ホーム 宇宙論の歴史、孫引きガイド 古城と怪奇映画など 美術の話 おまけ
乙女の星
Sylvie et le fantôme
    1946年、フランス 
 監督   クロード・オータン=ララ 
撮影   フィリップ・アゴスティーニ 
編集   マドレーヌ・ギュ 
 美術   リュシアン・カレ 
 装飾   ジャック・クラウス 
 セット装飾   ガロー、ラヴォー 
 衣裳デザイン   クリスティアン・ディオール、クロード・オータン=ララ 
    約1時間33分 * 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

DVD
* [ IMDb ]では1時間37分、ウィキペディア仏語版該当頁(→こちら)では1時間42分
………………………

 『幽霊西へ行く』(1935)ともども幽霊の出てくる喜劇であると同時に、大古城映画です。階段はいくつも出てくるし、廊下にも事欠きません。斜め格子の影があちこち落ち放題です。屋根裏の通路も面白い眺めを見せてくれます。あまつさえ隠し扉が二つ登場します。上記のごとく手もとにある版はカットされているようですが、手短かに取りあげることにしましょう。

 美術監督のリュシアン・カレには同じ年公開の『美女と野獣』(1946)を先に見ました。
 衣裳デザインのクリスティアン・ディオールは何かと見憶えのある名前かと思います。
 また本作で台詞のない幽霊に扮するジャック・タチは、同じオータン=ララによる『肉体の悪魔』(1947)への出演に続いて、『ぼくの伯父さん』(1958)や『プレイタイム』(1967)などを自ら監督・脚本担当・主演したことで知られています。今挙げた二作はまた、映画における建築やセットという点でもしばしば取りあげられる作品でした(→こちらそちら、またあちらをご参照ください)。


 男爵家の娘シルヴィ(オデット・ジョワイユ)が住む城の一室に、好んで白い服を身につけたことから「白の狩人」とあだ名されるアラン・ド・フランシニーの等身大肖像画がかかっていました。愛犬のピラムもかたわらに描かれている。アランはシルヴィの祖母アデレーヌに思いを寄せていたのですが、彼女は人妻で、真夜中にその夫と決闘、白い服は目立つため死んでしまいます。そんなアランにシルヴィは憧れを抱いていました。
 しかしシルヴィが16歳の誕生日を迎えるその前日、城を維持するため、父のエドゥアール男爵(ピエール・ラルケ)は肖像画を画商のダマに30万フランで引き渡してしまいます。絵を収めた木箱からはアランの幽霊(ジャック・タチ)が愛犬ともども抜けだすのでした。やはりピラムという名のシルヴィの黒犬が犬の幽霊に吼えかけ追いかけ回します。
 とまれ肖像画がなくなったことを知り沈むシルヴィの様子に、父男爵は一計を案じます。近くを通りかかった劇団から役者に来てもらい、翌誕生日のパーティーで幽霊として登場してもらおうというのです。夜中、しかし役者アニセ(ルイ・サルー)だけでなく、城に忍びこんできた泥棒ラミュール(フランソワ・ペリエ。コクトーの『オルフェ』(1950)や『オルフェの遺言』(1960)、ジャン=ピエール・メルヴィルの『サムライ』(1967)等々に出演)、シルヴィを心配して城に残った画商の息子フレデリック(日本語字幕では約1時間24分まで名前が出ませんでした。ジャン・ドザイー。トリュフォーの『柔らかい肌』(1964)など)までが鉢合わせしてしまいます。
 かくして約44分、当日を迎えます。父男爵と執事のエクトール(ジュリアン・カレット)が準備を整え、ラミュールは最初素顔で、後にフレデリックとそれぞれシーツをかぶった状態でシルヴィと話し、他方アランの幽霊は何とかシルヴィとコミュニケーションをとろうとする。憲兵もラミュールを追っています。いかが相成りますことやら……以上が大まかな粗筋です。

