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黒い城
The Black Castle
    1952年、USA 
 監督   ネイザン・ジュラン 
撮影   アーヴィング・グラスバーグ 
編集   ラッセル・A・シェーンガルト 
 美術   バーナード・ハーツブラン、アルフレッド・スウィーニー 
 セット装飾   オリヴァー・エマート、ラッセル・A・ガウスマン 
    約1時間22分 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

DVD(『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.3』(→こちらを参照)より)
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 本作では超自然現象は起こりません。とはいえ物語の主たる舞台は古城です。複数の階段、隠し扉に地下の廊下、絡繰仕掛けまで出てきます。カメラも上を向き下を向きする。

 撮影のアーヴィング・グラスバーグ、脚本のジェリー・サックハイム、美術監督の一人バーナード・ハーツブラン、セット装飾のラッセル・A・ガウスマンははいずれも一年前の『奇妙な扉』(1951)に参加していました。『奇妙な扉』では美術監督の一人だったネイザン・ジュランが本作で初の監督をつとめます。とどのつまり『奇妙な扉』と本作は姉妹作品のようなものなのでしょう。
 助演のボリス・カーロフとロン・チェイニー(・Jr)は本サイトではお馴染みの顔でしょう。ちなみに二人は以前『フランケンシュタインの館』(1944)でも共演していました。カーロフともども『奇妙な扉』に出ていたマイケル・ペイトも続投しています。
 やはりカーロフが出ていた『恐怖のロンドン塔』(1939)のところで触れたように、そこで建てられたロンドン塔外観のセットが、本作でも用いられているとのことでした。ちなみにマイケル・ペイトには1962年版『恐怖のロンドン塔』で再会できることでしょう。


 冒頭、さっそく城の外観が登場します。丘の上、右に鋸歯型胸壁を戴く下ひろがりの円塔、間に細めの塔をはさんで、左にやはり鋸歯胸壁を戴くこちらは多角塔、その左下にも城壁だか棟が続いている。円塔と多角塔の間に城門があるらしく、そこから右下へ道が伸びているようです。夜、雷鳴も轟きます。そのままタイトル・クレジットがかぶさっていくそれは、『フランケンシュタインの幽霊』(1942)でのやはり冒頭の城が連想されなくもない。

 トンネル状のアーチ門から、カメラは後退しつつ右から左へ流れます。墓地です。奥に6~7段のぼりの階段があり、その上で格子が石棺を囲っている。狼の遠吠えが聞こえてくる。左側の壁に開いた扉から男が顔を出す。先にある格子戸を落としたアーチの向こうに狼らしき姿が見えます。
 男は屋内に戻る。低い左寄り尖頭アーチが横切る部屋です。このアーチは左端で別のアーチと直交している。男は怪獣像の口に松明を差しこみます。
 室内にはもう一人、二つある木の柩を整えている。一つには「奥方」、もう一つには目を見開いた男が横たわっていました。後者は「フェンダー」と呼びかけますが、扉から顔を出した男には聞こえない。


 硬直した男の回想が始まります。3週間前、彼はウィーンの宮殿に英国公使を訪ねました。男の名はロナルド・バートン卿(リチャード・グリーン)、消息を絶った友人二人の行方を探るべく、ブルーノ伯爵領に向かうのだという。黒い森にある宿「グリーン・マン」からの便りが最後だった。バートン卿は西アフリカの植民地化に貢献したのですが、その際伯爵と何やら悶着があったらしい。リチャード・ベケットの名で行動することになります。

 夜、馬車が走っています。中にはバートンあらためベケットとその従者ロムリー(テューダー・オーウェン)が乗っている。大きなアーチ門を越えて馬車が停まります。そこで待っていた伯爵の馬車に乗り換える。『ドラキュラ』が連想されずにいません。城まで1日だという。途中グリーン・マンで一泊する。
 風に揺れる吊り看板、カメラが右に流れて窓が映り、切り替わって屋内となります。食堂です。奥、入口の右に右上がりの階段がのぞく。御者のフェンダー(ヘンリー・コーデン)も同じ席で食事するよう誘われます。フェンダーは冒頭で硬直したベケットが呼びかけた名で、扉から顔を出した男なのでした。召使い風情にと、フェンダーは感激します。
 食堂に二人の客が入ってくる。一人がマイケル・ペイトでした。席が空いていないのですが、フェンダーの姿を見つけた二人は無理矢理どかそうとする。さっそくベケットとのチャンバラです。
 ベケットはアフリカの仮面風の指環をしている。二人の乱暴者は伯爵の友人だという。


