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エル・ゾンビ 落武者のえじき *
La noche del terror ciego
    1972年、スペイン・ポルトガル 
 監督   アマンド・デ・オッソリオ 
撮影   パブロ・リポール 
 編集   ホセー・アントニオ・ロホ 
 プロダクション・デザイン   ハイメ・ドゥアルテ・デ・ブリート 
 セット装飾   フアン・ガルシーア 
    約1時間41分 ** 
画面比:横×縦    1.66:1 
    カラー 

DVD
* 手もとのソフトの邦題は『エル・ゾンビ 死霊騎士団の誕生』。
また『エル・ゾンビⅠ 死霊騎士団の覚醒』という邦題のソフトもあるとのこと。

** 手もとのソフトにはスペイン語版とともに英語版も収録、こちらは約1時間23分。

………………………

 本作品のオープニング・クレジットにはロケ地として、ポルトガルのリスボン Lisboa、リスボン県カスカイス市の大西洋に面したリゾート地エストリル Estoril, Cascais、リスボンの南、セトゥーバル県セトゥーバル市 Setúbal、同じくセトゥーバル県のパルメラ Palmela およびセジンブラ Sesimbra とともにマドリードのセルコーン修道院 Manasterio del CERCON が挙げられます。ただし『ワルプルギスの夜-ウルフVSヴァンパイア-』(1971)のページで記したように、セルコーン修道院というのはマドリード州の西、ペラーヨス・デ・ラ・プレーサ市 Pelayos de la Presa にあるバルデイグレシアスのサンタ・マリーア・ラ・レアール修道院 Monasterio de Santa María la Real de Valdeiglesias のことらしい。
 [ IMDb ]では他にファサードと図書館としてリスボン大学医学部 Faculdade de Medicina da Universidade de Lisboa、ペラーヨス・デ・ラ・プレーサ市とともにその北にあるサン・フアン貯水池 Pantano de San Juan, Madrid、アンダルシーアのグアダルキビール川 El río Guadalquivir, Andalucíaが記されていました。
 なおセトゥーバルには山上のサン・フィリペ砦(城) Forte de São Filipe de Setúbal(不勉強のためポルトガル語はわからないので→スペイン語版ウィキペディア該当頁)、パルメラにはやはり山上のパルメラ城 Castelo de Palmelal(→スペイン語版ウィキペディア該当頁)なんてのがあります。篇中過去の場面で出てきたお城の城壁下通路はこのいずれかではないかと思うのですが、どちらかはわかりませんでした。行ったことのある方なら見分けがつくことでしょうか。
 その眺めも涎を湧かせますが、本作の場合何といっても、修道院址の廃墟こそが実質的な主役だといって過言ではありますまい。『ワルプルギスの夜-ウルフVSヴァンパイア-』の時以上の大盤振舞です。修道院とはいえ単独の建物ではなく、1つの村が丸々廃墟化しているといった感じです。昔バレンシア近郊で連れていってもらった廃村が思い起こされたりもするのですが(「おまけ」サブサイト内の「バレンシア近郊の廃屋など(1995)」をご覧ください)、規模はずっと大きい。古城映画とは呼べないにせよ、廃墟映画として忘れてはならない一品であります。

 日本では劇場未公開で、ソフト化されてから邦題が二転三転した本作ですが、原題は『盲いた恐怖の夜』といったところでしょうか。オッソリオはこの後第2作『エル・ゾンビⅡ 死霊復活祭』(1973)、第3作『エル・ゾンビⅢ 死霊船大虐殺』(1974)、第4作『テラービーチ/髑髏軍団美女虐殺(エル・ゾンビⅣ 呪われた死霊海岸)』(1975)でも脚本・監督をつとめますが、いずれも未見です。『ワルプルギスの夜-ウルフVSヴァンパイア-』でも音楽を担当したアントン・ガルシア・アブリルはシリーズ皆勤です。ヒロインに扮するローン・フレミングは第2作にも続投しました。

