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ユダヤ

 まずは;


ラビ・ルイス・ジェイコブズ、「ユダヤの宇宙論」、『古代の宇宙論』、1976、pp.61-80。
聖書の宇宙像/ラビ文献/マイモニデス/カバラなど

 Ⅰ  i 創世記』とその周辺
  ii 聖書偽典、黙示文学など
   iii クムラン宗団/死海写本など 
   iv アレクサンドレイアのピローン(アレクサンドリアのフィロン)とヘレニズムなど 
   v タルムードとラビ・ユダヤ教など 
   vi マガーリヤその他と天使論 
   vii ユダヤ思想史など 
   viii 神話、魔術など 
ユダヤ神秘主義
 ix ショーレムの著作とその周辺
 x ショーレム以後、その他
 xi メルカヴァー/ヘーハロート神秘主義など
ユダヤ神秘主義(承前)
 xii カバラー(カバラ、カッバラー)など
 xiii ルーリアのカバラーなど
 xiv サバタイ派(シャブタイ派)、フランク派など
 xv ハシディズムなど
 xvi キリスト教カバラ-、隠秘学的模作など
   xvii 応用篇など
    おまけ 

* たとえば中世以降のユダヤ神秘主義主潮流の一つは、カバラ、カバラー、カッバラー、カッバーラー等と表記されていますが、
ヘブライ語やアラム語の日本語表記は、勉強不足のため残念ながらわかりません。
 そこで、次の事典で見つけることができたものは、そちらに従いました;

長窪専三、『古典ユダヤ教事典』、教文館、2008

 あいうえお順、
640ページ。
 本書への書評→
手島勲矢、『日本の神学』、vol.486 no.0、2009、pp.107-112 [ < J-STAGE

 ただし、そこで見つからなかった場合は、別のところで見つけたものにならうか、ローマ字読みしたり、アルファベットのままだったりします。
 また、〈スフィロート〉(上記事典の表記)を〈セフィロート〉、〈シュヒナー〉(同)を〈シェキナー〉など、馴染みのある表記を用いている場合があります。
 他方、言及している資料が他の方法で表記している場合、引用は出典に従い、統一することはしません。
 ともあれ例によって、多々誤りもあろうかと思いますが、ご寛恕ください。

i. 『創世記』とその周辺

荒川紘、『東と西の宇宙観 西洋篇』、紀伊國屋書店、2005、pp.56-80;「第2章 唯一神による万物の創造 - ユダヤ教の宇宙観」
唯一神の誕生;カナン定住とヤハウェ信仰/バビロン捕囚/創造主としてのヤハウェ//
『創世記』の宇宙論;光と天地の創造/動植物と天体と人間の創造/もうひとつの人間創造の物語/エデンの園/ノアの洪水/旧約聖書の宇宙構造/旧約聖書の終末論/マカバイ王朝の興亡とユダヤ人など

Jean Bottéro, “La naissance du monde selon Israel”, La naissance du monde. Sources orientales Ⅰ, Éditions du Seuil, Paris, 1959, pp.185-234
「イスラエルによる世界の始まり」

 この論考には邦訳があります;

ジャン・ボテロ、角山元保訳、「聖書による宇宙の起源」、久米博監修、『神の誕生 メソポタミア歴史家がみる旧約聖書』、ヨルダン社、1998、pp.201-275
さまざまなテクスト 「創世記」の宇宙創成論;〈ヤハウェ資料〉の物語/〈祭司資料〉の物語//詩編104篇//ヨブ記にあるヤハウェの言葉//
さまざまな思想 神学的宇宙創成論;神学的宇宙創成論の特徴 創造主の人格、創造主の単一性、天地創造と宇宙統治との連続性、神の活動全体における天地創造の位置//
  宇宙創成論と一神教;創造主の人格(ペルソナ)と人/創造活動の叙法//
  宇宙創成論の中に隠れている神話世界;ヤハウェ資料の物語の場合 いわゆる世界生成説、人間と動物の起源論/捕囚後の宇宙創成論の場合 時間的枠組み、宇宙創成論、この宇宙創成論の神話的性格、この神話の起源//
  神話と神学など

 単行本の原著は
Jean Bottéro, Naissance de Dieu. La Bible et l'historien, 1993
 他の内容は;
第1部 聖書の普遍的メッセージ;聖書と歴史/モーセ以前/モーセおよびヤハウェとの契約/パレスチナ定住と政治的結果/パレスチナ定住の文化的・宗教的帰結/王国の分裂と初期の預言者たち/大惨禍の始まりと新たな預言者たち/《改革》/大惨禍の接近とエレミヤ/エルサレム陥落と捕囚/第二イザヤとヤハウェ信仰の絶頂/エゼキエルとユダヤ教の成立/古代ユダヤ教-その宗教生活と宗教思想/聖書の「真の偉大さ」//
聖書についての四つの研究;聖書最古の詩/創世記二25~三章の〈原罪〉物語/コヘレトの言葉と〈悪〉の問題//
聖書と歴史家としての私など、
374ページ。

 同じ著者による→こちらも参照:「メソポタミア」の頁の「ii. 神話、信仰等

………………………

 手もとにあるのは;

『聖書』、日本聖書教会、1976
旧約聖書 1955年改訳、1326ページ;(律法書;)創世記/出エジプト記/レビ記/民数記/申命記//
  (歴史書);ヨシュア記/士師記/ルツ記/サムエル記(上下)/列王紀(上下)/歴代志(上下)/エズラ記/ネヘミヤ記/エステル記//
  (文学書);ヨブ記/詩篇/箴言/伝道の書/雅歌//
  (預言書);イザヤ書/エレミヤ書/哀歌/エゼキエル書/ダニエル書/ホセア書/ヨエル書/アモス書/オバデヤ書/ヨナ書/ミカ書/ナホム書/ハバクク書/ゼパニヤ書/ハガイ書/ゼカリヤ書/マラキ書
新約聖書 1954年改訳、
410ページ→細目はこちら:「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「i. 『新約聖書』とその周辺


 また;

関根正雄訳、『旧約聖書 創世記』(岩波文庫 青 801-1)、岩波書店、1956/2004
274ページ。

 こちら(「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「おまけ」/ダニエレブスキー『紙葉の家』に関連して)で触れました

関根正雄訳、『旧約聖書 ヨブ記』(岩波文庫 青 801-4)、岩波書店、1971/2011
232ページ。

関根正雄訳、『旧約聖書 詩篇』(岩波文庫 青 802-1)、岩波書店、1973/2014
428ページ。

 ちなみに、もとの勤め先はブレイクの《ヨブ記》を所蔵しています→こちら [ < 三重県立美術館のサイト
 その作品解説を書いたことがあったりもしました→同上の内、第14図「明けの星が相共に歌う時」と第15図「ベヘモトとレヴィアタン」
 また→そちらも参照(「三重県立美術館ニュース」、第143号、2011/12/09 中の最後の方、「Meigaを探せ」第7回 [ < 「まぐまぐ!のサイト ])

 * 上記メルマガの記事は「2019年4月15日より無料バックナンバーの公開を停止しております」とのことでリンク切れになったため「追補」としてここに載せていた「Meigaを探せ! 第7回  『THEビッグオー』第17回「Leviathan」(1999年から2003年)(「三重県立美術館ニュース」、第143号、2011/12/09)は→あちらに引っ越しました < 「Meigaを探せ!」より、他 < 怪奇城閑話 

 それらで言及しているレビヤタンとベヘモットについては→後掲のここを参照:本頁「viii. 神話、魔術など」内

 ブレイクについては→そこも参照:「ロココ、啓蒙思想など(18世紀)」の頁の「v. ウィリアム・ブレイク(1757-1827)など
………………………

片桐哲、「ヒブル思想に表はれたる宇宙の形態に就いて」、『基督教研究』、vol.4 no.3、1927.6.30、pp.407-418 [ < DOORS 同志社大学・同志社女子大学 蔵書検索

民秋重太郎、「イスラエル天地創造説話について」、『基督教研究』、vol.24 no.1、1950.1.30、pp.33-47 [ < DOORS 同志社大学・同志社女子大学 蔵書検索 ]

城崎進、「ヘブル創造神話における chaos」、『オリエント』、vol.6 no.4、1963、pp.41-48 [ < J-STAGE

城崎進、「『無からの創造』とカオス」、『神學研究』、no.15、1966.12.25、pp.24-49 [ < KGUR 関西学院大学リポジトリ

相浦忠雄、「旧約におけるテホーム・モティーフ」、『神學研究』、no.13、1964.9.28、pp.1-21 [ < KGUR 関西学院大学リポジトリ ]

定形日佐雄、「'äheyäh 'ašär 'äheyäh について」、『オリエント』、vol.8 no.1・2、1970、pp.129-48 [ < J-STAGE ]

野本真也、「創世記第一章第一節に関する一考察」、『基督教研究』、vol.38 no.1・2、1974.2.18、pp.21-39 [ < DOORS 同志社大学・同志社女子大学 蔵書検索]

並木浩一、「旧約聖書の自然観」、、『古代の自然観 中世研究 第6号』、1989、pp.149-176
自然認識と自然感覚/救済史における自然/創造論における自然/自然の権利など

加藤潔、「祭司文書の創造物語」、『稚内北星学園短期大学紀要』、no.4、1991.3.6、pp.1-22[ < CiNii Articles

吉田泰、「旧約聖書におけるマーコーム・ヒエロファニー」、宮家準・小川英雄編、『聖なる空間 宗教史学論叢 5』、リトン、1993、pp.11-47
宗教学説史における「聖」理解とその周辺;R.オットーの「聖」理解の周辺/HOLY と SACRED について/エリアーデの「聖なる空間」について//
旧約聖書における「聖なる空間」、マーコームの意味論的理解;宇宙論的な秩序空間としてのマーコーム/祭司文書におけるマーコーム/神との出会いの場としてのマーコーム・ヒエロファニー/祭壇マーコーム・ヒエロファニー/申命記および申命記史家文書におけるマーコーム思想/預言文学と詩文学におけるマーコーム・ヒエロファニーなど


吉田泰、「旧約聖書祭司文書の創造物語」、月本昭男編、『創成神話の研究 宗教史学論叢 6』、リトン、1996、pp.61-154
創造物語の資料性と精神的故郷;祭司文書は独立した資料か/Pgの精神的故郷//
創造物語の構造と象徴言語 創造物語の構造;創世記一章一-二節の文体構造と機能/対応定型と保存命令/人間の創造物語の構造/是認定型、「これを見て、良しとされた」の機能/創世記一章三節-二章四節前半の構造と機能//
  創造物語の象徴言語;生の隠喩法(メタフォーリック)/神の似像である人間についての写像説と原像説/エジプトにおける神の似像メタフォーリックとPgのイマゴ・デイ/地を「生かせ」(カーバシュ)、生けるものすべてと「共生せよ」(ラーダー)/「生命の家」である被造世界/神は仕事を完成して休息された、など


吉田泰、「ヤハウェの太陽神的機能」、松村一男・渡辺和子編、『太陽神の研究 宗教史学論叢 8』(下巻)、リトン、2003、pp.83-116
ヤハウェと太陽神に関する研究史//
ヤハウェ太陽化現象の歴史的なアスペクト;
捕囚以前におけるヤハウェ太陽神化/「義」と「新しい生命」はヤハウェの太陽的機能//
太陽としてのヤハウェの実像など


長谷川三千子、『バベルの謎 ヤハウィストの冒険』(中公文庫 は 57-1)、中央公論新社、2007
1996刊本の文庫化
プロローグ ユニークな絵/おなじみの物語/「
律法(トーラー)」とユダヤ教/作者たち/本当の出だし/シュルムの園/罪(?)の物語/無からの創造/神の寵児、カイン/間奏曲/神の絶望とその克服/ジグラトの物語/エピローグ//
補注//
附録;ヤハウィストの原初史(全文)/P資料による原初史など、
440ページ。


秦剛平、「創世記に見られる天地創造とその創造主」、『創造性の宇宙 - 創世記から情報空間へ』、2008
第1の天地創造の物語/第2の創造物語に見られる人間の創造/サン・マルコ大聖堂の天地創造の天井画(13世紀)/13世紀に描かれた天地創造の画像/15世紀に描かれた天地創造の画像/16世紀に描かれた天地創造の画像/創造主はなぜ人間なのか?

大久保正健、「創世記における『創造』の概念」、『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部紀要』、no.7、2008、pp.59-79[ < CiNii Articles

野口誠、「創世記一章一節は、その一章の表題か」、『宗教研究』、vol.83 no.4、2010.3.30、pp.1386-1387[ < CiNii Articles

野口誠、「その地(創世記一・二a)は混沌であったか」、『宗教研究』、vol.85 no.4、2012.3.30、pp.1141-1143[ < CiNii Articles

ii. 聖書偽典、黙示文学など

 いわゆる偽典の内、宇宙論の歴史の上でもっとも興味深いのは;

『聖書外典偽典 4 旧約偽典 Ⅱ』、教文館、1975
ヨベル書/エチオピア語(第1)エノク書など、
392ページ。

 他の巻は;

『聖書外典偽典 3 旧約偽典 Ⅰ』、教文館、1975
アリステアスの手紙/第4マカベア書/シビュラの託宣(断片1-3、第3-5巻)/スラヴ語(第2)エノク書/ピルケ・アボスなど、
392ページ。

 とりわけ『シビュラの託宣』と『スラヴ語(第2)エノク書』


『聖書外典偽典 3 旧約偽典 Ⅲ』、教文館、1976
ソロモンの詩篇/シリア語バルク黙示録/第4エズラ書/十二族長の遺訓など、
510ページ。

 とりわけ『シリア語バルク黙示録』と『第4エズラ書』


『聖書外典偽典 別巻 補遺 Ⅰ』、教文館、1979
第3マカベア書/エレミヤ余録/預言者の生涯/ギリシア語バルク黙示録/モーセの遺訓、モーセの昇天ギリシア語断片/アダムとエバの生涯、モーセの黙示録/ヨセフとアセナテ/アブラハムの遺訓/ヨブの遺訓など、
658ページ。

 とりわけ『ギリシア語バルク黙示録』と『アダムとエバの生涯、モーセの黙示録』


 また;

関根正雄編、『旧約聖書外典』(上下)(講談社文芸文庫 セ A1/A2)、講談社、1998/1999

 の下巻には、『ソロモンの知恵』、『第四エズラ書』、エチオピア語/第一『エノク書』(抄)が収められています。
 なお本書は、『聖書の世界』(6巻+別巻4巻、1970-74)からの再録。
 他の内容は;
上巻 旧約聖書-聖典と外典-(新見宏)/第一マカベア書/ユデト書(抄)/トビト書/三人の近衛兵/ベン・シラなど、286ページ。
下巻 スザンナ/ベールと龍など、
310ページ。

 →こちらで少し触れました:「怪奇城の隠し通路」の頁

 再録元として;

『知恵と黙示 《聖書の世界》別巻 1・旧約 1』、講談社、1974
イスラエルの知恵(関根正雄)/黙示文学の世界(新見宏)/箴言/ソロモンの知恵/ダニエル書(8-12章)/第四エズラ書 七つの異象(3-14章)/エノク書(抄、エチオピア語版/第一)など、
358ページ。