 雲海をバックにしたオープニング・クレジット、カメラは下降していき、平原を見渡します。尖塔の天辺が入ってきたかと思えば画面は明るくなり、城の外観を見下ろすのでした。
 城は大まかに右へ開いたコの字ないしU字型をしているようで、右奥の高い円塔から左へ棟が伸び、少し低い角塔で手前へ折れる。今度は張りだした円塔でまた折れて右へ戻ります。手前右は円塔、その奥と最初の高い塔の間は棟がL字状に畳みこまれているようにも見えますが、定かではありません。土台の上に二階分の窓、背の高い三角屋根となるらしい。
 ほぼ同じ外観は約25分、夜の場面で登場します。この際手前に山があることがわかり、そこから背を向けた幽霊が城を見下ろすことでしょう。夜の俯瞰にはラストでもう1度出会うことができます。
 屋外の眺めは実物をロケしたように見えます。 [ IMDb ]にもウィキペディア仏語版該当頁にも記されていないのですが、だとするとどこで撮影されたのでしょうか?


 部分的な外観は約16分、画商たちが肖像画を収めた木箱を運びだした、その背後に映ります。全体を俯瞰した際とはコの字の逆の位置で、先が円塔になった平行する二つの棟が右へ伸びています。
 夜景俯瞰に続いて約26分、木と馬の親子の向こうに今度は左から棟が伸び右端に円塔がついている。地面は斜面になっています。すぐに続き、また逆に右から伸びて左端に円塔、やや斜め下から見上げられます。
 この後地面から右上がりの階段が7~8段、壁沿いのヴェランダにつながり、すぐ向こうで壁が左右へ伸びます。尖頭アーチの細長い窓が並び、この並びに入口があるようです。入口付近は後にも登場しますが、城の外観は以上で全てでした。これ以外は全て城の中でお話が繰りひろげられることでしょう。


 戻って屋内で最初に登場するのが肖像画の部屋です。上から見下ろすカメラ、奥の壁には尖頭アーチ窓が二つ並び、そこに交わる右の壁に肖像画がかけられているのですが、こちらの壁は奥の壁と直角をなすのではなく、やや斜めになっていました。窓の斜め格子の桟の影が石畳の床を始め、あちこちに落ちています。この部屋には他に暖炉、肖像画の脇にペンを入れたガラス・ケースを置く小机、壁には猟銃が何丁かかけてありました。後に肖像画の壁の右に尖頭アーチのあることがわかるでしょう。
 さて約5分、早々に肖像画が手前に開かれ、隠し階段への扉がお目見えです。階段室の壁は石積み、螺旋階段の中央は宙空です。階段は下へとくだっていきます。中は暗く、燭台を手にしたシルヴィが子どもたちを案内する。
 下りた先・右、踊り場をはさんで、また5~6段下がる。奥正面と角をはさんで左の壁にそれぞれ幅の広い半円アーチ口があり、鉄格子がふさいでいます。この格子は後に落とし戸であることがわかるでしょう。
 シルヴィたちは正面の格子についている扉を開いて中に入ります。中でまた1~2段下がりです。風で蠟燭の火が消える。無断侵入者がいました。後に画商の息子とわかるのですが、不法侵入にかわりはない。羨ましいかぎりではあるのですが。
 火がつくとこのあたりは間隔狭く柱が立っていました。天井も低く、柱頭が青年の頭の高さに来ます。オジーヴで区切られている。
 右奥・少し先で6~7段のぼりになり、鉄格子をはさんで右上から光が射しています。さらに先にものぼり段があり、屋外につながっているようです。
 青年がそちらへ去った後、シルヴィたちは左奥へ進みます。左へののぼり段の上に別の扉があり、そこを開くと、大広間の暖炉の中でした。


