ホーム 宇宙論の歴史、孫引きガイド 古城と怪奇映画など 美術の話 おまけ
淫虐地獄 *
La plus longue nuit du diable **
    1971年、ベルギー・イタリア 
 監督   ジャン・ブリスメ 
 撮影   アンドレ・ジョフェル 
編集   パノス・パパキリアコプロス 
プロダクション・デザイン   ジオ・ベルク 
    約1時間35分 *** 
画面比:横×縦    1.66:1 ****
    カラー 

DVD
* ヴィデオ旧題は『死霊の七人』とのこと
** [ IMDb ]による。手もとのソフトはイタリア語版でタイトルは
La terrificante notte del demonio 。またジャケットには Devil's Nightmare とあります。
*** [ IMDb ]による。手もとのソフトでは約1時間33分。
**** 手もとのソフトによる。[ IMDb ]ではネガが1.33:1、意図された横縦比は1.85:1、仏語版ウィキペディア該当頁では2.35:1
………………………

 本作についてはサイト[ angeleyes ]中の「エリカ・ブラン Erika Blanc」の頁(2008/6/17)で詳しく取りあげられていますので、合わせてご参照ください。エリカ・ブランには本サイトではマリオ・バーヴァの名作『呪いの館』(1966)で出くわしましたが、そこでの大人しそうなお嬢さん役と打って変わって、お色気お姉さん、目は落ち窪み頬の削げた蒼白顔、かと思えば不安げな様子を見せたりといろいろ頑張っています。また上のウェブ・ページにも記されていますが、肉付きが薄そうで黒フード・黒マントの怪しげな人物に扮したダニエル・エミルフォルクは、ジャン=ピエール・ジュネ&マルク・キャロの傑作『ロスト・チルドレン』(1995)の他、フェリーニの『カサノヴァ』(1976)、ロブ=グリエの『囚われの美女』(1983)などに出ていました。アレッサンドロ・アレッサンドローニの音楽もいろいろと工夫しており好感度が上がります。
 なお大概な邦題ですが、仏語原題は『悪魔の一番長い夜』、伊語題は『悪魔の怖ろしい夜』、英題は『悪魔の悪夢』といったところでしょうか。

 [ IMDb ]にはロケ先は挙げられていませんが、さいわい本作についての英語版ウィキペディア該当頁(→こちら、また仏語版は→こちら)にアントワン城 Château d'Antoing である旨記されていました。仏語版ウィキペディアのアントワン城の頁(→こちら)によると城はスヘルデ川 (オランダ語で Schelde、仏語で Escaut)の右岸、トゥルネーの南6km、南西ベルギーのワロン地域エノー州アントワン市にあるとのことです。起源は12世紀に遡るものの、現在の城は19世紀にネオ=ゴシック様式で再建されたものだという。ウィキペディアの頁には本作の件のほか、「城の伝説 La légende du château」の項もあって幽霊噺が綴られています(またイタリア語で不勉強のため中身はよくわからないのですが、ウェブ上で出くわした"LOCATION VERIFICATE: La terrificante notte del demonio (1971)"([ < il Davinotti ])を参照)。
 なお本作についての英語版ウィキペディア該当頁では「城の外観の撮影場所 the exterior castle location 」となっています。屋内場面はどうしたのでしょうか? これから見るように本作には古城映画的な見所が目白押しです。


 「ベルリン、1945年」の表示、爆撃の記録映像に続くセピアのモノトーンによるプロローグを経て、女性スキャットとチェンバロの曲が流れると、オープニング・クレジットのバックに城の外観が映されます。やはりセピアの写真のようです。尖り屋根の円塔にはさまれた3階分+屋根裏の棟、その右端にひときわ高い円塔が一基聳える。尖り屋根は暗め、そのすぐ下に明るめの帯、円塔とその間の壁の主な部分は暗め、地面近くの左半はまた明るめになるという、特徴的な眺めです。右端の高い塔は途中で少し細くなり、屋上は欄干付き、また脇に一段高い尖り屋根の小塔を付けています。高い煙突も何本もある。アントワン城であります。

