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わが青春のマリアンヌ
Marianne de ma jeunesse
    1955年、フランス・西ドイツ 
 監督   ジュリアン・デュヴィヴィエ 
撮影   レオンス=アンリ・ビュレル 
編集   マルト・ポンサン、リリアン・サン 
 プロダクション・デザイン   ジャン・ドーボンヌ、ヴィリー・シャッツ 
    約1時間41分 * 
画面比:横×縦    1.37:1 
    モノクロ 

DVD
* [ IMDb ]では約1時間45分、西ドイツ版は約1時間48分となっています。

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 本作で超自然現象は起こったのでしょうか? 主人公は動物たちと交感し、その高ぶりが嵐と共鳴する。ヒロインの一人は悪い予感を覚えます。タイトル・ロールは幽霊とも主人公の見た幻ともとれなくもない。しかも湖をはさんで城ないし館が二つ登場します。森もあります。湖が高くから見下ろされたりもする。
 なお本作にはフランス語版とドイツ語版があり、主人公とマンフレートを演じるのがフランス語版ではピエール・ヴァネクとジル・ヴィダル、ドイツ語版ではホルスト・ブッフホルツ(『荒野の七人』(1960)でお馴染みでした)とウード・フィオッフに替わっているとのこと。手もとのソフトはフランス語版でした。
 また手もとのソフトの日本語字幕でも下掲の原作邦訳でも、主人公の名はなぜか「ヴィンセント」と表記されていました。フランス語読みならこれはソフトでも聞けるとおり「ヴァンサン」(二つの「アン」は別の音ですが)、ドイツ語読みだと「フィンツェント」でしょうか、よくわかりません。アルゼンチンにいたことからスペイン語の名前だとすると、最初の'n'が抜けて最後に'e'がつき、「ヴ」の音が無いので「ビセンテ」となる。ただ出身はフランスだと篇中で述べられていたので、ここでは仮に「ヴァンサン」としておきましょう。


 これで何度目になるかももはやわからない、例によって例のごとき勘違いを一つ。原作はペーター・(デ・)メンデルスゾーンの長篇小説ですが、大昔に映画版をTVで見て後、いつの頃からかアラン=フルニエの『モーヌの大将』ないし『グラン・モーヌ』が原作だと永らく思いこんでいました。この機会にそれぞれの邦訳を読んでみれば、迷いこんだ館で主人公の少年が運命の女性と出会ってしまうという点で、双方は共通している。おどらくどこかの時点で『モーヌの大将』の粗筋を見かけ、これが本映画の元だと決めつけてしまったのではないかと思われます。こんな勘違いは一体どれだけあるのでしょうか、空恐ろしくなるばかりなのでした。
 ところでメンデルスゾーンの原作と映画版はといえば、邦訳と日本語字幕で見たかぎりでしかありませんが、大筋は一致しつつも、微妙にずれがあるような気がしました。原作は主として主人公の視点に寄り添っているのに対し、映画版はマンフレートの回想として綴られます。そのため映画版では主人公はマンフレートの憧憬の対象ですが、原作ではこの関係はむしろ逆でした。映画版の主人公は超自然的なカリスマの持ち主ですが、原作の主人公は内省的な少年です。映画版でのマンフレートと主人公の関係は、『グラン・モーヌ』での語り手と主人公の関係に呼応していると見なせなくもないかもしれません。また原作にももう一人のヒロインにあたる人物は登場しますが、主人公とからむことはなく、従って映画版での末路を迎えもしない。この件も含めて、物語の空間自体が超自然的に帯電しているかのごとき雰囲気は、映画版の方が強い。ラストも原作と映画版ではニュアンスが異なっていました。