 暖炉のある壁はぐぐっと左へ伸び、その上がごつい欄干付きの中2階通路になっています。通路の向こうにはアーチが並ぶ。中2階の左端、同じ壁に沿って左上がりの幅広階段がありました。階段をあがって右で180度折れれば中2階通路になるわけですが、左へ90度にも通路が伸びています。その奥には大きな尖頭アーチ口、また下の1階部分にも半円アーチの扉がついています。後者では後にシーツかぶりフレデリックが出入りすることでしょう。
 シルヴィともう一人の娘が右から左へ、暖炉の向かいへと大広間を横切ります。カメラも左から右へ流れる。手前に低い柱頭の円柱、その奥、手前への壁の左に7段上り(後に下ひろがりであることがわかります)、踊り場をはさんで右上へ階段が続いています。踊り場からは左へ欄干付き通路が伸びている。ここは短く、アーチ口に入るとともに、通路の下・1階には扉がありました。後にここからエクトールが出てくることでしょう。また踊り場のすぐ左にもアーチ口があり、光が射しこんでいます。1階左手に戸外への扉がある。うっとりするほど入り組んだ造りであります。


 短い通路の向こうに父男爵と画商が隠れていました。二人はシルヴィたちと逆に右へ向かいます。切り替わると大階段側からの視角となります。先ほどの4分の1階通路の右にあった階段は、こちらから見ると円筒状の壁をなしていました。上で壁無しになるのか、螺旋状に上昇していきます。その左には二連半円アーチ、角をはさんで窓となります。大階段の向かいとなるわけです。
 大階段をあがって右へ直角の位置に(さらに右へ直角で暖炉の壁上中2階通路となる)、のぼり階段がありました。10数段あがって踊り場、窓があります。180度折れてのぼり、10数段で2階、左右へ廊下が伸びている。階段はさらに180度折れ、3階へと続きます。
 2階廊下は低めの柱とオジーヴで細かく区切られ、右端には窓が見えます。階段のすぐ向かい近くに父男爵の姉・伯爵夫人の部屋がありました。このあたり、壁にやたら斜め格子の影が落ちています。
 男爵と画商たちはさらに上へのぼります。3階では右前へ斜めになった短い廊下が伸びていました。低い欄干がついています。また奥の方も開口部があるようです。後にエクトールが屋根裏へ行く時に通るところでしょうか。その手前の天井は湾曲しており、何やら縞になっています。忘れないようにしましょう。
 橋状の斜め廊下に戻ると、手前でまた4~5段下ります。その先の扉が肖像画の部屋なのでした。男爵と画商たちはシルヴィに見つからないよう、約13分、隠し階段を使うことでしょう。運びだされる木箱にえらく複雑な影が落ちています。


 その後伯爵夫人の部屋、暖炉とピアノのある居間、シルヴィの部屋、父男爵の部屋が出てきます。男爵がエクトールに読ませていた大判の本のタイトルは、FANTÔMES ET REVENANTS でした。双方幽霊の意味ですが、どんなニュアンスの違いがあるのでしょうか? fantôme には「幻」の意味もあり、revenant は直訳すると「戻ってくるもの」となるのですが。また男爵の寝台の天蓋を支えているのは捻り柱でした。
 とまれ約32分、エクトールが男爵の部屋を出た先の廊下は右奥へ伸びるのですが、オジーヴと円柱が林立する中、その手前、左から右へ少し伸び、折れて右奥へ少し、そして4~5段下りれば廊下となっていました。ここの欄干の陰に後にラミュールと知れるベレー帽の若者が身を潜めている。欄干のすぐ向こう、男爵の部屋の扉との間には、別に左上がりの階段がのぞいています。エクトールは廊下を横切って右へ消えますが、廊下の奥左手に、左上がりでまた階段が見えます。おそらく大広間の階段を上ったその先で、2階3階へ続く階段なのでしょう。ラミュールはここを上っていきます。
 3階へ上がって肖像画の部屋への通路を通り、肖像画のないことに気づいて戻る。この時橋状通路を階段側から見ることができます。また階段を降りる足元がアップになると、欄干が二筋、縞状に影を落としていました。
 2階でシルヴィの部屋へ、カメオを盗んだところへ窓からフレデリックが入ってきます。つくづく不法侵入する青年であります。ちなみにラミュールは18歳、フレデリックは17歳とのことでした。
 二人は廊下に出ます。奥へ進む。突きあたりは窓です。斜め格子の影が落ちた右手の壁は、後に約1時間20分、シーツをかぶったアランが追っかけ回されるところなのでしょうか。
 この壁の奥、台座付き円柱をはさんで、4~5段奥へののぼり階段、踊り場を経て右へののぼりとなります。これは初登場したラミュールが潜んでいたところなのでしょうか。2人はその手前を右へ入ります。この空間には約1時間16分でも再会できます。その際追われるアニセがエクトールに匿われるのは、中2階からの階段の手前、右手すぐの扉でした。この扉の右、すぐに角となって窓付きの突きあたりです。つまりこの突きあたりから奥へ廊下は伸び、すぐに階段がある分奥の方がずっと長い、そして反対の突きあたりの手前に、ラミュールが潜んでいた別の階段があるという配置になるわけです。
 戻れば扉の前で吠える黒犬のカットをはさんで、約36分、螺旋階段が下から見上げられます。おりる2人とともにカメラは左から右へ、ごつい壁をはさんで出た先は大広間の暖炉の向かい、即ち隠し階段とは別の、大広間脇・入口附近の螺旋階段なのでした。涙無しには見ていられません。