 カラーになるとプロローグに登場していたフォン・ローネベルク男爵(ジャン・セルヴェ)に取材する女性の場面を経て、同じ女性があちこちで写真を撮ります。まずは右手に半円アーチのある石の棟-少し後にこれが城門だとわかる-、その左、左上がりの階段に続いて左方に二段になったやはり石の棟が伸びる。1階2階とも開口部が並びます。女性は2階の開口部の前に伸びる歩廊でカメラを操っています。右のアーチの前には車道が伸び、左の棟の手前は芝生になっている。
 続いて城の屋根付近が下から見上げられます。背の高い塔は左に来ている。屋根の斜面には張り出し窓が並び、煙突も何本か突きでています。
 女性の2階歩廊、前より接近した城外観の仰視、また2階歩廊の女性と入れ替わります。歩廊の左端で上への湾曲階段が数段分あることがわかる。
 城の外観がより距離をとって、女性は地面にいます。今度は城門のアーチから女性が出てきます。手前右に上りの階段が映っている。
 高い位置からの俯瞰です。城だろう棟は手前右に来て、そこから左下へ斜めに石柱がおりていく。石柱には棘々がはえています。これは何なのでしょうか。地面は芝生で女性がいます。
 円塔が下から見上げられるのに続いて、女性が車に近づく。雷鳴が鳴りタイヤに二叉の矛が投げつけられます。女性は左から右へ、森の中を逃げる。けっこうえんえんと逃げた後、何かが襲いかかります。また雷が鳴る。

 運転手と六人の客を乗せたマイクロ・バスが森の中で通行止めにぶつかります。焚き火のそばにいた黒マントの禿頭男(ダニエル・エミルフォルク)が城に泊まらせてもらえばいいと勧める。山道を進みます。オルガンの曲が流れる。
 白い建物が連なる、ここは近隣の村でしょうか。女性の遺体が発見されたのです。腕に「悪魔の印」がついていました。

 約14分、手前左に左上がりの階段がある、城門に向かってカメラが少し揺れながら前進します。アーチの左右で壁は円塔状になっていました。アーチの中に入るとけっこう厚みのあることがわかる。門を抜ければずっと先に城が見えてきます。間は芝生に覆われ、その左右を木立がはさんでいます。
 玄関は2連式でした。その前は7~8段のぼりになっています。後にわかる役名を先取りしておけば、好色なハワード・フォスター(ロレンツォ・テルゾン)と黒髪の妻ナンシー(コレット・エマニュエル)、神学生アルヴァン・ソレル(ジャック・モンソー)、文句の多い老人メイソン(リュシアン・ランブール)、食欲旺盛な運転主兼ガイドのマット・デュカール(クリスティアン・マイエ )、金髪娘レジーヌ(シャーリー・コリガン)と栗毛娘コリンヌ(イヴァナ・ノヴァク)の計七人が城に入っていきます。


 奥へ廊下が伸びます。床は市松模様です。壁は白く腰板があり、右の壁には窓、左の壁には額絵が掛かっている。奥の方に尖頭アーチが見え、その向こうの突きあたりの壁、上の方に黒っぽい丸窓があります。この廊下は玄関から入って左に曲がったものということのようです。
 手前に進んだ先には石の欄干付き湾曲階段がのぼっていました。一行の背後から執事のハンスが現われます。プロローグに軍服姿の男爵の部下として登場していた人物です。女性の声が一行の来訪を電話で連絡してきたという。階段の上からは短髪の家政婦マルタが顔を出します。


 執事は一行をそれぞれの部屋に案内します。神学生の部屋はプリント付きの白い壁紙に覆われている。床に「悪魔の印」がありました。1575年12月8日、エリカ・フォン・ローネベルクが悪魔祓いを執りおこなった際に残ったのだという。
 長い廊下が奥に伸びています。左右に部屋が並ぶ。一行は奥から手前へ進みます。
 フォスター夫妻の部屋には怪我をした鳩が迷いこんでいました。1436年に殺人が起こったという。
 ガイドの部屋に続いて老人の部屋には開かずの窓がありました。1738年に窓から落ちた人がいたため、煉瓦で塞がれていたのです。

 薄暗い実験室です。手前のテーブルには何やらガラス管だのフラスコだのが置かれ、色とりどりの液体に満たされています。向こうには背の低い幅広アーチが見えます。暖炉か竈でしょうか。脇には骸骨も置いてある。男爵が何やら調合しています。執事が報告に来る。

 ガイドは荷物の中からソーセージを引っ張りだします。
 同室にしてもらった二人の娘の部屋では、栗毛娘が金髪娘に粉をかけます。
 夫妻の部屋では夫人が夫を財産目当てで結婚したと決めつけています。
 二人娘の部屋では濡れ場になります。ハーモニカらしき音に女性スキャット、それにギターらしき音、最後にオルガンがからみます。


