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悪魔の凌辱
Nuda per Satana *
    1974年、イタリア 
 監督   ルイジ・バッツェラ(パオロ・ソルヴァイ名義) 
 撮影   アントニオ・マッコッピ 
編集   ルイジ・バッツェラ
副美術監督   ミケランジェロ・リッチ **
    約1時間21分 *** 
画面比:横×縦    2.35:1
    カラー 

DVD
* 手もとのソフトは英語版。英題は Nude for Satan
** 手もとのソフトによる。 [ IMDb ]では副監督
*** [ IMDb ]によるとオランダ版DVDは約1時間30分
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 伊語原題および英題の『サタンのためのヌード』どおり、ヌード満載の怪奇映画です。サイケデリックな幻惑を感じさせることが主眼をなしているようで、カメラはよく動き揺れたりもしますが、いささかあざとく見えてしまい、テンポも歯切れがよいとはいいがたい。とはいえ舞台は古城です。
  [ IMDb ]によると本作のロケ地は中部イタリアのラツィオ州フロジノーネ県、モンテ・サン・ジョヴァンニ・カンパーノ城 Castello di Monte San Giovanni Campano, Provincia di Frosinone, Lazio とのことです(イタリア語で、不勉強のため中身はよくわからないのですが、伊語版ウィキペディア該当頁は→こちら。また"LOCATION VERIFICATE: Nuda per Satana (1974)"[ < il Davinotti ]も参照)。手短かに取りあげることにいたしましょう。

 雷が轟き風吹きすさぶ夜、車で往診か何かに向かっていたウィリアム・ベンソン医師(ステリオ・カンデッリ)は、事故を起こした車に出くわします。運転していたスーザン・スミス(リタ・カルデローニ、『イザベルの呪い』(1973)に出ていました)は無事でしたが、現場から見えた城に助けを求めるも、そこでスーザンそっくりのイヴリンから呼びかけられる。他方翌日城にやってきたスーザンは、内側が緋色の黒マントを着た紳士(ジェイムズ・ハリス)に勧められ城で休むことになる。風呂上がりに庭に出てみれば、医師そっくりのピーターから呼びかけられる。またそれまで昼間だったのに部屋に案内されて窓を開けると夜になっていたりします。最初の夜医師が入った時には城内は荒れ果てた様子でしたが、翌日スーザンが来ると綺麗になっています。
 時間の進行が狂った城内で、過去の人物らしいイヴリンとピーターは永遠に何らかの事件を反復しているらしい。となれば、『幽霊屋敷の蛇淫』(1964)や『リサと悪魔』(1973)、『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974)でお馴染みの主題です。もっともこのモティーフはそれ以上展開されることなく、医師が黒マント黒帽子の男を追いかけ、庭園をぐるぐる回った挙げ句追いついて相手が振り返れば自分と同じ顔だったという、『呪いの館』(1966)を思わせるドッペルゲンガーの主題に移行します。いずれにせよ城は悪魔の支配下にある閉域なわけですが、『リサと悪魔』のテリー・サヴァラスや『淫虐地獄』(1971)のダニエル・エミルフォルクに比べると、本作でのジェイムズ・ハリスは存在感の点でいささか負けているのではないでしょうか。
 ちなみに本作には、スーザンが暗闇落下の末巨大な蜘蛛の巣に絡みとられて大蜘蛛に襲われるという、『惨殺の古城』(1965)に出てきたモティーフも登場します。大蜘蛛がおそろしく作りこまれていない張りぼてな点まで同様でした。巨大蜘蛛の巣は『呪いの館』にもありました。

 お城が最初に登場するのは約9分、夜、丘の上らしきところで左右に棟が伸び、右端では手前に少し突きだしまた少し高くなっている。壁は白っぽく見えます。2階分ある左半分の窓には灯りがともり、右半分は暗くなっている。また中央あたり、1階と2階の中間にひときわ大きな窓があります。外観と屋内が一致するのであれば、後に出てくる主階段踊り場の大窓に当たるのかもしれません。

