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幽霊西へ行く
The Ghost Goes West
    1935年、イギリス 
 監督   ルネ・クレール 
撮影   ハロルド・ロッソン 
編集   ハロルド・アール=フィッシュバッヒャー 
 セット・デザイン   ヴィンセント・コルダ 
    約1時間19分 * 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

DVD
* [ IMDb ]では1時間35分
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 幽霊の出てくる喜劇ということで、『乙女の星』(1946、監督:クロード・オータン=ララ)や『幽霊と未亡人』(1947、監督:ジョゼフ・L・マンキーウィッツ)に先立つ作品となります(レオン・バルサック、『映画セットの歴史と技術』、1982、p104、p.106 によると「ルネ・クレールは『幕間』(1924)のあとで、『ムーラン・ルージュの幽霊』(1924)を撮った。これは一般観客が見なれているようなスリラー映画でもなければ、空想映画でもなかった。それは『幽霊西へ行く』(1935)を予告するユーモアたっぷりのおどけた幽霊なのである」とのことです。未見)。『幽霊と未亡人』は古城映画とは申せますまいが、本作と『乙女の星』は古城度がかなり高い。上記のごとく手もとにある版はカットされているようですが、手短かに取りあげることにしましょう。

 ルネ・クレールの監督作は先に『そして誰もいなくなった』(1945)を見ましたが、本作がフランスから出て撮った最初の作品となるようです。『巴里の屋根の下』(1930)や『巴里祭』(1933)などに代表されるクレールは何となくまともな監督といったイメージで、本サイトの範疇から縁遠そうではありますが、以前にはピカビアだのデュシャンだのマン・レイが参加、サティが音楽をつけた短篇『幕間』、先に触れた『ムーラン・ルージュの幽霊』、また後には古城映画とは申せないものの、ファウストを題材に超自然現象の起こる『悪魔の美しさ』(1950)といった作品も残していますので、おさおさ目配りを怠ってはならないようです。
 他方本作の製作はアレクサンダー・コルダで、実の弟で美術のヴィンセント・コルダともども、『来るべき世界』(1936)と『バグダッドの盗賊』(1940)に続いての本サイト登場であります。
 撮影のハロルド・ロッソンも『オズの魔法使』(1939)を先に見ました。『踊る大紐育(ニューヨーク)』(1949、監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン)や『雨に唄えば』(1952、同)なども手がけたヴェテランです。[ alcinema }等でご確認ください。
 なお{ IMDb }によると、クレジットはされていないものの、本作のカメラ・オペレイターはジャック・カーディフとのことでした。マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー監督による『天国への階段』(1946)、『黒水仙』(1947)、『赤い靴』(1948)などで撮影監督をつとめ、『悪魔の植物人間』(1974)といった演出作品も残しています。古城映画としては『黒水仙』で再会できるでしょうか。
 脚本のロバート・E・シャーウッドも、『レベッカ』(1940)に続くお目見えです。
 また本作には一部ファンには同じ年の『フランケンシュタインの花嫁』(1935)で忘れがたい、エルザ・ランチェスターが出ています(すっかり忘れていましたが、『らせん階段』(1945)にも出演していた)。オープニング・クレジットではキャストの4番目だったので、それなりに活躍してくれるのかと思いきや、最後の方にちょこっと顔を見せる程度でした。それでもそれなりにかくかくした身ぶりの奇矯な役どころではありました。


