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ワルプルギスの夜-ウルフVSヴァンパイア-
La noche de Walpurgis *
    1971年、スペイン・西ドイツ 
 監督   レオン・クリモフスキー 
撮影   レオポルド・ビラセニョール 
 編集   アントニオ・ヒメーノ 
 セット装飾   ルートヴィッヒ・オルニー 
    約1時間26分 ** 
画面比:横×縦    1.85:1 
    カラー 

VHS
* 手もとのソフトは英語版。英題は
Werewolf Shadow
** [ IMDb ]によると、約1時間35分の修復版があるとのこと

………………………

本作品については、以前少し触れたことがあります;

  △月△日
出張の帰り、電車の時間待ちで八重洲の地下街をぷらぷらしていると、中古ヴィデオのセールをやっていて、レオン・クリモフスキーの『ワルプルギスの夜』(一九七〇)を見つけた。スペインはポール・ナッシーの人狼ものの一本である。はかなかった『日本版ファンゴリア』二号(一九九四年十一月)にナッシーのインタヴューが掲載されているが、昔TVで『吸血鬼ドラキュラ対狼男』(一九六七)を見たことはあって、おぼろげながら、わけのわからないストーリーだったと記憶する。今回も同様で、またいかにも予算の乏しさを綿々と訴えるかのごとくだが、それははじめから予想されていたことなのだからと、少しでもいいところを見つけようとするなら、廊下に吸血鬼が登場する二度のシーンは雰囲気がなくはなく、また女吸血鬼二人の妖精めいたふるまいは、マリオン・クロフォードの傑作「血こそ命なれば」を思わせた。その上でこの手の映画の最大のポイントというなら、自分ならもうちょっとましな代物を作れるかもしれないと思わせるところだろう。しかし、この映画が大ヒットしたというのだから、ヨーロッパも奥が深い。
 
  『蟋蟀蟋蟀』、no.5、1999.11.23、「小躍り堂日乗」より、pp.5-6。   

 ずいぶんな言いようですが、今でこそさすがに「自分ならもうちょっとましな代物を作れるかもしれない」などと大それたことは思えません。まずまずきちんと撮られていますし、上でも触れている女吸血鬼のイメージは充分記憶に値することでしょう。といって他に何を思いつくでもなく、きちんとした情報であれば下掲の伊東美和編著『ポール・ナッシー ヨーロッパ悪趣味映画の王者』(2009)を見ていただければよい。ただ上で触れた廊下の場面に加えて、教会の廃墟なども出てきます。これがなかなか印象的でした。手もとのソフトは画面が暗い時は何も見えなくなるといった態ですが、手短かにとりあげておきましょう。

 『ポール・ナッシー ヨーロッパ悪趣味映画の王者』には「撮影に使われたマドリード郊外の結核病院は『ワルプルギス・サナトリウム』として有名になったという」と記されていました(p.34)。 [ IMDb ]ではロケ先として、マドリードのセルコーン修道院 Monasterio del Cercón、マドリード州北西の高地ナバセッラーダ Navacerrada(西語版ウィキペディア該当頁は→こちら)、マドリード州西端のサン・マルティーン・デ・バルデイグレシアス市 San Martín de Valdeiglesias (西語版ウィキペディア該当頁は→こちら)が挙がっています。
 セルコーン修道院はアマンド・デ・オッソリオの『エル・ゾンビ 落武者のえじき』(1972)の [ IMDb ]該当ページにも記されているのですが、これはどうも、マドリード州のやはり西、ペラーヨス・デ・ラ・プレーサ市 Pelayos de la Presa にあるバルデイグレシアスのサンタ・マリーア・ラ・レアール修道院 Monasterio de Santa María la Real de Valdeiglesias のことのようです(西語版ウィキペディア該当頁は→こちら。また公式サイト→こちら)。"Monasterios", 21 de julio de 2007 [ < Desde Mi Caja ]によると、『エル・ゾンビ 落武者のえじき』の修道院址に強い印象を受け、ロケ地を訪れることができるのか調べたものの、セルコーン修道院など本でもネットでもどこにも見つからない。しかし2004年の El País 紙のある記事に付された白黒写真が答えを教えてくれたとのことです。また同記事への書きこみとして、本作のナバセッラーダでのロケ先が、今は取り壊されたバッランカ谷のグアダッラーマ王立療養所という古い結核病院 un antiguo hopital de tuberculosis llamado Real Sanatorio de Guadarrama dentro del valle de la Barranca であることが述べられています。なお Google の画像検索で出くわしたバルデイグレシアスのシトー会修道院 El monasterio cisterciense de Valdeiglesias も同じバルデイグレシアスのサンタ・マリーア・ラ・レアール修道院でした(→こちらを参照;"El monasterio cisterciense de Valdeiglesias (1): historia y situación actual", 17 de enero de 2011 および"El monasterio cisterciense de Valdeiglesias (2): descripción artística", 20 de enero de 2011[ < Pasión por Madrid ])。(追記:サン・マルティーン・デ・バルデイグレシアスは『恐怖 ブランシュヴィルの怪物』(1963、監督:アルベルト・デ・マルティーノ)でも、サンタ・マリーア・ラ・レアール修道院およびラ・コラセーラ城 Castillo de la Coracera がロケ先として登場していたとのことです)。


