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ゴースト・ブレーカーズ
The Ghost Breakers
    1940年、USA 
 監督   ジョージ・マーシャル 
撮影   チャールズ・ラング
編集   エルスワース・ホーグランド 
 美術   ハンス・ドライアー、ロバート・アッシャー 
 室内装飾   A.E.フロイデマン 
    約1時間25分 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

DVD(『ゾンビの世界』(→こちらを参照)より)
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 ゾンビとされる人物や幽霊が登場しますが、本筋は別のところにある喜劇です。とはいえ、約52分になってからではあるものの古城がその後の舞台となり、そのセットもけっこうきちんと作ってくれています。隠し扉も登場します。手短かに取りあげることといたしましょう。

 原作はポール・ディッキーとチャールズ・W・ゴダードによる戯曲で、それぞれ1914年にオスカー・C・アプフェルとセシル・B・デミル、1922年にアルフレッド・E・グリーンによりいずれもなぜか単数形の The Ghost Breaker として無声映画化されましたが、双方フィルムは現存しないとのことです。また本作の監督ジョージ・マーシャル自身、ディーン・マーティン&ジェリー・ルイスのコンビで『底抜けびっくり仰天 Scared Stiff 』(1953、未見)として再映画化しました。
 マーシャルの名は見覚えがあるような気がしたのですが、[ allcinema }で見てもぴんと来たのは奇術師フーディニをトニー・カーティスが演じた『魔術の恋』(1953)、ヘンリー・ハサウェイ、ジョン・フォードと共同監督した『西部開拓史』(1962)くらいでしょうか。もとより当方の不見識ゆえで、1910年代後半からの作歴をもつヴェテランであります。
 ヴェテランといえば撮影のチャールズ・ラングも1920年末からの強者、本サイトでも『呪いの家』(1944)で出くわしましたが、その他に『幽霊と未亡人』(1947、監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ)、『麗しのサブリナ』(1954、監督:ビリー・ワイルダー)、『OK牧場の決闘』(1957、監督:ジョン・スタージェス)、『荒野の七人』(1960、同)、『西部開拓史』、『シャレード』(1963、監督:スタンリー・ドーネン)などなど枚挙に暇がありません。[ allcinema }等でご確認ください。
 おさおさ引けをとらないのが美術監督の一人ハンス・ドライアー(ドライヤー)です。{ IMDb }でも「異様なまでに多産で折衷的な美術監督」と記され、1910年代後半のドイツ映画に始まり、以来美術監督として540作、プロダクション・デザイナーとして3作その他が挙げられています。多すぎてとてもチェックしきれないのですが、同じく『呪いの家』の他、『サムソンとデリラ』(1949、監督:セシル・B・デミル)でウォルター・テイラーと、『サンセット大通り』(1950、監督:ビリー・ワイルダー)でジョン・ミーハンとアカデミー美術監督賞を受賞、また何度もアカデミー室内装置賞を得ているとのことです。
 なおドライアーともう一人の美術監督ロバート・アッシャー、撮影のラングは、セット装飾(本作では室内装飾)のA.E.フロイデマン、製作のアーサー・ホーンブロウJr.、脚本のウォルター・デレオン、音楽のエルンスト・トッチ、主演のポーレット・ゴダードおよびボブ・ホープともども、『猫とカナリヤ』(1939、監督:エリオット・ニュージェント、未見、1927年版に続く再映画化)から続投しました。
 ボブ・ホープは昔、ビング・クロスビーとの『珍道中』シリーズ、単独での『腰抜け』シリーズなど何作かTVで見た憶えがあります。ポーレット・ゴダードはチャップリンの『モダン・タイムス』(1936)、ゲイリー・クーパー主演の『北西騎馬警官隊』(1940、監督:セシル・B・デミル)などをやはりTVで見たかと思います。
 ボブ・ホープ演じるラリーの使用人アレックスに扮したウィリー・ベストは、生き生きと振る舞うほどに当時の映画における黒人像という枠どりを透かさずにいないという点で、現在の目からすると微妙なものを意識せずにいられません。下掲の Jonathan Rigby, American Gothic: Sixty Years of Horror Cinema, 2007, p.196 で示唆されているのもそういった点につながるのでしょうか。
 アンソニー・クインも出演、始めの方であっさり殺された時にはまだ駆け出しの頃だったんだなと感慨に耽ってしまいましたが(1915年生まれ、映画デビューは1936年)、ちゃっかり双子の兄弟として再登場します。重要なのかそうでないのかよくわからない役柄ではありました。
 ジェフ・モンゴメリー役のリチャード・カールソンは『大アマゾンの半魚人』(1954、監督:ジャック・アーノルド)、ハリーハウゼンの『恐竜グアンジ』(1969、監督:ジョージ・オコノリー)などに出ていたとのことです。パラーダ役のポール・ルーカスはオスカー俳優で、ジャンル映画では『海底二万哩』(1954、監督:リチャード・フライシャー)など、その他、本作はロバート・ライアンの映画デビュー作で、インターン役とのことですが、まったく気がつきませんでした。