  [ IMDb ]にはバイエルンのスタジオ以外に本作のロケ地として、オーストリアの国境近くのドイツ・バイエルン州、アルプ湖とシュヴァン湖にほど近いホーエンシュヴァンガウ城 Hohenschwangau, Schwangau, Bavaria (→日本語版ウィキペディア該当頁)とオーストリアはザルツブルク市の東、フシュル湖に面したフシュル城(シュロッス・フシュル) Schloss Fuschl, Fuschl, Salzburg, Austria (→ドイツ語版ウィキペディア該当頁)が挙げられていました。Google で検索した画像などからすると、前者の外観が主人公たちの寄宿学校「ハイリゲンシュタット城」、後者は対岸の「幽霊屋敷」に用いられたようです。ただ現在ホテルになっているという実際のフシュル城では、映画の中では孤立しているように見える棟に別の棟が接続しています。

 タイトル・バックは森です。右上から光が射しています。いったん真っ暗になり、歌が聞こえてくる。また森です。カメラは右から左へ動いていく。手前の幹はシルエットと化している。鹿もいます。男声のナレーションがかぶさります。
 オーヴァラップしてカメラが右から左へ動き、そのまま下から上へ、また下向きになると、枝の間に城が見えてくる。山上でしょうか、角に多角塔を配し、その間を高い城壁が塞いでいる。横にひろがるのではなく垂直性が強調された一塊をなしています。塔も城壁も鋸歯胸壁をいただいている。右下に道か何かがあるようです。手前には霧が這っています。時に雲間から光が差しこむ。そのままカメラは右から左へ、やがて木々の向こうに隠れてしまうのでした。
 と思ったらそのまま、木立の次にかなり下からの俯瞰で城が再登場します。左右の角を塔がはさむ高い城壁、ただし2つの多角塔の下方の壁は円状に湾曲しています。間の城壁も湾曲しているように見える。右側の塔からさらに右へ、やや低い位置で欄干をいただく壁が伸び、右端には煙突らしきものがある。まだ右に少し続き、今度は尖り屋根の塔でおさえられます。カメラは下向きに移っていく。城壁の下の方から左下がりの階段がおりていました。その手前に何頭か鹿が屯しています。
 階段の上でしょうか、尖頭アーチの下に扉があります。尖頭アーチの外縁は曲線装飾で飾られている。扉から子供たちが出てきます。ナレーターはその最年長だという。
 切り替わるとまた別の角度からの城の外観です。下が円形の多角塔にはさまれた高い城壁、ただし今度はその中央からも六角形の半分の塔が迫りだしていました。城の左下には噴水があり、その右手は庭園になっているようです。右端で右下がりに鋸歯胸壁が並んでいます。右に進んだ先に塀がある。
 今度は湖の対岸にあるという廃屋が登場します。やはり丘の上でしょうか、こちらは単純な方形の塊に見えます。3階以上はありそうで、やはり縦長に映る。屋根は三角屋根で、煙突らしきものが1本立っている。右側の角上半には小塔がついています。やはり霧が這っている。

 ナレーターは18歳、名はマンフレート、シェパードを二匹連れ、コートを着ている。
 階段下に車が止まっていました。窓から差し伸べられた女性の手にキスしているのが主人公ヴァンサンです。鹿がなつきます。女性は母親とのことです。
 用務員の老人(カール・シモン)は日本語字幕では「ゴッドファーザー」、フランス語では"dieu-père"、[ IMDb ]によるとドイツ語は"Gottvater"、年少組の「小」フェリックス(ミヒャエル・アンデ)もいました。
 城内に入れば広間が映ります。この引きの眺めがなかなか涎を誘います。奥の方を角にそこから左右手前に2階と3階の回廊が伸びている。手前は広い吹抜です。回廊にはそれぞれ欄干があり、随所で太い柱が区切っています。2階回廊の下、3階回廊の下はいずれもゆるいアーチをなしている。奥の角、左右から中央へ階段がのぼって踊り場で合流、そこから2階まで奥へあがっていく。階段の上、2階奥はアーチ窓が3つ並んでいました。階段下の手前には長テーブルがあるらしい。カメラは右から左へ流れます。すると長テーブルと階段の間に円形テーブルがあり、大きな白い地球儀を載せていることがわかります。
 マンフレートとヴァンサンが右に進むと、柱と柱の間には大窓がありました。手前にはピアノが置いてある。また階段の左右、アーチの奥にも別のアーチが覗いています。

