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生きた屍の城*
Il castello dei morti vivi
    1964年、イタリア・フランス 
 監督   ワレン・キーファー、ルチアーノ・リッチ(ハーバート・ワイズ)、マイケル・リーヴス 
撮影   アルド・トンティ 
編集   マリオ・セランドレイ 
 美術   カルロ・ジェンティリ 
    約1時間31分 
画面比:横×縦    ? ** 
    モノクロ 

DVD
* 手もとのソフトの邦題は『生ける屍の城』。英語版。英題は Castle of the Living Dead
** [ IMDb ]には記載されていませんでした。手もとのソフトでは1.33:1ですが、タイトル・クレジットでは左右が切れており、本篇中でも人物が切れていたりします。しかしやはりタイトル・クレジットで上が切れているところもあったので、正確なところは今のところわかりませんでした(追記:下掲の Tim Lucas, Mario Bava. All the Colors of the Dark, 2007, p.575 によると 1.85:1。また同 p.577では、同書刊行時点で原版の存在は確認されていたものの、流通しているのはTV放映版に基づく画質芳しからぬトリミング版のみだという)。
………………………

 本作品については、以前次のような駄文を書いたことがあります;

  『Meigaを探せ!』第6回
「生ける屍の城」(ハーバート・ワイズ/ワレン・キーファー/ルチアーノ・リッチ監督、1964年 イタリア・フランス映画 )

この映画は昔テレビで放映されたのを見たのですが、ずっと気にかかっていた点が一つあり、最近DVD化されてやっと確かめることが できたのでした。

公開時の邦題は『生きた屍の城』で、監督名が三つ挙がっているのは同一人物です。タイトルどおりモノクロの低予算B級怪奇映画ですが、ファンにはクリストファー・リーが主演している点が注目されるかもしれません。最近では『スリーピー・ホロウ』(1999)や『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)に出ていた俳優といえばぴんと来るでしょうか。『吸血鬼ドラキュラ』(1958)のヒットで名を挙げ、イタリアに呼ばれて出演した数作品の一つです。またドナルド・サザーランドのデビュー作でもあり、さっそく二役で怪演しています。

とはいえしょせんB級映画、それが記憶に引っかかっていたというのは、主な舞台となる古城に附属した庭園が映る場面が何度かあるのですが、そこにけっこう奇妙な彫刻がいくつも登場したからなのでしょう。

大きく口を開けた顔面、ドラゴン、神殿、巨人、亀、象、傾いた家、海神などの大きな石像……こう並べればあれっと思われる方もいるでしょう。ローマから北に上ったボマルツォの村にある《聖なる森》です。ほんとうにそれが映っていたのか、だとすればロケしたのだろうし……

16世紀にヴィチーノ・オルシーニが作らせたという庭園のことを知ったのは、澁澤龍彦の『幻想の画廊から』(美術出版社、1967)に収められた「ボマルツォの『聖なる森』」によってでしょう。澁澤はその際依拠したマンディアルグの『ボマルツォの怪物』を後に訳しています(大和書房、1979;未見です)。またグスタフ・ルネ・ホッケの『迷宮としての世界』(種村季弘・矢川澄子訳、美術出版社、1966)でもふれられていました(pp.151-156)。

近年邦訳されたマリオ・プラーツの『官能の庭』(若桑みどり他訳、ありな書房、2000)でもとりあげられており(pp.115-122、またpp.91-103)、テレビの番組で紹介されたこともあれば(『アンビリバボー』、東海テレビで2002年12月12日放映。それ以前にたしか楳図かずおが案内役をつとめた番組を見た憶えがあります)、アルゼンチンの作家ムヒカ=ライネスによる『ボマルツォ公の回想』(土岐恒二・安藤哲行訳、集英社、1984)も訳されました(すいません、未読です)。

DVDを見ると、ほんとうにボマルツォの庭園でした。先のマンディアルグの原著が出版されたのが1957年ですから、それなりに知られていたはずで、よくロケの許可が出たなという気もしなくはありません。何せB級だし。彫像によじ登ったりしてるし。

