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催淫吸血鬼 *
Le frisson des vampires
    1971年、フランス 
 監督   ジャン・ロラン 
 撮影   ジャン=ジャック・ルノン 
編集   オリヴィエ・グレゴワール 
 美術   ミシェル・ドゥルサル 
    約1時間35分 
画面比:横×縦    1.66:1
    カラー 

DVD
* ヴィデオでは『地獄の儀式~吸血魔団~』
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 「更新履歴」のページでは本作を「1970~74年のいわゆる〈ユーロ・トラッシュ〉より」の中にくくりましたが、〈ユーロ・トラッシュ〉なる語は木野雅之編著『異形の監督ジェス・フランコ ユーロ・トラッシュ映画が誇る巨匠のすべて』(2005)の副題からとったものです。では〈ユーロ・トラッシュ〉とは何かと問われれば、きちんとわかっているわけでは毛頭ありません。見る人からすれば本サイトで取りあげている作品の大半は〈(トラッシュ)〉映画ということになるのかもしれませんが、それはさておき、これまで見た作品であれば『ターヘル・アナトミア-悪魔の解体新書-』(1968)あたりがその範疇に含まれると見なしてよいでしょうか。いわゆる〈搾取(エクスプロイテイション)〉映画とも重なるであろうそのあり方は、性や暴力といった扇情的な要素を売り物にしつつ、〈(トラッシュ)〉という貶下的な形容がつく点からして、低予算に加え、映画として出来が芳しくないと判断されるような評価もあらかじめ繰りこまれているようです。
 とまれそこに売り物の一つとしてホラー的な要素が足されることが少なくないのも想像に難くないところです。本作も含めて70年代前半のそうした作品が、一時期日本でもソフト化されました。洩れなく見たわけではありませんが、見る機会のあったものから何作か、古城が出てきて超自然現象が起こるものをとりあげることにしましょう。本作以上に毒々しい邦題が並びますが、やんぬるかなといったところであります。ちなみに本作の原題は、『吸血鬼たちの震え(戦慄)』といったところでしょうか。


 ジャン・ロランの名前を憶えたのはいつくらいからでしょうか。下掲の平和孝「吸血鬼映画全作品フィルモグラフィ」を引っ張りだしてみれば、本作もちゃんと挙げられていました。他にもどこで見かけたのか、古城を舞台にした吸血鬼映画が少なくないとのことながら永らく見る機会を持たなかったのですが、ソフト化されたのを聞き知って本作ともう1点『レクイエム』(1971)を見てみれば、しかし、その時点での感想はなかなかにしんどいというものでした。〈(トラッシュ)〉映画の特徴と見なしていいのかどうか、筋運びに歯切れがないというか、ぐだぐだというか、それ以上追っかけようという気を削いでくれるに充分だったわけです。
 本作もその典型で、主演のサンドラ・ジュリアンをはじめとして女優陣はやたらにヌードになったり薄衣だったりしますが、登場人物の行動の動機はよくわからず、設定や筋のつながり具合も把握しづらい。ただ今回見直してみれば、舞台が古城とその近くの墓地にほぼ限られています。低予算なこともあって古城はロケで、しかもこれがなかなか面白いものでした。室内場面などどこまでがロケなのか定かではありませんが、いずれにせよあまり話の筋にとらわれず、お城の相貌に注意を向けるというのが、本作の楽しみ方の一つかもしれません。そう思ってみれば、マリオ・バーヴァ風の原色照明、幾度かカメラがぐるりと360度パンすること、不条理めいた図書室のエピソード、ギャグとしか思えないヒロインのもとへの女吸血鬼の出現および、後者が邪魔者を始末する方法なども合わせて、本作がけっこう魅力的に見えてくるから不思議なものです。