 「盗賊団」と名乗る悪ガキたちが舟で湖を渡り、対岸に着きます。岸辺近い水面には白鳥がいる。鴉を始めとした鳥の鳴き声がうるさいほどでした。
 岸辺から斜面になっており、続いて館はかなり下から見上げられます。前の引きでの眺めの時より壁は白く見え、他方一部蔦に覆われている。その下を小さく盗賊団が左から右へ進みます。

 ヴァンサンと小フェリックスが屋外の斜面にいると、用務員が対岸の「幽霊屋敷」の噂をする。10年ほど前、「男爵」が車で来た。窓もカーテンも閉めきりだったという。

 ヴァンサンと盗賊団の一人ジャン(ヤン)(クロード・アラゴン)の部屋には陶製ストーヴがありました。その右、奥まって窓となります。その上は尖頭アーチで、これが2つ並んでいる。さらに右で1段下への段差があります。こちらには方形の窓があり、湖に面している。
 動物は霊に敏感だとヴァンサンはいう。自分もそうだ。フランス生まれだがアルゼンチンのロサリオに移った。


 城の屋上の一角です。左から右下がりの屋根、途中に天窓がある。屋根の斜面は手前にもあります。その奥は少し平らな部分があり、通路になっているようです。右手には煙突らしきものがいくつか立っています。月夜、ここに盗賊団が集合します。奥の鋸歯胸壁と胸壁の間には上下に2本、横棒が渡してある。平らな部分は板張りでした。頭目のアレクシス(ジェラール・ファレク)は天窓から出てきて、またそこに戻る。

 食堂です。天井はゆるい幅広尖頭-アーチの梁が奥まで連なっている。アーチはかなり下までおり、その下で垂直の柱となっているようです。部屋全体は奥に深い長方形で、その形に合わせて中央に長テーブルが配されている。突きあたりは壁になりますが、その向かい、手前にのぼり階段があり、そこを生徒たちがのぼってきます。
 カメラが少し右に振られると、階段の右、少し奥の角柱と右手の壁の間で狭い平らな部分がある。そこで待っていた盗賊団の一人にヴァンサンは呼び出し状を渡されます。アレクシスがセザールを殺したと小フェリックスはいう。

 かなり高いところなのでしょう、向こうの山腹にある城が見下ろされるほどの位置です。城のある山の左は湖です。ヴァンサンの腕に鳥が止まります。そのさまに盗賊団の面々は感嘆する。
 すぐ左にテントがありました。盗賊団のアジトです。セザールは猫でした。動物虐待にヴァンサンは怒りだしますが、幽霊屋敷には行きたい。籠に入れた二羽の鳩が必要だという。


 食堂が前回とは逆の向きで登場します。今度は奥に階段がある。10数段で踊り場になり、突きあたりには台に載せた大壺が見える。そこから左右に分かれているのでしょう。
 階段を下りたすぐ先が教授(フリートリッヒ・ドミン)の席です。親戚の娘であるリーゼ(イザベル・ピア)を紹介する。
 尖頭アーチの梁が溝を穿たれた太い木でできていることがわかります。


 夜、まわりも暗い尖頭アーチ型の窓の向こうに満月が浮かんでいる。カメラは後退、右下へ流れます。3階ほどの高さから広間が見下ろされます。画面の手前下に1階・階段の左側の登り口がのぞいている。
 リーゼがピアノを弾き、管楽器を用務員や生徒たちが奏でます。他の生徒たちは椅子に坐っています。ヴァンサンは表情が硬い。
 今度はヴァンサンがギターの弾き語りを奏でます。スペイン語の歌のようです。カメラは左上へ、また満月の窓です。次いで森を右から左へ流れる。鹿たちも城の階段下にいます。その内一頭が窓から覗きこむ。他方リーゼはこわばっている。ヴァンサンを囲んだ祝祭と化します。