B級B級と連発しましたが、実際クライマックスはかなり脱力ものなのですが、印象に残っていたのは庭園の彫刻だけでもありません。ヒロインと小人(実質上の主役)が古城の廊下や城壁の通路をさまよい、あるいは悪漢に追われる場面は、ロケとセットを組みあわせているようですが、モノクロによる光と影の戯れと相まって、けっこう美しい。いたずらにショッキングな描写などなくても、これだけで怪奇映画として及第点をあげるべきでしょう。

ボマルツォの庭園で撮影されたのも神秘的な雰囲気が出せるという以上の意味はないのでしょうが、映っているだけでも面白いし、それで充分です。ともあれ庭園史やマニエリスムに関心のある向きには必見の映画だということにしておきましょう。

 
  石崎勝基
三重県立美術館ニュース』、第71号、2008.12.12
[ <まぐまぐ!のサイト
 
 

 上で言及されているボマルツォの《聖なる森》については→こちらも参照ください。見る機会のあったものでは他に、『フランケンシュタインの花嫁』(1935)の再製作である『ブライド』(1985、監督:フランク・ロッダム)に確かボマルツォの庭園が出てきたような気がするのですが、[ IMDb ]では挙げられておらず、とまれ古城度の低くない作品ではあるので、いずれ確かめることといたしましょう。
  [ IMDb ]にはロケ先としてまた、ローマの北西、ブラッチャーノ湖の西岸に面したブラッチャーノのオデスカルキ城(オルシーニ=オデスカルキ城) Castello Odescalchii di Bracciano (Castello Orsini-Odescalchii), Roma, Lazio が挙げられています[→公式サイト]。ちなみにボマルツォは同じラツィオ州にありますが、ブラッチャーノ湖からさらに北のヴィテルボ県となります(またイタリア語で不勉強のため中身はよくわからないのですが、ウェブ上で出くわした"LOCATION VERIFICATE: Il castello dei morti vivi (1964)"([ < il Davinotti ])を参照。なおオデスカルキ城は『世にも怪奇な物語』(1968)第2話や『デモンズ3』(1989)にもちらっと出てくるとのことです)。

 やはり上の文で触れている監督の件ですが、アメリカ人のワレン・キーファーがつとめたということで、ルチアーノ・リッチ(別人)の名が挙がっているのは、製作陣中のイタリア人の割合を満たすためではないかと下掲 The Christopher Lee Filmography, 2004, pp.135-136 は記していました。キーファーは原案・脚本も担当しています。本作でデビューしたドナルド・サザランドが、感謝の印に息子の名前をキーファーと名づけたというのも有名な話らしい(同上、p.137)。
  [ IMDb ]では、クレジットされていないが監督の一人とされているマイケル・リーヴスは、助監督の立場のようで、いくつかの場面を演出したとのことです(同上、pp.137-138。また David Pirie, A New Heritage of Horror. The English Gothic Cinema, 2008, p.168 も参照)。彼は後に傑作とされる『魔女狩り将軍 Witchfinder General 』(1968、未見)をヴィンセント・プライス主演で監督することになりますが、1969年に25歳の若さで亡くなってしまいました(追記:上記の点を含む本作を巡る情報の混乱について下掲 Roberto Curti, Italian Gothic Horror Films, 1957-1969, 2015, pp.114-118 が整理していました)。


 上の文章ではB級B級と連発していますが、本作の評価は存外に高いようで、下掲の The Christopher Lee Filmography でも Jonathan Rigby, Studies in Terror. Landmarks of Horror Cinema でも絶讃されています。だから存外なんていってはいけない。
 クリストファー・リーは目の下の隈のようなメイクや、ドラゴ伯爵なる役名こそどうかと思わせるものの、その役柄は子供の純粋さがそのまま狂気に転じたかのようなニュアンスを湛えており、単純な悪役には留まっていません。『女ヴァンパイア カーミラ』(1964)同様、英語版の声もリー本人が当てているのは欣快のいたりです。
 一応の主人公役であるフィリップ・ルロワといえば、『黄金の七人』(1965、監督:マルコ・ヴィカリオ)とその続篇『続・黄金の七人 レインボー作戦』(1966、同)の盗賊団の頭脳役が思い浮かぶ俳優です。
 さて、本作では魔女の予言が実現したりするものの、主眼はあくまでリー扮するドラゴ伯爵が開発した瞬間剥製薬をめぐる顛末です。その点ではSFに分類されるべき物語ですが、何といっても舞台の大半が古城とその庭園です。煎じ詰めれば思いつくのは上の文章で記したことに尽きるのですが、もう少しだけ具体的にメモしておくことといたしましょう。


