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血の唇
House of Dark Shadows
    1970年、USA 
 監督   ダン・カーティス 
撮影   アーサー・J・オーニッツ 
 編集   アーリン・ガーソン 
 プロダクション・デザイン   トレヴァー・ウィリアムズ 
 セット装飾   ケネス・フィッツパトリック 
    約1時間37分 
画面比:横×縦    1.85:1 * 
    カラー 

VHS
* [ IMDb ]による。手もとのソフトでは 1.33:1

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 1966年から71年まで放映されたUSAのTV番組 Dark Shadows から(英語版ウィキペディア該当頁は→こちらを参照)、TVシリーズの原案者であるダン・カーティス自身が監督した映画版で(→英語版ウィキペディア該当頁)、おそらくTV版で設定されたものに基づくであろう人物間の関係がややつかみにくいものの、筋を追うのにさほど支障はありません。舞台となる一族の館を始めとして、その近くにあるらしい使われなくなった別の館などがいくつか出てきます。廊下を往き来もすれば階段を上り下りもする。隠し扉も2つありました。古城映画としては充分及第点でしょう。

 上掲英語版ウィキペディア該当頁によると、TVシリーズおよび本作での主なロケ地はニューヨーク州ウェストチェスター郡タリータウン村のリンドハースト Lyndhurst estate, Tarrytown, New York(→英語版ウィキペディア該当頁)で、野外ロケではそこから遠からぬスリーピー・ホロウ墓地 Sleepy Hollow Cemetery, Tarrytown, New York(→英語版ウィキペディア該当頁)、室内場面の一部はコネチカット州フェアフィールド郡ノーウォーク市のロックウッド=マシューズ邸 Lockwood-Mathews Mansion, South Norwalk, Connecticut(→英語版ウィキペディア該当頁)で撮影されたとのことです。[ IMDb ]にはまた、「旧館 The Old House」のロケ先としてニューヨーク州ウェストチェスター郡ブライアクリフ・マナー村のビーチウッド Beechwood - Scarborough, Briarcliff Manor, New York(→英語版ウィキペディア該当頁)が挙げられていました(追補:→「怪奇城の肖像(幕間)」の頁でも触れました)。

 ダン・カーティスは本サイトでは『家』(1976)で再会できることでしょう。コリンズ一族の女家長に扮するジョーン・ベネットは、本サイトでは『扉の蔭の秘密』(1947)でお目にかかりました。『サスペリア』(1977)にも出ています。クライマックス近くで急激に老化する吸血鬼の姿が『ハンガー』(1983)でのそれを連想させると思ったら、特殊メイクを担当したのは同じディック・スミスでした。
『血の唇』 1970 約0分:本館の外観、夜  画面の手前右にルプソワールとして配された木の向こうに、夜の館がさっそく登場します。2階建てに切り妻屋根、右寄りに高い角塔、その頂きは4隅から突起が上に伸びている。それ以外にも何かと出入りのある建物は、リンドハーストであります。カメラがズーム・インする。
 やや左下に下りていく階段が俯瞰されます。おりたすぐ向こうに扉がある。階段の右下は1階で手前へ伸びる廊下のようです。オレンジ味のある赤服の娘(後に名をダフネと知れます、リサ・ブレイク・リチャーズ)に、別の娘(後に名をマギーと知れます、キャスリン・リー・スコット)が、デヴィッドというおそらくは子供を見なかったか尋ねます。
 奥に伸びる廊下は2階でしょうか、半円アーチいくつかに横切られ、途中右に上への階段があるようです。その向かいは扉口、突きあたりは黒い丸窓らしい。 『血の唇』 1970 約0分:本館の二階廊下
マギーは手前に進んできて左の部屋を覗く。そこがデヴィッドの部屋なのでしょう。
 屋外を通りぬけて、近くにあるのでしょうか、入ってきたのは廃墟と化した、しかし広そうな屋敷です。暗く、蜘蛛の巣だらけでした。マギーはここでウィリー・ルーミス(ジョン・カーレン)に出くわします。ウィリーは何やら暗号めいた文面を見つけ、そこに宝石の在処が記されているのではないかと興奮しています。デヴィッドの父ロジャー・コリンズ(ルイス・エドモンズ)が現われる。ウィリーは馘首になります。いかにも浅薄そうなウィリーですが、実は本作での陰の主役にほかなりません。


