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巨人ゴーレム
Der Golem, wie er in die Welt kam
    1920年、ドイツ 
 監督   パウル・ヴェゲナー、カール・ベーゼ 
撮影   カール・フロイント 
 美術   ハンス・ペルツィヒ、マリアンネ・メシュケ、クルト・リヒター 
 セット・デザイナー   エドガー・G・ウルマー 
    約1時間41分
画面比:横×縦    1.33:1 
    モノクロ、サイレント 

DVD
サイレントに挿入される字幕は英語版になっています。

* [ IMDb ]によると、ドイツ版は1時間25分、USA版は1時間31分となっています。
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 →こちらでも挙げましたが、やはり表現主義映画の系譜にある作品の一つで、超自然現象も起こりますし、お城も出てきます。もっとも皇帝の城は謁見の間だか大広間だかがメインで、多少その周囲が映り、また崩壊の危機に見舞われたりするものの、この作品の中心を占めるのは、ゲットーと一応の主人公であるラビの家です。

 ここでもカメラは基本的に固定で、左右や前後に動いたりはしないのですが、人物との距離の取り方や角度は『カリガリ博士』よりメリハリが効いているように思われます。顔が画面をいっぱいにふさぐこともあれば、かなり高いところから街路を見下ろしたりもする。ゴーレムに呪文を仕込む場面では、奥にゴーレムといたラビが、手前にやってきて手のアップになりました。あるいは悪魔召還の場面では極端なスポットライトが浴びせられるかと思えば、ラビが火災を鎮めようとする場面では逆光になったりもします。
 ゲットーは屋内でも屋外でも、石造りというよりは土壁のような質感で、重さや暗さの感触が強いのですが、そのためかえって、屋根だか壁伝いに猫が進む場面のように、撮影所の敷地内なのかもしれませんが、空も開放感をもって映っています。


 主な舞台であるラビの家は面白い造りになっていて、おそらくは2階にあたるらしい大きな広間が中心に位置します。奥には一見よくわからない柱があるのですが、幕開きの場面でこれもよくわからないところで星空を観測していたラビが降りてきて、螺旋階段であると知れます。ルーヴルにあるレンブラントの《瞑想する哲学者》(→こちらを参照)などと比べられるでしょうか。階段とその先は後の場面でわかるのですが、小塔になっていて、蓋状の戸をあげると屋上に出ます。
 階段の隣の壁面はゴシック風の尖頭アーチで区切られ、付け柱もついた壁龕になっており、窓や机が配されています。すぐ後で出てくる知人のラビの家の場面でもそうなのですが、尖頭アーチはしかし、ぐにゃっとひずんでおり、有機的な感触を与えずにいません。
 広間からは上の階のおそらく居室や、客を通す応接間、また下の階の玄関に通じている他、床にあるやはり蓋状の戸をあけると地下室にも行けます。地下室といってもたぶん玄関ホールと同じ高さなのでしょうが、狭い小部屋で、ここでラビはゴーレムを制作していました。後にゴーレムを運びだす場面では、坂状になった廊下が映ります。
 玄関ホールも、扉を開けると数段下がる形になっており、そこから上の階の広間へ通じる奥の階段がのぞいたり、地下室ともつながっているようで、面白い空間になっています。
 大広間、玄関ホール、地下室はいずれも殺風景な壁ですが、客間にはこれもゴシック風といっていいのでしょうか、奇妙なギザギザした暖簾状のものや椅子の背もたれがあり、ラビの娘の部屋は、他の土壁と違って、壁が白く塗られて植物の文様で覆われており、より個人的な空間を演出していました。


 ラビの家の有機化されたゴシックとでも呼べそうなたたずまいは、ゲットー全体にも浸透しています。もっとも、やはりぐにゃっとなった建物も見受けられるものの、こちらは街並みの古びた感触を伝えるのに、さほど不自然ではなく貢献しているようです。それでいて随所に階段や建物と建物をつなぐ橋など、立派に錯綜しています。上にアーチのある階段のてっぺんにゴーレムが立つショットは、たいそうかっこうがいい。街全体も土で造られた質感が強い。造られたという言い方をしましたが、ぐにゃっとした曲がり方も合わせると、大地が自ずから成育し、やがて枯れていくと見なせるかもしれません。そんな土の生命をはらんだ街だからこそ、土でできた人形も動き回れるのでしょう。

 ゲットー全体は城壁で囲まれており、入口は巨大な壁龕の中に巨大な門があり、城壁の上には門番小屋があり、通路も備えているようです。追放令が撤回された時には、ここから角笛(ショーファール)が吹き鳴らされました。
 ゴーレムがヒロインを解放する場面では、背に城壁があり、ラビがそこに開いた扉口から階段を降りてくるのですが、後にゴーレムが城門を内側から開くことと合わせると、城壁内にもう一つ内壁があって、壕のようになっているのでしょうか。
 他方、映画の中で何度か、ゲットーから皇帝の城へ行く道として、アーチ状の橋が映されます。末尾近くの描き方からすると、城門のすぐ前にこの橋があるということのようですが、ともあれこの橋のショットでは空がいっぱいに開けて、ゲットーやラビの家の迷宮性と対照をなしています。

Cf.,  セット等について;
レオン・バルサック、『映画セットの歴史と技術』、1982、pp.59-60

W.ペーント、長谷川章訳、『表現主義の建築(下)』、1988、pp.333-343:「Ⅲ-3 建築家と映画」の第2節「ゴーレムの街」(pp.335-338)

若山滋・今枝菜穂・夏目欣昇、「ドイツ表現主義映画にみられる建築空間」、2008

Film Architecture : Set Designs from Metropolis to Blade Runner, 1996, pp.66-69

Claudia Dilimann, "Realising the Spiritual City. Hans Poelzig and The Golem", Architectural Design, vol.70 no.1, January 2000 : "Architecture + Film II", pp.16-19

The Horror Movies, 4、1986、p.149

先行する1915年版の『ゴーレム』について;
クラカウアー、『カリガリからヒトラーへ ドイツ映画 1918-1933 における集団心理の構造分析』、1970/1995、pp.33-35

おまけ  ユダヤの伝承における 〈ゴーレム〉の概念については→こちらを参照<「ユダヤ Ⅱ」<「宇宙論の歴史、孫引きガイド」)
また→こちらで挙げたマイリンクの『ゴーレム』も参照(<「ユダヤ Ⅲ」<「宇宙論の歴史、孫引きガイド」)


ポータブル・ロック、『QT plus one』、1986
のB面3曲目が"Golem Polka"でした。「プラハの広場で/粘土でできた/ゴーレム踊る」と始まります。
このアルバムのためのデモ・テープを後にCD化したのが
ポータブル・ロック、『ビギニングス』、1990
ですが、こちらでは3曲目に入っています。

 2014/08/21 以後、随時修正・追補
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