 タイトル・バックはいくつもの画像を連ねていくというもので、古城もありますが大半が《聖なる森》の彫像です。本篇中には登場しないものもあるので、要チェックなのでした。
 時代はナポレオン没落後、森の追いはぎの場面をプロローグに、同じ森を進む騎馬のルロワを馬車が追い越し、双方行き着いた先はどこかの町だか村の広場です。そこで芸人一座が偽の絞首刑を演じている。悪趣味です。すさんだ時代だという冒頭のナレーションどおりなのでした。サザランド演じる警官もげらげら笑っています。絞首刑の玩具をぶらぶらさせてにやにやしていた馬車の御者(ミルコ・ヴァレンティン)が一座の道化役ダート(ルチアーノ・ピゴッツィ。イタリア映画で時たま見かける顔のような気がします。バーヴァの『処刑男爵』(1972)にも本作に通じる役柄で出ていました。同じバーヴァの『白い肌に狂う鞭』(1963)や『モデル連続殺人!』(1964)、また『ヴェルヴェットの森』(1973)にも出演)に招待状を渡す。一座は彼以外に、座長のブルーノ(ジャック・スタニー)、その妹ラウラ(ガイア・ジェルマーニ)、小人ニープ(アントニオ・デ・マルティーノ、役名は日本語字幕による。[ IMDb ]では Nick)、聾唖の筋肉お兄さんジャンニ(エンニオ・アントネッリ)と5人編成です。
 夜の居酒屋です。招待したのは伯爵で、その城は北の国境近く、馬車で一日かかるとのことでした。取り分の件で座長と道化役が喧嘩し始める。格闘場面ですが、むやみにアップが多く、テンポもよろしくない。ルロワ演じる退役将校エリックが止めに入ります。
 捨て台詞を残して立ち去った道化役にエリックは馬を盗まれ、一座に加わって城へと向かいます。

 森を一座の馬車が進みます。ちなみに音楽はやや西部劇調でした。紅一点のラウラと交代して御者席についた小人ニープは、鳥の声が聞こえないといいます。エリックは1時間ほど前からだと返す。木の枝に止まっている鳥は剥製化していました。
 木の陰から老婆(サザランドの二役)が現われます。城壁の下、怪物の顔の下で待つ、生ける屍の城に気をつけろと謎めいた言葉を告げ、ニープにお守りか何かを渡します。

 約19分、夕刻の城が下から見上げられる。手前に円塔、その左右で城壁が後退していく。左の城壁は陰に浸され、右の城壁はいったん角を経てさらに伸び、右端に円塔が見えます。円塔と城壁の上辺には鋸歯型胸壁が走っている。尖塔の類が見あたらず、城壁の高さが強調されている点で『女ヴァンパイア カーミラ』でのピッコローミニ城にも通じる眺めでした。馬車を引く馬たちは進むのをいやがります。
 馬車が止まったのは左上がりの斜面の下です。斜面の上に半円アーチの門が見え、その上は塔のようにそびえているらしい。斜面の欄干の一番下にランプがのせてある。斜面の奥には壁がそびえ、門のある面と交わっています。
 斜面は階段になっており、一行はそこをあがります。門に入る。門から外を見ると、向こうに半円アーチのある壁が左右に伸びており、斜面上の門からの眺めだとするといささかおかしい。後に斜面上の門の中に前庭があることがわかります。
 とまれ屋内に入ります。広間です。吹抜でしょうか、天井はかなり高い。上から照明が落ちていないのでしょうか、物の影が壁に大きく映ります。奥に暖炉が見えますが、広間の床には数本の木が立っており、鳥がとまっています。おおむね剥製のようですが、鸚鵡は生きていました。
 奥の扉口からドラゴ伯爵が登場します。下から見上げられる。死の秘密に興味があるのだと朗々と語ります。

