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レクイエム
Requiem pour un vampire *
    1971年、フランス 
 監督   ジャン・ロラン 
 撮影   ルナン・ポレ 
編集   ミシェル・パシアン 
    約1時間35分 ** 
画面比:横×縦    1.66:1
    カラー 

DVD
* [ IMDb ]では
Vierges et vampires で頁立てされています。
** [ IMDb ]による。手もとのソフトでは約1時間27分。本ソフトではオープニング・クレジットは仏語ですが、台詞は英語でした。[ IMDb ]では英語版は約1時間23分となっています。
………………………

 同年公開の『催淫吸血鬼』(1971)に続いて本サイトでは2本目となるジャン・ロランの作品です。やはり設定や筋のつながり具合は釈然としませんが、すでに前作で慣らした上で、前作同様主な舞台である古城に焦点を合わせれば充分楽しむことができるのではないでしょうか。前作のセモン城に劣らず、今回の城もかなり魅力的です。白っぽい石壁と空の青との対比も効いている。ついでに夜空は黒い。階段もいくつも出てきます。人物はあちこちうろうろしてくれます。
 カメラの360度パンこそ今回は見当たらないものの、マリオ・バーヴァ風の原色照明は健在でした。前作以上に台詞が切り詰められており、お城をよく見ろということなのだと勝手に了解しておきましょう。今回の音楽はピエール・ラフによるもので、前回のアカントゥスと関係があるのかどうかはわかりませんが、予算のせいもあるのか、大規模なオーケストラを使わず、室内楽ないしバンド編成で音を当てているのには好感が持てます。

 [ IMDb ]にも本作についての仏語版ウィキペディア該当頁(→こちら)にもロケ先は挙げられていませんが、なぜか英語版ウィキペディア該当頁(→そちら)に、クレヴカール村
Crêvecœur が記されています。ウィキペディアで検索してみるとクレヴカールとつく地名はいくつもあってどれだかわからないでいるのですが(→あちらを参照)、他方城はラ・ロシュ=ギュイヨン(ギヨン?ギュヨン?) La Roche-Guyon の公爵夫人から借りたとのことで、ラ・ロシュ=ギュイヨンの英語版該当頁(→ここ)を開いてみれば、そこに挿図として掲載されているラ・ロシュ=ギュイヨン城 Château de La Roche-Guyon(→公式サイト。また→"Château de la Roche Guyon" [ < montjoiy.net ]) 本体ではなく、その背後の丘の上に聳える主塔 le donjon がどうも、映画に出てくるものと同じようです(なおベルギーのナミュール州にあるクレヴカール城址 Château de Crèvecœur というのも写真で見るかぎり雰囲気が近い→仏語版ウィキペディア該当頁。また別に、フランスのノルマンディーはカルヴァドス県のクレヴカール=アン=オージュ Crèvecœur-en-Auge にもクレヴカール城というのがありました→公式サイト。仏語版ウィキペディア該当頁は→そこ)。
 ラ・ロシュ=ギュイヨンはパリの北西66km、イール=ド=フランスとノルマンディーの境にあたるイール=ド=フランス地域圏ヴァル=ドワーズ県にあります。ちなみにラ・ロシュ=ギュイヨン城の仏語版ウィキペディア該当頁(→あそこ)には、東京・上野の国立西洋美術館が所蔵するモネの《ラ・ロシュ=ギュイヨンの道
La route de La Roche-Guyon 》(1880)の図版が掲載されているのでした(国立西洋美術館公式サイトの「作品検索」でご確認ください。ついでにモネの家と庭園で知られるジヴェルニーはラ・ロシュ=ギュイヨンから西に8kmほどでしょうか)。さらにユベール・ロベール(すぐ下左の挿図ないし→こなたの拡大画像追補:→「怪奇城の肖像(前篇)」の頁でも触れました)や分析的キュビスム期に入ったブラック(《ラ・ロシュ=ギュイヨン城》、1909、プーシキン美術館、モスクワ、他数点;Catalogue of the exhibition Picasso and Braque. Pioneering Cubism, The Museum of Modern Art, New York, 1989, pp.132-133, 136-137 など参照;すぐ下右の挿図ないし→そなたの拡大画像)が描いた他、1819年にラマルティーヌ、1821年と1835年にヴィクトル・ユゴーが村に滞在したという(追補:→「怪奇城の高い所(後篇) - 塔など」の頁でも触れました)。
ユベール・ロベール《ラ・ロシュ=ギュイヨン城の眺め》1773-75頃
ユベール・ロベール
《ラ・ロシュ=ギュイヨン城の眺め》
1773-75頃