 ウィリーは墓地を通りぬけ、コリンズ家の納骨堂にやって来ます。
中に入って幅の狭い下り階段を下りる。このあたりの壁は粗石積みです。 『血の唇』 1970 約4分:納骨堂、地下への階段
おりて手前右へ、廊下です。すぐ奥に半円アーチが横切り、突きあたりに窓が見えます。 『血の唇』 1970 約4分:納骨堂、階段の下で曲がった先
少し戻り、文面に従って隠し扉を発見、入った奥に鎖で結わえられた大きな箱がありました。
『血の唇』 1970 約6分:旧館の外観、夜  前面が白い建物ですが、中は廃屋状態です。
マギーは上への階段をのぼる。 『血の唇』 1970 約6分:旧館の階段、上から 
幅が狭い2階の廊下を奥から手前へ、 『血の唇』 1970 約7分:旧館の二階廊下
入った先は多角形の部屋でした。あちこちに扉があります。しかしマギーは閉じこめられてしまう。

 ウィリーは鎖を外します。大箱を開けると、中から指環をはめた手が伸びてきて首を絞めるのでした。
 廊下が奥へ伸びています。床は前に出てきた廊下と違っています。1階なのでしょうか。奥には別の部屋があるらしい。廊下の中ほど右で、上から階段がおりてきている(追補:右に引いたのは少し後の場面から)。  『血の唇』 1970 約11分:本館の一階廊下 
そこから婦人(後にエリザベス・コリンズと名が知れます、ジョーン・ベネット)が出てきて、手前右の部屋に入ります。
ダフネが机についていました。机の背は折り畳み式の戸棚になっており、右側の翼は細かい抽斗に分割されています。『吸血鬼ドラキュラ』(1958)でジョナサン・ハーカーの部屋にあったものが連想されますが、あれよりは規則的に仕切られています追補:戸棚、三角棚、鳥籠、他 - 怪奇城の調度より」の頁も参照)。 『血の唇』 1970 約8分:本館の一階、事務室+机に附属のキャビネット
 ダフネは林の中の道を門へ向かいます。犬の遠吠えが途切れない。杖をつく男の足もとが映されます。
 門には三角屋根がついていました。そのすぐ先に車が停めてあります。
 青年(後に名がジェフと知れます、ロジャー・デイヴィス)が別の車を走らせていると、その前にダフネが出てきて倒れる。首筋に咬み跡がありました。

 マギーの様子を経て、彼女を閉じこめたデヴィッド少年(デヴィッド・ヘネシー)は扉を入って左から右へ進みます。途中で奥へ廊下が伸びている。
そこを越えて右側の部屋にエリザベスと金髪を中央で分けた青服の娘(後に名がキャロリンと知れます、ナンシー・バレット)がいました(追補:右に引いたのは少し後の場面から。角をはさんで扉口が並んでいます。多角形の部屋とあわせ、こうした造作は他にも何度か見ることができました)。 『血の唇』 1970 約11分:本館の一階、多角形の部屋と隣りあった扉口
廊下の奥からジェフがやってきて、エリザベスたちのいる部屋に入ります。
 デヴィッドは廊下手前の左側に戻る。その先に左上がりの階段がありました。そこをあがると、踊り場を経て右上がりになる。その上がおそらく2階にあたり、階段はそこからまた左上がりに折れて続いています。

 マギーが閉じこめられた部屋の扉を、外から開こうと手が伸びる。上着の襟からレースの飾りがはみだしています。
 マギーは部屋から飛びだし、廊下を奥へ走る。探しに来たジェフとかち合います。 『血の唇』 1970 約13分:旧館の二階廊下
 ダフネがベッドに寝かされている。赤毛の女医(後に名をジュリア・ホフマン博士と知れます、グレイソン・ホール)が診察していました。初老の警官(後にジョージ署長と知れます、デニス・パトリック)もいる。
 エリザベスとロジャーが階段をのぼってきて、左奥に伸びる廊下の手前でジュリア、署長と出会う。
話の後ジュリアは廊下の奥へ戻ります。奥は青く染まっています。 『血の唇』 1970 約15分:本館の二階廊下
 酒場だか食堂です。トッド(ドン・ブリスコー)、店主のジョー、別の警官が話す。ダフネ以外にも女性が被害に遭い、死んだという。トッドはキャロリンと食事に来たようです。奥のテーブルにウィリーがいました。袖口のみ見える誰かが連れです。指環をはめている。

