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『Meigaを探せ!』
第3回
『1999年の夏休み』(監督:金子修介、1988年、日本映画)

『三重県立美術館ニュース』、第68号、2008.10.2

 平成ガメラ三部作(1995~1999)で平成ゴジラ・シリーズに飽き足らなかった怪獣ファンの溜飲を下げさせた金子修介が、古典といってよい萩尾望都の『トーマの心臓』を原案に撮影した作品です(物語の展開が違うせいか、原作とはされていません。ちなみに金子は、大島弓子の原作を映画化した『毎日が夏休み』(1994)も手がけています)。

 登場人物は4人だけで、夏休みの寄宿舎に残った少年たちなのですが、それを皆女優が演じ、内三人は別の俳優が吹き替えるという段取りで作られています。この段取りゆえ、かなり気恥ずかしい台詞の連発も許容できるということなのでしょう。

 さて、物語の中に、少年の一人が寄宿舎を飛びだして亡くなった母親のアトリエにもどるという場面があります。母親は画家で、画架や壁に何点かの絵が立てかけられているのですが、これが池田龍雄の作品なのです。
 
『1999年の夏休み』 1988 約1時間2分:池田龍雄の作品群
『1999年の夏休み』 1988 約1時間2分
 いずれもグレーっぽいひろがりの中に何ともしれない形態が浮遊するという画面で、おそらく池田の当時の近作なのでしょう。

 物語はほぼ寄宿舎とその周辺でくりひろげられるのですが、寄宿舎に向かう、あるいはそこから出る電車の中を除けば、主な舞台の外に出るのはこの場面だけで、しかも話全体の折り返し地点となっています。

 池田龍雄の作品が登場するのはこの場面だけですが、主題なり雰囲気を限定しやすい具象的な絵ではなく、非日常的で不可解な絵が背景に配されたのは、神秘的なできごとを描く物語の中で何らかの意味づけがなされているからではないかと、深読みしたくなるところなのでした。
学芸員 石崎勝基(の真骨頂炸裂) 
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