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恐怖のロンドン塔
Tower of London
    1939年、USA 
 監督   ローランド・V・リー 
撮影   ジョージ・ロビンスン 
編集   エドワード・カーティス 
 美術   ジャック・オタースン 
 セット装飾   ラッセル・A・ガウスマン 
    約1時間33分 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

DVD(『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.3』より(→こちらを参照:『ドクターX』(1932)の頁の「おまけ
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 監督ローランド・V・リー、美術監督ジャック・オタースン、セット装飾ラッセル・A・ガウスマン、主演バジル(ベイジル)・ラスボーンにボリス・カーロフが共演ということで、古城映画の金字塔、かの『フランケンシュタイン復活』(1939)の面々が再会した作品となります。ちなみに [ IMDb ]によると『復活』は1939年1月13日USA公開、本作は同年11月17日公開でした。『復活』ではベラ・ルゴシとライオネル・アトウィルに喰われてしまった感なしとしないラスボーンですが、本作ではその悪役ぶりを堪能させてくれます。題材はリチャード三世の謀略と破滅ということで、シェイクスピアの戯曲の中身はすっかり忘れてしまいましたが、それとは別に独自に脚本が書かれたとのことです。この点はロジャー・コーマンが監督した『恐怖のロンドン塔』1962年版も同様ですが、コーマン版とも話は違っていました。なお本作で映画出演3作目だったというヴィンセント・プライスが、コーマン版で主役を演じることになります。ついでにラスボーンはコーマンの『怪異ミイラの恐怖/黒猫の怨霊/人妻を眠らす妖術』(1962)の第3話で悪役をつとめ、カーロフはやはりコーマンの『忍者と悪女』(1963)および『古城の亡霊』(1963)に出演することでしょう。前2者はもれなくヴィンセント・プライス付きです。
 さて、亡霊がやたら出てきて予言までしたコーマン版とは異なり、本作は超自然現象の起こらない歴史劇的な相を強めています。もっとも舞台はコーマン版同様、ほとんどがタイトル・ロールのロンドン塔内で展開する。『フランケンシュタイン復活』の夢よもう1度とまではいかないにせよ、城内のセットはなかなか魅力的でした。

 タイトル・バックは昼間のロンドン塔です。左でテムズ川が流れている。画面手前には鋸歯型胸壁のある歩廊が横に伸びています。マット画でしょうか。1471年、先代のヘンリー六世を幽閉してエドワード四世が王位に就いたとのテロップが出る。
 カメラが下降していきます。画面中央、歩廊の下にあるアーチ型開口部を正面からとらえ、さらにその下、アーチの向こうは水路です。舟が停まっている。水路の向こうに10段ほどののぼり階段が設けられ、あがった先で鋸歯型胸壁が左右に伸びる。その先の道をはさんで尖頭アーチが奥へ導いています。
『恐怖のロンドン塔』 1939 約1分:ロンドン塔外観 『恐怖のロンドン塔』 1939 約2分:濠からの入口
 エドワード四世の妻、女王エリザベス(バーバラ・オニール、フリッツ・ラングの『扉の蔭の秘密』(1947)に出ていました)の部屋です。部屋の中央が低い塀で囲われています。中は椅子のようですが、この手の囲いが他の部屋にも出てくることでしょう。