 青い空に白い雲が走り、手前から向こうまで左下がりの斜面が続く、その奥の丘の上で左右にひろがる白っぽい廃墟、左端は円塔でしょうか。カメラは左から右へ、タイトルを載せつつその間も石の廃墟は散らばっています。
 切り替わると仰角で左に教会のファサードらしきもの、右奥に角塔。またカメラは左上から右下へ、両者の間にはくだり坂が手前に伸び、右下に家屋跡らしきものがあります。
 次いで2階以上はある建物が手前左から右奥に後退するのを近い距離から捉える。木の陰になっているらしく青みがかり、窓や扉口は空洞になって向こうをのぞかせています。カメラは上向きになり、そのまま左へ、3階の高さがありましたが残っているのは壁だけのようです。濃い青空が入ってきます。左端で角になり壁は手前に折れる。
 奥を左右に伸びる石積み壁の途中から手前に壁が分岐し、その奥の方に2つ半円アーチがありました。その手前では壁に大きな穴が開いています。やはり近めの距離です。カメラは少し右上へ、空が入ってくると止まります。地面には雑草がぱらぱら生え、風に揺れている。
 1つ前のカットと同じ窓と扉のある壁、カメラはまた同じ動きを繰り返します。今度の空は白っぽい。
 同じく1つ前のカットと同じ2つ半円アーチと穴のある壁、ただし今回は前の視角であれば壁の右向こうの位置から見たものです。壁を正面からとらえたその向こうには、左で2階建てほどの建物が向こうへ伸び、奥の方で手前の壁と平行に伸びる3階建ての建物と交わります。
 左奥から伸びてきて捻り柱のある角で折れた壁は、すぐ右に方形の扉口が開いている。あちこち崩れています。扉口の右上には、上ひろがりの柱が3本束をなしている。
 同じ場所を今度は右から見たのでしょうか、右から上ひろがりのリヴ、方形扉口、その向こうはゆるい半円アーチ型の刻みのある壁が上と左に伸びています。
 2つの半円アーチと穴のある壁が手前左からとらえられます。
 また捻り柱、方形扉口、リヴのある壁が最初と同じ左からの視角で。
 左手前から中央奥へ1階分の低い壁だか塀が伸びています。左手前に方形扉口がある。奥には2階分ほどの棟のやはり壁だけが残っている。
 また2つの半円アーチと穴のある壁が手前左から。
 壁に浮彫で刻まれた何やら紋章が少し下から見上げられる。そこに監督の名が記され、クレジットはここまででした。そのままカメラが下向きになると、下では尖頭アーチが正面から、その向こうで2つのアーチの間を支える白い柱がちょうど中央に来る。その奥は壁が左右に伸び、上は白っぽい空でした。
 白い壁に黒っぽい骸骨の手が伸び、切り替わって白髪の女性が悲鳴を上げる。
 ここまでで約3分弱です。最後の2カットを除いて13カット、同じ場所がいくつか出てきたものの、『ヨーガ伯爵の復活』(1971)でのやはりオープニング・クレジットを思わせるカットの積み重ねは(あちらは主に屋内でしたが)、否が応でも期待を高めてくれずにはいません。


 道路越しに鋸歯型胸壁をいただく方形の建物、その平屋根からやはり鋸歯型胸壁をいただく塔がのびており、右下にも円塔が覗く、これはエストリルのタマリス海岸(Tamariz)にある Forte da Cruz(→公式サイト)でした。
 海沿いのプールでベティ(ローン・フレミング)とヴァージニア(スペイン語ではビルヒニアと言っていましたが、後にベティともども英語圏の人間とわかるので、日本語字幕のままにしておきます、ヘレン・ハープことマリーア・エレーナ・アルポーン)が再会します。ベティは仕事でここに今日着いたところ、マネキンの工房を開いたとのことです。工房は屍体安置所(モルグ)の近くにある。
 ヴァージニアの友人ロジャー(セサル・ブルネル)もいました。週末を田舎で過ごそうとロジャーが誘う。
 蒸気機関車です。ヴァージニアは不機嫌のようです。回想場面に移れば、ベティとヴァージニアの寄宿生時代です。壁もシーツも二人の寝着も白い。二人は恋仲でした。回想なのに機関車の蒸気や音が流れます。
 汽車は終点まで止まらず、途中に村もないという。丘の上に廃墟が見えます。ヴァージニアはなぜか、速度が落ちた時に汽車から飛び降りてしまいます。機関手は親子でやっているのですが、父親の方が「向こう見ずな娘だ」と呟き、理由を問う息子に「何でもない」と言葉を濁します。