 約29分、幽霊屋敷への出発です。一方ヴァンサンは葉叢に囲まれ、背後の中腹に城が見えるところで手紙を受け取る。母親からのもので、長い旅に出るという。大尉が会いに行くとのことです。立腹して幽霊屋敷行に向かうヴァンサンをリーゼは呼びとめ、行かないで、悪いことが起こるといいますが、聞く耳持ちません。
 舟で湖を越えます。よく晴れている。幽霊だか何かがいれば鳩が羽ばたき始めるとヴァンサンはいう。
 対岸に着いた時はやや暗くなっていました。やはり白鳥がおり、鳥の鳴き声がかまびすしい。盗賊団は館の土台付近の壁に沿って手前へ進みます。扉があり、そこに入る。盗賊団が「地下墓地」と呼んでいたところなのでしょう。
 しかしヴァンサンは舟に残され、時間がずいぶん経つ。待ちくたびれて斜面を登っていく。
 低い石の欄干に囲われたところに出ます。すぐ下には尖り屋根の小屋らしきものが見える。欄干の曲がり角には壺が載せられています。すぐ右手に鎧窓があり、手前へ1段上がれば扉でした。
 盗賊団は2頭のドーベルマンに追われて撤収します。後ろから頑丈そうな男が現われる。
 それをヴァンサンが上から見下ろします。切り替わると欄干のところに立つヴァンサンが下から見上げられる。すぐ背後に館がそびえ、2階の上に軒があること、また2階の下が少し内側に刳られて1階の壁となることがわかります。
 ドーベルマンが駆けあがってきますが、ヴァンサンになつきます。


 食堂です。盗賊団が遅れて入ってきますが、ヴァンサンの姿はない。
 2階か3階の回廊です。生徒たちが各自の部屋に向かう。欄干を貫く柱の4隅が細い捻り柱になっていることがわかります。また部屋側の壁に欄干の影が落ちる。空中回廊もあるようです。素敵だ。
 カメラが前進すると、廊下突きあたりの壁からリーゼがのぞいています。失神する。


 約36分、夜、明け方近いという。嵐に見舞われる城の外観が映されます。下からの視角に変わり、稲妻がひらめく。ここでの城は模型のように見えました。
 上で左に傾斜する温室かと見紛うような広い窓、それを突き破って木の枝が侵入してくる。リーゼの部屋でした。
 回廊です。カーテンが風に激しくたなびきます。
 またリーゼの部屋に戻る。壁に枝の影が落ちています。失神から目覚めたリーゼは室外に出る。
 灯りを落とされた広間が、2階回廊からでしょうか、見下ろされます。ヴァンサンが戻ってきていました。2階回廊のマンフレート、次いでリーゼが下から見上げられます。風で紙片が舞っている。3階回廊に教授が出てくるのが、やはり下から見上げられます。蔵書が吹き飛ばされた、手伝ってくれと叫ぶ。気持ちはすごくよくわかります。俯瞰に戻って、ヴァンサンが階段を駆けあがります。マンフレートの元へやって来る。高揚しています。マンフレートはヴァンサンを置いて3階への急な階段を駆けあがります。仰角です。
 ヴァンサンがいるのは空中回廊のようです。リーゼは彼の手を引き自室へ連れて行く。高揚のままにヴァンサンは窓を突き破った枝を押し返そうとします。手に傷を負う。壁に落ちた影が、リーゼが寝着を脱ぎ落としたことを示します。しかしヴァンサンはかまわず自室に戻る。


 約39分、翌朝です。斜面にヴァンサンと盗賊団がいます。どうやって帰ったと問う盗賊団に、嵐が送ってくれたとヴァンサンは答える。ヴァンサンが持っていたハンカチを盗賊団が奪おうとします。鹿が見ている。ヴァンサンは鹿を追っかけます。カメラは左から右へ流れる。鹿を捕まえたヴァンサンは、厩舎らしきところへ抱えた鹿を運ぶ。まわりにも小屋類が並んでいます。リーゼが見ている。