  神父が鐘をつくさまから、地下室に切り替わります。さっそく刃を研ぐボリス・カーロフの登場です。役名はモード。禿頭でもじゃもじゃの眉毛です。彼が右に進むと、ここが拷問室であることがわかる。左奥に低く、太い木の梁が走っています。その奥にあるのは階段でしょうか。右奥には鉄の処女が据えられ、その右手の壁は奥にゆるく傾斜している。この壁の手前に10段ほどののぼり階段があり、あがった先で右に扉口となります。また神父の鐘つきです。 
 幽閉されたヘンリー六世の様子を映した後、ゆるい尖頭アーチが正面からとらえられる。その奥すぐにも尖頭アーチがあり、向こう側には中庭か何かを経て城壁となります。死刑囚デヴィアを取り囲む一行がアーチから出てきて、正面に進む。カメラはまずは水平で後退しますが、やがて後退しつつ上昇して、手前の空間のさまを映しだします。アーチの右向こうは4分の1円の壁で、その右にゆるいアーチがあります。アーチの上は右側の別棟に接続している。右の棟から手前へは地面に鋸歯型胸壁が伸びています。カメラはさらに上昇する。左の4分の1円の棟、それより低い接続部の棟はそれぞれ鋸歯型胸壁をいただいています。それらの胸壁からもぽちぽちと人が下を覗いている。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約6分:中庭への通路近辺
 狭い石の螺旋階段を女性がおりてきます。この階段には以後何度か出会うことでしょう。女性はアリス・バートン(ナン・グレイ。『女ドラキュラ』(1936)に出ていたとのこと)、女王のおつきです。彼女が手前に進むと、そこは女王の部屋でした。前に出てきた時よりけっこう広く見える。壁に斜め格子の影が落ちています。 
『恐怖のロンドン塔』 1939 約6分:女王の部屋への螺旋階段 『恐怖のロンドン塔』 1939 約7分:女王の部屋、囲いあり
 中央にリングを設けた部屋です。リング上では鎧兜を着けたエドワード王(イアン・ハンター。スペンサー・トレイシー版『ジキル博士とハイド氏』(1941、監督:ヴィクター・フレミング)に出ていたそうです)とその弟グロスター公リチャード(ラスボーン)が槍の試合をしている。右の扉口の向こうに螺旋階段が見えます。その左にもアーチが並び、廊下に通じている。左手の壁も奥につながっているようです。クラレンス(ヴィンセント・プライス。若い!)の姿も混じっている。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約8分:リングの部屋
 アーチ越しに中庭が覗かれます。突きあたりの壁には手前から奥へ、次いですぐに折れて左上がりになる木の階段が沿っている。カメラが動いて枠どりが見えなくなる。右手の壁が上に鋸歯型胸壁を走らせています。階段をのぼる女王にジョン・ワイアット(ジョン・サットン)が処刑に立ち会わせてもらえるよう頼みこみます。ジョンはアリスとなさぬ仲のようです。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約10分:中庭、壁沿いの階段
 円形の仮設見物席の中央に処刑台が設けてあります。女王の部屋の囲い、リングの部屋と、本作では空間の中央に別の区画を区切ったところが何度も出てきます。死刑執行人は覆面をつけたモードでした。斧による斬首です。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約10分:処刑台と見物席
 城の屋根に煙突掃除夫のトム・クリンク(アーネスト・コッサート)と助手の少年がいます。 
 リチャードの部屋です。モードはリチャードに心酔しています。モードは足が悪く、リチャードは背が曲がっている。奥にアーチがあり、その向こうにもアーチが見える。モードはそこから退室します。本作ではアーチの向こうに別のアーチが覗くという空間が他にも何度か出てくることでしょう。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約14分:リチャードの部屋
 残ったリチャードは右手の戸棚を開く。そこには王室の面々を象った人形が玉座を囲む態で飾ってありました。

 石の螺旋階段をアリスとジョンがおりてきます。左手の壁は殺風景です。次いでまた煙突掃除の様子に替わったかと思えば、助手の少年が煙突の中で転落してしまう。落ちた先は女王の部屋の暖炉でした。螺旋階段からクリンクが駈けおりてくる追補:→「暖炉の中へ、暖炉の中から - 怪奇城の調度より」の頁でも触れました)。
 階段の方から女王が現われます。右側に進むと、病に伏せる息子の寝室につながっていました。そこにはリチャードもいた。


 半円アーチが連なる廊下をリチャードが奥から手前へ進んできます。半円アーチは色違いの石を積んだもので、ここにかぎらず城内のアーチや角柱は同様の体裁をしています。 
 手前の部屋で待つジョンを残し、リチャードは左奥の扉から中へ入っていく。王が側近と集まる部屋のようです。やはり中央に低い塀の囲いがあり、扉になった部分もあります。奥には急な木の階段だか梯子がかけてある。壁に濃いその影が落ちています。階段の上は高い位置にある窓です。
 王、むく犬を抱いたクラレンスがいました。リチャードはアン・ネヴィルに思いを寄せていましたが、兄のクラレンスの采配でアンはウェールズ公に嫁いだことがわかります。
 
