をまっすぐとらえた構図になります。手前にある扉が開き、扉の外側の面にはとげとげが植えられていることがわかります。上にはゆるい尖頭アーチが枠取っている。廊下は石畳で、その先に井桁状の門があります。上の方で横に渡された梁には、滑車が二つ吊ってあって、それらはさらに格子戸を吊っています。格子戸の手前低くにはゆるいアーチが見えます。廊下は向かって左側にだけ欄干が残っているようです。
 従者は城門を入り、画面右端のアーチの奥から出てきて、左の方へ進みます。手前には何やら大きな木の組み物が映っています。
 従者が左へ進むとともに、カメラも動きます。等身大の籠に吊された骸骨や、鍋の中の骸骨を見た後、画面とほぼ平行に伸びる大きなアーケード、そしてその奥にも中2階までの高さのアーケードが連なっています。奥の低いアーケードの上は、外に開いた窓になっています。そして左端には、10段ほどののぼり階段があって、その上に魔術師の玉座があるのでした。手前の床には大きな円形の孔がうがたれており、赤く光っています。奥の方にも骸骨が吊されています。魔術師はたくさんの妖怪たちに囲まれている。この妖怪たちは仮面をかぶった人間ですが、後の船を襲う場面でけっこう活躍してくれます。
 とまれ、城門から広間へ至る過程は、後に形を変えて描かれることになるでしょう。これをもって本作の問題点も大いに償われたというものです。


 コーンウォールの王城では、王女がまた狙われるのを防ぐべく、農民の扮装をさせてノルマンディーの修道院へ送る計画が立てられます。主人公が護衛として付き添うことになる。二人を送りだした後、王女付きの侍女でしょうか、コンスンタンス夫人は階段をのぼり、上階の倉庫に入ります。そこで籠の中の鴉を伝書鴉として飛びたたせるのでした。
 鴉の行き先である魔術師の城の全景がここで登場です。先に映された橋の左側、もう少しのぼった先に城はそびえています。コーンウォール城の低く幅が広いさまとは対照的に、いくつもの塔が林立する垂直性を強調したデザインです。下方は橋の右側同様岩壁で、城は青灰色をしています。
 鴉を迎えた従者が細い階段をおりてくる。右下がりからいったん折れて、左下がりになる階段をおりきれば、左の方へ玉座へのアーケードが伸びています。階段付近のアーチも、王女の部屋同様梁がX状に交差しています。


 王女と主人公が船旅をしていると、空が暗くなり、異形の魔女たちが来襲します。仮面をつけぼろぼろの衣装をつけた人物に、光学処理を加え、青い光を帯びさせるというものですが、これが意外と無気味さを醸しだしていました。とりわけ王女が逃げこんだ船室で先回りしていた魔女が花束を差しだす場面にそれが著しい。最初に登場する空飛ぶ魔女は火を操り、次いで甲板に現われる3人の内一人は風を操ります。

 魔術師の城では、玉座の階段の下、両脇にグリフォン像が据えられ、その片方にさらわれてきた王女が縛められています。魔術師はイシスに祈りを捧げる。杖の先の宝玉から光が発せられますが、アニメーションで処理したその光線はいささか安っぽいといわざるをえません。ともあれ王女は魔女に変身してしまうのでした。
 ちなみに本作品でも、『シンバッド七回目の航海』同様儲け役だったのは王女でした。とりわけ魔女に変化した後で、主人公たちを油断させるために農民娘姿に戻り、それでいてひそかにほくそ笑む時など、なかなか印象的です。

 魔術師はコーンウォールの王城に現われ、王位を退けと通達していきます。その後王女避難の計画を知っていたのは3人だけだったはずだからと、コンスタンス夫人の正体が暴かれます。鏡に映すと魔女の姿で映るのです。しかしその時、鏡を割ってしまえば呪いは解ける。これも伏線として、後の場面で反復されることでしょう。