 こちらも参照→
The Other Bible, 1984/2005
………………………

W.シュミットハルス、土岐健治・江口再起・高岡清訳、『黙示文学入門』(《聖書の研究シリーズ》 26)、教文館、1986
原著は Walter Schumithals, Die Apokalyptik. Einführung und Deutung, 1973
黙示文学の思想世界/黙示文学の本質/黙示文学研究の歴史/黙示文学と旧約聖書/黙示文学とグノーシス/黙示文学の起源-宗教史的関連/ユダヤ教における黙示文学の起源/黙示文学とキリスト教/メシアと人の子/黙示的文献/黙示文学の歴史的影響など、
296ページ。


K.コッホ、北博訳、『黙示文学の探究』、日本基督教団出版局、1998
原著は Klaus Koch, Ratlos vor der Apokalyptik : Eine Streitschrift über ein vernachlässigtes Gebiet der Bibelwissenschaft und die schädlichen Auswirkungen auf Theologie und Philosophie, 1970
この論争の書の目的//黙示のルネッサンス//
黙示とは何か 前提的明確化の試み;現行の諸概念の不明確性/文学類型としての
黙示書(アポカリプセ)の暫定的指標/歴史的潮流としての黙示(アポカリプティク)の暫定的指標/後期古代の文学における黙示の位置//
預言と黙示の間の大きな溝 ドイツ語圏の旧約学;預言の継続としてのイエス(預言者-接続-理論)/黙示的歴史理解?//
預言の影の中の黙示 英語圏の釈義;預言者の後継者、ファリサイ派の敵対者 - 旧約学者の見方/イエスは倫理的であり、黙示的ではない - 新約学者の立場//
イエスを黙示から救い出そうとする強引な努力 大陸の新約学;宗教史学派/一九二〇年から一九六〇年までの間のラビニズム研究の優位/非神話化プログラムの影響/厄介な来臨遅延/ヴィルケンスとケーゼマンの突出/ケーゼマンへの反応/黙示的背景に照らしてみたパウロとイエス - シュトゥールマッハーとシュトローベル/レスラーへの異議申し立てによる、古い立場への回帰 - ニッセン、ベッツ、マードック/黙示に対するフランスの抑制//
組織神学の終末論への方向転換;一九二〇年から一九六〇年までの間の非黙示的終末論/黙示的普遍史の復活 - パネンベルク/黙示的将来からの世界への反逆 - モルトマンとザウター//
神学外の思考における不安のモチーフとしての黙示;芸術と文学における黙示的イメージ/最近の哲学の歴史的問いの地平における人間存在の歴史性/社会学的問題設定の影響の下での哲学//
なぜ変わらねばならないのか 極めて主観的あとがき;ケリグマと
正典(カノン)/キリスト教信仰の唯一性など、
216ページ。


北博、「ユダヤ教黙示文学とグノーシス主義」、『グノーシス 陰の精神史』、岩波書店、2001、pp.161-172
方法論的前提/黙示文学とは何か/預言者の幻と黙示文学/時代的潮流としての黙示=グノーシス思想など

市川裕、「祭司的ユダヤ教の世界観 - エルサレム神殿と神の臨在 -」、『東京大学宗教学年報』、no.20、2003.3.31、pp.1-14 [ < 東京大学学術機関リポジトリ(UT Repository) ]

上村静、「古代パレスチナ・ユダヤ教における死後の世界と終末論」、細田あや子・渡辺和子編、『異界の交錯 宗教史学論叢 11』(下巻)、リトン、2006、pp.139-175
マカバイ戦争以前(前332-167年) 「寝ずの番人の書」(『第1エノク書』1-36章);堕天使の裁きと終末論(6-11章)/死者の霊魂の場(22章)/大いなる裁きの後の義人たち(25章)/裁きの場(26-27章)//
『エノクの手紙』(『第1エノク書』92-105章)//
ハスモン王朝時代(前167-63年) 『ダニエル書』/『夢幻の書』(『第1エノク書』83-90章)/『第2マカバイ記』/『ヨベル書』//
  クムラン文書;『感謝の詩篇』/『共同体の規則』//
ローマ時代初期(前63-後70年);『ソロモンの詩篇』/『たとえの書』(『第1エノク書』37-71章)/偽フィロン『聖書古代誌』//
神殿崩壊後(後70-132年);『第4エズラ書』(=『エズラ記[ラテン語]』3-14章)/『第2バルク書』(=『シリア語バルク黙示録』)など


ヴィクター・A・フェッソル、「地平線の圧制 - 巨人神話と繰り返される終末論的イマジネーション -」、『一神教学際研究』、no.2、2006.2、pp.17-39 [ < DOORS 同志社大学・同志社女子大学 蔵書検索]

 「メソポタミア」のページで挙げた;

佐々木光俊、『メソポタミアからの知的伝承 - 洪水の向こう側』、2008、第2-3章
第2章 『エノク書』とバビロニア文化;洪水前後の知/『エノク書』というテキスト/『ヨベル書』というテキスト/Watcher の知//
第3章 Watcher 外伝;Watcher を巡る問題/ニムロドとヨントン/「巨人の書」/アブラハムの星学など


大貫隆、『終末論の系譜 初期ユダヤ教からグノーシスまで』、2019、pp.15-119+注:「第一部 初期ユダヤ教の終末論」
預言者の終末論;アモス/民族史から世界史へ/天上の神殿//
バビロン捕囚以後の地上的・政治的終末待望;時代史/『トビト書』/死海文書/『ソロモンの詩篇』/十八祈禱文/福音書/隠されたメシア//
「天上の神殿」の表象と神秘主義;『寝ずの番人の書』(エチオピア語エノク書1-36章)/ダニエル書/『ヨベル書』と『レビの遺訓』/『たとえの書』(エチオピア語エノク書37-71章)/『スラブ語エノク書』/スラブ語『アブラハムの黙示録』/『イザヤの昇天』(イザヤの幻)/『ゼファニヤの黙示録』/『アブラハムの遺訓』、『イサクの遺訓』//
宇宙史の終末論;『第四エズラ記』(エズラ記ラテン語)/『シリア語バルク黙示録』//
イエス時代の政治主義的メシア運動;再来のエリヤ/モーセのような預言者


Martha Himmelfarb, Ascent to Heaven in Jewish & Christian Apocalypses, Oxford University Press, New York, Oxford, 1993
『ユダヤ教およびキリスト教黙示録における天への上昇』
エゼキエルから見張人たちの書へ/天界上昇と僧侶任官/変容と義なる死者/自然、原初の歴史、宇宙の秩序の秘密/著述としての黙示録など、
184ページ。


James C. VanderKam, Enoch. A Man for All Generations, University of South Carolina Press, Columbia, South Carolina, 1995
『エノク 全ての世代のための人』
経歴の始まり;創世記 5におけるエノク/第七の王に関するメソポタミアの伝承/比較した明証で照らされた創世記 5/創世記 5:21-24 のギリシア語訳//
初期のエノク冊子;天文の書(『第一エノク書』 72-82) エノクの状況、天文の書の内容/見張人たちの書 エノクの状況、見張人たちの書の内容//
2世紀のエノク冊子;序論/諸週の黙示録(『第一エノク書』 93:1-10、91:11-17)/『第一エノク書』 83-84 における黙示録と動物の黙示(『第一エノク書』 85-90)/エノク書簡(『第一エノク書』 91-107)//
その他の初期資料;『アラム語レビ文書』/イェシュア・ベン・シラの知恵/エウポレモス偽書/『ヨベル書』/クムランにおけるエノク/ソロモンの知恵/エノクのたとえ(『第一エノク書』37-71)//
後期のユダヤ教資料;『十二族長の遺訓』/『シビュラの託宣』/ピローン/ヨセフス/偽ピローンの『世界古代誌』/『第二バルク書』/『アダムとエバの生涯』/『アブラハムの黙示録』/『第二エノク書』/ラビ文献におけるエノク/タルグムにおける創世記 5:21-24//
新約聖書と初期キリスト教のテクスト;新約聖書/初期キリスト教のテクスト//
附録;〈正典〉の視野から見たエノク文献など、
218ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:本頁下掲の「iii. クムラン宗団/死海写本など


Christopher Rowland, The Open Heaven. A Study of Apocalyptic in Judaism and Early Christianity, Wipf and Stock Publishers, Eugene, Oregon, 2002
原著は1982刊
『開いた天 ユダヤ教と初期キリスト教における黙示文学の研究』
黙示文学とは何か?;啓示を通した神的秘密の知識/黙示文学と終末論/黙示録と黙示文学//
天の秘密の内容;上にあるもの:神、天使の秘密と天文学/下にあるもの:人とその言葉/かつて起こったこと:黙示文学における過去の歴史への関心/来るべきもの//
黙示文学の起源と諸黙示録の年代を理解するために;黙示文学の起源に関する近年の研究の概観/黙示的ヴィジョンの起源を解明する試み/諸黙示録を年代決定する//
初期ラビ・ユダヤ教における秘教的伝承;ラバン・ヨハナン・ベン・ザッカイとその周辺における車輪の章についての瞑想/ラビ・アキヴァの時代における秘教的伝承によって課された諸問題//
初期キリスト教における黙示文学;紀元後200年までの初期キリスト教文学における幻視の報告/ヨハネ黙示録など、
576ページ。

iii. クムラン宗団/死海写本など

E.M.ラペルーザ、野沢協訳、『死海写本』(文庫クセジュ 321)、白水社、1962
原著は E.M. Laperrousaz, Les manuscrits de la Mer morte, 1961
クムラン居住地の発見;場所/作戦の経過/キルベト・クムランとフェシカの発掘//
クムランの蔵書の構成;概観/聖書の写本/洞穴の3Qの銅の巻物//
クムラン宗団の組織;宗団の階級構成/会員の心がまえ//
クムラン宗団の儀式と信仰;儀式/教理//
義の教師;義の教師は祭司の出である/義の教師は祭司であり宗団の立法者である/義の教師は迫害され、ダマスコへ追放される/立法者の死後、宗団はこの人物にどのような態度をとったか//
クムラン宗団とユダヤ教の諸宗派;クムラン宗団とキリスト教以前のユダヤ教諸宗派/クムラン宗団とキリスト教など、
158ページ。


日本聖書学研究所編、『死海文書 - テキストの翻訳と解説 -』、山本書店、1963
総説 死海文書の全容/宗規要覧・会衆規定・祝福の言葉/戦いの書/感謝の詩篇/ハバクク書註解、ミカ書註解、モーセの言葉、奥義の書/外典創世記/ダマスコ文書など、
348ページ。


ジェームス・C・ヴァンダーカム、泰剛平訳、『死海文書のすべて』、青土社、2005
原著は James C. VanderKam, The Dead Sea Scrolls Today, 1994
 訳は1995刊本の新装版
諸発見 はじめに//
クムランで発見された巻物;最初の洞穴(第一洞穴)/他の洞穴/クムランの廃墟/発見された巻物の年代決定の方法/他の仮説//
写本概説 聖書関係のテクスト;聖書関係の巻物/タルグム/テフィリンとメズゾート//
  外典と偽典のテクスト;外典/偽典//
  他のテクスト;聖書関係の文書の註解/パラフレーズ/法規関係のテクスト/礼拝のための文書/終末論的な文書/知恵のテクスト/銅の巻物(3Q15)/記録文書的なテクスト//
クムラン・グループとは? エッセネ学説;大プリニウスの証言/クムランのテクストと、エッセネ派の信仰と慣習//エッセネ派説の問題;入会手続き/結婚/エッセネ派の名称について//
  他の説;サドカイ派説/エルサレム起源説//
クムランのエッセネ派 クムラン・グループの歴史の素描;クムラン期以前/クムラン期//
  クムランの思想と慣習の素描;予定論/二つの道/新しい契約の共同体/聖書関係の文書の解釈/礼拝/終わりのときとメシア//
巻物と旧約聖書 ヘブル語聖書(旧約聖書)のテクスト;旧約聖書の諸文書の著作年代/テクストについてのクムラン以前の証言/クムランの貢献//
  いくつかのテクストの歴史についての新しい情報;詩篇の書/ダニエル書四//
  聖書の正典;クムランの外からの証拠/クムランからの証拠//
巻物と新約聖書 はじめに//巻物と新約聖書の間の類似点;言語とテクスト/登場人物/慣習/終末論//
死海の巻物論争;巻物の編集と出版/一九八九年以降の出来事など、
386ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:本頁上掲の「ii. 聖書偽典、黙示文学など


土岐健治、「死海文書と新約聖書」、『現代思想』、vol.26-5、1998.4、「特集 聖書は知られているか」、pp.174-185
クムラン文書概観/クムラン神学の根底/神の王国とメシア/復活/「やがて現れるべき秘密」など

原口尚彰、「死海写本『安息日の犠牲の歌 (4QShirShabb; 11QShirShabb; MasShirShabb)』の天使論」、『オリエント』、vol.41 no.1、1998、pp.65-77 [ < J-STAGE ]  

iv. アレクサンドレイアのピローン(アレクサンドリアのフィロン)とヘレニズムなど

平石善司、『フィロン研究』、創文社、1991
フィロンのロゴス論;序論 - 課題と方法 -、付 資料について/フィロン哲学の中心問題としてのロゴス論/フィロンにおける「ロゴス」の用語法/フィロンにおける「ロゴス」の意義 - 「ロゴスの二重性(象徴的相関性)」 -/神と「ロゴス」 - 「類型」としての「神のロゴス」 -/世界と「ロゴス」 - 「世界法則」としての「神のロゴス」 -/人間と「ロゴス」 - 「人倫の原理」としての「神のロゴス」 -//
フィロンと初期キリスト教思想;フィロンとキリスト教 - とくにパウロとの対比を中心として -/宗教と文化に関する一考察 - アレクサンドリアのクレメンスの神観を中心として -/アレクサンドリアのクレメンスの倫理思想 - とくに「覚知者」(完全なキリスト者)の理想像について -/トマス・アクィナスの「Synteresis」論/付 「エウダイモニア」 - アリストテレス倫理学の性格 - など、
434ページ。

 本書の書評→
田辺明子、『日本の神学』、no.31、1992、pp.140-145 [ < J-STAGE ]


グッドイナフ、野町啓・兼利琢也・田子多津子訳、『アレクサンドリアのフィロン入門』、教文館、1994
原著は Erwin R. Goodenough, An Introduction to Philo Judaeus, 1940/1962
フィロン研究の方法/フィロンの著作/政治思想家/ユダヤ人/哲学者-形而上学/哲学者-人間と倫理/神秘主義/文献に関する付記など、
306ページ。

 p.170 には、フィロンにおいて、「神とその諸々の力とが一つになって七重の神性を構成する」さまの模式図が掲載されています。
 同じ著者による→こちらも参照:本項下掲の Jewish Symbols in the Greco-Roman Period. Abridged Edition, 1953/1988/1992


ケネス・シェンク、土岐健治・木村和良訳、『アレクサンドリアのフィロン 著作・思想・生涯』、教文館、2008
原著は Kenneth Schenck, A Brief Guide to Philo, 2005
フィロンのパズルのかけら/フィロンの生涯と著作/ユダヤ人と異邦人の中でのフィロン/フィロンの世界観/フィロンとキリスト教/フィロンの著作概略/フィロンの全著作への主導索引など、
306ページ。