『恐怖のロンドン塔』 1939 約21分:王と側近の部屋、窓にかけた階段
 王はリチャードにノーフォーク公夫人と結婚するよう命じますが、拒否されます。王は押し切れません。リチャードのほのめかしで王は、アリスとの結婚の許可を求めに来たジョンにノーフォーク公夫人との婚姻を命じる。ジョンが拒否すると、「タワーへ連れていけ」とのお達しです。 
 天井の高い廊下です。床には幾何学的な装飾が施されています。奥で半円アーチが二重に並んでいます。ジョンを連行する兵士たちがそちらへ向かう。それを左手前の柱の影で、背を向けたモードが見やる。モードが手前に来ようとした時、ジョンは兵士たちの手を振り切ってこちらへ逃げだします。モードが足を引っかけて取り押さえる。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約24分:廊下
 石の螺旋階段を女王が駈けおりる。王が追ってきます。二人はまず手前を左に来ます。濃い色の角柱と明色の壁を経て、左手にも低い塀があり、扉がついています。二人は次いで右に、それから手前へ進む。カーテンで仕切られた部屋となり、右手にベッドが配されています。王は女王の機嫌を取るのに懸命です。結局ジョンは死罪を免れ、フランスのテューダーのもとへ送られることになる。王はそれなりに暴君ではありますが、リチャードとエリザベス、それぞれに無礙にふるまうことはできないらしい。これが本篇での王を興味深い人物にしていました。
 左の仕切り塀の向こうから、報せを伝えに高官たちがやって来ます。ウェールズがランカスターの残党と手を組んで攻めてきたという。


 リチャードはヘンリー六世を戦場に駆りだすことを提案します。ヘンリー六世の部屋は、入口から2段ほどくだって床になる。階段の左右に色違い石を積んだ角柱が上で半円アーチになっています。壁には半円アーチ状の細い窓の影が落ちています。中央の縦桟は垂直ですが、横桟は斜めでした。 
 向かいあうリチャードとモードの肩から上の影だけが石積み壁に落ちています。カメラが右に動いて実物が映る。リチャードはヘンリー六世についての噂をひろめるよう命じます。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約28分:リチャードとモードの影
 梯子であがった上にある狭い木の台が下から引きでとらえられる。台の下の柱は斜めです。台の上にモードがのって、噂を憶えさせています。周囲には貧民たちが群がっている。台の上では右下がりの斜面になった壁に窓が穿たれています。右手には半円アーチがかかっている。台上のモードをはじめとした人の影が、壁に濃く落ちています。カメラが後退すると、画面手前の右を曲線の段状になったゆるいアーチが枠取っている。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約29分:モードと貧民たちの落ちあい場所
 城門から水路前を左へ進軍が始まります。モードはリチャードに同行を懇願する。もっと血が見られるはずだとのことです。モードの背後に見える数本の太い円柱は、下の方で細い帯を経て末広がりになっています。 
 生垣によって細かく区切られた庭園です。アリスは小姓に手紙を託す。しかしモードに奪われてしまいます。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約31分:城内の庭園
 ウェールズ公はヒアフォードの小修道院 Priory of Hereford にいました。妻はリチャードの思い人であるアンです。敵軍はグロスタシャー Gloucestershire に集結しつつある。
 石碑にテュークスベリー
Tewkesbury とあります。豪雨に雷が轟く。ゆるい山型をなす小さな石橋を焦点に戦闘が始まります。ヘンリー六世は右往左往している。リチャードとウェールズ公の一騎打ちとなります。 
 クラレンスが右手から駆けこんでくる。自宅のようです。右に右上がりの階段があり、妻のイザベルがおりてきます。左には糸車が見える。妹のアンを避難させないとという。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約35分:クラレンス邸
 ヘンリー六世の部屋です。喜んでいます。それをリチャードが無表情に見つめている。ヘンリー六世は右奥のカーテンの奥へ入ります。左の壁にモードの影だけが落ちる。カメラが右から左へめぐると、実物が映ります。カーテンの奥は礼拝室になっている。そこに向かうモードを見るリチャードは、ずっと坐ったままでした。

