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フランケンシュタインと狼男
Frankenstein Meets the Wolf Man
    1943年、USA 
 監督   ロイ・ウィリアム・ニール 
撮影   ジョージ・ロビンスン 
編集   エドワード・カーティス 
 美術   ジョン・B・グッドマン 
 セット装飾   ラッセル・A・ガウスマン 
    約1時間13分 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ

DVD
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 『狼男』(1941)および『フランケンシュタインの幽霊』(1942)双方の続篇が合体した作品で、後者同様製作はジョージ・ワグナー、脚本は前者に引き続きカート・シオドマクが担当しています。ローレンス・タルボットこと狼男役はロン・チェイニー・Jr.が続投、フランケンシュタインの怪物役はベラ・ルゴシに交替しました。ただここでのルゴシ扮する怪物はいささか生彩を欠き、動きも機械的に見えてしまいます。この点については、下掲の菊地秀行「我がフランケンシュタイン映画史(後編)」pp.275-277 を参照ください。『狼男』できわめて重要な脇役をつとめたマレーヴァ役のマリア・ウスペンスカヤも同じ役で続演しており、甦ったタルボットと再会した場面では、黙っているだけなのに情感がみなぎっています。ただし物語の後半では脚本が彼女の位置をうまく活かせずにいたようで、ラストではその生死も定かではありませんでした。
 ところですっかり勘違いしていたのですが、今回登場するフランケンシュタインの娘というのは、怪物を創造した博士の娘だとずっと思いこんでいました。『復活』(1939)での長男、『幽霊』での次男に続き、今度は長女かよというわけです。しかし今回見直してみれば、娘が父も祖父も破滅したという台詞があって、劇中で「博士」と呼ばれているのは主に『幽霊』での次男のことなのでした。次男の娘も俳優こそ替われ、役名は同じ「エルザ」です。とすると、ここで彼女は Baroness との称号つきでクレジットされており、日本語字幕では「男爵夫人」と訳されているのですが、『幽霊』で恋人だった検察官とはどうなったのだろうかとか、「女男爵」の意味だとすると『復活』での長男一家はどんな扱いになるのだろうかなど、埒もないことが気になったりすることでした。
 さて、後半の舞台も『幽霊』と同じヴァサリア村で、そのラストで焼け落ちた博士邸の廃墟が後半に登場します。廃墟とはいえ、これが古城映画的にはいたって許容範囲内なのでした。


 序盤はタルボット家の墓所があるランウェリー村(『狼男』では地名は出なかった)とおそらくその近郊にあるカーディフ(こちらは実在の町でウェールズの首都とのこと)で展開します。墓地を歩む二人の人物をカメラは後退しながら追い、納骨堂の前に出ます。納骨堂は三角屋根の入口に本体はドームをなしていて、内側は壁に二段ずつ柩が奥方向に収めてある。窓も設けられていて、そこから入る光が隣の壁に映えています。床の中央にはローレンスの柩が安置され、遺体にはトリカブトを敷きつめてあるのでした。
 柩を墓泥棒に開けられたため満月の光を浴びて甦ったタルボットは、カーディフの路上で倒れているところを発見され、病院にかつぎこまれます。病院内部が最初に映るカットでは、画面中央を煉瓦積みの角柱が縦断し、右奥の壁に扉を開ける看護師の影だけが落ちるという、なかなかかっこうのいい構図を見せてくれます。この病院はあちこちに支え柱付きのゆるやかなアーチがあったり、医師の個室では壁に低い壺型の窓の光がさしたりと、セットも雰囲気を出しています。また刑事が電話した先のランウェリーの警察署の室内にも、尖頭アーチが見えたり、壁に斜め格子の影が落ちたりと、抜かりはありませんでした。

 病院を抜けだし、タルボットは英国を出たというマレーヴァを探しあてます。救いを求めるタルボットに対し、マレーヴァの示す無力感、それでも見捨てられないという意志が印象的です。手立てを見つけてくれるかもしれない人物に心当たりがあるという彼女の言葉を頼りに、二人は馬車の旅に出ます。けっこうな距離を踏破したはずですが、委細はわからない。親子のような二人の点景もけっこう感動的ですが、それだけに後段でのマレーヴァの扱いは中途半端だったとの感はぬぐえません。
 とまれ二人はヴァサリアの村に到着し、フランケンシュタイン博士の所在を訊ねて酒場に立ち寄るのですが、炎上して廃墟となった城址を示されるのでした。背後にダムを控え、その前の川沿いにある廃墟は、いまだいくつも鋸歯型胸壁をいただく塔をそびえさせながら、同時に崩壊の傷跡も深くさらけだしています。この城の模型は、『幽霊』での博士邸であった館よりは、むしろ同じ映画の冒頭に出てきた城砦風のフランケンシュタイン城を思わせるものです。ただし周囲の地勢はいずれとも異なっている。