Émile Bréhier, Les idées philosophiques et religieuses de Philon d'Alexandrie. Troisième édition, Libraire philosophique J. Vrin, Paris, 1950
『アレクサンドレイアのピローンの哲学的・宗教的諸理念 第3版』
ユダヤ教 ユダヤ民族//ユダヤの法;ピローンによるユダヤの法/立法者たちの批判/立法者/『律法の註解』/政治的統治//
  寓意的方法;ギリシア人たちにおける寓意的方法/ピローン以前のユダヤ人たちにおける寓意的方法/ピローンとユダヤ人敵対者たち//
神、仲介者と世界 神//ロゴス;ストア派によるロゴス論/分割者ロゴス/可知的存在としてのロゴス/媒介としてのロゴス/神的な言葉としてのロゴス/神話的存在ロゴス//
  諸仲介者 Ⅰ;神的なソピア/神的人間/天使たち/神的な霊//
     Ⅱ 神的な諸力;諸力の理論の根拠としての神的礼拝/神話的存在としての諸力/可感的世界//
  宇宙;宇宙論的な諸理論/宇宙的礼拝//
霊的礼拝と倫理的進歩 預言と脱自;予見/脱自//
  霊的礼拝;懐疑主義と信仰/内的礼拝における神と魂の関係/霊的礼拝のエジプト起源//
  倫理的進歩;ストア派的理想とその価値/アリストテレース派的理想とその価値/冷笑主義と禁欲主義/本性と教育/倫理的良心と罪など、
352ページ。

 同じ著者による→こちら(「ギリシア、ヘレニズム、ローマ Ⅱ」の頁の「viii. ストア派」)、またあちら(「キリスト教(西欧中世)」の頁の「iii. 哲学史的なものなど」)を参照


有賀鐵太郎、「神の無名性について - 特にフィロンにおける -」、『キリスト教思想における存在論の問題』、創文社、1969、pp.152-176

野町啓、「Aristobulos と Philon - ἑβδομάϛ をめぐって -」、『西洋古典學研究』、no.15、1967.3.23、pp.86-97[ < CiNii Articles

野町啓、『学術都市アレクサンドリア』(講談社学術文庫 1961)、講談社、2009、「第5章 哲学都市アレクサンドリア - ユダヤ人フィロンとその周辺」
原著は『謎の古代都市アレクサンドリア』、2000
 他の内容は;
序章 謎の古代都市アレクサンドリア/ムーセイオンと大図書館/メセナとしてのプトレマイオス朝/大図書館をめぐる学者文人たち/花開くペリパトス派の学風/解説(泰剛平)など、
254ページ。


山崎秋夫、「フィロンの創造思想における『神のロゴス』について」、?、pp.16-35
フィロンの創造思想;可知的世界/イデアの創造//
神のロゴス;「神のロゴス」の二つの意味/「神のロゴス」の媒介性

 すいません、コピー(湿式)はあるのですが、出典をメモしていませんでした。


遠藤勝信、「フィロンのロゴス概念の揺れ」、『新約学研究』、33巻、2005、pp.5-17 [ < J-STAGE ]
DOI : https://doi.org/10.24758/jsnts.33.0_5

津田謙治、「アレクサンドリアのフィロンにおける『二つの力』の問題 - ヘレニズム思想との関連性を中心として -」、『京都ユダヤ思想』、第2号、2012、pp.6-25 [ < J-STAGE ]
DOI : https://doi.org/10.50954/kyotojewishthought.2.0_6

 同じ著者による→こちらも参照:「グノーシス諸派など」の頁の「iii. 『ユダの福音書』以後(2006~ )」/『マルキオン思想の多元論的構造』(2013)

ハンス・ヨナス、大貫隆訳、『グノーシスと古代末期の精神 第二部 神話論から神秘主義哲学へ』、2015、pp.89-150:「第2部第3章 アレキサンドリアのフィロンにおける神認識、見神、完成」
理論的な神認識;神の超越性と内在性/哲学的な不可知論の起源/条件つきの神認識、あるいは間接的な神認識/逆説的な神認識/終わりなき前進/直接的な神認識/直接性における破れ - ピスティス(信仰)とグノーシス(認識)/最高の観念(イデア)への上昇としての神認識/観照の優位 - 見ることと聞くこと/暫定的な結論//
神秘主義的な神認識;脱魂状態における人間本性の消滅/段階的な自己排除-倫理的形態と神秘主義的形態/倫理的自己排除と神秘主義的自己排除の共通の起源/「預言者」という類型/学術の導入とその役割の限定/学術の超克/学術から撤退する論拠/預言者は脱魂体験で完成される/結論


大貫隆、『イエスの「神の国」のイメージ』、教文館、2021、pp.189-242:「Ⅵ フィロンと終末論 -『上昇の黙示録』との対比において」
はじめに - 問題設定//
思想史的前提 - 中期プラトン主義//
宇宙史の終末論の不成立//
人間の魂と見神;人間の
(プシュケー)叡知(ヌース)(アレテー)の涵養と叡知(ヌース)の上昇/「神がかり」と脱魂体験/死後の叡知の神化/まとめ//
民族的メシア待望から
宇宙国家論(コスモポリス)

Margaret Barker, “Temple Imagery in Philo: An Indication of the Origin of the Logos?”, Originally published in W. Horbury, ed, Templum Amicitiae: Essays on the Second Temple Presented to Ernst Bammel (JSOT Press: Sheffield, 1991), pp. 70-102. [ < jbburnett.com

 同じ著者による→こちら(本頁下掲の「vi. マガーリヤその他と天使論」)や、あちら(「天使、悪魔など」の頁の「i. 天使など」)も参照

John Dillon, The Middle Platonists. A Study of Platonism. 80 B.C. to A.D.220, Duckworth, 1977

 も参照(→こちら:「ギリシア、ヘレニズム、ローマ Ⅱ」の頁の「ix. 中期プラトーン主義」)

 また→そちらも参照:「有閑神、デーミウールゴス、プレ-ローマなど」の頁中
………………………

 原典からの訳として;

アレクサンドリアのフィロン、野町啓・田子多津子訳、『世界の創造』(ユダヤ古典叢書)、教文館、2007
第1章 序;モーセの卓越性/「世界は不生かつ永遠である」とする人々に対する批判//
第2章 「一つの日(ヘーメラ・ミア)」;
一つの日(ヘーメラ・ミア)」の意義-可知的世界の位置づけ/「一つの日(ヘーメラ・ミア)」における可知的世界の創造(創1・1-5)//
第3章 第2日;可感的なもののうちで最上のものである大空の創造(創1・6-8)//
第4章 第3日;大地と植物の創造(創1・9-13)//
第5章 第4日;星辰の創造/数「四」の特質/星辰の意義(創1・14-19)//
第6章 第5日;生き物(水に棲むもの・翼あるもの・陸に棲むもの)の創造/創造の秩序の意義(創1・20-25)//
第7章 第6日;神の像としての(可知的)人間の創造(創1・26-31)/いかなる点で人間が神の像と言われるのか/なぜ人間が万物の最後につくられたのか//
第8章 第7日-数「七」の特質;「七番目数」の意義/幾何学的特質/響和における意義/人間の一生の区分との関連/比における意義//
第9章 モーセによる要約と二種の水の意義//
第10章 人間の創造;可感的人間の創造/最初の人間(アダム)の卓越性(創2・1-7)//
第11章 最初の人間の堕落;男、女、蛇の寓意的解釈(創2・8-3・19)//
第12章 結び;モーセの教えのまとめ(5点)など、
162ページ。

アレクサンドリアのフィロン、野町啓訳、「アブラハムの魂の遍歴」、『哲学』、no.9 vol.3-4、1989 冬:「特集 神秘主義 テクノロジーとカルト」、pp.28-39
『アブラハム』60-88節の訳

 宇宙論の話からずれますが;

フィロン、泰剛平訳、『フラックスへの反論 ガイウスへの使節』(西洋古典叢書 G015)、京都大学学術出版会、2000
290ページ。

アレクサンドリアのフィロン、土岐健治訳、『観想的生活・自由論』(ユダヤ古典叢書)、教文館、2004

 補遺として「エッセネ派に関する古代資料」の訳を掲載、
170ページ。


 あわせて;

偽フィロン、井阪民子・土岐健治訳、『聖書古代誌』(ユダヤ古典叢書)、教文館、2012
原著は Liber Antiquitarum Biblicarum
第1章~第65章/訳註/解説など、
292ページ。

 「アダムからサウル王の死までの旧約聖書の内容を要約しつつ拡大敷衍したもの」(p.275)で、著作年代は「後50年頃から150年頃を想定するのが一般的」(p.276)
とのこと。原語はヘブル語で、ギリシア語訳を介したラテン語訳のみ現存(p.277)。
 次に挙げるヨセフスの『ユダヤ古代誌』のように天地創造の場面から説き起こされるわけではありませんが、第60章(pp.136-137)などで開闢のさまが言及されています。

………………………

フラウィウス・ヨセフス、泰剛平訳、『ユダヤ古代誌』(全6巻)(ちくま学芸文庫 ヨ 7-1~6)、筑摩書房、1999~2000

 訳は1979~84刊本の文庫化

 1~3巻が旧約時代篇、4~6巻が新約時代篇


フラウィウス・ヨセフス、泰剛平訳、『ユダヤ戦記』(全3巻)(ちくま学芸文庫 ヨ 7-7~9)、筑摩書房、2002

 訳は1982刊本の改訳文庫化

M.ヘンゲル、長窪専三訳、『ユダヤ教とヘレニズム』、日本基督教団出版局、1983
原著は Martin Hengel, Judentumu und Hellenismus. Studien zu ihrer Begegnung unter besonderer Berücksichtigung Palästinas bis zur Mitte des 2. Jh s. V. Chr., 1969/1973
序説 本書の範囲と目的//
パレスチナにおけるユダヤ教と、技術的に規定された政治的・経済的勢力としての初期ヘレニズム文明との出会い;歴史的範囲 - プトレマイオス王朝とセレウコス王朝の係争の対象としてのパレスチナ/ギリシア-ヘレニズムの軍隊とユダヤ人/ヘレニズム王朝統治下のパレスチナにおける行政と租税/パレスチナにおける商業、経済、および社会構造に及ぼしたヘレニズムの影響/要約-パレスチナにおける世俗的勢力としてのヘレニズム文明//
文化的勢力としてのパレスチナにおけるヘレニズムとそのユダヤ人に及ぼした影響;パレスチナ・ユダヤ教におけるギリシア語/ギリシア的教育および教養とパレスチナ・ユダヤ教/パレスチナにおけるギリシア文学と哲学/要約 - 「ヘレニズム的ユダヤ教」としてのパレスチナ・ユダヤ教//
パレスチナ・ユダヤ教とヘレニズム的時代精神との出会いと対決;旧約正典中の後期ヘブル語文学に及んだいわゆるギリシア的影響/初期ヘレニズム時代におけるユダヤ文学の発展について/コヘレトとユダヤ教における危機の発端/ベン・シラとエルサレムにおけるヘレニズム的自由主義との論争/ユダヤ教的知恵思弁との関連におけるユダヤ思想とヘレニズム思想との出会い/
敬虔主義者(ハシディーム)とユダヤ黙示思想の最初の頂点/初期エッセネ派/要約 - ヘレニズムの受容と拒否の間におけるパレスチナ・ユダヤ教//
ユダヤ教の「ギリシア的解釈」とエルサレムにおけるヘレニストの改革運動;最古のギリシア語資料による哲学者としてのユダヤ人/ユダヤ教の神とギリシア的神観との同一視/エルサレムにおけるヘレニズム的改革の試みとその挫折/要約-改革運動、その挫折、およびユダヤ的反対運動の広範囲に及ぶ結果/総括的展望と結論など、
948ページ。

 同じ著者による→こちらも参照:「キリスト教(古代および東方正教会)」の頁の「ii. 初期キリスト教の諸傾向など


土岐健治、『初期ユダヤ教の実像』、新教出版社、2005
初期ユダヤ教の実像/イエスと初期ユダヤ思想 - 黙示文学を中心とし て-/初期ユダヤ教における復活思想/旧約聖書偽典 - イサクの奉献とイエスの贖罪死 -など、
190ページ。


土岐健治、『初期ユダヤ教研究』、新教出版社、2006
一神教と人類意識 - ユダヤ教の場合/ユダヤ民族とディアスポラ/ユダヤ人とローマ人/旧約聖書外典偽典の語るもの/エッセネ派に関する一考察/『ユダヤ戦記』Ⅱ151b-153 の文学的性格について/歴史家ヨセフスの誕生/ヨナ書 - 新約聖書と旧約聖書を結ぶもの/第一マカベア書における預言者句の研究/ヨセフスの語彙/新約聖書語彙研究など、
178ページ。


J.ジュリアス・スコット、井上誠訳、『中間時代のユダヤ世界 新約聖書の背景を探る』、いのちのことば社、2007
原著は J. Julius Scott Jr., Jewish Backgrounds of the New Testament, 1995
中間時代のユダヤ教の背景と環境;情報源/イスラエルの地の地理/旧約聖書の概観/旧約聖書の思想と制度/中間時代と新約聖書時代とのユダヤ教史の概観//
中間時代のユダヤ教の危機と応答;前6世紀と前4世紀の危機/危機に対する中間時代のユダヤ教の一般的な応答/伝統的(旧約聖書の)制度を再構築しようとする中間時代の試み/律法学者と言い伝え/黙示文学/分派・党派・諸派/第1世紀のイスラエルの一般的な生活//
中間時代のユダヤ教の宗教思 想 -クリスチャンの慣習と論争の背景;中間時代のユダヤ教の宗教思想/終末の時代/神の国/メシアへの希望/終末の時代における契約と律法/中間時代のユダヤ人の異邦人に対する態度//
付録;旧約聖書外典/偽典/ミシュナー、タルムード、トセフタのセダリームと項/十字架刑/ユダヤ人の日々の祈りとユダヤ人キリスト者の排斥/黙示文学と霊感された聖書/黙示文学の解釈/学識はどのように働くか、など、
446ページ。


Erwin R. Goodenough, edited and abridged by Jacob Neusner, Jewish Symbols in the Greco-Roman Period. Abridged Edition, Bollingen Series, Princeton University Press, Oxford, 1953/1988/1992
『ギリシア=ローマ時代におけるユダヤ的象徴 短縮版』
編者による序文(ジェイコブ・ニューズナー)//
問い、方法(第1巻・第4巻より) 問題(第1巻、pp.3-32)//象徴を評価する方法(第4巻、pp.25-62);問題/象徴とは何か?/ユダヤ的象徴/ユダヤ的象徴を評価する/宗教の心理学//
答え(第4巻と第8巻より) 角笛(ショーファール)(第4巻、pp.167-94、pp.208-12);モニュメントにおける角笛/「ローシュ・ハ-シャナー」論考における角笛/アケダー/角笛の象徴体系/結論//
  ユダヤ教における異教的象徴:天文学的象徴(第8巻、pp.167-218);ユダヤの遺物における星の象徴/異教における星の象徴/ユダヤ文学における星の象徴/ヘーリオス/要約//
ドゥラ・エウロポスのシナゴーグ(第9-12巻より) ドゥラ・エウロポスのシナゴーグの美術を解釈する(第9巻、pp.3-24);現存するユダヤ的文芸伝承との関連/ドゥラとバビロニアのユダヤ人/手順/シナゴーグの〈哲学者〉/えぐりだされた目//
  宇宙的ユダヤ教:アロンの神殿(第10巻、pp.2-26);絵画とその細部/解釈//
  非物質的実在のユダヤ教:櫃対異教(第10巻、pp.74-97);異教/櫃/三人の男/結論//
  要約:ドゥラにおけるユダヤ教(第10巻、pp.197-210、第12巻、pp.197-98)など、
376ページ。

