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オカルトポルノ 吸血女地獄
Der Fluch der schwarzen Schwestern *
    1973年、スウェーデン・西ドイツ・スイス 
 監督   ジョセフ・W・サルノ 
 撮影   スティーヴ・シルヴァーマン 
 編集   カール・フグント、ディートマー・プロイス 
セット装飾   アーミン・ライ、ペギー・シュテファンス 
    約1時間43分 
画面比:横×縦    1.66:1
    カラー 

DVD
* [ IMDb ]による。手もとのソフトは英語版で英題は Vampire Ecstasy。 [ IMDb ]ではこれはUSAでのヴィデオ・タイトル。他に Plaything of the DevilThe Devil's Plaything 等。

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 これまたえらい邦題ですが、独語原題は『黒き姉妹の呪い』といったところでしょうか。手もとのソフトに封入された藤本博之による「解説」には、「…(前略)…百本以上のドキュメンタリーのキャリアを経てポルノの世界にシフトしたサルノの視点は過激なまでにドキュメンタリー的、というか撮ったものを撮ったまんま使うという未精製感に満ちあふれており、なかば冗長とも思えるシークエンスの繰り返しの前に吸血鬼テーマの甘美な印象はなりをひそめ、延々と続く黒ミサのシーンだけが記憶に残る怪作となりはてている」とあります。
  とはいえ舞台は古城です。残念ながら[ IMDb ]には撮影地はドイツとしか記されていませんが、おそらくはロケによる階段や廊下は、華美な装飾を欠くだけにかえって、雰囲気を醸しだしてくれているのではないでしょうか。

 物語は日本語字幕によると、1969年5月3日付けのドリア・ドブチェコヴァの遺言によって、栗毛のヘルガ・ボラシュ(マリー・フォルサ)と黒髪のモニカ・ターナック(ウルリケ・ブーツ)が、森の中のヴァーガ城に招かれて到着するところから始まります。出迎えたのはワンダ・クロック(ナディア・ヘンコワ)を筆頭とする何人もの女中たちでした。モニカには斜め帽子に男装・金髪のドネヴが同行しています。他方雷雨の中、この地方の邪教信仰を調査するジュリア・マレンカ教授(アンケ・セイリング)とその弟で助手を務めるなかなかハンサムさんのピーター(ニコ・ヴォルファーシュテッター)が、車の故障で転がりこんでくる。
 ヘルガとモニカは400年前のダニア・ボロソフ男爵夫人とその妹ウラ・ボロソフの子孫でした。ダニアはエルゼベエト・バートリかヴラド・ツェペシュ風の人物だったらしく、村の女たちに焼き殺された。その陰には妹ウラと女中ドナショーヴァの陰謀があったという。杭に胸を貫かれることなく死んだダニアは子孫のからだに蘇ると予言しました。解説するジュリアは、「暗闇に香りを放つ女性だけが生きる者と亡者を切り離せる」と、意味はよくわかりませんが何やらかっこうのいい台詞を放つ。
 ワンダと女中たちは夜な夜な地下室で、腰布と装身具だけつけたような格好で怪しげな儀式を行なっています。その影響でヘルガを中心にむやみと発情する。ジュリアはニンニクを連ねて作った十字架で防御に努めます。約34分、暗い中でジュリアにワンダが迫ると十字架を掲げ、「強い意志をお持ちだ」とワンダは、『魔人ドラキュラ』(1931)でお馴染みの台詞を口走ったりする。かと思えば、約53分、ヘルガの首に掛かった十字架に触れられず、火箸で取りのけたりもするのでした。約56分、ジュリアとピーターがドナショーヴァの末裔であることもわかります。約1時間6分、日没、翼のついたいとこたちが闇の塔を飛びたったと女中の1人がかっこうのいい台詞を言う。
 霊の乗り移りには霊媒と熱意ある尼僧が必要とのことでしたが、約1時間11分にしてついに、男爵夫人はモニカに憑依して復活することになる。化粧も濃くなる。何やかやあった末モニカはジュリアに咬みつくものの、ジュリアは背後にあった杭を引き抜きモニカに突き刺すのでした。他の面々からは憑き物が落ちます。