 王と側近たちが合議する部屋です。窓への階段は右下に小さく影を落としています。左奥の壁に大きな十字の影がある。

 リチャードの部屋です。ウェールズ公とヘンリー六世の人形を火にくべる。周囲の模型も、アーチや柱が色違いになっていました。 
 リチャードはモードにアンの捜索を命じます。彼女を発見したモードは、城内の一室に連れてくる。画面左のアーチの前に踊り場があり、そこから左に3段ほどおりる。アーチの奥で5段ほど上り、その先にもアーチが見えます。手前のアーチの右、柱をはさんで奥まった窓があります。
 モードは踊り場に立っている。右の壁に濃い影が落ちています。光は手前のアーチの向こうで、わずかに上から射しているようです。奥のアーチからリチャードがおりてきます。アンが捜索されていたことは知らなかった振りをしています。
 
『恐怖のロンドン塔』 1939 約40分:収監室
 王と側近の合議室です。王は窓への階段の途中にたち、まわりを服の仕立てに携わる面々が囲んでいる。リチャードがアンを連れて入ってきます。王も茶番に協力し、二人の結婚を認める。権謀術策に長けたリチャードが一人の女性に固執するのも奇妙なら、アンがリチャードの結婚に同意するのも解せない点です。後者に関してはしかし、はてなとなるのは近代的視点ゆえで、当時の結婚事情を考えれば不思議はないのかもしれない。むしろリチャードの恋慕こそ近代的なようにも思えますが、史実ではどうなっているのでしょうか?
 なおこの場面で、窓への階段は最初右下に薄い影を落としていましたが、カットが換わると左に濃くなります。またこの部屋には右奥にゆるいアーチをなす低い扉があり、向こうは床が装飾タイルの廊下でした。


 窓に枠取られたその向こうに、クラレンスとその妻がいます。カメラは前進する。すぐ奥は色違いの角柱です。

 ゆるいアーチの向こうから少年聖歌隊が進んでくる。奥の壁に斜め格子の影が落ちています。聖歌隊は手前から右へ向かいます。カメラも右に、柱越しになってから後退する。
 
 まだ5歳の王子が結婚式を挙げるのでした。式を司る神父の背後には、太い円柱が間隔も狭く何本も立っています。円柱は柱頭というか太い帯を経て、その上で角柱になる。柱頭ないし帯は、下半が刳りこまれていたりします。角柱は上でアーチ状にひろがっているようです。これはすぐ後に確かめることができます。
 このアーケードは1階にあたり、2階は半円アーチが連なる回廊になっています。王の合図でそこからリチャードとアンが姿を見せるのでした。
 
『恐怖のロンドン塔』 1939 約46分:礼拝堂
 クラレンスと王、続いてリチャードが廊下を手前に進むさまが、やや下からとらえられます。カメラは後退しながら微かに上昇する。
 手前の部屋では、左奥の壁に斜め格子の影が細かく落ちています。壁の下には扉、右に二連の半円アーチ窓がある。色違いのガラスに斜め格子の桟が走っており、斜め格子の影はここから発したらしい。ここは以前ジョンが待たされていた、合議室の手前の部屋でしょうか。

 不公平な領地分けにクラレンスが酒場で謀を目論んでいます。
 酒場で給仕していた密偵の報告をモードが拷問室で受ける。鉄の処女を操作しています。蓋を開くと中に人がいました。右奥に梯子がある。
 かなり上から城門前の水路が見下ろされます。向かいのアーチには降ろし戸がついていることがわかる。舟で到着したクラレンスをモードが待ち受けていました。
 クラレンスが連れてこられた部屋は、以前アンが入れられた部屋と同じもののようです。リチャードもやって来ます。今回光は手前から絞って当てられており、上の方や左右は薄暗い。
 モードがワインを持ってきます。クラレンスは毒かと疑って飲みませんが、リチャードが盃を乾します。侮辱されたとリチャードは決闘を申し入れ、方法を選べと例を挙げます。クラレンスはその中からワインの飲み比べを選択する。
 