 『フランケンシュタインと狼男』(1943)のそれを連想させる、人狼復活を描いたプロローグは、しかし当代風に傷跡の特殊メイクに血糊が大幅に増量されており、加えて血糊付き女性の胸もとも映されます。
 続いてパリの景色かと思いきや、それらの写真を飾ったクラブか何かで、女性(後に名はエルヴィーラと知れます、ギャビー・フックス)と恋人らしき男性(後に名はマルセルと知れます、アンドレス・レシーノ)の話から、エルヴィーラは黒魔術や悪魔崇拝の歴史を研究する学生か何かで、北部の村にあるらしきハンガリー出身のヴァンデーサ伯爵夫人の墓所の調査に赴こうとしていることがわかります。伯爵夫人(パティ・シェパード)の過去の場面が少し挿入、『ポール・ナッシー ヨーロッパ悪趣味映画の王者』にもあるように(p.117)、エルゼベエト・バートリがモデルなのでした(→こちらも参照)。

  約9分、丘の上の廃墟が下から見上げられます。左右に伸びる棟の右端で、方形の棟が迫りだしている。空の青が濃い。ある角度からのバルデイグレシアスのサンタ・マリーア・ラ・レアール修道院の眺めなのでしょう。別の角度の外観がすぐ後に出てきます。
 森の中を車で走る女性二人、一人はエルヴィーラ、もう一人は日本語字幕ではジェネビブとなっていましたが、舞台はフランスということらしいのでジュヌヴィエーヴとしておきましょう(バーバラ・カペル)。二人は道に迷った様子です。
 次いでまた廃墟の眺めが登場します。今度は手前左寄りで画面の上から下まで粗石積みの円柱が貫いている。その向こう、左から2階建ての棟が伸び、右で迫りだすのは今回は円形の棟です。細長い半円アーチ窓が間をあけて並んでいます。やはりやや下からの角度でした。やはり空の青が濃い。これも同じバルデイグレシアスのサンタ・マリーア・ラ・レアール修道院、別の一角らしい。
 先に三角屋根の厩のような建物が見つかります。壁は白い。エルヴィーラは開かない扉から左へ、壁に沿って折れます。作業場跡のようなところで、黒ずくめのヴァルデマール・ダニンスキー(ポール・ナッシーないしナッチー)と出くわします。
 ダニンスキーは作家で、古い建物を調べに半年前ここに来たという。二人が目ざすルシャ村はまだ遠い。
 車で少し行ったところ、その先に3階建て以上らしき建物が左右に伸びています。中央は半円状に迫りだし、その2階には細長い窓がいくつも並んでいる。壁は白い。やや下から見上げられます。グアダッラーマ王立療養所外観でした。
 食堂です。窓やガラス戸に斜め格子がはまっています。ガラス戸には数段あがる。ここは北フランスで、ダニンスキーはゴシック建築を調査しているという。エルヴィーラがヴァンデーサ・デ・ナダスディーの名を口にすると、雷が鳴ります。
 エルヴィーラとジュヌヴィエーヴの寝室の扉は、磨りガラスの窓がはまっています。なぜかジュヌヴィエーヴにベッドを譲り、エルヴィーラがソファで寝ていると扉が開き、女が入ってくる。警告、エルヴィーラの寝着をずらし、首を絞めようとします。
 今度はダニンスキーが入ってきて女は妹のエリザベートだという。彼が出ていく時、扉の向こうの壁に鏡がかかっていることがわかります。