ブラック《ラ・ロシュ=ギュイヨン城》1909
ブラック(1882-1963)
《ラ・ロシュ=ギュイヨン城》
1909

* 画像をクリックすると、拡大画像とデータが表示されます。

追補: チャールズ・フィリップス、大橋竜太日本語版監修、井上廣美訳、『[ヴィジュアル版] 中世ヨーロッパ 城郭・築城歴史百科』(2022)の第1章中に「トンネル」の節があって、
「その一例が、フランス北部にあるラ・ロシュ・ギュイヨン城の隠し通路だ。この城はセーヌ川の渡河地点を管理していた城で、12世紀に断崖の上に造られたドンジョン(キープ)と13世紀に崖下のセーヌ河畔に建てられた城を結ぶトンネルが造られている」(p.51)
とのことです。→「怪奇城の隠し通路」の頁でも触れました。


 田舎道でのカー・チェイスから本篇は始まります。ピエロ装束の女性二人と男性一人が乗っていますが、男性は撃たれて死んでしまう。 
『レクイエム』 1971 約7分:木造廃墟 車と亡骸に火を放った後、刈取後らしき丘、水が緑の沼を経て2階建ての木造廃墟が登場する。ただしカメラは中に入らず、女性二人が入ってピエロ装束を脱いで出てきます。
一人は赤服の金髪(マリー=ピエール・カステル、『催淫吸血鬼』から続投。[ IMDb ]によると役名はマリーですが、少なくとも日本語字幕には出てきませんでした)、一人は栗毛のお下げです(ミレーユ・ダルジャン)。空は晴れていますが、雲もある。
 コンクリート製の給水塔です。中に入ってオ-トバイを引っ張りだし、ホットドッグ・カーでちょっかいを出した後、バイクを乗り捨て墓地に入る。英語版ウィキペディア該当頁によるとクレヴカールの村の外にある墓地とのことです。敷地は広く、お墓とお墓の間隔が広い。石製の十字架もありますが、金属製の背の高い十字架がぽつぽつ立っています。納骨堂が一つある。
 二人は柵つきの墓の上で抱きあって寝ようとしますが、墓掘り人夫が二人やって来たのであわてて隠れる。しかし栗毛娘はまだ埋められていない墓穴に転げ落ち、柩にしがみつく格好で気を失ないます。人夫たちは土をかけ始める。どう見ても気づくだろうという体勢になったりしますが、かまわず土をかけ続けます。金髪娘の押し殺した叫びで栗毛娘の名がミシェルであることがわかる。
 人夫たちが去った後、土の中から手が突きでます。吸血鬼ものやゾンビものでお馴染みの眺めです。雷鳴も鳴ります。栗毛娘は死と再生の通過儀礼を経たということでしょうか。
 栗毛娘が何とか引っ張りだされ、二人は丘から林に移動します。服だけピエロの時のものに戻っている。木の枝に蝙蝠がぶら下がっています。魅せられたように頬を寄せあう二人の顔がアップになります。ここから先は異界ということでしょうか。

