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成吉斯汗の仮面 *
The Mask of Fu Manchu
    1932年、USA 
 監督   チャールズ・J・ブレービン 
撮影   トニー・ゴーディオ 
編集   ベン・ルイス 
 美術   セドリック・ギボンズ 
    約1時間8分 ** 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

一般放送で放映 ***
* TV放映時の邦題は『ジンギスカンの仮面』
** [ IMDb ]による。手持ちの録画は約1時間6分
*** 追記:本作は『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.3』(→こちらを参照)中の1点としてDVD化されました。
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 サックス・ローマーによって創造されたフー・マンチューをボリス・カーロフが演じた作品。超自然現象は起こりません。世界征服を狙う怪人一味の陰謀を阻止せんとする冒険活劇といったところですが、いかんせん脚本の仕上がりがかなり粗く、そのせいもあってか植民地主義・白人至上主義がやけに目立ち、現在見るにはいささかしんどい映画となってしまっています。ただフー・マンチューの基地に少し面白いセットが見られるので、手短かにとりあげておきましょう。電波状態が悪い時、VHSに3倍録画したという態なので、きちんと見るのはまたあらためてとなってしまいますが、ご容赦ください。

 基地侵入の場面に入る前では、発掘したジンギスカンの仮面と剣を置くことになった家の2階で、錯綜した格子の影を見ることができました。ここは床に下からの階段に通じる孔があいており、1階からの光に、そのまわりの手すりや、いわゆる中国風と想定された窓の格子の影などが重なりあっていました。

 基地内では、メインの部屋には電極が据えられ、また誘拐した考古学者を拷問するため、室内に大きな鐘のある部屋が前もって登場していますが、面白くなるのはクライマックス近く、ネイランド・スミスが基地に侵入するあたりからです。
 基地への入口は酒場の奥にあって、その部屋の中央に等身大より少し大きい布袋像のようなものがあります。床は市松模様。彫像をのせた台座をスライドさせると、地下への入口が開く。下は洞窟のような態で、戸口があり、開けば下への階段が続く。その下もやはり洞窟状で、蛇がやたらにうねうねしています。


 一方血清による操作が解けたヒロインの恋人は、手術室として機能する部屋に連れこまれ、服を剥かれて手術台に寝かされます。手術室といっても、カメラが正面にとらえるのは、上辺からたれさがる明るい半円の下半と、その下の暗くなった壁で、かなり広そうな部屋です。いかにも近代的で、装飾は排されています。壁に沿って腕を組んだやはり半裸のごついお兄さんたちが間隔を置きつつ並んでいます。画面中央には恋人が寝かされる手術台が真横に配され、台座の部分は真っ白で、その上に少し広くなった黒っぽい薄めの台があります。手術台自体、円形の中央に位置している。左手の壁には入口が開いていますが、人の背丈より低い。

 この間フー・マンチューに捕らえられたネイランド・スミスは、石積み壁の部屋に連れこまれ、やはり寝台に縛りつけられます。またしても床が開けば、下には鰐がうじゃうじゃいるのでした。寝台は斜めになります。

 やはり捕らえられた発掘団の一人の行き先は、奥の壁の下半で明るい縦の柱と同じ幅の暗い柱が交替する部屋です。中央にはとげとげを生やした板が左右から迫ってくるという装置があり、その間に縛りつけられてしまうのでした。装置はやはり正面に対して真横に配されています。

 大きな広間にフー・マンチューに従う人々が集まってきます。かなり高い天井は少し斜めになっているようで、壁には扁平な角柱が並んでいます。

 脱出したネイランド・スミスが暗い廊下を奥から手前にやってきます。その先にはかなり高い吹き抜けなのでしょう、明るい壁に沿って暗い螺旋階段が左下から右上へのぼっていきます。きわめて単純化された幾何学的明暗が印象的でした。しかし一度しか映らないのは何とももったいない。階段をのぼった先は手術室に通じています。

 ネイランド・スミスに助けだされた婚約者は、次いでとげとげに刺されそうになっていた団員も解放し、ともに電極のある広間にたどりつきます。ここの広間の床を開けば、フー・マンチュー一味の集まった大広間の上に位置していました。生贄にされそうになったヒロインを救うべく、婚約者は廊下を急ぐ。先にネイランド・スミスが通った廊下とは別のもので、しかも2パターン登場します。まず、周囲は暗くなっていて、天井はドーム状になっているのでしょうか、左側は下にすぼまる段状のシルエットを描き、すぐ右に窓があります。右奥の方は明るく壁は斜面になっているようで、何本か柱状の影が落ちている。
 次に、上が狭い台形をなす廊下に移ります。やはり手前は暗く、突きあたりの壁には何やら装置のようなものの影が映っています。婚約者が手前から奥へ進むと、右の壁に影が落ちるのでした。この二つの廊下も、これだけしか登場しないのがもったいないと思わずにいられません。


 他方ネイランド・スミスと団員は、上の広間の電極を操作して、下の大広間に向けて放電します。ギザギザした雷状の怪光線と言った方がいいでしょう。かくしてフー・マンチューはじめ、けっこうな人数の一味を一網打尽というか、皆殺しと呼んだ方があたっていそうな大団円を迎えるのでした。
Cf.,  映画化されたフー・マンチューものの概要については;
石田一、『ムービー・モンスターズ 2 映像世界の怪物たち』、1985、pp.92-96
を参照


Jonathan Rigby, American Gothic: Sixty Years of Horror Cinema, 2007, pp.123-125
 
美術監督のセドリック・ギボンズについては→こちらを参照
 2014/12/17 以後、随時修正・追補
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