 夜の館が引きでとらえられます。手前右に杖をついた男の背が配される、
 玄関を男がノックし、エリザベスとの面会を求めます。英国の従兄バーナバスだという。ただしカメラは彼の主観の位置にあり、その姿はまだ映りません。バーナバスは入って少し先の扉口から応接間に来ます。多角形の部屋らしく、窓が広く取ってある。オルガンがあります。
応接間の手前右から廊下が伸びており、その途中右に上への階段があるようです。廊下の突きあたりはシャンデリアのある、食堂でしょうか。 『血の唇』 1970 約18分:本館の一階廊下 奥に食堂
階段からロジャーが下りてきて手前に進みます。
 バーナバスの肖像画に続いて、その右下に肖像画そっくりな本人の顔が、約18分にしてようやく映ります。肖像画のモデルは初代のバーナバスで、1797年に英国に渡ったという。エリザベス、ロジャー、ジュリア、キャロリンに加えて恰幅のいい初老の男性(後に名がエリオット教授と知れます、セイヤー・デヴィッド。『地底探検』(1959、監督:ヘンリー・レヴィン)でサクネッセン伯爵役でした)がいます。ジュリアは家史を編纂中だという。エリオットがなぜコリンズ家に滞在しているかは、少なくとも日本語字幕からはわかりませんでした。
 初代バーナバスの母ナオミの肖像画はエリザベスそっくりです。双方絵の出来は芳しくありません。現バーナバスはナオミの持ち物だったというネックレスをエリザベスに贈る。
 現バーナバスは初代の想い出の館だったという旧館に住むことになります。
 『血の唇』 1970 約20分:旧館の外観、夜  白い館の外観です。2階に屋根を加えて横に伸びている。中央に迫りだした部分は、三角破風の下を2階分の円柱4本が支えている。この奥のみは3階まであるようです。ビーチウッドの背面であります。
 中に入ってくるキャロリンが中2階回廊から欄干越しに見下ろされます。 『血の唇』 1970 約20分:旧館の玄関広間 吹抜回廊から
階段をのぼってくる彼女が、壁にかかった暗い調子の女性肖像画の表面に映った像としてとらえられます。肖像画の手前に蠟燭が2本立っている。
 室内に入ります。扉口の向こうは青く染まっています。
 廃墟状の空間を奥から手前へウィリーが急いでくる。このあたりの灯りは蠟燭だけでした。
手前で右に折れると奥に階段がのぼっています。カメラは下から見上げます。画面の上辺をゆるいアーチが縁取っています。上にキャサリンがいる。ウィリーも階段をあがって合流します。あがった先は窓付きの観音扉で閉じられる。 『血の唇』 1970 約22分:旧館 地下と一階を結ぶ階段、下から
下は地下室とのことでした。
 上向きのカメラが右から左へ、地下室に戻ったその先に柩が置いてあります。蓋が中から開かれる。


 キャロリンとウィリーは修繕中の居間のような部屋にいます。バーナバスが合流する。
 キャロリンの自室です。窓の前にバーナバスが現われる。


 バーナバスの歓迎パーティーが開かれています。キャロリンは薄いピンクのドレス、首に同じ色のスカーフを巻きつけています。
 マギーがジェフといます。マギーはデヴィッドの家庭教師でした。バーナバスはマギーのドレスを気にします。屋根裏のトランクで見つけたという。200年前当家に嫁いできたジョゼットの服だとバーナバスはいいます。彼女の肖像画もあるとのことです。
 書斎でバーナバスがマギーと話していると、キャロリンが入ってきます。


 旧館です。ジョゼットの部屋だという。180年前彼女に贈ったオルゴールを鳴らします。ジョゼットの肖像画が壁にかかっている。バーナバスはウィリーに、バーナバスに呪いがかかり、ジョゼットは崖から飛び降りた、父がバーナバスを柩に封印したと物語ります。キャロリンが乱入してくる。
 廊下の奥からメイドが進んできます。 『血の唇』 1970 約32分:本館の一階廊下
手前右の扉のところでキャロリンが死んでいました。

 約32分、葬儀です。キャロリンはエリザベスの娘でロジャーの姪、デヴィッドの従姉、トッドの婚約者だったことがわかります。雨が強く降り、風が音を立てています。納骨堂に柩が運ばれ、画面は真っ暗になる。

 ジュリアが冷蔵庫を開きます。中は試験管でいっぱいでした。実験室でしょうか、壁も戸棚も白い。雷鳴が鳴ります。
 エリオットが入ってくる。ジュリアが被害者の血液を検査しているのを見て、吸血鬼説を唱えます。ジュリアは治療可能だという。
『血の唇』 1970 約36分:廃プールのガラス張り天井