 冒頭、葉の落ちた木立の向こうにほぼシルエット化した城の外観が映されます。夜です。画面右に寄ったそれは、鋸歯型胸壁をいただく円塔2基にはさまれた、やはり鋸歯型胸壁を走らせる城壁、右の円塔が角にあたり、もう1基少し右奥にも円塔が見える。左端の円塔の少し右には煙突が聳えています。カメラがズーム・インする。
 約7分には同じ角度で昼間の城外観が登場します。円塔には4階分の窓がある。また城壁の下方で何か所か手前や左右に突きでた部分があるようです。
 城の外観はずっと後、約1時間18分で再登場します。その際もカメラはズーム・インする。目ざすのは手前右の円塔の窓です。
 戻って約48分、手前の木越しに別の角度で城の外観が映されます。右端に鋸歯胸壁付きの円塔、左に本棟が伸びる。少し間隔を置いて手前右に別の低い壁らしきものがある。手前に走ってくるヘルガが下からとらえられます。詠唱付きです。
 約1時間3分では、ヘルガとピーターの背後で城がやや下から見上げられる。ここでは壁は白く茶色の瓦屋根をいただいている。この配色は中庭でも見ることができます。左下で白い壁が伸びている。

 夜と昼の城外観の間に、儀式が執りおこなわれる地下室らしき空間が出てきます。暗く、奥に半円アーチがあるようです。天井から鍋が吊され、大きな炎を立てている。あちこちに大きな蠟燭が何本も見えます。壁は荒れた様子です。
 ここで儀式が開かれる場面は幾度となく挿入されます。冒頭ではこれが5分前後まで続く。その際には必ず手叩きの打楽器の音が伴なわれます。一定のリズムで反復されるそれは、ある時点でテンポを速めるのでした。
 地下室の位置はよくわからないのですが、約38分、ずっと後の場面で揚げ蓋からおりる階段が映されます。蓋の外は暗青色の空です。手前には半円アーチがあり、このあたりの壁は粗い。階段は暗めの赤茶に染まっています。階段をおりてきたドネヴは下で左に曲がります。上に空が見える点からして、揚げ蓋は中庭のどこかにあるのでしょうか(屋上とも考えられなくはありませんが)。
 ドネヴは通路の奥右から出てきてすぐ手前で1~2段下りる。その先が地下室でした。
 地下への階段をおりるシークエンスは約1時間8分でもう1度登場します。


 地下室の儀式と昼の城外観の間には、駅に列車で着いたヘルガを、昔風の衣裳の侍従が馬車で出迎える場面がありました。雪をかぶった山並みを背に、白壁に茶色の屋根、鐘塔付きの小教会らしき建物のそばを通り過ぎ、森へ入った先に城があります。

 馬車は城門から中庭に入るのですが、アーチ状の門の上には櫓状の2階が左右に伸びています。左半は縦羽目張りの板壁、右半は石壁です。右端で手前に屋根が伸びているようです。
 約44分、後ほど中庭の様子が別の視点から移されます。アーチ口から出てきたジュリアが右へ進むと、カメラもそれを追います。やや下からの視角です。アーチ口のあるのが本棟か、その上は出てこないのですがざらざらした薄茶の壁で、格子つきの窓があり、右で奥へ何度か折れ曲がりながら伸びていきます。それから右に曲がります。壁は白く、茶色の瓦屋根をいただいている。中庭を囲むここは2階建てになっており、右端の壁は縦羽目張りの板壁でした。これが城門に続くのでしょうか。
 同じ視角は約1時間1分にも登場します。手前にこちらを向くジュリア、彼女が見る方にピーターとヘルガがいるということのようです。ジュリアの背後にワンダがぴったりくっつきます。今夜は9年に1度の夜だという。男爵夫人を焼いた女中の血がワンダに流れているとのことです。
 さらに後、約1時間6分から14分にかけて断続的に、ジュリアが中庭を右から左へ進み、暗くてよく見えないのですが玄関前あたりでしょうか、蝙蝠に襲われて服を剥がされたりします。
 また約1時間23分、後の場面では、玄関前でしょうか、昼間の中庭でジュリアとワンダが話します。縦羽目張り板壁の前にピーターとヘルガがいる。

 まずはヘルガ、すぐ後にモニカとドネヴが通されるゆるいアーチをなす玄関から入ったところは、薄暗い空間です。装飾っ気はなく、あくまで通路という扱いのようです。玄関扉は上方に小さな丸窓が2つ開いています。扉の右で手前に折れる壁すぐにもアーチがある。この城には電気は通っていないとのことです。