 約20分、古城映画的山場です。
『レクイエム』 1971 約20分:城の外観 城の外観が映る。山裾でしょうか、右下がりの斜面のすぐ向こう、やはり右下がりの城壁が伸び、右下で少し曲がっているらしい。城壁に囲われて角張った棟が右で少し低く、湾曲した壁となる。壁は白っぽく、窓の少ない、あっても小さな城塞風です。ラ・ロシュ=ギュイヨン城の主塔であります(追補:→「怪奇城の高い所(後篇) - 塔など」の頁でも触れました)。
 下からの外観アップ、森から出てくる二人娘、また下からの別の外観アップと切り替わります。髑髏が置いてあり、その上に円塔が聳えている。
『レクイエム』 1971 約21分:城への入口、内側から  白っぽい石造りの短い通路のように見える、その奥に格子戸がはまっています。城壁にそれだけ厚みがあるということなのでしょう。天井はゆるいアーチをなしている。カメラが接近します。格子戸の向こうに二人娘がいます。
『レクイエム』 1971 約22分:城への入口、外側から  娘たち側の視点に切り替わると、短い隧道をくぐってすぐ先に、また城壁があって角をこちらに突きだしていました。手前の上には前にも映った円塔が来る。
『レクイエム』 1971 約23分:外壁沿いの階段  左から水平、右上がり、また水平となる粗石壁に沿って、幅の狭い左下がりの階段がおりています。階段の下の方で壁に方形の穴が穿たれていますが、小さなもののようです。
『レクイエム』 1971 約23分:内壁のアーチ口、奥に円塔への階段 二人娘が階段をくだり、画面に映った分よりさらに下へ向かうと、カメラは左から右へ、こちらにも城壁がありました。湾曲しているようです。半円アーチの開口部があり、その向こうに小さく、奥の方で城壁が伸び、そこへやや左上がりの階段がのぼっていく。階段の上には方形の開口部が見える。石の明灰色と真っ青な空の対比があざやかです。背を向けた2人娘が手前右から出てきてアーチに入っていきます。奥の階段をのぼり左に曲がる。
 城壁上の幅の狭い歩廊を左から右へ進みます。左側は向こうに壁があり、方形の窓が開いていますが、途中で低くなります。上辺はギザギザしている。向こうの方、かなり下に川が流れているのが見えます。セーヌ川でしょうか。ぐる~と回った右に下り階段があり、すぐ向かいに扉口が開いている。
『レクイエム』 1971 約24分:城壁上の歩廊と壁の中への入口(?) ぐる~と回った右に下り階段があり、すぐ向かいに扉口が開いている。
 屋内に入るとカメラは上向きで左から右下へ撫でます。円形をなすらしい石壁に付け柱があり、上で梁につながっているのでしょうか。壁付松明に火がともっています。 『レクイエム』 1971 約24分:屋内へのアーチ口
右手に尖頭アーチ、その少し奥にももう一つ、後者は窓でした。アーチの奥の右の壁に方形の扉口があり、そこから2人娘が出てきます。 『レクイエム』 1971 約24分:屋内へのアーチ口
カメラはそのまま右へ流れる。部屋の中央に長テーブルが置いてある。壁沿いに木の椅子。右奥にまた方形開口部があります。
 2人がそこに入ると、屋外でしょうか。やや俯瞰された左に半円アーチ開口部、そこから二人が出てくる。すぐ左に背の低い方形扉口があるようです。石積みがずいぶん粗い。
数段あがったすぐ右は尖頭アーチ口で、入ってまた数段のぼり、上で左へ折れます。 『レクイエム』 1971 約24分:屋内と屋内との連絡部(?)
すぐの突きあたりは石壁です。カメラはそのままやや右上へ、石壁の上・向こうに円塔の頂きが見える。 
 幅の狭い螺旋階段が上から見下ろされます。ここの石積みは整っている。二人娘がのぼってきます。中央は円柱になっています。 『レクイエム』 1971 約25分:螺旋階段、上から
 交叉リヴの天井が下から見上げられ、カメラが下向きになるとまた別の円形室でした。半円アーチの開口部の向こう、左に小開口部があり、そこから二人が1段おりて入ってきます。開口部の突きあたり・上方に窓があるようですが真っ赤に染まっている。二人は右へ、壁に凹みがあり毛皮を敷いたベッドが奥向きで納まっています。紫に染まっている。突きあたりの窓には真紅のカーテン。右手に壁龕があり、燭台を支える腕が壁から突きだしていました。髑髏も脇に置いてあります。二人は裸になって抱きあいますが、物音に飛び起きる。
 手前の方形開口部からから奥へ短い廊下が伸びる。奥には尖頭アーチ、その向こう右下から二人があがってきます。 『レクイエム』 1971 約27分:連絡開口部
平服に戻っている。二人とも拳銃を手にしています。突きあたりはやはりすぐ石壁です。少し進んでしかし方形開口部まで来ず、1段下りて左に開いた扉口に入る。
 幅の狭い螺旋階段が下から見上げられます。二人がおりてくる。中央が円柱なので前に出てきたのと同じ階段らしい。
 アーチに区切られた暗い空間です。下から見上げられる。手前に左上がりの階段があります。途中で上から鎖が垂らされている。二人は階段の上、奥右から入ってくる。 『レクイエム』 1971 約27分:地下室(?)
約28分、血まみれの髑髏がアップになります。金髪娘は悲鳴を上げ拳銃をぶっ放す。二人が去った後上からの視角になると、亡骸は吊り下げられているようです。
 粗石積みの城壁沿いに金髪娘を支えながら栗毛娘は右から左へ、少しのぼり階段がある。手前は草が生い茂っています。城壁の少し上で腕が突きだしていました。鎖が絡みついている。栗毛娘がぶっ放します。
 約29分、木の扉を開けて中へ入ってくる。オルガンが響いています。手前に長椅子が並び、その向こうは柵で区切られている。さらに向こうは祭壇で、何人か背を向けた姿がある。 『レクイエム』 1971 約28分:礼拝堂
手持ちカメラが前進する。前に回ると骸骨でした。背を向けていたマントのオルガン奏者が燭台を手にして振り向くと、男装の女吸血鬼です(ドミニク、『催淫吸血鬼』から続投)。牙がはみだしていますが、いささか左右に開きすぎ牙が長すぎるように見えます。
 湾曲階段が下から見上げられる。天井は円く、右の壁にはロープの手すりが張り渡されています。中央が厚い壁状で、前に出てきた螺旋階段とは別物のようです。二人が駈けおります。
上からの俯瞰に切り替わると、おりたすぐ右に扉がありました。 『レクイエム』 1971 約30分:螺旋階段、上から 下右に扉
 床近くからの視角です。方形開口部から入ってすぐ左に小開口部があり、手前の壁は湾曲している。前に出てきた円形室のどちらかでしょうか。背を向けて開口部の奥をのぞきこむ二人の手前右、床に揚げ蓋があります。下から手が出てくる。中は緑の光に満たされています。蓋をあげて男装牙女が現われます。蓋の下は円形の粗い壁で井戸のように見えます。二人は小開口部に飛びこみます。