 翌朝ダニンスキーとエルヴィーラが庭を散歩しています。大きな円形の泉水がある。
 ジュヌヴィエーヴは暗い部屋をうろつきます。大きな酒樽がある。天井からは血まみれの鎖付き手枷がぶら下がっていました。エリザベートが襲いかかります。ここは後に日本語字幕で「小屋」と呼ばれる。
 墓の所在は「悪魔の十字路」で、アン聖堂の近くだという。三人は外へ出かけます。軽い山登りを経て、やけにあっさり十字路に行き着く。道ばたの地面に石棺が埋めこまれ、「ヴァンデーサ・デ・ナダスディー 1452~1480」との銘がありました。蓋をどけると、屍の胸には銀の十字架が刺さっている。霧も這います。ジュヌヴィエーヴが十字架を抜き、前腕を切ってしまう。その血が屍の口元に垂れます。伝説では十字架を抜くと甦るのだという。冒頭でも人狼に関し同じようなことを言っていました。ダニンスキーはただの伝説だとやり過ごします。

 約30分、画面上辺をゆるいアーチが枠どり、その下・奥で厚い壁に方形の開口部が開いています。かなり上からの俯瞰です。開口部に向こうから来たシルエットが佇む。エルヴィーラでした。
 切り替わると開口部の外から奥を見る形になります。開口部はかなり大きい。その右手前にエルヴィーラがいます。向こうは屋根の落ちた教会堂らしき廃墟です。しかし横切るアーチだけは残っている。やや下からの角度でした。このきわめて印象的な眺めも、バルデイグレシアスのサンタ・マリーア・ラ・レアール修道院のものです。
 また内側・上からの俯瞰に戻り、エルヴィーラが中に入ってくる。
 上辺を石の梁が縁取り、手前下は落ちこんでいるようです。梁の向こうに最初エルヴィーラの下半身のみが見え、近づいてくると上半身も映ります。彼女は下へ下りてくる。
 先に小さめの方形扉口がありました。向こうに黒フードの人物がいます。振りかえると頭部は髑髏でした。エルヴィーラは逃げだし、太い円柱が3本、あまり間隔を開けず並んでいるところへ来ます。黒フードが追ってくる。スロウ・モーションです。合流したダニンスキーが十字架を刺す。


 赤い満月に続いて、地面から手が突きだされます。
 ジュヌヴィエーヴが水を飲みに部屋を出ると、呼び声が聞こえてくる。約34分、奥に廊下が伸びています。ジュヌヴィエーヴは手前左で背を向けている。床に霧が這っています。奥に進みます。右に黒衣の女が現われます。消える。
 ジュヌヴィエーヴは屋外に出ます。昼間の傷に黒衣の女が吸いつく。その様子を窓からエリザベートが見下ろしていました。

 ダニンスキーは窓を背に、愛する女に刺されることでのみ永遠に救われるという文章か何かを唱えます。遠吠えが響く。
 エルヴィーラが螺旋階段を下りてきます。下の仕切り戸に女性が寄りかかっていました。顔はよく見えない。
 約37分、再び奥へ伸びる廊下です。やはり床に霧が這う。向こうから女がスロウ・モーションで進んできます。
 右奥から左前へ、エルヴィーラが壁沿いに進みます。
 また奥への眺めです。女はジュヌヴィエーヴでした。やはりスロウ・モーションです。右手前から背を向けたエルヴィーラが進む。
 右奥からダニンスキーがやって来て十字架を掲げます。
 この2度にわたる廊下の場面は本作のハイライトといってよいでしょう。ただしもう1度、たいへん魅力的な吸血鬼登場の場面があります。