 約8分、次いで階段室です。右下から左上に上がってきてたぶん2階となる。2階からはまた左上へあがっていきます。鉄の細い手すりがついている。3階へあがる部分は格子になっている。壁は白く、左上の柱は上方で半円アーチに移行します。ここに限らず、柱はしばしば半円アーチにつながるというのが、この城内の特徴であるようでした。
 2階では階段をあがったすぐ左にもアーチがあり、木の扉がついています。2階は客室が並ぶということのようです。
 同じ階段かどうか、約32分、後の場面で下から上へまっすぐのぼる階段が仰視されます。薄暗い。壁は白く、右の壁には窓が段をなして並ぶ。左の壁には1箇所、小さな半円アーチ口があります。まずヘルガがおりてきて、追ってきたジュリアと話します。吸血鬼が蘇るには生贄として男爵夫人を殺した女たちの子孫の血が必要だという。二人は階段をおりると左へ進む。右下からワンダともう1人の女中が出てきます。


 約9分、城のいわば中枢として居間があります。電気がないという設定なので薄暗いのですが、けっこう広く暖炉もある。壁にはいくつも肖像画がかかっており、その中に男爵夫人の肖像もあります。出来ははなはだ芳しくありません。
 約21分、また少し後の場面では、居間の片隅に長円テーブルが配されていました。その背後の壁からいくつも何か突きだしています。大きくはないのですが、狩りの獲物の剥製でしょうか。
 さらに後の場面に、約49分、居間への入口に面した廊下も映ります。左に窓があるのか光が射している。右半は薄暗い。モニカがそこから中に入り、それを後ろでジュリアがうかがいます。

 約10分、壁の上半は白、下半が茶色の部屋の片隅で侍従が食事しています。柱をはさんで右に扉がありました。そのすぐ手前・上は低いアーチです。先で通用口につながるようです。通用口の扉の左には格子つきの小さめな窓があります。
 すぐに続いて約11分、上半が白、下半はかすれた空間がこの部屋につながっているようです。アーチで区切られている、その奥の扉からワンダが入ってくる。手前で1段下りたようです。右の方へ少し進むと壁の下半は先ほど同様茶色となり、通用口に続く木の扉があります。ここは使用人の空間らしい。


 約22分、ヘルガが裸になっていたのは浴室でしょうか。壁はやはり白く、柱が上でアーチになる。
 あるいはヘルガの寝室と同じ部屋か。約45分、扉の手前・上がやはりアーチで区切られています。周辺の壁はやや粗い。扉を開けた向こうにもアーチがのぞいています。
 また別の場面ではピーターの部屋も映ります。約14分、最初に出てきた際は手持ちカメラがゆらゆら前進したりする。約49分の際には光と影の対比がきつい。約51分、その少し後には彼の部屋は夕陽に赤く染まっています。同時に右のドア付近は青味を帯びている。さらに少し後、約59分、手前が青く奥が赤味を帯びた同じ部屋で、ジュリアがピーターの唇にキスしたりします。
 約1時間22分、ジュリアの部屋も後に映りますが、やはり青と赤に染められています。


 位置はわかりませんが、城内には厩があります。2階があって干草が積んである。ここでまずヘルガとピーター、後にヘルガとドネヴが愛を交わします。
 この他背の低い草に覆われた丘、約48分と1時間18分、細く短い木の橋を渡した森の中の川なども城の近くにある。

 おそらくは2階にある廊下が何度か登場します。約36分、最初はワンダともう1人の女中が進む。薄暗い。ここは2階ではなく玄関から入ったところかもしれない。
 すぐに続いて、部屋のドアからドネヴが出てきます。数段おりたようです。右からワンダが現われます。やはり薄暗い。
 後に約46分、やや幅の広い廊下が映ります。いくつものアーチが横切っている。壁は白い。カメラは右寄りです。ここを女中の1人が呪文を唱えながら進みます。

 約1時間3分、白壁でアーチ付き、前に出てきた階段をあがった2階と同じ位置でしょうか、その手前に廊下が伸びています。いくつものアーチに横切られている。ここをジュリアが右奥から左手前へ進みます。廊下ですが左の壁に暖炉がありました。先でモニカの眠る部屋に入る。ドネヴもいます。カーテンを開けようとするジュリアをドネヴが攻撃します。カメラは床近くに配されている。
 約1時間5分、そこを飛びだして廊下に戻ります。右寄りのカメラは床近くのままです。奥から手前右へ進む。
 続いて階段室がやや上から見下ろされます。下にワンダと女中2人がいる。白壁が丸みを帯びていることがわかります。左の壁には窓がある。かなり下から見上げるカメラに切り替わる。また俯瞰に替わって、ジュリアが丸天井の階段を駈けおります。先は真っ暗でした。以前ヘルガとジュリアがおりた階段と同じなのでしょうか。
 また後には、約1時間8分、モニカとドネヴが廊下を左から右へ進むさまが下からとらえられます。

