『裸眼』、no.9 「裸眼による『美術館』」、1991.7.1, pp.43-44 | |||
吸血鬼の城のために 石崎勝基 |
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一点の作品成立は幾重もの条件に根ざすにせよ、いかなる作品も何らかの即物的な枠どりなしで出発することはできず、美術は最終的に、その枠の内側を通じてしか語りかけることができない。そこに何らかの価値を認める時(少なくとも人類という種の枠内で)、美術館は何よりも、そうした作品一点一点が質的にすぐれていれば、現人類の生物学的認識能力および諸文化史を前提とするかぎりにおいて、何がしか対話を交わすことができるかもしれない個々の誰かと(不特定の観客一般などではない)、いつか出会えるよう(人類がいつまでもつかについてはとりあえず棚上げして)、現在および未来の人間に、作品の意図(作者の意図ではない:それを精確につかむべく保存技術者と学芸員の訓練が要請される)にできるだけ即した形で手渡していく機関として成立する。 |
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