 約14分、城門が開き馬車が入っていきます。門の向こうは中庭をはさんで下に半円アーチの扉口がある鋸歯型胸壁を戴いた棟、その右に壁が湾曲した棟が並んでいる。二つの胸の境あたり、低い小塔があります。小塔は右にも見える。アーチの棟の左には2階ある斜め屋根の棟が接続しています。
 切り替わると、画面左、やや右上がりの階段が1階分ほどのぼり、その上に半円アーチの玄関口があります。両隣にも小さめの半円アーチの扉口が並ぶ。奥の右には湾曲した壁の棟、下に小塔がある。その右にも斜め屋根の棟が伸びています・
 また切り替わると、奥の少し様子がわかります。右の斜め屋根の棟は地面に接して半円アーチの開口部が3つ並び、右寄りでは2階にやはり半円アーチの窓だかアーケードが並んでいる。こうした中庭の眺めは、先に触れたように『恐怖のロンドン塔』1939年版のセットを用いたものということなのでしょう。

 中庭に面した階段をのぼってベケットは屋内に入る。少し斜めに見える低い梁が横切る廊下です。左に太い円柱が見えます。この太い円柱は後に何度も見かけることでしょう。
 替わって別の部屋ではボリス・カーロフ扮する医師が昨夜のチャンバラで負傷した一人を治療している。医師の名は日本語字幕では出てこなかったようですが、 [ IMDb ]によるとマイセンとのことです。眼鏡を掛け縁なし帽、耳にかかる髪の毛がくるりと巻いています。
 奥に暖炉がありその傍らにブルーノ伯爵(スティーヴン・マクナリー)がいる。片目に黒の眼帯を掛けています。彼が右から左へ進むと、カメラもそれを追います。暖炉の左、背後にまず太い格子の扉口が見える。そのまた左、前に出た方形の塊は上半が木の浮彫つきパネルで覆われており、『奇妙な扉』での階段広間の一角が思いだされるところですが、配置は変化しています。方形の塊はさらに左にも来て、しかし二つの塊の間に上への階段があるのでした。塊の左端を角に、手前に壁が伸びている。その左方に扉が見えます。扉の右の壁、上方に横長の大きな絵がかかっている。
 扉からベケットが入ってきます。左から右へ進むと、カメラもそれを追います。すると塊間の階段が、7~8段で踊り場に達し、突きあたりにアーチのあることがわかります。このアーチの下は暖炉でしょうか、階段は左右に枝分かれしているらしい。
 昨夜の二人の名はスタイケンとエルンストでした。この時点ではどちらがどちらかわかりませんが、ずっと後になってマイケル・ペイトがエルンスト役、もう一人がジョン・ホイトでスタイケン役と判明します。


 伯爵は狩りを予定しているという。アフリカから連れてきた豹とのことです。
 太格子扉からロン・チェイニー・Jrが前進してきます。下からのアップになると左から光が射している。役名はガーゴン、ベケットに何やら反応します。
 ガーゴンがベケットを部屋へ案内する。出ると廊下です。扉の左に太い円柱が見える。
 ベケットの部屋には積層した塔状の陶製ストーヴが置いてありました。右には大鏡があり、両者の間が扉です。
 扉から出ると、すぐ左は少し出っ張って、奥へ続いています。左の壁に欄干らしきものの影が大きく落ちている。このあたりの配置は後にもっとわかることでしょう。
 奥の突きあたりにある扉からガーゴンが出てくる。その影が左に大きく落ちます。右に下りの階段があるらしい。壁の下半はやはり斜めになった影に覆われている。大きな綴織が掛けてありました。
 それを見たベケットは突きあたりの部屋に忍びいる。壁は浮彫付きの板張りです。右手にある戸棚の左に黒い捻り柱がありました。左の扉から女(ポーラ・コーデイことリタ・コーデイ)が出てくる。エルガ・フォン・ブルーノ、伯爵の新妻とのことです。