 18世紀のスコットランド、グローリー家とマクラガン家はいがみあっていました。グローリー家の若・マードック(ロバート・ドーナット)は事あらば近隣の娘たちに「なぞなぞつづり」をしかけてはキスを奪うという常日頃でしたが、イングランドとの戦さへの出征に出向いた先で、戦さをさしおいてもマクラガン家の面々と角突きあわせ、あげく、剣を奪われ逃げ回るさなか、味方の砲撃に直撃されはかなくなってしまいます。
 約11分、天国と地獄の中間にある〈辺土(リンボ)〉までやって来たマードック、そこへ一足先に大往生を遂げた父ギャビンの声が響きます。あまりといえばあまりに情けない死にざま、ご先祖さまにお目通りすることはかなわない。一族の名誉を回復するまでは、真夜中ごとにグローリー城の廊下をさまよう幽霊となれと告げられます。
 約15分、時は移って20世紀、確実きわまりない幽霊出現のせいか、城は荒れ、当主のドナルド(ドーナットの二役)は借金まみれとなって尾羽打ち枯らしていました。城も売りに出ています。そこへやってきたのがアメリカの大食品商の娘ペギー・マーティン(ジーン・パーカー)、父(ユージン・パレット)にねだって城を買い取らせます。
 約41分、父マーティンはさっそく城を解体、船で輸送してフロリダで再建する手はずを整える。城付き幽霊であるマードックも同行、船内で目撃され大騒ぎになり、約56分、英米それぞれの議会で問題となるほどでした。船はニューヨークに到着しますが、倉庫でギャングと警官の銃撃戦に遭遇したマードックは父グローリーに愚痴をこぼし、父はしばらく透明のままでいられるよう計らいます。
 約1時間、そのため幽霊出現はやんでしまうわけですが、フロリダで城の竣工なると父マーティンはお披露目を開き、再建監督として同行してきたドナルドに幽霊役を演じるよう頼みます。船内にも居合わせたライヴァル食料品店のビグロウ(ラルフ・バンカー)に一泡吹かせようとの魂胆でした。ミス・シェパートン(エルザ・ランチェスター)を始めとする「超常現象研究会 Society of Psychic Researchers」も招待されています。はたしてマードックの幽霊は現われるのか、彼の運命や如何に、またお互い憎からず思いあっているのに、ドナルドと瓜二つで性懲りもなくなぞなぞをしかける幽霊にペギーが出会ってしまったばかりにぎくしゃくする、ペギーとドナルドのロマンスの行方はどうなるのか……以上が大まかな粗筋です。


 石積み壁のアップをバックにしたオープニング・クレジット、行軍の様子に続いてさっそく城の外観が登場します。両脇を円塔にはさまれやや窮屈そうな3階建て+屋根窓がいくつかある屋根、1階中央には半円アーチの玄関があり、その前で下ひろがりの階段数段が地面に接している。
 左の円塔は鋸歯型胸壁をいただき屋根と同じ高さですが、右の円塔は屋根の下までで尖り屋根です。ただしすぐ奥にも角塔がのぞく。また左の塔のやはりすぐ奥、少し右に玉葱状のクーポラが見えます。このクーポラは後に別の視角から出会うことができるでしょう。後に約12分、カメラが上から下へ振られると、右の円塔の尖り屋根から小塔だか煙突がたちあがり、次いで奥の角塔が鋸歯胸壁とやはり角に小塔をはやしているさまが見られます。
 双方の円塔の脇、左右に低い塀が伸びています。すぐ後に左側は少しして尖り屋根に二階建ての小塔があることがわかるでしょう。その背後さらに左へ塀は伸び、鋸歯をいただいていました。右側のやはり鋸歯の塀はさらに後、少ししておそらくは城門となります。
 城の手前は広場状をなし、そのさらに手前、左斜めへと石橋がかかっています。あまり幅がありそうには見えませんが、後に自動車一台なら通れることがわかる。橋の下は濠だか川で、左からぐるっと右へ、城門の方まで巡っています。
 なお城の外観は、この場面を始めとして昼間であればけっこうそれらしく見えるのですが、約15分と約30分、夜の場面になったとたんいかにも模型然とするのはどういった事情なのでしょうか。またフロリダ再建後はピカピカに磨きあげられ、これまたいかにも模型らしい。なおフロリダの場面でも、故地での石橋と同じ位置に橋が掛けられていました。水路にはヴェネツィア風のゴンドラが浮かぶことでしょう。