 屋外です。空は薄暗くなっている。左の湾曲する壁に沿って右に階段がおりているさまが下から見上げられます。男装牙女が左から出てきて階段をゆっくりおりる。
 上から二人が見下ろされます。階段をおりると、少しあけて左にまた城壁のあることがわかります。
『レクイエム』 1971 約31分:円塔と出入口・階段 左に内壁  やや上からの引きに切り替われば、円塔を正面に、右上の開口部から左下へ階段がくだり、そこを男装牙女がおりていく。円塔は下方で少し末広がりになっている。階段の下の方には二人娘がいます。二人は拳銃をぶっ放しますが、効いた様子はない。階段の地面近くは崩れているのか、少し飛び降りました。円塔には薄明かりがあたり、左の城壁は陰になっている。二つの間には少し空間があります。城壁の下方に扉口があるようで光が洩れている。
『レクイエム』 1971 約32分:内壁のアーチ口 右に円塔の基壇  2人はそこに入ります。半円アーチでした。すぐ1段下りる。
 粗石壁沿いの右下がり階段です。おりたすぐ奥が少し凹んでいることがわかります。すぐ向かいの扉口に入る。前に出てきたところでした。

 約32分、扉口の向こうは赤く染まった湾曲階段です。二人はそこから飛びだして右へ、長テーブルの円形室その1です。向かいの扉口から男が三人出てきます。首回りが白い毛皮になった明褐色のマントをつけている。三人男に捕まります。内側が紅の黒マントを着た女(ルイーズ・ドゥール)が現われて鞭を振るう。男装牙女が二人娘の首筋に咬みつこうとしますが、突き飛ばして扉口から逃げだす。