 なお、短縮版に対する原本は全12巻、1953-1965
 同じ著者による→こちらも参照:本項上掲の『アレクサンドリアのフィロン入門』、1994


Christoph Riedweg, Jüdisch-hellenistische Imitation eines orphischen Hieros Logos. Beobachtungen zu OF 245 und 247 (sog. Testament des Orpheus), 1993

 も参照→こちら:「ギリシア、ヘレニズム、ローマ」の頁の「ii. オルペウス教(オルフェウス教)」

v. タルムードとラビ・ユダヤ教など

A.コーヘン、村岡崇光訳(Ⅰ巻)、市川裕・藤井悦子訳(Ⅱ・Ⅲ巻)、『タルムード入門』(全3巻)、教文館、1997
原著は Abraham Cohen, Everyman's Talmud, revised edition, 1949
Ⅰ巻 緒論;前史/ミシュナ/グマラとミドラシュ//
  神論;存在/唯一性/不可視性/遍在/全能/全知/永遠性/義と愛/父性/聖さと完全性/口にすべからざる名//
  神と宇宙;宇宙論/超越性と内在性/天使論/イスラエルと異教諸民族//
  人間論など、294ページ。
Ⅱ巻 啓示;預言/トーラー/トーラーの学習/成文トーラー/口伝トーラー/トーラーの実践//
  家庭生活//社会生活//道徳生活//身体など、272ページ。
Ⅲ巻 民間信仰;悪魔論/邪視/魔術と占い/夢/迷信//
  ユダヤ法//来世;メシア/死者の復活/来たる世/最後の審判/ゲヘナ/エデンの園など、
294ページ。


J.ニューズナー、長窪専三訳、『ミドラシュとは何か』(《聖書の研究シリーズ》 42)、教文館、1994
原著は Jacob Neusner, What is Midrash?, 1987
ミドラシュとは何か;ミドラシュの三つの類型 - 敷衍、預言、譬/ミドラシュの三つの範囲 - 釈義、文書、過程/ヘブライ語聖書におけるミドラシュ//
古代ユダヤ教における二つの類型のミドラシュ;敷衍 - 七十人訳とタルグムにおけるミドラシュ/預言 - 死海写本におけるミドラシュ/預言 - マタイによる福音書におけるミドラシュ//
事物が見かけと違う時;二重のトーラーのユダヤ教の正典的文書の中のミドラシュ/ミドラシュと創世記/ミドラシュとレビ記/ミドラシュと民数記-二つの接近法/寓喩と命題 1 - アダムの堕罪とイスラエルの興隆/寓喩と命題 2 - 「慰めよ、わたしの民を慰めよ、と主は言われる」/寓喩と命題 3 - 死者の復活が聖書的教理であることの証明など、
250ページ。


エマニュエル・レヴィナス、合田正人訳、『聖句の彼方 タルムード - 読解と講演』(叢書・ウニベルシタス 512)、法政大学出版局、1996
原著は Emmanuel Lévinas, L'Au-delà du verset, 1982
序言//
忠誠;強いるユダヤ教//
タルムード読解;西欧のモデル/逃れの町/最後に残るのは誰か/条約/宗教的言語と神への畏れについて//
神学;聖典のユダヤ的読解について/タルムードの諸節による神の名/ユダヤ教の伝承における啓示/「神にかたどって」 0 -ボロズィンのラビ・ハイームによる/スピノザの背景//
シオニオズム;カエサルの国とダヴィデの国/政治は後で!/同化と新しい文化など、
342ページ。

 レヴィナスには他にもタルムード論がありますが、ともあれ、レヴィナスとタルムードに関して→こちらも参照:「ユダヤ Ⅱ」の頁の「ix. ショーレムの著作とその周辺

 レヴィナスについては、著作の翻訳をはじめとして、枚挙にいとまもないだけの文献があるかと思いますが、とりあえずここでは;

ピエール・ブーレッツ、合田正人・渡名喜庸哲・三浦直希訳、『20世紀ユダヤ思想家 来るべきものの証人たち 3』、みすず書房、2013、pp.271-368:「第9章 エマニュエル・レヴィナスとともに - 裁かれる歴史」
労働と学習によって世界を建設すること/世界のように古く/〈全体性〉を越える〈無限〉の観念/ローマとエルサレム - 政治とその後/存在に感染せざる神?/諸国民の時代のイスラエル/時間の持続そのもののなかでなど

市川裕、「第13章 ユダヤ教正統主義におけるコスモスとアンチコスモス」、『ユダヤ的叡知の系譜 タルムード文化論序説』、東京大学出版会、2022、pp.321-347
井筒俊彦の神秘思想論/ユダヤ教正統主義における人間と唯一神との関係/自我滅却の精神態度に向けた戒律の学習と実践/ユダヤ教正統主義の創造世界観

 第1節で参照される井筒俊彦のコスモス/アンチコスモス論は→こちらを参照:「イスラーム」の頁の「ii. 思想史・哲学史的なものなど

 全体の目次;
序 信仰に徹することと啓蒙ということ//
ラビ・ユダヤ教の成立とタルムード学の形成;宗教と教育 - タルムード学の意義と批判精神の育成/一神教と〈戒〉 - ユダヤ的特徴/神殿供犠から啓示法へ - ユダヤ・アイデンティティの確立/タルムードの聖書解釈に込められたユダヤ賢者の
実存的関心/タルムード学の系譜 - 中世の学問的成熟//
タルムード学の成立とユダヤ的生活様式の実現;タルムードのテキストを読む - 子に対する親の義務/貧しさの中の感謝 - ユダヤ教の食と祭礼/ユダヤ教の経済観念 - 正しい道理の富/ユダヤ教の霊魂観 - 人間としての完成と戒律/悔い改めと和解 - 他者に対する罪の赦し//
近代タルムード学とユダヤ・アイデンティティの葛藤;レヴィナスとリトアニアのタルムード学の意義/ギリシアとの相克としてのユダヤ教史/ユダヤ教正統主義におけるコスモスとアンチコスモス/ユダヤ教正統主義から考える現代の国家・宗教関係/ユダヤ教の現代メシア論 - ショーレムとレヴィナスの対話/リトアニア系イェシヴァの精神を体現した四人の現代タルムード賢者//
結語 - ユダヤ人の歴史を貫くものなど、
466ページ。

 同じ著者による→こちらを参照:本頁下掲「vii. ユダヤ思想史など」/『ユダヤ教の精神構造』(2004)


Michael Fishbane, The Exegetical Imagination. On Jewish Thought and Theology, Harvard University Press, Cambridge, London, 1998
『釈義的想像力 ユダヤ思想と神学について』
ミドラシュと聖典の性質/「聖なるものは坐して叫ぶ」:神話産出とミドラシュ的想像力/大いなる龍の闘いとタルムード的編集/古代のミドラシュにおける神の寸法と栄光/メシアの受難のミドラシュ的神学/ユダヤ教神話と神話作成の五段階/ゾハルの書と釈義的霊性/ユダヤ教における生贄の身代わり/ユダヤ的敬虔における死の観想/喜びとユダヤ的霊性/ブラツラヴのラビ・ナフマンによる踊りの神秘など、
248ページ。


Michael Fishbane, Biblical Myth & Rabbinic Mythmaking, Oxford University Press, Oxford, New York, 2003/2005
『聖書的神話とラビ的神話作成』
聖書的神話 序説//
 闘いの神話と神的な行動 - 神的な力の祈りと預言;詩篇において/預言文学において//
  祈りと預言における闘いのモティーフの人格化と歴史化//
 結論と他の考察;古代イスラエルにおける神話的闘争/古代イスラエルの神話的ヒエラルキア/神話と隠喩/神話と伝承//
ラビ的神話と神話作成 序説;現象 - 話題と技法/神話と聖典/焦点を設定する//
  神と原初の水;神的闘争と原初の水/テホームの水と神殿//
  参加と情念の神話;神的参加の神話 - エジプトでの隷属とその他の出来事/捕囚による隷属と神的な救済//
  神性の神話;神的な情念と人格/人間の振舞いと神的な活性化//
  結論と他の考察;神話と伝承/神話と言語/神話と神の形態学//
中世におけるユダヤ神話と神話作成 序説;いくつかの神話受容史/『ゾハル』の現われと神秘//
  原初の蛇と創造の秘密;蛇の神話と悪の神秘/比較類型についての余論//
  神的な悲しみと流謫の断絶;神殿の破壊/再結集への願い//結論//
附録;タルムードとゾハルの出典の翻訳/用語
kivyakhol とその用法など、
474ページ。


Wilfred Shuchat, The Creation according to the Midrash Rabbah, Devora Publication, Jerusalem, New York, 2002
『ミドラシュ・ラッバーによる創造』
序説として/ミドラシュについてのいくつかの考察/ラビ思想としてのミドラシュ//
パラシャー 1~11 など、
492ページ。

 原典は『創世記』第1章の各句についてのラビたちの議論を記録したもので、その英訳と著者の註釈からなっています。
 宇宙論的なイメージが豊富に記されているとはいえませんが、それでも、

世界の創造に先立つ6つのもの(pp.15-17, 39)、

トフとヴォフ(pp.25-26, 42-44, 84-106)、

この世界に先行する諸世界の創造と破壊(pp.130-132, 340-343 →こちら(本頁下掲の「Viii. 神話、魔術など」)や、そちら(「ユダヤ Ⅱ」の頁の「ix. ショーレムの著作とその周辺」)、またあちら(「ユダヤ Ⅲ」の頁の「xii. カバラーなど」)に、こなた(「世界の複数性など」の頁中)、そなた(「ユダヤ Ⅲ」の頁の「xiii. ルーリアのカバラーなど」)も参照)、

天使が創造された日はいつか(pp.135-136)、

水の中への蒼穹の創造(pp.145-146, 150-152, 158-162)、

火と水からの天の創造(pp.169-174)、

徒歩で500年という天地間の距離(pp.236-240→こちらも参照:「イスラーム Ⅲ」の頁の「x. クジャタ、バハムート、ファラク、その他」)、

日月の位置(pp.245-247)、

レビヤタンとベヘモト(p.262)、

両性具有のアダム(pp.269-271)、

世界の創造に2000年先立つトーラー(pp.279-281)、

世界は外から内へ拡げられたのか、その逆か(pp.390-393)、

アダムの堕罪以前の時間の流れ方(pp.394-399)、

世界の拡張とその停止(pp.426-429)

 などなどの話題を拾いあげることができます。

 ラビ資料からは、ミシュナの邦訳がいくつか目にとまりましたが、今のところ宇宙論に関わる記述は見あたらないようです;

石川耕一郎訳、『ミシュナ 3 タアニート、メギラァ、モエード・カタン、ハギガァ Ⅱ・9-12』(エルサレム文庫 5)、エルサレム宗教文化研究所、1986
タアニート=断食/メギラァ=巻物/モエード・カタン=祭りの中間日/ハギガァ=祭りの献物など、
226ページ。


石川耕一郎訳、『ミシュナ 4 ペサヒーム Ⅱ・3』(エルサレム文庫 10)、エルサレム宗教文化研究所、1987
ペサヒーム=過越祭など、
174ページ。

 このシリーズは巻末の刊行一覧によると全32巻で、『1 アヴォート、ホラヨート Ⅳ・9-10』、『2 ベラホート Ⅰ・1』が既刊とのことですが、その後続刊されたかどうかは不詳。


石川耕一郎・三好迪訳、『ミシュナ Ⅰ ゼライーム』(ユダヤ古典叢書)、教文館、2003
ゼライーム(種子)=農耕に関する書;ベラホート=祈禱/ペアー=畑の刈り残し、落ち穂/デマイ=10分の1の献げ物を納めたか否か疑わしい作物/キルアイム=禁忌異種/シュヴィイート=安息年/テルモート=祭司への献納物/マアセロート=10分の1の献げ物/マアセル・シェニー=第2の10分の1の献げ物/ハッラー=献納練り粉/オルラー=植樹3年間の禁忌果実/ビックリーム=初物、初穂など、
420ページ。


長窪専三・石川耕一郎訳、『ミシュナ Ⅱ モエード』(ユダヤ古典叢書)、教文館、2005
モエード(祭日)=祭りに関する書;シャバット=安息日/エルヴィーン=安息日規定の補遺/ペサヒーム=過越祭/シェカリーム=シェケルの献納/ヨーマ=贖罪の日/スッカー=仮庵祭/ベーツァー=祝祭日に関する規定/ローシュ・ハ・シャナー=新年祭/タアニート=断食/メギラー=巻物(プリム祭におけるエステル記の扱い方)/モエード・カタン=祝祭日中間の規定/ハギガー=祝祭日の献げ物など、
484ページ。

 こちらのシリーズは全6巻で、
『Ⅲ ナシーム(婦人) - 女性に関する書』、
『Ⅳ ネズィキーン(損害) - 民法・刑法に関する書』、
『Ⅴ コダシーム(聖物) - 神殿祭儀に関する書』、
『Ⅵ トホロート(清潔) - 穢れに関する書』
と続刊予定


長窪専三訳訳、『アヴォート ミシュナⅣ別巻』(ユダヤ古典叢書)、教文館、2010

 アヴォートはネズィキーンの巻の一小編、通称ピルケ・アヴォート、
144ページ。

vi. マガーリヤその他と天使論

Émile Bréhier, La philosophie du moyen âge. 1937/1971, p.96 

 に、
「他方、字義的解釈に与し、寓意主義に反対する者たちの内にある者は、ペルシアのユダヤ人
Nahawendi (830年頃)のように、聖書の神人同形説を説明するために、それが大天使ロゴスに当てはまるのだと認めることになる。神がロゴスを創造し、今度はロゴスが宇宙を創造、預言者たちを遣わし、律法をもたらしたというのだ」
とあるのを読んで以来、ずっと気になっていました。また同書 p.214 には、アヴィセブロンことイブン・ガビロールの説として、
「神が自分自身で創造するのではない、その意志、あるいはその〈言葉〉を仲介として創造する」
と記されています。

 他方、後出の


ユリウス・グットマン、『ユダヤ哲学』、2000、pp.56-57

 には、9「世紀半ばにカライ派の傑出した指導者であったナアヴェンドのベニヤミン・B・モーセ」のものとして同じ説が述べられ、さらに
「同種の教義はマガリア(ある文献ではマカリア、マカリバと呼ばれている)と称されるセクトが唱えたものとみなされている」
とのことです。