  ヴァージニアは森に囲まれた野原を抜ける。向こうに山並みが連なっています。
 約15分、廃教会が仰視されます。かなり上からの俯瞰に替わると、通りは石畳でした。のぼり階段も見えます。壁の穴から向こうをのぞき、左手のアーチをくぐって奥へ進む。穴越しに背を向けたヴァージニアがとらえられます。俯瞰になって芝生に覆われたかのような庭を抜け、右の建物の間に入っていく。左のごつく低めのアーチの下からは下り坂でした。角をはさんで右にもアーチがあるようです。仰角になれば角の上は交叉オジーヴのドームでした。
 先は墓地です。十字架が並ぶ中、先端が下すぼみの輪になったアンクもある。ヴァージニアは引き返します。
 ごつく低めのアーチから出てきて右手前へ、カメラも左から右に振られます。右手で奥に空間がひろがっており、突きあたりはゆるいアーチが1階と2階を区切り、その奥に方形開口部が見える。2階の奥にも方形の窓が見えます。さらにカメラは上向きになる。2階からなるおそらくはファサードの裏側部分の頂きは大きな尖頭アーチをなす、その上に3つの窓のある門型装飾を載せていました。さらに上を向けば、天井が落ちた手前の宙空をアーチだけが横切っています。この宙空アーチは『ワルプルギスの夜-ウルフVSヴァンパイア-』でも見られましたが、バルデイグレシアスのサンタ・マリーア・ラ・レアール修道院址の目印とでも見なせるのでしょうか。
 地面に石棺を埋めたらしき低い草の生えた庭を横切るさまが上から見下ろされます。左で坂を登ると、欄干に縁取られた道でした。上り坂です。奥にも左にも数階分の棟が伸びています。なお坂をあがる前の少し奥に、穴と半円アーチの壁があったこともわかります。
 右奥から左手前へ坂を登ると、先には井戸がある。その手前で奥へ曲がります。こちらも右を欄干で区切られた道で、向かって左には1階分の壁だか塀が伸び、その左右端近くに方形の扉口が開いている。奥には2階分以上の家屋風の建物が見えます。
 左に数段のぼって半円アーチを戴く扉、すぐ右で手前に迫りだして地面と同じ高さの扉が並び、その右で角になって壁が手前へ折れる。声をかけ、最初左の段状の扉を叩くと、扉は倒れてしまいます。しょうことなく右の壁、角近くの窓から中を覗きこみ、角左の扉を叩く。開きました。


 薄暗い中に光が射しこんでいます。右から左へ進む。壁に横長長方形に仕切られた凹みがありました。さらに左へ向かいます。
 扉を開けて中に入ってくるさまがかなり上から見下ろされる。左に木製ののぼり階段がありました。
 もとの方へ戻ります。左の両開きの扉に閂をかけます。右へ戻れば方形凹みの前です。周囲に伸びている枯草を薪代わりにします。凹みの中からのショットになる。奥の左右それぞれにアーチが見えます。