 約44分、カメラが上昇すると、大広間でした、途中で梁が二本横切っています。そのさらに上、木組みらしい天井は向かって左へ湾曲していました。大階段の上です。幾本も筋状をなす曲がり梁には何か所か屋根裏窓が開いているとのことです。
 いったん画面が暗くなると翌日=シルヴィ16歳の誕生日の夜です。カメラは下へ、パーティーが開かれています。電気が故障して蠟燭しか灯りがないとのことでした。
 約45分、籠を手にしたエクトールが左上がりの階段を上がってきます。おそらく3階なのでしょう。肖像画の部屋とは逆、背を向け奥の方へ進みます。まず1~2段下り、少し進んだその先、左へ3段上がってすぐ踊り場、少し折れて右上へのぼり階段が7段ほど続きます。その先に半円アーチ口が見える。またこの階段の右手にも半円アーチ口がありました。この空間には後に約1時間14分、灯りの落ちた状態で再会できることでしょう。
 戻って切り替わると、天井が低く垂直の柱と斜めになった柱が梁を支える屋根裏部屋をはさんで、天井へ伸びる木の階段にのったエクトールが天井板をノックしていました。屋根裏部屋が二層になっており、天井の一部が揚げ蓋になっているわけです。下の部屋は板張りで、物置状の無愛想な体裁です。
 屋根裏二階にはラミュールとフレデリック、アニセが待機していました。こちらの天井は片方で、梁が大きく湾曲して床につながっています。それが何本も並ぶ。


 約48分、2階3階への階段は裏が剥きだしであることを映し、約50分、シルヴィ、続いてアランが2階から階段をおりる際シルヴィまで半透明になっている場面などをはさんで、約51分、長円形の窓から大広間が見下ろされます。かなり高い。これが屋根裏窓なわけです。
 すぐに屋根裏窓のある通路も映してくれます。左上から下へ湾曲する天井板、ここに窓が開いているわけですが、そのすぐ右が幅の狭い通路となって奥へ伸びています。右手の床は少し垂直になってからいったん右上がりの急な斜面の石積み壁が土台をなし、その上で垂直に白塗り壁が立ちあがる。こちらの壁に沿って垂直と左上がりの斜め柱が何本も連なり、他にずいぶん太い円柱も天井側に立っています。
 通路を奥へ進むと、途中で右に5段ほどのぼり階段が区切ってあり、その先が屋根裏部屋2階でした。