 やはり後出の


ゲルショム・ショーレム、『ユダヤ神秘主義』、1985、pp.150-151

 にも、「サアドヤーの時代のユダヤの宗徒たちのあいだに」現われた「ひとつの思想」として言及されています。グットマン、ショーレムはそれぞれ、アレクサンドレイアのピローンとの関連を問うてもいます。

 これも後出の


長窪専三、『古典ユダヤ教事典』、2008、p.473

 には「マガーリヤ Maghariya」の項目がありましたし、

Howard Schwartz, Tree of Souls. The Mythology of Judaism, 2004, pp.119-120; “152. The Angel who Created the World”

 もマガーリヤを扱っています。

 また

ヨアン・P・クリアーノ、『霊魂離脱(エクスタシス)とグノーシス』、2009、「第3章 天上の戦いとグノーシス」

 とりわけpp.84-85。また「訳者跋文」、pp.358-360 も参照。

Kurt Rudolph, Theogonie, Kosmogonie und Anthropogonie in den mandäischen Schriften, 1965, p.200

Steven M. Wasserstrom, Between Muslim and Jew. The Problem of Symbiosis under Early Islam, 1995, pp.39-40
(またpp.183-184以下も参照)

 にも言及あり。

 
追補;ウェブ上で次の論考を見ることができました;

H. A. WOLFSON, "The Pre-existent Angel of the Magharians and Al-Nahāwandī", The Jewish Quarterly Review, vol. 51 no.2, October 1960, pp.89-106 [ < Harry Austryn WolfsonAcademia
「マガーリヤとアッ=ナハーワンディーの先在する天使」

 〈マガーリヤ〉そのものについては今のところこの程度なのですが、関連のありそうなものとして(グノーシス主義や初期キリスト教とも関連します。また→こちらも参照:「有閑神、デーミウールゴス、プレーローマなど」の頁中);

Alan F. Segal, Two Powers in Heaven. Early Rabbinic Reports about Christianity and Gnosticism, Brill Academic Publishers, Inc., Boston, Leiden, 1977/2002
『天の二つの力 キリスト教とグノーシス主義に関する初期ラビの報告』
序論;天の二つの力 - 問題の歴史と重要性//
初期ラビの証拠;神の相争う現われ/アヘル、メタトロン、メルカヴァー、そして YHWH の天使/イシュマエルとアキヴァの論争/〈二つの力〉似対するミドラシュの警告/非正統的な祈りに対するミシュナの禁止/〈天の多くの力〉とさまざまな証言/いくつの力が世界を創造したのか?/神的な諸力と天使たち/ラビ的所見の要約//
ラビたち以外の証拠と結論;ピローン/ユダヤ教分派のテクスト 黙示文学と神秘主義、新約聖書のキリスト教/教父たち/マルキオン/グノーシス主義/結論など、
340ページ。


Jarl E. Fossum, The Name of God and the Angel of Lord. Samaritan and Jewish Concepts of Intermediation and the Origin of Gnosticism, Wissenschaftliche Untersuchungen zum Neuen Testament 36, J. C. B. Mohr (Paul Siebeck), Tübingen, 1985
『神の名前と主の天使 仲介に関するサマリアおよびユダヤ的概念とグノーシス主義の起源』
序論;問題//
サマリアにおけるグノーシス主義の鋳型 序章 - サマリア人とその宗教;サマリアの宗教の起源/ドシテウス主義の起原と展開/ドシテウス主義の影響//
  神の名前;サマリアにおけるロゴスの教義 - 名前を通しての創造/神的な名前の概念/名前の授与 Ⅰ - サマリアの証拠/名前の授与 Ⅱ - サマリア以外の証拠/位格化された名前/モーセのような終末論的預言者としての魔術師シモン/モーセのような預言者の昇天/神の使徒/サマリアの宗教と〈イラン型〉グノーシス主義/〈(神の)大いなる力〉としての魔術師シモン//
  主の天使;天使崇拝とデーミウールゴス的概念に対する論争/ピローンの証言/ラビの証拠/創造における天使の補助に関する外部の証言/グノーシス的二元論の展開/サマリアの宗教における主の天使//
ユダヤの証拠 神の名前;ゴーレムの伝説とアルファベットのデーミウールゴス的役割/神的な名前による創造の〈封印〉/名前を等しての創造//
  主の天使;デーミウールゴス的誓いとミカエルの名前/天使にして使徒ガブリエル/天的な人間/昇天と名前の受容/グノーシス的仲介者/主の天使/グノーシス主義におけるアリエルとミカエル/マガーリヤ/より広い展望と結論など、
392ページ。


Margaret Barker, The Great Angel. A Study of Israel's Secong God, SPCK, London, 1992
『大いなる天使 イスラエルの第二の神研究』
神の息子/バビロン捕囚からの証言/旧約聖からの証言/〈知恵〉からの証言/天使たちからの証言/名前からの証言/ピローンからの証言/ユダヤ人著作家たちからの証言/グノーシス主義者たちからの証言/最初のキリスト教徒からの証言/新約聖書からの証言など、
270ページ。

 同じ著者による→こちらも参照:本頁上掲の「iv. アレクサンドリアのフィロンとヘレニズムなど


Saul M. Olyan, A Thousand Thousand Served Him. Exegesis and the Naming of Angels in Ancient Judaism, Texte und Studien zum Antiker Judentum 36. J. C. B. Mohr (Paul Siebeck), Tübingen, 1993
『100万の者が彼に仕える 古代ユダヤ教における釈義と天使の命名』
天使の釈義におけるパターン/天使旅団の釈義的起源/釈義と個々の天使の名前/神的属性と祭式用語に由来する天使の名前など、
162ページ。


 「グノーシス Ⅱ」のページで挙げた;

Nathaniel Deutsch, Gurdians of the Gate. Angelic Vice Regentcy in Late Antiquity, 1999

 も参照

 「キリスト教(古代、中世)」のページの「ii. 初期キリスト教の諸傾向など」の項、「キリスト論と仲介者論など」として挙げた文献も参照
 また「天使、悪魔など」のページも参照

vii. ユダヤ思想史など

 通史的なものとして;

アンドレ・シュラキ、渡辺義愛訳、『ユダヤ思想』(文庫クセジュ 400)、白水社、1966
原著は André Chouraqui, La pensée juive, 1965
緒言;イスラエル思想の性格/イスラエル思想のさまざまな表われ//
聖書の思想 単一性の啓示//イスラエルの神;神の種々の呼び名/創造主である神/聖なる神/
(ただ)しい神/愛の神/怒りの神/知恵の神//
  契約//神殿、祭司、犠牲//神と人//神の意志を宣べ伝える預言者//聖書の思想の法律的表現//人類の究極目的//主の日とメシヤの統治//
タルムードの思想 タルムードの弁証法;《ア・フォルティオリ》論法/類比による論法/一つの特殊例もしくは一つの法則の一般化/一般と特殊/文献学的解釈//
  タルムードの教え;神の教義/啓示/天使学と悪魔学/宇宙/イスラエルと諸国民/救いの道/ユダヤの法政政治/メシヤの統治と神の国/来たるべき世//
  イスラエルの思想の複雑さと矛盾//
  ヘレニズムの影響を受けたユダヤ教//
  キリスト教の発生//
神学・神秘思想;カラム/ユダヤ教に採り入れられた新プラトン主義/ユダヤ教に採り入れられたアリストテレス哲学と反アリストテレス学派の巻きかえし/イスラエルの思想とユダヤ人の生活状況-内的生活/イスラエルのメシヤ期待/カバラ-カバラの世界//
近代思潮;ヒューマニストたち/後期カント派観念論/近代思想の主潮のなかで-イスラエルでは//むすびなど、
142ページ。


イジドー・エプスタイン、安積鋭二・小泉仰訳、『ユダヤ思想の発展と系譜』、紀伊國屋書店、1975
原著は Isidore Epstein, Judaism. A Historical Presentation, 1959
序/発端/イスラエルの選び/トーラー/イスラエルの堕落/民族的宗教的崩壊-悲劇のイスラエル王国/ユダ王国-その興亡/預言者/祭司と詩篇作者/「賢人」/ユダヤ神政国家/第二ヘブル連合(コモンウェルス)/ユダヤ人の民族的精神的中心/タルムードの形式/タルムード・ユダヤ教(1) その信仰/タルムード・ユダヤ教(2) 倫理と徳目/タルムード・ユダヤ教(3) 宗教的慣習/タルムード・ユダヤ教の統合/ユダヤ哲学/ユダヤの神秘主義、カバラー/中世ラビニズムの貢献/近代の動き/ユダヤ国とユダヤ教など、
384ページ。

 ショーレムの『ユダヤ神秘主義』(1985)邦訳が出る以前には、本書の「第19章 ユダヤの神秘主義、カバラー」(pp.250-280)が、日本語で読めるその歴史的記述としてもっとも役に立ったものでした。とりわけ
「一つのセフィラーから別のセフィラーにこのような影響が伝わる道をツィノール(パイプ)という」
との一文が印象に残っています(p.265)
 〈ツィノール〉については後掲の


Gershom Scholem, Kabbalah, 1978, p.116

 にも少し記されており、そこから引いてエピグラフにしたことがありました。
 同じく後掲の

Moshe Cordovero, Pardes Rimonim. Orchard of Pomegranares. Part 5-8:5, 2010, Part 7:“Treatise on Channels”

 で“channel”と英訳されているのも、この〈ツィノール〉なのでしょう。
 →こちらでも少し触れました:「怪奇城の隠し通路」の頁

ユリウス・グットマン、合田正人訳、『ユダヤ哲学 聖書時代からフランツ・ローゼンツヴァイクに至る』、みすず書房、2000
原著は Julius Guttmann, Philosophies of Judaism. The History of Jewish Philosophy from Biblical Times to Franz Rosenzweig, 1964
基礎と最初の影響 聖書の宗教の根本思想/ヘレニズム期のユダヤ哲学/タルムードのユダヤ教における宗教的観念//
中世におけるユダヤ宗教哲学 イスラム世界でのユダヤ哲学の台頭;最初期//
  カラーム;サアディア/ラビのユダヤ教とカライ派ユダヤ教におけるカラームの発展//
  新プラトン主義;イサック・イスラエリ/ソロモン・イブン・ガビロル/バイヤ・イブン・パクダ/十二世紀の新プラトン主義者たち/イェフダ・ハレヴィー//
 アリストテレス主義とその反対者たち;アリストテレス主義ならびに啓示宗教における神と世界の概念/アブラハム・イブン・ダウド/モーゼス・マイモニデス/マイモニデス以後百年間の哲学との闘い-マイモニデスとアヴェロエスの哲学的影響/レヴィ・ベン・ゲルソン/ハスダイ・クレスカス//
  中世宗教哲学の終焉とその余波;スペインにおけるユダヤ哲学の終焉/イタリアのユダヤ哲学/スピノザの体系へのユダヤ哲学の影響//
近代におけるユダヤ宗教哲学 序//モーゼス・メンデルスゾーン//
  ユダヤ宗教哲学におけるカント以降の観念論;ザーロモン・フォルムシュテッヒャー/ザームエール・ヒルシュ/ナフマン・クロホマル/ザーロモン・ルートウィヒ・シュタインハイム//
  十九世紀末におけるユダヤ宗教哲学の刷新;モーリツ・ラザルス/ヘルマン・コーエン/フランツ・ローゼンツヴァイクなど、
488ページ。

………………………

箱崎総一、『ユダヤ人の思想』、番町書房、1972
ユダヤ人と私;ユダヤ人と私/ユダヤ式トレーニング/ユダヤ人と精神医学//
不思議な民族;不思議な民族/伝承の鎖/日本とユダヤ人/支那のユダヤ人/日本の恩人/大富豪ロスチャイルド家//
迫害の歴史;ロシアのユダヤ人/迫害とユダヤ教会堂/ユダヤ人の
しるし(ヽヽヽ)/異端糾問所の死刑宣告/ゲットー/ユダヤ商人//
ユダヤ人の伝統;アルバ・カンフォト/サバト(安息日)/割礼/ユダヤ人の結婚/離婚・再婚/死の思想//
祭の思想;ユダヤの暦/過越の祭/アブの第9日/贖罪の日/仮いほの祭/燈明の祭/くじ祭/告白//
ユダヤ人の思想;荒野の思想/カバラ思想/聖四文字の秘儀/天地創造の書/ゾハールの書/呪文と護符/カバラ思想家/タルムード/ハガダ//
知恵のことば;タルムードの知恵など、
272ページ。

 同じ著者による→こちらも参照:「ユダヤ Ⅲ」の頁の「xii. カバラーなど


マックス・ヤンマー、髙橋毅・大槻義彦訳、『空間の概念』、1980、pp.38-64:「第2章 ユダヤ教・キリスト教の空間概念」

 「1世紀のパレスチナ・ユダヤ教における神の名としての『場所』(makom)」(p.39)とその展開が、『ゾハール』(p.44)などを介してピコ・デッラ・ミランドーラ、ロイヒリン、フラッド、カンパネッラ、ヘンリー・モアなどへ通じることが説かれています。
 また第3章「空間概念派アリストテレス主義からいかにして解放されたか」の中で、ハスダイ・クレスカスが取りあげられています(pp.87-93)。


渡辺昭造、「中世の無限論 - Hasdai Crescasの場合(上)」、『札幌大学教養部札幌大学女子短期大学部紀要』、no.21、1982.9.30、 pp.141-192[ < CiNii Articles

  同、 「中世の無限論 - Hasdai Crescasの場合(下)」、『札幌大学教養部札幌大学女子短期大学部紀要』、no.22、1983.9.30、 pp.179-247[ < 同上

 同じ著者による→こちら(「キリスト教(西欧中世)」の頁の「iii. 哲学史的なものなど」)や、またあちらも参照:「バロックなど(17世紀)」の頁の「パスカル」の項