 薄暗い地下の廊下です。奥に格子戸があり、そこから伯爵、ガーゴン、エルガ、ベケットが出てくる。すぐ左が壁で、低い台形状の梁が二つ横切っています。右下に低い台があり、何やら上面が棘々のように見えます。手前に進む。
 手前で左に折れます。やはり廊下が続く。奥の突きあたりに左上がりの階段が見えます。天井は少し右上がりでしょうか。上からは手枷付きの鎖が何本も垂れ下がり、さらし台らしきものもあります。やや下からの眺めでした。やはり『奇妙な扉』の地下通路が思いだされます。
 先に黒豹を入れた背の低い檻がある。ガーゴンは檻に鞭を振るいます。伯爵も檻に鞭を何度も叩きつける。

 気分の悪くなったエルガに付き添ってベケットは格子戸の手前に出てくる。右の奥は肩の高さほどの段差の床となり、その奥に別の格子戸が見えます。右手で左上がりの階段からのぼるようになっている。
 階段の右手、奥には扉があり、その上に右上がりの階段がかぶさっています。階段の下は曲線を描く。このあたり、壁に何やら網状の影が落ちていました。
 二人はまず左上がり階段で高床にのぼります。階段は上で折れて右上がり階段につながる。木の手すりがついています。下からのカメラが階段に沿ってまず右から左、左から右と流れる。7~8段で上に達し、そこから右に向かいます。ここも手すりが続いている。
 先に廊下が伸びています。途中にやや歪んだ梁が横切っている。右から太い木の筒にロープを何重か巻いたものが突きでており、右端は操舵輪になっているらしい。左の壁に大きく、ハンドルがいくつも突きでた円の影が落ちています。廊下の奥にも梁があり、突きあたりは扉でした。
 そちらに向かったベケットが石畳の一つを踏むと、いきなり落とし戸が背後に落ちます。その際右の操舵輪も左のその影もきちんと回転しました。追いついた伯爵が命じ、ガーゴンが操舵輪を回せば、落とし戸があがるのでした。
 伯爵に促されてベケットが突きあたりの扉を開くと、すぐ下に落ちこんで底は水面、鰐が群がっている。奥に外へつながる通路があるとのことです。この点は後に確認できることでしょう。

 ベケットの部屋です。ベッドに横たわるベケットとカメラは同じ高さに配される。ベッドの奥・左の壁が隠し扉になっているのでした。そこからガーゴンが入ってきます。ベケットの寝顔を見てから戻る。ベッドと隠し扉の位置は『奇妙な扉』に出てきたものと似ています。残念ながら隠し扉や隠し通路はこの後出てこない。

 手前から奥へご馳走を載せた長テーブルが伸び、先に伯爵が立つ。その奥は浮彫パネルが横に伸び、下は暖炉でした。その右に扉らしきものが見える。伯爵が狩りの説明をします。右に窓があり、向こうに鋸歯胸壁が覗いています。左には浮彫パネル、左奥に格子戸がある。最初の部屋と同じようにも見えましたが、定かではない。

 霧のかかった森です。ベケットと伯爵がペアになった。伯爵は黒革のコートを着ています。ベケットは鹿を仕留めていました。
 二手に分かれますが、ベケットは窪地に滑り落ちてしまう。黒豹もそこにいました。銃は落としてしまいナイフで立ち向かいますが、あわやというところを伯爵の銃撃で救われる。


 狩りの賞品としてベケットは決闘用の拳銃二丁入りの箱をもらいます。この拳銃と箱は後二度にわたって活用されることでしょう。太い円柱の部屋です。奥に扉があり、その左手前で左上がりの階段がのぼっている。扉口の向こうに見えるのは方形塊が階段をはさむ最初の部屋でしょうか。
 伯爵はある女と懇ろな仲らしい。一方エルガは医師と話しています。エルガをベケットは踊りに誘う。ほぼ真上からのショットが挿入されます。暖炉と格子戸のあることがわかる。
 エルガはアフリカの仮面風ペンダントをつけたネックレスをしていました。ベケットの指環と似ています。二人は暖炉の右のフランス窓からバルコニーに出る。それを窓越しにスタイケンが見ています。右下に影が落ちている。ペンダントは伯爵からの贈り物で、魔除けだという。