 約24分、夜になりました。画面上辺沿いをアーチが枠どり、その向こう、3つの窓がある門型装飾をのせたアーチが下から見上げられる。屋内の様子をはさんで、またアーチ、カメラは上から下へ、鐘が鳴ります。
 墓地がかなり上から見下ろされる。十字架がぐらぐらします。地面沿いに霧が右へ流れる。十字架がアップになると霧は左に流れていたりまた右向きだったりします。十字架の手前の石棺の蓋が開きます。骸骨状の手が出てくる。
 真っ暗な扉口から黒いマントに黒い修道衣の者たちが現われます。馬に乗った者たちもいる。馬はいずれも白馬でした。騎馬のものについては『ワルプルギスの夜-ウルフVSヴァンパイア-』の吸血鬼同様スロウ・モーションです。修道衣の中の顔は黒い髑髏です。周囲も黒が濃い。
 2つ扉の前の道がやや上からとらえられ、左の壁だか塀の扉口は中に光源があるように見えます。壁には右から光が当たっている。奥の壁にも光があてられ、また2つ扉の棟と左の壁の間の左奥からも光が射している。そこに手前から背を向けた修道衣姿の者どもが進んでいきます。
 ヴァージニアが扉の左手、アーチの奥へ進み右手の窓を開けると、骸骨の手が差しこまれるのでした。ヴァージニアは奥へ、柱をぐるりと回って左に出ます。
 内扉の中へ入れば切り替わって階段室です。木製階段をのぼろうとしますが足を引っかけます。修道衣の者たちは動きが遅い。
 階段室のかなり上からの俯瞰に続き、上で扉を開けて出てきた先はバルコニーでしょうか。左下に幾本も倒れた柱が転がっています。さらに上へ梯子がかけてありました。
 壁の上にあがってきた姿がシルエットとして、下から見上げられます。夜空が青い。ヴァージニアは這うようにして進み、何かを落とします。壁を這いおりると、ちょうど下に馬がいました。
 野原に出ます。騎馬群が追ってくる。野原は森に囲まれ、向こうに山並みが見えます。追いつかれ、馬から落とされます。


 約37分、海辺のテラスにあるカフェです。椅子は皆青塗りでした。ベティとロジャーがヴァージニアの心配をしている。こちら側は山で、向こうは川と国境だとウェイトレスが言います。列車から見えたのはベルサノ、中世の廃墟とのことでした。友人がそこで夜を過ごしたと聞くとトレイを落としてしまう。これ以上はいえないと逃げる。
 汽車です。野原に女の死体らしきものが見え、機関手息子は助けなきゃと言いますが、機関手父は列車を止めません。

 約39分、昼間の廃墟が5カット挿入されます。方形扉口のある壁が右から、2連アーチと穴のある壁が左から、同じ壁が反対側から、奥に尖頭アーチの門のある壁、その右に5~6段上って玄関となる2階建ての壁、カメラは左下から右上へ、切り替わって2つ扉の家が引きで。
 井戸の右奥のアーチから騎馬の二人が入ってきます。ベティとロジャーです。左へ進む。カメラも右から左へ追います。そのまま下り坂をおりていく。坂の奥には欄干がついています。欄干の端で折れて右奥へ向かいます。
 二連アーチと穴の壁から入ってくる。俯瞰です。カメラは右へ、石棺が埋められたあたりに出ます。奥の壁にのぼり階段のある扉口が見えます。
 さらに右へ、切り替わると宙空アーチと3つ窓門型装飾のアーチが正面下から見上げられる。宙空アーチは2つありました。カメラが上から下へ首を振ると、奥の方形開口部から2騎が入ってきます。手前へ進んでくればカメラは少し右から左へ流れる。左の壁が尽きた先で奥へ向きを変え、先にあった低くごついアーチに入っていく。低いといっても馬に乗ったままくぐれる高さでした。やや下り坂になっているようです。
 墓地に入る二騎がかなり上から見下ろされる。水平に切り替わって、馬からおります。墓地は少し低くなっているようで、奥にも角柱が並んでいます。馬が二頭とも逃げだす。宙空アーチと3つ窓門型装飾のアーチの奥から走り去ってしまいます。
 二人が向かって角柱のあった方に進むと、奥の方にけっこう背の高い尖頭アーチのアーケードがあったことがわかります。二人が進んだ左手もアーケードをなしていました。それをくぐって斜面をのぼるさまが、画面に対して垂直に伸びるアーケードの壁越しにとらえられます。カメラは右から左に振られる。アーケードの左、奥の方には壁だけ残る棟が見えます。
 二人は手前へ、切り替わると画面手前に穴のある壁、その穴の向こうで右に捻り柱、その左の方形扉口から出てくる。手前に進んで手前の壁の穴の右の開口部から出てくる。壁は右に続き、そちらにも穴が開いていました。前に出てきた2連アーチ+穴の壁とは別のものでしょうか。そもそも壁になぜこんな大きな穴がいくつも開いているのか?
 右奥へ向かい、切り替われば2つ扉の家の前でした。左の階上扉は倒れたままです。ベティは左の扉へ、ロジャーは右の窓から中を覗いた後、ベティを呼んで右の扉に入る。