『ユダヤ思想 1 岩波講座・東洋思想 第一巻』、岩波書店、1988
イスラエル・ユダヤ思想 - その意義と特質(関根正雄)//
ユダヤ思想の展開と特質 旧約聖書の思想的構造(並木浩一) 旧約聖書とはどういう書物か;旧約聖書 - 名称・範囲・構成/人によって語られる神の言葉/出来事と言葉/古典としての旧約聖書//
    神が神であること、人が人であること;挫折に導かれるための神義論/神の正しさを問うことの正しさ/神との応答関係に置かれる人間の位置//
  旧約聖書における言語・文学・思想(関根正雄) 半遊牧民としての出発;問題の所在/族長の神/族長時代の言語・文学・思想//
    モーセの時代;新しい神?/契約共同体の成立/契約と律法/政治の非神聖化/見神の問題//
    部族(連合)時代//初期王国時代;抒情詩と歴史記述の成立/シオン伝承とエルサレム神殿/知恵文学と救済史家//
    預言者//
    前八世紀以後の言語・文学・思想//
  七十人訳聖書(村岡崇光);名称と範囲/起源と成立/カーレとラガルデ-『七十人訳』の成立とその後の伝承史をめぐって/改訂/『七十人訳』のギリシア語//
  ヘレニズム・ローマ時代のユダヤ思想(野町啓) 「ヘレニズム」の意味するもの;時代区分/紐帯としてのギリシア語と聖書/「ヘレニズム」の両極性//
    ユダヤ人と他民族とのかかわり;アレクサンドロスとユダヤ人/出エジプトをめぐって/スパルタ人とユダヤ人//
    ユダヤ人側の対外的自己主張;偽作文書の成立-ヘカタイオスと偽ヘカタイオス/アレクサンドロス・ポリュヒストル/クレオデモス・マルコス/アルタパノス/エウポレモス/尚古主義的風潮とユダヤ人//
    ギリシア思想聖書起源説と聖書の比喩的解釈;アリストブロス/アレクサンドリアのフィロン/フィロンのアブラハム像/ユダヤ教と哲学//
  タルムード期のユダヤ思想(市川裕) はじめに - 「ラビ・ユダヤ教」の成立と意義//
    ラビ・ユダヤ教の基本的性格;時代区分と文化の担い手/思想表現の形式と場/ラビ・ユダヤ教のヒエラルヒー/二つのトーラー//
    タンナーイーム時代;ヒッレールとその時代 律法釈義と先哲の伝承、律法解釈の七原則とカル・ヴァホーメル/ヒッレールとシャンマイ-伝承の分裂/ラバン・ヨーハナン・ベン・ザッカイとその時代 神殿崩壊、伝承の収集、意見の対立に関するハハーミームの立場/ラビ・アキーヴァーとその時代 ユダヤ的思惟の転換、聖典解釈の隆盛 - ラビ・アキーヴァーとラビ・イシュマアエール、アキーヴァーとその神/ラビ・イェフーダー・ハッ・ナースィーとミシュナーの欽定//
    アモラーイーム時代;二つのタルムード/タルムード的思惟方法 伝承文学としてのタルムード、ミシュナー解釈の方法-ミドラーシュ・ハラーハー的方法の継承、矛盾の発見とその解決など、
318ページ。


『ユダヤ思想 2 岩波講座・東洋思想 第二巻』、岩波書店、1988
ユダヤ思想の展開と特質(続) 中世ユダヤ哲学史(井筒俊彦);中世ユダヤ哲学前史/サアディアー・ベン・ヨーセーフ/イブン・ガビーロール/バヒヤー・イブン・パクーダー/イェフーダー・ハレーヴィー/イブン・ツァッディークとイブン・ダーウード/マイモニデース/ハスダイ・クレスカス
  ユダヤ神秘主義-歴史的概観(ヨセフ・ダン)→細目はこちら:「ユダヤ Ⅱ」の頁の「x. ショーレム以後、その他
  ユダヤ教におけるメシア理念(平石善司) 『旧約聖書』のメシア理念;「油を注がれた者」としてのメシア/預言者のメシア理念/「ダニエル書」//
    『旧約偽典』のメシア理念;『旧約外典』と『旧約偽典』/「エノク書」のメシア理念/アレクサンドリアのユダヤ人-フィロンの場合//
    偽メシアの運動;バル・コホバの反抗/シャブタイ・ツヴィのメシア運動など、
266ページ。

 井筒俊彦「中世ユダヤ哲学史」は同、『超越のことば イスラーム・ユダヤ哲学における神と人』、岩波書店、1991 に所収


R.C.ムーサフ=アンドリーセ、市川裕訳、『ユダヤ教聖典入門 トーラーからカバラーまで』、教文館、1990
原著は Drs. R. C. Musaph-Andriesse, translated by J. Bowden, From Torah to Kabbalah. An Basic Introduction to the Writings of Judaisum, 1981 で、Wat na de Tora kwam. Rabbijnse literatuur van Tora tot Kabbala, 1973/1985 の英訳
ヘブライ語とアラム語のスペルについて//
タナハ 内容;トーラー(モーセ五書)の内容/ネビーイーム(預言書)の内容/クトゥービーム(諸書)の内容//
  タナハの性格//聖書の翻訳//マソラ//
正典;正典化の過程/外典と偽典//
ミシュナ;諸起源/ソーフェリーム/サンヘドリン/タンナイーム/ミシュナの言語/ミシュナの区分//
トーセフタ//バライタ//
グマラ;アモライーム/タルムードの思考世界//
タルムード;パレスティナ・タルムード/バビロニア・タルムード/タルムードの各部、各篇/パレスティナのユダヤ人/バビロニアのユダヤ人 アモライーム、ゲオニーム//
タルムードの小篇//ミドラーシュ;ミドラーシュ・ラッバー/ミドラーシュ・タンナイーム//
ハラハー;法典化/意義//アガダー//
中世ラビ文学;註解者/律法典の編纂/レスポンサ(シュエロート・ウ・テシューボート)/マイモニデス//
カバラー;カバラー神秘家/ゾーハルなど、
220ページ。

 きわめて多様なユダヤ教文献の地図を作るのに、とても役に立つ本です。
 ただ、『ゾーハル』はモーゼス・デ・レオンの著作ではないという見解をショーレムに帰しているのを見た時は(pp.171-172)、自分の記憶を疑わされました。


ヨセフ・ハイーム・イェルシャルミ、木村光二訳、『ユダヤ人の記憶 ユダヤ人の歴史』、晶文社、1996
原著は Yosef Hayim Yerushalmi, Zakhor : Jewish History and Jewish Memory, 1982/1987
歴史・記憶・歴史記述の意味 - 聖書とラビ文学の基盤/記憶の器と伝達手段 - 中世/大破局が生んだ歴史記述 - 十六世紀/現代のディレンマ - 歴史記述とその不満/追記 「忘れること」についての考察など、
256ページ。


シャローム・ローゼンベルク、植村卍監訳、山田皓一訳、『ユダヤ教思想における善と悪』、晃洋書房、2003
原著は Shalom Rosenberg, Good and Evil in Jewish Thought, 1989
善と悪と一神教/二つの神性の力/サタンとマイモニデスの「ヨブ記」解釈/悲観論との対峙/可能なかぎり最善の世界/善と悪の知識の木/カバラーにおける善と悪/殻(ケリポート)の教義と平和主義/想像と喜びの狭間/ハラハー的アプローチ/ホロコーストの跡を追って/建設的な苦しみ/悲しみの精通者など、
212ページ。


 →こちらにも挙げておきます:「天使、悪魔など」の頁の「ii. 悪魔など

植村卍編著、小岸昭・池田潤・赤井敏夫共著、『ユダヤ教思想における悪-なぜ、いま「悪」なのか-』、晃洋書房、2004
まえがき(植村卍)/聖書ヘブライ語における「(ラア)」(池田潤)/善悪の知識の木とは何か(同)/マルティン・ブーバーの『善悪の諸像』について(植村卍)/「正しい者・悪しき者・罪人」 - ブーバーの「詩編」釈義を通して示される善悪論 -(同)/フランク主義者の悪と冒険(小岸昭)/二十世紀の「道徳悪」-カバラの視点から-(同)/近代オカルティズムとカバラ(赤井敏夫)/あとがき-「忘れること」に抗して-(小岸昭)など、
220ページ。


市川裕、『ユダヤ教の精神構造』、東京大学出版会、2004
序 「我らのラビ・モーセ」に倣いて;ユダヤ教研究への道のり/本書の意図と構成/古代ユダヤ教の概観//
法の宗教の成立 ユダヤ教の正統性;法華経の論理/エウセビオスのキリスト論/ラビ・ユダヤ教の論理/ラビ・ユダヤ教の始原としてのモーセ//
  タルムードと自治社会;制度知としてのタルムード/タルムード制度知の担い手/ユダヤ人社会の枠組/ミシュナの世界/多数決の意味/最高意思決定機関の構造/モーセの権威//
トーラー精神発現の諸相 自由と戒律;ユダヤ教の戒律/神の実験としての出エジプト/「頑なさ」と罪/法はなぜ荒野で与えられたか//
  偶像崇拝との闘い;正邪の見分け/聖典解釈の方法/なぜ偶像を作ったか/それは偶像崇拝ではない/わたしのまえに/他の神々/偶像崇拝の克服//
  神への愛;恋愛詩と宗教-孔子と詩経/聖書の雅歌とユダヤ教/ユダヤ教の雅歌解釈/神への愛/隣人愛の行方//
  罪と赦し;悔い改めの祈りと父祖の力/ユダヤ教の礼拝と祈禱書/平日の朝の礼拝における「悔悛」/「悔い改めの十日間」と「スリーホート」の祈り/父祖の徳と救済/聖者廟へ//
  神秘の力;未知の世界と盲目ということ/科学的モデルと未知の解明/創造的思考と無限なるもの/神秘主義の位置/ブラツラフのラビ・ナハマンと寓話の世界//
近代との相剋 自治の終焉;近代への視点/ユダヤ人自治社会の崩壊過程-内側からの脅威/古典的ユダヤ人自治社会の社会構造/法的自治の宗教的な基盤/ラビ・ユダヤ教体制を脅かすもの/自治の行方//
  聖書解釈の行方;神的強制か自発的意志か/近代化の衝撃とトーラーの権威の行方/近代の挑戦-自発的意志の神格化/自発的意志をめぐるユダヤ教の聖書解釈/聖書解釈のめざすもの//
  聖書と現代;価値観の多様性ということ/聖典への視座/認識能力とコンテクスト/「学」と「思」の普遍妥当性にむけて/識別の射程など、
370ページ。


 同じ著者による→こちらを参照:本頁上掲「v. タルムードとラビ・ユダヤ教など」/「ユダヤ教正統主義におけるコスモスとアンチコスモス」、『ユダヤ的叡知の系譜 タルムード文化論序説』(2022)

A.J.ヘッシェル、森泉弘次訳、『マイモニデス伝』、教文館、2006
原著は Abraham Joshua Heschel, Maimonides. Eine Biographie, 1935
生成と成熟;流浪の生活/フェズにて/預言/模範/イスラエルへの畏敬/聖地への旅/〈闘い〉対〈同化〉/フスタートにて/教育改革/メシア到来への憧憬/イェーメンへの書簡/悪党スッタ/変容/マイモニデスとアリストテレス/神についての瞑想//
克己と完成;マイモニデスを慕う巡礼者/「
故国(くに)のアンダルシアでは……」/全てのユダヤ系国民の首長として/アラベスク模様/対立/迷える者のための道案内/諦念/「わたしは勝利を求めない」/ルネルの賢者たち/イミタチオ・デイなど、
348ページ。


神田愛子、『マイモニデスにおける神への道程 神の知解と人間の生き方の相関性を巡って』、晃洋書房、2024
序論 マイモニデス『迷える者の手引き』をどう読むか
  序章 研究の方法とマイモニデスの著作の位置づけ;はじめに//『手引き』は秘伝的な教えの書であるのか――執筆上の問題意識――//
    研究の課題と方法;マイモニデス研究の動向――哲学的アプローチから全人的アプローチへ――/課題設定と研究方針――『手引き』全体の構成と前提知識を中心に――/研究の経緯と本書の構成――「神の知解」と「人間の生き方」の相関性を巡って――//
    マイモニデスの著作の位置づけ;時代背景――三つの一神教共存の時代からユダヤ教徒迫害の時代へ――/マイモニデスの生涯と主な作品――スペインからモロッコ経由でエジプトへ――/中世イスラーム思想のユダヤ思想に与えた影響――ムウタズィラ派とアシュアリー派を中心に――/中世ユダヤ思想におけるマイモニデスの位置づけ――サアディアからクレスカスまで――/『迷える者の手引き』の翻訳史――ユダヤ・アラビア語からヘブライ語、ラテン語、多言語へ――//
  マイモニデスの読解法――『迷える者の手引き』Ⅱ:30における「創造の業」理解の要件――;はじめに//
    『手引き』理解の方法論的考察;学問の指導書としての『手引き』/文法的知識の重要性/自然学の知識の重要性――「質料」と「形相」の観点から――//
    『手引き』第2部30章の位置づけ・特徴・構成//
    マイモニデスの創造論;「初め」と「始源」の差異による創造論の解釈/文法学の知識に基づく「地」の解釈/自然学の知識に基づく「人」の理解/ラビ文献の引用に基づく創造論の解釈//
    むすび//
神の本質と属性
  マイモニデスの属性論――キリスト教およびカラーム批判の観点より――;はじめに//
    マイモニデスの属性論の概要;基本的な考え方(第1部50章-54章)/否定神学(第1部55章-60章、65章-67章)/神の名について(第1部61章-64章)/哲学的理解(第1部68章-69章)//
    キリスト教神学の影響を受けたイスラーム思弁神学に対する批判;マイモニデスのカラーム批判/ムウタズィラ派とアシュアリー派の属性論の違い/マイモニデスによる両派の見解の調停//
    論理的な意味の解釈と属性の五分類;論理的命題と信条の定義/アリストテレスの論理学からみたマイモニデスの属性の五分類/行為の属性の特異性//
    属性論からみた二つの相反するプラトン的考え方の調停//アリストテレス的見解と否定神学の矛盾の調停//むすび//
  神の働きからみた神の本質と属性――『迷える者の手引き』Ⅰ:53‐54より――;はじめに//マイモニデスの考える神の属性//マイモニデスの考える神の本質//モーセと神の応答にみる神の本質と属性の理解//
    13の属性からみる神の行為の属性と人間の徳の行為の関係;13の属性とは何か/神の行為の属性/神の行為の属性と人の徳の行為の関係/神の行為の属性を理解することの意味//
    属性の五分類における行為の属性の意義//むすび//
戒律と人間の自由意志
  マイモニデスにおける戒律の道理と目的――『迷える者の手引き』Ⅲ:27を中心に――;はじめに//
    すべての戒律に道理はあるのか;サアディアの見解/マイモニデスの見解/なぜ道理が明確ではない戒律が存在するのか//
    戒律の有益性と意義//マイモニデスが考える法の目標//いかにして法の目標に達するのか//
    法が究極的に目指すもの;現世的な目的と究極的な目的/「巣からの放逐」の目的は何であるのか/マイモニデスは何を隠そうとしたのか/戒律の究極的な目的は後の世であるのか//
    むすび//
  マイモニデスにおける人間の自由意志と神の摂理;はじめに//人間の自由意志に関するマイモニデスの法学的見解//
    神の摂理に関する二つの議論;神の摂理についての六者の見解/ヨブ記註解にみる五者の見解//
    摂理と自由意志の関係//むすび//
マイモニデスにおける神への道程
  マイモニデスにおける神への道程――『迷える者の手引き』Ⅲ:51より――;
    マイモニデスの譬えにみる神と人間の完全な関係;
神と人間の完全な関係に至る段階に即した譬え話の解釈/最終段階に至るための必要事項/究極の目的に向けての実践訓練//
    神に近付くために必要な神への「知」と「愛」、その隔てとなるもの;神についての「知」と神に対する「愛」の関係/神との関係の隔てとなるもの//
    ユダヤ・アラビア語原典におけるヘブライ語――聖書とタルムードの引用を中心に――;アラビア語とヘブライ語の併記箇所/聖書に関連する語句の引用/タルムードからの引用//
    むすび//
  人間の完全性は知解と生き方の何れにあるのか――『迷える者の手引き』Ⅲ:52‐54より――;はじめに//完全性の四つの側面//
    神に関する正しい知解を得る方法;律法が教える二つのこと――神に対する畏れと神への愛――/法の知識と賢者の知恵//
     求められる三つの行動―慈愛、公正、審判――//人間の完全性は知解と生き方の何れにあるのか//むすび//
終章  神の知解と人間の生き方はどう関係するのか//
あとがき/参考文献など、
246ページ。


