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ルパン三世 カリオストロの城

    1979年、日本 
 監督   宮崎駿 
 作画監督   大塚康生
撮影   高橋宏固 
編集   鶴渕允寿 
 美術   小林七郎
    約1時間40分 
画面比:横×縦   1.85:1 
    カラー 

ケーブルテレビで放映
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 どこで見かけたか思いだせないでいるのですが、たしか誰かが、宮崎駿の作品のタイトルに「城」の語が一度ならず登場することにふれていたかと思います。なるほど本作、『天空の城ラピュタ』(1986)、『ハウルの動く城』(2004)と三回を数え、それ以外にも『千と千尋の神隠し』(2001)のように宏壮な建物が主たる舞台となる作品もありました。監督作ではありませんが、すでに取りあげた『長靴をはいた猫』(1969)では、やはり古城で展開するクライマックスに作画として関わっていました。とはいえ本格的なお城というなら、本作を挙げるにしくはありますまい。もっとも本作に対してはちゃんとした評が百万言すでに費やされていることでしょう。ここではお城関係にのみ意を注ぐとして、そういったそばから少しだけ寄り道させてください。

 ある知人が、本作にジョヴァンニ・ベッリーニの肖像画が出てくることを教えてくれました。次に見た時に気をつけていると、なるほど約23分、公女クラリス(声:島本須美)の側仕えとして城に潜りこんだ峰不二子(声:増山江威子)が、隠し覗き孔からカリオストロ伯爵(声:石田太郎)の執務室を盗み見するのですが、覗き孔が室内ではベッリーニの《総督レオナルド・ロレダンの肖像》(下のおまけないし→こちらを参照)におけるモデルの両目にあたっていたのでした。
 そう心得て見ると、他にも泰西名画が見つかります。約18分、不二子初登場の場面です。椅子に坐る彼女の向こう、壁画の態で見えるのはヴァトーの《シテール島への船出》あらため《シテール島での巡礼》の左下4分の1にほかなりません。画面の右下は半円アーチ型扉口で切られ、またもとの画面の右端は省かれています。ところで《シテール島》には1717年アカデミーに提出され、現在パリのルーヴルにあるヴァージョンと(下のおまけないし→こちらを参照)、ほぼ構図を同じくする1718-19年頃に制作されたベルリンはシャルロッテンブルク城のヴァージョンがあります(構図は異なるがやはりシテール島を主題とし、上の二点よりも早いとされるフランクフルト、シュテーデル美術研究所蔵の作品もあります。この三点についてはユッタ・ヘルト、中村俊春訳、『ヴァトー《シテール島への船出》 情熱と理性の和解』(作品とコンテクスト)、三元社、1992 を参照)。色味を別にすればパリとベルリンの作品のもっとも目立つ違いは画面右端に配された彫像なのですが、この部分は本作では省かれている。他方ほぼ垂直に近い木の幹が見える点からすると、本作で用いられたのはルーヴルのヴァージョンなのでしょう。
 なおすぐ後で、画面右下を切りとった扉口の右に7~8段ののぼり階段があって、そのさらに右、階段の左側と対称をなして低い扉口と壁画が配されたさまが映しだされます。壁画部分は、《シテール島》の右の木立と左の空が接するあたりを左右反転させたようにも見えるのですが、それにしては枝の間の透き間の向きが合わず、わからずじまいでした。
 さて、もう一点、約26分、伯爵が朝食をとっているところへ銭形警部(声:納谷悟郎)が訪ねてくる場面では、伯爵のすぐ背後に、原作に比べるとずいぶん縮小されていますが、ダヴィッドの《ホラティウス兄弟の誓い》が見えます(下のおまけないし→こちらを参照)。
 この他にも城内にはいろいろと絵が飾られており、たとえば覗き孔=ベッリーニの肖像画の場面の直前、不二子が前を通り過ぎる二点の作品であるとか、《シテール島》の場面の少し前、伯爵が右から左に通りぬける広い部屋の奥、向こうの部屋への通り口の左右の壁に掛かった二点の縦長の絵など、やはり何かネタがありそうです。ちなみに最後の二点の内右の絵は、騎馬肖像画で、左向きの馬が前脚を跳ねあげているというものです。ダヴィッドの《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》かと思いましたが、あらためて見てみるとあきらかに違っていました。早合点して頁を作ってしまったので、間違いの見本としてご覧ください:下のおまけないし→こちら。ベラスケスの《オリバーレス公・伯爵騎馬像》(1634-38頃、プラド美術館)も馬の首の向きが少し違うような気がするし。これら以外にもいくつか登場します。騎馬像も含めて、関心のある向きはネタをぜひ探してみてください。