 馬車の御者でもあった執事のサンドロに案内されて、ニープたちが部屋に入ってきます。天井は格子貼りで、壁の上方は曲線紋様で囲まれている。その下は壁紙に覆われ、奥に天蓋付きの寝台が配されています。その柱の下半は捻り柱でした。Google の画像検索等で見ると、部屋も寝台もオデスカルキ城に実際にあるもののようです。
 ニープを追いだしたエリックにラウラは、父は一生を道化として過ごした、ブルーノは父が見出した座長で、実の兄妹ではないと語ります。
 一方伯爵に取り入ろうと懸命なブルーノに、伯爵はブランデーをすすめます。自分は飲みません。


 広間で一座の芸が始まります。チェンバロによる伴奏がついている。やはり光源の所在が気になる影の落ち方です。ブルーノはふらふらになっています。
 一方城門前です。手前の地面に巨大なアーチ状の影が落ちています。手前から奥へ騎馬の人物が駆け抜ける。カメラは少し下向きだったのが上向きに移ります。門の上の塔が高い。
 芸を見物する伯爵は身を乗りだしています。ぎゃはははと手を叩いて大笑いする。いささか狂躁的です。
 ブルーノは首吊りの芸に入りましたが、そのまま死んでしまいました。
 城壁を道化のダートがよじ登っています。下に馬がいる。強風に雷つきです。カメラは下から上へ撫でる。上に窓が見えます。
 ラウラにあてがわれた部屋です。風でカーテン、次いで蠟燭の火も揺れます。ダートの顔が窓の外に現われる。ラウラが悲鳴を上げます。
 駆けつけた伯爵は、日本語字幕では地上から100メートルあるといいますが、これは10メートルの間違いでしょう。英語では30フィートといっていたような気がしますが、自信はありません。エリックの部屋は隣とのことです。


 胸から上のダートが下から見上げられます。手に蠟燭をかざしている。右から左に進む。すぐ向こうは粗壁です。どこから入ったのでしょうか。背を向け奥へ、画面が真っ暗になります。
 右からサンドロが現われます。やはり蠟燭を手にしています。かなり下から見上げられています。
 ダートが右から左へ、それをつけるサンドロ、ダートが通るのはドーム状の通路です。向こうに不規則な形の出口が見えます。背を向けそちらに向かう。外は庭のようです。

  約42分、ボマルツォの《地獄の口》から出てきます(以下彫像類の名称は Bredekamp,Vicino Orsini und der heilige Wald von Bomarzo, 1985/1991 に従います。同書から図版番号として T.44, 45)。下に7~8段くだり階段がある。そこをおりて左へ進みます。
 追ってきたサンドロは地面から大鎌を拾いあげます。やはり左へ進む。奥に《ドラゴンと獅子の闘い》(T.48, 49)の向かって右側面が見えます。
 ダートは《花瓶広場》(T.55-57)の奥から手前へやって来る。手前で下へ数段おります。カメラの前を横切り背を向け左に向かう。先に2段上って左右に欄干のある短い通路、その先に方形の入口のある建物が見えます。《傾いた家》(T.10, 11)でしょうか。上は映らないのでよくわかりませんでした。
 中に入る。老婆が鍋をかき混ぜています。これは別の場所での撮影でしょうか。《傾いた家》に入ったことのある方はご確認ください。
 《ドラゴンと獅子の闘い》のドラゴンが、下から見上げられます。カメラが右下へ動くと、サンドロが潜んでいます。
 ダートは建物から出て、背を向け右へ、数段のぼって《花瓶広場》右奥へ戻っていく。
 サンドロが身をかがめ、ダートの足を引っかけます。大鎌を振りおろす。


 翌朝でしょうか、サンドロが大鎌で草を薙ぎ払っています。下から見上げられる。次いで背中からとらえられると、右回りでこちらを向き、右から左へ背を向け進みます。あたりに墓碑らしきものがぽつぽつ地面から顔を出しています。左奥に《神殿》(T.36)が見える。

 約45分、昼間の城の外観です。前と同じ視角です。
 エリックが数段のぼって入った先は書斎のようです。天井の奥にペディメントが見え、あわせて豊富な装飾を施されています。
 伯爵はエリックを実験室らしき部屋に案内する。扉を入って数段おります。壁は白い。探していたのは永遠に続く瞬間の生命だと伯爵は語ります。自説を述べる伯爵は実に雄弁です。そしてその方法を発見した。