 居間です。薄暗い。壁に綴織がかかっています。
 食堂です。やはり薄暗い。執事がハーモニウムを弾きます。やはり綴織がかかっています。テーブルは円形でした。その上に置かれた燭台の蠟燭は赤です。
 12世紀に男爵家の祖先ジークフリートが悪魔と契約した、それ以来どの世代でも最初に生まれた娘は夢魔(スクブス)になるという。

 訪れた茶髪娘リザ(エリカ・ブラン)を家政婦が追い返そうとします。何やら曰くありげです。執事が中に入れます。
 三人がいたのは玄関のようです。リザと執事は玄関左の1階廊下を奥から手前に進む。
 石の欄干付き湾曲階段の下にあたるのでしょう、テーブルに電話、椅子を置いた一角がありました。花瓶の薔薇が黒くなります。
 城の外観がはさまれます。雷が鳴る。
 食堂にリザが合流します。黒いドレスは胸もとを大きく開け、お腹もだした露出度の高いものです。
 男爵が行なっているのは錬金術でした。またルドルフという兄がいましたが、不可解な焼死を遂げたという。
 栗毛娘はバイセクシュアルでした。フォスター夫に粉をかけます。


 一同は居間に戻りました。執事が今日は契約の日だという。ハーモニウムが響きます。
 神学生と老人がチェスをする。横でリザが見ています。
 男爵は退室する。フォスター夫人が実験室を見せてとついていく。一方栗毛娘はフォスター夫と12時に屋根裏へ上がる階段の裏で落ちあう約束をします。来たばかりでなぜそんな場所のことを知っているのでしょうか。
 実験室です。錬金術は一種の哲学だと男爵は力説しますが、夫人は金の錬成に成功したかどうかが気になって仕方がないようです。


 夫人が赤蠟燭の1本燭台を手に1階廊下を奥から手前へ進んでくると、ガイドとかち合います。ガイドは玄関が開かないという。いったん居間に戻り、老人とフォスター夫ともども見に戻ります。
 自室に金髪娘がいます。天井から血が垂れてきて悲鳴を上げる。
 1階廊下です。奥の左から栗毛娘、神学生が出てくる。そちらが居間なのでしょう。他方奥の右からは老人、フォスター夫、ガイドが出てきます。こちらはやはり玄関なわけです。一同は手前に進みます。
 石の欄干付き湾曲階段をあがって金髪娘の部屋に着く。花柄いりグレーの壁紙でした。

 約46分、幅のあまり広くない石の螺旋階段です。螺旋の柱身は円柱をなしている。天井の上を調べようと男性陣がのぼっていく。外周の壁の途中・奥に開口部があり、その奥は窓らしい。グルリと回った上にも同様の開口部がありました。下の開口部は方形でしたが、上のものはゆるいアーチをなしています。
 あがった先は屋根裏部屋でした。物置状態ですが、金属の燭台のようなものに黒猫が突き刺さっていました。右奥には鉄の処女らしきものがあります。ギロチンもあるという。オルガンが不協和音を響かせます。


 各室での老人、ガイド、夫妻の様子を経て神学生の部屋となります。リザの幻が現われたり消えたりします。犬小屋で犬たちが騒ぐ。
 神学生は書斎にやって来ます。さほど広くはないようです。本棚は少し湾曲しているように見える。棚の本一列分が勝手に落ちます。同年公開の『催淫吸血鬼』(1971)の一場面が連想されますが、あれほど大規模にはならない。右の方には暖炉があります。
 リザも合流します。神学生が見ていたのはフォン・ローネベルク男爵家の呪いについての本でした。男爵もやって来ます。

 リザが鏡を見ると、彼女の背後、画面左半分にガイドの部屋が映ります。右半分は真っ暗です。ガイドは赤蠟燭1本燭台を手に台所に来ます。リザもいました。豪勢な食べ物を供します。赤(?)ワインをグラスに注ぐ。