 [ IMDb ]にはロケ先が挙げられていませんが、さいわい本作についての仏語版ウィキペディア該当頁に(→こちら)、北フランスはエーヌ県の南寄り、ソワッソン市から5kmほどのところにあるセモン村 Septmont, Aisneで撮影されたことが記されており、セモンの該当頁(→こちら)内および独立した頁(→こちら。また→"Château et donjon de Septmonts" [ < montjoiy.net ])でセモン城 Château de Septmonts が項目立てられていました。ヴィクトル・ユゴーが1835年8月1日、ここを訪れた旨書き残しているという。
 14世紀に建てられた高さ43m、7階建ての主塔 le donjon、3階建てで屋内は円形に近い方塔 la tour carré も同時期の建造で、凸角堡(ルダン)には螺旋階段があって矢狭間として用いられる、また方形の物見をいただく半階がある、聖ルイ礼拝堂 la chapelle Saint-Louis は14~15世紀、16世紀に築造され永らく廃墟化していたというルネサンス邸、通称司教宿舎 Le pavillon (ou palais) Renaissance, dit logis des évêques などからなるとのことです。セモン友人会 Association des amis de Septmonts の公式サイト(→こちら)を見ると、"Accueil "欄の"Visite du donjon"の頁に主塔の断面図や各階平面図、敷地の地図などが掲載されていました。
 なおルネサンス邸は1918年に爆撃を受け、1971年にセモン友人会が創設されるまで放置され、また城は1978年、方塔は1999年に村によって取得されたということで、本作はそれらの前に撮影されたわけです。


 本作の音楽は Acanthus が手がけました。手もとのソフトの裏ジャケットには「フランスのプログレッシブ・ロックをリードした幻のバンド”アカンタス”」と記されています。今のところそれ以上のことはわからないでいるのですが、プログレというよりサイケデリックといった感じの音は、本作が製作されたのが1970年であることを考えれば、いかにもいかにもと感慨深いものがあります。ポランスキーの『マクベス』(1971)におけるサード・イアー・バンドなどと比べてみるのも一興でしょう(追記:下掲 Cathal Tohill & Pete Tombs, Immoral Tales. European Sex and Horror Movies 1956-1984, 1995, p.145 によると、当時グループのメンバーはまだ学生で、映画公開後解散したとのこと)。

 まずはモノクロで、石造りの納骨堂入口付近が映されます。入口の少し左は壁が円塔状になって迫りだしており、少し下膨らみでした。葬儀が執りおこなわれています。柩は2つある。
 カラーなれどシルエット化した墓地の背が高い十字架群をバックにしたオープニング・クレジットをはさんで、廃墟状の城外観、そして半円アーチ開口部にカメラが屋外から近づいていく。左右の壁は青みがかっています。扉の奥は多角形の部屋です。広間というにはさほど広くはありませんが、食堂としても使われるここが、以後も要の位置を占めることになる。壁は白っぽい漆喰塗りで、随所に壁龕があり、いろいろと飾ってあります。
 葬儀の場にいた2人の小柄な娘、一人は白人(マリー=ピエール・カステル、『レクイエム』に続投)、もう一人は東アジア系で(クエラン・エルス)、下掲の地引雄一「ジャン・ローラン」によると「ローランの映画には必ずといっていい程ふたりの少女がペアで登場する。本人にもその理由はわからないという」とのことです(p.265)。下掲 Cathal Tohill & Pete Tombs, Immoral Tales. European Sex and Horror Movies 1956-1984, 1995, p.171 も参照。
 2人娘は右に進み扉口を抜ける。向こうには湾曲階段がのぼっています。屋外に面しているらしき回廊を奥から手前へ、中庭らしきところを抜ける。向かいに石造りの建物があります。画面手前を扉口が枠取っている。
 燭台をとって中に入れば右へ、暗い廊下を進みます。カメラは天井を見上げて右から左へ、そして左下に流れると壁に並ぶ窓の向こうを2人が右へ進む。向こうは回廊になっているらしい。カメラは360度は回転したでしょうか。すぐ後ほど、主塔の5階のまわりを石落としの回廊が巡っていることがわかります。外側は高めの石の塀が囲んでいる。
 さてカメラは石の螺旋階段を真上から見下ろします。周囲・上は赤く、内側・下は青い。2人娘がのぼってきます。あがった先は主塔の最上階なのでしょうか、円形の空間はさほど広くありませんが天井はずいぶん高い。胸に杭を刺した男が2人いました。ヒロインの従兄たちであることが後にわかりますが、[ IMDb ]にも名前は記されていない(ジャック・ロビオルとミシェル・ドゥラエ)。2人娘は従兄たちに仕えているようです。
 主塔外観が下から見上げられます。白っぽい石造で、左側に半円小塔。中央は浅く湾曲し、右も浅い3分の1円と方形の小塔がある。頂きにも小塔が3本立っています。塔というだけあって縦長ののっぽですが、何かと出入りが多い。"Château de Septmonts"で検索してご確認ください。上の方で石落としの回廊の壁が取り巻いている。そこを進む2人娘が上から見下ろされます。
 窓のガラスが落ちた廃墟状の建物を左右に、その間で手前へ階段がおりています。この屋外階段も後に何度も登場することでしょう。
 その先は墓地です。一部に赤の照明が当てられている。手前に柵状の門がありました。こちらは緑の照明です。柵の左右に石の塀が伸びている。さらに先にも柵がある。手前に柵を配した構図では、柵が青く染まっています。向こうの石棺の蓋がストップ・モーションで外れていき、中の女が立ちあがる。