『血の唇』 1970 約36分:廃プール
 ガラス張りの浅い山型の天井が見上げられます。カメラが下向きになると、天井の下は周囲に円柱が並び、柱の下がさらに下へ掘り下げられていることがわかります。水を抜かれたプールの跡らしい。かなり広い。デヴィッドが下でボールを壁に跳ね返らせながら、キャロリンは死んでいないと歌います。声が反響している。
 跳ねたボールがプールの外の出入り口から飛びだします。追ってきたデヴィッドは、手前で穴に落ちてしまう。
 気がついて這いあがります。
『血の唇』 1970 約38分:廃プール 出入り口の向こうのプール跡は青く染まっている。「デヴィッド」と呼ぶ声が聞こえてきます。声は反響している。プールの脇を回って左から反対側に来ます。
霧の向こうからキャロリンが現われる。ゆったりした白のドレスを着ています。経帷子でしょうか。

 食堂です。皆がつくテーブルは横長六角形でした。廊下の奥左からデヴィッドが走ってくる。キャロリンを見たという話をロジャーは信じませんが、エリオットは墓暴きを提案します。

 食堂を出たトッドにエリオットの先の言葉が反響して聞こえます。納骨堂の前にやってきたところが上から見下ろされる。入って階段を下り、左へ進みます。キャロリンが現われる。抱きあう二人をカメラは、二人の間で真下から見上げます。

 昼間、トッドの病室を経て、
地下室でカメラは前進する。ゆるいアーチと柱に区切られています。壁は煉瓦積みです。燭台があちこちに置かれている。奥の中央に柩が配され、 『血の唇』 1970 約45分:旧館の地下室
その向こうからバーナバスが現われます。その手前左寄りにもう一つ柩があり、その蓋が中から押しあげられる。入っていたのはキャロリンでした。
 バーナバスはキャロリンに命令しますが、不服のようです。主の命令は絶対ではないらしい。


 玄関から入ったところをカメラは前進します。途中、警官が手前を右から左へ横切ります。奥の応接間に入っていくバーナバスをロジャーが迎える。
 ジュリアが手鏡を覗いていてバーナバスが映らないことに気づきます。
 バーナバスは地下室への階段を下りて左に向かう。柩にウィリーが押しこまれ、首に咬み跡が残っていました。
 廊下です。カメラは斜めになっている。 『血の唇』 1970 約48分:本館の二階廊下
中ほどの右から警官が出てきて手前右へ、トッドの病室に顔を出した時にはカメラは水平になっています。
 署長とエリオットがいる別の部屋、応接間のマギーやロジャーたちを経て、林道をパトカーが走ります。キャロリンが現われ、パトカーは木に激突してしまう。
 その騒ぎに乗じて青パジャマのトッドは病室を抜けだします。病室の窓は赤く染まっていました。
廊下を左から手前へ、 『血の唇』 1970 約49分:本館の二階廊下
右手には上下に階段が伸びています。 『血の唇』 1970 約49分:本館 二階から上下への階段
しかし階段の下、すぐの扉のところには誰か人がいた。廊下の左先、右側の扉口から署長とエリオットのいる部屋が見えます。左側にもう一つ扉口があり、そこに入ります。入った先は署長・エリオット室と中でつながっているようですが、そのまま先へ進み、
狭い階段をおりていきます。カメラはそれを下から見上げる。 『血の唇』 1970 約51分:本館の二階から下への狭い階段、下から
 屋外に出て奥から手前へ、そして左に進む。振り返って見上げると、建物の2階に開口部があり、そこにキャロリンがいました。奥は真っ暗です。
『血の唇』 1970 約51分:廃屋の二階への階段、上から  廃屋ののぼり階段が上から見下ろされる。
トッドが駆けあがったその先は、かなり広い部屋でした。ただし使われている様子はない。随所で斜め格子の桟に区切られた縦長の窓が見えます。奥でキャロリンが待っていました。
 階段が先と同じ角度で見下ろされ、警官があがってきます。帰りかけたところをトッドが立てた音に仲間たちを呼ぶ。銀に光る十字架をかざしてキャロリンを追いつめるさまが上からとらえられます。皆してキャロリンを押さえつけ、鞄を持って到着したエリオットが杭を打つ。『凶人ドラキュラ』(1966)での同巧の場面同様、キャロリンは被害者としか見えません。カメラは後退しつつ上昇する。ここまでで約55分でした。


