イタリア(フェラーラ派) 15世紀第3四半世紀《ソロモン王とシバの女王の会見》1470-73頃

イタリア(フェラーラ派)、15世紀第3四半世紀
《ソロモン王とシバの女王の会見》
1470-73年頃
テンペラ、金箔・板
直径92.3cm
ヒューストン美術館


Italian (Ferrarese), third quater of the fifteenth century
The Meeting of Solomon and the Queen of Sheba
c.1470-73
Tempera and goldleaf on wood
D. 92.3cm
The Museum of Fine Arts, Houston

Cf., 『ヒューストン美術館展 - ルネサンスからセザンヌ、マティスまで - 』図録、愛媛県美術館、千葉県立美術館、三重県立美術館、福岡市美術館、1999、pp.62-63 / cat.no.6

喜多村明里、「出産盆絵と円形板絵 - 十五世紀トスカーナにおける『世俗絵画』の一様相 - 」『美学』、no.207、2001.12、pp.27-39;p.30、p.38 / 図6

 額縁に飾られた円型の画面は、壁にかけて鑑賞する絵というだけではない、何らかの機能を感じさせはしないだろうか。実際こうした形式は、婚礼や出産を記念するための盆だったという。旧約聖書が物語るところの賢王ソロモンとシバの女王の会見という主題も、祝典の描写でもあり、霊的な婚姻を象徴するものでもあった。
 他方、画面自体から強く印象に残るのは、まずは、やはり円という形であり、次いで、著しく強調された線遠近法による、空間の格子状の構成であろう。円は、たとえば長方形に比べれば、その中心に注意をひきつけずにいない。ここでは、線遠近法の焦点が、円の中心である貝殻状のドームに一致させられ、さらに、建物も正面から見た、左右相称にとらえられている。そのため建物の空間は、図式的な性格を帯びるにいたった。しかしだからこそ、矛盾をきたしてもおかしくなかったはずの、円という形の強さと、線遠近法によってうがたれた奥行きとが、統合されえたのである。
 建物を彩るピンクや青白色は軽快さをもたらし、刻印を施した金箔は工芸的な豪著さを訴える。以上が相まって作品は、快活な装飾性と観念的な図式性との、奇妙な混成として成立している。それは、人間性の表現などとは無縁かもしれないが、奇妙な祭典ででもあるかのような、視覚的な魅力をたたえているのではないだろうか。

(県立美術館学芸員・石崎勝基)
『讀賣新聞』(三重版)、1999.8.1、「欧州600年の美 ヒューストン美術館展 1」

『ヒューストン美術館展 - ルネサンスからセザンヌ、マティスまで - 』(1999/7/17~8/22)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト

本展からこちらや、また

ロヒール・ファン・デル・ウェイデン(1399頃-1464)《聖母子》(表紙解説)」、『ひる・ういんど』、no.71、2001.6.30

 
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