 『長靴をはいた猫』におけるプッサンやバーン=ジョーンズ&モリス&ダール、というか映画に美術品が出てくる際の全てがそうなのですが、ゴー・サインを出すのは美術監督なり監督だとして、とりわけ筋立てに直接関わらない場合、どういった経緯で具体的なこれこれの作品が選ばれるのか、気になる点ではあります。
 ところで本作で美術監督をつとめる小林七郎は長いキャリアを誇りますが、[ allcinema ]などで見ると参加した数多い作品の中には、『劇場版 エースをねらえ!』(1979、監督:出崎統)、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984、監督:押井守)、『天使のたまご』(1985、同)、『少女革命ウテナ』(1997、監督:幾原邦彦)およびその劇場版『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』(1999、同)などなどといった、何かと感慨深いものが混じっていました。このサイトでまた出くわすこともあるでしょう。


 お城の話に戻りましょう。とはいえタイトル・ロール登場に先だって、先触れがいくつか出てきます。まずは作品タイトル、「城」の文字が城の形になぞらえてありました。
 次いで国境は、橋を渡ったその先の城門で、門の左右に円塔が二つついています。『長靴をはいた猫』でも相似た城門が見られました。
 カー・チェイスの一幕をはさんで、約11分、湖の畔に廃墟と化した城が現われます。ルパン(声:山田康雄)と相棒の次元大介(声:小林清志)の車が近づくと、カメラは下から上へ首を振ります。五階はあるでしょうか、右端では角塔に接しています。窓や屋根はすべて落ちてしまい、骨格だけが残っている。アーチもあれば、上の階への方向違いの階段二つもあり、けっこう複雑な格子を見せてくれます。
 角塔のわきの右下がりの階段をおりていくと、向こうに時計塔が見えてきます。その下には城壁が左右に走り、そのすぐ向こうに時計塔があるのでした。城壁へは階段がのぼっています。
 時計塔は細い基台の上にそれより幅のある文字盤部分があるという、実際に建てるにはバランスの悪そうな形ですが、相似た組みあわせはやはり『長靴をはいた猫』に出てきましたし、本作では後にもう一つ登場します。とまれ、文字盤部分の上では角に小塔がつき、上の尖り屋根はかなりのっぽです。
 両脇を欄干にはさまれた石畳の道をルパンが奥から手前に進んできます。手前には下りの階段、その先は池だか湖でした。飛び石の向こうには石造りの四阿があります。四阿は数段分高くなっており、基台部分には池だか湖の水を引きいれたアーチがついています。アーチには縦格子がはまっていました。
 四阿の左奥に時計塔が見えます。四阿の天井はドームをなしている。
 石橋を渡ると、時計塔前の城壁です。地面からまた、方向違いののぼり階段が二つあります。城壁の奥の方には、城壁より高い崖がのぞいています。
 カメラが下から上へ首を振ると、橋、右に角塔、角塔と直交して右に伸びる棟、そして角塔の上が時計の文字盤でした。時計塔には外壁に沿ったのぼり階段がついています。
 手前のルパンたちの奥に橋が見え、その向こうに木立をはさんで四阿がある。次いで約15分、城の外観が映しだされるのでした。

 摂政カリオストロ伯爵のこの城はかなり大規模なもののようで、複雑な出入りがありますが、それでいて量塊性を失ないません。壁は白っぽく、屋根は青です。主棟だか天守は右、左半はそれより背が低いが、ただし上に、細めの塔の上にそれより幅の広い部分をのせるという、特徴的な形の塔があります。これは後の場面で「北側の塔の天辺」と呼ばれていました。四隅に小塔があり、主棟との間に橋がかかっている。
 また主棟の一部に平らな面が少し張りだしたところがあります。これもすぐ後に、伯爵自ら操縦するオートジャイロの発着場であることがわかります。オートジャイロが到着する際には、庭の一角に風車が見えました。
 カメラが引くと、下方が高い壁になって湖の畔にというか、小島をなしているのでしょうか、聳えているさまが映されます。手前へ長い橋が伸び、時計塔の方へつながっている。橋と見えるのは実は、「ローマ水道」と後に呼ばれます。
 城の左奥にも橋がのぞき、岬状になった町らしきものと結ばれているように見える。この時点ではよくわからないのですが、少し後で実際に城下町であることが、俯瞰によって示されることでしょう。