 エリザベスが落ちこんでいるカットを経て、夜の旧館外観が映されます。ジュリアが訪ねてくる。
 ノックの音にウィリーが
中2階から階段を下り、左から右へ進みます。階段をあがった先で右に欄干が伸びており、その下を進むことになる。下の壁は白塗りです。先に玄関がありました。
 ジュリアは階段をのぼる。
『血の唇』 1970 約56分:旧館の玄関広間から階段と吹抜回廊
あがった向かいの扉からバーナバスが出てきます。
扉の左にも回廊が伸びている。 『血の唇』 1970 約56分:旧館の吹抜回廊、上から
また階段に平行する回廊の奥、さらに上への折れ曲がった階段が見えます。 『血の唇』 1970 約1時間4分:旧館の吹抜回廊から上への階段
 治療が始まります。ほどなく最近犠牲者が出ないというだけの期間が経ちました。ジュリアはバーナバスの気持ちを誤解します。
 旧館でバーナバスとマギーが晩餐をとります。バーナバスはオルゴールを贈る。ウィリーは何やら鬱屈しているようです。
 昼間ウィリーがマギーを訪ねる。
 酒場ないし食堂でバーナバスとマギーがデートする。帰って来たバーナバスとウィリーがぶつかります。
 昼間エリオットが旧館を訪ねてくる。
玄関から入って右にのぼり階段、あがれば中2階回廊になるわけですが、階段の左手は細長い空間になっており、左でさほど間を置かず壁に当たることがわかります。昼間なのにバーナバスが現われる。 『血の唇』 1970 約1時間6分:旧館の玄関広間から階段と吹抜回廊
 ジュリアをエリオットが責めます。1ヶ月間襲撃は起こっていないという。
 マギーとバーナバスが昼間の林を散歩しています。バーナバスは何かにつけ歓喜する。
『血の唇』 1970 約1時間10分:本館、低い位置から 奥に館が見え、屋上からジュリアが見ていました。
 背を向けたジュリアのところにバーナバスが訪れます。治療を急いでほしいという。手前の机に地球儀が3つ以上のっています。
 ジュリアの部屋です。夜逃げの支度をしている。そこにバーナバスが訪ねてくる。彼の様子を見たジュリアは、「あなたの顔が!」と叫ぶ。急激に老化して禿頭になっていました。先に触れたようにこのメイクは『ハンガー』に引き継がれることでしょう。ジュリアには咬みつかず首を絞めます。マギーに咬みつく。
 エリオットが旧館にやってくる。館内のどのあたりなのでしょうか、廃墟状で蜘蛛の巣だらけです。 『血の唇』 1970 約1時間14分:廃墟化した旧館内
 エリオット、署長、ジェフが相談しています。奥の壁に油絵がたくさんかかっています。ロジャーもいる。
 1797年、ジョゼットとバーナバスは結婚する予定だったが、ジョゼットが謎の死を遂げたとロジャーはいいます。明日がジョゼットの命日に当たる。


 マギーの部屋です。窓に銀の十字架が2つかけてあります。ベッドの背板にもある。
 隠し扉が開き、老化版バーナバスが入ってきます。警官の首を絞める。マギーの血を吸うと元に戻ります。


