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ラ・パロマ
La Paloma
    1974年、スイス・フランス 
 監督   ダニエル・シュミット 
撮影   レナート・ベルタ 
 編集   イラ・フォン・ハスペルク 
    約1時間48分 * 
画面比:横×縦    1.37:1 
    カラー 

VHS
* 手もとのソフによる。[ IMDb ]ではスイス版約1時間44分および約1時間50分、USA版約1時間52分。

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 本作品では超自然現象は起こりません。同じ監督による前作『今宵かぎりは…』(1972)ほど極端ではないにせよ、本作も存分に様式化されています。前作と違ってきちんと筋もあり、「ベレニス」(1835)や「モレラ」(1835→こちらも参照)、「リジイア」(1838→こちらも参照)といったポーの一部の短篇を連想させるものでした。
 [ IMDb ]にも本作の日本語版ウィキペディア該当頁(→こちら)にも残念ながらロケ先は記されていませんでしたが、城館が後ろ3分の2ほどの主な舞台となります。主たる階段が一つ、登場人物たちがのぼりおりしたり引っ返したりする他、随所に段差があります。バルコニーもあります。手短かに取りあげることにいたしましょう。

 手前にシルエット化した木が間を大きく開けて並んでいます。その向こうは淡い色の海か湖でしょうか、水平線上にはやや暗めの雲か何かが狭い帯をなし、低い陽が沈むかのぼろうとしている。低音を主にしたノイズのような音が響きます。
 ルーレットか何かの音が鳴り、「遠い昔」と記される。薄暗いカジノかキャバレーが最初の舞台です。
 女性歌手が歌い、赤いカーテンを寄せた向こうにのぼり階段があります。右手の壁は赤く染まっている。階段から少女たちが下りてきます。
 店内をカメラは右から左へ、上下しながら撫でていく。その中に丸ぽちゃの男がいます(ペーター・カーン、『今宵かぎりは…』からの続投)。なおもカメラは流れます。賭に負けたらしき男が拳銃で頭を撃ち抜いたりする。
 赤いカーテンから女性歌手(イングリット・カーフェン、同じく『今宵かぎりは…』から続投)が出てきて上海についての歌を歌う。彼女が引っこむと電子音が鳴ります。
 いったん真っ暗になった後、スポット・ライトが「空想の力」という文字に光を当てる。舞台に月桂冠をかぶった詩人でしょうか、濃い化粧ですが男性らしき人物が横たわっています(ジェローム=オリヴィエ・ニコラン)。歌が流れるが口は閉じている。カメラがゆっくり近づきアップになります。
 「空想の力」は丸ぽちゃの席に近づき、後ろから右に回る。2人は見つめあいます。画面がぼやける。

  約17分、楽屋です。カメラは左から右へ、鏡台の鏡のすぐ前にラ・パロマがいます。カメラはさらに右へ、扉がある。花束を抱えた丸ぽちゃが入ろうとしますが付き人(リュドミラ・テュチェク)に追いだされる。
 医師が入ってきて2週間ほどの命だと告げる。
 鏡に扉が映ります。また丸ぽちゃがいました。カメラは左へ振られる。


 約22分、白い壁の建物が画面左半に、下から見上げられます。右半は青空です。
 療養所でした。彼女は死ななかったと女性のナレイションが述べます。
 約24分、ミナレット風の小塔を2本いただく建物です。カメラは下へ、車椅子のラ・パロマがいます。右から丸ぽちゃが現われる。彼の名がイジドールとわかります。カメラが近づく。

 約25半、白い壁の家屋が並ぶ街並みを、下からのカメラが右から左へ流れていく。空は青い。
 壁が黄を帯びた建物のバルコニーにラ・パロマとイジドールがいます。下からの仰角です。
 約26分、暗い空間が上から見下ろされます。手前右へ階段がのぼっていく。2人があがっていきます。
 赤味を帯びた列車内の廊下です。2人が奥から出てきてコンパートメント席に入ります。「エバ・ペロンが死んだ」とイジドールがいいます。史実の上では1952年のことです。
 約29分、オートゥイユの競馬場です。緑が濃い。双眼鏡のフレームが画面を枠どり、その向こうにラ・パロマがいます。と思ったら同じ枠どりの中にイジドールが配されたりする。
 約31分、また列車です。歌が流れます。赤味を帯びた廊下を通り、食堂車に行きます。


 約32分、船で川を左から右へ進みます。岸辺に城館がありました。上辺が水平になった急角度の屋根をいただく小塔を始め、白い壁が灰色の部分を交えたりと、いろいろ分節された装飾的な見かけをしています。
 船が船着場に着くと。同じ城館が丘の上にあるらしきことがわかります。

 約34分、欄干付きテラスを2人が左から右へ横切ると、城館の入口となります。やや上からの視角です。
 約35分、同じくやや上からの視角で、画面左に2階以上の高さのバルコニー、そこに2人がいる。向こう側を左右に棟が伸びています。距離が近く細部まではっきり見えるため、かえって距離感がつかみがたいかのような感触を有してはいないでしょうか。