 城内はまず、先に触れたオートジャイロが到着する場面から描かれます。降りたった伯爵が執事兼「影のもの」の長ジョドー(声:永井一郎)とともに、これも先に触れた騎馬像のある広い部屋を横切り、外壁に添ったエレベーターに乗りこむ。エレベーターの内側の四隅は捻り柱つきです。このエレベーターは後にも登場します。
 エレベーターの扉が開くと前は幅の狭い通路でした。左右の壁の上の方で小さな方形の窓が並んでいます。カメラが城外からになると、天守から「北側の塔の天辺」へ可動式の通路が伸びるのでした。
 通路が接続するのはヴァトーの壁画があったところです。階段を登った先が主たる部屋で、円形の壁とドームをなす天井は夜空になぞらえられて装飾されています。中央に寝台がある。ここが後に、二度にわたるお話の節目の舞台となることでしょう。
 ところで入口の扉前の階段の両脇、低い位置にあった扉の向こうはどうなっているのでしょうか。気になります。『フランケンシュタインの花嫁』(1935)における寝室入口が思いだされたりもするのでした。

 約23分、奥へ伸びる廊下を不二子が手前へ進んできます。左は大きく窓に占められ、右の壁には絵がたくさん並んでいます。
 右手の扉の一つに入ると、薄暗い中は書斎だか書庫のようですが、本棚の一つが隠し扉になっていました。古城はこうでなくてはいけません。
 残念ながら隠し通路の中は映りません。出てきたのは暖炉の中でした。大きな部屋で、ここにも絵がたくさん掛かっています。そしてカーテンの陰に、ベッリーニ式覗き孔があるのでした。


 ルパン予告の報を受けて銭形警部とその部下たちが城に参じる一方、五右エ門(声:井上真樹夫)の到着を迎えて、約29分、ルパンと次元は四阿基台部の水路に侵入します。水路はうねうねと上下し、天井のない部分を経て滝となって流れ落ちる。滝の周辺には巨大な歯車がいくつも見えます。「時計の機関部」とのことでした。ここにはクライマックスで再訪できることでしょう。
 次元を残して流されたルパンは、城まで辿りつきます。一方銭形警部は城の庭の風車が城内に水を汲みあげており、その水の出口が砲台の噴水であることを聞きつけます。
 砲台は天井があるもののけっこう広く、かなり大きな大砲がいくつか丸壁から外に頭を出していました。入口からは数段おります。
 噴水のライオン型噴出口の中に隠れていたルパンを見つけ損ない、銭形は電話室に向かいます。電話室を出ると上りの階段で、あがった先の短い廊下の向こうに、屋内への扉口がありました。扉口の向こうも廊下が伸びている。
 銭形に変装したルパン、グスタフ(声:常泉忠通)率いる「衛士」たちとのすったもんだを経て、銭形は屋内廊下に足を踏みいれますが、そこの床は落とし穴になっていました。かなり深い。廊下のすぐ先、なぜか中央に台座を置いて胸像が飾ってあり、これが記録用カメラ兼落とし穴の開閉スイッチになっているのでした。
 ところ変わって約36分、鎧だらけの暗い部屋です。カメラが右から左へ流れると、隅の金庫を不二子が探っていました。ルパンが現われ、クラリスが幽閉されている場所を聞きだします。
 壁をよじ登り跳躍して北側の塔の天辺にたどり着く。塔の下方からいくつか、橋状のものが異なる向きに伸びているのが見えます。
 夜空の間には縦長の大きな窓がありました。斜め格子が張られ、下に欄干が走っています。またドーム状の天井に丸窓があり、そこからルパンが侵入します。この丸窓は後にも登場、その際屋根側では出窓になっていることがわかります。伯爵たちの到着に続いて、ルパンは床の中央あたりに開いた落とし穴から落下するのでした。やはりかなり深い。