 メアリー・C・クーパー(ポーレット・ゴダード)はキューバのブラック島を相続、出発を控えていました。ホテルで相続の手続きに立ち会う領事館のアベス(ペドロ・デ・コルドバ)も書類を持参したパラーダも、島の呪われた(マルディート)城 Castillo Maldito には幽霊の噂があると脅かしてくれます。
 ラジオ・キャスターのラリーことローレンス・ローレンス(ボブ・ホープ)は番組で喋ったことのせいで、メアリーと同じホテルへギャングに呼びだされます。使用人のアレックスに拳銃を持たされ14階の廊下まで来ると、メアリーに電話で連絡していたラモン・メデロス(アンソニー・クイン)が撃たれた拍子に、思わず引金を引いてしまい、自分が殺したものと思いこむ。同じ階のメアリーの部屋に転がりこみ、トランクに潜んで警察をやり過ごすも、トランクごとハバナ行きの船に積みこまれてしまいます。
 新聞で犯人の使った銃の口径が違うことを追いついたアレックスに教えられ、殺人の疑いは晴れたものの、メアリーが何者かに脅されていることを知り、助けてもらったお礼に今度は自分が救うと同行を決意するのでした。船の甲板でまたしてもメアリーをびびらせようとしていたパラーダに、自分はゴースト・ブレイカーだと宣言します。邦訳するなら除霊屋とでもいったところでしょうか。
 ホテルの廊下、船、ハバナのクラブで何度も出くわす人物(しかしその後登場しません)、船で知人ジェフ、クラブでラモンの双子フランシスコとメアリーは出会いつつ、息子がゾンビだという管理人(クロージング・クレジットでは Mother Zombie となっていました)のいるブラック島へ、まずはラリーとアレックスが舟で到着、マルディート城の様子を探ります。追ってメアリーも近くから泳いでやって来る。管理人はゾンビを城へ向かわせます。はたして城にはどんな秘密が隠されているのか……以上が大まかな粗筋です。


 城の外観はまず冒頭に映しだされます。マット画です。外観はこの後約52分に登場して以降の舞台となることを告げ、またエピローグに顔を出します。いずれもマット画で、冒頭と中盤はともに夜、エピローグのみ昼間でした。
 キューバにあるという設定に応じてか、窓が広い。このため屋内に入ると、窓から入る光が床に射した際、幾本もの水平の日除け桟の影で区切られることになり、これが特徴の一つと見なせるでしょうか。数年後の『私はゾンビと歩いた!』(1943)と比べたくなるところであります。
 さて、冒頭に戻ると、城の前面に何やら霧だか靄が棚引いており、これが変じてタイトルとなります。夜空に雲が流れ、稲妻が走る。夜空の稲妻はそのまま、摩天楼立ち並ぶニューヨークへと移るのでした。しかし雷のせいで停電となる。なかなかに洒落た開幕ではありました。


 停電になったホテルの廊下、霧が下ったハバナ行き客船の甲板と階段でのぼるその二階などを経て、約52分、月夜の城が丘の上に建つさまを仰角でとらえた後、ラリーとアレックスの漕ぐ舟が島の桟橋に着きます。
 桟橋の先端に小屋があり、中でゾンビが寝台に横たわっていました。またその母親で管理人が中に入れば、小屋の壁が上すぼみに傾斜していることがわかります。
 桟橋は浅い山型をなしており、その先はのぼり階段です。石の欄干が寄り添い、途中で一度踊り場をはさみますが、向きは変わりません。やはり霧つきです。