 次に登場するのは広間です。まずは酒樽、その左にはやや左上がりの階段、右には扉があります。酒樽の上の壁には肖像画がかかっている。酒樽のところから右へ進むと、切り替わって左向きの椅子、その向こう右手には大きな暖炉が見えます。その左手には背の高い大窓があって、桟の影を左下斜めに落としている。この窓は暖炉の壁より少し奥まっており、出窓のようになっています。この出窓は後に約1時間1分、再建後とてよほど遮音性がいいのか、窓をはさんでペギーとドナルドが会話しますが相手の声はさっぱり聞こえないことでしょう。戻って窓からさらに角をはさんで左に扉、これは先ほど映ったものでした。
 角度が変わると、暖炉の右手にも窓があり、今度は右下斜めに桟の影を落としています。さらに右で角となるのですが、その右手、先ほどの扉と向かいの位置に来る壁がなかなかに印象的です。格子状に交差する木骨で区切られているのです。さらにこの木骨壁は、上方で手前へ湾曲しています。後の場面で、湾曲は途中で止まりあらためて垂直に天井まで伸びることがわかるでしょう。この垂直部分は斜め格子で区切られ、各区分の内側は四つ葉をなしています。いずれにせよ天井はかなり高い。
 木骨は下方左端で少し奥まって奥への尖頭アーチ通り口を開いています。後に右端にも同様の通り口が見えるはずです。加えてやはり後には、通り口分の高さまでは、木骨の間が向こうに抜けていました。さらに木骨自体、わざと粗く削ったかのような仕上げなのです。
 翻って暖炉のある壁も上方で湾曲しており、かつ木製の持送り(?)が間を置いて並んでいました。暖炉の上にはかなり背の高い斜面、いわゆるスモーク・フードが載っています。また暖炉上辺には"ANNO 1558 M.GLOURIE"(1558年 M.グローリー)と刻まれていました。ちなみに後の場面でこの城は、築600年と語られます。
 暖炉の向かい、木骨壁の右下に右上がりの階段が見えます。この階段は先ほど酒樽の左にあったもので、左右を欄干にはさまれて奥へ7段上がっています。木製です。あがった先で左へ欄干が伸びる。しかし少し奥で、階段はもう1度上へあがります。あがった先でも同じく左へ欄干が伸びています。階段の右手は壁で、左は二層をなす短めの通路になっているわけです。一層目の左端には木の扉、二層目の左端には下の扉の面より少し奥まって、尖頭アーチの開口部が控えている。後の場面で、階段の親柱から上へ木の柱が伸び、左へのアーチをなしていること、二層目の奥に窓のあること、また一層目あがって右手の壁に開口部のあることがわかります。この開口部を下りた先は、酒樽の右の扉を抜けた先に通じているということになるのでしょう。なお約30分、玄関と広間の扉の間には、狭い控えの間のはさまっていることがわかります。


 古城映画的山場は約14分、真夜中の12時を時計が打ったところから始まります。幽霊となったマードックが暖炉の前から背を向け、酒樽右の扉を透過します。女の悲鳴が響く。
 切り替わると、低い位置のカメラがとらえるのは奥へ伸びる通路です。すぐ左は角をはさんで石組みの壁でした。手前から1~2段上る。左の壁少し奥からは雲形とで呼べようか、幾度かうねる曲線からなる縦長の奇妙な仕切りのようなものが飛びだしています。すぐ奥にももう一つ平行しており、間に扉があるようです。後の場面からすると、この城では寝室の類の扉はこうした仕切りではさまれているらしい。
 曲線仕切りのある壁と向かいあうのは、幅の広いアーチをいただき、2段ほど上る開口部です。この右手にはまた通路が伸びているようでした。このあたりは白壁です。
 アーチと曲線仕切りのある壁にはさまれた廊下は石床で、奥でまた2~3段のぼりになります。さらに奥、左にガラスのはまった扉、その右下方で右へ欄干が伸びています。後の場面からするとこの欄干の向こうは屋外らしい。
 さて、この空間をまず、手前左から二人の使用人が背を向け右へ、数段あがったアーチの脇に隠れます。続いてマードックの幽霊がやはり背を向け現われる。
 切り替わると、こわごわ覗くアーチの陰の2人の背から同じ空間を見た視角になります。先ほどとは逆に右に曲線仕切りのある壁が来る。2人は画面の手前右端にいます。曲線仕切りの壁は左方で途切れ、その左では下から光が射している。ここからマードックの幽霊が出てきます。後にここは下への階段につながることがわかるでしょう。さらにその左、またアーチがあってその向こうはのぼり階段のようです。アーチの左側、数段分高くなったところでは、左端にやはり曲線仕切りがのぞいています。また正面左寄りには方形の開口部があって、ここへマードックの幽霊は入っていく。後の場面から、この向こうも屋外に面しているらしい。この空間は約1時間15分、再建後のすっかりぴかぴかになった様子を見ることができるでしょう。
 戻るとまた切り替わります。背を向けたマードックが進むのは、屋上のようです。正面奥には壇上に白っぽい玉葱屋根のクーポラがありました。オジー・ドーム ogee dome というか葱花(そうか)形と呼んでいいのでしょうか。壁のない骨組みだけのようです。手前右に5~6段の上り階段があります。これが外観が映った際、左の円塔のすぐ右奥に見えたものなのでしょう。その際は壁無しには見えなかったのですが。
 クーポラの右手には何やら装飾的な鉄の門のようなものが見えますが、詳細はわからない。左側には鋸歯胸壁の並びが二本、向きを違えて走っています。また右手前は粗石積みの壁で、その左上、上に行くに従って広くなる円盤を積み重ねたようなものが突きでています。後にもこの角度以外では映らないので、これが何かはよくわからないのですが、小塔を支える持送りででもあるのでしょうか。