 落とし穴は夜空の間を支える塔を貫き、前に見えた低い棟が塔の下にあるのだとすれば、そこをも貫通しているということになる。しばらくすると上から水が流され、その下で尖ったドーム状にひろがります。あちこちに上からロープか何かが垂れ、衣服をつけた骸骨がいくつもぶら下がっていました。『幽霊屋敷の蛇淫』(1964)や『吸血魔のいけにえ』(1967)が連想されずにいません。
 底も骸骨だらけですが、ここはアーチで区切られ、多方向に枝分かれしています。階段もある。水路が走っている。上の方に細い窓があります。先に落とされた銭形と出会いますが、出口は見つからなかったという。
 夜空の間には可動通路でしか渡れず、地下空間には出口がないと、この城には閉じた場所が二つもあることになります。禍々しい歴史を暗示してでもいるのでしょうか。またコーマンのポー連作(たとえば→こちら)に出てくる地下室を大規模にしたかのようなこの地下空間が、コーマンの場合同様、冥府の謂いであることは見やすい道理でしょう。
 水路の中もいろいろ枝分かれしているのですが、トンネルを抜け、ある時点で上向きになり、水面まで出ると、方形の粗石壁の部屋の中央に穿たれた貯水でした。この部屋の壁沿いに折れ曲がった階段が上に登っています。
 階段をあがった先は石棺の中でした。石棺は回廊のようなところに配されています。右手に欄干があり、そこから見おろすと下は印刷室でした。なおなぜ石棺が並んでいるのか、ここだけではよくわかりませんが、後に〈工房〉と呼ばれる印刷室の上が礼拝堂であることが示されます。

 約56分、不二子が夜空の間のクラリスのもとに現われ脱出すると告げます。一方城のあちこちで煙が吹きだす。地下からでした。ルパンと銭形が〈工房〉で火をつけたのです。
 工房の扉口からは上へ階段があがり、そこから礼拝堂、庭と続きます。礼拝堂は城の本体から独立した建物なのでしょう。
 ルパンたちは壁沿いに添ったジグザグの階段を駆けあがり、オートジャイロの発着場を目指す。平行してエレベーターが上昇、ジョドーがその旨を伯爵に電話で連絡しています。
 オートジャイロからルパンは北側の塔の天辺の屋根に飛び移りますが、撃たれてしまいます。角の小塔の屋根から出てきた、あまり広くない可動式足場に伯爵たちがいました。

 インターポールの会議における「高度に政治的な問題」(こういう言い回しがあるのでしょうか、他でも聞いたような憶えがあります)のくだり、ルパンの馬鹿喰いと回想を経て、約1時間13分、結婚式の日の夜、時計塔の鐘が鳴ります。
 粗石壁の暗い廊下です。左は窓、右には戸口が並び、その合間に松明がともされています。続いて上への湾曲階段、交差アーチの暗い列柱の間が映され、奥の扉に向かってカメラが前進します。扉が開くと花嫁装束のクラリスが立っていました。中はさほど広くない丸部屋です。やはり壁は粗石積みで、長い蠟燭がびっしり列をなしています。
 パイプ・オルガンが響く中、左上がりの通路が下からとらえられる。上の壁は暗青色、通路の下は紫です。右下から剣を掲げた行列が小さく進んでくると、壁に大きな影が落ちます。『来るべき世界』(1936)の一齣が思いだされたりもするのでした。
 礼拝堂の入口から見ると、向こうから階段を登ってくるように見えます。柱の上に小バルコニーがあり、TV中継のクルーが陣取っています。アナウンサーは不二子でした。
 騒ぎが起こって祭壇の下に方形の開口部があり、階段が降っていることがわかります。この先が〈工房〉でした。

 その隙にクラリスをさらった一味はロープを滑降して風車の足元に着きます。風車は木造で、丸い塔の上に建っていました。城壁の下、向こうへまっすぐローマ水道が伸びています。
 一方伯爵たちは壁沿いの階段をおりていきます。先は地下水路で、船が停めてありました。
 次元と五右エ門に後を任せ、ルパンとクラリスはローマ水道の端まで来ます。先は時計塔の壁で入口などないのですが、庇を伝って中に入る。約1時間24分、機関部の再登場です。むやみに大きな歯車が錯綜して噛みあうさまは、『長靴をはいた猫』を先蹤としつつ、宮崎駿自身は関わっていない『長靴をはいた猫 80日間世界一周』(1976)のクライマックスを引き継いだものです。ただしこちらは夜とあって薄暗い。壁沿いの随所に階段も設けられています。
 そんな階段の一つの先の扉を開けると、文字盤でした。これも『長靴をはいた猫 80日間世界一周』に出てきた、というか実際そんな風になっているのでしょうか。


 浮彫の山羊の両目に1517年よりカリオストロ公国に伝わってきた二つの指環を嵌めこむと、絡繰が作動、長針と短針が12時の位置で合わさり、時計塔とローマ水道が崩壊します。綾辻行人の『時計館の殺人』(1991)が連想されたりもする。時計塔脇の城壁の一部から水が溢れだし、地下空間や工房にも流れこみます。
 ルパンとクラリスは四阿基台部の水路から出てくる。湖の底に沈んでいた古代ローマの町が姿を現わしていました。この遺跡が湖のどの位置にあるのかわかりませんでしたが、アーチの一つの向こうに城がのぞいています。
 二人は階段を登って土手へ、かくして別れの場面となるのでした。