 門の前です。上は蔦に覆われています。やや下から見上げられている。手前から奥へ背を向けた騎馬の3人が進みます。警官たちでした。
 左奥から手前に出てくるのが、やや上から見下ろされる。手前左から伯爵とエリックが現われます。警官たちを率いているのはポール巡査(サザランド)です。軽薄そうです。冒頭の町だか村から城まで馬で一日かかるといっていましたが、ここも管轄なのでしょうか。伯爵とエリックの背後に木の扉が見えます。
 一同は手前に進む。のぼりの階段があり、奥に扉が見えます。左上がりの階段は上で折れて右上にのぼる。欄干はけっこう幅が広い。欄干の下端には円柱が立っています。周囲の壁はざらざらした仕上げです。
 一同は踊り場をそのまま真っ直ぐ左へ進みます。カメラは右から左へそれを追う。数段のぼってさらに左へ、手前を壁が塞いでおり、歩廊が前に伸びている。壁の左に扉口があり、一同は壁の向こうを通って扉口から出てきて歩廊に入ります。カメラは少し斜めになっている。手前に進んでくるとカメラは後退する。やや下からの角度です。歩廊の右側には半円アーチが連なっています。


 約52分、また庭です。左上がりの階段が下から見上げられる。階段の左下に見えるのは松ぼっくり状の石柱でしょうか。下の右手に卵型の石柱が見えますが、柩を担いだ警官たちが階段をおりてきてカメラが動くと、階段の左下にあることがわかります、階段の右手の斜面には、複数の頭をもつ獣らしき石像が配されています。遠くて細部はよくわからないのですが、《ケルベロス》ではないかと思われます(Bredekamp,Vicino Orsini und der heilige Wald von Bomarzo, 1985/1991, pp.178-178 に掲載された庭の図面(Plan 3)の27番)。
 警官たちの後ろに伯爵とラウラ、エリックたちが従います。右へ進む。手前に《ペルセポネー》(T.39)があり、その向こうを通ります。右でまたくだりになる。奥から手前に出てきます。右奥に《ドラゴンと獅子の闘い》のドラゴンが見えます。さらに右へ、カメラもそれを追います。奥に《地獄の口》がある。
 左に《神殿》が見えるところで、その右奥から手前に出てきます。上から見下ろされる。そのままカメラは後退しつつ下降すれば、墓地なのでした。ここまでで約54分です。


 城の広間です。筋肉お兄さんのジャンニが絞首台の縄を調べています。
 埋葬の様子が下から見上げられる。
 玩具の機械弓に矢を仕掛ける手がアップでとらえられます。
 胸から上の伯爵が下から見上げられる。右に《神殿》のクーポラが配されています。鐘が鳴る。
 矢が発射され、ジャンニの右目に当たる。サンドロが死体を引きずっていきます。


 伯爵と巡査が胸から上でとらえられます。手前に進むとカメラは後退する。右に欄干があり、その右に下り坂、先に半円アーチが見えます。さらに右にも欄干があり、奥に扉がある。
 一行が上から見下ろされます。門の手前の斜面の下です。警官たちは左下へ、伯爵は坂の上の門に向かう。


 長テーブルの部屋にラウラがいます。右下に大きな地球儀らしきものが見え、奥は窓です。この部屋は書斎に隣りあっていました。そこから数段おりてきた伯爵は、ラウラに年老いては残念だといいます。

 約1時間1分、《地獄の口》から小人のニープが出てきます。下からの角度です。前には見えなかった口の奥のテーブルが見えます。
 前の階段をおりて左へ進む。カメラもそれを追います。《ドラゴンと獅子の闘い》のドラゴンと獅子の間・下をくぐります。
 反対側から出てくる。右手前の大壺が下からとらえられる。ニープは右を見ながら左へ進みます。背後に《プルートーン/ポセイドーン》(T.59)の像があります。「ニープ」と呼ぶ声に振りかえると、像の右から魔女が現われる。「お前は雲の間を飛ぶ」と予言します。上から見下ろされると、左に壺の列、右にニープが配されている。「戻って女を助けな」といい、「城壁の下で待つ」と初登場時の言葉を繰り返します。
 ニープが左へ進むのが上からとらえられる。壺の列の右に塔を背負った《象》(T.46)が見えます。