 約34分、格子戸まで来ました。ここが城の入口なのでしょう。向こうから手前へ、五人の追っ手も続きます。
 森を経て丘へ、向こうから手前に来るさまが引きの固定でしばらくの間続きます。丘は緑、向こうの山は青い。手前には白っぽいすすきが生えています。追っ手五人は横に間を大きくあけて進んでくる。常道ですがこうでなくてはいけません。


 約35分、夜の墓地です。真っ黒な空に満月が浮かぶ。単に暗いのではなく、黒っぽいのはなかなか綺麗です。追っ手に追っかけ回されていると、カメラは左から右へ流れます。遠くに納骨堂が見える。扉の奥は赤茶に染まっています。黒マントの男が出てきます(ミシェル・ドゥルサル Michel Delesalle、『催淫吸血鬼』の美術監督 Michel Delesalles とほぼ同名ですが最後の s が落ちている)。牙が生えている。マントの内側は緋色です。緑の照明が当たっています。
『レクイエム』 1971 約38分:墓地の納骨堂 催眠状態で二人娘は納骨堂に入っていく。一行も続きます。
 オジーヴと角柱のある地下室が下から見上げられる。奥から手前へ階段がおりてくる。赤みを帯びた光に染められ、オルガンの曲が鳴ります。二人娘と一行がおりてきます。 『レクイエム』 1971 約38分:納骨堂の地下への階段
 下で右奥へ、柱ごとに女性が計三人、鎖で縛められている。男装牙女がその内一人の胸をはだけ、咬みつきます。三人男の内二人が残りの女性たちに挑みかかり、胸をはだける。内一組の背後に右上がりの階段がありました。オルガンにドラムスが加わります。鋳鉄にぶら下がる蝙蝠がアップになる。
 約43分、鞭女が催眠を解き、二人娘に質問します。墓掘り人夫以来、約20数分ぶりの台詞でした。背後に髑髏が見える。黒マント牙男が二人娘に咬みつきます。
 鎖でつながれた女二人と三人男の内二人が性交します。いやに長く感じられます。ピアノとドラムスに替わっている。女性の股間に蝙蝠が貼りつく。
 柩の黒マント牙男に緑の光があたっています。女の手が伸びてきて柩の蓋を閉じる。


 約49分、翌日です。円形室その2の壁龕寝台に二人娘が寝ていました。
『レクイエム』 1971 約51分:内壁のアーチ口 向こうに円塔と階段  画面左に円塔、その右の壁に沿って階段がおりている。前にも出てきたところです。右手前に陰になった城壁があり、カメラはその手前から向こうを覗きこんでいます。
二人娘が階段をおりて手前の城壁の開口部に入る。カメラが後退する。右から左へ進みます。カメラもそれを追う。
『レクイエム』 1971 約51分:外壁と壁沿いの階段、下から  そのままカメラが右から左へ振られると、画面左に水平から斜面となる城壁です。その右側にのぼり階段、さらに右は斜面になっている。ここも前に出てきました。ただしあがった先で城壁がゆるく折れ、すぐ右にゆるいアーチ口のあることがわかります。その上部の城壁は右下がりになっている。下がりきった右に、陰になった別の壁が聳えています。空がよく晴れています。
 二人は背を向けて階段をのぼりアーチ口に入る。出てくると格子戸の上は三角破風でした。その上に円塔が聳える。二人は走って森に入っていきますが、城門前に戻ってしまう。今度は城門に向かって左、城壁沿いに進みます。城門の右から戻ってきます。また別の方へ、同じでした。