 ヴァージニアの荷物が残っていました。
 階段室に入ってくるベティがまたしてもかなり上から見下ろされます。木製階段の下でヴァージニアの靴をロジャーが見つける。階段に向かって右の泥壁にある半円アーチの扉口から男が入ってきます。マルコ捜査官でした。階段の上からオリベイラ警部がおりてくる。ヴァージニアの名字がホワイト、またベティはエリザベス・ターナー、ロジャーはウォレンと、なぜかそろって英語系の名前であることがわかります。


 約45分、屍体の確認をします。背広を着た髭の男、後に屍体安置所の警備員とわかりますが、シーツをめくる際にんまりする。
 検死官の部屋でしょうか、ヴァージニアには浅い傷が多数ついており。死因は失血死でした。12人以上の歯形が確認されたという。


 約47分、マネキン工房です。薄緑のワンピースを着た女性の助手がいます(日本語字幕では役名不詳ですが、[ IMDb ]ではニーナ役らしい、ベローニカ・リィメラー)。彼女は伝説を知っていました。
 玄関への通路が俯瞰されます。左右にマネキンの列が並び、赤い照明が点滅する。通路の幅は奥に行くに従って狭まるように見え、実際、手前でマネキン列は左右に幅をひろげられているようです。
 奥の右に玄関口があり、そこからロジャーが入ってきます。赤い光は上がネオン工房で、天窓から光が入ってくると助手が説明します。手前右に扉口があり、そこを入ると工房でした。
 助手はベルサノ近くが出身で、悪魔を崇拝した騎士団が墓から出て狩りをするという話をします。しかしあまり詳しくは語りたがりません。

 屍体安置所の警備員は蛙を飼っています。ヴァージニアの屍体が動きだし、警備員の首筋に背後から咬みつくのでした。

 日本語字幕で「平日19:00まで/文部省パーキング」という標識がアップになり、カメラが後退すると向こうの方を左から右へ、ロジャーとベティが白大理石の傾斜アプローチを進む。カメラはさらに後退、ファサードが迫りだした2階建てのがっしりした方形の建物を映しだします。これがリスボン大学医学部なのでしょう。カメラは2階の窓にズーム・インする。
 図書室で二人はカンダル教授に話を聞く。教授は中世の研究者で騎士団のことに詳しい。態度は少し変です。13世紀にベルサノが騎士団の総本山だったという。

 約56分、過去の場面です。下に半円アーチのトンネルが開いたその上は短い歩廊で、兵士たちが巡回している。すぐ左から手前に幅の狭い階段がおりています。手前右へは迫りだした壁でしょうか、その上面がくだってくる。その上にも城壁、また歩廊の奥には塔らしきものが見えます。
 円塔が迫りだした城壁を左に、その右下の道を騎馬の一団が奥から進んでくる。道の右に折れ曲がった欄干がありました。若い娘を一人抱きかかえている。
 先ほどの歩廊の下のトンネルから騎馬の騎士たちが出てきます。カメラは右へ、手前で右に折れると、先ほど壁かと思ったのが石畳の斜面の左に設けられた欄干であることがわかります。斜面はけっこう急なようです。あがった先は左右に壁が伸び、左端に半円アーチの開口部が見えます。一団はしかし、その手前で右に折れる。まだのぼりが続くらしい。無骨に入り組んだ、とても素敵なこの城壁は、セトゥーバルのサン・フィリペ砦(城)かやはり山上のパルメラ城なのでしょうか?