 約1時間2分、門の前の階段を駈けおりるサンドロが下からとらえられます。カメラが右から左へ振られると、馬車の準備をするエリックがいました。「ニープが城壁から転落した」と告げます。二人で右へ、カメラも右に動きます。2人が階段をのぼるとカメラは左へ振られる。
 広間に入ってきて左へ進みます。サンドロが背後からエリックを昏倒させる。
 ラウラは自室にいます。前にエリックが伯爵にもらって持ってきたコニャックを飲もうとすると、扉が開きかける。猫でした。落としたコニャックを猫が舐めると、凍結してしまう。


 約1時間4分、古城映画的山場の始まりです。
 扉がアップになり、開いてラウラが廊下に出る。カメラは右から左へ動きます。扉が右に、左の壁に暖炉があります。これも『女ヴァンパイア カーミラ』と同様でした。奥に方形の扉が見える。背を向け奥へ進む。扉の向こうで1~2段下り、左へ曲がります。
 広間です。盾の陰に身を隠したニープに出くわします。2人は右から左へ、扉の中に入る。扉の左手の壁に大きく絞首台(?)の影が斜めに落ちています。
 下りの階段が上から見下ろされる。左奥からニープが踊り場に現われます。追ってラウラも出てくる。明暗の対比が極度に強い。踊り場の奥は窓になっているようで、向こうに階段があるのか、或いは階段の絵が描かれているようにも見える。2人はのぼってきて踊り場を左へ、左の壁にラウラの影が落ちます。折れてカメラの前を横切り背を向け右上にのぼる。2人はシルエット化している。上で右に向かう。手前に柵があり、その影が左下に落ちている。下からの仰角です。カメラは左下から右上へ動く。ニープは右からまた左に戻ります。先に扉がある。左の壁にラウラの影が大きく落ちています。影が右に消えると、右の本体はシルエット化していました。光源はやはり右奥、あまり高くない位置にあるようです。ここまで1カットでした。涙せずにいられましょうか。
 扉の中に入る。広いが荒れた部屋です。寝台のまわりに蜘蛛の巣が張っています。寝台には硬化した女性が横たわっていました。
 2人は奥の扉を入ります。右から出てくると暗い空間でした。左上に階段があがっていく。螺旋階段です。光は下から当てられています。
 廊下に下から上がってきて、左奥から手前に進む。天井が円筒状の通路です。壁は粗石積みでした。右手前では斜面になっている。
 荒れた寝室に伯爵が入ってきます。寝台の女性は妻なのでしょうか、彼女に語りかけます。
 長い廊下です。奥に半円アーチの扉口が見える。右よりの視点です。等間隔に扉が並び、その影が床で反復されます。きわめて幾何学的な印象を与えます。ほとんど非現実的といってよい。デ・キリコの絵にでも出てきそうな眺めでした。2人は奥から手前に進んでくる。震えが走ります。
 上からの視点で、下に半円アーチが見え、そこから手前に階段がのぼっています。画面右三分の二は手前の粗壁で占められている。その左は下のアーチ以外真っ暗になっています。2人がのぼってきます。風が鳴る。涎が垂れそうです。
 上で折れて右へ、少し壁をはさんで奥に上への階段が見えます。2人はカメラの前を横切り右・上・奥へのぼっていく。カメラはかすかに上がりつつ左から右へ振られる。階段の右は外に開けています。
 先の幾何学的廊下です。奥からシルエットが進んできます。伯爵に命じられ二人を追うサンドロでした。
 城壁の上です。風がビュウビュウ鳴っています。上が丸くなった低い欄干に左右をはさまれた幅の狭い通路が右奥から左手前に伸びています。右奥からは水平に左へも枝分かれしている。二人は低くなった右奥から上がってくる。隠れて見えませんが、階段をのぼりました。嬌声を上げずにはいられません。
 サンドロのアップがはさまれます。にまりと笑う。
 下から上へ階段が上がっている。階段の下・右から右奥へ通路が伸びる。階段も通路も上を丸めた欄干にはさまれています。階段の上には扉口がある。右上に塔の上部がのぞいています。その向こうは山並みのシルエットです。二人は背を向け階段をのぼる。
 先の歩廊の下側の部分が上から見下ろされます。そこにサンドロがいる。のぼってきます。カメラは下向きから上向きに移る。
 ラウラが階段を駆けあがります。左に瓦屋根があります。
 段差のある通路の上側が上から見下ろされる。通路は手前で右に折れて広くなっています。サンドロが近づく。カメラはやや下向きになる。手前に階段があるわけです。
 階段の途中にニープとラウラがいます。ニープは止まれと命じますが、従うはずもない。二人の背後には右上がりの階段がのぞき、上は屋上のようです。左にも出入り口があって、ニープはラウラを「塔へ」とそちらに押しやる。ニープも続いて階段をあがるさまが上から見下ろされます。
 次いで上から見下ろされるのは、左上がりの瓦屋根が伸びる、その右下で奥へ真っ直ぐ伸びる狭い通路です。右側は鋸歯型胸壁になっています。そこをラウラが背を向け右奥へ走ります。よく晴れています。宙を舞う気分です。
 いったんサンドロは塔の上に出ます。振りかえると、下の小さなアーチをニープがくぐる。それを見ていったん階段をおりかけますが、また屋上の方に戻ります。ニープがぐるっと回るとそこは屋上です。ずっと持っていた盾は落としてしまったようです。奥を大きな鋸歯型胸壁が取り巻いています。その下は一段段差がある。手前の下からサンドロが上がってくる。ナイフで立ち向かうも詮無く、追いつめられてしまいます。向こう側にも塔が見えます。担ぎあげられ、塔から投げ落とされるのでした。約1時間11分のことです。
 下には干し草が積んでありました。魔女がやってきて気を失なった彼を引きずり、「勇者の中の勇者」といいます。まさに然り、上の文章でも記したように、本作の実質的な主人公が小人のニープであることの証しでありましょう。