 装飾的な鉄の門を通り、約56分、玄関広間に入ります。かなり広く、吹き抜けです。広間の奥、幅の広い上すぼみののぼり階段が7~8段、そこから右へ折れてのぼり階段が続くのですが、傾斜はゆるく見える。また欄干は分厚そうな曲線装飾からなり、後にメアリーが裾を引っかけることでしょう。
 踊り場の壁には大きな女性肖像画がかかっています。少し後にはっきり映れば、黒いドレスで小犬を連れている。マリーア・イソベル・セバスティアーン MARÍA YSOBEL SEBASTIÁN の肖像でした。メアリーそっくりです。
 戻ると、広間にはシャンデリアが二つ、階段上右手には縦長の窓が開いています。切り替われば踊り場あたりから玄関の方が見下ろされます。画面左でのぼり階段が切れ、下中央に親柱の天辺が配される。


 ラリーが階段をあがります。二階、あがって左は窓で、床に日除けの横桟やダイアモンド型の影が落ちている。
 さらに数段のぼって右に扉がありました。中に入ると、天蓋付きの寝台が置いてあります。右で日除け付きの窓が開き、その手前に長櫃が見える。
 後にメアリーが同じ部屋に入ることでしょう。その際、扉の一部の板が覗き窓のように開閉できることがわかります。


 広間にアレックスが残っていると、柱時計が鳴ります。壁沿いに装飾付きの長櫃、その右手に真っ黒で、最初は影かと思った大きな燭台が置いてありました。長櫃の蓋が勝手に開き、幽霊が起きあがります。幽霊が櫃に戻った後。蓋を開くと中には骸骨が横たわっていました。

 広間の扉の一つが勝手に開き、入った中はいくつもの半円アーチで区切られた天井の高い部屋でした。窓もかなり高い位置に設けられています。ラリーとアレックスは右から左へ進み、カメラもそれに並行します。ガラス製の柩が台の上に安置され、「マリーア・イソベル・セバスティアーン 1776-1827」と記されていました。またドン・サンティアゴのやはりガラス柩もありましたが、これは英語版ウィキペディアの該当頁(→こちら)中の"2. Script error"が指摘するように、先の広間長櫃の骸骨もドン・サンティアゴのものだと述べられており、「幽霊はそれゆえ二つの骸骨の所有者ということになる」。
 とまれ、さらに奥にパイプ・オルガンのあるこの部屋は、一族の納骨堂なのでしょう。少なくとも画面からは、納骨堂と玄関広間は扉をはさみ地続きで、前者が地下とかにあるようには見えませんでした。


 窓の広い部屋、すなわち玄関広間をラリーとアレックスが左から右へ進み、低い位置のカメラもそれに並行します。前段でメアリーを追っかけ回したゾンビはなぜか鎧の中に収まっており、しかし二階の部屋で長櫃の中にあった肖像画と同じ黒いドレスに着替えたメアリーが、燭台を片手に階段を降りてくると鎮まるのでした。

 今度はメアリーとラリーが納骨堂に入ります。壁には文字、別の壁には小さな人型がいくつか刻まれている。後者が楽譜の暗号になっており、パイプ・オルガンでその旋律を弾くと、装飾付きの太い半円柱が隠し扉として開きます。
 その先は下り階段でした。まわりの壁は洞窟状です。下りた先でクライマックスを迎えることでしょう。


 先の骸骨の主の件以外にも、双子の片割れは結局どんな立場でなぜ殺されたのかとか、ギャングの件はどうなったのかとか、何度も出くわした男は何だったのかなど、気にし出せば気になる点はいくつかあるものの、まずまずテンポ悪しからぬ作品ではないかと思われます。
 何より、歪んだ小屋のある山型桟橋からのぼり階段に導かれ、玄関広間と大階段、縞状の影、階段をあがった二階とその一部屋、奥に深そうな納骨堂、隠し扉と地下への階段など、古城のセットがきちんとしていた点をこそ評価すべきでありましょう。

Cf.,  伊藤美和編著、『ゾンビ映画大事典』、2003、p.33 / no.007

Jonathan Rigby, American Gothic: Sixty Years of Horror Cinema, 2007, pp.195-196
 2017/12/17 以後、随時修正・追補
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