 床が土に覆われた大きな広間です。壁の少し手前に束柱が並び、内陣でしょうか、奥には黄のアンクを中央に配した緋色のカーテンがかけてある。その右の壁に方形の扉口があります。土間の中央には少し傾斜したX字架が据えられ、ここにさらわれてきた娘が縛りつけられる。騎士たちは彼女の血を啜ります。なお騎士たちのフードとマントは真っ白でした。亡霊騎士たちのフードとマントはこれが黒ずんだわけです。

 中世風の挿絵に替わって、教授の説明に戻ります。騎士たちは処刑され、鴉が目玉をつつくまで晒された。そのため目のないまま甦るのだという。
 そこに警部が現われます。教授の息子ペドロは二年前に家出、今はベルサノ近くの密輸団にいるとのことです。


 約1時間4分、工房の助手です。外からベティが電話で連絡してきます。色とりどりの頭部のマネキンのあることがわかります。廊下の点滅する赤い光とあわせて、下掲 Jonathan Rigby, Studies in Terror. Landmarks of Horror Cinema, 2011, p.174 でも触れられるようにマリオ・バーヴァの『モデル連続殺人!』(1964)が連想されなくもない。
 玄関までの廊下に行き、また戻る。カメラは彼女の前で後退しながら彼女をとらえます。廊下がそこそこ長く感じられる。手前の工房への扉口に戻ると、甦ったヴァージニアが首を絞めようとします。慌てて廊下を玄関の方へ、扉が開かない。マネキンの列の裏を通って戻ります。これもそこそこ距離があるように感じられました。やはりカメラは後退します。工房に入り争う。突き飛ばしてランプの載ったテーブルを倒すと、火がマネキン、ついでヴァージニアに燃え移るのでした。


 約1時間9分、川です。船にロジャーとベティ、それに操舵手が乗っており、岸につけます。漁村でロジャーはペドロ(ホセー・テルマン)を訪ね、嫌疑を晴らすためベルサノで一夜を明かすことを提案する。ペドロの恋人(やはり役名不詳ですが、Rigby, Studies in Terror. Landmarks of Horror Cinema, 2011, p.174 によるとマリーア役、マリーア・シルバ)も同行します。

 約1時間14分、夜の廃墟です。屋内の窓からロジャーが外の様子をうかがう。ペドロとベティが見回りに、残ったロジャーにマリーアが粉をかけます。二人も外に出る。
 交叉リヴの天井を見上げるカメラが下向きになると、下の方形扉口前後の下り坂をペドロとベティがおりてきます。左に進んだ先は墓地でした。ペドロはベティを犯す。
 壁沿いに右から左へ歩いてきたロジャーとマリーアはヴァージニアの靴の片割れを見つけます。もとの方へ戻る。
 鐘が鳴る。ペドロとベティが左上に目をやると、切り替わってカメラは左下から右上へ上昇、真っ暗な中で3つ窓門型装飾のアーチが正面下から見上げられます。墓地にいるペドロがかなりの高さから俯瞰され、やや下からに替われば背後高くに満月がありました。十字架がぐらぐらし、霧が這います。アンクが手前の墓石に歪んだ影を落とす。騎士たちが出てきます。
 逃げだしたベティはロジャーたちと合流、女二人を屋内に行かせ、ロジャーは様子を見に行く。ペドロは騎士たちに咬みつかれます。ロジャーは銃を撃つも効き目はない。騎馬の一群がスロウ・モーションで現われます。それに対しロジャーの駈けるさまは速い。
 ロジャーは扉の外に着きますが、開ける開けないで女二人が争いになる。ロジャーは腕を切り落とされます。何とかベティがロジャーを引きずりこみますが、騎士たちも入ってくる。マリーアがまず血祭りに上げられます。「声を出すな」といってロジャーは息絶えます。いつ気づいたのでしょうか。
 ベティは心臓の鼓動が気になります。外に出て井戸の方へ、高い壁や崩れた壁、いくつかの扉口のそばを通って村の外に出る。騎馬群が追ってきます。野原です。