 他方ラウラの彷徨は今少し続きます。歩廊です。右手の欄干の上には六角形でしょうか、多角形の柱が並び、その右は外に面しています。床の右半に斜めになった列柱の影が落ちている。左は壁です。夜なのでしょうか、明暗の対比が強い。ラウラが奥から手前に走ってきます。手前左の扉に取りつくも開かず、左手前へ、回るように右手前に来ます。カメラは後退する。また左の扉に取りつくがやはり開かず、手前に進みます。陶酔します。
 その間またしてもサンドロのアップがはさまれる。左から進む足とその前の影がアップで見下ろされます。これはサンドロのものでしょうか。
 暗い廊下です。奥に方形の扉口があり、その周囲は暗くシルエット化しています。そのすぐ右に扉口、やはり周囲は暗い。右に白い壁が伸び、手前に暗い扉口。暗くなった天井はあまり高くありません。奥の扉口の向こうに鎧が置いてありますが、それ以外は装飾のない幾何学的な空間でした。ラウラは右奥から出てきて手前に駆ける。カメラの前を横切り、角があったのでしょうか、右奥に進みます。奥に半円アーチの扉口が見え、ここは先に通ったデ・キリコ風の廊下でしょうか。やはり床に扉の影が規則的な間隔で落ちています。床は石畳です。奥、半円アーチの手前で左に曲がります。ラウラの姿が消えると、手前からサンドロが追っていく。
 書棚と小さな鐘のある、板張りの床の部屋です。物置でしょうか。斜めになった木の柱があります。サンドロが左奥を探りに行った隙に、目元にのみ光の当たるアップで身を潜めていたラウラは、こっそり扉から出ます。
 ここまでで約1時間14分弱でした。本作のセールス・ポイントの一つがボマルツォの《聖なる森》の眺めであることに偽りはないにせよ、約10分ほどではありましたが以上のシークエンスあるをもって、本作は古城映画の歴史に記憶されるに値することでしょう。


 実験室です。ラウラが入ってきます。ダートが剥製化しているのを見つける。入口から数段おりてきたサンドロが迫る。伯爵が止めます、妻とは永遠にいっしょにいたかっただけだという。紳士的であり、また気弱さをものぞかせます。エリックも寝かされていたのが目覚めます。

