ムリーリョ《ヤコブを祝福するイサク》

バルトロメー・エステバン・ムリーリョ (1617-1682)
《ヤコブを祝福するイサク 》
制作年不詳
油彩・キャンヴァス
91×155cm
ウェリントン美術館、アプスリー・ハウス、ロンドン


Bartolomé Esteban Murillo
Isaac Blessing Jacob
Date unknown
Oil on canvas
91×155cm
Wellington Museum, Apsley House, London

Cf., 『英国国立ヴィクトリア&アルバート美術館展』図録、伊勢丹美術館、大丸ミュージアム・梅田、ひろしま美術館、福岡市美術館、そごう美術館、三重県立美術館、1990-91、pp.56-57 / cat.no.12

 この作品の主題が物語るべき場面は、左手に小さく追いやられている。作者の関心は、空間の組み立てにあるのだろう。
 右側の眺望は、柵のシルエットによって急激に遠ざけられる。バランスをとるかのように、左奥に、背を向けた人物がいる部屋をうがつ。最も手前にいるのは、籠を運ぶ女と家屋の正面だが、画面中央は大きく、蔭になった側壁が占めている。
 複雑な構成を許すのは、褐色の地塗りであろう。側壁がほとんど地塗りのままである一方、明るい部分は、素早い筆致で地に明色を重ねたもので、ハイライトの白が最も不透明だ。
 有色地を起点に、明度の間合いを測りつつ明部をのせていく近世的明暗法によって、空間が浮きだし、沈む。それはさらに、濃密な雰囲気のうちに全体を統一してもいる。

(石崎勝基・県立美術館学芸員)
『讀賣新聞』(三重版)、1991.4.28、「ヨーロッパの美 ヴィクトリア&アルバート美術館展 作品紹介 6」

『英国国立ヴィクトリア&アルバート美術館展』(1991/4/6~5/6)より
こちらを参照:『年報1990-91』の当該転換の頁 [ < 三重県立美術館サイト
 本作品についてまた、やはり三重県立美術館のサイトより;

アクセルxブレーキ=スピン - 英国国立ヴィクトリア&アルバート美術館展よりムリリョ『ヤコブを祝福するイサク』をめぐって」、『ひる・ういんど』、no.35、1991.7

  この拙稿→「バルコニー、ヴェランダなど ー 怪奇城の高い所(補遺)」の頁でも挙げました

 ムリーリョの別の作品について;

常設1992年度第4期(1993.1) ■第3室:象徴表現の変容 - ムリリョからミロへ

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