 最初の夜医師は勝手に開いた両開きの木の扉から中に入り、のぼり階段をあがっていきます。塵芥が散らばっている。上から見下ろすカメラが床近くから離れた位置まで上昇すると、右に壁がありロープの手すりを張ってあることがわかります。壁は黄色で白の帯が枠取っている。

 女性の肖像画をアップでとらえたカメラが左に流れると、奥の扉口から医師が入ってきます。この部屋の壁は緑です。薄暗く、椅子にはシーツがかけられ、いろいろと荒れています。
 右奥の扉を開くと首にナイフの刺さった男が笑いだす。この人物は後に執事(レナート・ルピ)として登場しますが、いつの間にか出てこなくなってしまいます。扉を閉じ大理石の女性像の頭部が一回転、壁が赤の部屋に移っている。女のうめき声に別の扉を開くと男女が絡みあっている。また扉を閉じる。書見台の本には怪しげなことが書いてありました。壁に掛かった額の中では緑のドレスを着たスーザンそっくりの女性像が前後に動く。この額の内側は少し後に真っ暗になります。緑の部屋もそうでしたが、彫刻や絵がたくさん飾られています。
 奥の扉口から額内に見えたのと同じ緑のドレスを着たスーザンそっくりの女性が現われます。手前はさほど荒れていない。扉口の向こうに大きな絵が見えます。そちらが緑の部屋のようです。


 昼間スーザンが再登場するのは、右下から車道が上がってきて、角を曲がって右上にのぼるあたりです。角に向かって左手では1~2段上りの段がある。その向こうで石積みの欄干が左右に伸びています。右上に上る車道も欄干付きです。
 約20分、そこを上がってカメラが下から上へ振られると、粗石積みの角塔がとらえられる。途中まで右斜めへ伸びる棟につながっているようです。角塔には窓は少なく、あっても小さい。頂きにはM字型の鋸歯胸壁があります。

  前夜医師が入った半円アーチ型の扉の前で黒マントの紳士に声をかけられる。二人の足もと近くから見上げられたりします。
 屋内に入ると、大理石の小児像を手前に、少し左に進めば左上がりの階段です。カメラは右から左上へ流れる。昨夜医師がのぼった階段ですが、荒れた様子はない。
 のぼった上で左に折れ、細長い踊り場が伸びます。それからまた左でのぼりとなる。踊り場にはかなり大きな窓があります。窓の外にも欄干が走っている。円柱もあります。先の夜の外観で見えた大窓と同じものなのでしょうか。
 階段をあがって緑の壁の部屋に入る。奥に窓があります。さほど広くはないようで、右から左へ進むと扉口を経て赤の壁の部屋となる。こちらも奥に大窓があります。書見台もありました。額の内側の真っ暗なところに男の像がぱっと映ったり(黒マント紳士ではなく医師を下品にしたような人物)、スーザンが瞬時にヌードとなり、その背後で紳士の片目が大写しされたりします。
 部屋の角をまたいで白い棚のようなものが並んでいます。その下にはソファが配されている。右端で棚は床までのものになります。扉をはさんで左側も同様の配置です。


 浴室でガウンを着せようとするメイド(イオランダ・マシッティ)となぜか愛撫しあった後、タオルを巻いた姿でスーザンは半円アーチ口から屋外に出ます。アーチのある壁は粗石積みです。出口のそばには鉄の手すりがあり、左下へ階段がおりている。画面左手前に低い鋸歯胸壁、少し間を置いて右にも同様の鋸歯胸壁があります。カメラが右から左へ流れると、左手前の鋸歯胸壁が「字状に折れ曲がっていることがわかる。角の内側下方が凹んでいます。アーチ口のある棟の左、道をはさんで窓のある別の棟がありますが、さほど大きくはなくすぐ左でまた道となる。左手前にまた内側下が凹んだ「型の鋸歯胸壁が来る。さらに左にもあります。その奥にはまた別の棟が見える。いくつもの独立した建物が敷地内に建っているらしい。左奥は木や芝生の庭になっているようです。
 庭の一角には多角形の噴水があります。そのあたりでスーザンをイヴリンと呼ぶ医師そっくりのピーターに出会う。奥には扉のある棟が見えます。