 エルガとベケットは扉の向こう、右の階段をのぼります。あがった先はエルガやベケットの部屋に通じる廊下でした。階段の上の角柱に1本燭台があり、斜めに影が落ちています。
 廊下の右手は半円アーチが列をなす欄干で、円柱が2本ある。その右は吹抜なのでしょう。手前の柱の陰で医師が二人の様子をうかがっています。
 エルガは突きあたりではなく階段の向かいの扉から入っていく。追ってベケットが押しかけ、事情を説明します。室内の別の扉が少し開く。ベケットが退室した後エルガはそれに気づき、扉の中へ入ります。ベケットが以前忍びいった部屋でしょうか。奥にさらに別の扉があり、それが閉じるのでした。


 2階の廊下です。欄干は右から左に伸び、円柱を角に、手前右下に折れています。角の手前には医師が身を潜めている。右奥から左へ進むスタイケンがやや上から捉えられます。

 宴の席にいる伯爵の元へ、医師が近づいてきます。向こうに扉が見える。その奥には2本の円柱と左上がりの階段がのぞいています。画面左手前には右を向くエルンストの横顔が大きく配される。トロフィーの部屋で会いたいというスタイケン伯爵の伝言を医師が伝えます。
 浮彫パネルにはさまれた階段をおりてきます。ただし右の方形塊は下が暖炉になっている。トロフィーの部屋の名の通り、左の壁には狩りの獲物の首がいくつも飾ってあります。方形塊の間を下りてくる階段という点は最初に出てきた部屋と同じですが、セットを組み変えたのでしょうか、別の部屋ということのようです。
 薄暗い。階段を奥に、手前でスタイケンがテーブルに突っ伏しています。先ほどのエルンストの横顔に続く遠近の対比を強調した構図でした。カメラはやや下からです。スタイケンが倒れると、カメラはさらに下、床の位置から伯爵たちを見上げます。
 医師が呼び戻される。階段を下りてくる医師はまずシルエットで現われます。左に濃い影が落ちている。スタイケンは息を引き取ります。伯爵のバスト・ショットが下からアップでおさえられる。


 エルガの部屋に伯爵がやって来る。エルガはベッドで半身を起こしています。白っぽい寝着を着ている。クライマックスまでこのままでした。問いつめられてアフリカの件は伏せ、ただベケットが好きになったとのみいう。伯爵は前妻と同じだと、ガーゴンを呼ぶ。ガーゴンがベッドのエルガに手前左から覆い被さるとシルエット化、画面が真っ暗になります。悲鳴があがる。

 翌朝、伯爵とエルンストが朝食の席についています。背後に暖炉があります。その右奥の扉から医師が出てくる。いわれた処置を施したという。
 反対の扉からベケットが入ってきます。別れの挨拶をする。立つベケットのすぐ左横の席に医師が坐っているのですが、表情をこわばらせているのでした。医師の背後の壁、上方は浮彫パネルに覆われています。エルンストの席の背後には格子戸が見えました。
 伯爵とエルンストが退席した後、医師はフランス窓から鋸歯胸壁のあるバルコニーに出ます。そこから中庭が見下ろされる。先のフランス窓の隣にあるフランス窓から室内に戻り、角をはさんで左奥の扉へ向かうのでした。

 土手を左から右へ進む馬車が下から捉えられます。しばらく出番のなかったロムリー再登場です。切り替わると左上から右下への坂をくだっている。すれ違ったのは馬に乗るグリーン・マンの亭主でしょうか。
 グリーン・マンです。カウンターのベケットとロムリーのところへ医師がやって来ます。エルガが危ないと告げる。背を向けたベケットの肩越しに医師が捉えられ、左に首を傾けるさまがやや下から見られます。医師はスタイケンに毒を盛った、バートンという本名も知っている。