 さらに後の約1時間31分、暗い階段をあがるジュリアが上から見下ろされ、次いで暗い廊下を右から左へ進む。手前左の扉を叩くと、女中たちに襲われます。後述の赤い部屋の中の様子と交互にカットが配されますので、扉の中は赤い部屋ということでしょうか。十字架で防御しつつ奥へ、次いで階段を駈けおりるさまがかなり下から見上げられる。いったんカットが切り替わってやはり階段を左上から右下へ、手前の手すりと白い柱越しのショットです。おりて右へ、少し先は自室でした。


 約1時間18分、モニカが吸血鬼化してからは、赤い照明に浸された狭い部屋が登場します。直前で城の外観にカメラがズーム・イン、右手前の塔の上方にある窓に向かって進みますので、そこに位置するということでしょうか。室内では手持ちカメラが右から左へ動いたりします。壁は湾曲しているようにも見え、奥に壁から少し凹んで窓がありますが鎧戸が閉じられている。壁は荒れています。窓の手前の寝台にモニカが横たわっている。
 約1時間26分、後の場面で寝台がけっこう高いことがわかります。右の方に入口があるようです。ピーターと睦みあった後、モニカは彼、そしてヘルガに咬みつく。


 約1時間37分、なぜかクライマックスは城を出て森の中、逃げるヘルガをジュリアが追います。暗くてよく見えないのですが、ヘルガは屋外にある木の階段をのぼる。手前に地面から杭が突きだしています。ともあれモニカに咬みつかれつつジュリアは、ヘルガの足もとに移動、杭を抜きとるのでした。

 過去の邪悪な人物が子孫のからだに憑依して復活しようとする設定は、『血ぬられた墓標』(1960)に見られたものでした。充分活かされていないとはいえ『女ヴァンパイア カーミラ』(1964)、時間の幅が狭くもともとは悪人ではないのが『亡霊の復讐』(1965)、子孫は復讐相手とはいえ『吸血魔のいけにえ』(1967)、やはりもともとは悪人ではない『イザベルの呪い』(1973)などにも同様のモティーフが組みこまれていました。『血とバラ』(1960)や『惨殺の古城』(1965)にも相似た趣向を認めることができるでしょう。イタリアやドイツなど、一時期のヨーロッパ大陸の人間はどれだけこの手の話が好きなのだろうとか思ってしまいますが、他方、USAには『怪談呪いの霊魂』(1963)がありました。この映画の原作はラヴクラフトの『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』(1927-28)ですが、ディクスン・カーの『火刑法廷』(1937)にも相通じる点を見出すことができるかもしれません。吸血鬼復活の過程を描くという点では、『凶人ドラキュラ』(1966)を連想することもできるでしょうか。
 本作で祓魔師の素養を持つのはジュリア・マレンカ教授で、最後にはその役割を果たすことになるわけですが、それまではおろおろする方が多く、むしろ生贄として狙われている始末です。他方吸血鬼復活のために采配を振るうのが女中頭のワンダでした。他の同輩たちに対して権力を振るっている風には描かれない一方、何度となくジュリアの背後にすり寄って話しかけることを楽しみにしているかのようです。それでいて約40分前後、普段は薄く笑みを浮かべるワンダがひっつめにしている髪を下ろして激しく踊り、遠隔操作でヘルガに呼びかける場面はけっこうかっこうがいい。彼女こそが最も興味深いキャラクターだったといえるのではないでしょうか。
 とはいえ度重なる儀式の場面と濡れ場などの挿入もあってテンポのぐだぐださ加減は否みがたい。それを救うものがあるとすれば、とりわけ約1時間3分からの2階廊下と階段のシークエンスを始めとして、幾重ものアーチに区切られた廊下や室内、いくつかの階段あるをもって、古城映画として記憶されるに値するという点にほかなりますまい。

Cf.,  平和孝、「吸血鬼映画全作品フィルモグラフィ」、『季刊 映画宝庫』、1980.1:「特集 ドラキュラ雑学写真事典」、p.171
 2016/7/25 以後、随時修正・追補
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