 マイモニデスについては;

オリヴァー・リーマン、中村廣治郎訳、『イスラム哲学への扉 理性と啓示をめぐって』、2002

 も参照

フランツ・ローゼンツヴァイク、村岡晋一・細見和之・小須田健訳、『救済の星』、みすず書房、2009
原著は Franz Rosenzweig, Der Stern der Erlösung, 1921
要素、あるいは永続的な前世界;序論 〈すべて〉を認識する可能性について/神とその存在、あるいはメタ自然学/世界とその意味、あるいはメタ論理学/人間とその〈自己〉、あるいはメタ倫理学/移行//
軌道、あるいはつねに更新される世界;序論 奇跡を体験する可能性について/創造、あるいは事物の永続的な根拠/啓示、あるいはつねに更新される魂の誕生/救済、あるいは御国の永遠の未来/敷居//
形態、あるいは永遠の超世界;序論 御国を祈りによって手に入れる可能性について/火、あるいは永遠の生/光線、あるいは永遠の道/星、あるいは永遠の真理/門//
訳者あとがき(村岡晋一)など、
718ページ。

 ローゼンツヴァイクについて;

G.ショーレム、「『救いの星』の新版のために」、『ユダヤ主義の本質』、1972、pp.195-201

ピエール・ブーレッツ、合田正人・柿並良佑・渡名喜庸哲・三浦直希訳、『20世紀ユダヤ思想家 来るべきものの証人たち 1』、2011、pp.137-268:「第2章 世界の夜から《救済》の輝きへ-フランツ・ローゼンツヴァイクの星」
建てる息子の回帰/同化から異化へ/ヘーゲルと19世紀的な意味における歴史/イオニアからイエナへ-西洋哲学の思弁的な袋小路/諸時代の経験における世界の物語/追放と〈王国〉/歴史の彼方-イスラエルの残りの者

手島勲矢、『ユダヤの聖書解釈 スピノザと歴史批判の転回』、岩波書店、2009
序章 歴史への批判意識はいつ始まるのか - 古代の聖書パラフレーズから-;問題提起/中世ユダヤの聖書注解 - プシャットとデラッシュについて/第二神殿時代の聖書パラフレーズとデラッシュ/「順序」の問題とプシャット - 「逆転」と「保持」/解釈の発展 0 -『ヨベル書』と『ユダヤ古代誌』のパラフレーズ/むすび 第二神殿時代の歴史記述と聖書解釈//
文法学者の文化と写字生の伝統 - 古代から中世へ - イスラエル古典学の三つのメルクマール;三つのメルクマール/第一神殿時代 - イスラエル古典学の萌芽/第二神殿時代 - イスラエル古典学の発生/ユダヤ賢者・キリスト教父の時代 - イスラエル古典学の基礎/「プシャット」の追求 - イスラエル古典学の確立/むすび スピノザの世紀//
  本文批評の二つのアプローチ;はじめに 本文批評の矛盾/校訂テキストの宿命 - アレクサンドリアの場合/伝承の中の聖書テキスト(マソラー)/揺らぐ伝承の世界/アレクサンドリアの聖書 - 七十人訳(セプトゥアギンタ)/真正なるテキストを求めて - ギリシア語聖書の変遷/聖書本文校訂の現在/代表方式(diplomatic)と復元方式(eclectic) - 二種類の校訂本//
  ラテン語文法学者とラビの聖書解釈 - 「逆転」という解釈テクニック -//
間奏の章Ⅰ ユダヤ学の立場 - 「近代」に対峙する「歴史学」-;歴史学という「近代」 - ガイガーとルシュ/ヴェルハウゼン批判 - 東欧のユダヤ学とシオニズムと聖書研究//
ラビの聖書解釈とスピノザの視点 - 中世から近代へ - メタファーとプシャット - 中世ユダヤの意味論の骨格について -;聖書解釈の「中世」/スピノザとイブン・エズラ - 中世以後と近代以前/ラッシーのプシャット宣言/言葉の意味の二重性について/イブン・エズラの「プシャット」概念/むすび 言葉にできない意味//
  中世ユダヤ哲学におけるクレスカスのマイモニデス批判 - 口伝律法は書きうるのか -;口伝律法と成文律法/『ミシュナー』から『ミシュネ・トーラー』へ/『ミシュネ・トーラー』批判の始まり/「主の光」と「神の
灯火(ともしび)」の関係/『ミシュネ・トーラー』の三つの問題/テキストの引用ではなぜ不十分か/『ミシュナー』のテキストとは何か//
  スピノザのマイモニデス批判 - テキストの内側と外側の境界 -;はじめに スピノザとユダヤ研究/マイモニデスは「ドグマ主義者」か/マイモニデス研究とスピノザ/サアディアとマイモニデス-〈比喩〉解釈とドグマ主義/スピノザとマイモニデス - 比喩的言語の必要性//
  自然の歴史と聖書(Scripture)の歴史 - スピノザの選択とイブン・エズラの迷い -;スピノザとユダヤ思想/世界の統一と分裂の間で - ベルンフェルトとシャダル/スピノザの聖書解釈 - その理論/スピノザの聖書解釈 - その背景/スピノザの聖書解釈 - その実際/むすび 「あれか、これか」//
間奏の章Ⅱ 16・17世紀のキリスト教学者の本文批判とスピノザ//
ユダヤ学と旧約学の交差 - 近代と聖書研究 - 近代の旧約学とユダヤ学;ユダヤ学の「高等批評」批判/ヴェルハウゼンし両説とカウフマンの歴史的実証主義/高等批評と本文批評/高等批評の発生-その聖書解釈史的背景/本文批評から高等批評へ-スピノザの歴史批判の一つの背景//
  聖書本文批評と初期の聖書注解//
  中世ヘブライ語文法と近代 - ヒトパエル動詞の「再帰」について考える -;ヒトパエル動詞の問題 - 「再帰」という解決/ヒトパエル動詞は自動詞か、他動詞か/ラッシーとオンケロス/文法の相対化 - 今後の課題//
  終章 新たな歴史批判の始まりに向けて - 「タナッハ」構造とユダヤ・アイデンティティ -;近代におけるユダヤ教研究の二つの立場/二つの宗教と旧約学の予断/二つの「ヘブライ語聖書」と高等批評/「タナッハ」と地層累重の法則/むすび 「タナッハ」の構造とユダヤ・アイデンティティなど、
410ページ。


 同じ著者による→こちら(本項下掲の「ユダヤ神秘主義の源流-預言の終焉と『秘密』の解釈学-」、2012)や、そちら(「ユダヤ Ⅱ」の頁の「ix. ショーレムの著作とその周辺」)、またあちら(「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「本・書物(天の書)」の項)も参照

 上の本で扱われるスピノザ(1632-1677)の著書は;

スピノザ、畠中尚志訳、『神学・政治論 - 聖書の批判と言論の自由 -』(上下)(岩波文庫 青 615-1/2)、岩波書店、1944
上;緒言/預言について/預言者について/ヘブライ人たちの召命(ウォカチオ)について。又預言者の賜物はヘブライ人たちにのみ特有であったかどうかについて/神の法について/諸ゝの祭式が制定された理由について。又史的物語への信憑について、換言すればさうした信憑が何故に、又如何なる人々のために必要であるかについて/奇蹟について/聖書の解釋について、など、
292ページ。
下;本書にはモーゼ五書並びにヨシュア、士師、ルツ、サムエル、列王の諸巻が之らの人々自身に依つて書かれたのではないことが示される。その後で、之らの諸巻の著者が數人であったか、それとも一人であったか、一人であるとすれば一體誰であったかについて探求される/之らの諸巻に關する他の諸研究、即ちエズラは之らの諸巻に最後の仕上げをしたかどうか、ヘブライ寫本の中にある欄外註は異なれる讀み方を示したものかどうか/舊約聖書に於ける爾餘の諸巻が上記の諸巻と同様の方法で吟味される/使徒たちは彼らの書簡を使徒として又預言者として書いたのか、それとも教師として書いたのかが探求される。次いで使徒たちの職分の何たるかが示される/神の律法の眞の契約書について。又如何なる意味に於てそれが神の言葉と呼ばれるか。そして最後に聖書は、神の言葉を含む限りに於ては損はれざる形に於て我々に傳はったことが示される/聖書の教へは極めて単純なものであること、又聖書は服従以外の何物をも目的としてゐないこと、更に又聖書は神の本性については人間が一定の生活方法に依つて模し得られること以外の何ものも教えてゐないことが示される/信仰とは何であり、信仰者とは如何なる人々であるか。更に信仰の諸基盤が規定され、そして終りに信仰が哲學から分離される/神學は理性に隷属せず、理性も神學に隷属しないことが示され、併せて我々が聖書の權威を信ずる理由が説かれる/國家の諸基礎について、各人の自然權及び國民權について、また最高權力の權利について/何びとも一切を最高權力に委譲することが出来ないし、又その必要もないことが示される。更にヘブライ人の國家がモーゼの在世時代にはどんな風であったかについて、又モーゼの死後、諸王が選ばれる前には、どんな風であったかについて、又その國家の優越性について、最後に又神の國家が亡んだり、騒擾なしには殆ど存續し得なかったりした理由について語られる/ヘブライ人たちの國家組織と歴史とから若干の政治的教義を歸結する/宗教上の事柄に關する權利は全然最高權力のもとにあること、又我々が神に正しく服従しようと欲すれば宗教への外的崇敬は國家の平和を顧慮してなされねばならぬことが示される/自由なる國家に於ては各人がその欲することを考え、その考えることを言ふことが許される、といふことが示される、など、
310ページ。

 原著は1670年刊行。
 スピノザについては→こちらも参照:「バロックなど(17世紀)」の頁の「viii. ライプニッツなど


手島勲矢、「ユダヤ神秘主義の源流 - 預言の終焉と『秘密』の解釈学 -」、『イスラーム哲学とキリスト教中世 Ⅲ 神秘哲学』、2012、pp.273-304
はじめに - ユダヤ神秘主義の定義問題/カバラー思想と預言の終焉/第2神殿時代の預言概念 - ダニエルとエッセネ派の聖書解釈/結語 - 果たして預言はイスラエルから消えたのか

 同じ著者による→こちらを参照:本項上掲の『ユダヤの聖書解釈 スピノザと歴史批判の転回』、2009

M.ハルバータル、志田雅宏訳、『書物の民 ユダヤ教における正典・意味・権威』、教文館、2015
原著は Moshe Halbertal, People of the Book : Canon, Meaning, and Authority, 1997
刊行によせて(市川裕)//
序論 正典テクストとテクスト中心共同体//
正典と意味;正典の様様な用途/画定された正典/権威と画定/正典テクストの意味/正典と善意解釈の原理/テクストが閉じられることと、聖書解釈が開かれること/正典を非善意的に読む//
権威・論争・伝統;著者の意図と権威的な意味/正典と論争/論争と伝統についての三つの見解/柔軟な正典から閉じられた法典へ/機関と正典//
正典と教育課程;形成的テクスト/「タルムード・トーラー(トーラーの学習)」におけるトーラーの概念/タルムード主義に異議を唱える者たち/法典化と脱正典化/エソテリシズムと検閲/カバラー神秘家とタルムードの教育課程/強い正典性と共有される言説//
結論/補遺 主権者と正典//
訳者あとがきなど、
342ページ。


 こちらにも挙げておきます;「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など」の頁の「本・書物(天の書)など
………………………

Alexander Altmann, Studies in Religious Philosophy and Mysticism, Routledge and Kegan Paul, London, 1969
『宗教哲学・神秘主義研究』
序/中世のイスラームとユダヤ教におけるデルポイの金言/「昇天の梯子」/イブン・バッジャーの人間の究極の幸福論/マイモニデスにおける本質と実存//
ラビによる創造の教義についての覚書/サアディアの啓示の理論:その起源と背景/ヴォルムスのエレアザルによるメルカバーの象徴/ジローナのアズリエルにおける〈殻〉のモティーフ/モーセス・ナルボニの「『シウール・コーマー』についての書簡」//
ウィリアム・ウォラストン:イギリスの理神論者にしてラビ学者/モーゼス・メンデルスゾ-ンのライプニッツとスピノザ論/フランツ・ローゼンツヴァイクの歴史論など、
318ページ。


Alexander Altmann, Essays in Jewish Inrellectual History, Brandeis University Press, Hanover , New Hampshire and London, 1981
『ユダヤの知的歴史試論』
前書き/ラビによるアダム伝説のグノーシス主義的背景/イサアク・イスラエリにおける創造と流出:再検討/サアディア、バヒヤ、マイモニデスにおける自由意志と予定/マイモニデスの「四つの完成」/マイモニデスとトーマス・アクィナス:自然的預言か神的預言か?/イタリア・ルネサンスの何人かのユダヤの人物に反映した〈修辞術〉/モーゼス・メンデルスゾーンによる神の存在証明/モーゼス・メンデルスゾーンの奇蹟論/メンデルスゾーンの解放請願の哲学的起源/メンデルスゾーンの破門論:教会法の背景/19世紀のドイツ・ユダヤ人における説教の新たな様式/フランツ・ローゼンツヴァイクとオイゲン・ローゼンシュトック=ウエッシー:彼らの「ユダヤ教とキリスト教についての書簡」への序/20世紀のドイツ・ユダヤ人における神学/レオ・ベックとユダヤ神秘主義の伝統など、
336ページ。


Steven M. Wasserstrom, Between Muslim and Jew. The Problem of Symbiosis under Early Islam, Princeton University Press, Princeton, New Jersey, 1995
『ムスリムとユダヤ人の間で 初期イスラーム下での共生の問題』
序説//
諸軌跡;ユダヤ人とは誰だったのか? 初期イスラーム下でユダヤ人共同体を輪郭づける際の諸問題/初期イスラームのユダヤ人メシアたち//
諸構築;歴史と神話の間でのシーア派とユダヤ人/イスラーム化ルネサンスにおけるユダヤ研究と比較宗教//
諸親交;諸起源と天使たち - ユダヤ=ムスリムの共生における通俗的および秘教的文学/結論 - 共生の歴史と哲学についての省察など、
308ページ。


 →こちらにも挙げておきます:「イスラーム」の頁の「ii. 思想史・哲学史的なものなど」。また→前掲そちらも参照:本頁の「vi. マガーリヤその他と天使論

Edited by Seyyed Hossein Nasr and Oliver Leaman, History of Islamic Philosophy, 1996/2001, pp.671-780 : “Ⅵ The Jewish philosophical tradition in the Islamic cultural world”
「イスラームの文化世界におけるユダヤ哲学の伝統」
序説
(Oliver Leaman)/イスラーム世界におけるユダヤ哲学(Arthur Hyman)/サアディア・ガオン・アル・ファッユミ(Lenn E. Goodman)/イブン・ガビロール(Irene Lancaster)/ユダ・ハレヴィ(Barry Kogan)/マイモニデス(Alexander Broadie)/ゲルソニデス - レヴィ・ベン・ゲルショム(Gad Freudenthal)/ユダヤ教とスーフィズム(Paul B. Fenton)/ユダヤ・アヴェロエス主義(Oliver Leaman)