 約51分、円塔右の階段をあがったところに二人は坐りこむ。仰角です。右少し奥で低い壁が弧を描くように伸びています。方形の窓が三つ開いている。階段上から右下の壁へも下り階段があるようです。カメラが二人に接近します。もう遅いとのことです。隠れようと階段をおりる。
 赤い光の地下室です。 『レクイエム』 1971 約53分:納骨堂の地下室
柩を開くと緑に浸された黒マント牙男が横たわっている。杭を打とうとすると男装牙女に捕まります。男装牙女が始めて台詞を喋る。黒マント牙男も同様です。鞭女の名がルイーズであるとわかります。
 なおここは前に血まみれ髑髏が出てきた城の地下なのか、墓地にある納骨堂の地下なのか。二つは別物なのか同じなのかつながっているのか、最後までよくわかりませんでした。
『レクイエム』 1971 約55分:城壁上の歩廊 左手前に円塔への階段  約53分、昼間です。空は水色、画面左手前に上からの階段、右奥には窓付き壁とその下の歩廊がめぐっています。歩廊の下は地面まで2~3mほどはあるでしょうか。窓付き壁は途中で右に下がり、低い塀となる。歩廊には二人娘と鞭女がいます。
男装牙女の名がエリカとわかります。三人がかなり上から見下ろされる。

 墓地に金髪娘がいます。風が強い。
 右に城壁のある斜面をカーディガン男が自転車を押して登ってきます。その先、今度は城壁がくだりになったところで低い粗石積みの壁の上に栗毛娘が腰かけている。左すぐ背後には整った石壁が上へ、また低い壁は少し右で折り返しているようです。右の遙か下に川が見えます。船が通る。栗毛娘はカーディガン男を誘惑します。
 墓地にやってきた赤セーター男に金髪娘がちょっかいをかける。

 約58分、古城映画的山場その2です。
『レクイエム』 1971 約58分:外壁と内壁、かなり高い位置から 髑髏あり 城壁沿いの栗毛娘とカーディガン男がかなり高い位置から見下ろされます。栗毛娘が乗っかる低い壁は左下方にくだり、いったんほぼ直角に曲がる。少し先でまたほぼ直角で右上に戻り、しかしその先で斜めに上昇しているようです。何度かゆるく折れます。塀に囲われた部分には城門から入ってすぐの壁沿い下り階段があるのでしょう。右手前では壁の角が上へ立ちあがり、塀との境近くに髑髏が置いてありました。城壁の外は白っぽい細道をはさんで森となる。
 カーディガン男は格子戸に回ります。裸の栗毛娘が塀を越えて下り階段に降りたっていました。追いかけっこになります。オーボエの軽快な曲が流れる。引きのカメラがそのまま右下へ振られ、階段をおりた男女が右の内壁のアーチ開口部に入っていきます。
『レクイエム』 1971 約59分:内壁、壁内への開口部あり 右に円塔と階段  切り替わるとアーチを入った内側、右に下膨らみの円塔とその壁に沿った階段があるわけですが、ここではアーチのある壁の左側で、壁の内側に開口部のあることがわかります。その左手前では壁が二段になっており、下の段が狭い歩廊をなしている。開口部の手前では歩廊は右下がりになっています。階段か斜面なのでしょう。以前二人娘が通ったのはここなのでしょうか。また開口部の中がどうなっているのか、とても気になるところです。
『レクイエム』 1971 約59分:円塔への入口 左に内壁 栗毛娘は円塔の階段によじ登る。上のアーチ口から中に入ります。入ってすぐのところも1段ほどのぼりらしい。
 格子戸の向こうに金髪娘と赤セーター男がやって来ます。金髪娘は情にほだされたのか、赤セーター男を城に入れまいとし、抱いてと頼みます。
 円塔の上の方にある半円アーチ窓から栗毛娘とカーディガン男が少しのりだすさまが下から見上げられる。屋内に切り替わると円形室その1でした。右の扉口から左の凹部扉口へ、出ると短い廊下です。左と正面に方形開口部がある。正面の方形開口部のすぐ奥はアーチのようで、少し置いて壁となる。カーディガン男は左から出てきて奥へ、笑い声に左上を見上げます。
 円塔の内壁でしょうか、かなり下から見上げられます。壁が高く伸びあがり、天井は手前半分だけで、向こう半分は空に抜けている。上辺沿いに金属の手すりが設けられ、栗毛娘もいます。内壁は左右に大きく刳られているらしい。 『レクイエム』 1971 約1時間0分:円塔内(?) 下から
 城壁の外側で裸で抱きあう金髪娘と赤セーター男がかなり上から見下ろされます。先の栗毛娘の際と同じ位置から撮影しているのでしょうか。カメラが降下します。
 円塔の内壁が今度はかなり上から見下ろされます。向かいの内壁には背の高い半円アーチ開口部二つにはさまれて背の低い半円アーチ開口部がある。そこからカーディガン男が顔を出します。カメラはゆっくり上向きになる。背の低い半円アーチ開口部の真上、屋上に下からの階段が開いており、そこからまたカーディガン男が出てきます。階段出口のすぐ向こうにも5段ほど右上がりの階段があり、屋上には段差があるようです。向こう下に川が流れています。カーディガン男が奥の階段をのぼって右へ進むと、カメラもそれを追う。さらに右で再び上への段差があります。先の低い塀のところに栗毛娘がいました。塀の上辺はギザギザです。ここでカメラがようやく水平になる(追補:→「怪奇城の高い所(後篇) - 塔など」の頁でも触れました)。 『レクイエム』 1971 約1時間2分:円塔(?)の屋上 上から