 主階段をのぼってくるスーザンと黒マント紳士が上から見下ろされます。カメラは左下から右上へ、階段をあがって右へ、すぐに扉があります。そこを入って左へ進む。壁は白く大鏡が配されています。鏡のすぐ向かいに壁があり、ここは廊下のようです。奥の右手がスーザンの部屋でした。2人の背を追ってきたカメラはここまで1カットで、スーザンと黒マント紳士の左まで来て止まります。
 ちなみに主階段側から見て左へ入った方がスーザンの部屋に通じていたわけですが、右に入れば緑の部屋・赤の部屋となるのでしょうか。

 部屋の中は薄暗く、左奥の板張りの戸を開くと外は夜でした。向かいに角塔が見え、手前との間には欄干が伸びています。屋上でつながっているのでしょうか。
 蠟燭がアップになり、白いヴェイルの中での浅黒いメイドとの愛の営み、女性彫像頭部の回転、うなされるスーザンの多重化、黒マント紳士の片目のアップ、メイドがスーザンの首を絞めるさまなどが矢継ぎ早に畳みこまれます。
 突風で板戸が開き、椅子の上にいた黒猫を外に出す。足音にまた外へ出ると画面が真っ暗になります。下から光を当てられた執事が笑う。
 手前に暗がり、向こうに扉口があって、その奥の部屋にも扉口がある。俯瞰するカメラは振り子状に揺れます。奥の扉は勝手に閉じる。
 暗がりの中メイドが執事に鞭打たれる場面を経て、緑の光を浴びた黒マント紳士登場、青い布を敷いた十字状の平台に鞭の傷跡もないメイドが横たわってトランス状態に入る。左の壁は真っ赤です。奥の壁には方形扉口が開き、その向こうは青い光に浸されている。鉄の螺旋階段の手すりらしきものが覗いています。
 日本語字幕では「アストロッド」となっていましたが、「アスタロト」ないし「アストレト」のことでしょうか(ゲティングズ、大瀧啓裕訳、『悪魔の事典』、1992、p.49 参照)、その名を叫んで黒マント紳士は「お前は影の主じゃない」といい、メイドの胸にナイフを振りおろす。


 それを見て逃げだしたスーザンは闇の中を落下、先に触れた巨大蜘蛛の巣に引っかかります。まわりは荒れ部屋のようですが、少し後には屋外のようにも見える。
 赤の光、次いで緑の光の中、また多重化したりしつつスーザン似のイヴリンと睦みあっていた医師に、助けを求めるスーザンの声が届きます。イヴリンは男の声で笑い、「私は彼女ではなく彼女でもある」という。
 約52分、暗い主階段をおりる医師が下から見上げられる。カメラは斜めになっています。おりて左の扉口に入る。
 規則的に石が積みあげられた壁にはさまれた階段を下へ、扉を破れば蜘蛛の巣のある空間です。どう見ても危なっかしい角度で拳銃を撃ち、大蜘蛛を倒します。医師とスーザンはやっと再会したわけです。
 地下への階段を今度はのぼります。あがった先の壁には壁龕があり、大壺が置いてありました。その前を左へ、またのぼり階段です。
 切り替わると奥の半円アーチ口から出てきて、手前の半円アーチ口に進んできます。2つのアーチの間は右の壁がゆるく折れており、壁一面にガラス戸棚が配されていました。左下に欄干らしきものがのぞいている。手前のアーチの先も壁は右に曲がりつつガラス棚に覆われています。左の壁には窓らしきものがある。
 また半円アーチ口をくぐると、左奥に鎖状格子が見え、右正面には大鏡、そこに鎖状格子の影が映っています。格子は数段分高い位置にある。笑い声に振りかえると黒マント紳士がいました。「君たちは永遠の現在の囚人だ」という。大鏡が割れます。向こうから黒マント紳士が現われ、「君たちのように騒々しい客は初めてだ」との台詞、今までにどれだけの客が囚われたのでしょうか。
 医師とスーザンは鎖状格子の扉を開き、右上への階段をのぼります。格子戸の向かいにも扉がありました。
 主階段が上から見下ろされます。薄暗く、下からの光で左の壁に欄干の影が落ちている。あがって前に通った廊下に入り、奥右のスーザンの部屋ではなく奥左の扉に入る。ここが医師の部屋だったようです。左の壁には鏡が掛かり、戸窓らしきものは見当たりません。