 左に湖の岸、背後に城が見えるところにヴァンサンとマンフレートがいます。約44分、回想が始まる。
 もじゃ眉男(アディ・バーバー)に拳銃を突きつけられ、ヴァンサンは2段ほど上がって鎧戸を開け、内扉も開いて館内に入りました。
 天井の低い廊下でしょうか、奥から入ってきます。いやに暗く見えるのは、照明のせいだけでなく、壁や天井も暗く塗られているからではないかと思われます。なお廊下の入口と反対側、奥の方はついに登場しませんでした。
 廊下は左右に格子で区切られたガラス張りの仕切りがあり、向かって右の仕切り壁にあった扉から中に入る。ここも暗いが、装飾は何かと豊かです。右奥にゆるく斜めに倒された画架か何かに、等身大の女性肖像画が飾ってありました。写真風のあまり芳しくない出来ですが、額はやたら装飾的でした。顔の部分に光が当たる。
 振りかえると、相似た額の中に肖像画のモデルの実物(マリアンネ・ホルト)がいました。4本燭台を肩の高さで掲げています。それ以外の額の内側は真っ暗です。約45分のことでした。
 娘は右に進み、そこにあったガラス戸の向こうから手前に出てきます。反対側のガラス戸のところにもじゃ眉男が現われる。廊下からのガラス戸が磨りガラスだったことがわかります。
 娘が方形の鏡でしょうか、その枠内に配されます。ヴァンサンが寄宿学校に来て5ヶ月になるとのことです。なぜ真っ暗なのかという問いに、「彼」は病気だ、光も音も塞ぐと娘は答えます。「彼」はどこにでも現われる、銀のステッキで合図する。
 娘はヴァンサンを伴なって、最初のからの額の今度は左にあったガラス戸の向こうに行き、左へ進みます。切り替わるとやはり暗い部屋です。奥に螺旋階段があります。そこをのぼる。
 上は吹抜に面した部屋でした。右にベッド、奥に扉があります。娘は扉から出ていく。扉の向こうはすぐ壁で、そこに鏡がかけてあるのが、娘の像でちらりと見えます。部屋の上方には半円アーチがあり、奥まって窓が設けられている。
 ヴァンサンは眠りこんでしまいますが、戻ってきた娘は夜明けに嵐が来るという。螺旋階段を下ります。奥の壁には壁画が描かれているようです。
 元の部屋へからの額の左から入ってくる。左から右へ進み、磨りガラスの扉のところでもじゃ眉男が待っている。
 磨りガラスの扉が奥に映され、ヴァンサンは最初に通された廊下を横切って、手前・向かいにあった磨りガラスの扉から中に入ります。書斎のようです。この扉から向かって左、奥の突きあたりには大きな肖像画がかけてありました。やはり出来は芳しくありません。描かれているのは「彼」、館の主、男爵です。雷鳴が轟く。
 約56分、嵐の中、対岸の桟橋に船が着きます。娘の名はマリアンヌでした。
 ヴァンサンとマンフレートの現在に戻ります。マリアンヌの顔を思いだそうとすると母の顔になってしまうとヴァンサンは嘆くのでした。


 自室の窓から双眼鏡でヴァンサンは館を見ます。マリアンヌだと同室のジャンに双眼鏡を手渡しますが、ジャンは雛菊だろうという。しかしマリアンヌの名は生徒たちの間で伝説のようにひろまっていくのでした。
 3階あたりから広間が見下ろされます。左に階段の1階登り口がのぞいている。
 皆は祭りに出かける。ヴァンサンは舟小屋に来ますが、教授によって舟の使用が禁止されたと用務員が告げます。ヴァンサンは対岸に行く道を尋ねますが、用務員は歩いていくのは無理だと答える。
 ヴァンサンと小フェリックスが湖岸を歩いています。二人で祭りに出かける。賑やかです。リーゼもいます。車が入ってくる。運転しているのはもじゃ眉男でした。マリアンヌの顔も見えます。