 約58分、このあたりから古城映画的に面白くなってきます。
 フォスター夫人が赤蠟燭1本燭台を手に、暗い2階(?)廊下に出ます。赤いガウンを着ている。目的は黄金探しでした。奥から手前へ進みます。カメラは後退する。手前で右へ、背を向け奥に向かいます。
 台所ではリザが今度は白ワインを注ぎます。
 使用人用のものでしょうか、狭い廊下が奥へ伸び、奥に鉄の螺旋階段があります。フォスター夫がいる。栗毛娘も合流します。二人は螺旋階段を上へ、カメラは左から右上へ首を振り、真下から螺旋階段を見上げる。かなり上まで続いているようです。先の石の螺旋階段では中央が円柱でしたが、こちらは宙空です。
 また台所です。リザは今度は赤ワインを注ぎます。それを飲むとガイドは喉を詰まらせる。リザは顔がギスギスになっています。倒れたガイドの腕に「悪魔の印」がついていました。ひたすらおいしそうに食べていたのにいささか哀れです。なお食堂の床は石畳でした。
 書斎で神学生と男爵が「悪魔の印」について話します。


 約1時間2分、古城裏方空間巡り、フォスター夫人の巻です。
 狭い湾曲階段を夫人が奥からおりてきます。薄暗く、まわりの壁は粗石積みか煉瓦積みです。地下室でしょうか。おりた手前はゆるいアーチをなしています。リザが後をつけてくる。
 切り替わると俯瞰で、右奥にアーチ、その下で2~3段のぼりになる。手前左でリザが身を潜めています。その左に角をはさんで窓がある。このあたりの壁は漆喰塗りですが、かなり荒れ果てています。通路の幅も狭く薄暗い。アーチの奥から夫人が入ってきて手前に進むと、リザが驚かせます。
 二人で扉を開け数段おりれば実験室です。暖炉だか竈の前も少し低くなっているようです。その右手、真っ暗になった奥に貯蔵庫があるという。
 粗石積みの空間です。奥にゆるいアーチがあり、そこから夫人とリザが入ってきます。向こうから階段をのぼってきたらしい。アーチの手前左の壁には窓があります。アーチのある壁の右手、下半はタイルでしょうか、方形に分割されている。その上はかなりざらざらしています。二人は手前に進む。リザは怖い顔になっています。金属的なノイズ風の音が響きます。
 手前に部屋の境か、ゆるいアーチがあり左右が狭まっています。その手前、右で何やら斜めになった木組みがある。さらに手前の部屋の角に砂金が山をなしていました。リザが夫人を突き飛ばすと、夫人は砂金の中へ埋もれてしまう。最後に突きだされた手のひらに「悪魔の印」がついていました。


 約1時間6分、部屋の老人といちゃつくフォスター夫+栗毛娘が何度か交互に切り換えられます。男女二人組はどこかの部屋にいるのですが、うるさいという老人の怒鳴り声に場所を変えます。
 約1時間8分、規則的石組みの狭く薄暗い廊下が奥へ伸びています。左の壁には方形の窓、また扉口があるようです。奥の左から数段あがってまず栗毛娘、次いでフォスター夫が出てきて手前へ、手前を右に進みます。その先は石の螺旋階段でしょうか。後をリザがつけてくる。口笛が響きます。
 屋根裏部屋に着きます。怖い顔のリザが現われ、フォスター夫はギロチンにかけられる。リザはいつの間にか白い寝着に、かと思えばまた黒の臍出しドレスに戻る。鉄の処女が勝手に開き、後ずさった栗毛娘は中にはまってしまいます。