 恐ろしいのはワルプルギスの夜だとダニンスキーはいいます。エルヴィーラは便利屋の車で村に向かうことになる。
 ダニンスキーはエリザベートの胸に杭を打ち、首を切り落とします。しかしエリザベートはいつの間に吸血鬼化していたのでしょうか。
 エルヴィーラたちの車の前に女吸血鬼二人が現われる。声の響きを変化させてあります。十字架で退散させる。


 エルヴィーラはロッジで夜明かしすることになります。十字架付きです。
 赤い満月にダニンスキーは変身します。黒シャツを着ています。ちなみに『ドラキュラとせむし女』のページでも触れましたが、ロン・チェニー(Jr.)扮するタルボットもいつも暗色のシャツでした。森で男を襲う。
 エルヴィーラのもとに女吸血鬼二人が現われる。伯爵夫人が首をナイフで刺し、血をゴブレットで受けます。二人は輪になって踊りながら消えます。スロウ・モーションでした。吸血鬼化することで女たちは現し世の軛から解放され軽快になるかのごとくです。しかし夢でした。


 翌朝ダニンスキーが告白します。チベットで人狼になったとのことで、これは『倫敦の人狼』(1935)を踏襲しているわけです。『ポール・ナッシー ヨーロッパ悪趣味映画の王者』によると『吸血鬼ドラキュラ対狼男』(1968公開、監督:エンリケ・ロペス・エギルス)と本作の間に、『モンスター・パニック/怪奇作戦』(1970、監督:トゥリオ・デミチェリ、ウーゴ・フレゴネセ)とともに『狼男の怒り』(1972、監督:ホセ・マリア・サバルサ、未見)が製作され、後者はやはりチベットから始まるとのことでした(pp.110-112)。
 その後オーストリア国境近くの村に移り、満月の夜は妹が鎖につないだという。しかし逃げだし銀の弾丸に撃たれた。

 ジュヌヴィエーヴの来訪、エルヴィーラの首に吸いつく。
 夜の共同墓地でのダニンスキーとジュヌヴィエーヴの出会いを経て、転落したジュヌヴィエーヴが串刺しになるとエルヴィーラの首から咬み跡が消える。
 伯爵夫人の右背後に十字架が見える場面を経て、夜明けとなります。
 装飾と蔦に覆われた教会が左右に伸びる中、中へ入っていく。地面の凹みへ、スロウ・モーションになります。空の青が濃い。
 約1時間、円柱越しに奥の右で円形の棟が迫りだすカットが再現される。
 奥の方形扉口からエルヴィーラとダニンスキーが出てきます。扉口の周辺は赤煉瓦積みですが、その左、少し迫りだして大きな粗石積みの壁がずっと続く。右手前には別の壁が見えます。
 二人は左へ、左奥にも別の方形扉口がありました。粗石積みの角柱が間を置いて並んでいます。二人は手前に進む。エルヴィーラが「地下を」というと、ダニンスキーは「きりがない、迷路みたい」と応える。何て想像を大いに膨らませてくれる台詞でしょうか。奥の壁で上から楔形の凸部がおりてきているのが覗きます。窓か小塔を支えているのでしょうか。もっと映してくれと思わずにはいられない廃墟であります。


 満月です。ダニンスキーは鎖に自らを縛める。エルヴィーラはロッジから出て、前にジュヌヴィエーヴが通った暗い「小屋」を通りますが、横恋慕した便利屋にさらわれます。廃墟状の廊下を通る。鎖を引きちぎった人狼が現われます。