 20世紀に移れば、夜の外観と広間の様子をはさんで、位置はよくわからないのですが、台所が登場します。半円アーチのさほど大きくない木の扉から入ると1~2段下ります。右手には屋内井戸がある。また左は高い所に窓のある部分をはさんで、壁が手前へ折れ曲がる。手前へ出た部分は左へ開いているようです。そしてその左、低く幅の広いアーチが伸び、その奥にオーヴン等が配されているのでした。

 右奥から家政婦(?)が出てきて、手前へゆるく曲がる廊下を進んできます。左右の壁にそれぞれ雲形仕切りがでていました。前の廊下とは別の場所なのでしょうか? この廊下は再建後、約1時間7分と約1時間13分に再登場することでしょう。
 とまれ左の扉を入った先がドナルドの部屋でした。壁には鏡板が張られています。各板は四辺の中央から垂線が伸びて中央のダイヤモンド形を支えている。入口の向かいはフランス窓で、その先はバルコニーのようです。
 後にはペギーが泊められる部屋も登場します。やはり鏡板貼りで、暖炉が浮彫装飾だらけでした。


 約19分、ドナルドがペギーを案内します。広間の階段を二層目まであがり、切り替わるとマードックの幽霊が通った空間です。雲形仕切りの左、下への階段から上ってきます。雲形仕切りにはさまれた扉の先は、スコットランドのメアリー女王の部屋だったという。いったん入ってまた出てきて、奥を右へ曲がる。切り替わると広間の階段を、2人、次いで借金取りたちがぞろぞろ降りてくるのでした。

 約24分、食堂が登場します。中央に長テーブルを配し、向かって奥の席についた父マーティンの奥の壁は円筒状に湾曲しているようです。左右どちらかの円塔内にあるのでしょうか。粗石積みで、上で梁が横切っています。右奥に奥まって扉、その左に尖頭アーチ窓があり、その間には大きなタピスリーが掛かっています。タピスリーの上には二つ、縦長の窓がある。手前右に円柱がのぞいている。
 先ほどの扉の向かい、ドナルドの背後、右に扉があり、こちらの壁は方形をなすのでしょう、角をはさんで左にも別の扉が見えます。
 ペギーの坐る窓がある壁の向かい、母マーティンの背後には、台所にあったのと同じくゆるく低い幅広アーチがかかり、その奥に暖炉らしきものがあります。アーチの奥では手前にも小アーチが伸びています。またその右手、数段のぼって扉口が開き、ここからバグパイプ隊が入ってくるのでした。
 食堂はフロリダ再建後も登場します。約1時間4分、バグパイプ隊が出てきた扉から今度はドナルドが登場することでしょう。