 車で蜜月旅行中の新郎新婦がやって来ます。妻はイーズ(サンドラ・ジュリアン)、夫はアントワーヌ(ジャン=マリー・デュラン)、イーズの従兄たちが死んだという。村の家の向こうに木立、その奥に尖塔が聳えていました。
 城の敷地に車が入ってきます。廃墟にはさまれた屋外階段をのぼり左へ、主塔です。新郎新婦は多角形部屋に入る。2人を上から見下ろしたのに続いて、カメラは下から壁を近接で上下しつつなぞります。右の扉口から燭台を持った2人娘が現われる。
 新郎新婦が通された部屋は、扉の向こうで幅の狭い湾曲廊下が続いているらしい。部屋の天井はオジーヴ、天蓋付きベッドに暖炉もあります。壁はやはり白っぽい漆喰ですが、一部木の根が這っている。
 イーズは1人で墓参りへ、屋外階段をおり墓地へ、そして納骨堂前で喪服の女イザベル(ニコール・ナンセル)と出会う。イザベルは従兄2人双方の恋人だったようです。冒頭の葬儀の場におり、また村に入った夫におかしなことが起こっていると告げた人物でもあります。なお屋外階段の向かってすぐ左が実は納骨堂であることが後にわかります。ここでもちらっと映っていました。


 イーズが部屋に戻り、1人になりたいからと夫を追いだした後、着替えるべく裸になっていると、黒い柱時計の中から女が出てきます。顔は白塗り、服は紫でイゾルド(ドミニク、『レクイエム』に続投)と名乗る。先の場面で墓から立ちあがった女性です。なおこの部屋にも怪しげなものがいろいろ飾ってありました。またやはり不規則な平面らしい。
 2人は部屋を出て廊下へ、左下に紫の照明を当てられた主塔外観をはさんで、屋外階段をおります。墓地には赤い照明が差してある。手前から燭台を持った2人娘が現われて盃を差しだします。2人娘は紫の薄衣をまとっている。霧を風が飛ばし、風の音に加えて何やら他の音もします。イゾルドはイーズにまとわせたガウンを脱がし、キスした後首筋に咬みつきます。裸のイーズを石棺の上に投げだす。

 どこやら別の部屋にいた夫はいったん2人の部屋へ、イーズがいないので戻り、狭い方形扉口から出てきて階段の上から下を見下ろす。石壁にはさまれた階段は幅が狭く湾曲しています。下に2人娘がいました。紫薄衣に着替える。すぐ左が外への扉口でしょうか。そこから出て、暗い屋外を右から左へ向かいます。夫はその後をつける。
 先にあったのは中柱にオジーヴのあるゴシック様式の礼拝堂でした。聖ルイ礼拝堂でしょうか。2人娘が祭壇に横たわる半裸の娘に杭を打つ。従兄たちもいます。窓からのぞいていた夫が部屋に戻るとイーズは眠っていました。

 翌日、多角形部屋で朝食でしょうか。主たちは亡くなっていない、昼間は図書室で仕事だと2人娘はいいます。4人の顔をカメラは下からぐるっと回ってとらえます。逆行します。階段上からの2人娘のカットが再現され、続いてベッドで裸の2人娘が抱きあっています。
 書棚の一部が開く。夫が入ってきます。図書室です。カメラが右から左へぐるっと一周します。さほど広くはありませんが、四方の壁がすべて本棚で埋め尽くされています。本が勝手に飛びだして落ちてきます。床に本の山ができ、夫は気を失ないます。


 主塔外観の仰視に続いて、廃墟状の棟の右端に低い小円塔が立っています。ルネサンス邸であります。小円塔は壁が一部崩れており、そこから紫薄衣の2人娘が出てくる。
 納骨堂前です。やはり赤の照明が差し、扉の向こうは青でした。まわりの十字架に2人娘は布をかけます。