 昼間です。村の通りを葬列が通過する。空が青い。車で到着したのはマルセルでした。
 ベッドでダニンスキーとエルヴィーラが愛を交わします。
 マルセルは酒場で給仕娘から話を聞く。マルセルは警部でした。旧道の先の谷間にあるジャッケの別荘にエルヴィーラがいるという。
 森の中をダニンスキーが歩いていると、村の男が襲いかかります。
 別荘にマルセルが着く。ダニンスキーが応対します。騎士の墓で便利屋の屍体が見つかったという。今夜は魔女の夜、エルヴィーラをマルセルと帰らせます。
 ダニンスキーは教会の図面を調べます。
 夜になった森を車が走っていると、娘の死体に出くわす。画面左手前いっぱいに、ヴェイルをかぶった女が配されます。


 横臥像(ジザン)の脇の壁にエルヴィーラとマルセルが手枷で拘束されています。横臥像(ジザン)の蓋が横に滑り、下から伯爵夫人がまっすぐ上昇する。エルヴィーラは別の石棺だか台の上に寝かされます。
 廃墟にダニンスキーがやって来ます。
 魔王が来る、お前は供物だと伯爵夫人がいう。
 騎士の墓の部屋にダニンスキーが着く。変身します。取っ組みあいになる。暗くてよく見えないうちに終わります。
 クロージング・クレジットとともに、手前左右が暗い真ん中に方形の扉口、向こうは明るい野原でした。廃墟の外観が前とは違う角度でとらえられた後、また方形扉口に戻るのでした。


 ポール・ナッシーの作品は先に触れた『吸血鬼ドラキュラ対狼男』以外では、本名のハシント・モリーナ名義で自ら脚本を書き監督した『狼男とサムライ』(1983)を見る機会がありました。こちらも以前駄文で触れています;

  △月△日
出張の帰り、電車の時間待ちで難波の中古ヴィデオ屋をのぞくと、『狼男とサムライ』(一九八四)を見つけた。スペインはボール・ナッシーの人狼ものの一本である。
いずれ大した映画じゃなかろうと思いつつ、つい買ってしまった。人狼の家系ダニンスキー家にかけられた呪いの起源が描かれるという、壮大なプロローグの後、呪いをとく手がかりを求めて、主人公たちは信長治下の日本へやってくるのだった。忍者は出てくるし、チャンパラはもとより、ハラキリもある。裸女や薄衣をまとうサディスティックな女王様、脈絡のよくわからない怨霊軍団も登場する。呪いをとくぺく手術を執刀するはすだった天地茂扮する医師は、なぜか気弱になって最後の対決に向かうのである。サーヴィス素点というべきなのだろう。
 
  『蟋蟀蟋蟀』、no.8、2000.9.9、「小躍り堂日乗」より、p.20。   

 手もとのVHSソフトは日本語版で約1時間30分([ IMDb ]によるとUSA版は約2時間とのこと)で、詳しくは『ポール・ナッシー ヨーロッパ悪趣味映画の王者』pp.233-238 および同書所収の松田真実「狼男とサムライ-〝サムライ〟の思惑」(pp.252-257)を見ていただくとして、本作にはプロローグ部分でヨーロッパのお城が二つ出てきます。
 冒頭さっそく、夜の城の外観から始まる。左に角塔、城壁の角をはさんで右奥に円塔、稲妻も光ります。938年、 メッセブルク Messeburgh(?、最後の1文字はちゃんと読めませんでした)オットー大帝の城とのことでした。中庭で事の発端となる決闘が行なわれます。
 続いて約6分、やはり夜の外観で映るのはナッシー扮するダニンスキー(祖先)の居城でしょうか。こちらは円塔が2つあります。すぐ後に庭園が出てきます。[ IMDb ]にはロケ先は記されていませんが、どこかに現存するものなのでしょうか。
 ついでに約9分、舞台はスペインのトレドに移る。1580年9月16日、フリーメイソンらしきユダヤ人サロームのもとにダニンスキー(子孫)が訪ねてきます。実際のトレドでロケしたかどうかはともかく、市門らしきものや石畳の街路がなかなか魅力的であります。
 かくして約17分、信長治下の京となります。話の中で女妖術師・里美の城というのが出てきますが、外観がちらりと映った後、地下牢だのは登場しますが、セットはあまり空間豊かとはいいがたい。むしろ城での最初のエピソードが一段落ついた後で、天知茂扮する貴庵が城を再訪する際、地下牢前の空間に至るまでに通りぬける廃墟状の部分の方が雰囲気はありました。
 同様にクライマックスはお寺で展開するのですが、大きめの仏座像が控えるいささか狭めの本堂自体より、やはりそこまで通りぬける本堂前の方が面白かったりします。
 ちなみにラストの落ちは『ダンウィッチの怪』(1970)そのままでした。ダニンスキーは本作でも黒シャツを着て変身します。また天知茂はかつて、人狼を思わせる変則型吸血鬼を『女吸血鬼』(1959)で演じたことが思いだされたりもするのでした。