 約33分、カメラが左から右へパン、鏡板の壁の廊下です。扉の前で一度止まってまた右へパン、また扉の前で止まってまた右へ。こうしたパンないしドリーはその後何度か見られることでしょう。
 切り替わると、右上がりの階段の欄干が近い位置で真横からとらえられます。あちこち蜘蛛の巣がからまっている。薄暗い。カメラは右上へ上昇します。
 格子のはまった窓越しにペギーの部屋がのぞきこまれます。物音に扉を開くと、その先が屋上でした。ペギーはマードックと出会いますが、ドナルドの扮装だと勘違いする。マードックはなぞなぞつづりを仕掛けます。
 マードックの背後には尖り屋根の先が見えます。約37分、2人が右へ動くと、左からクーポラ、尖り屋根、円盤積み重ね持送りが向こうに並ぶ。カメラも左から右へ鋸歯型胸壁越しにドリーします。
 屋上は再建後、約1時間8分、まずペギーが、追ってドナルドが合流することになる。この時はペギーは前とは逆に、ドナルドをマードックだと誤解します。ペギーの背後に装飾的な門状のものとやはり金属の華奢な手すりが見えます。さらに約1時間16分、間に広間の一場面をはさみつつ、終盤も屋上で迎えることでしょう。


 なお城内には約38分、晩餐の翌日ドナルドと父マーティンが売買交渉をする部屋が登場、広間とも食堂とも別のように見えましたが、定かではありません。

 いかにも模型らしい船、仮装パーティーに続いて約44分、時計が12時を打つと、カメラが右から左へドリーします。船倉です。マードック出現、次いで甲板だか船員用の廊下をカメラは右から左へ、扉の一つの前で止まると、今度は客室廊下を右から左へ、また扉の一つの前で止まります。これは幽霊の進むさまを表わしているらしい。
 甲板でのペギーとの再会、舞踏室での幽霊騒ぎをはさんで、約50分、今度は船外から丸窓の並びをたどって右から左へドリーしたりします。
 また約58分、これまたいかにも模型然とした夜の摩天楼街もお目見えです。
 約33分で幽霊が通った鏡板貼り廊下と同じ場所でしょうか、約1時間15分、再建後ある人物が左から右へ走ります。カメラもそれを追う。1段下りて白壁の廊下になり、装飾的な仕切り門をくぐるとまた鏡板貼りになります。少し進むと廊下の端でしょうか、壁には鏡がかかっているのでした。


 幽霊として200年間さまよう原因、そして救済をもたらすのが、善悪だの怨念等とは関わりなく、一族の名誉にまつわるというのは面白がれる点かもしれません。あわせて、マードックに指令するのが神様だの天使ではなく父であり、昇天がイコールご先祖さまに逢うことだというのも、同じ事態の現われなのでしょう。
 また本作のモティーフの一つである英米文化の対比・対立は、『天国への階段』(1946)などでも見られましたが、彼らにとってかっこうのくすぐりネタなのでしょう。本作の原作であるエリック・コウン Eric Keown (1904-1963)Sir Tristram Goes West (『パンチ』誌の許可を得てということは漫画か? )については詳らかにしないのですが、幽霊喜劇という点もあわせて思い浮かぶのは、オスカー・ワイルドの短篇「カンタヴィルの幽霊」(1887)です。冒頭で挙げた『乙女の星』や『幽霊と未亡人』も含めて、この手の噺の元の一つではないのかというのは、しかし、単なる当方の無知がしからしむところなのでしょう。
 とまれ、広間の木骨壁と階段、上階の廊下と曲線仕切り、鋸歯型胸壁付き屋上とクーポラや持送りや金属装飾などなどが、何度か繰り返された左右へのカメラの動きと合わせ、本作を古城映画として愛でるに値するものとしているのでした。

Cf.,  上で引きあいに出したワイルドの短篇の邦訳は;

ワイルド、福田恆存・福田逸訳、『アーサー卿の犯罪』(中公文庫 C18)、中央公論社、1977、pp.63-108:「カンタヴィルの幽霊 - 物是心論的ロマンス -」

別訳が;
ワイルド、南條竹則訳、『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』(光文社古典新訳文庫 K Aワ 1-3)、光文社、2015、pp.79-134:「カンタヴィルの幽霊 - 物質観念論的ロマンス -」

後者の「解説」によると平井呈一訳もあるそうです(p.299)。

原著は;

Oscar Wilde, "The Canterville Ghost', 1887
 2017/12/25 以後、随時修正・追補
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