 約58分、医師が外をうかがうと、廊下の鏡に黒帽子黒マントの人物が映っていました。部屋を出て主階段へ、おりて外に出れば昼間です。以前スーザンが出てきたところでした。
 欄干を飛び越え右奥へ走ります。芝生があります。ゆるい上り坂の上に多角形の噴水がありました。カメラは斜めになる。
 城は小山の上にあるのですが、建物は庭園に囲まれているのでしょう。低い生け垣に囲まれた道、右に石垣のある道、左に欄干のある道などを走り回り、黒帽子男を追います。同じところをぐるぐる巡っているかのようです。角塔をとらえるカメラがぶるぶる震えたりする。
 画面手前を半円アーチが枠どる向こう、左右に石壁が伸び尖頭アーチ口がある。その左手前には右下がりの階段らしきものが見えます。石壁の奥に角塔が聳えている。
 右奥のアーチから手前のアーチの前まで来る。間は薄暗い。その手前にも尖頭アーチがあります。このアーチの左右に粗石積み壁が伸び、右へ進むとまたすぐにアーチ口がありました。向こうには遠く山並みが見える。
 中に入ると低い草に覆われた斜面です。そこでやっと黒帽子男に追いつくと、『呪いの館』のエピソードが再現されるのでした。

 約1時間3分、扉から入ると真っ暗です。雷が轟く。椅子に分身が坐っていました。下品さを強調された分身との対話、スーザンとイヴリンの合体を経てまた真っ暗に、椅子の手前左右に扇状に柩が2つ配され、半柱の上に髑髏が置いてある。煙とともに少し高くなったところの椅子に黒マント紳士が現われます。2つの柩からそれぞれ裸女が出てきてスロウ・モーションで踊る。全身を左右塗り分けた裸男2人も加わります。ふんどし姿です。手前の椅子では分身とスーザン=イヴリンが絡みあう。最初の夜2つ目の扉を開けた時に見えた光景です。オルガンにシンセサイザー風の音がかぶさる。向かいには小さめのベッドがあります。
 この部屋の位置は不明ですが、医師はいったん荒れた状態の赤壁の部屋へ書見台の本を見に来ます。なぜか火の浄化作用に気づき、また戻るのでした。ランプを投げつけると分身は笑い、黒マント紳士は呪います。
 約1時間19分、自動車事故の音ともに冒頭の車に戻ります。事故を起こした車から投げだされた手には、医師が分身から渡されたのと同じメダルの片割れが握られていました。

Cf.,  地引雄一監修、『ホラー・ムービー究極大鑑』(ぴあシネマニアック・シリーズ Vol.01)、2004、p.237。

Tim Lucas, Mario Bava. All the Colors of the Dark, 2007, p.686

Danny Shipka, Perverse Titillation. The Exploitation Cinema of Italy, Spain and France, 1960-1980, 2011, p.153

Jonathan Rigby, Euro Gothic: Classics of Continental Horror Cinema, 2016, p.302
 
 2016/7/30 以後、随時修正・追補
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