 食堂です。白布をかけたテーブルをはさんで二人が坐っています。向こうには大きな窓があり、青い山並みが見える。左のラ・パロマからカメラは右のイジドールへ、今度は右から左へ、また左から右へと動きます。そのためテーブル上の静物がこのシークエンスの主役となります。
 一族が死ぬといったん礼拝堂の裏に埋葬し、3年後に掘り起こして礼拝堂内の骨壺に収めるという慣習をイジドールが話します。


 約37分、パイプ・オルガンのにぎやかな曲とともに、車内の来訪者が映されます。女性自ら運転する車がテラスに着く。イジドールが待っていました。いやに若く見えますが、女性は彼の母とのことです(ビュル・オジエ、『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974)で1度出くわしました。またシュミットの『カンヌ-映画通り(ノートル・ダム・ド・ラ・クロワゼット)』(1981)に出ていたという)。

 扉から小間使いが入ってきます。アンナと呼ばれる彼女は、キャバレーの楽屋でラ・パロマの付き人をしてました。なぜここにいるのかは語られませんでしたが、この後もラ・パロマのそばに居続けることになります。随所で挿入される女声のナレイションも彼女によるものかとも思いましたが、この点は定かではありません。いずれにせよ微妙に重要な位置を占めているような気がしないでもない。
 扉の向こうには幅の狭い廊下が伸びています。そこからイジドールと母がやって来る。
 入って左へ進みます。向こうに大きな陶製ストーヴがありました。左奥には窓が見えます。ラ・パロマは赤いドレスを着ている。母はなぜかフランス語で、他の面々はドイツ語で話します。
 ラ・パロマの部屋です。薄暗い。母が入ってきます。
 約44分、にぎやかなオルガンの曲とともに、結婚式です。周りは真っ暗です。

 約45分、青い山並みを背後に、手前右寄りでこちら向きの2人が配されます。けっこう高い位置らしい。ラ・パロマが歌いだし、イジドールも続きます。コルンゴルト(1897-1957)のオペラ『死の都』(1920)の一節とのことです(ウェブ・ページ「ダニエル・シュミット『ラ・パロマ』の魅力」、2012/4/12[ < 『私の愛してやまない映画たち』]で知りました。また下掲パンフレット収録のインタビュー(裏から pp.9-10)も参照)。
 カメラが後退しつつ上昇すると、空を右から左へ、「空想の力」が横倒しになって飛んでいきます。風も吹いている。やがて消えます。

 約50分、書斎でしょうか、2人がいます。イジドールの友人ラウル(ペーター・シャテル)が訪ねてくるという。
 イジドールは右から出てきます。奥にのぼり階段が見える。踊り場には窓があり、右で階段の続きの裏側が見えます。アンナも現われ、手前で4~5段下りる。左へ進んで背を向けます。その先が玄関ホールです。青味を帯びている。いったん扉、その向こうに幅の狭い控えの間があり、玄関扉となる。そこからラウルが入ってきて右へ進みます。数段上にいるイジドールと段差付きで話します。同じ構図のまま、奥の階段からラ・パロマが下りてくるのでした。


 約51分、ラウル、イジドール、ラ・パロマが1人ずつ胸から上で映されます。英語の歌が流れ、話す声は聞こえない。
 暗い階段をラ・パロマとラウルがおりてきます。後から踊り場にイジドールが現われますが、引き返してしまう。2人は手前で数段おります。
 ラ・パロマとラウルが情事に耽るカットを経て、3人は右から左へ進む。暗い居間です。
 薄暗い食堂が引きでとらえられます。ラ・パロマが手前で数段おります。ラウルが出発を告げている。


 ラ・パロマは夜の庭を左から右へ進みます。真っ暗になり、次いで四阿らしきものが見えてきます。
 ラ・パロマとラウルが話す背後には窓が見えます。すぐ後にその左に扉口があり、その左や上にも窓のあることがわかります。地面から数段あがって踊り場、そこからまた数段あがれば扉口です。


 アンナが右から出てきます。カメラは右へ、奥からラウルが現われ、数段あがって右へ向かう。

 約59分、川の水面です。向こうに城館が見える。画面が丸い黒枠で囲まれ、枠が狭まります。

 イジドールがラウルに手紙を書いています。ラウルが発って1年経つとのことです。ラ・パロマの名がヴィオラであることがわかります。彼女は昨夜亡くなったという。
 椰子の木の下でラウルが手紙を読んでいます。また丸枠が閉じます。
 イジドールがまた手紙を書いている。ヴィオラによるらしき曲が流れます。彼女の死から3年経ったという。


 カメラは木立の下を抜けて館の前に出ます。上向きになると、壁が白く、円塔などが入り組んだ装飾的な外観が映されます。
 暗がりにアンナがいる。左から暖炉の光らしきものが赤く照らしています。
 約1時間1分、ラウルが着きます。イジドールは無精髭が伸びている。