 城に税を納めるべく住民たちが集まっています。円柱の部屋です。奥に左上がりの階段、上で左に伸びているのは2階廊下の欄干でしょうか。住民たちの中にグリーン・マンの亭主もいる。伯爵はベケットの正体に気づきます。屋内側に突きだした角をはさんで手前と奥に窓が配され、右奥に伯爵、手前の角にエルンストが位置します。伯爵が下を見ると、中庭に馬車が戻ってきたところでした。
 ベケットが中庭に面した階段を駆けあがります。広間の階段の途中で伯爵とエルンストが下の扉口を見下ろしていると、扉の方へベケットが向かいます。扉の右はすぐ角で、折れて窓がありました。上に伯爵とエルンスト、下にベケットが配される。下から見上げられます。階段をあがった先の廊下は、天井が左上がりに傾斜しているように見えます。


 賞品の決闘用拳銃を忘れたというベケットが、伯爵、フェンダーとともに自室に戻ります。手前右に大鏡、その向こうで大鏡付きの扉を開くベケットが配され、大鏡には右半身、その左に左半身の実物が配されるのでした。左奥に伯爵がいます。二人が部屋を出る時、向こうの陶製ストーヴが右に何やら不定形めく細くなった影を落とす。

 2階廊下です。扉を出てベケットと伯爵は右向き、その前を医師が手前に進む。ベケットと伯爵も手前に向かいます。その時奥右にいたフェンダーは急いで階段を下りる。
 続いてフェンダーは中庭階段をおりてきます。ロムリーに助けを求める。ベケットが地下に連れて行かれたという。二人は階段の右を奥へ進みます。


 ベケットと伯爵が扉から出てきて手前へ進む。エルンストとガーゴンもいます。薄暗い。進むと左で右上へのぼる階段の半アーチ状下部がかぶさってくる。
 ベケットは左へ、格子戸がある。奥・その右には鰐部屋方面へののぼり階段が見えます。格子戸を越えると奥に鉄の処女がありました。『奇妙な扉』に出てきたのと同じ小道具でしょうか。
 先に牢がある。エルガが入れられています。格子戸に鍵はさしっぱなしでしたが、ベケットが中に入ると伯爵が施錠します。アップになった伯爵はこの5年間悪夢だったといい、眼帯を外します。瞳孔が白っぽい義眼でした。


 手前に梁が横切り、下に下り階段のある空間がかなり上から見下ろされます。右奥の格子戸からロムリーが出てきて階段を下りる。向こうには半円アーチと格子が見え、見張りがついています。鰐部屋行きのぼり階段の底辺のアーチの下・奥にある扉からガーゴンが出てきて、階段をのぼります。そのさまが床の高さから見上げられつつ、カメラが右から左へ振られると、ロムリーが左下に身を潜めていました。ガーゴンは奥の格子戸から向こうに入る。手前と奥の天井に格子戸の影が落ちています。
 居眠りしていた見張りをロムリーは殴り倒す。鍵束を手に格子戸の中に入ります。左に鉄の処女がある。気づいた見張りは警鐘を鳴らします。中庭が俯瞰され、使用人たちがわらわらと走ります。
 牢を出て左へ、格子戸を経て上への階段がありました。7~8段で踊り場です。ベケットとエルガはそこをのぼります。足止めすべく残ったロムリーは哀れ伯爵の手にかかる。
 ベケットとエルガが鰐部屋への階段をのぼるさまが上から見下ろされます。前の階段の位置からこちらの階段に来るには、かなり回ってこなければならないような気がしなくもありません。右に燭台を載せたシャンデリアの影が落ちている。鰐部屋への扉の廊下で、やはり操舵輪とその影が左右に映りこみます。扉の前で1段下がっていたようです。石畳を踏む。落とし戸が閉まります。
 中に入ると、幅の狭い通路が右に通じている。かなり下からのカメラです。壁に背を寄せながら進むと、すぐ角になって手前に折れます。のぼりになっているようです。壁は石積みですが、通路の下は絶壁状の岩肌でした。壁で水の影が揺れています。ぐるっと回って手前まで来ると、左上がりの階段が数段ある。奥・ちょうど向かいに入ってきた扉が見える。エルガの寝着が透けます。