『レクイエム』 1971 約1時間2分:円塔内(?)の開口部と屋上への階段 上から

『レクイエム』 1971 約1時間2分:円塔内(?)の開口部 上から

『レクイエム』 1971 約1時間1分:円塔内(?) 上から 
 約1時間2分、いやに長く感じられる破瓜した金髪娘のアップに続いて、栗毛娘がカーディガン男を銃で殴り気絶させる。
『レクイエム』 1971 約1時間3分:円塔への階段と内壁、上から 金髪娘は日が暮れる、隠れなきゃと赤セーター男を連れて円塔脇階段をのぼり、屋内に入ります。
 二人と入れ違いにカーディガン男がふらつきながら出てくる。階段をおりると先の城壁開口部に男装牙女がシルエットで立っていました。マントが風になびきます。男装に替わって金色のドレスを着ている。マントをひろげて襲いかかります。俯瞰に続いて開口部外側からの地面近くの高さでのショットに替わると、向こう右から栗毛娘が出てきます。カーディガン男の血を吸う。見上げる栗毛娘の顔は複雑な表情をたたえているように見えます。

 約1時間6分、壁龕寝台のある円形室その2です。金髪娘が左から右へ、先に栗毛娘がいました。壁に落ちる二人の影は薄緑です。鞭女がやって来て儀式の時間-真夜中だという。