 屋根裏2階にも大きな鏡がありましたが(隣の壁に自転車が立てかけてあり、影と複雑に入り交じったりします)、約1時間、2階廊下の壁にかかった楕円形の鏡に階段脇のシルヴィとシーツかぶりラミュールが映りこんだり、約1時間2分、シルヴィが鏡を見ている間に、階段を上るシーツかぶりラミュール、次いでアランが映ったりします。鏡が画面を大きく占めるさまには、約1時間31分、ほぼラスト近くでもう1度再会できることでしょう。ただしこの際の鏡はやはり廊下の壁にかかっているのですが、不規則な形状をしています。位置は階段附近ではなく、廊下の奥の方のようです。
 戻って約1時間3分には、屋根裏2階と通路、間の壁がほぼ真上から一気に見渡され、壁をすり抜けるアランをとらえます。
 大階段左の中2階通路の下の半円アーチ扉がぎぎ~と音を立てて開き、シーツかぶりフレデリックが登場、皆が逃げ去った後1人残ったシルヴィと会話する場面では、シルヴィの背後でカーテンが風に揺れたり、シーツかぶりフレデリックの背後に、ランタンを持つシルヴィの影だけが動いたりします。


 約1時間20分、ラミュールを追う憲兵二人が俯瞰される屋根裏通路、手前左で5段ほど上ると切り替わり、螺旋階段が見上げられます。シーツかぶりラミュールとシーツかぶりフレデリックがおりてくる。これは大広間脇の階段ではなく、隠し階段でしょうか。左の折れ曲がったところで、シーツかぶりラミュールはそのまま左へ入っていく。シーツかぶりフレデリックは下へ、憲兵たちもおりていきます。
 切り替われば大広間大階段左の通路下アーチ扉から、シーツかぶりが出てきます。俯瞰カメラは少し動く。中身はフレデリックでした。前に現われたのと同じ戸口から出てきたわけです。
 約1時間22分、低い半円アーチの下にくぼみがあり、その石壁が噛みあう石ごとにジグザグをなして奥へ開きました。第2の隠し扉であります。出てきたのはシーツかぶりラミュール、出た先はシルヴィの部屋でした。窓には車輪を抱えたアレクサンドリアの聖カタリナらしきステンドグラスがはまっており、下は濠なのですが、10メートルはあるとのことです。


 幽霊は物に触れて音を立てたりシーツをかぶったりはするのですが、シルヴィに直接語りかけることはできない。命のない物なら操れると解せるのでしょうか。ただケーキの蠟燭に息を吹きかけようとするシルヴィの前に手をかざし、火が消えるのを妨げるのは、息ないし空気の動きは無生物と見なされるのか。そもそもアランがシルヴィにちょっかいをかけようとするのは、彼女が祖母に似ているからということでいいのでしょうか。
 他方、恋を射止めるフレデリックではなくラミュールの方に描写の比重は寄っており、またついにシルヴィと意思を疎通できずに終わったアランの幽霊のことを考えると、夢想がちな少女が現実を受けいれるに至る過程を描くとまとめてしまえそうなお話が、しかし、そうした枠組みに回収されることを単純に是とするのではない、微妙なニュアンスが読みとれなくもないような気もしてきます。最後にアランが男爵たち一同の前に現われた時でさえ、シルヴィはフレデリックと廊下を歩いており、その様子を見ていない。
 とまれそうしたニュアンスをはらみうるのは、長々と真っ直ぐ伸びるのではなく、やたらと踊り場で曲がりたがる少なからぬ階段たち、廊下に屋根裏通路、そして斜め格子を始めとする影、隠し扉に鏡などなどがあればこそでしょう。
 思えば冒頭のシルヴィたちによる隠し階段下降に続く大広間横断、それを逆転して円を描くかのような父男爵と画商の大広間横断から階段を経て肖像画室までの上昇をはじめとして、何度となく登場人物たちによる上昇下降が描かれます。ラミュールによる窓から濠への飛び込みがある意味での締めと見なせるでしょうか。アランの幽霊も何度か床を透過して落下、一度は廊下で跳びあがり、最後近くに大広間で梁まで上昇、そしてラストの大上昇を演じます。大広間や廊下での往き来と交差しつつ、こうした上下行を容れる空間こそ、古城の名に値するものに他なりますまい。

Cf., 
 2017/12/29 以後、随時修正・追補
   HOME古城と怪奇映画など乙女の星 1946