 地下空間といい、礼拝堂への行列およびそれに先立つ廊下や階段のカットといい、本作ではところどころに怪奇映画風味が添えられています。結婚式の場にルパンたちが亡霊として登場するのもまたしかり。時計塔とローマ水道の崩壊は由緒正しいアッシャー家型ゴシック・ロマンスに則っていました。伯爵の末路はそれと描きだされはしないにせよ、『大鴉』(1935)や『怪奇大作戦』第1話「壁ぬけ男」(1968/9/15放映)の結末に劣らず無惨というほかありません。また伯爵があげつらうように、カリオストロ公国が抱える闇の部分をクラリスもなにがしか承知していなかったわけではありますまい。本作を明朗快活とだけ見なせなくしてしまうこういった要素をどうとるかはさておき、隠し通路も含めて上下左右に展開する城の在り方こそが、お話が転がることを保証したものと見なせましょう。夜空の間や時計塔機関部のような重要な場所はもとより、エレベーター、発着場、風車なども間をあけて二度以上ずつ出てくることで、実在感を確保しています。

 また廃墟と化した城、四阿、時計塔と城壁、ローマ水道、そして伯爵の城が、それぞれ湖に接しつつ並ぶという配置が、城下町もあわせて、これらのポイントを結びつけた網の目の中に伯爵の城を位置づけています。四阿の奥に時計塔が見えたりしていましたが、ある地点からは必ず他の地点を目に入れることができる。湖の全体の形状やその中での廃城、四阿などの位置は画面からすべて読みとれるわけではありませんでしたが、おそらく設定されてはいるのでしょう(追記:下掲の『BSアニメ夜話 Vol.01 ルパン三世 カリオストロの城』、2006、p.4 に「全体図」が掲載されていました。「劇場販売パンフレットより」とのこと)。後には古代の廃墟がこれに加わり、さらに国境から湖にいたる平原や山道、ラストで逃げていくルパンたちの車の先に現われる海に面した港などが、古城が定位すべき世界を構成しているわけです。
Cf.,  住倉良樹、「少女の心の盗みかた 公女クラリス乙女心盗難事件ノート 『ルパン三世 カリオストロの城』」、『ユリイカ』、第29巻第11号、1997.8、臨時増刊「総特集 宮崎駿の世界」、pp.96-103

井川耕一郎、「水の記憶 ルパン三世 カリオストロの城」、『キネ旬ムック フィルムメーカーズ 6 宮崎駿』、1999.4、pp.118-121

切通理作、『宮崎駿の〈世界〉』(ちくま新書 308)、筑摩書房、2001、pp.142-160、他

藤津亮太、「パラシュートの白い寂しさ 『ルパン三世 カリオストロの城』」、『「アニメ評論家」宣言』、扶桑社、2003、pp.10-23

『BSアニメ夜話 Vol.01 ルパン三世 カリオストロの城』(キネ旬ムック)、キネマ旬報社、2006

Cf.cf.

『ポップ・カルチャー・クリティーク』、no.1、1997.12、pp.7-102:「宮崎駿の着地点をさぐる」

『ユリイカ』、第33巻第10号、2001.8、臨時増刊「総特集 宮崎駿『千と千尋の神隠し』の世界 ファンタジーの力」

『ユリイカ』、第36巻第13号、2004.12、pp.42-216:「特集 宮崎駿とスタジオジブリ」

『宮崎駿の世界 クリエイターズ ファイル バンブームック』、竹書房、2005.1

『ジブリの立体建造物展』、江戸東京たてもの園、発行:スタジオジブリ、2014
*本作についての頁はありません

おまけ   ジョヴァンニ・ベッリーニ《総督レオナルド・ロレダンの肖像》1501-02
ジョヴァンニ・ベッリーニ
《総督レオナルド・ロレダンの肖像》
1501-02
ヴァトー《シテール島での巡礼(シテール島への船出)》1717
ヴァトー
《シテール島での巡礼(シテール島への船出)》
1717

  ダヴィッド《ホラティウス兄弟の誓い》1784
ダヴィッド
《ホラティウス兄弟の誓い》
1784

ダヴィッド《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》1801
ダヴィッド
《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》
1801

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 2017/09/25 以後、随時修正・追補
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