 ヴァンサンが鹿と散歩しています。リーゼが近くにいました。
 ヴァンサンがギターをつま弾く。リーゼは服を脱ぎ捨て水に入る。ヴァンサンのいるところの下まで泳いできます。ヴァンサンは相手にしない。
 呼び声が聞こえてきます。手紙が届いたという。ヴァンサンは嬉しそうです。すでにマリアンヌとの出会いを経ているにもかからず、母親からの便りに一喜一憂するという点が、なかなか意味ありげでした。
 教授の部屋です。ゆるい半円アーチの木の梁が幾本も横切っています。食堂の縮小版といった体裁でしょうか。画面奥の壁には尖頭アーチがあり、凹んで扉となる。そこからヴァンサンが入ってきます。家庭教師であり父の友人でもあったブラウアー大尉がやって来るとのことでした。
 マンフレートと駅へ迎えに行きます。大尉(ジャン・ガラン、ドイツ語版ではハリー・ハルトとのこと)は不平たらたらです。

 ヴァンサンがまた鹿と散歩しています。船着場に舟が着くのが見えます。ちょうどそこにいた小フェリックスが手紙を言付かる。しかしヴァンサンに届けに行くところを盗賊団に捕まってしまいます。盗賊団は皆上半身裸です。
 リーゼが鹿に近づきます。
 広間をヴァンサンが左から右へ走ります。
 厩舎に鹿とリーゼがいる。
 広間に大尉とヴァンサンがいます。しかし「何かが起こった」とヴァンサンは走りだす。厩舎に着くと、鹿は死んでいました。奥にリーゼがいます・ヴァンサンはリーゼをはたきながら厩舎の外に出る。「マリアンヌ」と叫んで右に走る。途中でジャンが追っかけてきて手紙のことを告げます。
 湖へ向かう。シェパードの一匹が追います。マンフレートとアレクシスも続く。ヴァンサンは湖に飛びこみますが、力尽きてしまう。

 尖頭アーチ型の窓です。外は闇でした。カメラは左へ、ベッドにヴァンサンが横たわっている。ピアノのある部屋です。尖頭アーチ型の窓が3つ並んでいることがわかります。
 ヴァンサンは部屋から出る。2階回廊です。右から左へ進む。3階への急な階段の裏が見えます。木組みでした。カメラは下・右へ、1階広間で生徒たちが見上げています。
 オーヴァラップして木立が下から見上げられます。右から左へ流れると城が映る。かなり下から見上げていたカメラが下降すれば、階段下に鹿たちがいました。画面手前・下方に鹿の角が映りこんでいます。


 夜明けです。霧が出ている。ヴァンサンは山を進みます。向かいの山の中腹に城が見える。
 リーゼも彼を追って森に入ります。左から右へ、カメラもそれを追います。鹿たちに追いかけられます。右から左へ走る。鹿の大群に踏み潰されて死んでしまったということです。哀れではありますが、その末路には童話色が色濃い。


 丸1日たちました。舟を漕ぐマンフレートが湖岸に倒れるヴァンサンを見つけます。
 約1時間23分、第2の回想です。カメラが後退し、館への門が映ります。ドーベルマン二匹はやはりヴァンサンになついている。
 ヴァンサンは前の鎧戸から館の中に入ります。廊下をまずは奥から見て左の男爵の肖像画がある書斎に行く。すぐに戻って向かいの部屋に向かいます。前回よりやや明るく見えました。マリアンヌの肖像画と左のからの額が同時に映されます。額が同型であることがわかる。
 脇の扉を奥へ進む。右にベッド、奥に螺旋階段があります。階段の上の部屋にマリアンヌがいました。二人は階段を下りる。「時間が二人を引き離しても? 何年もたって呼んだら来てくれる?」とマリアンヌは問います。
 足音がする。外への扉は開きませんでした。男爵の肖像画の右下の扉から本人(ジャン・ヨネル)が現われます。マリアンヌは外され、ヴァンサンと二人で話す。日本語字幕によると、男爵はマリアンヌの後見人のようなものだ、自分こそ幽閉されている、彼女を引き受けると誓った約束に縛られているといいます。彼女のために闇と静寂を保った、2年半前彼女は貴公子と結婚するはずだったが、彼は婚礼の日に失踪してしまった、もう1度婚礼の日を再現することで、過去が甦り失なわれた理性を取り戻せるかもしれない、いずれその日が来たら必ず報せよう。
 ヴァンサンは男爵に挑みますがもじゃ眉男に防がれ、屋外の斜面下へ追われる。鳥が鳴きまくっています。ヴァンサンをいじめるもじゃ眉男にドーベルマン二頭が襲いかかる。