 夫が湾曲階段をおりてきます。ふらふらです。先は多角形部屋でした。同じ階段から2人娘と従兄たちが入ってくる。カメラの前に代わる代わる首を突きだして饒舌に喋りまくる2人の様子は、いささか喜劇調ということなのでしょうか。祖先はイシスの祭司だったという。テーブルの中央に天秤が置いてありました。またこの部屋には巨大な暖炉があります。


 屋外の丸井戸から煙が吹きだします。現われたのはイゾルドです。向こうに尖塔アーチ口があり、彼女はそこに入って暗い空間を抜ける。
 部屋の新婚夫婦が上から見下ろされます。礼拝堂入口のカットをはさんで、夫を追いだしたイーズが裸で柱時計に寄り添います。諦めてベッドに入ると、ベッドの頭部と壁の間にカーテンがかかっていて、そこからイゾルドが現われるのでした。


 イザベルが自宅らしきところで男と話しています。誰だったのでしょうか。ベルナール・ビュッフェ風の絵が飾ってあります。
 イザベルの1人語りとともに下から円塔が見上げられ、カメラが右下へ滑ると納骨堂入口の上部でした。蔦が絡んでいます。さらに右には2階建てに破風のついた棟、窓のガラスは抜け落ち、右端に低い円塔がある。
 なぜか夜の海岸俯瞰をはさんで、廃墟が下から見上げられる。右奥に主塔が見えます。
 寝室のイザベルです。斜めになった木の太い柱があります。従兄たちが飼っていた犬アヌビスの鳴き声に引かれ、主塔外観の仰視に続いて城内の部屋に入る。
 壁に赤い傷跡のような放射状の線の束、それを金の枝を寄りあわせたような額が囲んでいます。多角形部屋と似ていますが別の部屋のようです。やはり不規則な平面、カーテン掛けの開口部に木の扉のある扉口、上に蝙蝠模様のある暖炉、その他奇妙な人型などがあります。
 イゾルドと従兄たちがいました。イザベルはイゾルドに抱きつかれると両の乳首から血を流して倒れます。イゾルドは両の乳首にトゲだか何かをかぶせていたのでした。
 イゾルドと従兄たちは言い争います。従兄たちはもともと吸血鬼ハンターだったという。男は嫌いというイゾルドに従兄たちが襲いかかる。ここまではイゾルドの方が優位に立っていましたが、それが以後逆転してしまうようです。


 従兄たちと紫薄衣の2人娘がイザベルを椅子に乗せて運びます。葬列であります。左下が石垣になり、濠に面している。石垣は奥の角で下すぼみの円形をなします。イザベルを濠に沈める。主塔外観も随時挿入されます。

 眠る夫のもとに紫薄衣の2人娘が忍んできます。夫が目を覚ますと2人娘は扉から逃げていく。扉の外では石の螺旋階段が下へおりています。矢狭間の外から螺旋階段をおりる夫がのぞかれる。石落としの湾曲回廊を経てまた下りの階段、おりてすぐ左に扉があります。以前2人娘が紫薄衣に着替えていた場所です。扉が開かないので夫は階段へ少し戻り、縦長の矢狭間から外を見ます。
 崩れた壁の前、屋外階段の上に従兄たちがいました。最初は引きで下から、手前の草が赤く染まっている。足もとには柩が置いてあります。そこから2人娘が顔を出す。俯瞰に替わると屋外階段をイゾルドとイーズがのぼってきます。夫は手にした拳銃をぶっ放します。
 夫が部屋に戻るとイーズがいました。屋外階段が俯瞰されます。イゾルドもいる。霧が流れます。


 朝です。イーズは日の光をいやがります。
 昼間の主塔です。カメラが上から下へ振られると、新婚夫婦が向こうから散歩してきます。相変わらず拳銃を放さない夫は茂みに向かって撃ち白鳩を殺してしまう。イーズは鳩から流れる血が気になってしかたありません。
 イーズのみ右へ、左に円塔、右にはアーチだけが残って立っています。その間で柩が台に載せてありました。屋外なのですが。そばに丸井戸があります。柩の中にはイゾルドがいる。


 円塔に尖塔アーチ扉口があります。地面に数段おりる。そこから出てきた夫が手前の車に向かいます。車は動かない。その様子を2人娘の内白人の方が見ています。裸です。塔の窓にいるかと思えば木の扉の向こう、また屋外階段にいつの間にか移っていたりする。