 約1時間10分、古城裏方空間巡り、老人の巻です。
 物音に業を煮やした老人は部屋から出る。奥に2階廊下が伸びています。幅はさほど広くはなく、床が板張りであることがわかります。腰板の上の壁は白で、随所に額絵が掛かっている。老人が出てきたのは手前左の扉からですが、奥の方右の扉から背を向けた女性が出てきて、突きあたりを左へ進む。老人は文句を言ってやろうとその後を追います。
 切り替わると右の扉口に入っていく。すぐ奥にも扉が見えます。開いていた右の扉の陰に怖い顔化したリザがいました。
 天井が半円ないし4分の1円の狭い廊下がやや下からとらえられます。天井には梁が並び、右の石積み壁には窓が開いている。奥から老人が手前に来て左へ向かいます。怖い顔のリザが後をつけてくる。
 切り替わると、廊下は円形をなしているようです。外周にあたる右の壁には方形の窓が規則的に並んでいる。内側・左の壁は素っ気ない。壁の向こうは螺旋階段室ででもあるのでしょうか。やはり『催淫吸血鬼』における塔の外周を巡る石落とし回廊が連想されますが、こちらは塔の内部で天井がある。
 老人、追ってリザが奥から手前へ、カメラはその前で後退していく。ぐる~と回って老人が手前に消えてカットが換わる。今度は背を向けた老人が奥へ、前にリザの背がありました。外周の窓付き壁は左に来ています。少しの間追いかけっこが続き、またカットが換わります。
 幅の狭い突きあたりに背を向けたリザ、その手前にやはり老人の背が配されます。すぐ上に半円アーチがある。その奥・右上に窓、手前左にも窓がありました。リザは振り向きますがぱっと消えてしまう。老人が振り向くと手前に現われました。老人は左の窓から投げ落とされてしまう。
 右に太い円塔、それに接して左に三角屋根のついた幅の狭い方形突出部(どんな役割で中がどうなっているのか、気になるところです)、両者の奥に一番高い塔がかなり下から見上げられます。方形突出部の上の方にある窓から老人が落ちてくる。下には何本も尖った杭が立っていました。
 リザは屋外に出る。地面に伸びる長い枯れ枝を見つめると大蛇に変じます。


 約1時間13分、金髪娘が眠っています。窓が勝手に開き大蛇が入ってくる。
 居間の椅子で神学生が眠りこんでいます。リザが入ってきますが、着ているものが下着状になっています。
 金髪娘のベッドに大蛇が這いあがってくる。低音の弦をはじくような音付きです。居間のカットと交互に配される。
 約1時間17分、金髪娘の悲鳴に神学生は石の螺旋階段を駆けあがります。金髪娘の部屋に飛びこむも娘は死んでいました。
 2階廊下です。奥・右手の扉から出てきます。手前へ走ってくる。怖い顔のリザがいました。彼女の背後にあるのは石の欄干付き湾曲階段です。上からおりてきている。口笛とノイズ化したエレクトリック・ギターのような音が鳴ります。迫るリザの額に十字架を押しつけると火傷のような傷跡ができます。苦悶するリザのマニキュアは真っ黒でした。
 神学生は石の欄干付き湾曲階段を駈けおりる。下からの視角です。
 木の扉を開けて屋外に出てきます。扉の少し左で壁がゆるく手前に折れている。扉の前は地面より低くなっており、その部分が石の低い塀で囲われているようです。手前に数段のぼる階段がある。
 そこをあがって左に目をやると、黒い装飾的な馬車の御者席に、黒フード・黒マントの肉付きの薄そうな禿頭男がいました。手袋は白、馬も白馬です。馬車の荷台には柩がいくつか積んである。馬車の前にある玄関にも柩がいくつか立てかけてありました。玄関前の階段を怖い顔版リザが少しかがみ気味に泳ぐような身振りでおりてきます。禿頭男は背を向けて階段をあがり、リザをさがらせる。エレクトリック・ギターが鳴り響きます。
 神学生は右の方へ逃げます。先に窓から明かりの漏れる建物がありました。黒マントの禿頭男はゆっくり追ってきます。余裕綽々です。
 画面手前の左右に扉、その向こうに神学生と黒マント禿頭男がやや上から見下ろされます。鐘も鳴る。
 神学生が背にする建物は礼拝堂でした。玄関前が数段のぼりになっている。この階段で二人は話します。神学生が上から見下ろす配置ですが、黒マント禿頭男こと悪魔はたいそうかっこうがいい。
 神学生は取引を持ちかけます。自分の魂と引き替えに6人の魂を解放しないかという。悪魔は何と傲慢なと応えます。黒マントからさっと巻いた白い紙を出します。鮮やかです。それを神学生が受けとると、今度は白い羽根ペンです。そちらも神学生が手にとり、鐘が鳴ります。オルガン付きです。中に入って自分の血でサインすると紙面は燃えあがる。


 約1時間24分、翌朝です。目覚めた神学生は食堂に行く。皆いました。大きな窓の向こうは芝生です。男爵と執事がフェンシングしています。フェンシングする二人の向こうで城をやや下から引きでとらえたカットに切り替わります。リザがハーモニウムを弾きだすと、男爵はそれに気をとられ、執事の剣をよけ損なう。その様子を大窓から見るリザ、神学生、フォスター夫人が窓枠とともに外からとらえられますが、三人の背後は真っ暗です。