 手前の扉から中に入ります。尖頭アーチが横切る天井の低い部屋でした。向こうにもアーチが見えます。冒頭で柩の置かれていた部屋なのでしょう、右の壁で怪獣像の口に松明がさしてある。しかし伯爵たちが先回りしていました。ガーゴンは話せない、お前のせいで原住民に舌を抜かれたと伯爵が言います。
 柩の中には骸骨が入っていました。誰のものなのでしょう。奥の壁にもたれたエルガは、白く人形めいています。鰐濠への扉の手前は1~2段のぼりになっていました。ベケットと争うガーゴンは蹴飛ばされ、扉口の向こうにあった下り階段を転げ落ち、哀れ鰐濠に落ちてしまう。


 すぐ奥に縦格子の嵌った窓のある狭そうな牢です。ベケットとエルガ、それに医師がいる。医師は約10時間仮死状態になる薬を用意していました。ベケットが最悪の場合は?と問うと、医師はにんまり笑うのでした。ボリス・カーロフであります。結局二人は薬を飲みます。医師はまたしてもにんまりする。ベケットはなぜか目を見開いたままです。
 伯爵にはたかれて医師はいやにあっさり白状します。

 柩の向こうに7~8段のぼり階段があり、上に扉が見え、カーテンがかかっています。両脇は浮彫パネル付き方形塊でした。柩の前で医師が謝罪していると後ろから伯爵に刺される。
 中庭への階段が下から見上げられます。柩がおろされる。雷鳴が轟きます。おりて右を奥へ進む。
 ここで冒頭の状況に戻るのでした。フェンダーともう一人、コピッチが埋葬の準備をしている。
 暖炉の中から炎越しに伯爵がやや下から捉えられます。奥左右に浮彫パネルが見える。突きあたりの扉から執事が入ってきます。
 鐘が鳴る。廊下です。奥から手前へ伯爵とエルンストが進みます。手前の天井に格子と二人の影が落ちている。手前に扉がありました。外に出てエルンストが扉を閉じると画面が真っ暗になります。
 二人が中庭階段を下ります。下からのカメラです。雨が降っており、雷鳴も轟きます。おりると右を奥へ向かう。
 アーチ状のトンネル、その手前の格子戸を開き左へ進みます。カメラは右から左に流れる。右手奥には上りの階段があり、石棺が格子に囲われている。墓地です。奥に扉がある。冒頭でのカメラのトラッキングを大まかになぞっているわけなのでしょう。
 フェンダーたちは物音に柩を開けようとしていました。入ってきた伯爵が柩を開くと、伯爵とエルンストをベケットが銃で撃つ。単発銃なのでちゃんと二丁持っていました。下からの仰視です。銃は医師が入れておいてくれたとのことです。


 中庭からベケットとエルガの乗った馬車が出発しようとしています。ベケットはフェンダーにいっしょに来るかと誘い、フェンダーは大喜びで御者席につきます。馬車が動きだすと、中庭階段にいる皆が手を振っていました。伯爵はよほど恐れられていたようです。城門の扉が閉じ、そこにエンド・マークがかぶさるのでした。

 冒頭での雷鳴轟く夜の城外観、墓場でのトラッキング、〈早すぎた埋葬〉モティーフ、ロン・チェイニー・Jr扮するガーゴンの振舞など、ホラー的な味付けは適宜組みこまれているとはいえ、やはり本作の基調はサスペンスものでしょう。ブルーノ伯爵を演じるスティーヴン・マクナリーは、『奇妙な扉』でのチャールズ・ロートンのような底知れなさを感じさせるとまではいいがたいように思われます。他方クライマックスでのほぼ一瞬に近い呆気ないほどの素早さは、西部劇的でなかなかよろしいのではないでしょうか。
 とはいえ本作の見所はやはり、階段広間とそこから通じる部屋での方形塊にはさまれた階段、広間の階段から通じる2階回廊付近、いくつもの格子に区切られた地下の部屋とそこから一方で牢付近へ、他方で鰐部屋付近へと分岐する空間にほかなりますまい。加えてところどころ面白い構図が組みたてられていた点も見逃せないところでしょう。
Cf.,
 
Jonathan Rigby, American Gothic: Sixty Years of Horror Cinema, 2007, pp.307-308
 
 2016/03/03 以後、随時修正・追補
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