 約1時間35分、ヴァンサンとマンフレートの現在に戻ります。二人は館に向かい、中に入る。彼女や男爵にまつわるものは何もなかったとのことです。奥に進む。螺旋階段をのぼりますが、手前にあったベッドはなくなっています。階段をのぼって右奥の扉にヴァンサンは入っていく。残念ながらその先は映されませんでした。螺旋階段をおりて左へ、彼女の肖像画のところに戻る。

 約1時間38分、広間の二叉階段の右側をスーツケースが下りてきます。持っていたのは用務員でした。下にはヴァンサンと教授がいます。ヴァンサンはアルゼンチンでの相棒パブロ、そしてマリアンヌのところへ行くという。
 外の階段の下です。盗賊団、小フェリックス、用務員、そしてマンフレートがいる。マンフレートは「彼女が待ってる」といいます。
 ヴァンサンを載せた車が去り、カメラが右に流れると、雄の鹿が映って終幕となるのでした。


 マリアンヌの面影が母のそれに置き換わってしまうとヴァンサンが語る点、マリアンヌと出会った後でも母親からの手紙が着いたかと走りだす点からして、不在の母親とマリアンヌは等価なものと見なされているのでしょう。マリアンヌがまず肖像画、次いでからの額に中に現われたのは、肖像画が転移して実体化したかのごとくです。下掲の町山智浩『トラウマ映画館』には、「『ヴィンセントは人生の中でマリアンヌを探すだろう』マンフレートは語る。そのマリアンヌとは実在の誰かではない。『愛、そして希望だ』」と記されています(p.198)。手もとのソフトの日本語字幕とはニュアンスが異なりますが、「 」でくくられている点からして著者が見たという「韓国製のDVDで観直した仏語版」(p.194)に由来するのかどうか。不勉強のため仏語聞き取りが不得手な当方には何ともいえませんが、フランス語の得意な方はぜひご確認いただければと思います。また映画版のお話をめぐる心理学的解釈が続くページで述べられていますので(p.200)、関心のある向きはそちらを参照ください。
 とまれ主人公を軸に超自然的というよりは、自然自体が励起したかのごとき様相を帯びる中、2つの城とそれを結ぶ山や湖を主人公が往き来し、なおかつそれぞれの城内で階段を上昇しては下降した点をもって、古城映画として本作は記憶されるべきものとなったといえるのではないでしょうか。

Cf.,   町山智浩、『トラウマ映画館』、2013、pp.190-201:「18 メーテルは森と湖のまぼろしの美女 『わが青春のマリアンヌ』」

原作の邦訳は他に小松太郎訳があるとのことですが、とりあえず;
ペーター・メンデルスゾーン、大野俊一訳、『わが青春のマリアンヌ』、雲井書店、1955
原著は
Peter Mendelssohn, Schmelzliches Arkadien, 1932

ついでに上で触れた;
アラン=フルニエ、天沢退二郎訳、『グラン・モーヌ』(岩波文庫 赤 N 502-1)、岩波書店、1998
原著は
Alain-Fournier, Le Grand Meaulnes, 1913
こちらも邦訳は他に各種あるそうです。
 2016/03/06 以後、随時修正・追補
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