 酒蔵です。画面の手前左右を大樽が縁取っている。そのすぐ向こうにテーブルがあります。奥で左上へ4段ほどのぼりとなり、左奥から右前へ低くて太い梁が伸びている。梁には鎖が引っかけてあります。半円アーチを経て奥に扉口が見える。左奥にも扉口があり、そこからモードが出てきます。
 リチャードはクラレンスの人形を火にくべる。
 
『恐怖のロンドン塔』 1939 約52分:酒蔵
 「フランス、1483」とのテロップが出ます。月夜の海を見るヘンリー・テューダーのところへジョンが現われます。

 王は病に伏している。庭にいる王子たちは成長しています。王はますます弱る。ジョンの追放を解くかたわら、ヨークにいるリチャードを摂政に任じます。
 エドワード四世は逝去、王子がエドワード五世として即位します。史実によれば1483年とのことです。エドワード五世はこの時12歳。慣れない議会に疲れた少年王の様子に、リチャードは弟王子を呼ぶことを提案する。議会室は以前の合議室ともそれに隣接する部屋とも異なるようですが、すごく広いというわけではない。王や議員たちは長テーブルについて執務します。
 女王は尼僧になっていました。弟王子を呼び寄せることに危惧を抱いています。アリスも付き従っている。
 弟王子が水路を経てリングの部屋に到着します。少年王とリチャードが試合している。
 
 上ひろがりになった縦の柵が玉入れの籠のように柱の上につけられ、その中に人がいます。下の柱には昇降用の踏み台が何段かついている。右手には壁があり、籠の人物の影が落ちています。この籠は城門のそばにあるようで、城内からの何らかの情報を籠の人物が下に集まっていた群衆に伝える。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約1時間7分:覗き台
 すると群衆は城門に押し寄せます。モードは門を開けさせる。群衆は中庭になだれこむ。以前に出てきた左右の棟をつなぐアーチ上の接続部の上の鋸歯型胸壁に縁取られた通路から、議員たちを従えたリチャードが群衆に話しかけるのでした。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約1時間8分:中庭への通路近辺
 ジョンが帰国、アリスのもとへ訪ねてきます。女王もいる。ヘンリー・テューダーと兵を集める、しかしそのためには資金が必要だとジョンが言うと、タワーから盗めと女王は答えます。
 ジョンとその配下が地下にあるらしき壁を崩しています。向こうは地下室のようで、財宝が保管されている。低くゆるいアーチが見えます。
 
 ジョンは捕らえられてしまう。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約1時間11分:会議室の脇
リチャードが訊問、モードが拷問します。女王、アリスと神父が救出策を練る一方、ジョンが収監された監房は、以前アン、次いでクラレンスが入れられた部屋と同じでしょうか。上に三角の屋根をいただく暖炉が奥にあります。
 落とし戸つきの通用口らしきところへ煙突掃除夫のトム・クリンクがやってきます。今回の助手は煤で顔を汚したアリスでした。煙突からアリスが入ると、出てきたのは監房の暖炉です。鎖につながれたジョンにやすりを渡し、煙突にロープを垂らしておく、夜になったら濠へ行け、クリンクが小舟で歌を歌っていると伝えます。他方ジョンは、財宝は女王の宮殿の裏のオークの木の下だ、テューダーに届けろという(
追補:→「暖炉の中へ、暖炉の中から - 怪奇城の調度より」の頁でも触れました)。 
 クリンクが小舟をとめた濠は、すぐ向こうで鋸歯型胸壁が左右に伸びています。右奥にゆるいアーチが3つほど見える。
 方形扉の前に上からロープが垂らされます。手前は幅の狭い歩廊のようです。続いて角塔がいただく鋸歯型胸壁からロ-プが垂らされ、ジョンがおります。下は水路でした。
 