 約1時間3分、奥左寄りにのぼり階段が正面から配されます。薄暗い。ピアノ曲とともに白服のラ・パロマがゆっくりおりてきます。ソフト・フォーカス気味です。左下と右少し下に燭台がありました。カメラはかすかに上から下向きになります。手前へ出て、また数段おりると肩から上が映るのでした。
 こちらは着衣なものの、正面からとらえられた階段を女性がおりてくるという構図が、ソフト・フォーカスと相まって、写真を油彩化したゲルハルト・リヒターの《エマ(階段の裸婦)》(1966、ケルン、ルートヴィヒ美術館)を連想させるカットでした。


 暖炉際のイジドールとラウルのカットをはさんで、約1時間6分、昼間の居間のラ・パロマ、また暖炉際の2人、約1時間7分、昼間、手前の踊り場から右下に下りの階段、そこをアンナがのぼってきます。左上へのぼり階段となる。アンナは背を向けそちらを上へ、上からはイジドールがおりてきます。右上にのぼり階段の裏が見えており、3階まで階段が続くことがわかります。2階まで上がった奥には窓があり、向こうは青い。アンナは上で右へ、さらにのぼっていきます。階段は木製です。中央は木の円柱になっている。
 浴室でしょうか、しかし机が置かれラ・パロマがいます。アンナが入ってくる。扉からイジドールが覗きこみます。
 ラ・パロマやアンナがいなくなってからイジドールが入ってくる。『毒物学 TOXICOLOGIA …』と扉に記された本があります。ラ・パロマは美顔術に関心を寄せていたという。


 暗がりの中、白いドレスで歌います。舞台のようです。
 暗い廊下に窓から光が射しこんでいます。ノイズ風の音が響く。右奥から手前へ、シルエットが進み数段のぼります。ラ・パロマとアンナでした。また陰に入る。食堂のテーブルにイジドールがいます。


 約1時間17分、朝でしょうか、画面右を壁が占め、カメラが上から下へ振られます。アンナが奥から現われ、まわって右へ、礼拝堂でした。イジドールが祈っています。
 イジドールが数段のぼる。奥に階段が見えます。
 1階踊り場が右下から見上げられます。薄暗い。
 ラ・パロマの部屋です。イジドールの「そばにいる」と告げます。目を見開き胸に黒の十字架を斜めに抱えている。遺言を3年後ラウルと開けてと言い残す。右にベッド、左にアンナが配され、彼女は左へ進む。神父に対しラ・パロマは「私は彼と再会する」という。『今宵かぎりは…』でカーフェンとカーンが劇中劇として演じた『ボヴァリー夫人』の一齣が連想されずにいません。
 キャバレーにいた黒帽子黒ヴェイルの女、母などが入ってきます。扉口越しの構図です。

 約1時間25分、賑やかな曲とともに歌手姿のラ・パロマ、床のラ・パロマ、そしてぼやけます。
 暖炉際の2人に戻る。今日が3年目だという。ラウルが遺言を開封します。遺骸を礼拝堂の骨壺へ移してくれとのことでした。


 約1時間29分、真っ暗になった後、庭です。手前にイジドールがおり、その向こうで5~5段のぼりになっている。左からラウルたちが現われます。向こうののぼり階段をのぼって奥へ、低い生け垣にはさまれた小道が伸びています。カメラはゆっくり上向きになる。
 右下がりのゆるい斜面です。すでに墓は掘りかえされている。老人たちが列席しています。
 ラウルと人夫が柩の蓋を開ける。軽快な曲が流れます。ラ・パロマは生前の姿のままでした。骨壺に入れるためには切り刻まないとならないとラウルがいう。また陽気な曲が流れます。アンナが見つめる。誰もやってくれないのでイジドールがナイフを振りかざします。女の笑い声が響く。賑やかな曲です。イジドールが上を見上げ笑います。バルコニーに母がいました。カメラがズーム・インする。
 骨壺を頭にのせたイジドールが向こうへ消えていきます。夕陽にノイズがかぶさる。


 「空想の力」のアップです。イジドールと見つめあっている。カメラは後退します。また「空想の力」のアップとなり、ズーム・アウトする。真っ暗になります。キャバレーの様子をカメラは撫で、赤いカーテンからラ・パロマが登場する。イジドールからカメラは右へ、客席を経て仏語で話すカード使いをとらえるのでした。
Cf.,  ダニエル・シュミット映画祭 全作品シナリオ付パンフレット』、1983、表から pp.4-6:『ラ・パロマ』採録シナリオ、など

ダニエル・シュミットの世界』、アテネ・フランセ文化センター、1982、pp.18-19:「ダニエル・シュミット自作を語る(Ⅰ) 『今宵かぎりは…』/『ラ・パロマ』」、p.25:岡島尚志、「『ラ・パロマ』-ジョークのはじらい」、p.36:/『ラ・パロマ』(フレディ・ビュアシュ、「スイス映画」より)、など
 2016/8/7 以後、随時修正・追補
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