 魔女のアジトです。ニープを介抱しています。自分こそは伯爵の最初の犠牲者だという。

 約1時間19分、ボマルツォの《聖なる森》最後のシークエンスにしてニープ第2の冒険です。
 サンドロが林にいます。《亀》(T.21-23)が下から見上げられる。甲羅に載せられているはずの彫像は見えません。右からニープ、左からサンドロがやってきます。ニープは彫像の首の下に隠れる。サンドロは気づかず右奥へ進みます。ニープは右奥から低い土手のようなものを乗り越えて、左へ行く。左に何かの足のようなものがあり、その陰に隠れます。手前を右から左へ、サンドロの腰から下が進みます。
 サンドロを呼ぶ声が聞こえる。左後ろに見えるのは《ドラゴンと獅子の闘い》のドラゴンでしょうか。やや下から見上げられています。
 やはり下から見上げられるのは、《象》の背の塔です。窓からニープが顔を出します。サンドロが銃を撃つ。ニープは下へ滑りおり、ドラゴンの後ろから首を出す。
 サンドロの左に《オルランドとアマゾーン》(T.26, 28-30)が立っています。ドラゴンの首の右からニープが呼びかける。サンドロはアマゾネースをよじ登ります。いいんでしょうか。銃を落とします。下に来たニープが銃を拾う。
 《花瓶広場》の奥からサンドロが現われます。手前の花瓶の陰にニープが隠れている。姿を見せ、銃を撃つのでした。約1時間21分強のことです。


 奥からラウラ、エリック、そして銃を突きつける伯爵が進んできます。左奥に方形の扉口があり、その奥にも扉口が二つ続くのが見えます。広間です。一行はカメラの前を横切り、背を向け右奥へ進みます。カメラは後退しつつ左から右へ振られる。
 先に扉があり、その中は硬化した死者たちでいっぱいでした。左から右へ進む。ジャンニやブルーノの姿もあります。サンドロには死への妙な趣味があると伯爵はいう。「永遠の劇場」とのことです。方法は異なるものの、蠟人形館のイメージなのでしょう。
 伯爵は銃を持ち替え、薬品を器具に塗ります。ラウラとエリックの右後ろに、街路を描いた透視図らしきものが見えます。舞台装置のようです。解放してくれるといったじゃないというラウラに、まさにそのとおりと答える。
 「ラウラ」との呼び声、ニープでした。気をとられた隙をついてエリックが伯爵に飛びかかる。どこまでも役に立つニープです。
 玄関前にやって来た三人の警官が上から見下ろされます。悲鳴を聞きつけて広間に入ってくる。逃げようとしたラウラとニープを足止めします。奥からエリックと伯爵が出てくる。警官たちとエリックのチャンバラが始まります。警官たちはサーベル、エリックは壁にかかっていた槍で応える。鸚鵡が鳴き、いささか喜劇調です。
 伯爵のアップが下から見上げられます。なすすべなしといった表情であわあわおたおたしています。
 圧倒された巡査はしかし、銃を突きつけます。伯爵は床に落とされた鳥の剥製を拾いあげてお冠です。伯爵は鳥の剥製を撫で撫でする。
 そこへ魔女が乱入してきます。伯爵ともみあう内に、伯爵は手にした薬剤つき器具を自分の胸に刺してしまい、凍結します。
 それを見た巡査は奥の部屋に入って事態を確認します。戻って来て魔女を助け起こす。双方サザランドなので、どちらか一方は背を向けています。いうまでもなく自分の手柄にする。
 伯爵の挙動を含むクライマックスの喜劇的な調子からするに、本作は純然たる恐怖映画という以上に、一座の演目を入れ子として、本篇全体がはらはらさせたりどきどきさせたり、加えてお笑いも取りこんだお芝居として組みたてられているのではないかという気がしてきます。チャンバラもありますし。

 放免された三人は馬車で出発する。手前へ進むとカメラは上向きになり、シルエットと化した城が見上げられるのでした。これまた『女ヴァンパイア カーミラ』に相似たラストのカットです。
Cf.,  The Christopher Lee Filmography, 2004, pp.135-138

Tim Lucas, Mario Bava. All the Colors of the Dark, 2007, p.570, pp.575-577

Jonathan Rigby, Studies in Terror. Landmarks of Horror Cinema, 2011, pp.128-129

Roberto Curti, Italian Gothic Horror Films, 1957-1969, 2015, pp.114-121
 2015/8/6 以後、随時修正・追補
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