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『響け!ユーフォニアム2』、第7回「えきびるコンサート」
  清水九兵衞《朱甲舞》(1997)
(+ 『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』 1999)
2016

■ TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』(2016)の第7回、「えきびるコンサート」の各話タイトルにある「えきびる」は、京都駅ビルを指します。ここで主人公たちが入っている北宇治高校吹奏楽部が演奏するわけですが、場所はビル内、大階段の4階広場で、室町小路広場という 呼び名がある。京都駅ビルの公式サイトの

 「京都駅ビルについて - 京都駅ビル (kyoto-station-building.co.jp)」

のページ中の「通路と広場」の項で場所を確認できます。そこからまた、

 「イベントスペースのご案内 - 京都駅ビル (kyoto-station-building.co.jp)」

のページにリンクしており、実際にそうした催しのために使われているようです。本作品での演奏場面も、現場を取材して描いてあるのでしょう(下左)。その際右側に真っ赤な彫刻が見えました。

 清水九兵衞、《朱甲舞》、1997、鋳造アルミニウム・鉄パイプ、600 x 210 x 190 cm

です(
追補:下右は現場で撮影したものです)。
『響け!ユーフォニアム2』、第7話「えきびるコンサート」 2016 後半約9分:京都駅ビル、右に清水九兵衞《朱甲舞》(1997) 京都駅ビル 4階・室町小路広場 2024/03/30
 右の場面のように、カメラの距離や角度の変化に応じた姿で再現されていました。片方の脚が枝分かれしている点も忠実に写してあります。
 このショットではカメラは床近くに位置していることになり、実際にこんな風に見えるのかどうかは確認しなければなりますまい。準備時点で多くの写真や動画を撮影し、それを取りこんでいるのでしょうが、あらかじめこんな画面になると想定していた視点もあれば、用意した画像から選んで背景に組みこんだ場合もあるのかもしれません。アニメの制作過程という点でも興味深いものがあります。
『響け!ユーフォニアム2』、第7話「えきびるコンサート」 2016 後半約10分:京都駅ビル、左後ろに清水九兵衞《朱甲舞》(1997)
 清水九兵衞は元の勤め先でも個展を開いたことがあるのですが(1992年→こちら [ < 三重県立美術館 ])、本作品はそれ以降のもので、

 『生誕100年 清水九兵衞/六兵衞』展図録、千葉市美術館、京都国立近代美術館、2022、p.151/cat.no.161[資-36、p.370]

また

 「観照 諸物細見 -5 京都駅ビルはおもしろい:切り撮る (2)室町小路広場・南広場 | 遊心六中記 - 楽天ブログ (rakuten.co.jp)」

 「コラム/アートリップ/朱甲舞 清水九兵衛作(京都市下京区)-朝日マリオン・コム- (asahi-mullion.com)」

などを参照ください。

■ この作品は京都駅ビルが1997年に竣工した際に設置されました。ところで京都駅ビルといえば、『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999、監督:金子修介)のクライマックスの舞台でもありました。念のためと確認してみれば、断片的とはいえ、《朱甲舞》も映りんこんでいました。まるっきり気がついていなかったのは、いつに変わりません。
 ともあれ主人公の比良坂綾奈(前田愛)たちは京都駅に到着、この時点では北側の一階中央改札口前にいました。イリスの到来に感応して、綾奈は大階段脇のエスカレーターを駆けあがります。
 4階まであがって、左から右へ走ります。その際背後左に《朱甲舞》がかすめるのでした(右)。進んだ先では何列ものプラットフォームをはさんで、少し前、イリス着陸時に、またこの後も映る五重塔が右手に見えます。東寺なのでしょう。南側を向いているわけです。 『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』 1999 約1時間18分:京都駅ビル、左端奥に清水九兵衞《朱甲舞》(1997)
『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』 1999 約1時間25分:京都駅ビル、右端に清水九兵衞《朱甲舞》(1997) 『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』 1999 約1時間28分:京都駅ビル
 追いついたガメラとイリスは闘いながら駅ビルになだれこみます(上左)。その際右端に《朱甲舞》が映りこみました。
 両怪獣の闘争によってこのあたりは、天井の格子も落ちてしまいました。上右は上左と同じ4階を少し上から見下ろしたショットですが、画面右手、積み重なる格子の合間から、何やら赤いものがのぞいています。《朱甲舞》と見てよいでしょうか。

 フィクションである以上、《朱甲舞》がなくても画面は成りたつはずです。彫刻自体に何か意味をこめているようでもない。アニメや模型を組み立てる特撮では、再現せずに済ませることもできたし、見えなかったとしても、筋を追うのに支障はなかったのではないかと思われます。真っ赤で、垂直に伸びあがるという形状は、構図全体に働きかけずにいないにせよ、それ以上に、特定の場所を指し示す目印として機能しているのでしょう。「えきびるコンサート」では全体がはっきり確認できるのに対し、断片的に画面をかすめるだけの『ガメラ3』でも、この点は同じです。
2024/02/25 以後、随時修正・追補
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