 王女がさらわれた後、船から放りだされた主人公と船長の息子は、ヴァイキングの舟に救われ、そこにいた1000年間瓶に幽閉されているというアイルランド出身の妖精(インプ)の力を借りて、魔術師の城へ向かいます。ちなみに『シンバッド七回目の航海』においてランプの精は少し太めの男の子でしたが、今回の妖精はおじさんです。
 浜辺から岩壁を主人公はのぼり、城門前の廊下にたどりつく。井桁型の門の両脇には小塔があるのですが、一つはこぼたれています。また門の内側にはやはり両側に骸骨が吊されています。何かにつけ骸骨の多い城でした。
 いささか滑稽な動きを示す鎧武者5体との城門前歩廊での戦いを切り抜け、主人公は城内に入ります。玄関のすぐ向かいには上への階段がのぼっています。階段をあがると廊下で、湾曲しつつ、ゆるく段々になって上へのぼっていきます。廊下の両側の壁からは幾本もの腕だけが突きでて、松明を手にしています。コクトーの『美女と野獣』(1946)が思いだされるところです。ただしこちらの腕は、帰り道では剣を振るって主人公たちの邪魔をすることでしょう。
 廊下を抜けると、数段さがれば広間です。出入り口の背後には空が見えます。またすぐ右には上への狭い階段があり、これは伝書鴉を迎えた従者がおりてきたものと同じでしょうか。奥のアーケードの向こうは、数段あがって広い窓になっていることもわかります。


 王女は島の反対側にあるローマ神殿の廃墟にいると告げられ、主人公はそちらへ向かいます。手前に神殿址のある丘、いったん低くなって向こうの方に、岩の上にそびえる城が見えます。この神殿址が、橋を渡った先に見える建物と同じものなのかどうかはわかりませんでした。神殿は城の側に門状の構築物、その後ろに方形の建物だか石碑だかからなります。方形の建物の壁には、人面の浮彫が刻まれているようです。主人公がのぼってくる様子からすると、神殿のある丘はけっこう高いようにも見えます。

 城の広間の床に開いていた孔には、くだりの階段があるようで、下の階に通じています。そこは低いアーチのある暗い廊下で、手前に鎖が2本、上から垂れています。ここを魔術師と従者は進みかけたところ、異変に気づいて残念ながら戻ってしまいます。
 他方主人公は腕付きの廊下で腕と戦い、その先には秘密の抜け道があるといいます。こちらも残念ながら抜け道の様子は映らず、出ると神殿址付近でした。
 この後、双頭の巨人が登場、蛸足の海蛇との戦いが繰りひろげられ、舟で脱出した主人公たちを追って、魔術師は腕のない双翼のドラゴンに変身します。一番の見せ場ではあり、怪物たちのデザインがもうちょっと切れ味がよければと思わずにいられないところです。とこうして主人公がドラゴンを倒すと、城もまた崩壊するのでした。
 約束どおり瓶詰めから解放された妖精は、七里靴で虹の上を故郷へと急ぎます。海面にも虹は映り、その上を主人公たちの舟は帰路につくのでした。

Cf.,  ジョン・ブロスナン、福住治夫訳、『ムービー・マジック SFX映画物語』、1990、pp.179-180

STUDIO28編著、『モンスターメイカーズ 増補改訂版』、2000/2005、pp.98-100、102-105

〈巨人殺しのジャック〉について;
佐藤和哉、「『巨人殺し』の(ユニオン)ジャック-民衆ヒーローの暴力性に関する覚書-」、『日本女子大学英米文学研究』、no.47、2012.3.20、pp.33-49 [ < 日本女子大学学術情報リポジトリ


このお話を映画化した別の作品が;
『ジャックと天空の巨人』、2013、監督:ブライアン・シンガー
こちらの原題は
Jack the Giant Slayer
ドラゴンだの何だのは登場せず、急速成長する豆の木を除けば(〈ジャックと豆の木〉のモティーフも入っている)、出てくるのは人型の巨人族だけ、しかも人語(英語なのはさておき)を操るという点はいささか残念ですが、お城はちゃんと出てきました。
 2015/1/12 以後、随時修正・追補
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