 約1時間26分、男爵の部屋です。天蓋付きのベッドの右、壁が奥へ凹み、5段ほどのぼって鎧が飾ってありました。男爵はかって娘を殺したと懺悔します。プロローグのエピソードです。

 約1時間27分、石の欄干付き湾曲階段の下、電話の置いてある一角の右の奥から家政婦が出てきて左へ進みます。ちょうど神学生がおりてきたところでした。リザは家政婦と現男爵の兄ルドルフとの娘だという。

 約1時間28分、一同がバスに乗りこみます。神学生は礼拝堂に行きます。契約書の燃え跡が残っていました。入口にリザが来る。自分でもわからないという。
 神学生は残る。バスが出発します。リザと神学生は見送ろうと、テラスに来る。背後の壁が左端で円塔になっています。仰角です。
 振りかえる悪魔のアップに続いて、山道を左から右へ走るバスが高いところから見下ろされる。道の向こうは川でしょうか、さらに向こうに石造りの建物がのぞいています。向こうから来た馬車をよけようとしてバスは崖から転落してしまう。爆発炎上します。また悪魔のアップに続いて、上からの引きで悪魔と馬車がとらえられ、カメラが下降します。鐘にエレクトリック・ギターが響く。オルガンも加わります。神学生に抱きついたリザが悪魔の方を見て薄く笑みを浮かべるのでした。


 少なくとも日本語字幕には出てこないものの、下敷きにされているらしい〈七つの大罪〉なるイメージは、デヴィッド・フィンチャーの『セブン』(1995)やTVアニメ化された鈴木央の漫画『七つの大罪』(2012~、未見。TVアニメは2014~15)などでお馴染みになりました。日本語版ウィキペディア該当頁(→こちら)などを見ると歴史的な変遷もあるようですが、そこに挙げられた現代のカトリックのものでは、高慢、物欲、妬み、忿怒、貪食、色欲、怠惰とのことです。ガイドが貪食、栗毛娘が色欲なのはわかりやすいとして、夫人は物欲、いつもぷんぷんしている老人は忿怒か。ひたすら受動的な金髪娘は怠惰、悪魔の台詞からして神学生が高慢だとすればフォスター夫には妬みないし嫉妬が残りますが、これはわかりにくい。あるいは財産目当てで結婚したという夫が物欲で、娘たちに食指を伸ばす夫に対し夫人が嫉妬を抱いたということでしょうか。きっちり対応する必要はないとして、神学生を除く登場人物たちが好感を抱かせるような描かれ方はされていないにせよ、殺されるほどの罪人ともとりがたい。
 他方、神学生が契約に署名した後でのバス転落は蛇足のようにも見えます。あえて深読みすれば、ある意味で『恐怖の足跡』(1962)のパターンがここでは踏襲されており、バス事故は城での一夜に先行しないまでもあらかじめ決定されており、だから定められた死の前に各自の罪がスクブスと悪魔によって暴き出されたのだと見なせなくもない。もっともこうした深読みを根拠づける伏線などは見当たりませんでした、たぶん。あるいは神学生以外の6人は全て神学生の内なる分身と解釈することもできなくはありませんが、個人的には例によって、7人の姿をとって現われたものは額面どおり7人なのだととりたいところです。また男爵の役割は場所を貸しただけなのかと思わせる中途半端さです。
 とまれアレッサンドローニの音楽やクライマックスでのダニエル・エミルフォルク演じる悪魔の格好良さとともに、個々の部屋はさておき、1階2階の二つの主廊下に加えて使用人用らしき廊下、1階から2階への石製欄干付き湾曲階段に加えて二つの螺旋階段、さらに夫人が通った裏方空間、老人が巡った塔の上の円形廊下と、古城映画的に本作は見所満載でした。これをもって記憶に値すると見なせるのではないでしょうか。

Cf.,
 
Jonathan Rigby, Euro Gothic: Classics of Continental Horror Cinema, 2016, pp.229-231
 
おまけ   日本のグループ
Presence of soul, Blinds, 2008(1)
の1曲目が
"seven mortal sins and seven doors"。アルバム全体の序曲をなす器楽曲です。サンプリングとのことですがメロトロンも鳴っています。
1. 『ユーロ・ロック・プレス』、vol.38、August 2008、pp.75-77。
 
 2016/07/14 以後、随時修正・追補
   HOME古城と怪奇映画など淫虐地獄 1971