『恐怖のロンドン塔』 1939 約1時間20分:濠
 リチャードはモードに、「王子たちを血の塔に」と命じる。少年王と弟王子たちが幽閉された部屋は、奥の壁に大きく漆喰が落ちて積み石をさらけだした部分があります。右に数段のぼり階段があり、その上が扉でした。
 その扉をあけ、不自由な右脚を手で持ちあげるようにして入ってくるモードの脚がアップになります。ベッドの兄の手を取ったまま眠りこんだ弟をモードが抱きあげると、弟は片手をモードの肩に回す。モードは弟を兄の隣に寝かせ、二人に毛布を掛ける。両手を下で組みます。と思えば二人の背丈を測るのでした。一瞬の逡巡を浮かべながら、すかさず次の作業に移る、ボリス・カーロフの見せ場であります。
 暗い階段口です。モードは3人の手下を連れて上にあがります。その先は王子たちの部屋でした。


 ジョンとアリスはヘンリー・テューダーのもとへ走ります。
 城壁でリチャードが小さな鐘を鳴らします。じっと手前を見る。モードは今度こそ同行させてくれと頼みこみます。
 石碑に「ボズワースまで1マイル
Bosworth / 1 mile 」とある。霧に浸された夜でしょうか。リチャードの傍らにはモードがいる。戦闘が始まります。カメラは下から、水平で、上からと切り替わり、人物はしばしば半ばシルエット化します。チューダー対リチャードの一騎打ち、リチャードの敗北を見て逃げようとするモードをジョンが追う。  
崖の上で争う二人を、カメラはかなり下から見上げます。史実によれば1485年とのことです。  『恐怖のロンドン塔』 1939 約1時間31分:崖の上の対決
 アリスとジョンの結婚式に続いてエンド・マークとなった、その背景は冒頭と同じロンドン塔の外観でした。

 続くクロージング・クレジットでのキャスト1ページ目ですが、リチャード(ラスボーン)、モード(カーロフ)、女王(バーバラ・オニール)、エドワード四世(イアン・ハンター)、クラレンス(ヴィンセント・プライス)、アリス(ナン・グレイ)、トム・クリンク(アーネスト・コッサート)、ジョン・ワイアット(ジョン・サットン)、ヘイスティングス卿(レオ・G・キャロル)の順でした。業界事情もあって順序は出番の多さ長さと比例するものでもないのでしょうが、映画界入りして間もないヴィンセント・プライスが意外と上位にいたり、クリンク役のコッサートがジョン役のサットンより先に挙げられていたりというのは面白い点でした。レオ・G・キャロルには気がつかなかった。何よりトップ二人が悪役なのが感慨深いところであります。

 ロンドン塔内では女王の部屋とそれに続く2つの寝室、地下の拷問室、リングの部屋、王と高官の合議室とその隣の部屋、リチャードの部屋、ヘンリー六世の部屋、監房、酒蔵、議会室などが登場しますが、これらの位置関係はよくわかりません。廊下も出てこないわけではないにせよ、いささか出番が少ない。加えて大広間だとか晩餐のための食堂など中枢になるような空間は見られませんでした。玄関広間、そしてそこから他につながる階段・廊下も映されない。こうした点が城の迷宮化といわないまでも、城内で流れる空間と時間に何らかの影響を及ぼしていると見てよいでしょうか。
 なお手もとのDVDセットに封入された柳下毅一郎の作品解説によると、「ユニバーサルのバックロットに建てられた城の外観セットはその後も長く残り、『黒い城』をはじめとするユニバーサル作品で背景として利用されている」とのことです。

 
Cf.,

Scott Allen Nollen, Boris Karloff. A Critical Account of His Screen, Stage, Radio, Television, and Recording Work, 1991, pp.181-192 : "Chapter 17. Historical Horror : Tower of London (19392)", pp.380-381 / no.112

Jonathan Rigby, American Gothic: Sixty Years of Horror Cinema, 2007, pp.187-188

Joel Eisner, The Price of Fear. The Film Career of Vincent Price; In His Own Words, 2013, pp.20-22

 シェイクスピアに関連して→こちらも参照:「バロックなど(17世紀)」の頁の「おまけ
 
 2016/02/02 以後、随時修正・追補
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