 失意の内に村を出た二人は、しかし馬車の上で満月の光を浴びてしまいます。続く場面での、娘を抱いた男を先頭にした村人たちは、第1作の『フランケンシュタイン』(1931)での同様の場面を連想させずにいません。村人に追われた狼男は、まず壺か柱のようなものがすぐ後ろにある少し高いところに出て、次いで周囲はよくわからないのですが、半円アーチをいただく扉口に逃げこみます。入口付近で後ずさった彼は床を踏み抜いてしまい、地下へ転落するのでした。
 落ちた先は太い柱が斜めに傾いてよりかかり、柱らしきものものぞく地下室の跡らしき空間です。奥に進むと、やはり崩れ落ちた太い木の柱がいくつも斜めに倒れかかっており、垂木も見える別の空間で、こちらは氷に覆われています。さらに奥には、半円形のくぼみの奥に氷の壁があり、氷の奥に光源を擁しているかのごとくなのでした。セットの上では同じところをぐるぐる回っているだけなのかもしれませんが、複数の空間が連なっている感触がうれしいところです。

 この空間の連なりは、夜が明けて息を吹き返した怪物とタルボットが連れ立って、崩れ落ちた城の、おそらく地下室の跡を、フランケンシュタイン博士(これは祖父の方でしょうか)の日記を求めて歩き回る場面でも失なわれていません。半円アーチがいくつも重なる中、二人は奥から手前へと進み、右の方へ折れていきます。それまでのものより小さめのアーチを経て、書棚にたどりつく。書棚の天井は崩れてしまい、空がのぞいています。怪物が書棚の一角に隠し棚のあることを示すのでした(なぜ知っているのだろう)。この隠し棚には後に、さらにもう一つの隠し棚が入れ子をなしていることがあきらかにされます。

 見つからなかった日記を求めて、タルボットはフランケンシュタイン博士の娘との面会を画策します。当然それなりの時間がかかったはずで、その間マレーヴァは留置されたままということになります。しかし成果は得られぬまま、その夜は村でワインの祭りが催され、ミュージカル風の合唱付きの歌が披露されます。なかなか賑やかですが、そこに怪物が闖入し、擾乱を巻き起こすのでした。

 タルボットと怪物に、博士の娘、カーディフからタルボットを追ってきた医師、やっと釈放されたマレーヴァが加わって、城址で二人を滅ぼす手立てを探ることになります。書棚のあった部屋の屋根は応急に塞いだようです。奥には暖炉があり、その上にかぶさるアーチや、そこに斜めに垂れたカーテンが見えます。怪物はなぜか片隅で身をひそめるようにしている。右横の壁に影が落ちています。
 博士の娘が上にランプを吊した狭い開口部から入って暗い壁のある廊下を手前に進むのにあわせて、カメラも首を巡らすと、実験室を見下ろす位置に達します。廊下は少し高くなっているようで、何段かおりれば実験室の床になる。実験室へは書棚の部屋からも通じていて、アーチのある開口部が後に映ります。こちらも少し高い位置にあり、そこからタルボット、後にマレーヴァが顔を出します。実験室にはもとからあった設備に、新たに追加された機械類が設置され、電光を放つ電極はもとより、『幽霊』で使われていたぐるぐる回る電光板も再登場します。
 フランケンシュタインの創造を破壊することはできないと機能を反転させた医師の操作によって、怪物は暴れだし、同時に満月の光を浴びた狼男との格闘に突入します。ちなみに博士の娘と医師はこの時はじめて人狼の変身を目の当たりにしたわけですが、そのあたりの反応を描く余裕もなく、事態は急転していく。他方では復讐の念に取り憑かれた酒場の親父がダムを爆破し、城址には水流が押し寄せます。悲しや、一度炎の手に襲われた城は完膚無きまでに崩壊するのでした。

Cf.,  菊地秀行、「我がフランケンシュタイン映画史(後編)」、『妖魔の宴 スーパー・ホラー・シアター フランケンシュタイン編 2』、1993、pp.272-277

菊地秀行、「我が狼人間(ウィアウルフ)映画の時代」、『妖魔の宴 スーパー・ホラー・シアター 狼男編 1』、1992、pp.296-302

石田一、「ドラキュラ100年史《前編》」、1997、pp.105、108

石田一、Monster Legacy File、2004、p.14

Jeremy Dyson, Bright Darkness. The Lost Art of the Supernatural Horror Film, 1997, pp.127-131

Jonathan Rigby, American Gothic: Sixty Years of Horror Cinema, 2007, pp.231-232
 2014/10/29 以後、随時修正・追補
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