 旧館前に警官たち、ジェフ、デヴィッドが集まっています。マギーの部屋から浜辺へ抜け道が通じているという。署長はジェフに銀の弾丸を渡します。
 ジェフにエリオットからの言付けが届きます。セイント・ユスターシュ島で待つとのことです。ジェフは川を舟で渡ります。霧が這っている。岸でエリオットが出迎えましたが、彼には牙が生えていました。
『血の唇』 1970 約1時間25分:木立越しに旧館  木立越しに館が見えます。手前から背を向けたジェフが進む。
 中に入る。廃墟状です。蜘蛛の巣だらけで、燭台が光源でした。 『血の唇』 1970 約1時間25分:廃墟化した旧館内
暖炉の上に鏡が配されている。椅子に咬まれたロジャーがぐったりしています。杭を打つ。
 階段をのぼるさまが上から見下ろされます。
 ウィリーとマギーがいました。大鏡に加えて鏡台もあります。バーナバスは礼拝堂にいるという。ウィリーがジェフを殴って昏倒させます。
 中央の短い回廊をはさんでその左右から下へ階段がおりています。カメラは仰角です。左の階段をマギーが下りる。 『血の唇』 1970 約1時間29分:旧館、吹抜回廊と礼拝堂へ下る二股階段 下から
下に踊り場があり、そこから180度折れて右下に続きます。右の階段も同じように折れ曲がっている。階段を下りた先は青みを帯びており、そこでバーナバスが待っていました。 『血の唇』 1970 約1時間31分:旧館、吹抜回廊と礼拝堂へ下る二股階段 上から
 切り替わると下からの仰視に戻ります。階段の裏が板張りであるとわかる。蠟燭の炎でオレンジを帯びています。手前は青い。  『血の唇』 1970 約1時間30分:旧館、礼拝堂から二股階段
 ジェフが別の階段を下りてきます。 『血の唇』 1970 約1時間31分:旧館、三階から二階へ下る狭い階段
おりた下は多角回廊でした。奥の壁が赤みを帯びている。
『血の唇』 1970 約1時間31分:旧館、吹抜回廊 『血の唇』 1970 約1時間31分:旧館、多角形の吹抜回廊 下から
 ジェフはクロスボウを手にしています。バーナバスを止めようと駆け寄るウィリーの背に当たってしまう。床に霧が這っています。
 マギーが横たわる台の手前に、柩が2つ、斜めに開く形で置いてあります。
 バーナバスの声が反響します。袖からレース飾りが覗いている。ジェフはふらふら階段を下ります。
 ウィリーがバーナバスの背に矢を突き刺す。ジェフはさらに押しこみます。スロー・モーションです。
 ほぼ真上から倒れたバーナバスが見下ろされる。クロージング・クレジットが始まります。バーナバスの姿が霧に隠れると、蝙蝠が上に飛びだしてくるのでした。


 下掲のフリン『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』(1995)が記すように(p.213、p.216)、最後の蝙蝠が飛びたつモティーフは『ドラキュラ』(1979、監督:ジョン・バダム)でも採用されました。吸血鬼が滅びなかったことを示しているのかどうかはよくわかりません。
 他方不死者ないし復活した者が、かつての恋人ないし恋着の対象の生まれ変わりないし瓜二つの人物に出会うというモティーフは、『ミイラ再生』(1932、監督:カール・フロイント)、『執念のミイラ』(1944)、『ミイラの呪い』(1944)などの〈ミイラ〉ものに見られ、ハマー・フィルムの『ミイラの幽霊』(1959、監督:テレンス・フィッシャー)にも引き継がれていましたが、管見の範囲内ではあれ、少なくとも映画の領域では、吸血鬼のイメージとは結びつけられてはいなかったように思われます。『魔人ドラキュラ』(1931)以後のユニヴァーサル作品、『吸血鬼ドラキュラ』(1958)に始まるハマー・フィルムの作品には現われなかった(たぶん)。『血とバラ』(1960)が早い例の1つとなるのでしょうか? 『血ぬられた墓標』(1960)や『吸血魔のいけにえ』(1967)には祖先とそっくりな子孫という設定がありましたが、こちらは復讐の矛先でした。小説類ではどうなのでしょう? とまれ本作や『吸血鬼ブラキュラ』(1972、監督:ウィリアム・クレイン)、『ドラキュラ』(1992、監督:フランシス・フォード・コッポラ)などなどと、以後蔓延することになる。うろ覚えですが岡田真澄主演のTVドラマ『吸血鬼ドラキュラ神戸に現る』(1979、監督:佐藤肇→こちらでも触れました:『ギュスターヴ・モロー研究序説』(1985)[14]の追補(2018))も同断ではなかったでしょうか。吸血鬼を苦悩せるロマンティックなヒーローとして人間化するわけですが、これを良しとするかどうかは意見の分かれるところでしょう。なお本作ではマギーの心理があまり描かれていないため(TV版ではどうだったのでしょうか?)、悲恋は盛りあがりに欠けます。
 この点はさておき、人が住んでいる館に廃墟化した館、巨大な廃プール、キャロリンが追いつめられるよくわからない建物、位置のよくわからないクライマックスの礼拝堂など、複数の宏壮な建物の中でいくつもの廊下や階段が登場したことをもって、本作を古城映画として評価することができるのでした。

 
Cf.,

The Horror Movies, 3、1986、p.151

ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、pp.183-185/no.184、
 元のTVシリーズについて;pp.226-228/no.239


 TVシリーズだか本作の再映画化が;

『ダーク・シャドウ』、2012、監督:ティム・バートン

 2016/4/17 以後、随時修正・追補
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