ラーション《玄関ポーチのスザンヌ》1910

カール・ラーション(1853-1919)
《玄関ポーチのスザンヌ》
1910年
水彩・紙
53×74cm
個人蔵


Carl Larsson
Suzanne on the Veranda
1910
Watercolor on paper
53×74cm
Private collection

Cf., 『カール・ラーション展 スウェーデンの国民画家』図録、東京都庭園美術館、三重県立美術館、熊本県立美術館・分館、新潟県立近代美術館、1994、p.106 / cat.no.49

荒屋鋪透、『カール・ラーション スウェーデンの暮らしと愛の情景』(ToBi selection)、東京美術、2016、p.105

 普通、人であれ物であれ絵の中に描かれたモティーフに対しては、表面にそって視線を裏側までめぐらせることができる。もって何らかの奥行きが暗示されるのだ。ところがここでは、絵の中に入っていこうとする見るものの視線をはばむかのように、画面と平行な腰板が中央を占めている。
 腰板の部分にかぎらず、全面にわたって、画面の縁と平行する垂直水平の格子が走っている。これは、画面という平面と、描かれた空間を一致させる役割をはたす。それはほとんど、同時期にモンドリアンらが発見しつつあった幾何学的抽象を連想させるほどだ。輪郭の内側を平坦に埋める、薄く明るくのばされた色彩も、構造の明晰さを強めるだろう。
 ただ画面は、完全に平面性に即しきっているわけでもない。腰板の両側での段差、断片的にのぞく頭部、植物のうごめき、右端の暗がりなどは、腰板がいったん平面性を強調したからこそ、その周囲にはみだしていく空間のための符丁をなしているのだ。

(石崎勝基・三重県立美術館学芸員)
『讀賣新聞』(三重版)、1994.6.23、「北欧の田園生活 カール・ラーション展 3」

『カール・ラーション展 スウェーデンの国民画家』(1994/6/18~7/17)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト

→「ドラゴン、雲形、魚の骨 - 怪奇城の意匠より」の頁でも挙げました

 また;

カール・ラーション(1853-1919)《モンクール風景》(表紙解説)」、『ひる・ういんど』、no.48、1994.10.25

 
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