 夜明けでしょうか、汽車が通りかかります。機関手息子は今度こそ汽車を止め、ベティを助けに駆けつける。しかし追いついた騎士たちは機関手息子、その父、さらに客車に乗りこみ乗客たちを襲いだす。ベティは石炭庫に隠れます。

 朝です。汽車が駅に近づく。速度の落ちた列車を駅員が止めます。ベティは髪が白くなっていました。列車に乗ろうとした乗客たちは扉を開け、悲鳴を上げることになる。その様子に振り返ったベティも悲鳴を上げます。ストップ・モーションになる。悲鳴は続いています。止め絵のままカメラは引きになり上昇しつつ後退する。
 白い壁に黒い骸骨の手が冒頭同様差し伸べられ、エンド・マークが重なる。画面は真っ黒になります。


 手もとのソフトには附録として、本作がUSAで『猿の惑星』(1968、監督:フランクリン・J・シャフナー)の続篇として公開された際の予告編が収められており、その発想には脱帽するしかありませんが、それはさておき、ここでの亡霊騎士たちの相手を問わぬ無慈悲ぶりは徹底しています。ペドロが襲われるのは彼が直前で働いた強姦とは何の関わりもなく、たまたまそこにいたからにすぎない。善意から人助けした機関手息子が真っ先に血祭りに上げられるのも同じ理由からでしょう。騎士たちがふるう文字どおり盲目的な力は、自然のもたらす災禍であるかのごとくです。位置づけが定かでない復活したヴァージニアは、目が潰されたわけでないにもかかわらず騎士たちの境位にまで達しておらず、ベティにまみえるべくアトリエ工房まで出向いたのに相手は不在で、修業の至らなさに対する罰ででもあるかのように燃え尽きてしまいます。
 対するにここでは登場人物たちに騎士たちに抗する何の準備もなく、ヴァン・ヘルシングのような祓魔師が介入する余地はない。結末の付け方はどうであれ1950年代後半からのハマー・フィルムの諸作品が基本的に善悪の二項対立を枠組みとしていたのに比べると、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968、監督:ジョージ・A・ロメロ)や『ローズマリーの赤ちゃん』(1968、監督:ロマン・ポランスキー)を経た時代の流れがここにも反映していると見ることはできるのでしょうか。もっともコーマンのポー連作やマリオ・バーヴァを始めとしたイタリアなどの作品を思い起こせば、単純に割り切れるはずもないのはいつものこととして、ただ本作に関しては他方、古風なゴシック・ホラーの血を引くものとしても受けとめられているようです。スロウ・モーションで捉えられた真っ黒な騎手たちの姿は、確かに民主的なロメロ流ゾンビよりは超越的な死神と呼ぶにふさわしい。
 とまれスロウ・モーションの死神を容れることのできたのは、やはり廃墟と化した村という舞台あればこそでしょう。そして妖しが跳梁する深夜のそれ以上に、廃墟がその魅力を全開にするのは、スペインの乾いた空気と照りつける陽光のもとではないでしょうか。セットではなくロケが主体になっている点もまた、予算規模やスタジオのあり方を含めた映画製作の変化に応じているのでしょうが、人のいない石造りの廃村をカメラや登場人物たちがうろうろしてくれたことをもって、本作の誉れとすることができるように思われます。

Cf.,  伊藤美和編著、『ゾンビ映画大事典』、2003、pp.96-97。
なお第2作『エル・ゾンビⅡ 死霊復活祭』(1973)については;pp.114-115、第3作『エル・ゾンビⅢ 死霊船大虐殺』(1974);p.120、第4作『テラービーチ/髑髏軍団美女虐殺(エル・ゾンビⅣ 呪われた死霊海岸)』(1975);pp.128-129


Jonathan Rigby, Studies in Terror. Landmarks of Horror Cinema, 2011, pp.174-175

Danny Shipka, Perverse Titillation. The Exploitation Cinema of Italy, Spain and France, 1960-1980, 2011, pp.240-245, 本作については;241-243, 259、また256-258
 2016/5/1 以後、随時修正・追補
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