 主塔外観をはさんで、夜の墓地を2人娘が進みます。十字架に布をかぶせ、納骨堂前に向かう。赤の照明付きです。扉の中は青。夫が後をつけています。2人娘はナイフで腕を切り、盃に血を注ぐ。従兄たちが出てきます。

 多角形部屋です。逃げようという夫に今日は結婚式だとイーズが応える。暖炉の中の煙突からイゾルドがおりてきます。従兄たちと2人娘も入ってきます。入会の儀式を行なうという。従兄たちは相変わらず饒舌です。夫は十字架を突きだしますが呆気なく取り押さえられる。従兄たちの動きに合わせてやや下からのカメラが右から左へ一回り以上します。
 納骨堂前です。扉の右が屋外階段だったことがわかります。
 2人娘によって解放されたらしい夫がイーズをさらい、高い十字架だらけの墓地を抜けていつの間にか鉄道の線路の上を走ります。カメラが天地逆転したりする。従兄たちがやはり十字架だらけの墓地を駆け抜けて追ってきます。
 イゾルドは鶏の鳴き声に納骨堂に入り、湾曲階段をおります。仰角です。換わって俯瞰になると下は狭い地下室です。柩が燃やされていました。2人娘が今夜の用は終わったとばかり十字架にかけた布を外していったため、門についている十字架に妨げられてイゾルドは外に出られない。また地下への階段をおりる仰角のカットが反復されます。
 2人娘が十字架の布を外したのは故意だったようです。前にも出てきた青と緑の照明の当たる柵から下をのぞきますが、この柵は納骨堂の入口のものということらしい。キスして輪になって踊りながら奥へ退いていくさまが柵越しに捉えられます。

 夫とイーズは海岸に着きます。黒ずんだ木の柱が幾本も並んでいます。網をかけるためのものなのでしょうか。ずいぶん多い。前にイザベルの回想で少し映ったところです。海からすぐのところに岩だらけの低い崖があり、大きな洞窟らしきものも見えます。崖の上は緑地です。セモンは内陸なのでここだけ別の場所でロケしたのでしょう。
 従兄たちは日の出が近いことを気にしますが、イーズが近づいてくると、服を脱がせ、地面に転がって彼女の首筋に夢中で咬みつきます。夫はイーズにあたりそうなのに拳銃を撃つ。そうこうする内に朝が来て日光を浴び、3人は消えてしまいます。『吸血鬼ノスフェラトゥ 恐怖の交響楽』(1922)のラストが連想されなくもない。何発弾が込められるのか不明な拳銃を空に向けて連射しながら夫は叫ぶのでした。

Cf.,  平和孝、「吸血鬼映画全作品フィルモグラフィ」、『季刊 映画宝庫』、1980.1:「特集 ドラキュラ雑学写真事典」、p.164

ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、pp.146-147/no.099

地引雄一監修、『ホラー・ムービー究極大鑑』(ぴあシネマニアック・シリーズ Vol.01)、ぴあ株式会社、2004、p.150。また pp.264-265:「ジャン・ローラン 耽美的とエロティシズムの吸血鬼映画を撮り続けるフレンチ・ホラーの大家」(双方地引雄一)
同書から→こちら(『悪魔の凌辱』)でも挙げています


Cathal Tohill & Pete Tombs, Immoral Tales. European Sex and Horror Movies 1956-1984, 1995, pp.134-176 : "Back to the Beach. The Films of Jean Rollin"
本作についてはとりわけ;pp.145-146

この本の存在を知ったのは;
Immoral Tales. European Sex & Horror Movies 1956-1984、2012/11/24 [ < 『ユーロピアン・ビザールシネマの世界』]
同じブログから、「レクイエム Requiem pour un Vampire」、2010/12/11、「ジャン・ローランJEAN ROLLIN 死去」、2010/12/26、「ローランのアンニュイ姉妹 Marie-Pierre Castel & Catherine Castel」、2012/12/8 なども参照


Danny Shipka, Perverse Titillation. The Exploitation Cinema of Italy, Spain and France, 1960-1980, 2011, pp.272-291 :"Les Pensées de Sang : The Psychedelic Cinema of Jean Rollin"
本作については pp.277-278, 291

Jonathan Rigby, Euro Gothic: Classics of Continental Horror Cinema, 2016, pp.219-221
 2016/07/04 以後、随時修正・追補
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