Cf.,  北島明弘責任編集、『ホラー・ムービー史』、1986、pp.195-196;「ポール・ナッチーに聞く」

ホセ・イグナチオ・クエンカ、友成純一訳、「スパニッシュ・ウルフの叫び ポールナッシー/インタビュー」、『日本版ファンゴリア』、no.2、1994.11、pp.26-33

訳者について→こちらを参照

ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、pp.181-182/no.192
日本語字幕で見るかぎりでは、本書に記された粗筋は別物となっています。


伊東美和編著、『ポール・ナッシー ヨーロッパ悪趣味映画の王者』、洋泉社、2009、pp.114-118

なおスペインの本屋でたまたま出くわした(900ペセタと書いてあります)
Flash-Back, no.3, otoño 1994
"Historia del cine fantástico español"特集で、その内
Miguel Ángel Plana, "Los alucinantes setenta y algunas cosas más..."(pp.66-120)
は主としてインタヴューからなるのですが、
pp.85-90 がレオン・クリモフスキー、
pp.106-114 がポール・ナッシーのコーナーです。
この他 p.30 にナッシー、p.33 にパティ・シェパードについてのコラムが載っていました。


Cathal Tohill & Pete Tombs, Immoral Tales. European Sex and Horror Movies 1956-1984, 1995, pp.70-72

Danny Shipka, Perverse Titillation. The Exploitation Cinema of Italy, Spain and France, 1960-1980, 2011, pp.222-239 :"The Heart of a Monster : Paul Naschy"
本作については pp.227-229, 238

Jonathan Rigby, Euro Gothic: Classics of Continental Horror Cinema, 2016, pp.225-226、『狼男とサムライ』について;p.381

上の旧稿で言及した;
マリオン・クロフォード、平井呈一訳、「血こそ命なれば」、『真紅の法悦 怪奇幻想の文学 1』、新人物往来社、1969、pp.177-197
原著は
F.M. Crawford, "For the Blood is the Life", 1905

別訳として;
F.マリオン・クロフォード、深町真理子訳、「血は命の水だから」、矢野浩三郎編、『怪奇と幻想 1』(角川文庫 赤 381-1)、角川書店、1975、pp.205-232


同じ著者による→こちらを参照
おまけ  本作でも『狼男とサムライ』でもありませんが、ナッシーが脚本を書き主演した『ザ・ゾンビ/黒騎士のえじき』(1973、未見)(1)の主人公にちなむのが、スペインのシンフォニック・メタル・バンド
Darkmoor, Ancestral Romance, 2010(邦題:ダーク・ムーア、『アンセストラル・ロマンス』)(2)
の3曲目
"Alaric de Marnac"(「アラリック・デ・マルナック」)。
 
1. El espanto surge de la tumba / Horror Rises from the Tomb. 監督:カルロス・アウレ・アロンソ。上掲『ポール・ナッシー ヨーロッパ悪趣味映画の王者』、2009、pp.128-132。

2. 『ユーロ・ロック・プレス』、vol.47、2010.11、p.62。『ストレンジ・デイズ』、no.134、2011.1、p.119。
 
 2016/4/28 以後、随時修正・追補
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