 夜の屋外です。相変わらず空が黒い。垂れ枝の木の下にピアノが置かれ、演奏する鞭女の左右に二人娘が坐っています。まわりに三人男が蠟燭を手に立っている。ピアノの奥には三角破風の白い建物が見えます。カメラは左から右へ、白い建物の尖頭アーチ扉口から金ドレス牙女が出てきて手前を右へ進む。奥に納骨堂が見えます。扉の内側は赤茶です。いったん入り、出てきて手前を左へ。まず栗毛娘の番です。彼女が納骨堂から出てくると、金髪娘と入れ替わる。栗毛娘は右から左へ、ピアノのもとへ戻ります。金髪娘は「フレデリック」と叫びながら納骨堂から飛びだしてくる。赤セーター男の名前のようです。
 約1時間13分、格子戸が城内上から見下ろされます。
『レクイエム』 1971 約1時間13分:外壁沿いの階段 金髪娘を追って男二人は左へ、城壁沿いの階段をおりていく。
『レクイエム』 1971 約1時間14分:墓地の納骨堂  納骨堂前でしょうか、金髪娘と赤セーター男がやって来ます。直前の格子戸付近の場面では薄暗い光でしたが、墓地付近は黒っぽい。
赤セーター男が中に入ると、黒マント牙男が脇から出てきて扉を閉じる。金髪娘と話します。吸血鬼といえども長い年月の末に力が衰えたという。
『レクイエム』 1971 約1時間15分:夜明け前の墓地  濃い青の空が赤みを帯びた夜明けの空に切り替わる。
 約1時間17分、円形室その1です。入ってきた金髪娘に栗毛娘が拳銃を突きつける。お下げを解いています。
 約1時間18分、金髪娘が服を剥がれ鎖で吊りさげられている。青い光に浸されています。地下室らしい。すぐ右に奥へののぼり階段があります。栗毛娘は涙をだらだら流しながら金髪娘を鞭打つ。
『レクイエム』 1971 約1時間19分:内壁と円塔、下から  昼間の内壁アーチ口からカメラは右上へ、真上を見上げながら回りこんで円塔をとらえます。悲鳴が響く。
 地下室の壁に鞭打たれる金髪娘の影が揺れます。涙まみれの栗毛娘が金髪娘の唇にキスする。
 引きで昼間の城外観をはさんで、地下室に金ドレス牙女が入ってくる。金髪娘の位置がやや高くなっています。すぐ背後に太い円柱があり、左で壁につながって伸びている。金ドレス牙女は金髪娘の目に針を刺そうとします。栗毛娘が突き飛ばし、鎖を解きます。鞭女が入ってきて囮にするという。
『レクイエム』 1971 約1時間21分:外壁と内壁、下に円塔、かなり高い位置から  約1時間20分、ほぼ真上からの俯瞰です。前の栗毛娘とカーディガン男の場面で出てきたショットより少し近く、右に寄っている。右から左へ外壁、その下に壁沿いの下り階段、画面の左外で折り返してきた内壁が上から重なっています。いずれも左方で下へ少し折れている。内壁の下側、折れた左にアーチ口が見えます。また右側では壁が大きく刳られているらしい。壁の中への入口もあるのでしょうか。内壁の下の狭い通路をはさんで一番下に円塔の壁が来る。
 金髪娘を支えながら栗毛娘は右下、内壁と円塔の間を内壁に沿いながら出てきます。栗毛娘が金髪娘を支えながら進むのはこれで2度目です。内壁の刳りの真下は、道に段差があるようです。アーチ口に入り、同じショットのまま、今度は壁沿い階段をのぼって右へ進む。

 約1時間21分、夜の墓地です。やはり画面が黒い。しばらく右から左へ進むと何やら赤い光が見えてきます。納骨堂でした。カメラは扉の柵越しに二人を捉えます。栗毛娘は銃で撃って扉を開き、追っ手の三人男に撃ちまくる。
 金髪娘が階段をおりると、右奥の柩のそばで赤セーター男は放心状態になって突っ立っていました。揺さぶると気がつく。入口まで戻って赤セーター男も撃ちますが、金髪娘に瞞されたと思いこんで一人で行ってしまいます。
 黒マント牙男が地下室の階段をのぼるさまが上から見下ろされる。
 向こうから金ドレス牙女と鞭女が進んできます。三人男はやられたようです。彼らは人間だったのか化生だったのか。
『レクイエム』 1971 約1時間24分:墓地の納骨堂  さすがに弾が無くなったのか - 冒頭からここまでどれだけ撃ったのか、そもそもどこに予備の弾を持っていたのかという点は問うべきではないのでしょう -、慌てている二人の背後から黒マント牙男が現われ、二人の肩を抱く。
もう止めようと言って金ドレス牙女とともに納骨堂の中へ戻っていく。鞭女は扉を封印した後、扉前ののぼり段に坐りこみます。二人娘は墓地から逃げだしていく。オーボエとフルート、オルガンの曲が流れる中、前に鞭女が坐る納骨堂を引きでとらえて終幕となるのでした。
 
Cf.,

平和孝、「吸血鬼映画全作品フィルモグラフィ」、『季刊 映画宝庫』、1980.1:「特集 ドラキュラ雑学写真事典」、p.166

ジョン・L・フリン、『シネマティック・ヴァンパイア 吸血鬼映画B級大全』、1995、p.147/no.100

Cathal Tohill & Pete Tombs, Immoral Tales. European Sex and Horror Movies 1956-1984, 1995, pp.146-149

Danny Shipka, Perverse Titillation. The Exploitation Cinema of Italy, Spain and France, 1960-1980, 2011, pp.279-281, 291

Jonathan Rigby, Euro Gothic: Classics of Continental Horror Cinema, 2016, pp.228-229

 ジャン・ロランについて→こちらも参照
 2016/07/09 以後、随時修正・追補
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