Aaron W. Hughes, The Texture of the Divine. Imagination in Medieval Islamic and Jewish Thought, Indiana University Press, Bloomington and Indianapolis, 2004
『神的なものの肌理 中世のイスラームおよびユダヤ思想における想像力』
序論/神的なものを読む - 通過儀礼譚への使用者案内/行間を読む - 神的なものとの出会いとしてのテクスト/汚れた鏡を磨く - 哲学的想像力/哲学者の通過儀礼 - 儀礼的詩学と意味の探求/「神は美しく愛は美である」 - 中世イスラームおよびユダヤ哲学における美学の役割/結論//
附録;
Ḥay ben Meqitz - アブラハム・イブン・エズラによる通過儀礼譚(英訳)など、
288ページ。

 中世のイスラームおよびユダヤ思想、とりわけその新プラトーン主義における Ḥay ibn Yaqẓān (『目覚めた者(ヤクザーン)の子・生ける者(ハイイ)』)、とりわけイブン・スィーナー、イブン・トゥファイル、アブラハム・イブン・エズラによるテクストに焦点を当て、哲学と文学、知性と想像力の関係を論じたもの(p.2)。コルバンの〈東方の知恵〉論とそれに対する批判が pp.32-35 で位置づけられています。

 イブン・トゥファイルの「ヤクザーンの子ハイイの物語」邦訳は→こちらを参照:「イスラーム Ⅲ」の頁の「ix. 個々の著述家など

 イブン・スィーナーの「ヤクザーンの子ハイイの物語」英訳は→そちらを参照:同上「イブン・スィーナー」の項

 →あちら(「イスラーム」の頁の「ii. 思想史・哲学史的なものなど」、またイブン・スィーナーに関連してそちら(前記「イブン・スィーナー」の項)にも挙げておきます

viii. 神話、魔術など

デイヴィッド・ゴールドスタイン、秦剛平訳、『ユダヤの神話伝説』、青土社、1992
原著は David Goldstein, Jewish Legends, 1980/1987
創造物語;地界の水/光/トーラーと創造物語/み使い/悪/人間/霊魂/死後の生//
太祖以前;エデンの園/カイン/洪水/バベルの塔//
アブラハム;イサクの奉献//
ヤコブ;二人の兄弟/長子権/祝福/ペテル/ラケルとレア//
ヨセフ;エジプトに売り飛ばされたヨセフ/貞節な男ヨセフ/和解//
モーセ;エジプトとシナイ/奴隷となる/モーセの幼年時代/モーセの結婚/モーセの使命/ファラオの前で/エジプト脱出/トーラー/黄金の牛/幕屋と神殿/流浪/巨人族/モーセの受けた罰/アロンの死/バラム/モーセの死//
サウルとダビデ;サウル/ダビデの先祖/勇敢な若者/ミュージシャンのダビデ/ダビデとバト・シェバ/ダビデの死//
ソロモン;女と馬と/ソロモンの知恵/審判者ソロモン/シェバの女王/ソロモンの王座/神殿建設/シャミール/破れたソロモン/ソロモンの死//
エリヤ;歴史の中のエリヤ/エリヤの昇天/エリヤの再来/神秘の啓示者/メシアの先触れ//
エステルなど、
348ページ。


S.H. フック、吉田泰訳、『オリエント神話と聖書』、山本書店、1967
原著は S.H. Hooke, Middle Eastern Mythology, 1963

 5-8章が;
ヘブライの神話;創造神話/カインとアベルの神話/洪水神話/バベルの塔の神話/都市の崩壊に関する神話/祭儀神話/ヨシュア神話/櫃の神話/エリヤとエリシャの神話//
ユダヤ教黙示文学の神話的要素;ダニエル書/その他の神話の黙示的用法//
新約聖書における神話的要素;誕生物語/復活伝承
キリスト教の神話と儀礼など

 他に;
序章/メソポタミアの神話エジプトの神話ウガリットの神話/ヒッタイトの神話など、
282ページ。


ジョン・グレイ、森雅子訳、『オリエント神話』、青土社、1993
原著は John Gray, Near Eastern Mythology, 1969/1982
9章から13章までがイスラエル。
はじめに//
旧約聖書の神話と歴史;大いなる解放と契約/葦の海の脱出/シナイにおける神の顕現/申命記的歴史/ヨシュアの征服/原因譚的もしくは説明的神話/サムソンの物語/エリヤとエリシャの物語//
詩篇と予言書における詩的イメージの神話//神の治世;幕屋の祝祭/創造者としての神/ヨブと神の「王権」/黙示文学/救世主の勝利/サタンの発達//
王と救世主;イスラエル-神聖共同体の王/「天界の王」の行政官としての王/ダビデ的救世主/救世主の大宴会/人の子など(pp.285-404)。

 他は
メソポタミア(1-4章)、カナアン(5-8章)など、
422ページ。


 「西アジア」のページで挙げたこちらも参照:

F.M. クロス、『カナン神話とヘブライ叙事詩』、1997

檜山哲彦、「リリト アダムの最初の妻」、『現代思想』、vol.11-8、1983.8:「特集 女性原理」、pp.84-93
リリト生まれる/リリト生きる/死なないリリトなど

ボルヘス、ゲレロ、『幻獣辞典』、1974、pp.100-102:「ゴーレム」/
  pp.104-105:「ハニエル、カフジエル、アズリエル、アニエル」/
  p.119:「ユダヤの悪魔たち」/
  p.129:「ちんばのウーフニック」/
  p.133:「リリス」
………………………

 上掲ゴールドスタイン、秦剛平訳、『ユダヤの神話伝説』(1992)の「訳者あとがき」で触れられている(pp.332-333)

Louis Ginzberg, The Legends of the Jews, 7 vols, 1909-1938

 が最もまとまったもののようですが、全7巻とあって未見。

“Haggadah (Jewish Legend from Midrash, Pseudopigrapha. and Early Kabbalah)”, Edited with Introductions by Willis Barnstone, The Other Bible, HarperSan Francisco, 1984/2005, pp.14-38
「アッガダー(ミドラシュ、偽典、初期カバラーからのユダヤの伝説)」
世界の創造;創造された最初のもの/アルファベット/第1日/第2日/第3日/第4日/第5日/第6日/人間と世界/天使たちと人間の創造/アダムの創造/人間の魂/理想的人間/サタンの堕落/女/楽園のアダムとエバ/人間の堕落/罰など
Louis Ginzberg, The Legend of the Jews, 1909 より抜粋

 個々の出典が明記されていないのが惜しまれますが、

・この世界以前にいくつもの世界が創造されていた話とか(p.15)(→次の
Schwartz, Tree of Souls, 2004, pp.71-72:“90. Prior Worlds”)(→こちら(本頁上掲「v. タルムードとラビ・ユダヤ教など」)や、そちら(「ユダヤ Ⅱ」の頁の「ix. ショーレムの著作とその周辺」)、またあちら(「ユダヤ Ⅲ」の頁の「xii. カバラーなど」)に、こなた(「世界の複数性など」の頁中)、そなた(「ユダヤ Ⅲ」の頁の「xiii. ルーリアのカバラーなど」)も参照)

・七天七地(pp.16-18)(→
Schwartz, Tree of Souls, 2004, pp.184-185:“217. The Seven Heavens”

・ラハブ(p.19)(→ Schwartz, Tree of Souls, 2004, pp.106-107:“139. The Rebellion of Rahab”

・レビヤタン(pp.22-23)(→
Schwartz, Tree of Souls, 2004, pp.145-146:“182. The Sea Monster Leviathan”

・鳥の王
ziz (p.23)(→ Schwartz, Tree of Souls, 2004, pp.147-148:“184. The Ziz”

・ベヘモット(pp.23-24)(→
Schwartz, Tree of Souls, 2004, pp.146-147:“183. Behemoth”

・〈山の人
Adne Sadeh〉などの原初の巨獣(p.24)、(→ Schwartz, Tree of Souls, 2004, pp.144-145:“181. Adne Sadeh”)、

・宇宙大のアダム(p.28)、(→
Schwartz, Tree of Souls, 2004, p.128:“160. Adam the Giant”あなたでも少し触れています:「原初の巨人、原初の獣、龍とドラゴンその他」の頁中)

・クルアーン(コーラン)のイブリースの物語(→ここを参照:「イスラーム」の頁の「i. 『クルアーン』とその周辺」)に対応する、サタンによるアダムへの尊宗の拒否(pp.29-30)(→
Schwartz, Tree of Souls, 2004, pp.108-109:“142. Satan Cast from Heaven”そこにも挙げておきます:「天使、悪魔など」の頁の「ii. 悪魔など」)

 など、興味深い細部に富んでいます。より詳しくは次の本参照。
 また、p.23 にはレビヤタンが「神の玩具だ」という箇所があります。この点については、


Nocolas Sed, La mystique cosmologique juive, 1981, p.183, p.209

 また、ゴールドスタイン、『ユダヤの神話伝説』、1992、p.68

Howard Schwartz, Tree of Souls. The Mythology of Judaism, Oxford University Press, oxford, New York, 2004
『魂の木 ユダヤ教の神話』
緒言
(Elliot K. Ginsburug)//
序論;ユダヤ教の神話的層/ユダヤ神話の諸範疇/神話の平行例/ユダヤ教における神話と儀礼/最初の日の光/ユダヤ神話の継続する展開//
神の神話;神の栄光の玉座/セフィロートの神話/神の存在/神の神秘/神の属性/神の名/戦士である神/神の声と言葉/神はトーラーを研究する/受難する神/神は世界を歩む/シェキナーの最初の化肉/神の花嫁の神話/神の花嫁の幻視/神は地上の法廷に従う//
創造の神話;世界が創造される前/世界の創造/原初の光/創造の業/宇宙的な種子/起源の神話/聖なる水の神話/神に対する叛逆/太陽と月の神話/天使たちによる創造/創造の車輪/人間の創造/アダムとエバ/神話的な被造物/未完了の創造//
天の神話;エノクの昇天/魂の宝庫/天の旅/神的な戦車/七つの天/天の宮殿/天の境界標/仕える天使たち/死の天使/天の門//
地獄の神話;創造の未完の一角/リリートが深みより立ちあがる/吸血鬼、精霊、
死霊(ディッブーク)、悪霊/ゲヒンノムの歴史//
聖なる言葉の神話;アルファベットの文字/原初のトーラー/神はトーラーをイスラエルに提供する/トーラーの授与/変化するトーラー/トーラーを研究する/祈りの神話/ゴーレム//
聖なる時の神話;畏れの日々の神話/
仮庵祭(スッコート)の神話/トーラーの歓喜(スィムハット・トーラー)の神話/過越祭の神話/オメルの33日目(ラグ・バ-オメル)の神話/七週祭(シャヴオート)の神話/安息日の神話/アヴ月9日の神話/新月(ローシュ・ホデシュ)の神話//
聖なる人々の神話;イスラエルの神話/アブラハムの神話/イサクの神話/ヤコブの神話/モーセの神話/ダビデ王の神話/
義人たち(ツァッディキーム)の神話//
聖なる地の神話;エデンの園/約束の地/天のエルサレム/地のエルサレム/神殿の破壊//
流謫の神話;エデンからの追放/カインとアベル/悪しき傾斜/神の息子たちと人の娘たち/洪水/バベルの塔/ソドムとゴモラ/出エジプトの神話/10の失われた部族//
メシアの神話;メシアの創造/天のメシア/地のメシア/囚われのメシア/日々の終わり/死者の復活/来るべき世/メシアのエルサレム/父祖たちの弁論/流人たちの集合/ゴグとマゴグの闘いなど、
全670項目、B5版、
704ページ。


 →こちらでも少し触れています:「言葉、文字、記憶術・結合術、書物(天の書)など「」の頁の「本・書物(天の書)」
………………………

Joshua Trachtberg, Jewish Magic and Superstition. A Study in Folk Religion, University of Pennsylvania Press, Philadelphia, 2004
原著は1939刊
『ユダヤの魔術と迷信 民俗宗教の研究』
緒言(モーシェ・イデル)//
ユダヤ妖術の伝説//
伝説の背後の真実;ユダヤ魔術/魔術師/禁じられたものと許されたもの/「注意深いのが一番」//
悪の諸力;中間世界/用語法/悪霊たちの創世記/属性と機能/〈ユダヤ的〉悪霊たち/〈異民族の〉悪霊たち//
人と悪霊たち;攻撃/危機/霊の憑依/インクブスとスックブス/邪眼/言葉と呪い//
死者の霊たち//
善の諸力;補佐天使たち/属性と機能//
「…の名において」;名前の力/アブラカダブラ/ゴーレム/名前=魔術の進化/神の名前/天使の名前/借りられた名前//
魔術における聖書;神の言葉/言葉の使用//
魔術の処方;呪文/数/魔術的行為/共感魔術//
護符;物質的対象/宝石/書かれた護符/護符の準備/テフィッリンとメズーゾート//
諸霊との戦い;宗教的防御/魔術的防御/戦略/誕生、結婚と死//
自然と人間;自然の驚異/民俗生物学-生殖/忘却と想起//
医術;魔術と医師/病の原因/治療/霊薬/薬草//
占い;決定論対自由意志/予兆/予知術/占う王子たち/交霊/埋められた宝/試罪法による裁き//
夢;人事における夢/夢はどこから来るか/「夢はその解釈に従う」/解釈の技術/夢占い/不吉な夢を中和する//
占星術//附録;魔術的名前の形成/宝石上の
Sefer Gematriaot 写本など、
388ページ。


Translated by Michael A. Morgan, Sepher Ha-Razim. The Book of the Mysteries, Scholars Press, Chico, California, 1983
『セーフェル・ハ-ラズィーム 秘密の書』
序論//第1の天/第2の天/第3の天/第4の天/第5の天/第6の天/第7の天//附録;天使のリストなど、
108ページ。


Edited and translated by Steve Savedow, Sepher Rezial Hemelach. The Book of the Angel Rezial, Weiser Books, San Froncisco, Newburyport, 2000
『セーフェル・ラズィエル ラズィエルの書』
訳者序論//校正親方による序文//
第1の書;祭服の書
[Sepher Hamelbosh]/これはアダム、最初の人間の祈りである//
第2の書;これは大いなるレズィアルの書である/
Ruoch の力について/初めに、第1部[Berashith]/初めに、第2部//
第3の書;聖なる名前/ゲマラ/行為/最初の行為//
第4の書;秘密の書
[Sepher Hereziem]/これは創世の業である/これは定められた偉大さに要求される祈りである//
第5の書;黄道十二宮の書
(Sepher Hemazeloth)など、
304ページ。

 「この翻訳において、私は文をできるだけ簡潔に保ち、文法上および/あるいは統辞上必要な場合を別にして、暗示されるどんな動詞も代名詞も差し挟まなかった」
とのことで(p.16)、そのためなのかどうか、こちらの頭の回路と同期させることができずじまいでした。


 →こちらも参照:「魔術、神秘学、隠秘学など」の頁中
2013/11/01 以後、随時修正・追補
ユダヤ Ⅱ
ユダヤ神秘主義など
ショーレムの著作とその周辺、ショーレム以後、メルカヴァー/ヘーハロート神秘主義など
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